説明

ポリエステル分散剤、およびそれを用いた顔料組成物

【課題】
低使用量で分散性、流動性、および保存安定性に優れる顔料分散体を得るためのポリエステル分散剤の提供。特に、カラーフィルター用レジストインキ、印刷インキ、およびインキジェットインキ等、後工程で耐熱性が要求される用途に対する、塗膜の重量損失およびコントラストの低下が少ない顔料分散体の提供の提供。
【解決手段】
ポリオール(a)の水酸基と、ポリカルボン酸無水物(b)の酸無水物基とを反応させてなる、ポリオール部位(A)とポリカルボン酸部位(B)とを交互に有するポリエステル分散剤であり、ポリオール部位(A)の一部又は全部が、S原子を介して、エチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合してなるガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部位(C)を有するポリエステル分散剤によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル分散剤に関し、さらに詳しくは、塗料および着色樹脂組成物などの分野に適する、非集合性、流動性、保存安定性に優れた分散体を製造することのできるポリエステル分散剤、およびそれを用いた顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インキ等を製造する場合、顔料を安定に高濃度で分散することが難しく、製造工程や製品そのものに対して種々の問題を引き起こすことが知られている。例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は往々にして高粘度を示し、製品の分散機からの取り出しや輸送が困難となるばかりでなく、悪い場合は保存中にゲル化を起こし、使用困難となることさえある。さらに展色物の表面に関しては光沢の低下、レベリング不良等の状態不良を生じる。また、異種の顔料を混合して使用する場合、凝集による色別れや、沈降などの現象により展色物に色むらや著しい着色力の低下が現れることがある。
【0003】
そこで一般的には分散状態を良好に保つために分散剤が利用されている。分散剤は顔料に吸着する部位と、分散媒である溶剤に親和性の高い部位との構造を持ち合わせ、この2つの機能の部位のバランスで分散剤の性能は決まる。分散剤は被分散物である顔料の表面状態に合わせ種々のものが使用されているが、塩基性に偏った表面を有する顔料には酸性の分散剤が使用されるのが一般的である。この場合、酸性官能基が顔料の吸着部位となる。酸性の官能基としてカルボン酸を有する分散剤は、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4などに記載されている。
【0004】
しかし、これらはある程度の分散能力は持ち合わせるが、低粘度で安定な分散体をつくるには使用量を多くする必要があった。しかし、使用量を多くすることは、インキ、塗料等への展開を考える上で、塗膜の耐性が落ちる場合があるなど好ましいものではなかった。
【特許文献1】特開昭61−61623号公報
【特許文献2】特開平1−141968号公報
【特許文献3】特開平2−219866号公報
【特許文献4】特開平11−349842号公報 また、カラーフィルター用着色組成物としても、分散剤を用いた顔料分散体が使用されている。近年、カラーフィルター用着色組成物として、高コントラストが要求されており、このためには粒度の細かい顔料を分散する必要がある。そのため、安定な分散体を得るためには、分散剤を使用することが重要である。
【0005】
しかしながら、カラーフィルターは製造工程で高温による加熱工程を何度も経ることになる。一般に分散剤は耐熱性が乏しく、カラーフィルター用着色組成物がこれらの加熱工程を経た後のコントラストは、加熱前に比べ、大きく低下することもしばしばあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低使用量で分散性、流動性、保存安定性に優れる顔料分散体を得るためのポリエステル分散剤の提供を目的とする。さらに本発明は、オフセットインキ、グラビアインキ、カラーフィルター用レジストインキおよびインキジェットインキ、塗料、着色樹脂組成物などに適する、非集合性、および流動性に優れた分散性や安定性もたらし、加熱する工程を経ても優れた耐熱性を発現するポリエステル分散剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、ポリオール(a)の水酸基と、ポリカルボン酸無水物(b)の酸無水物基を反応させてなる、ポリオール部位(A)とポリカルボン酸部位(B)とを交互に有するポリエステル分散剤において、ポリオール部位(A)の一部又は全部が、S原子を介して、エチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合してなるガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部位(C)を有するポリエステル分散剤により解決される。
【0008】
また、前記課題は、エチレン性不飽和単量体(c)を、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(a1)の存在下、ラジカル重合してなる片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a2)を少なくとも含むポリオール(a3)中の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)を少なくとも含むポリカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基とを反応させてなるポリエステル分散剤であり、エチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合してなるビニル重合体部位(C)のガラス転移温度が50℃以上である
ポリエステル分散剤により解決される。
【0009】
さらに、前記課題は、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)を少なくとも含むポリオール(a4)中の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)を少なくとも含むポリカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基とを、反応させてなるポリエステル(D)の存在下、エチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合してなるポリエステル分散剤であり、エチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合してなるビニル重合体部位(C)のガラス転移温度が50℃以上であるポリエステル分散剤によっても解決される。
【0010】
本発明によるポリエステル分散剤の好ましい様態においては、重量平均分子量が、2,000〜25,000であり、かつ、酸価が5〜200mgKOH/gである。
【0011】
また、本発明によるポリエステル分散剤のより好ましい様態においては、テトラカルボン酸二無水物(b1)が、下記一般式(1)または一般式(2)で表される。
【0012】
一般式(1):
【0013】
【化1】

[一般式(1)中、kは1または2である。]
一般式(2):
【0014】
【化2】

[一般式(2)中、Q1は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO−、−SO2−、−C(CF32−、一般式(3):
【0015】
【化3】

で表される基、または一般式(4):
【0016】
【化4】

で表される基である。]
また、本発明によるポリエステル分散剤のより好ましい様態においては、エチレン性不飽和単量体(a1)をラジカル重合してなるビニル重合体部位(C)の重量平均分子量は、1000〜10000である。
【0017】
また、本発明によるポリエステル分散剤のより好ましい様態においては、エチレン性不飽和単量体(a1)が、下記一般式(5)で表わされる単量体を含む。
【0018】
一般式(5):
【0019】
【化5】


