説明

ポリエステル共重合体およびその製造方法

【課題】ゲル化を抑制しつつ、相反する特性である基材への密着性、および他の基材への接着性が同時に向上されたポリエステル共重合体を提供する。
【解決手段】本発明のポリエステル共重合体は、多価カルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステルポリマーを主鎖とし、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が末端に導入されたポリエステル共重合体であって、酸価が15mgKOH/g以上であり、かつ数平均分子量が7000〜90000であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂は、機械的強度、熱安定性、疎水性、耐薬品性などに優れるため、繊維、フィルムやシートなどの成形体の材料として、各種分野で広く利用されている。
【0003】
ポリエステル樹脂においては、構成成分である多価カルボン酸およびグリコールの種類の組み合わせを適宜に選択することで、種々の構造および特性を得ることが可能である。このようなポリエステル樹脂は、各種基材にコーティングされた場合の該基材との密着性に優れている。さらに、ポリエステル樹脂を基材にコーティングすることで得られた被膜は、他の基材に対する接着性にも優れている。このような優れた密着性および接着性を活かして、ポリエステル樹脂は、接着剤、コーティング剤、インキバインダーあるいは塗料などの用途において広く使用されている。なお、このようなポリエステル樹脂がコーティングされる基材として、一般に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはポリ塩化ビニル樹脂などからなるフィルムやシート、あるいはアルミニウムまたは銅などの金属箔などが用いられている。
【0004】
ポリエステル樹脂の基材への密着性を向上させるための手法として、例えば、該ポリエステル樹脂の末端基数を増加させ、ぬれ性を向上させることが知られている(特許文献1)。一方、ポリエステル樹脂の接着性を改善するために、重合度を増加させ(つまり、分子量を増加させ)ファンデルワールス力を強いものにすることが、この分野における技術常識である。
【0005】
また、ポリエステル樹脂の基材への密着性を向上させるために、解重合して末端基数を増加させることなども検討されている。しかしながら、ポリエステル樹脂を解重合させると重合度が過度に低下するため、他の基材への接着力が低下してしまうという問題がある。逆に、他の基材への接着性を向上させるためにポリエステル樹脂の重合度を増加させると、末端基数が低下し、他の基材への密着力が低下してしまう。
【0006】
つまり、ポリエステル樹脂の密着性および接着性を同時に向上させるためには、末端基数および分子量を同時に増加させることが必要である。しかしながら、上述のように、末端基数の増加および分子量の増加は相反する関係にあり、これらを同時に達成することが困難である。したがって、ポリエステル樹脂において、密着性および接着性を両立させることは非常に困難であり、両特性を同時に向上させることが強く求められている。
【0007】
そこで、ポリエステル樹脂に架橋剤を配合し鎖延長をおこなうことで、ポリエステル樹脂の末端基数および分子量のいずれをも増加させることが検討されている(特許文献2)。しかしながら、特許文献2に開示された手法においては、鎖延長させたポリエステル樹脂がゲル化しやすいという問題がある。さらに、安定的な生産をおこなうことが不可能であったり、溶剤被膜とした場合に平滑性に劣るものとなったりするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−182983号公報
【特許文献2】特開2003−213201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、ゲル化を抑制しつつ、相反する特性である基材への密着性、および他の基材への接着性が同時に向上されたポリエステル共重合体を提供することを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)多価カルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステルポリマーを主鎖とし、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が末端に導入されたポリエステル共重合体であって、酸価が15mgKOH/g以上であり、かつ数平均分子量が7000〜90000であることを特徴とするポリエステル共重合体。
(2)カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物の含有量が、ポリエステル共重合体に含まれる多価カルボン酸成分の全量に対して1〜18mol%であることを特徴とする(1)のポリエステル共重合体。
(3)カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が、2個の酸無水物基を有する化合物において1個の酸無水物基が開環したものであることを特徴とする(1)または(2)のポリエステル共重合体。
(4)カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が、ピロメリット酸二無水物の1個の酸無水物基が開環したものであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかのポリエステル共重合体。
(5)ガラス転移点が−20〜75℃であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかのポリエステル共重合体。
(6)(1)〜(5)のいずれかのポリエステル共重合体を製造する方法であって、多価カルボン酸およびグリコールを重合してポリエステル樹脂を得た後、該ポリエステル樹脂の末端水酸基量を基準として1.0〜3.0当量の2個の酸無水物基を有する化合物を添加し、ポリエステル樹脂の末端に付加反応させることにより、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物を導入することを特徴とするポリエステル共重合体の製造方法。
(7)2個の酸無水物基を有する化合物としてピロメリット酸二無水物を用いることを特徴とする(6)のポリエステル共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリエステル共重合体は、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が末端に導入されているため、好ましい範囲の分子量および高い酸価を有するものとなる。その結果、ゲル化を抑制しつつ、相反する特性である接着性および密着性が同時に向上されているポリエステル共重合体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル共重合体は、多価カルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステルポリマーを主鎖とし、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が末端に導入されたものである。
