説明

ポリエステル分散液の製造方法

【課題】小粒径かつシャープな粒度分布を有し、離型性に優れた熱転写受像シートを得ることができるポリエステル分散液を安定して製造しうるポリエステル分散液の製造方法、該製造方法で得られるポリエステル分散液、及び、該ポリエステル分散液を用いて得られる、離型性に優れた熱転写受像シート、これに用いる受容層組成物を提供する。
【解決手段】(1)LogP値が3.0〜5.0であるポリエステルを有機溶剤に溶解しポリエステルの溶液を得る工程、(2)工程(1)で得られたポリエステルの溶液に、式 10≦A×B≦18(式中、Aはポリエステル溶液中のポリエステルの中和当量、Bはポリエステルの酸価(mgKOH/g)を示す。)を満たすように中和剤を添加して、ポリエステルを中和する工程、及び(3)工程(2)で中和されたポリエステルの溶液に水を添加してポリエステルを乳化させる工程、を有する、ポリエステル分散液の製造方法、該方法により得られるポリエステル分散液、それを用いた熱転写受像シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル分散液の製造方法、該製造方法により得られるポリエステル分散液、該分散液を含有する受容層組成物、及び該受容層組成物を有する熱転写受像シートに関する。
【背景技術】
【0002】
昇華性染料を記録剤とし、これを基材に担持させた熱転写シートを用いて、昇華性染料で染着可能な熱転写受像シート上にカラー画像を形成する方法が提案されている。これは加熱手段としてプリンターのサーマルヘッドなどを使用し、加熱によって染料を受像シートに転写させてカラー画像を得るものである。このようにして形成された画像は、染料を用いることから非常に鮮明であり、且つ透明性に優れているため、中間色の再現性や階調性に優れ、高品質の画像が期待できる。
上記熱転写受像シートの染料受容層としては、染料の染着性に優れる点から、ポリエステルが使用されることがある。このようなポリエステルは、通常ポリエステルの分散液として用いられ、特に小粒径で粒度分布の狭いポリエステル粒子の分散液が望まれている。
上述のようなポリエステルの分散液としては、例えば、特許文献1〜3に記載されたものが知られている。すなわち、特許文献1には、ビスフェノールAを原料とするポリエステルを使用したトナー用の樹脂分散液が開示されており、また、特許文献2、3には、特定の酸価や中和度を規定したポリエステル開示され、これにより粒度分布に優れる分散液が得られることが示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−295100号公報
【特許文献2】特開2007−277496号公報
【特許文献3】特開2006−182951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱転写受像シートの染料受容層においては、染料シートとの熱による融着が問題となっているが、上記特許文献には、粒径の制御については記載されているものがあるが、融着性(離型性)については記載されたものはなく、未だ粒径の制御と離型性の両立は困難であった。
本発明は、小粒径かつシャープな粒度分布を有し、離型性に優れた熱転写受像シートを得ることができるポリエステル分散液を安定して製造しうるポリエステル分散液の製造方法、該製造方法で得られるポリエステル分散液、及び、該ポリエステル分散液を用いて得られる、離型性に優れた熱転写受像シート、これに用いる受容層組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
[1](1)LogP値が3.0〜5.0であるポリエステルを有機溶剤に溶解しポリエステルの溶液を得る工程、
(2)工程(1)で得られたポリエステルの溶液に、式
10≦A×B≦18
(式中、Aはポリエステル溶液中のポリエステルの中和当量、Bはポリエステルの酸価(mgKOH/g)を示す。)
を満たすように中和剤を添加して、ポリエステルを中和する工程、及び
(3)工程(2)で中和されたポリエステルの溶液に水を添加してポリエステルを乳化させる工程、
を有する、ポリエステル分散液の製造方法、
【0006】
[2]上記[1]記載の方法により得られるポリエステル分散液、
[3]上記[2]記載のポリエステル分散液に離型剤を添加する工程を有する、熱転写受像シート用受容層組成物の製造方法、及び
[4]基材、及び該基材の少なくとも一方の面に、上記[3]記載の製造方法で得られる熱転写受像シート用受容層組成物からなる染料受容層を有する熱転写受像シート、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小粒径かつシャープな粒度分布を有し、離型性に優れた熱転写受像シートを得ることができるポリエステル分散液を安定して製造しうるポリエステル分散液の製造方法、該製造方法で得られるポリエステル分散液、及び、該ポリエステル分散液を用いて得られる、離型性に優れた熱転写受像シート、これに用いる受容層組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<ポリエステル分散液の製造方法>
本発明のポリエステル分散液の製造方法は、(1)LogP値が3.0〜5.0であるポリエステルを有機溶剤に溶解しポリエステルの溶液を得る工程、(2)工程(1)で得られたポリエステルの溶液に、式 10≦A×B≦18(式中、Aはポリエステル溶液中のポリエステルの中和当量、Bはポリエステルの酸価(mgKOH/g)を示す。)を満たすように中和剤を添加して、ポリエステルを中和する工程、及び(3)工程(2)で中和されたポリエステルの溶液に水を添加してポリエステルを乳化させる工程、を有するものである。
【0009】