[一般式(5)中、R2は、水素または炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状の化合物残基である。]
また、顔料と、前記ポリエステル分散剤とを含有してなる顔料組成物にも関する。
【0020】
さらに、塩基性置換基を有する分散剤として、塩基性置換基を有する色素顔料誘導体、塩基性置換基を有するアントラキノン誘導体、塩基性置換基を有するアクリドン誘導体、および塩基性置換基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種類を含有してなる前記顔料組成物にも関する。
【0021】
また、前記顔料組成物をワニスに分散させてなる顔料分散体にも関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のポリエステル分散剤を使用することにより従来得られなかった分散性、流動性、保存安定性を有する顔料組成物を提供できた。さらに、オフセットインキ、グラビアインキ、カラーフィルター用レジストインキおよびインキジェットインキ、塗料、着色樹脂組成物などに適する、非集合性、流動性に優れた分散性や安定性をもち、高い貯蔵安定性および高い経時安定性を有する顔料分散体を提供できた。また、カラーフィルター用レジストインキおよびインキジェットインキにおいて、加熱する工程を経てもコントラストの低下が少ない顔料分散体を提供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
まず、本発明のポリエステル分散剤について説明する。
【0024】
一般に、顔料分散剤は顔料に吸着する部位と、顔料担体や分散媒である溶剤に親和性の高い部位との構造を持ち合わせ、この2つの部位のバランスで分散剤の性能が決まる。つまり、分散性を発現させるためには、分散剤の顔料に吸着する性能と分散媒である溶剤への親和性がともに非常に重要である。
【0025】
本発明のポリエステル分散剤は、ポリオール(a)の水酸基と、ポリカルボン酸無水物(b)の酸無水物基を反応させてなる、ポリオール部位(A)とポリカルボン酸部位(B)tpを交互に有するポリエステル分散剤でにおいて、ポリオール部位(A)の一部又は全部が、S原子を介して、エチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合してなるガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(C)を有する。
【0026】
本発明のポリエステル分散剤は、ガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部位(C)を形成するエチレン性不飽和単量体(c)を、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(a1)の存在下、ラジカル重合してなる片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a2)を少なくとも含むポリオール(a3)中の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)を少なくとも含むポリカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基とを反応させることによって得られる。
【0027】
また、本発明のポリエステル分散剤は、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)を少なくとも含むポリオール(a4)中の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)を少なくとも含むポリカルボン酸化合物(b)中の酸無水物基とを反応させてなるポリエステル(D)の存在下、ガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部位(C)を形成するエチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合することによっても得られる。
【0028】
主鎖のポリカルボン酸部位(B)が顔料吸着基として、側鎖のガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(C)が顔料担体親和基として、作用する。
【0029】
まず、本発明のポリエステル分散剤の各構成要素について説明する。
〔エチレン性不飽和単量体(c)〕
エチレン性不飽和単量体(c)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類、及びこれらの混合物があげられる。
【0030】
また、上記アクリル単量体と併用できる単量体として、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類、およびこれらの混合物があげられる。
【0031】
また、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を併用することもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などから1種または2種以上を選択することができる。
【0032】
これらのエチレン性不飽和単量体は、その単独重合体のガラス転移温度(以下Tgと略記する。)が、必ずしも50℃以上のものばかりではなく、必要に応じて、単独重合体のTgが高い単量体と単独重合体のTgが低い単量体を共重合することによって、本発明のポリエステル分散体にTgが50℃以上のビニル重合体部位(C)を形成することができる。
【0033】
本発明のポリエステル分散剤の一分子には、このTgが50℃以上のビニル重合体部位(C)が多数存在し、顔料担体および溶剤への親和性部位として機能する。このビニル重合体部位が50℃未満では、高温時における顔料の凝集や結晶化を抑えることができず、加熱工程によりコントラスト比が低下する。200℃以上の加熱工程があるカラーフィルタ等のエレクトロニクス分野での使用を考えると、ビニル重合体部位のTgは、70℃以上がより好ましい。ビニル重合体部位(C)のTgの上限は特にないが、150℃を超えると、実用上、加工性や造膜性に問題を生じる場合があるので、150℃未満が好ましい。
【0034】
本発明で言うビニル重合体部位(C)のTg(ガラス転移温度)とは、共重合するエチレン性不飽和単量体(c)それぞれの単独重合体のTgから、下記のFoxの式で算出した値を示している。
【0035】
Foxの式
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
W1からWnは、使用している単量体の重量分率を示し、Tg1からTgnは、単量体の単独重合体のガラス転移温度(単位は絶対温度「K」)を示す。
【0036】
算出に使用する主な単量体の単独重合体のTg(ガラス転移温度)を下記に例示する。
【0037】
エチルアクリレート:−22℃(251K)
ブチルアクリレート :−45℃ (228K)
ベンジルメタクリレート:54℃(327K)
アクリル酸: 105℃ (378K)
メタクリル酸:228℃(501K)
メチルメタクリレート :105℃ (378K)
スチレン:100℃(373K)
例えば、上記方法で計算を行うとメチルメタクリレート90重量部、エチルアクリレート10重量部を用いて合成したエチレン性不飽和単量体をラジカル重合してなるビニル重合体部位のガラス転移温度は86.8℃となる。
【0038】
従って、エチレン性不飽和単量体(c)とは、Foxの式を用いて算出した共重合体のTgが50℃以上となるエチレン性不飽和単量体の混合物と言い換えることができる。
【0039】
特に、ガラス転移温度(以下Tgと略記する。)を高くするためには、単独重合体のTgが高いエチレン性不飽和単量体を共重合組成に含有することが必要である。前記エチレン性不飽和単量体の中でも以下のものは、Tgが高く、ポリエステル分散剤のビニル重合体部位のTgを高くするには効果的である。
【0040】
単独重合体のTgが比較的高い単量体を列記する。
【0041】
メタクリル酸メチル:105℃(378K)
t−ブチルメタクリレート:107℃(380K)
メタクリル酸:228℃(501K)
アクリル酸:105℃(378K)
イソボルニルアクリレート:94℃(367K)
イソボルニルメタクリレート:180℃(453K)
ジシクロペンタニルアクリレート:120℃(393K)
ジシクロペンタニルメタクリレート:175℃(448K)
アダマンチルアクリレート:153℃(426K)
アダマンチルメタクリレート:250℃(523K)
さらに本発明においては、上記に例示したエチレン性不飽和単量体の中でも、顔料分散性の観点から、下記一般式(5)で表わされる単量体を使用できる。下記一般式(5)で表される単量体の使用量は、単量体全体に対して5重量%〜50重量%が好ましい。5重量%未満では溶剤に対する親和性の効果はなく、50重量%より多いと、一般式(5)で表わされる単量体は一般に単独重合体のTgが低いため、ポリエステル分散剤のビニル重合体部のTgが低くなり、加熱工程時の顔料の凝集または結晶化を抑えることができない。顔料分散性と耐熱性のバランスの観点から、10〜30重量%がより好ましい。
【0042】
一般式(5):
【0043】
【化6】


[一般式(5)中、Rは、水素または炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状の化合物残基である。]
一般式(3)で表される単量体の内、以下に列挙する単量体は、単独重合体のTgが高く、本発明のポリエステル分散剤の顔料分散性と耐熱性を両立させるのに効果的である。
【0044】
t−ブチルアクリレート:41℃(314K)
シクロヘキシルアクリレート:15℃(288K)
アクリル酸:105℃(378K)
〔化合物(a1)〕
本発明に使用する分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(a1)
としては、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、等が挙げられる。
〔ビニル重合体(a2)〕
本発明に使用する片末端に2つの水酸基を有し、かつビニル重合体部位(C)のガラス転移温度(Tg)が50℃以上であるビニル重合体(a2)は、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)を、目的とするビニル重合体(a2)の分子量にあわせて、重合体のガラス転移温度が50℃以上になる1種類以上のエチレン性不飽和単量体(a1)と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することで得ることができる。2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)は、エチレン性不飽和単量体(c)100重量部に対して、1〜30重量部を用い、塊状重合または溶液重合を行うのが好ましく、より好ましくは3〜12重量部、さらに好ましくは4〜12重量部、特に好ましくは5〜9重量部である。1重量部未満であると、ビニル重合体部位(C)の分子量が高すぎて、顔料担体および溶剤に対する親和性部位として、その絶対量が増えてしまい、分散性の効果自体が低下する場合があり、30重量%を超えると、ビニル重合体部(C)の分子量が低すぎて、顔料担体および溶剤に対する親和性部位として、その立体反発の効果がなくなると共に、顔料の凝集を抑えることが困難になる。
【0045】
反応温度は、40〜150℃、好ましくは50〜110℃である。40℃未満では十分に重合が進行せず、150℃以上では高分子量化が進む等、分子量のコントロールが困難になる。
【0046】
ビニル重合体(a2)の重量平均分子量は、1,000〜10,000が好ましく、より好ましくは2000〜8000、さらに好ましくは2,000〜6,000、特に好ましくは3,000〜5,000である。この部位が顔料担体および溶剤への親和性部位となる。ビニル重合体部位(C)の重量平均分子量が1,000未満では、顔料担体および溶剤に対する親和性部位として、その立体反発の効果がなくなると共に、顔料の凝集を抑えることが困難になる。また、10,000を超えると、顔料担体および溶剤に対する親和性部位として、その絶対量が増えてしまい、分散性の効果自体が低下する場合がある。さらに、分散体の粘度が高くなる場合がある。ビニル重合体(a)は、分子量を上記範囲に調整することが容易であり、かつ、溶剤への親和性も良好である。
【0047】
重合の際、エチレン性不飽和単量体(c)100重量部に対して、任意に0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、アゾ系化合物および有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等があげられる。これらの重合開始剤は、単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0048】
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良い。重合反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま次の工程の溶剤として使用したり、製品の一部として使用することもできる。
【0049】
〔ポリエステル(D)の存在下におけるラジカル重合〕
本発明のポリエステル分散剤は、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)を少なくとも含むポリオール(a4)中の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)を少なくとも含むポリカルボン酸化合物(b)とを反応させてなるポリエステル(D)の存在下、ガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部位(C)を形成するエチレン性不飽和単量体(c)を、前記ビニル重合体(a2)と同様に、ラジカル重合すことによっても得ることができる。
〔その他のポリオール〕
ポリオール(a3)中に含まれる化合物(a1)以外のポリオール、およびポリオール(a4)中に含まれるビニール重合体(a2)以外のポリオール(以下、合わせてその他のポリオールと略記する。)としては、公知のものを使用し得る。それらのうちでも、特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、次のグループ(1)〜(7)に属するものがある。
(1)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリンもしくは、ヘキサントリオールの如き多価アルコール類;
(2)ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールもしくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールの如き、各種のポリエーテルグリコール類;
(3)上記した各種の多価アルコール類と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルの如き各種の(環状)エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール類;
(4)上記した各種の多価アルコール類の1種以上と、多価カルボン酸類との共縮合によって得られるポリエステルポリオール類であって、多価カルボン酸類が、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,4−シクロヘキサンヒカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサトリカルボン酸または2,5,7−ナフタレントリカルボン酸などで特に代表されるものを用いて得られるポリオール類;
(5)上記した各種の多価アルコール類の1種以上と、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンもしくは3−メチル−δ−バレロラクトンの如き各種のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール類、あるいは、
上記した各種の多価アルコール類と、多価カルボン酸類と、各種のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン変性ポリエステルポリオール類;
(6)ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、一価および/または多価アルコール類のグリシジルエーテル、あるいは、一塩基酸および/または多塩基酸類のグリシジルエステルの如き各種のエポキシ化合物を、ポリエステルポリオールの合成時に、1種以上併用して得られるエポキシ変性ポリエステルポリオール類;
(7)ポリエステルポリアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリペンタジエンポリオール、ひまし油、ひまし油誘導体、水添ひまし油、水添ひまし油誘導体、水酸基含有アクリル系共重合体、水酸基含有含フッ素化合物または水酸基含有シリコン樹脂などが挙げられる。
【0050】
これら(1)〜(7)に示された任意に添加する、その他のポリオールは、単独使用でも2種以上の併用でもよいことは勿論であるが、その重量平均分子量としては、相溶性や分散安定性の観点から、40〜10,000が好ましく、より好ましくは、100〜2,000であり、さらに好ましくは、100〜1,000である。重量平均分子量が、40未満では、相溶性や分散安定性を改善する効果はなく、重量平均分子量が、10,000以上では、かえって相溶性が悪くなる。
【0051】
その他のポリオールの一分子中の水酸基の数は、目的とする分散剤が合成できれば特に限定はないが、ジオール(a5)が好ましい。特に、テトラカルボン酸二無水物(b1)と反応することで、主鎖に顔料吸着基となるカルボキシル基を規則的に並べることができ、顔料分散に有利である。水酸基が二つより多いポリオールを多く用いると、ポリエステルの主鎖が分岐して複雑かつ笠高くなり、分散効果が得られにくくなる。ポリエステル分散剤の分子量調整や、分散液の粘度調整のため等、設計の観点から最小限に止めるべきである。配合量に関しては、後述する。
〔ポリカルボン酸無水物(b)〕
本発明に使用するポリカルボン酸無水物(b)は、少なくともテトラカルボン酸二無水物(b1)を含んでいる。テトラカルボン酸二無水物(b1)の二つの無水物基は、ポリオール(a)の水酸基と反応することによって、ポリエステル分散剤の主鎖に顔料吸着基となるカルボキシル基を規則的に並べることができ、顔料分散に有利である。
【0052】
本発明に使用するテトラカルボン酸二無水物(b1)としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物、などの芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0053】
本発明で使用されるテトラカルボン酸二無水物は上記に例示した化合物に限らず、カルボン酸無水物基を2つ持てばどのような構造をしていてもかまわない。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。テトラカルボン酸二無水物は、ポリオールとの反応により、ポリエステルの一単位に二個のカルボキシル基を有する分散剤を形成するため、顔料吸着性の観点から、本発明のポリエステル分散剤の構成要素として好ましい。
【0054】
さらに、本発明に好ましく使用されるものは、顔料に対する吸着性の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、芳香族環を二つ以上有するテトラカルボン酸二無水物である。芳香族カルボン酸は、脂肪族カルボン酸に比べて顔料吸着能が高く、さらに、芳香族環を二つ以上有するカルボン酸は、顔料吸着に適した骨格であり、耐熱性も高い。
【0055】
具体的には、下記一般式(1)または一般式(2)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0056】
一般式(1):
【0057】
【化7】