【0013】
ポリエステルポリマーに含まれる多価カルボン酸成分は、特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ジカルボキシビフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ヒドロキシ-イソフタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、1,3,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、シュウ酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などや、またはその無水物が挙げられる。なかでも、耐久性などの観点から、テレフタル酸、イソフタル酸を含有することが好ましい。
【0014】
ポリエステルポリマーに含まれるグリコール成分としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコール、ダイマージオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ブチルエチルプロパンジオール、1,2−プロパンジオールなどが挙げられる。なかでも、溶解性の観点から、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオールが好ましい。
【0015】
主鎖であるポリエステルポリマーに含まれるモノマーとして、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、多価カルボン酸成分およびグリコール成分以外のモノマー成分(他のモノマー成分)が用いられてもよい。なお、ポリエステルポリマーにおいて、他のモノマー成分の共重合割合は、ポリエステルポリマーに含まれる全モノマー成分に対して50モル%未満であることが好ましい。
【0016】
他のモノマー成分として、例えば、テトラヒドロフタル酸、乳酸、オキシラン、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、4−(β−ヒドロキシ)エトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸;β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどの脂肪族ラクトンなどが挙げられる。
【0017】
また、他のモノマー成分として、モノカルボン酸、モノアルコールなどが用いられてもよい。モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸などが挙げられる。モノアルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0018】
本発明のポリエステル共重合体の数平均分子量は、7000〜90000であることが必要であり、10000〜50000であることが好ましい。数平均分子量が7000未満であると、他の基材への接着性に劣るものとなり、加えて該ポリエステル共重合体から被膜を得た場合には該被膜の強度が低下する。一方、90000を超えると、ゲル化が発現し、取扱性に劣るものとなったり、本発明のポリエステル共重合体から得られた被膜の表面における平滑性に劣るものとなったり、接着剤などとする際に溶媒に対し溶けづらくなったりするという問題が起こる。
【0019】
本発明のポリエステル共重合体の数平均分子量を、上記の範囲に制御することについて以下に述べる。
本発明に用いられるポリエステル共重合体は、上述のように、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が末端に導入されているため、数平均分子量を90000以下とすることが可能となる。このカルボキシル基は反応性が低いため、他のポリエステルポリマーへの反応が発現しない。その結果、数平均分子量が過度に増大することを抑制することができ、つまり、90000以下とすることができる。
【0020】
一方、本発明のポリエステル共重合体の数平均分子量を7000以上とするためには、本発明のポリエステル共重合体を得る際に使用される2個の酸無水物基を有する化合物の量を、好適な範囲に制御するという方法が好ましく用いられる。該方法の詳細については後述する。
【0021】
本発明のポリエステル共重合体の酸価は、15mgKOH/g以上であることが必要であり、15〜50mgKOH/gであることが好ましく、17〜47mgKOH/gであることがより好ましく、19〜45mgKOH/gであることがさらに好ましい。酸価が15mgKOH/g未満であると、末端基濃度が過少となるため、得られるポリエステル共重合体は、基材への密着性に劣るものとなる。また、酸価が50mgKOH/gを超えると重合度が低くなり過ぎ、得られるポリエステル共重合体は、他の基材への接着性に劣るものとなる場合がある。
【0022】
本発明のポリエステル共重合体は、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が末端に導入されているため、酸価を高くすることができ、つまり15mgKOH/g以上とすることができる。なお、酸価を50mgKOH/g以下とするためには、高分子量のポリエステル共重合体に対し付加反応させることで制御できる。
【0023】
本発明のポリエステル共重合体において、ポリエステルポリマーの末端に対してカルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が導入されるためには、予め調製されたポリエステル樹脂に対し、2個の酸無水物基を有する化合物を添加することが好ましい。つまり該化合物の2個の酸無水物基の内の1個の酸無水物基を、ポリエステル樹脂のヒドロキシル基末端に付加反応させることによって、末端にカルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が導入されたポリエステル共重合体を得ることができる。
【0024】
2個の酸無水物基を有する化合物としては、例えば、(i)芳香族系の2個の酸無水物基を有する化合物、(ii)脂環族系の2個の酸無水物基を有する化合物、(iii)脂肪族系の2個の酸無水物を有する化合物などが挙げられる。
【0025】
上記の(i)としては、無水ピロメリット酸(ピロメリット酸二無水物)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0026】
上記(i)のなかでも、主鎖となるポリエステルポリマーの立体障害を抑制することができ、末端への付加反応が進行しやすくなる観点から、分子構造の対称性に優れる化合物が好ましい。更に、酸無水物基をポリエステルポリマーに付加反応させた場合の、他の酸無水物基への連鎖的な付加反応をより効果的に抑制しうる点で、下記式(I)で表される構造を有する無水ピロメリット酸が最も好ましい。
【化1】