すなわち、本発明においては、工程(1)で得られたポリエステルの溶液に中和剤を加えて、上記ポリエステルのカルボキシル基をイオン化し、水を加えた後、より好ましくは有機溶剤を留去してポリエステルを乳化させる。具体的には、例えば、攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管のついた反応器を準備し、有機溶剤に溶解したポリエステルに中和剤を加え、カルボキシル基をイオン化し(すでにイオン化されている場合は不要)、更に水を加えた後、より好ましくは有機溶剤を留去して水系に転相する。
【0010】
[工程(1)]
工程(1)は、LogP値が3.0〜5.0であるポリエステルを有機溶剤に溶解しポリエステルの溶液を得る工程である。
(ポリエステル)
本発明において、ポリエステルとしては、熱転写受像シートの離型性、染料の染着性の観点から、下記アルコール成分を原料モノマーとして得られるものが好ましい。すなわち、
(a)式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、ROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基又はプロピレン基を表し、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、かつxとyの和の平均値が2〜7である。)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含有し、かつ(b)該2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物における、エチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物の含有比率(エチレンオキサイド付加物/プロピレンオキサイド付加物)がモル比で50/50〜0/100である、アルコ−ル成分である。
【0013】
ポリエステルを形成する原料モノマーとして、上記式(1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含有するアルコール成分を用いる。一般式(1)において、Rはエチレン基又はプロピレン基を表わす。x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を表わし、各々正の数である。各Rは同一でも異なっていてもよい。xとyの和の平均値は、カルボン酸との反応性の観点から、2〜7であり、好ましくは2〜5、より好ましくは2以上4未満である。
【0014】
上記式(1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物としては、具体的には、上記付加モル数を有するポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
上記式(1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、そのエチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物の含有比率(エチレンオキサイド付加物/プロピレンオキサイド付加物)がモル比で50/50〜0/100である。上記含有比率が、上記範囲内であれば熱転写受像シートの離型性に優れることから好ましい。上記観点から、上記含有比率は、40/60〜0/100であることが好ましく、より好ましくは30/70〜0/100である。
【0015】
上記式(1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、熱転写受像シートの離型性、染料の染着性の観点から、原料アルコール成分中に80モル%以上含有されるが、好ましくは90モル%以上含有され、より好ましくは100モル%含有される。
【0016】
本発明においては、原料成分であるアルコール成分として、上記式(1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物とともにこれ以外の公知のアルコール成分を使用することができる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられる。このアルコール成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
また、原料成分としてのカルボン酸成分としては、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸等のジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。上記カルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明においては、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸を用いることが好ましく、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基で置換されたコハク酸を用いることがより好ましく、炭素数8〜22の、より好ましくは炭素数10〜20の、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数8〜22の、より好ましくは炭素数10〜20の、直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基がより好ましい。
