説明

ポリエステル先染め糸およびその製造方法

【課題】 適度なストレッチ特性があり、風合い、外観品位に優れた先染め糸を提供する。
【解決手段】 少なくとも一層がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする層であるサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型複合のポリエステル系複合繊維で構成され、10%伸長時の弾性回復率が20〜50%であり、かつ沸水収縮率が4%以下であるポリエステル先染め糸。ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとのサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型複合のポリエステル系複合繊維で構成されるフィラメント糸を、緊張処理し、弛緩熱処理した後、チーズ巻きし、チーズ染色することにより、ポリエステル先染め糸を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル先染め糸の改良に関する。さらに詳しくは、少なくとも一層がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする層であるサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型複合のポリエステル系複合繊維で構成されたポリエステル先染め糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維は、ナイロン繊維の持つ柔軟性とポリエチレンテレフタレート繊維の持つ機械的物性とを合わせ持つので、幅広い用途に展開されてきている。
【0003】
衣料分野において現在適用されているポリトリメチレンテレフタレート繊維は、編織物にした後に染色が施され、いわゆる反染めがなされており、柔軟な風合いやストレッチ性に優れた編織物が得られている。しかしながら、反染めでは、糸−糸間で配色を変えて模様を形成することができず、高級感のあるファッション性に優れた編織物を得ることが難しいという問題があった。そのため、糸条で染色した後に編織物にする、いわゆる先染め糸による編織物に対する要望が高まってきている。
【0004】
そこで、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を仮撚し、加撚し、弛緩熱処理した後に染色して先染め糸条を製造することが提案されている(特許文献1参照)。しかし、この先染め糸は、ストレッチ性やストレッチ回復性が未だ十分ではなく、編成、製織時の張力、および編成、製織後の布帛の収縮する力が小さいため、特に高密度布帛において、ストレッチ特性が劣る欠点があった。また、低密度布帛においては、ふかつき、ぼてつきという不具合が生じ、風合いが劣るという欠点があった。
【0005】
また、粘度の異なるポリトリメチレンテレフタレートからなる複合繊維を加撚し、弛緩熱処理した後に染色して先染め糸条を製造することが提案されている(特許文献2参照)。該複合繊維は複合ポリマー間の収縮差によって生じる3次元コイルの伸縮をストレッチ性に利用するものであり、布帛にしたときに、ふかつき、ぼてつきという風合い不良は改善される。しかし、捲縮の位相が揃った先染め糸であるため、編織物にした場合、シボ、経スジ、緯段などが発生し、編織物表面の凹凸が強く、品位面に劣るという欠点があった。
【0006】
【特許文献1】特許第3500392号公報
【特許文献2】特開2003−201634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維からなる先染め糸であって、適度なストレッチ性があり、ふかつきやぼてつき感がなく、かつ布帛品位や風合いに優れた編織物を形成することができるポリエステル系先染め糸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリエステル系先染め糸は、前記目的を達成するため、少なくとも一層がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする層であるサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型複合のポリエステル系複合繊維で構成され、10%伸長時の弾性回復率が20〜50%であり、かつ沸水収縮率が4%以下であることを特徴とするものである。特に、ポリトリメチレンテレフタレート層とポリエチレンテレフタレート層とから構成される複合繊維から構成される先染め糸である。
【0009】