【0027】
そして、上記式(I)で表される無水ピロメリット酸において、2個の酸無水物基の内の1個の酸無水物基を、ポリエステル樹脂のヒドロキシル基末端に付加反応させることによって、酸無水物基が開環し、下記式(II)で表される基となり、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が末端に導入されたポリエステル共重合体が得られる。
【化2】

【0028】
上記式(I)に示されるように、無水ピロメリット酸においては、一つの酸無水物において隣り合う酸無水物基の距離が近いという構造を有する。そのため、上記式(II)で示された酸無水物基が主鎖であるポリエステルポリマーに付加された後に、他の末端水酸基へのポリエステルポリマーの付加反応が抑制され、分子量の過度な増大やゲル化を効率よく抑制することができるという利点がある。
【0029】
なお、無水ピロメリット酸は、市販品を好適に使用することができる。
【0030】
上記(ii)としては、単環式テトラカルボン酸二無水物、多脂環式テトラカルボン酸二無水物、スピロ環構造を有するテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0031】
単環式テトラカルボン酸二無水物としては、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−cis−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−cis−1,2−trans−3,4−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,5−シクロオクタジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0032】
多脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,6−トリカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,7−テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ−7−エン−3,4,7,8−テトラカルボン酸二無水物、9−オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸二無水物、9,14−ジオキソペンタシクロ[8.2.11,11.14,7.02,10.03,8]テトラデカン−5,6,12,14−テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,5,8,9−テトラカルボン酸二無水物、8−カルボキシメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,5,9−トリカルボン酸二無水物、4−カルボキシメチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−5,9,10−トリカルボン酸二無水物、ペンタシクロ[9.2.1.18,11.05,13.07,12]ペンタデカン−2,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0033】
スピロ環構造を有するテトラカルボン酸二無水物としては、メタンテトラ酢酸二無水物、2,8−ジオキサスピロ[4.5]デカン−1,3,7,9−テロトン、rel−[1S,5R,6R]−3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)などが挙げられる。
【0034】
上記の(ii)のなかでも、一つの酸無水物において両端に位置する酸無水物基の距離が近いという点で、下記式(III)で表されるシクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、下記式(IV)で表されるシクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、または下記式(V)であらわされるシクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【化3】

【化4】

【化5】

【0035】
なお、一つの酸無水物において両端に位置する酸無水物基の距離が近いことで、脂肪族炭化水素基であるR部の結合が強固となり、分子の捻りや切断の発現が少なくなるという利点がある。そのため、本発明の共重合ポリエステルを作製する上で、好ましく用いることができる。もし、R部が切断した場合には、末端が単なるアルキル基となってしまい、酸価の付与には貢献しない。
【0036】
そして、上記式(III)〜(V)で表される化合物において、2個の酸無水物基の内の1個の酸無水物基を、ポリエステル樹脂のヒドロキシル基末端に付加反応させることによって、酸無水物基が開環し、それぞれ、下記式(VI)〜(VIII)で表される基となり、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が末端に導入されたポリエステル共重合体が得られる。
【化6】