具体的には、アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸において、アルキル基としては、例えば各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種イコシル基などを挙げることができる。
【0019】
また、アルケニル基としては、例えば各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、各種イコセニル基などを挙げることができる。
アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸は、カルボン酸成分中に5〜50モル%含有されることが好ましく、これにより、熱転写受像シートへの染料の染着性が向上する。これは、上記のコハク酸の側鎖にあるアルキル基及び/又はアルケニル基の存在により、ポリエステル間の相互作用が弱まり、染料がポリエステル内部に染み込むためと推察され、染料の浸透性の観点から、上記コハク酸は、カルボン酸成分中に
10〜40モル%含有されることがより好ましく、20〜40モル%含有されることが更に好ましい。
【0020】
ポリエステルは、例えば、上記アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができるが、本発明の熱転写受像シートの型性の観点から、原料のポリエステルはシャープな分子量分布を有することが好ましく、エステル化触媒を用いて縮重合をすることが好ましい。エステル化触媒としては、錫触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、2酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられる。
熱転写受像シートの離型性、染料の染着性の観点から、ポリエステルの軟化点は80〜165℃が好ましく、ガラス転移点は50〜85℃が好ましい。酸価は、ポリエステルの水性媒体中での分散性、すなわち乳化性の観点から、1〜35mgKOH/gが好ましく、5〜35mgKOH/g、更に7〜35mgKOH/gがより好ましく、10〜35mgKOH/gが更に好ましい。ガラス転移点、軟化点及び酸価は、いずれも用いるモノマーの種類・配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、熱転写受像シートを得る際の造膜性の観点から、ポリエステルの数平均分子量は1,000〜10,000が好ましく、2,000〜8,000がより好ましい。
【0021】
尚、本発明において、ポリエステルには、上記範囲範囲内において、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルも含まれる。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルや、ポリエステルユニットを含む2種以上の樹脂ユニットを有する複合樹脂が挙げられる。
【0022】
本発明においては、ポリエステルのLogP値は3.0〜5.0である。LogP値は3.0〜4.7であることが好ましく、3.1〜4.5であることが更に好ましい。LogP値が3.0以上であれば、熱転写受像シートの疎水性を向上させ離型性を向上させることができ、また、5.0以下であれば、ポリエステル分散液の生産安定性(バッチによらず安定した粒子径、粒度分布を有するポリエステル粒子の生産ができること)を向上できる。ここで「LogP値」とは、1−オクタノール/水の分配係数の対数値を意味し、KowWin(Syracuse Research Corporation,USA)のSRC's LOGKOW/KOWWIN Programにより、フラグメントアプローチで計算された数値を用いる(The KowWin Program methodology is described in the following journal article: Meylan, W.M. and P.H. Howard. 1995. Atom/fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients. J. Pharm. Sci. 8 4: 83-92.)。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している。LogP値は、一般に有機化合物の親疎水性の相対的評価に用いられる数値である。
【0023】
LogP値は、ポリエステルのアルコール成分に、芳香族ジアルコールを、好ましくは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を使用したり、カルボン酸成分に炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸を使用すると、他のモノマーにより合成されたポリエステルより大きな値を示し、ポリエステルのアルコール成分に1,2プロパンジオール等の脂肪族アルコールや、カルボン酸成分にフマル酸等の脂肪族ジカルボン酸を使用すると、他のモノマーにより合成されたポリエステルより小さな値を示すことから、これらの方法により調整することができる。
【0024】
本発明におけるポリエステルのLogP値は、以下の計算方法により求めることができる。
1.ポリエステルを構成するモノマーに由来する各構成単位のLogP値を前記SRC's LOGKOW/KOWWIN Programにより求める。
2.各構成単位のLogP値に、ポリマー鎖中のそのモノマー由来の構成単位のモル比率(M)を乗じて、各構成単位ごとの(LogP×M)を求める。
3.上記2で得られた、各構成単位ごとの(LogP×M)を全て合計することで、ポリエステルのLogP値を算出する。
【0025】
(有機溶剤)