また、ポリトリメチレンテレフタレート層とポリエチレンテレフタレート層とがサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型に複合されたポリエステル系複合繊維から構成されるフィラメント糸を、緊張処理し、弛緩熱処理し、次いでチーズ巻きした後、チーズ染色することにより上記した先染め糸を製造する、ポリエステル先染め糸の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による先染め糸は、捲縮の発現が均一で適度なストレッチ特性があり、加工管理がしやすく、かつ、安定した品位、適度なストレッチ特性及び優れた風合いを有する布帛とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の先染糸で用いるポリエステル系複合繊維は、少なくとも一層がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする層であるサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型複合のポリエステル系複合繊維である。前記サイドバイサイド型または偏芯シース・コア型のポリエステル系複合繊維を構成する層のうち、少なくとも一層はポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする層である。他の層としては、粘度の異なるポリトリメチレンテレフタレートを用いることもできるが、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの他のポリエステルを用いることが好ましい。
【0013】
ポリトリメチレンテレフタレートはトリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を50モル%以上含むことが好ましく、さらに好ましくは80モル%以上を含む。このポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、プロピレングリコールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルが好ましい。ただし、他のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれるものも好ましく、10モル%以下の割合で含まれるものはより好ましい。
【0014】
共重合可能な化合物として、たとえばスルフォン酸、ナトリウムスルフォン酸、硫酸、硫酸エステル、硫酸ジエチル、硫酸エチル、脂肪族スルフォン酸、エタンスルフォン酸、クロロベンゼンスルフォン酸、脂環式スルフォン酸、イソフタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、アジピン酸、シュウ酸、デカンジカルボン酸などのジカルボン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸などのジカルボンサン類、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ハイドロキノン、ビスフェノールAなどのジオール類が好ましく使用される。
【0015】
また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
本発明において、コイル状捲縮を発現させ、編織物を形成した際に所望の伸縮性を得る観点から、ポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度は1.0以上であるのが好ましく、1.2以上であるのがより好ましい。
【0016】
本発明で使用されるポリエステル系複合繊維の単糸断面形状はサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型とするものである。単糸断面形状がサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型でないと、糸条に熱が付与された際に、コイル状捲縮が発現せず、糸条に伸縮性を付与することができない。
【0017】
また、ポリエステル系複合繊維における各層の割合は、粘度の異なるポリトリメチレンテレフタレートからなる複合繊維の場合、および一方成分がポリトリメチレンテレフタレート、他方成分がポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステルの場合で若干異なるが、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとからなる複合繊維の場合の重量比率は伸長特性、製糸性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の観点から(30/70)〜(70/30)の範囲であることが好ましく、(40/60)〜(60/40)の範囲であることがより好ましい。ポリトリメチレンテレフタレート層の比率が30%未満、または70%を越える場合には、伸長特性、製糸性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の面で劣り、好ましくない。
【0018】
ポリエステル系複合繊維からなる先染め糸の糸条繊度は、用途目的に応じて決めればよいが、一般的には22dtex以上940dtex以下の範囲が好ましい。また、ポリエステル系複合繊維の単糸繊度は、用途に応じて決めればよいが、一般的には0.4dtex以上25dtex以下の範囲が好ましい。
【0019】