【化7】

【化8】

【0037】
なお、上記式(III)〜(V)で表される化合物としては、市販品を好適に使用することができ、例えば、東京化成工業社製の試薬にて入手が可能である。
【0038】
上記(iii)としては、例えば、下記式(IX)で表される脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【化9】

上記式(IX)中、Rは脂肪族炭化水素基を示す。Rとしては、一つの酸無水物において両端に位置する酸無水物基の距離が近いという点で、炭素数が2〜6の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0039】
このような脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、一つの酸無水物において両端に位置する酸無水物基の距離が近いという点で、下記式(X)で示されるエタン−1,1,2,2−テトラカルボン酸二無水物や、下記式(XI)で示されるブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【化10】

【化11】

【0040】
そして、上記式(X)および(XI)で示される化合物において、2個の酸無水物基の内の1個の酸無水物基を、ポリエステル樹脂のヒドロキシル基末端に付加反応させることによって、酸無水物基が開環し、それぞれ、下記式(XII)〜(XIII)で表される基となり、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が末端に導入されたポリエステル共重合体が得られる。
【化12】

【化13】

【0041】
なお、上記式(X)で示されるエタン−1,1,2,2−テトラカルボン酸二無水物は、以下のようにして合成することができる。つまり、マロン酸ジエチルをナトリウムエチラート溶液中に加え、さらに臭素を滴下して攪拌する。そしてこの反応溶液を水中に投入し、白色結晶を生じさせ、該白色結晶を水酸化カリウム水溶液に溶解させて水を除去することで、エタン−1,1,2,2−テトラカルボン酸テトラカリウム塩を得る。そして、これに塩酸を加え、塩化アセチルのエーテル溶液中で還流することで、エタン−1,1,2,2−テトラカルボン酸二無水物を得ることができる。
【0042】
(XI)で示されるブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物は、以下のようにして合成することができる。つまり、無水マレイン酸のベンゼン溶液中にブタジエンを投入し、Diels−Alder反応をおこない、白色針状結晶を生じさせる。そしてこれを硝酸酸化して、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸を得、さらに無水酢酸中で還流することで、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物を得ることができる。
【0043】
本発明のポリエステル共重合体において、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物の含有量は、ポリエステル共重合体に含まれる多価カルボン酸成分の全量に対して、1〜18mol%が好ましく、1〜12mol%がより好ましい。含有量が1mol%未満であると、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物がポリエステルポリマーに対して付加される際にゲル化が進む場合がある。一方、含有量が18mol%を超えると、本発明のポリエステル共重合体から被膜を得た場合に酸無水物基が余剰となり、該余剰酸無水物によって、ポリエステル共重合体自体が可塑化され、そのようなポリエステル共重合体を用いた被膜は耐久性が劣る場合がある。
【0044】
本発明のポリエステル共重合体のガラス転移点は、−20〜75℃であることが好ましく、0〜65℃であることがより好ましい。ガラス転移点が−20℃未満であると、タック性が強くなり過ぎ、得られたポリエステル共重合体を反応槽から払い出すことが困難となる場合がある。また、75℃を超えると、得られるポリエステル共重合体の溶融粘度が高くなり過ぎるため、重合温度を高温とする必要があり、その結果、ポリエステル共重合体が熱分解や熱劣化し接着性に劣るものとなったり、必要な数平均分子量を有するポリエステル共重合体が得られなかったりする場合がある。
【0045】
また、本発明のポリエステル共重合体は、結晶性であってもよいし、非晶性であってもよい。
【0046】
次に、本発明のポリエステル共重合体の製造方法について説明する。
まず、多価カルボン酸およびグリコールなどのモノマーの組み合わせを適宜選択し、これらを公知の重合法で重合して、ポリエステル樹脂を得る。そして、該ポリエステル樹脂に、その末端水酸基量を基準として、1.0〜3.0当量の2個の酸無水物基を有する化合物を付加反応させ、本発明のポリエステル共重合体を製造することができる。
【0047】
一般的には、2個の酸無水物基を有する化合物を添加するに際には、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂1モルに対して、該化合物1.0当量を用いる。本発明においては、2個の酸無水物基を有する化合物を従来よりも多く用いるものであり、つまり、ポリエステル樹脂1モル(ヒドロキシル基2モル)に対して、2.0〜6.0当量で用いることが好ましい。これをヒドロキシル基1モルに換算すると、1.0〜3.0当量で用いることが好ましく、1.0〜2.0当量で用いることがより好ましく、1.0〜1.5当量で用いることがさらに好ましい。これにより、ポリエステルポリマーへのカルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物の付加反応を十分に進行させ、高分子量かつ高酸価のポリエステル共重合体を得ることができる。