本発明において、上記ポリエステルを溶解する有機溶剤としては樹脂の溶解性及び溶剤の留去の容易性の観点から、ケトン系溶剤が好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられ、好ましくは、メチルエチルケトンである。
得られるポリエステル溶液中におけるポリエステルの濃度は、一般に5〜60重量%であり、ポリエステル分散液中のポリエステル粒子の粒径制御及び生産性の観点から、10〜50重量%であることが好ましく、10〜40重量%がさらに好ましい。
【0026】
「工程(2)」
工程(2)は、工程(1)で得られたポリエステルの溶液に、式 10≦A×B≦18(式中、Aはポリエステル溶液中のポリエステルの中和当量、Bはポリエステルの酸価(mgKOH/g)を示す。)を満たすように中和剤を添加して、ポリエステルを中和する工程である。
【0027】
すなわち、本発明においては、前記工程(1)で得られたポリエステルの溶液に中和剤を加えて、上記ポリエステルのカルボキシル基をイオン化し、水を加えた後、より好ましくは有機溶剤を留去してポリエステルを乳化させる方法により得られる。具体的には、例えば、攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管のついた反応器を準備し、有機溶剤に溶解したポリエステルに中和剤を加え、カルボキシル基をイオン化し(すでにイオン化されている場合は不要)、更に水を加えた後、有機溶剤を留去して水系に転相する。
【0028】
中和剤としては、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、アリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ジイソブチルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、トリ−n−オクチルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、n−プロパノールアミン、ブタノールアミン、2−アミノ−4−ペンタノール、2−アミノ−3−ヘキサノール、5−アミノ−4−オクタノール、3−アミノ−3−メチル−2−ブタノール、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、ジグリコールアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,6−ジアミノヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,12−ジアミノドデカン、二量体脂肪酸ジアミン、2,2,4,−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、N−アミノプロピルジピペリジプロパン、ピペラジン等のアミン類等を使用することができるが、揮発性が高く、良好な熱転写受像シートの離型性が得られることから、アンモニア水、水酸化ナトリウムが好ましく、アンモニア水がより好ましい。
【0029】
これらの中和剤の使用量は、下記式を満たす量であって、ポリエステルの酸価を中和できる量であることが好ましい。
すなわち、本発明においては、上記中和剤の添加は、ポリエステルの溶液について、式
10≦A×B≦18
(式中、Aはポリエステル溶液のポリエステルの中和当量、Bはポリエステルの酸価(mgKOH/g)を示す。)を満たすように行うことが必要である。中和剤を上記式を満たすようにポリエステル溶液に添加することで、生産安定性、すなわち、一定の大きさを有するポリエステルの乳化粒子を生産バッチに関わりなく製造できるという驚くべき効果を奏する。
【0030】
生産安定性の観点から、上記A×Bの値は、11≦A×B≦18を満たすことが好ましく、12≦A×B≦18を満たすことがより好ましい。
なお、中和剤の添加は、通常有機溶剤の沸点以下の温度で行うことが好ましく、より好ましくは50℃以下で行う。
【0031】
「工程(3)」
工程(3)は、工程(2)で中和されたポリエステルの溶液に水を添加してポリエステルを乳化させる工程である。
本発明においては、工程(2)で中和されたポリエステルの溶液に水を添加して乳化させ、水性媒体中にポリエステル粒子を含有するポリエステル分散液とする。
【0032】
本発明において、中和された溶液に添加する水としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。水の添加量は、ポリエステル分散液の生産性安定性の観点から、分散液の乳化を容易にしうる量であればよいが、具体的には、ポリエステル100重量部に対し、100〜900重量部であることが好ましく、150〜400重量部であることがより好ましい。水の添加は、ポリエステル分散液の生産安定性の観点から、60℃以下で行うことが好ましく、より好ましくは50℃以下で行う。
【0033】
本発明においては、上記水の添加後、必要に応じ有機溶剤を留去することにより、分散液を水系に転相し、乳化させる。有機溶剤の留去は、減圧下加熱する等常法により行うことができる。
乳化の際の温度は、生産安定性の観点から、60℃以下であることが好ましく、より好ましくは50℃以下である。
【0034】
なお、本発明においては、使用するポリエステルは、生産安定性と耐水性の観点から、自己分散性を有するものであることが好ましく、従って、本発明における「乳化」は自己乳化であることが好ましい。また、本発明のポリエステル分散液には、熱転写受像シートの疎水性を向上させる観点から、界面活性剤を含有しないことが好ましい。
【0035】
<ポリエステル分散液>
本発明のポリエステル分散液は、上述の製造方法により得られるものである。
