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ポリエステルモノフィラメントおよび工業用織物
説明

ポリエステルモノフィラメントおよび工業用織物

【課題】工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度を有しつつ、湿熱環境下で使用した場合でも優れた耐加水分解性を発揮するとともに、食品の残存物などの付着性物質が付着し難く、かつ付着しても剥がれやすい非粘着性を兼備し、食品搬送用ベルトを代表とする工業用織物用原糸として極めて好適に利用し得るポリエステルモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物を提供する。
【解決手段】カルナバワックス0.5〜5重量%を含有するポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂から成るポリエステルモノフィラメントであって、JIS−L1013に記載の方法に準拠した引張強度が2.0cN/dtex以上であることを特徴とするポリエステルモノフィラメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度を有しつつ、湿熱環境下で使用した場合でも優れた耐加水分解性を発揮するとともに、食品の残存物などの付着性物質が付着し難く、かつ付着しても剥がれやすい非粘着性を兼備し、食品搬送用ベルトを代表とする工業用織物用原糸として極めて好適に利用し得るポリエステルモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートからなるモノフィラメントに代表される繊維は、優れた力学特性、耐熱性などを有していることから、従来から各種工業用部品、衣料用および工業用繊維材料、各種織物のみならず、食品を搬送する食品搬送用ベルトに用いる原糸としても好適に使用されている。
【0003】
食品搬送用ベルトを使用する環境は、包装食品搬送ラインと未包装食品搬送ラインの2つに大別され、その利用のされ方により要求特性も異なってくるが、その中でも未包装食品搬送ライン、例えばすし米や蒸し加工製品・水産練り加工製品を搬送する工程では、常時60℃〜80℃の湿熱環境条件となるため、こうした湿熱環境下にて使用されるポリエステルモノフィラメントには、長時間使用しても強度劣化を来し難い特性、すなわち耐加水分解性が必要となってくる。
【0004】
しかし近年、すし米や蒸し加工製品・水産練り加工製品を搬送する工程では、食品を加熱殺菌するため瞬間的に100℃近い熱処理を実施する工程が導入され、また食品搬送用ベルトを洗浄するため、オンライン上における熱水洗浄作業が追加されるなど、ポリエステルモノフィラメントの耐加水分解性が従来よりも一層要求される使用環境となってきている。更には、生産効率の観点から搬送工程ラインの高速化が進み、食品搬送用ベルトの交換作業に伴う生産工程の一時停機は、生産性悪化に甚大な影響を及ぼすようになっており、従来よりも長時間の使用が可能なポリエステルモノフィラメントの開発が仕切りに望まれていた。
【0005】
また一方で、食品搬送用ベルトには衛生管理が強く要求され、例えば搬送物である食品の残存物が食品搬送用ベルトの表面に付着すると、微生物が増殖しやすく、微生物による食品の品質悪化や保存性が害されるおそれがある。このために食品製造工場では作業終了後、食品搬送用ベルトの洗浄を行っているが、微生物を完全に除菌する場合には次亜塩素酸ソーダや過酸化水素水などの薬品を用いて長時間洗浄を行うなど、衛生管理に多大な労力を必要とするため、食品の残存物が付着し難く、かつ付着しても剥がれやすい非粘着性を備えたポリエステルモノフィラメントの実現も同様に切望されていた。
【0006】
このような問題点を解決するため従来から様々な提案が行われてきた。
【0007】
例えば、ポリエステルの耐加水分解性を向上する方法として、カルボキシル末端基がカルボジイミドとの反応でキャップされ、遊離のモノ及び/又はビスカルボジイミド化合物30〜200ppmと遊離のポリカルボジイミド又はなお反応性を有するポリカルボジイミド基を含む反応生成物を少なくとも0.02重量%含有するポリエステル繊維(例えば、特許文献1参照)およびシンジオタクチック構造などのポリスチレンと未反応の状態のモノカルボジイミド化合物とポリカルボジイミド化合物とをそれぞれ特定量含有するポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、上記技術により耐加水分解性は改善されるものの、カルボジイミド化合物は食品衛生法に不適合であるため、食品搬送用ベルトとしての使用には問題があるのが実情であった。
【0008】
また、ポリエステルに非粘着性を付与する方法として、例えば、少なくとも表層部に、溶融混練されたポリシロキサンを含有するポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献3参照)、フッ素系のポリマーを添加したポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献4参照)が知られているが、これらの技術で得られるポリエステルモノフィラメントを食品搬送用ベルトに応用した場合には、食品の残存物などの付着性物質に対する非粘着性がいまだに不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−289221号公報