【0048】
2個の酸無水物基を有する化合物の使用量が、1.0当量未満であると、主鎖となるポリエステル樹脂における末端のヒドロキシル基が、反応せずに一部残ってしまう。その結果、未反応のままのヒドロキシル基が他の開環していない酸無水物基と反応するため、ポリエステルポリマー同士が過度に反応し、ゲル化を引き起こしてしまう。
【0049】
一方、2個の酸無水物基を有する化合物の使用量が3.0当量を超えると、ポリエステル樹脂への付加反応に用いられない酸無水物基(つまり、未反応のままの酸無水物基)が余剰に存在する。そのため、このようなポリエステル共重合体から得られた被膜においては、余剰となった未反応の該化合物が析出し、該被膜の外観品位が低下するばかりでなく、他の基材への接着性が低下してしまう場合がある。未反応の該化合物が析出する場合は、該被膜に対して、適宜の溶媒等を用いて洗浄をほどこしてもよい。
【0050】
ポリエステル樹脂を得るためには、以下のような方法を用いることができる。つまり、原料モノマーを反応缶に投入した後、エステル化反応をおこなった後、公知の方法で所望の分子量に達するまで重縮合させることにより、ポリエステル樹脂を製造することができる。エステル化反応は、例えば、180℃以上の温度において4時間以上おこなわれる。
【0051】
重縮合反応は、一般的には、130Pa以下の減圧下、220〜280℃の温度下で、重合触媒を用いておこなわれる。重合触媒は、テトラブチルチタネ−トなどのチタン化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛などの金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズなどの有機スズ化合物などが挙げられる。なお、重合触媒の使用量は、少量では反応が遅く、過多では得られるポリエステル共重合体の色調が低下するため、酸成分1モルに対し、0.1〜20×10−4モルであることが好ましい。
【0052】
そして、このようにして得られたポリエステル樹脂に、上述の2個の酸無水物基を有する化合物を添加し、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物を末端に導入させることで、本発明のポリエステル共重合体を得ることができる。
【0053】
上述のような本発明のポリエステル共重合体は、基材への密着性、および他の基材への接着性に優れているため、接着剤やコーティング剤などの用途において、特に好適に用いられる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0055】
実施例および比較例で得られたポリエステル共重合体の評価に用いた測定法は次の通りである。
(1)酸価
末端の酸無水物基が開環している状態における酸価を測定した。得られたポリエステル共重合体を溶媒(ジメチルスルホキシド)で洗浄後、0.5g精秤し、50mlのジオキサン水溶液[(ジオキサン)/(水)=9/1](体積比)に対して、150℃で40分間溶解をおこなった。このとき、末端の酸無水物基が開環すると推測される。そして、室温まで冷却した後、クレゾールレッドを指示薬として0.1モル/Lの水酸化カリウムメタノール溶液で滴定をおこない、中和に消費されたKOHのmg数を、ポリエステル樹脂のg数で割った値を酸価として求めた。
【0056】
(2)重量平均分子量および数平均分子量
送液ユニット(島津製作所社製、「LC−10ADvp型」)および紫外−可視分光光度計(島津製作所社製、「SPD−6AV型」)を用い、GPC分析により求めた。なお、分析条件は検出波長が254nmであり、溶媒としてテトラヒドロフランを用い、ポリスチレン換算により求めた。
【0057】
(3)ポリエステル共重合体の組成
NMR測定装置(日本電子社製、「JNM−LA400型」)を用い、1H−NMR測定を行って、それぞれの共重合成分のピーク強度から組成を求めた。なお、測定溶媒としては、重水素化トリフルオロ酢酸を用いた。
【0058】
(4)ガラス転移点(Tg)
JIS−K 7121に従って、入力補償型示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、「ダイヤモンドDSC」)を用い、20℃から120℃まで10℃/分で昇温させたチャートから、ガラス転移点(Tg)を読み取った。
【0059】
(5)被膜としたときの密着性
ポリエステル共重合体を、固形分濃度が30質量%になるように、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤[(トルエン)/(メチルエチルケトン)=8/2、質量比]に溶解させて、溶解液を得た。その溶解液を、卓上型コーティング装置(安田精機社製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装置)を用いて銅板に塗布し、100℃で30秒間熱処理することで、乾燥時の厚みが25μmである被膜が形成された積層板を作製した。この積層板の被膜面に、1mmであるマス目が100個存在するように碁盤目のクロスカットをほどこした。そして、クロスカットがほどこされた表面上に、18mm幅のセロハンテープを貼り付け、すぐに180°の剥離角度で急激に剥離させた。この剥がした剥離面を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:被膜が全く剥がれなかった。