ポリエステル分散液中のポリエステル粒子には、前述のポリエステル以外の樹脂を含有することができ、該ポリエステル以外の樹脂としては、熱転写受像シートの染料受容層として用いられる公知の樹脂、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル、ポリビニルアセタール等のビニルポリマー、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等を挙げることができる。
樹脂粒子中のポリエステルの含有量は、染料の染着性の観点から、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、100重量%であることが更に好ましい。
【0036】
本発明においては、ポリエステルは、環境性の観点から、水性媒体中に分散させてなる分散液中のポリエステル粒子として含有されることが好ましい。
上記ポリエステルを分散させる水性媒体とは、水を主成分とするもの、すなわち、水が50%以上のものである。環境性の観点から、水性媒体中の水の含有量は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、100重量%がさらに好ましい。水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
【0037】
上記ポリエステル分散液は、保存安定性、及び本発明のポリエステル分散液を用いて得られた熱転写受像シートの保存安定性、離型性の観点から、その固形分のガラス転移点が40〜80℃であることが好ましく、より好ましくは50〜75℃である。また軟化点は80〜250℃であることが好ましく、より好ましくは120〜220℃である。数平均分子量は、前記ポリエステルの分子量と同様である。
上記ポリエステル分散液中の固形分濃度は、生産性の観点から、20〜45重量%であることが好ましく、より好ましくは25〜45重量%、更に好ましくは30〜45重量%である。また、ポリエステル分散液の25℃におけるpHはその保存安定性の観点から、5〜10であることが好ましく、より好ましくは6〜9、更に好ましくは7〜8である。
【0038】
ポリエステル分散液中のポリエステル粒子は、熱転写受像シートを得る際の造膜性の観点から、その体積中位粒径(D50)が1μm以下であることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、更に好ましくは50〜800nmである。ここで「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。その測定方法は後述の通りである。
ポリエステルは、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、上記分散液の固形分中に、80〜100重量%含有されることが好ましく、より好ましくは85〜100重量%含有され、更に好ましくは90〜100重量%含有される。
【0039】
<熱転写受像シート用受容層組成物の製造方法>
本発明において、熱転写受像シート用受容層組成物は、上記本発明のポリエステル分散液を含有するものであり、その製造方法は、本発明のポリエステル分散液に離型剤を添加する工程を有するものであることが好ましい。
離型剤としては、例えば、水分散性あるいは水溶性の変性シリコーンオイル及び/又は無水珪酸の微粒子のコロイド溶液(例えば、コロイダルシリカ)等を使用することが好ましい。上記無水珪酸の微粒子のコロイド溶液中における平均粒径は染料受容層組成物中の分散性の観点から、100nm以下が好ましく、20nm以下のコロイダルシリカを使用することがより好ましい。染料受容層組成物には、上記離型剤以外に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の離型剤を含有することができる。これらの離型剤は、熱転写受像シートの離型性、染料の染着性の観点から、染料受容層組成物中に、ポリエステルを含む樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部含有するように添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量部である。
【0040】
染料受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、受容層組成物には、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリンクレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカ等の顔料や充填剤を含有することができる。これらの顔料や充填剤は、熱転写受像シートの白色度の観点から、本発明の受容層組成物中に、樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部含有することができる。
本発明の受容層組成物には、更に必要に応じて、例えば、ブチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトールなどの造膜剤、架橋剤、硬化剤、触媒等の添加剤を含有することもできる。
【0041】
<熱転写受像シート>
本発明の熱転写受像シートは、基材、及び該基材の少なくとも一方の面に上述の製造方法で得られる熱転写受像シート用受容層組成物からなる染料受容層を有するものであることが好ましい。
[染料受容層]
本発明の熱転写受像シートは、基材の少なくとも一方の面に、上記受容層組成物を塗工液として、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により塗布及び乾燥して染料受容層を形成することによって得られる。