本発明のポリエステル先染め糸は、前記したポリエステル系複合繊維から主として構成されるものであるが、所望の特性を阻害しない程度の混率であれば他の繊維を混合させてもよい。他の繊維としては、例えば、ウール、綿、麻、絹等に代表される天然繊維、ビスコースレーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維、アセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、アクリルに代表される合成繊維等である。
【0020】
本発明の先染め糸は、10%伸長時の弾性回復率が20%以上50%以下であり、好ましくは25%以上45%以下である。弾性回復率が20〜50%であることにより、適度なストレッチ性、回復性のある布帛が得られる。弾性回復率が50%を越えるとストレッチ性、回復性は良好であって、膨らみの大きい布帛となるが、ふかつき、ぼてつき感がある好ましくない風合いとなる。弾性回復率が20%未満の場合はストレッチ性に欠ける布帛になり好ましくない。
【0021】
本発明の先染め糸は、沸水収縮率が4%以下であり、さらに3%以下であることが好ましい。沸水収縮率が4%以下であれば、編織物の生機性量と仕上げ性量の変化が少ないので加工管理がしやすく、かつ寸法安定性に優れた布帛製品が得られる。
【0022】
該特性を有する先染め糸は、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート層とポリエチレンテレフタレート層とがサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型に複合されたポリエステル系複合繊維から構成されるフィラメント糸を、緊張処理し、弛緩熱処理した後、チーズ巻きし、チーズ染色することにより製造することができる。ここで、フィラメント糸を緊張処理し、弛緩熱処理し、次いでチーズ巻きすることは、例えば石川製作所(株)製のDDW装置を用いて連続的に行うことができる。
【0023】
上記複合繊維のフィラメント糸を、弛緩熱処理による捲縮顕在化の前に、緊張処理を行なうと、複合繊維のコイル捲縮の位相の揃いを崩すことができるので、残留トルクのない微細で均一な捲縮形態の捲縮糸とすることができ、そして表面品位が極めて良好な編織物が得られる。この緊張処理は、例えば、緊張率2〜5%で行うことが好ましい。
【0024】
緊張処理に続いて弛緩熱処理して捲縮を顕在化させる。この弛緩熱処理の条件は、温度150〜180℃、弛緩率50〜90%であることが好ましい。
【0025】
弛緩熱処理後にはチ−ズ巻きするか、又はカセ取りする。この際のチーズ巻きは、低テンション、低接圧で行うことが好ましい。このチーズ巻きの条件は、巻き密度を0.2g/cm3程度であることが好ましい。
【0026】
捲縮発現後にチーズ巻きやカセ取りされた糸は、その状態で糸染めされる。即ち、チーズ染色やカセ染めされる。なかでもチーズ染色が好ましい。なお、本発明の先染め糸には、製編等をした後に布帛の状態で染色してから糸条に分解したものは含まれない。
【0027】
チーズ染色の場合、染色に一般的に使用されるチーズ染色機を使用して行えばよい。染色前の精練は、繊維に付着している原糸油剤等が洗浄される通常の条件で行えばよく、精練剤存在下で50〜95℃で、5〜30分間の条件で行えばよい。
【0028】
次いで、ポリエステル系複合繊維を染色するためには、ポリトリメチレンテレフタレート繊維の染色で一般に使用される分散染料を用い、90〜135℃の染色温度で染色する方法を採用すればよい。また、糸がポリトリメチレンテレフタレート以外の繊維を含んで構成される場合には、その繊維の通常の染色条件を採用し、ポリトリメチレンテレフタレート繊維の染色の前後もしくは同時に染色すればよい。
【0029】
ふかつきやぼてつきがなく適度なストレッチ特性を有する編織物とするために、チーズやカセの状態で染色された先染め糸を、チーズやコーンにリワインドしてもよい。リワインドする方式としては、チーズやカセを回転させながらヨコ方向に解舒する方式が好ましい。これに対し、タテ方向に解舒する方式は捲縮発現による引っかかりにより解舒困難となる場合があるので好ましくない。
【0030】
本発明の先染め糸を製造するためには、上記した製法が好ましいが、緊張処理の条件、弛緩熱処理の条件、チーズワインドの条件、また、必要に応じて行われる先染め糸のリワインドの条件は、糸特性等に応じて最適化すればよい。また、本発明の先染め糸の特性を阻害しないならば、弛緩熱処理の前に適度の撚糸を施してもよい。
【0031】
本発明の先染め糸は、0.8826cN/dtexの荷重下での伸びが5〜50%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜30%である。この範囲の伸びを有すると、適度なストレッチ性を有する先染め糸となる。これに対し、その伸びが50%を越える場合には、ストレッチ性が過度となり、ふかつき、ぼてつきを有する布帛となり好ましくない。一方、その伸びが5%未満の場合にはストレッチ特性に劣るものとなり好ましくない。
【0032】
また、本発明の先染め糸は、伸縮復元率が20%以上であることが好ましく、より好ましくは25%以上である。伸縮復元率が20%未満の場合にはストレッチ回復性に劣るものになり好ましくない。
【0033】