【特許文献2】特開平10−168661号公報
【特許文献3】特開昭60−81313号公報
【特許文献4】再公表国際公開番号WO92/07126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものである。
【0011】
したがって、本発明の目的は、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度を有しつつ、湿熱環境下で使用した場合でも優れた耐加水分解性を発揮するとともに、食品の残存物などの付着性物質が付着し難く、かつ付着しても剥がれやすい非粘着性を兼備し、食品搬送用ベルトを代表とする工業用織物の構成素材として極めて好適に利用し得るポリエステルモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため本発明によれば、カルナバワックス0.5〜5重量%を含有するポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂から成るポリエステルモノフィラメントであって、JIS−L1013に記載の方法に準拠した引張強度が2.0cN/dtex以上であることを特徴とするポリエステルモノフィラメントが提供される。
【0013】
なお、本発明のポリエステルモノフィラメントにおいては、
前記ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂の固有粘度が1.00以上であること、および
前記ポリエステルモノフィラメントのカルボキシル末端基濃度が10当量/10g以下であること
が、好ましい条件として挙げられ、これら条件を満足することによってより優れた引張強度が得られるため、製織時に糸切れなどの不具合を生じることがより少なくなるばかりか、極めて優れた耐加水分解性を発揮し、工業用織物の長期間に亘る使用を可能とするポリエステルモノフィラメントの実現が可能となる。
【0014】
また、本発明の工業用織物は、上記ポリエステルモノフィラメントを経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用してなることを特徴とし、特に食品搬送用ベルトを代表とする工業用織物に使用した場合には、湿熱環境下での使用に際しても、長期間の使用が可能となる優れた耐加水分解性を発揮するとともに、食品の残存物などの付着性物質が付着し難く、かつ付着しても剥がれやすくなるなど衛生管理への作業負担が大幅に軽減されるとともに、衛生管理状態が極めて良好になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリエステルモノフィラメントは、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度を有しつつ、優れた耐加水分解性および非粘着性を兼備することから、製織時に糸切れなどの不具合を生じることが少なく、各種工業用織物、特に食品搬送用ベルト用途に使用した場合、湿熱環境下にて長時間の使用が可能になるとともに、食品の残存物などの付着性物質が付着し難く、かつ付着しても剥がれやすくなるため、衛生管理への作業負担が軽減されるとともに、衛生管理状態を良好に保つことが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明について更に詳細に説明する。
【0017】
本発明におけるポリエステルモノフィラメントを構成するポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(以下、PCTという)系樹脂とは、テレフタル酸残基と1,4−シクロヘキサンジメタノール残基とが結合した繰り返し単位を主要構成成分とするものであり、好ましくは該繰り返し単位がポリマー中の80モル%以上を占めるものである。
【0018】
なお、PCT系樹脂の酸成分またはジオール成分を通常20モル%以下の範囲で、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、メチルテレフタル酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸、2,2´−ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−エタン、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、オクタデカンジカルボン酸、ダイマー酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの他のジカルボン酸またはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノールおよび2,2−ビス(2´−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの他のジオールで置換したものも用いることができる。PCT系樹脂は、そのバルキーなシクロヘキサン環の立体効果により、ポリエチレンテレフタレートといった汎用ポリエステルと比較して非常に優れた耐加水分解性を有することを特徴とする。