△:被膜の一部が剥がれた。
×:被膜の全て剥がれた。
【0060】
(6)被膜としたときの接着性
ポリエステル共重合体を、固形分濃度が30質量%になるように、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤[(トルエン)/(メチルエチルケトン)=8/2、質量比]に溶解させて、溶解液を得た。その溶解液を、卓上型コーティング装置(安田精機社製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装置)を用い、二軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製、厚さ:38μm)に塗布した。次いで、100℃で30秒間熱処理し、乾燥肉厚が25μmである被膜が形成された積層体を作製した。この積層体を、エアー式プレス機(林機械製作所社製)を用い、100℃かつ0.2MPa/cmのプレス圧で、銅板(幅:15mm)に10秒間接着させ、サンプルとした。このサンプルについて、引張試験機(インテスコ社製、「インテスコ精密万能材料試験機2020型」)を用い、引張速度200mm/分、引張角度180度の条件で、ポリエステル共重合体の被膜と銅板間の剥離強度を測定した。測定は5回おこない、その平均値を剥離強度とした。下記の基準で評価した。
◎:剥離強度が15N/15mm以上である。
○:剥離強度が12N/15mm以上15N/15mm未満である。
△:剥離強度が8N/15mm以上12N/15mm未満である。
×:剥離強度が0N/15mm以上8N/15mm未満である。
【0061】
(7)溶解性(ゲル化抑制の指標)
ポリエステル共重合体を、固形分濃度が30質量%になるように、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤[(トルエン)/(メチルエチルケトン)=8/2、質量比)に溶解させる際の状況を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:ポリエステル樹脂の80%以上が溶解した。
△:ポリエステル樹脂の少なくとも一部が溶解した。
×:ポリエステル樹脂が全く溶解しなかった。
○または△であるものは、実用上の溶解性を備えていると判断し、×であるものは、ゲル化が顕著で実用性を有さないと判断した。
【0062】
(8)総合評価
○:上記の(5)〜(7)の評価結果において×の評価が無い。
×:上記の(5)〜(7)の評価結果のうち、1以上の×の評価がある。
【0063】
(ポリエステル樹脂の調製)
調製例1
テレフタル酸57g(31mol%)、イソフタル酸64g(35mol%)、セバシン酸76g(34mol%)、エチレングリコール46g(67mol%)、ネオペンチルグリコール78g(68mol%)、および重合触媒としてテトラブチルチタネート0.1gを反応器に仕込み、系内を窒素に置換した。そして、これらの原料を1000rpmで撹拌しながら、反応器を245℃で加熱し、溶融させた。反応器内温度が245℃に到達してから、3時間エステル化反応を進行させた。3時間経過後、系内の温度を240℃にし、系内を減圧した。系内が高真空(圧力:0.1〜10−5Pa)に到達してから、さらに3時間重合反応を行って、ポリエステル樹脂1を得た。
【0064】
調製例2〜13
使用するモノマーの種類とその組成および重合反応時間を表1のように変更した以外は、調製例1と同様にし、ポリエステル樹脂2〜13を得た。
調製例1〜13で得られたポリエステル樹脂における、モノマーの仕込み組成、重合反応時間を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
なお、表1および後述の表2中における略語は、それぞれ以下のものを示す。
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
SEA:セバシン酸
ADA:アジピン酸
EG:エチレングリコール
PG:1,2−プロピレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
BAEO:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体
PTMG1000:ポリテトラメチレングリコール(分子量:1000)
PMDA:無水ピロメリット酸
III:上記式(III)で示される1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
IV:上記式(IV)で示される1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物
V:上記式(V)で示される1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
【0067】
実施例1
反応系内に窒素を封入して常圧とし、ポリエステル樹脂1と無水ピロメリット酸5g(2.4mol%)を添加した。次いで、系内の温度を240℃とし、さらに1時間反応を行い、ポリエステル共重合体を得た。
【0068】
実施例2〜21および比較例1〜3
使用するポリエステル樹脂の種類と、無水ピロメリット酸の添加量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2〜21および比較例1〜3のポリエステル共重合体を得た。
【0069】
実施例1〜21および比較例1〜3で得られたポリエステル共重合体の組成、および評価結果を表2、表3に示す。
【0070】
【表2】