[一般式(1)中、kは1または2である。]
一般式(2):
【0058】
【化8】

[一般式(2)中、Q1は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO−、−SO2−、−C(CF32−、一般式(3):
【0059】
【化9】

で表される基、または一般式(4):
【0060】
【化10】

で表される基である。]
また、分子中にカルボン酸無水物基を1つ持つ化合物や3つ以上持つ化合物を併用、すなわち、本発明に使用するポリカルボン酸無水物(b)中に含まれるテトラカルボン酸二無水物(b1)以外のポリカルボン酸無水物も使用することができる。
【0061】
本発明に使用するポリカルボン酸無水物(b)中に含まれるテトラカルボン酸二無水物(b1)以外のポリカルボン酸無水物は、ジカルボン酸無水物、トリカルボン酸無水物、5個以上カルボン酸を有する化合物の無水物が挙げられるが、顔料に対する吸着性の観点から、ポリエステル分散剤の設計上、ポリオールとの反応によりポリエステル分散剤の一単位に二つのカルボキシル基が生成するトリカルボン酸無水物(b2)が好ましい。トリカルボン酸無水物(b2)も、ポリオールの水酸基1個としか反応しないので、ポリエステル分散剤の分子量設計等の観点から最小限に止めるべきである。配合量に関しては、後述する。
【0062】
トリカルボン酸無水物(b2)としては、まず、脂肪族トリカルボン酸無水物、または芳香族トリカルボン酸無水物が挙げられる。脂肪族トリカルボン酸無水物としては、例えば、3−カルボキシメチルグルタル酸無水物、1,2,4−ブタントリカルボン酸−1,2−無水物、cis−プロペン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2−無水物、1,3,4−シクロペンタントリカルボン酸無水物などが挙げられる。芳香族トリカルボン酸としては、例えば、ベンゼントリカルボン酸無水物(1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物[1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物]など)、ナフタレントリカルボン酸無水物(1,2,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸無水物など)、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物などが挙げられる。本発明に好ましく使用されるものは、顔料に対する吸着性の観点から、上記のうち芳香族トリカルボン酸無水物である。
〔ポリエステルの合成〕
まず、本発明のポリエステル分散剤のポリエステル合成の過程について、ジオール(a5)とテトラカルボン酸二無水物(b1)の反応を例に説明する。
【0063】
本発明に使用するテトラカルボン酸二無水物(b1)は、水酸基と反応してエステル結合を形成し、かつ、生成するポリエステル主鎖上にペンダントカルボキシル基を残すことができる。2つの水酸基を有するジオール(a5)のモル量をa、テトラカルボン酸二無水物のモル量をbとし、i)a>b、ii)a=b、およびiii)a<bとしたときのテトラ
カルボン酸二無水物(b)とポリオール(A)との反応を、下記一般式(6)、(7)、および(8)に示す。下記一般式(6)の生成物中に残っている酸無水物基を加水分解すれば、この反応による生成物は、構造式中のX1部分にカルボキシル基を2個または3個を有しており、この複数のカルボキシル基が顔料の吸着部位として有効である。
【0064】
i)a>b
一般式(6):
【0065】
【化11】

ii)a=b
一般式(7):
【0066】
【化12】

iii)a<b
一般式(8):
【0067】
【化13】

しかしながら、X1に結合しているカルボキシル基が1個のみである場合(本発明の範囲外)では、高い分散性、流動性、および保存安定性を発現せず好ましくない。
【0068】
本発明におけるX1は、テトラカルボン酸二無水物が水酸基と反応した後の反応残基、Yはポリオール化合物が酸無水物基と反応した後の反応残基である。X1の形態として好ましくは、下記一般式(1)または一般式(2)で示されるテトラカルボン酸二無水物が、ポリオール化合物と反応した後の反応残基である。
【0069】
一般式(1):
【0070】
【化14】

[一般式(1)中、kは1、または2である。]
一般式(2):
【0071】
【化15】

[一般式(2)中、Q1は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO−、−SO2−、−C(CF32−、一般式(3):
【0072】
【化16】

で表される基、または一般式(4):
【0073】
【化17】

で表される基である。]
〔本発明のポリエステル分散剤の合成〕
本発明のポリエステル分散剤は、前記一般式(6)〜(8)に示したポリエステルの合成の説明中、ジオール(a5)中のYに、S原子を介してガラス転移温度50℃以上のビニル重合体(C)を導入したものである。
【0074】
導入方法は、以下の二つの方法が挙げられる。
1)ガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(C)を形成するエチレン性不飽和単量体(c)を、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(a1)の存在下、ラジカル重合してなる片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a2)を少なくとも含むポリオール(a3)中の水酸基と、
テトラカルボン酸二無水物(b1)を少なくとも含むポリカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基とを、反応する。
2)分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)を少なくとも含むポリオール(a4)中の水酸基と、
テトラカルボン酸二無水物(b1)を少なくとも含むポリカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基とを、反応させてなるポリエステル(D)の存在下、
ガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(C)を形成するエチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合する。
【0075】
ここで、2)の後でビニル重合体部位(C)を導入する方法を例に、主な四つ合成パターンを示す。1)と2)では、ビニル重合体部位(C)の導入を先に行うか後で行うかの違いで、原料と反応条件が同じであれば、理論上は同じものができるが、諸条件により分子量等が若干異なることがある。
(2)の合成パターン1)
下記一般式(9)は、片末端に2つの水酸基と一つのチオール基を有する化合物(a1)の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)の酸無水物基を反応し得られたポリエステル(D1)の存在下、ガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(C)を形成するエチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合した合成パターン1である。理論的に、(a1)のモル比をa(整数)、(b1)のモル比をb(整数)、b=a−1とし、安定性の観点から、酸無水物基が残らないように末端を水酸基にした場合である。分子量は、aを変えることによって調整される。
一般式(9):
【0076】
【化18】