【0019】
次に、本発明のポリエステルモノフィラメントはカルナバワックスを含有することを必須とする。ここでカルナバワックスとは、ヤシ科のパーム樹から採取されたカルナバロウを精製した天然系由来のものであり、ワックスエステル80〜85重量%、遊離脂肪酸3〜4重量%、遊離アルコール10〜12重量%および炭化水素1〜3重量%から構成される。ワックスは、蜜蝋やパラフィンワックス、モンタンワックスといった天然ワックス、アマイドワックスのような天然ワックスを変性させた半合成ワックス、およびポリエチレンやポリプロピレン、EVA、EAAといった合成ワックスなど、大きく分けて3分類されるが、その中でも極性が高く、且つ耐スリップ性に優れたカルナバワックスが抜群の非粘着性を発揮することを見出した。
【0020】
また、カルナバワックスは粘度がPCT系樹脂に対して相対的に低いため、モノフィラメント表面にブリードアウトしやすく、少量でも高い非粘着性を得られることが判明した。なお、ブリードアウトにより、例えば食品搬送用ベルトに使用した場合、搬送する食品への転写が懸念されるが、カルナバワックスは食品添加物としての認定実績および使用実績があり、例えば光沢性を付与するためにチョコレートや粒ガム、グミキャンディーやサプリメント(栄養補助食品・錠剤)表面へのコーティングにも使用されていることから、仮にカルナバワックスが搬送する食品に転写したとしても人体には何ら影響ない非粘着性を有する物質と言える。
【0021】
ここでポリエステルモノフィラメント中のカルナバワックスの含有量は0.5〜5重量%であることが重要である。0.5重量%未満であると、長期間における非粘着性の持続性が不十分であり、また5重量%以上であるとポリエステルモノフィラメントの引張強度が低下してしまい、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度が得られないばかりか、モノフィラメントの製造工程においてもエクストルダーなどに代表される紡糸機での原料押出し性が不安定となり、紡出不能状態を来たすなど紡糸操業性が悪化してしまうため好ましくない。
【0022】
更に、本発明のポリエステルモノフィラメントは、JIS−L1013に記載の方法に準拠した引張強度が2.0cN/dtex以上であることが必須である。すなわち、引張強度が2.0cN/dtex以下では製織時に糸切れが頻発してしまうばかりか、得られる工業用織物の実用強度までもが低くなるなどの悪影響を及ぼすこととなる。
【0023】
次に、本発明で使用するPCT系樹脂の固有粘度は1.00以上であることが好ましく、更に1.20以上であればより好ましい。固有粘度が1.00未満の場合、モノフィラメントとした場合、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度を得ることができない。
【0024】
また、本発明のポリエステルモノフィラメントは、耐加水分解性の観点からカルボキシル末端基濃度が10当量/10g以下の条件を満たすことが好ましく、更に8当量/10g以下であればより好ましい。ここで、カルボキシル末端基濃度が10当量/10g以上であると、湿熱環境下では加水分解劣化が著しく進行することとなり、ポリエステルモノフィラメントの著しい強度低下を引き起こしてしまう。その結果、工業用織物の強度低下を招くばかりか、長期に亘る織物の製品寿命を実現できなくなるなど、極めて好ましくない結果を招くことに繋がる。
【0025】
ここで、本発明におけるポリエステルモノフィラメントの耐加水分解性は、下記方法によって得られた強力保持率が50%以上であることが重要である。強力保持率が50%未満であると、耐加水分解性が不十分となり、湿熱環境下で長期に亘り使用される工業用織物用途の原糸としては好ましくないものとなってしまう。
[ポリエステルモノフィラメントの耐加水分解性]
ポリエステルモノフィラメントを100リットルオートクレーブに入れ、121℃の飽和水蒸気雰囲気下で連続6日間の強制加水分解劣化処理(以降、加水分解処理という)を行った後、処理後のポリエステルモノフィラメントおよび加水分解処理を行っていないポリエステルモノフィラメントの強力を測定し、処理前後のポリエステルモノフィラメントの強力保持率を算出し、耐加水分解性の尺度とした。なお、算式は、強力保持率(%)=(加水分解処理後ポリエステルモノフィラメントの強力÷加水分解処理前ポリエステルモノフィラメントの強力)×100とした。
【0026】
また、本発明におけるポリエステルモノフィラメントの非粘着性は、布粘着ガムテープ貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力測定試験方法により求められるガムピッチ非粘着指数(従来から使用されているポリエチレンテレフタレートのみで組成されるポリエステルモノフィラメントを100とした時)が90以下であることが重要である。このガムピッチ非粘着指数は小さいほど付着性物質に対して優れた非粘着性を有していることを示し、ガムピッチ非粘着性指数が90を越える値では付着性物質に対する非粘着性が不十分となってしまう。