また、本発明の先染め糸は、柔軟性、平滑性、糸巻き工程の円滑化、および製編性、製織性を向上させるため、シリコン系またはパラフィン系油剤を染色後またはコーン巻き時に付与することが好ましい。
【0034】
本発明のポリエステル系先染め糸は、先染め紡績糸等と組合せて製編織されることにより、織りや編みにより意匠性をだした布帛を製造することができる。例えば、本発明のポリエステル先染め糸を緯糸として用い、先染め紡績糸を経糸として用いて製織することにより先染め織物を製造することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中の極限粘度、沸水収縮率、伸長率、外観品位は以下の方法で測定した。
【0036】
[極限粘度(η)]
オルソクロロフェノール10mlに対し試料0.10gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて粘度を測定し、極限粘度を算出する。
[沸水収縮率(%)]
JIS L1013 化学繊維フィラメント糸試験方法7.15、1.1A法(かせ収縮率)により沸水収縮率を測定する。
【0037】
[10%伸長時の弾性回復率(%)]
先染め糸の試料の両端をチャック間距離20cmで把持し、0.08826cN/dtexの初荷重をかけて引張試験機に取り付け、引張速度20cm/分で伸長率10%となるまで伸長し、1分間放置する。その後、再び同じ速度で収縮させ、応力−歪み曲線を描く。収縮中に応力が0.8826cN/dtexになった時の伸びを残留伸び(A)とする。10%伸長時の弾性回復率を、下記式に従って求める。
10%伸長時の弾性回復率(%)=〔(10−A)/10〕×100
【0038】
[0.8826cN/dtexの荷重下での伸び(%)]
先染め糸の試料の両端をチャック間距離20cmで把持し、0.08826cN/dtexの初荷重をかけて引張試験機に取り付け、引張速度20cm/分で切断するまで伸長し、応力−歪み曲線を描かせる。この応力−歪み曲線から0.8826cN/dtex荷重時点での伸び(%)を求める。
【0039】
[伸縮復元率(%)]
先染め糸を、カセ長1mのカセに10回巻き取ってカセ取りする。これを10カセ準備する(測定n数:10)。次に、このカセをガーゼに包み、90℃で20分温水処理をし、脱水した後、24時間風乾する。次いで、このカセを、20℃の水中で1dtexあたり0.1156cNの荷重をかけて吊し、120秒後にカセ長(L0)を測定する)。次いで、このカセにかけた荷重を0.00227cN(2mg)に替えて、同様に120秒後にカセ長(L1)を測定する。
【0040】
上記測定値から、次式により伸縮復元率を求める。
伸縮復元率(%)=100×[(L0−L1)/L0]
上記測定を、各サンプル(カセ)について行なって得られた伸縮復元率(n数:10)から平均値を算出し、この平均値を伸縮復元率とする。
【0041】
[織物の評価]
経糸として、50番手の綿紡績先染糸を用い、緯糸として、各実施例や比較例で得られたポリエステル先染め糸を用いて、エアージェットルームにて通常の方法で製織を行い、経糸密度168本/吋、緯糸密度100本/吋の平組織の生機を作製する。次いで、通常の加工条件で毛焼き、糊抜き、リラックス、シルケット、仕上げセットし、シャツ地用の織物製品とする。
【0042】
得られた織物を下記の基準に従い評価し、ランク付けする。
(1)ストレッチ性
JIS L 1096B法(一般織物試験方法ー定荷重法)で織物の伸長率を測定する。伸長率が5〜15%の範囲内の場合を○、その範囲を外れる場合を×とランクする。
【0043】
(2)風合い
官能評価により、ふかつき、ぼてつき感の有無を判定し、ランク付けする。
○:ふかつき、ぼてつき感がない。
×:ふかつき、ぼてつき感がある。
【0044】
(3)表面品位
官能評価により、表面の凹凸、緯段の有無を判定し、ランク付けする。
○:凹凸、緯段がない。
×:凹凸、緯段がある。
【0045】
[実施例1]
極限粘度が1.31のポリトリメチレンテレフタレートと極限粘度が0.52のポリエチレンテレフタレートをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で24孔の複合紡糸口金よりポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率が50/50となるように複合させて吐出し、紡糸速度1200m/分で引き取り、続いてホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分で延伸して巻き取り、56dtex、24フィラメント、沸水収縮率8.7%のサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維(延伸糸)を製造した。
【0046】
該延伸糸を石川製作所社製のDDWを用いて、緊張処理、弛緩熱処理、チーズワインドを一貫工程で行ってチーズを得た。加工条件を下記に示す。
【0047】
加工速度:200m/min
緊張処理時の緊張率:−5%
弛緩熱処理時の熱処理温度:160℃、 弛緩率:+90%
チーズの染色チューブ径:58mm、 巻密度:0.20g/cm3、巻量:1kg
【0048】