実際に合成する場合は、酸無水物が残らないように、理論値よりaを過剰にすることが多い。b>aにして、酸性基を増やす場合には、無水物基を必要量の水で加水分解して使用する。片末端に2つの水酸基と一つのチオール基を有する化合物(a1)の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)の酸無水物基とのモル比は、2b/2a=b/a=0.3〜1.2が好ましい。0.3未満であると、一分子中の酸無水物残基が少なくなり、顔料に対する吸着が不十分になり、1.2を超えると、酸無水物基が残り、保存安定性に問題が生じることが多く、加水分解しても、酸性基が過剰になり顔料担体や溶剤への相溶性が悪くなる。顔料分散性と安定性の観点から、b/a=0.4〜0.8がより好ましい。
(2)の合成パターン2)
下記一般式(10)は、片末端に2つの水酸基と一つのチオール基を有する化合物(a1)およびその他のジオール(a5)の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)の酸無水物基を反応し得られたポリエステル(D2)の存在下、ガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(C)を形成するエチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合した合成パターン2である。(a1)のモル量をa(整数)、(a5)のモル量をα(整数)、(b1)のモル量をb(整数)、b=a+α-1とし、安定性の観点から、酸無水物基が残らないように末端を水酸基にした場合である。その他のジオール(a5)の種類や、aとαの比率を変えることによって分子量、溶解性、およびカルボキシル基の密度を調整する。
一般式(10):
【0077】
【化19】

実際に合成する場合は、酸無水物が残らないように、理論値より(a+α)を過剰にすることが多い。b>(a+α)にして、酸性基を増やす場合には、無水物基を必要量の水で加水分解して使用する。片末端に2つの水酸基と一つのチオール基を有する化合物(a1)およびその他のジオール(a5)の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)の酸無水物基とのモル比は、2b/2(a+α)=b/(a+α)=0.3〜1.2が好ましい。0.3未満であると、一分子中の酸無水物残基が少なくなり、顔料に対する吸着が不十分になり、1.2を超えると、酸無水物基が残り、保存安定性に問題が生じることが多いく、加水分解しても、酸性基が過剰になり顔料担体や溶剤への相溶性が悪くなる。顔料分散性と安定性の観点から、b/a=0.6〜0.8がより好ましい。
【0078】
a=0は、ガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部(C)がないので、本発明の範囲外である。他のジオール(a5)は、ポリエステル分散剤の分子量、粘度、あるいは相溶性を調整するために使用される。(合成パターン2)のように他のジオール(a5)を使用する場合、他のジオール(a5)と片末端に2つの水酸基と一つのチオール基を有する化合物(a1)とのモル比は、α/a=0.1〜2.0が好ましい。0.1未満では、ジオール(a5)を使用する効果はなく、2.0を超えると、ガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部位(C)の密度が低くなり、分散性に悪影響を及ぼす。
(2)の合成パターン3)
下記一般式(11)は、片末端に2つの水酸基と一つのチオール基を有する化合物(a1)の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)およびトリカルボン酸無水物(b2)の酸無水物基を反応し得られたポリエステル(D3)の存在下、ガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(C)を形成するエチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合した合成パターン4である。(a1)のモル量をa、(b1)のモル量をb、(b2)のモル量をβ、b=a−1、β=1とし、aを変えることによって主鎖の分子量を調整し、トリカルボン酸(b2)によって片末端がポリカルボン酸部位(B)になる。
一般式(11):
【0079】
【化20】

β=2とした場合は、両末端がポリカルボン酸部位(B)になる。また、a=0は、ガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部(C)がないので、本発明の範囲外である。
【0080】
実際に合成する場合は、酸無水物が残らないように、理論値よりaを過剰にすることが多い。(b+β)>aにして、酸性基を増やす場合には、無水物基を必要量の水で加水分解して使用する。ただし、トリカルボン酸無水物(b2)は単官能なので、理論上、a=b+1、β≦2の場合、(b2)によりポリエステル末端反応が停止されるので、酸無水物基は残らない。片末端に2つの水酸基と一つのチオール基を有する化合物(a1)の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)およびトリカルボン酸(b2)の酸無水物基とのモル比は、(b+β)/a=0.3〜1.2が好ましい。0.3未満であると、一分子中の酸無水物残基が少なくなり、顔料に対する吸着が不十分になり、1.2を超えると、酸無水物基が残り、保存安定性に問題が生じることが多いく、加水分解しても、酸性基が過剰になり顔料担体や溶剤への相溶性が悪くなる。顔料分散性と安定性の観点から、(b+β)/a=0.6〜0.8がより好ましい。
【0081】
トリカルボン酸無水物(b2)は、ポリエステル分散剤の末端をポリカルボン酸部位(B)にする等、ポリエステル分散剤の分子量とポリカルボン酸部位の絶対量を調整する場合に使用する。ただし、b=0の場合は、テトラカルボン酸二無水物(b1)を使用しないことになるので、本発明の範囲外である。(合成パターン3)のようにトリカルボン酸無水物(b2)を使用する場合は、トリカルボン酸無水物(b2)とテトラカルボン酸二無水物(b1)のモル比は、β/b=0.1〜10が好ましい。0.1未満では、末端にポリカルボン酸部位(B)を有するポリエステルが少なく、トリカルボン酸無水物(b2)を併用する効果が得られない。10を超えると、ポリエステル主鎖の長さと、ポリカルボン酸部位(B)の数と、ビニル重合体部位(C)の数とのバランスが悪くなり、分散安定性が悪くなることが多い。β/b=0.5〜3が好ましい。
(2)の合成パターン4)
下記一般式(11)は、片末端に2つの水酸基と一つのチオール基を有する化合物(a1)およびその他のジオール(a5)の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)とトリカルボン酸無水物(b2)の酸無水物基を反応し得られたポリエステル(D4)の存在下、ガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(C)を形成するエチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合した合成パターン4である。(a1)のモル量をa(整数)、(a5)のモル比をα(整数)、(b1)のモル比をb、(b2)のモル比をβ、b=a+α−1、β=1、a1>b1とし、aとαの比を変えることによって主鎖の分子量および性状を調整し、トリカルボン酸無水物(b2)によって方末端がポリカルビン酸部位(B)になる。
一般式(12):
【0082】
【化21】

β=2とした場合は、両末端がポリカルボン酸部位(B)になる。また、a=0は、ガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部(C)がないので、本発明の範囲外である。
【0083】
実際に合成する場合は、酸無水物が残らないように、理論値より(a+α)を過剰にすることが多い。(b+β)>(a+α)にして、酸性基を増やす場合には、無水物基を必要量の水で加水分解して使用する。ただし、トリカルボン酸無水物(b2)は単官能なので、理論上、(a+α)=b+1、β≦2の場合、(b2)によりポリエステル末端反応が停止されるので、酸無水物基は残らない。片末端に2つの水酸基と一つのチオール基を有する化合物(a1)およびその他のジオール(a5)の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b1)およびトリカルボン酸無水物(b2)の酸無水物基とのモル比は、(b+β)/(a+α)=0.3〜1.2が好ましい。0.3未満であると、一分子中の酸無水物残基が少なくなり、顔料に対する吸着が不十分になり、1.2を超えると、酸無水物基が残り、保存安定性に問題が生じることが多いく、加水分解しても、酸性基が過剰になり顔料担体や溶剤への相溶性が悪くなる。顔料分散性と安定性の観点から、(b+β)/(a+α)=0.6〜0.8がより好ましい
a=0は、ガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部(C)がないので、本発明の範囲外である。他のジオール(a5)は、ポリエステル分散剤の分子量、粘度、あるいは相溶性を調整するために使用される。(合成パターン2)のように他のジオール(a5)を使用する場合、他のジオール(a5)と片末端に2つの水酸基と一つのチオール基を有する化合物(a1)とのモル比は、α/a=0.1〜2.0が好ましい。0.1未満では、ジオール(a5)を使用する効果はなく、2.0を超えると、ガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部位(C)の密度が低くなり、分散性に悪影響を及ぼす。
【0084】
トリカルボン酸無水物(b2)は、ポリエステル分散剤の末端をポリカルボン酸部位(B)にする等、ポリエステル分散剤の分子量とポリカルボン酸部位の絶対量を調整する場合に使用する。ただし、b=0の場合は、テトラカルボン酸二無水物(b1)を使用しないことになるので、本発明の範囲外である。(合成パターン3)のようにトリカルボン酸無水物(b2)を使用する場合は、トリカルボン酸無水物(b2)とテトラカルボン酸二無水物(b1)のモル比は、β/b=0.1〜10が好ましい。0.1未満では、末端にポリカルボン酸部位(B)を有するポリエステルが少なく、トリカルボン酸無水物(b2)を併用する効果が得られない。10を超えると、ポリエステル主鎖の長さと、ポリカルボン酸部位(B)の数と、ビニル重合体部位(C)の数とのバランスが悪くなり、分散安定性が悪くなることが多い。β/b=0.5〜3が好ましい。
(反応触媒)
本発明のポリエステル(D)およびポリエステル分散剤の製造に用いられる触媒としては、公知の触媒を使用することができる。触媒としては3級アミン系化合物が好ましく、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
(反応溶剤)
本発明のポリエステル(D)およびポリエステル分散剤は、これまで挙げた原料のみで製造することも可能であるが、高粘度になり反応が不均一になるなどの問題を回避すべく、溶剤を用いるのが好ましい。使用される溶剤としては、特に限定はなく、公知のものを使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル等が挙げられる。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま次の工程の溶剤として使用したり、製品の一部として使用することもできる。
(反応温度)
ポリエステル合成の反応温度は50℃〜180℃、好ましくは80℃〜140℃の範囲で行う。反応温度が50℃以下では反応速度が遅く、180℃以上ではカルボキシル基と水酸基がエステル化反応してしまい、酸価の減少や、ゲル化を起こしてしまう場合がある。反応の停止は、赤外吸収で酸無水物の吸収がなくなるまで反応させるのが理想であるが、ポリエステルの酸価が5〜200の範囲に入ったとき、または、水酸基価が20〜200の範囲に入った時に反応を止めてもよい。
(1)の合成パターン)
前記合成パターン1〜4で表される2)の方法で得られたチオール基とポリカルボン酸無水物残基(カルボキシル基)を有するポリエステル(D1)〜(D4)の存在下、チオール基を連鎖異動剤として、ガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(C)を形成するエチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合することによって、ポリエステル(D)にガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(C)を導入することができる。目的とする分散剤の分子量にあわせて、エチレン性不飽和単量体(c)を任意に重合開始剤とを混合して加熱することで分散剤が得られる。分子内の2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)単位1重量部に対して、エチレン性不飽和単量体を3〜100重量部用い、塊状重合または溶液重合を行うのが好ましい。より好ましくは8〜25重量部、さらに好ましくは10〜20重量部である。反応温度は40〜150℃、好ましくは50〜110℃である。
【0085】
その他、詳細な重合方法は、前記〔ビニル重合体(a2)〕および前記〔ポリエステル(D)の存在下におけるラジカル重合〕に記載した通りである。
【0086】
1)の方法では、例えば、一般式(13)に示す通り、合成パターン1〜4の2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(a1)の−SHが、−S−〔ガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部(C)〕に最初から置き換わり、ポリエステル(D1)〜(D4)存在下のラジカル重合の工程がないだけで、同じポリエステルの合成経路で本発明のポリエステル分散剤が製造される。
【0087】
一般式(13):
【0088】
【化22】