【0027】
次に、本発明のポリエステルモノフィラメントの繊維軸方向に垂直な断面の形状(以下、断面形状もしくは断面という)は、丸、楕円、3角、T、Y、H、+、5葉、6葉、7葉、8葉、などの多様形状、正方形、長方形、菱形、ドッグボーン状および繭型などいかなる断面形状を有するものでもよい。
【0028】
ここで、本発明のポリエステルモノフィラメントの直径は、その使用用途に合わせ適宜選択することができるが、通常は0.05〜3mm程度(異形断面の場合は、丸断面面積に換算して直径を算出する)の範囲のものが好適に使用される。
【0029】
また、本発明のポリエステルモノフィラメントは、従来公知の方法で製造できるが、好ましい製造例としては、1軸もしくは2軸エクストルダーに、必要量の乾燥したPCT系樹脂と所定量のカルナバワックス、あるいはカルナバワックスを高濃度に含有したPCT系樹脂マスターバッチペレットをそれぞれ計量供給し、PCT系樹脂の融点以上の温度で溶融混練した後、エクストルダー先端に設けた計量ギアポンプを介して紡糸口金より押し出し、冷却・延伸・熱セットを行うなどの方法を挙げることができる。
【0030】
かくして得られる本発明のポリエステルモノフィラメントは、工業用織物を構成するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度を有しつつ、従来のポリエステルモノフィラメントでは実現できなかった湿熱環境下で使用した場合でも優れた耐加水分解性を発揮するとともに、食品の残存物などの付着性物質が付着し難く、かつ付着しても剥がれやすい非粘着性を兼備することから、各種工業用織物用途の分野で広く用いることが可能であり、その有効な用途としては、サーマルボンド法不織布熱接着工程用ネットコンベア織物、熱処理炉内搬送用ベルト織物もしくはフィルター織物などが挙げられ、中でも耐加水分解性向上と非粘着性向上の要求が強い食品搬送用ベルトの構成素材として最も好適である。
【実施例】
【0031】
以下、本発明のポリエステルモノフィラメントの実施例に関し、更に詳細に説明をするが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0032】
また、各種特性の評価は次に説明する方法にしたがって行った。
[PCT系樹脂の固有粘度]
オルトクロロフェノール溶液中25℃で測定した粘度より求めた。
[ポリエステルモノフィラメントのカルボキシル末端基濃度]
(1)10mL試験管に0.5±0.002gのポリエステルモノフィラメントサンプルを秤取する。
(2)o−クレゾール10mLを前記試験管に注入し、100℃で30分間加熱、攪拌しサンプル溶解させる。
(3)試験管の内容液を30mLビーカーに移す(試験管内の残液を3mLのジクロルメタンで洗浄してビーカーに追加する)。
(4)ビーカー内の液温が25℃になるまで放冷する。
(5)0.02NのNaOHメタノール溶液で滴定する。
(6)サンプル無しで前記(1)〜(5)と同様に行い、サンプル滴定に要した0.02NのNaOHメタノール溶液滴定量からポリエステルモノフィラメント10gあたりのカルボキシル末端基当量を求める。
【0033】
[ポリエステルモノフィラメントの引張強度]
JIS−L1013に記載の方法に準拠して、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)を使用して測定し、試料が切断したときの強力を求めた。また、その強力を繊度で割り返して強度(cN/dtex)を算出した。
[ポリエステルモノフィラメントの耐加水分解性]
ポリエステルモノフィラメントを100リットルオートクレーブに入れ、121℃の飽和水蒸気雰囲気下で連続6日間の強制加水分解劣化処理(以降、加水分解処理という)を行った後、処理後のポリエステルモノフィラメントおよび加水分解処理を行っていないポリエステルモノフィラメントの強力を測定し、処理前後のポリエステルモノフィラメントの強力保持率を算出し、耐加水分解性の尺度とした。なお、算式は、強力保持率(%)=(加水分解処理後ポリエステルモノフィラメントの強力÷加水分解処理前ポリエステルモノフィラメントの強力)×100とした。
[ポリエステルモノフィラメントの非粘着性評価]
布粘着ガムテープ貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力測定試験方法により求めた。(以下、布粘着ガムテープ剥離試験という)
(1)厚さ150〜250μm、横巾30mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルムを2枚用意し、各々のフィルムの30mm巾の一端同士を重ならないように合わせて、この合わせ面に片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを前記2枚のフィルムの両端に渡るように貼付することにより、接合部で縦方向に繋ぎ合わされた見かけの縦長さ約240mm、横巾30mmのフィルムを作成する。