【表3】

【0071】
表2および表3から明らかなように、実施例1〜21で得られたポリエステル共重合体は、酸価が15mgKOH/g以上であり、数平均分子量が7000〜90000であった。そのため、密着性および接着性に優れ、かつゲル化が抑制されており溶解性においても優れていた。
【0072】
実施例8、20および21で得られたポリエステル共重合体は、2個の酸無水物基を有する化合物の使用量が3.0当量を超えたため、接着性に改善の余地を残すものであったが、十分に実用に耐えうるものであった。
【0073】
実施例14で得られたポリエステル共重合体は、Tgが、本発明の好ましい範囲を超えて高かったため、接着性に改善の余地を残すものであったが、十分に実用に耐えうるものであった。
【0074】
実施例18で得られたポリエステル共重合体は、2個の酸無水物基を有する化合物の使用量が1.0当量未満であったためゲル化が発生したが、実用に耐えうるものであった。
【0075】
比較例1で得られたポリエステル共重合体は、酸価が15mgKOH/g未満であったため、密着性に劣るものとなった。
【0076】
比較例2で得られたポリエステル共重合体は、数平均分子量が7000未満であったため、接着性にも劣るものであった。
【0077】
比較例3で得られたポリエステル共重合体は、酸価が15mgKOH/g未満であり、かつ、数平均分子量が高過ぎるものであったため、ゲル化が発生した。その結果、溶剤に不溶のものとなり、密着性試験および接着性試験を行うことができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価カルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステルポリマーを主鎖とし、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が末端に導入されたポリエステル共重合体であって、酸価が15mgKOH/g以上であり、かつ数平均分子量が7000〜90000であることを特徴とするポリエステル共重合体。
【請求項2】
カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物の含有量が、ポリエステル共重合体に含まれる多価カルボン酸成分の全量に対して1〜18mol%であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル共重合体。
【請求項3】
カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が、2個の酸無水物基を有する化合物において1個の酸無水物基が開環したものであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル共重合体。
【請求項4】
カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物が、ピロメリット酸二無水物の1個の酸無水物基が開環したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル共重合体。
【請求項5】
ガラス転移点が−20〜75℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル共重合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル共重合体を製造する方法であって、多価カルボン酸およびグリコールを重合してポリエステル樹脂を得た後、該ポリエステル樹脂の末端水酸基量を基準として1.0〜3.0当量の2個の酸無水物基を有する化合物を添加し、ポリエステル樹脂の末端に付加反応させることにより、カルボキシル基を1個と酸無水物基を1個有する化合物を導入することを特徴とするポリエステル共重合体の製造方法。
【請求項7】
2個の酸無水物基を有する化合物としてピロメリット酸二無水物を用いることを特徴とする請求項6に記載のポリエステル共重合体の製造方法。



【公開番号】特開2013−75965(P2013−75965A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215771(P2011−215771)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】