(分子量)
得られたポリエステル分散剤の重量平均分子量は、好ましくは、2,000〜25,000より好ましくは4,000〜20,000、さらに好ましくは6,000〜15,000、特に好ましくは7,000〜12,000である。重量平均分子量が2000未満であれば顔料組成物の安定性が低下する場合があり、25,000を超えると樹脂間の相互作用が強くなり、顔料組成物の増粘が起きる場合がある。
(酸価)
また、得られたポリエステル分散剤の酸価は、5〜200が好ましい。より好ましくは10〜150であり、さらに好ましくは、15〜100であり、特に好ましくは、20〜80である。酸価が5未満では、顔料吸着能が低下し顔料分散性に問題がでる場合があり、200を超えると、樹脂間の相互作用が強くなり顔料分散組成物の粘度が高くなる場合がある。
【0089】
以上のように、ポリオール(a)の水酸基と、ポリカルボン酸無水物(b)の酸無水物基とを反応させてなるポリエステルの主鎖に、ポリオール部位(A)とポリカルボン酸部位(B)を交互に有するポリエステル分散剤において、ポリオール部位(A)の一部又は全部に、S原子を介して、エチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合してなるガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部位(C)を有するポリエステル分散剤が得られる。
【0090】
本発明のポリエステル分散剤は、一般式(14)に示す様に、主鎖に顔料吸着部となる複数のポリカルボン酸部位(B)と、側鎖として溶剤および顔料担体の親和性が高い複数のガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(C)とを有しているため、微細顔料の分散に好適で、かつ顔料担体親和性部の耐熱性が高い。このため、カラーフィルター等の高度な色特性と耐熱性を要求される分野で好適に利用される。
【0091】

一般式(14)
【0092】
【化23】


本発明で言うエチレン性不飽和単量体をラジカル重合してなるガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(c)とは、テトラカルボン酸二無水物(b)またはトリカルボン酸無水物(d)由来の部位を含まない連続した部位であり、通常、本発明のポリエステル分散剤を構成する1分子中には、複数のビニル重合体部位(c)が含まれる。
【0093】
本発明のポリエステル分散剤の一分子には、このTgが50℃以上のビニル重合体部位(C)が多数存在し、顔料担体および溶剤への親和性部位として機能する。このビニル重合体部位が50℃未満では、高温時における顔料の凝集や結晶化を抑えることができず、加熱工程によりコントラスト比が低下する。200℃以上の加熱工程があるカラーフィルタ等のエレクトロニクス分野での使用を考えると、ビニル重合体部位のTgは、70℃以上がより好ましい。ビニル重合体部位(C)のTgの上限は特にないが、150℃を超えると、実用上、加工性や造膜性に問題を生じる場合があるので、150℃未満が好ましい。

〔顔料〕
本発明の分散剤で分散できる顔料は、インキ等に使用される種々の顔料が挙げられる。このような顔料としては溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアンスラキノニル顔料、アンスラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ピランスロン顔料、ジケトピロロピロール顔料等があり、さらに具体的な例をカラーインデックスのジェネリックネームで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー6,15,15:1,15:3,15:4,15:6,60、ピグメントグリーン7,36、58、ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,144,146,149,166,168,177,178,179,185,206,207,209,220,221,238,242,254,255、ピグメントバイオレット19,23,29,30,37,40,50、ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185,ピグメントオレンジ13,36,37、38,43,51,55,59,61,64,71,74等が挙げられる。但し、例示には限定されない。
【0094】
また、二酸化チタン、酸化鉄、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、カーボンブラックなどの無機顔料も使用することができる。カーボンブラックについては中性、酸性、塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。本発明の顔料組成物は、上記顔料に限らず、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、コバルト、ニッケル、および/またはこれらの合金などの金属微粒子を含む固体微粒子を使用することができる。
〔塩基性置換基を有する分散剤〕
また本発明の分散剤を用いた顔料組成物には、さらに塩基性置換基を有する分散剤として、塩基性置換基を有する色素誘導体、塩基性置換基を有するアントラキノン誘導体、塩基性置換基を有するアクリドン誘導体、および塩基性置換基を有するトリアジン誘導体の群から選ばれる少なくとも一種類を含むことがより好ましい。ここで、色素誘導体とは、前記のカラーインデックスに記載されている有機顔料残基に、特定の塩基性置換基を導入したものである。塩基性置換基を有する分散剤を併用することにより、分散性、流動性、保存安定性を向上させることができる。
【0095】
本発明の顔料組成物において用いることのできる塩基性置換基を有する分散剤の塩基性置換基は、下記一般式(15)、(16)、(17)および(18)で示される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である。
【0096】
一般式(15):
【0097】
【化24】

一般式(16):
【0098】
【化25】

一般式(17):
【0099】
【化26】

一般式(18):
【0100】
【化27】

一般式(15)〜(18)において、
X、X1、X2は、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−、または直接結合であり、
mは、1〜10の整数であり、
1 、R2 は、それぞれ独立に、置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、またはR1とR2とが一体となって形成した複素環であり、前記複素環は、さらなる窒素、酸素または硫黄原子を含んでいてもよく、前記アルキル基、およびアルケニル基の炭素数は、1〜10が好ましく、
3 は、置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基、またはフェニル基であり、前記アルキル基、およびアルケニル基の炭素数は、1〜10が好まく、
4 、R5 、R6、R7は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基、またはフェニル基であり、アルキル基、およびアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましく、
Yは、−NR8−Z−NR9−または直接結合であり、
8、R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基、またはフェニル基であり、前記アルキル基、およびアルケニル基の炭素数は、1〜5が好ましく、
Zは、置換されていてもよい、メアルキレン基、アルケニレン基、またはフェニレン基であり、前記アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜8が好ましく、
Pは、式(19)で示される置換基または式(20)で示される置換基であり、
Qは、水酸基、アルコキシル基、式(19)で示される置換基、または式(20)で示される置換基である。
【0101】
一般式(19):
【0102】
【化28】