(2)前記の2枚が繋ぎ合わされたフィルムの前記布粘着テープの貼付されていない面のどちらか半分(一枚のフィルム)に、横巾10mm、縦長さ120mmの両面粘着テープ(日東電工(株)製品、No.523または同等品)を、前記フィルムと前記両面粘着テープの横巾方向のセンターを合わせて長手方向に揃えて貼付する。
(3)長さ約200mmに切断したポリエステルモノフィラメント試料を、前記両面粘着テープを貼付したフィルムの粘着テープ上に前記フィルムの長手方向と平行に隙間無く貼付し、前記両面粘着テープの長手方向の両端からはみ出している前記ポリエステルモノフィラメントの余端を鋏で切除し、ポリエステルモノフィラメント試料貼付フィルムを得る。
(4)平坦な硝子板(厚さ約8mm、縦約250mm、横約80mm)の上に前記ポリエステルモノフィラメント試料貼付フィルムを乗せ、ポリエステルモノフィラメント貼付面を上向き、かつポリエスエルモノフィラメント面が左側になるようにしてから、横巾10mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を、該布粘着テープの長手方向左端を前記ポリエステルモノフィラメント試料貼付フィルムのポリエステルモノフィラメント面左端と合わせて、前記ポリエステルモノフィラメント上に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記ポリエステルモノフィラメント面右端に約30mm残っている前記布粘着テープを、前記フィルム面にしっかりと貼付する。
(5)前記ポリエステルモノフィラメント貼付フィルムを裏返して、前記(1)で2枚のフィルムを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(6)前記ポリエステルモノフィラメント貼付フィルムのポリエステルモノフィラメント貼付面を上向きにし、ポリエステルモノフィラメント貼付部分が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記ポリエステルモノフィラメントの表面に仮貼付されている前記布粘着テープ上に、重量1.43kg、巾50mm、直径86mmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの右長手方向から片道走行させ、前記布粘着テープを前記ポリエステルモノフィラメント試料に貼付して剥離応力測定用試料を作成する。
(7)前記剥離応力測定用試料の2枚のフィルムの接合部を支点にして、前記布粘着テープの貼付面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部からポリエステルモノフィラメント上に貼付されている前記布粘着テープを長さ約10mm剥がし、露出したポリエステルモノフィラメント貼付フィルム端部を、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)の上チャックの中央部にセットし、一方のポリエステルモノフィラメントの貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)を、前記引張試験器の下チャックの中央部にセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とが交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(8)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から約20mm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定をn=10で行い、その平均値を布粘着ガムテープ剥離応力とする。
【0034】
なお、上記した布粘着ガムテープ剥離試験を採用することによって、製織することなく本発明のポリエステルモノフィラメントを構成素材とする織物の非付着性を定量的に相対評価することが可能であり、布粘着ガムテープ剥離応力が低いほどガムピッチ、つまり付着性物質に対する非付着性が優れることを表す。なお、比較サンプルとして従来から使用されているポリエチレンテレフタレートのみで組成されるポリエステルモノフィラメントを用い、下記式によりガムピッチ非粘着指数を求めた。
【0035】
ガムピッチ非粘着指数=試験剥離応力値/比較サンプル剥離応力値×100
[製織時の工程通過性]
ポリエステルモノフィラメントを経糸に使用して平織物を作製した。この平織物を長さ方向に5m製織するに際し、緯糸打ち込み時の糸切れ状況を確認し、以下の基準で判断した。
【0036】
○…緯糸打ち込み時の糸切れが1回以下であった。
【0037】
×…緯糸打ち込み時の糸切れが2回以上発生した。
【0038】
[実施例1]
乾燥したPCT系樹脂(イーストマンケミカル製PCTA−13319 IV=1.77)を用い、PCT系樹脂:カルナバワックス=60重量%:40重量%の配合比で、混練温度:320℃、L/D:30、スクリュー回転数:100rpmの条件で2軸押出機を用いて混練を行い、PCT系樹脂中にカルナバワックスを混合したPCT系樹脂マスターバッチペレットを得た。
【0039】