得られたチーズをチーズ染色機にセットし、常法により90℃で精練した後、“Dianix Yellow”AC−E(ダイスター製の分散染料)0.3%owfを用い、120℃で20分間の条件で染色した。次いで、“ロンサイズ”K−22(一方社製のシリコン柔軟剤)4%owfを用い50℃で20分間オイリング処理した。その後、脱水、乾燥し、ヨコ取り法でパッケージ状にリワインドした。
【0049】
得られた先染め糸を緯糸に用い、経糸として50番手の綿紡績先染糸を用いて、エアージェットルームにて通常の方法で製織を行い、経糸密度168本/吋、緯糸密度100本/吋の平組織の生機を作製した。次いで、通常の加工条件で毛焼き、糊抜き、リラックス、シルケット、仕上げセットし織物製品とした。
【0050】
得られた先染め糸の物性、および織物製品の物性を表1に示す。
得られた織物製品は、適度なストレッチ性があり、ふかつきやぼてつき感がなく、かつ表面品位に優れ、シャツ地として優れたものであった。
【0051】
[比較例1]
実施例1と同じサイドバイサイド型ポリエステル複合繊維(延伸糸)に、通常のピン方式の1ヒーター仮撚り機で、下記条件でウーリー加工を行い、捲縮糸を製造した。
【0052】
加工速度:150m/min
仮撚り加工のドラフト:1.03
仮撚数:3000t/m
仮撚り加工温度:165℃
【0053】
得られたウーリー加工捲縮糸をチーズワインドし、実施例1と同条件で先染めし、製織し、仕上げ加工した。
得られた先染め糸の物性、および織物の物性を表1に示す。
得られた織物製品は緯段、凹凸が目立ち、かつ、ふかつき、ぼてつきがあり、シャツ地として適さないものであった。
【0054】
[比較例2]
極限粘度が1.31のポリトリメチレンテレフタレートを、紡糸温度260℃、紡糸速度1200m/分で溶融紡糸し、未延伸糸とした。次いで、ホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分で延伸して巻き取り、56dtex、24フィラメント、沸水収縮率9.1%の延伸糸を製造した。
【0055】
次いで、比較例1と同条件で仮撚加工してウーリー加工し、捲縮糸を製造した。
得られたウーリー加工捲縮糸をチーズワインドし、実施例1と同条件で先染めし、製織し、仕上げ加工した。
【0056】
得られた先染め糸の物性、および織物の物性を表1に示す。
得られた織物製品は表面品位は良好であるもののが、ふかつき、ぼてつきがあり、シャツ地として適さないものであった。
【0057】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明により得られる先染め糸は適度なストレチ特性があり、ふかつきやぼてつき感がなく、かつ表面品位に優れた布帛とすることができ、特にシャツ地用先染め糸として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一層がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする層であるサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型複合のポリエステル系複合繊維で構成され、10%伸長時の弾性回復率が20〜50%であり、かつ沸水収縮率が4%以下であることを特徴とするポリエステル先染め糸。
【請求項2】
ポリエステル系複合繊維が、ポリトリメチレンテレフタレート層とポリエチレンテレフタレート層とから構成される複合繊維であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル先染め糸。
【請求項3】
ポリエステル系複合繊維におけるポリトリメチレンテレフタレート層とポリエチレンテレフタレート層との複合重量比率が30/70〜70/30であることを特徴とする請求項2に記載のポリエステル先染め糸。
【請求項4】
該先染め糸の伸縮復元率が20%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル先染め糸。
【請求項5】
ポリトリメチレンテレフタレート層とポリエチレンテレフタレート層とがサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型に複合されたポリエステル系複合繊維から構成されるフィラメント糸を、緊張処理し、弛緩熱処理した後、チーズ巻きし、チーズ染色することにより請求項2記載の先染め糸を製造することを特徴とするポリエステル先染め糸の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の先染め糸を緯糸として用い、かつ、先染め紡績糸を経糸として用いて製織することを特徴とする先染め織物の製造方法。

【公開番号】特開2007−23442(P2007−23442A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209567(P2005−209567)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(502179282)オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】