一般式(20):
【0103】
【化29】

一般式(19)〜(20)において、
1、およびX2は、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−、または直接結合であり、
mは、1〜10の整数であり、
1 、R2 は、それぞれ独立に、置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、またはR1とR2とが一体となって形成した複素環であり、前記複素環は、さらなる窒素、酸素または硫黄原子を含んでいてもよく、前記アルキル基、およびアルケニル基の炭素数は、1〜10が好ましく、
3 は、置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基、またはフェニル基であり、前記アルキル基およびアルケニル基の炭素数は、1〜10が好まく、
4 、R5 、R6、R7は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、アルキル基、アルケニル基、またはフェニル基であり、アルキル基およびアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。
【0104】
一般式(15)〜(20)において、
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、およびヘキシル基等が挙げられ、
アルケニル基としては、ビニル基、およびプロペニル基等が挙げられ、
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、およびブチレン基等が挙げられ、
アルケニレン基としては、ビニレン基、およびプロペニレン基等があげられ、
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、およびブトキシ基が挙げられ、
置換されていてもよい置換基としては、ハロゲン基、シアノ基、アルコキシル基、アミノ基、水酸基、ニトロ基、およびエポキシ基等が挙げられる。
【0105】
一般式(15)〜(18)で示される塩基性置換基を形成するために使用されるアミン成分としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
【0106】
塩基性置換基を有する色素誘導体を構成する有機色素は、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等の色素である。また、塩基性基を有するアントラキノン誘導体および塩基性基を有するアクリドン誘導体は、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基またはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基または塩素等のハロゲン等の置換基を有していてもよい。
【0107】
また、塩基性置換基を有するトリアジン誘導体を構成するトリアジンは、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)、及びフェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい1,3,5−トリアジンである。
【0108】
本発明の塩基性置換基を有する色素誘導体、アントラキノン誘導体およびアクリドン誘導体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、有機色素、アントラキノンもしくはアクリドンに一般式(21)〜(24)で示される置換基を導入した後、上記置換基と反応して一般式(15)〜(18)で示される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミンまたは4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等を反応させることによって得られる。
【0109】
一般式(21): −SO2Cl
一般式(22): −COCl
一般式(23) :−CH2NHCOCH2Cl
一般式(24) :−CH2Cl
一般式(21)〜(24)で示される置換基と上記アミン成分との反応の際に、一般式(21)〜(24)で示される置換基の一部が加水分解して、塩素原子が水酸基に置換したものが混在していてもよい。その場合、一般式(21)または一般式(22)で示される置換基は、それぞれスルホン酸基またはカルボン酸基となるが、何れも遊離酸のままでもよく、また、1〜3価の金属または上記のモノアミンとの塩であってもよい。
【0110】
また、有機色素がアゾ系色素である場合は、一般式(15)〜(18)で示される置換基をあらかじめジアゾ成分またはカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによってアゾ系顔料誘導体を製造することもできる。
【0111】
前記塩基性置換基を有するトリアジン誘導体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、塩化シアヌルを出発原料とし、塩化シアヌルの少なくとも1つの塩素に一般式(15)〜(18)で示される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンまたはN−メチルピペラジン等を反応させ、次いで塩化シアヌルの残りの塩素と種々のアミンまたはアルコール等を反応させることによって得られる。
【0112】
本発明の顔料組成物において、塩基性置換基を有する色素誘導体、塩基性置換基を有するアントラキノン誘導体、塩基性置換基を有するアクリドン誘導体、および塩基性置換基を有するトリアジン誘導体の群から選ばれる少なくとも一種類の塩基性置換基を有する分散剤(以下、塩基性置換基を有する分散剤と略記する。)の配合量は、顔料100重量部に対し好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは3〜30重量部、最も好ましくは5〜25重量部である。3重量部未満では、分散性向上の効果はなく、30重量部を超えると、色特性や耐熱性に悪影響が生じる。
【0113】
〔顔料分散〕
本発明のポリエステル分散剤を用いた顔料組成物は、顔料、本発明のポリエステル分散剤、好ましくは、塩基性置換基を有する分散剤、必要に応じて、溶剤、樹脂、添加剤等を混合し、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等の各種分散手段を用いて顔料を微細に分散して製造することができる。さらに、目的に応じて、ワニスに分散して顔料分散体として使用することができる。顔料、塩基性置換基を有する分散剤、本発明のポリエステル分散剤、溶剤、その他の樹脂、添加剤は、すべての成分を混合してから分散してもよいが、初めに顔料と塩基性置換基を有する分散剤とのみ、あるいは、塩基性置換基を有する分散剤とポリエステル分散剤とのみ、あるいは、顔料と塩基性置換基を有する分散剤とポリエステル分散剤とのみを分散し、次いで、他の成分を添加して再度分散を行ってもよい。
【0114】
本発明のポリエステル分散剤の配合量は、顔料100重量部に対し好ましくは1〜200重量部、さらに好ましくは2〜175重量部、最も好ましくは5〜150重量部である。1重量部未満だと十分に分散されず、200重量部を超えると、顔料担体となる樹脂等を入れる余地がなくなり、色濃度等の実用上問題が生じる。
【0115】
また、横型サンドミル、 縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル等の練肉混合機を使用した前分散、2本ロールミル等による固形分散、または顔料への塩基性置換基を有する誘導体、および/またはカルボキシル基含有ポリエステルの処理を行ってもよい。また、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等のあらゆる分散機や混合機が顔料分散体を製造するために利用できる。
【0116】
前記の顔料分散体に用いることができる各種溶剤としては、有機溶剤、水等が挙げられる。有機溶剤は、本発明のポリエステル分散剤の合成課程で用いた有機溶剤をそのまま使用してもよい。また、合成課程で使用した有機溶剤を、反応終了後、蒸留等の操作により取り除いてから、同じ有機溶剤あるいは異なる溶剤を用いることもできる。また、目的に応じて、二種類以上の有機溶剤を併用してもよい。
【0117】
有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、イソホロン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、m−ジエチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、o−ジエチルベンゼン、p−ジエチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、酢酸エチル、酢酸n−アミル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステル、n−プロピルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、
3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、γ―ブチロラクトン、アセトニトリル、1,2,3−トリクロロプロパン、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、3-メトキシブタノール、メチルシクロヘキサノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ダイアセトンアルコール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、ブチレングリコールジアセテート、ペンタンジオールジアセテート、ブチレングリコールジアセテートには、1,4−ブチレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ペンタンジオールジアセテートには、1,5−ペンタンジオールジアセテート、トリアセチン、等が挙げられ、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0118】
また、活性エネルギー線硬化型組成物に用いる場合、活性エネルギー線硬化性の液状モノマーや液状オリゴマーを有機溶剤代わりの媒体として用いてもよい。活性エネルギー線硬化型組成物に用いる場合、活性エネルギー線硬化性の液状モノマーや液状オリゴマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1, 6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0119】
また、本発明の顔料分散体に用いることができる樹脂の例としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。
【0120】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂、石油樹脂、カゼイン、セラック、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0121】
また、本発明のポリエステル分散剤を顔料分散体のバインダー樹脂として使用することもできる
熱硬化性樹脂としては例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、尿素樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、乾性油、合成乾性油、等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。前記熱可塑性樹脂の熱架橋剤として、組み合わせても使用できる。
【0122】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該線状高分子に導入した樹脂が用いられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。しかし、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0123】
本発明の顔料分散体は、非水系、水系、または無溶剤系の塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、インキジェットインキ、カラーフィルター用インキ、デジタルペーパー用インキ、プラスチック着色等に利用できる。
【実施例】
【0124】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を表す。
【0125】
また、重量平均分子量は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いたときのポリスチレン換算分子量である。
【0126】
ビニル重合部位(C)のガラス転移温度は、ラジカル重合に使用したエチレン性不飽和単量体(c)それぞれの単独重合体のガラス転移温度(カタログ値)と重量分率から、下記Foxの式で算出した。
【0127】
Foxの式
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
W1からWnは、使用している単量体の重量分率を示し、Tg1からTgnは、単量体の単独重合体のガラス転移温度(単位は絶対温度「K」)を示す。
(実施例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール6部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部をシクロヘキサノン45.7部に溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。このとき、重量平均分子量が4000であった。次に、ピロメリット酸二無水物9.7部、シクロヘキサノン70部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.20部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。反応終了後、不揮発分を50重量%に調製し、酸価43mgKOH/g、重量平均分子量8,100、ビニル重合部位(C)のガラス転移温度105℃のポリエステル分散剤1のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0128】
実施例で使用する原材料を以下に列挙する。
〔エチレン性不飽和単量体(c)〕
・MMA:メチルメタクリレート
・MAA:メタクリル酸
・EA:エチルアクリレート
・t−BA:ターシャルブチルアクリレート
〔分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(a1)〕
・チオグリセロール:3−メルカプト−1,2−プロパンジオール
〔ジオール(a5)〕
・EG:エチレングリコール
〔ラジカル重合開始剤〕
・AIBN:2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル
〔有機溶剤〕
・シクロヘキサノン
〔テトラカルボン酸二無水物(b1)〕
・PMA:ピロメリット酸二無水物(ダイセル化学工業株式会社製)
・BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学株式会社製)
・BPAF:9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(JFEケミカル株式会社製)
〔トリカルボン酸無水物(b2)〕
・TMA:トリメリット酸無水物
〔エステル化反応触媒〕
・DBU:1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン(サンアプロ株式会社製)
(実施例2〜12)
表1および2に記載した原料と仕込み量を用いた以外は実施例1と同様にして合成を行い、ポリエステル分散剤2〜12のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0129】
【表1】


【0130】
【表2】

(実施例13)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール6部、ピロメリット酸二無水物9.7部、シクロヘキサノン23.5部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、7時間反応させた。98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した後、系内の温度を70℃に冷却し、メチルメタクリレート100部を仕込み、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部をシクロヘキサノン26.2部に溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により重合が95%進行したことを確認し反応を終了した。反応終了後、不揮発分を50重量%に調整し、酸価43mgKOH/g、重量平均分子量8,100、ビニル重合部位(C)のガラス転移温度105℃のポリエステル分散剤13のシクロヘキサノン溶液を得た。
(実施例14〜16)
表3に記載した原料と仕込み量を用いた以外は実施例13と同様にして合成を行い、ポリエステル分散剤14〜16(シクロヘキサノン溶液)を得た。
【0131】
【表3】