乾燥したPCT系樹脂および上記PCT系樹脂マスターバッチペレットを、モノフィラメント中の組成比がPCT系樹脂:カルナバワックス=97重量%:3重量%となるように50mmの1軸エクストルダー型溶融紡糸機に供給し、320℃の温度で溶融混練した後、紡糸口金から紡出した。次いで、溶融状態の紡出糸を温水中に導いて冷却固化せしめた後、トータル延伸倍率が4.0倍、200℃の熱風によるヒートセットゾーンにて0.95倍で熱セットし、公知の油剤を付与しボビンに巻き取ることによって、直径0.40mmのポリエステルモノフィラメントを得た。得られたポリエステルモノフィラメントの引張強度、カルボキシル末端基濃度、耐加水分解性、ガムピッチ非粘着指数および製織時の工程通過性を表1に示す。
【0040】
[実施例2〜4]
PCT系樹脂のIV、ポリエステルモノフィラメントのカルナバワックス含有量およびカルボキシル末端基濃度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で直径0.40mmの断面形状が円形のポリエステルモノフィラメントを得た。
【0041】
[比較例1〜4]
ポリエステルモノフィラメントに用いるポリエステル原料の種類、カルナバワックス含有量および引張強度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて、断面形状が円形の直径0.40mmのポリエステルモノフィラメントを得た。
【0042】
【表1】

【0043】
表1の結果から明らかなとおり、本発明におけるポリエステルモノフィラメント、すなわちカルナバワックス0.5〜5重量%を含有するポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂から成るポリエステルモノフィラメントであって、JIS−L1013に記載の方法に準拠した引張強度が2.0cN/dtex以上であるポリエステルモノフィラメント(実施例1〜4)は、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度を有しつつ、優れた耐加水分解性および非粘着性を兼備していることから、食品搬送用ベルトを代表とする工業用織物用途へ用いるポリエステルモノフィラメントとして、極めて好適に利用できるものであることがわかる。
【0044】
これに対して、本発明の規定を満たさないポリエステルモノフィラメント、すなわちPCT系樹脂以外のポリエステル原料を使用したポリエステルモノフィラメント(比較例1)、またはカルナバワックス含有量が規定から外れたポリエステルモノフィラメント(比較例2および3)、または引張強度が規定から外れたポリエステルモノフィラメント(比較例4)などは、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして求められる引張強度が不十分であり、耐加水分解性または非粘着性が低いため、食品搬送用ベルトを代表とする工業用織物用原糸としての要求特性を満足していないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のポリエステルモノフィラメントは、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度を有しつつ、湿熱環境下で使用した場合でも優れた耐加水分解性を発揮するとともに、食品の残存物などの付着性物質が付着し難く、かつ付着しても剥がれやすい非粘着性を兼備していることから、食品搬送用ベルトを代表とする工業用織物用原糸として極めて好適に利用し得るものであり、産業上の利用価値が極めて高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルナバワックス0.5〜5重量%を含有するポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂から成るポリエステルモノフィラメントであって、JIS−L1013に記載の方法に準拠した引張強度が2.0cN/dtex以上であることを特徴とするポリエステルモノフィラメント。
【請求項2】
前記ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂の固有粘度が1.00以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルモノフィラメント。
【請求項3】
前記ポリエステルモノフィラメントのカルボキシル末端基濃度が10当量/10g以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルモノフィラメント。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステルモノフィラメントを経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用したことを特徴とする工業用織物。
【請求項5】
食品搬送用ベルトであることを特徴とする請求項4に記載の工業用織物。

【公開番号】特開2013−91872(P2013−91872A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234632(P2011−234632)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】