(比較例1)
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、ジメチルテレフタレート559部、プロピレングリコール420部、グリセリン21.2部、酢酸亜鉛0.2部、テトラブチルオルソチタネート0.025部を仕込み、窒素気流下にて撹拌しながら160〜220℃でエステル交換反応を行った。理論量のメタノールの95%(175g)以上が留出したらこのフラスコ内を徐々に減圧し、1〜3トール、240℃で3時間反応を行い、末端に水酸基を有するポリエステルを得た。次にフラスコ内を窒素で減圧解除を行い、200℃まで徐々に冷却した。200℃になったら無水コハク酸65部を加え1時間反応し反応を終了した。シクロヘキサノンに溶解し、不揮発分を50重量%に調整し、酸価40mgKOH、重量平均分子量12,000のポリエステル分散剤17のシクロヘキサン溶液を得た。
(比較例2)
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、シクロヘキサノン75部、ネオペンチルグリコール17.8部、無水ピロメリット酸31.9部を仕込み、150〜160℃に昇温し、窒素ガス雰囲気下、5時間反応を行った。樹脂酸価が334以下になった時点で冷却し、ε−カプロラクトン249.7部、テトラブチルチタネート0.6部を加え、150℃で5時間攪拌を行った。加熱残分が76%以上になった時点で冷却し、シクロヘキサノンを加え、不揮発分を50重量%に調整し、酸価54mgKOH/g、重量平均分子量12,900のポリエステル分散剤18のシクロヘキサノン溶液を得た。
(比較例3)
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、1,2,4,5‐ベンゼンテトラカルボン酸25.4g、2−エチルヘキシルアルコール39.0g、キシレン50mlの混合物を加え、ここにテトラブチルチタネート0.2gを加え窒素気流中160〜180℃で18時間加熱還流させ発生した水分はジーン・スタークトラップで分離した。反応終了後150℃にて減圧下にて、キシレンを除去した。シクロヘキサノンに溶解し、不揮発分を50重量%に調整し、酸価96.0gKOH/g、淡褐色のポリエステル分散剤19のシクロヘキサノン溶液を得た。
(比較例4)
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、キシレン19.8部、オクタノール2.1部、ε‐カプロラクトン77.9部テトラブチルチタネート0.16部を仕込み150〜160℃に昇温し窒素ガス雰囲気下、5時間反応させ加熱残分が78%以上になっているのを確認した後、冷却しポリエステルモノオールを得た。合成したポリエステルモノオールを31.86部、無水トリメリット酸0.98部を仕込み窒素雰囲気下150〜160℃で反応を行った。樹脂酸価が22.7以下になった時点でYED122(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名アルキルフェノールモノグリシジルエーテル、エポキシ当量250)、2.55部を仕込み同じ温度で反応を行った。樹脂酸価が1.1以下になった時点で無水トリメリット酸1.96部を仕込み、同じ温度で反応を行い、樹脂酸価が38.7以下になった時点でYED122、5.1部を仕込み、同じ温度で反応を行い、樹脂酸価が1.8以下になった時点で無水トリメリット酸3.92部を仕込み、同じ温度で反応を行い、樹脂酸価が60.1以下になった時点で冷却し、キシレンを53.6部加え、反応を終了させた。反応終了後150℃にて減圧下にて、キシレンを除去した後、シクロヘキサノンに溶解して、不揮発分を50重量%に調整し、酸価58.9、重量平均分子量11000のポリエステル分散剤20のシクロヘキサノン溶液を得た。
(比較例5)
オキシ塩化リン26.6部(0.18mol)を70部のテトラヒドロフランに溶解し、反応容器に入れ、−50℃まで冷却した。プラクセルFM4(ダイセル化学工業製)100部とトリエチルアミン16.7g(0.17mol)とハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部をテトラヒドロフラン150部に溶解し、滴下ロートに入れた。乾燥窒素ガスを吹き込みながら、オキシ塩化リン溶液を攪拌し、前記プラクセル4A溶液を滴下した。滴下中は−45〜−50℃に保ち、滴下終了後1時20間−45℃に保った。その後、0℃まで昇温し、水15部とトリエチルアミン37.9部を100部のテトラヒドロフランに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、15時間氷冷下攪拌し、P−C1結合の加水分解を完了させた。その後析出したトリエチルアンモニウムクロリドをろ別し、テトラヒドロフランを30℃以下の温度で減圧除去した。得られた固体を0.3N塩酸水溶液で洗浄した。次にトルエンで数回洗浄した後、室温にて減圧乾燥し、シクロヘキサノンに溶解して、不揮発分を50重量%に調整し、末端にリン酸基を有するポリエステル分散剤21のシクロヘキサノン溶液が得られた。
【0132】
(比較例6)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、エチルアクリレート100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール6部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部をシクロヘキサノン45.7部に溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸二無水物9.7部、シクロヘキサノン70部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.20部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、不揮発分を50重量%に調整し、酸価43、重量平均分子量8,100,のポリエステル分散剤22のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0133】
(比較例7)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、エチルアクリレート40部、メチルメタクリレート60部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール6部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部をシクロヘキサノン45.7部に溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸二無水物9.7部、シクロヘキサノン70部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.20部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、不揮発分を50重量%に調整し、酸価43、重量平均分子量8,100,のポリエステル分散剤23のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0134】
[アクリル樹脂1の製造例]
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、シクロヘキサノン370部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、メタクリル酸20.0部、メチルメタクリレート10.0部、n−ブチルメタクリレート55.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15.0部、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4.0部の混合物を1時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0部をシクロヘキサノン50部に溶解させたものを添加し、さらに80℃で1時間反応を続けて、アクリル樹脂の溶液を得た。アクリル樹脂の重量平均分子量は約40000であった。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加して希釈し、アクリル樹脂1のワニスを得た。
【0135】
塩基性置換基を有する色素誘導体、塩基性置換基を有するアントラキノン誘導体、塩基性置換基を有するアクリドン誘導体、および塩基性置換基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種類の塩基性置換基を有する分散剤を、塩基性置換基を有する分散剤と略記する。
[塩基性置換基を有する分散剤の製造例1]
色素成分である銅フタロシアニン50部をクロロスルホン化した後、アミン成分であるN,N−ジメチルアミノプロピルアミン14部と反応させて、下記一般式(25)に示す塩基性基を有する色素誘導体1を62部得た。
【0136】
塩基性置換基を有する色素誘導体1
一般式(25):
【0137】
【化30】


CuPcは、銅フタロシアニン残基を表す。
[塩基性置換基を有する分散剤の製造例2]
色素成分である銅フタロシアニン50部をクロロメチル化した後、アミン成分であるジブチルアミン40部と反応させて、下記一般式(26)に示す塩基性置換基を有する色素誘導体2を95部得た。
【0138】
塩基性置換基を有する色素誘導体2
一般式(26):
【0139】
【化31】

CuPcは、銅フタロシアニン残基を表す。
[塩基性置換基を有する分散剤の製造例3]
色素成分であるキナクリドン50部をクロロアセトアミドメチル化した後、アミン成分であるN−メチルピペラジン40部と反応させて、下記一般式(27)に示す塩基性置換基を有する色素誘導体3 103部を得た。
【0140】
塩基性置換基を有する色素誘導体3
一般式(27):
【0141】
【化32】

[塩基性置換基を有する分散剤の製造例4]
色素成分としてジフェニルジケトピロロピロールを、アミン成分としてN−アミノプロピルモルホリンを使用し、製造例1と同様の方法により、下記一般式(28)に示す塩基性置換基を有する色素誘導体4を得た。
【0142】
塩基性置換基を有する色素誘導体4
一般式(28):
【0143】
【化33】

[塩基性置換基を有する分散剤の製造例5〜10]
上記塩基性基を有する色素誘導体等の製造例1〜4と同様の方法により、下記に示す塩基性置換基を有する、色素誘導体、アントラキノン誘導体、アクリドン誘導体、およびトリアジン誘導体を得た。
塩基性置換基を有するアントラキノン誘導体
一般式(29):
【0144】
【化34】



塩基性置換基を有する色素誘導体5
一般式(30):
【0145】
【化35】


塩基性置換基を有する色素誘導体6
一般式(31):
【0146】
【化36】

塩基性置換基を有する色素誘導体7
一般式(32):
【0147】
【化37】

塩基性置換基を有するアクリドン誘導体
一般式(33):
【0148】
【化38】

塩基性置換基を有するトリアジン誘導体1
一般式(34):
【0149】
【化39】

【0150】
上記のように塩基性置換基を有する分散剤の製造例1〜10と同様の方法で、顔料成分、アントラキノン、アクリドンまたはトリアジンと、アミン成分を反応することにより、またはアミン成分を有する化合物をカップリング反応して色素を合成することにより、本発明を構成する種々の塩基性基を有する分散剤として、塩基性置換基を有する色素誘導体、塩基性置換基を有するアントラキノン誘導体、塩基性置換基を有するアクリドン誘導体、または塩基性置換基を有するトリアジン誘導体を製造することができる。
(実施例17〜20)<顔料組成物の製造>
表3に示すように、顔料(酸化チタン、和光純薬製)、実施例1〜4にて合成したポリエステル分散剤1〜4、およびシクロヘキサノンを配合し、2mmφジルコニアビーズ100部を加えペイントコンディショナーで3時間分散し、顔料組成物1〜4を作成した。
(比較例8、9)<顔料組成物の製造>
比較例1、2にて合成したカルボキシル基を有するポリエステル分散剤17、18を用いた以外は、実施例17〜20と同様に顔料組成物5,6を作成した。
(実施例21〜36)<顔料組成物の製造>
表3に示すように、顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)、実施例1〜16にて合成したポリエステル分散剤1〜16、製造例4で合成した塩基性置換基を有する色素誘導体4、およびシクロヘキサノンを配合し、2mmφジルコニアビーズ100部を加えペイントコンディショナーで3時間分散し、顔料組成物7〜22作成した。
(比較例10、11)<顔料組成物の製造>
比較例1、2にて合成したカルボキシル基を有するポリエステル分散剤17、18を用いた以外は、実施例21〜36と同様に顔料組成物23、24を作成した。
(顔料組成物1〜24の評価)
本発明の顔料組成物の性能を評価するために、得られた組成物の粘度をB型粘度計(25℃、回転速度100rpm)で、ヘイズをヘイズメーター( 光透過率20%)で測定し、初期粘度およびヘイズで分散体の性能を評価した(粘度は低いほど良好。ヘイズは小さいほど良好)。初期粘度およびヘイズは分散後1日室温で放置後に測定、経時粘度は1週間40℃に放置後に測定を行った。結果を表4に示す。
【0151】
【表4】

以上の評価結果から明らかなように、本発明の実施例1〜16で製造したポリエステル分散剤1〜16を使用した、実施例7〜36の顔料組成物1〜4、および7〜22は、低い初期粘度で、かつ経時粘度の増加がほとんどなく良好な安定性を示している。さらにヘイズも低い。これに対して、比較例1および2で製造したポリエステル分散剤17および18を使用した、比較例8〜10の顔料組成物5および6、並びに23および24では、粘度とヘイズともに高く、分散性に問題があることがわかった。
(実施例37)<顔料分散体の製造>
顔料としてPigment Red 254を9部、塩基性基を有する顔料誘導体(Y1)を1部、ポリエステル分散剤1を1部(固形)、アクリル樹脂(A)45部、シクロヘキサノン44部を、マヨネーズ瓶に仕込み、直径0.5mmのジルコニアビーズ250部を分散メディアとして仕込み、ペイントシェイカーにて本分散を行い、顔料分散体1を得た。
【0152】
得られた顔料分散体の粘度をB型粘度計で測定し、粘度およびTI値(6rpmでの粘度÷60rpmでの粘度)で分散体の性能を評価した。6rpmでの粘度は11mPa・s、60rpmでの粘度は10mPa・sで、TI値は1.10であった。また、得られた顔料分散体を50℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後での顔料分散体の粘度変化について測定した。6rpmでの粘度は10.5mPa・sで変化率は−5%であった。顔料分散体をガラスに塗膜、溶剤除去した後に、200℃、1時間加熱前後の重量損失%は8.5%であった。
(実施例38〜44)
実施例37と同様にして、表5に示す配合比(重量比)により、それぞれ顔料分散体2〜8を得た。また、実施例37と同様の方法で評価した。結果は、表6に示す。
(比較例12〜25)
実施例37と同様にして、表5に示す配合比(重量比)により、それぞれ顔料分散体9〜25を得た。また、実施例37と同様の方法で評価した。結果は、表6に示す。
【0153】
【表5】

(顔料分散体の分散性(粘度)の評価)
顔料分散体の25℃における粘度をB型粘度計で測定し、粘度およびTI値(6rpmでの粘度÷60rpmでの粘度)で分散体の性能を評価した。粘度は、低いほど良好であり、TI値は、1に近いほど良好である。結果を表6に示す。
(顔料分散体の分散安定性(粘度安定性)の評価)
粘度安定性は50℃1週間保存前後の25℃における粘度(6rpm)の変化率が±10%以内なら○、±10%を越えたら×とした。結果を表6に示す。
(顔料分散体の着色塗膜の耐熱性(重量損失)の評価)
塗膜重量損失は、ガラスに塗膜、溶剤除去した後に、200℃、1時間加熱前後の重量損失が10%以内であれば○、10%未満であれば×とした。結果を表6に示す。
(顔料分散対による着色塗膜のコントラスト比の評価)
また、得られた顔料分散体を膜厚が1ミクロンとなるようにスピンコート法によりガラス基板に塗布し、70℃20分乾燥後、コントラスト比を測定した。さらに、250℃1時間加熱した後、コントラスト比を測定した。結果を表6に示す。
【0154】
コントラスト比の測定は、顔料分散体を塗布したガラス基板の両側に偏光板を重ね、偏向板が平行時の輝度(Lp)と直行時の輝度(Lc)との比、Lp/Lcをコントラスト比として算出した。輝度は、色彩輝度計(トプコン社製BM−5A)を用い、2°視野の条件で測定した。結果を表6に示す。
(顔料分散体による着色塗膜の耐熱性(コントラスト比)の評価)
また、250℃1時間加熱後のコントラストと、70℃20分乾燥後のコントラストとの比率を変化率として示した。結果を表6に示す。
【0155】
【表6】


以上の評価結果から明らかなように、本発明のポリエステル分散剤を使用した実施例37〜44の顔料分散体は、低い初期粘度で、かつ経時粘度の増加がほとんどなく良好な安定性を示している。また加熱によるコントラストの低下も少ない。これに対して、比較例12〜25の顔料分散体では、粘度が高く、分散剤の使用量を多くしなければならない。また低分子量である分散剤を多く使用するため粘度に問題がなくとも塗膜の耐性に問題が生じていることがわかった。さらに、加熱によってコントラストが低下することがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(a)の水酸基と、ポリカルボン酸無水物(b)の酸無水物基とを反応させてなる、ポリオール部位(A)とポリカルボン酸部位(B)とを交互に有するポリエステル分散剤において、ポリオール部位(A)の一部又は全部が、S原子を介して、エチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合してなるガラス転移温度50℃以上のビニル重合体部位(C)を有するポリエステル分散剤。
【請求項2】
エチレン性不飽和単量体(c)を、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(a1)の存在下、ラジカル重合してなる片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a2)を少なくとも含むポリオール(a3)中の水酸基と、
テトラカルボン酸二無水物(b1)を少なくとも含むポリカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基とを、反応させてなるポリエステル分散剤において、
エチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合してなるビニル重合体部位(C)のガラス転移温度が50℃以上であるポリエステル分散剤。
【請求項3】
分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)を少なくとも含むポリオール(a4)中の水酸基と、
テトラカルボン酸二無水物(b1)を少なくとも含むポリカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基とを、反応させてなるポリエステル(D)の存在下、
エチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合してなるポリエステル分散剤において、
エチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合してなるビニル重合体部位(C)のガラス転移温度が50℃以上であるポリエステル分散剤。
【請求項4】
重量平均分子量が2,000〜25,000であり、かつ、酸価が5〜200mgKOH/gである請求項1〜3いずれか記載のポリエステル分散剤。
【請求項5】
テトラカルボン酸二無水物(b1)が、下記一般式(1)または一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のポリエステル分散剤。
一般式(1):
【化1】

[一般式(1)中、kは1または2である。]
一般式(2):
【化2】

[一般式(2)中、Q1は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO−、−SO2−、−C(CF32−、一般式(3):
【化3】

で表される基、または一般式(4):
【化4】

で表される基である。]
【請求項6】
エチレン性不飽和単量体(c)をラジカル重合してなるガラス転移温度が50℃以上のビニル重合体部位(C)の重量平均分子量が、1,000〜10,000である請求項1〜5いずれか記載のポリエステル分散剤。
【請求項7】
エチレン性不飽和単量体(c)が、下記一般式(5)で表わされる単量体を含む請求項1〜6いずれか記載のポリエステル分散剤。
一般式(5):
【化5】


[一般式(5)中、Rは、水素または炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状の化合物残基である。]
【請求項8】
顔料と、請求項1〜7いずれか記載のポリエステル分散剤とを、含有してなる顔料組成物。
【請求項9】
さらに、塩基性置換基を有する分散剤として、塩基性置換基を有する色素誘導体、塩基性置換基を有するアントラキノン誘導体、塩基性置換基を有するアクリドン誘導体、および塩基性置換基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種類を含有してなる請求項8記載の顔料組成物。
【請求項10】
請求項8または9記載の顔料組成物をワニスに分散させてなる顔料分散体。

【公開番号】特開2009−165925(P2009−165925A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5061(P2008−5061)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】