以上の如く形成される染料受容層の厚さは、一般には1〜50μmの厚さであり、画質及び生産性の観点から、3〜15μmであることが好ましい。また、乾燥後の固形分量としては、受容層1m2当たり3〜15gであることが好ましい。
染料受容層には、転写時に熱転写シートとの離型性を更に向上させる観点から、離型剤を含む離型層を形成することができる。好ましい離型層としては、ヒドロキシ変性、アミノ変性、カルボキシ変性、メルカプト変性等の各反応性シリコーンを用いることが好ましく、この反応性シリコーンは、必要に応じて架橋剤を用いて架橋させてもよい。
【0042】
[熱転写受像シート]
本発明の熱転写受像シートは、基材の少なくとも一方の面に上記染料受容層を形成してなるものであるが、上記基材としては、例えば合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート等の各種の樹脂のフイルム又はシート等が使用でき、また、これらの樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フイルムあるいは発泡させた発泡シート等も使用できる。また、上記基材を組み合わせた積層体も使用できる。
これらの基材の厚みは、例えば、10〜300μm程度が一般的である。上記の如き基材には、染料受容層との密着力を向上する観点から、その表面にプライマー処理やコロナ放電処理を施すことが好ましい。
【0043】
上記の如き本発明の熱転写受像シートを使用して熱転写を行う際に使用する転写シートは、通常、紙やポリエステルフイルム上に昇華性染料を含む染料層を設けたものであり、従来公知の転写シートをいずれも使用することができる。
本発明の熱転写受像シートに好適に使用できる昇華性染料としては、例えばイエロー染料では、ピリドンアゾ系、ジシアノスチリル系、キノフタロン系、メロシアニン系;マゼンタ染料では、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾメチン系、イソチアゾール系、ピラゾロトリアゾール系;シアン染料では、アントラキノン系、シアノメチレン系、インドフェノール系、インドナフトール系が挙げられる。
また、熱転写時の熱エネルギーの付与手段としては、従来公知の付与手段がいずれも使用でき、例えば、サーマルプリンター等の記録装置によって、記録時間をコントロールすることにより、5〜100mJ/mm2程度の熱エネルギーを付与することによって行うことが出来る。
【実施例】
【0044】
以下に実施例等により、本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例等においては、各性状値は次の方法により測定、評価した。
[樹脂の酸価]
JIS K0070に従って測定する。但し、測定溶媒は、エタノールとエーテルの混合溶媒を、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))とした。
【0045】
[ポリエステルの軟化点及びガラス転移点]
(1)フローテスター(島津製作所、「CFT−500D」)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
(2)ガラス転移点
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製、Pyris6DSC)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0046】
[ポリエステルの数平均分子量]
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量分布を測定し、数平均分子量を算出する。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター[住友電気工業社製、「FP−200」]を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2)分子量分布測定
下記装置を用いて、THFを毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製の2.63×103、2.06×104、1.02×105、ジーエルサイエンス社製の2.10×103、7.00×103、5.04×104)を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:CO−8010(東ソー社製)
分析カラム:GMHLX+G3000HXL(東ソー社製)
【0047】
[ポリエステル分散粒子の粒径及び粒度分布]
レーザー回折型粒径測定機(HORIBA社製、「LA−920」)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で、体積中位粒径(D50)と変動係数(CV)を測定する。なお、CVは体積中位粒径の標準偏差を体積中位粒径で除した値である。
【0048】
[ポリエステル分散液の固形分濃度]
赤外線水分計(ケツト科学研究所社製:FD−230)を用いて、分散液5gを乾燥温度150℃,測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)にて、ウェットベースの水分%を測定する。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(%)=100−M
M:ウェットベース水分(%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料重量(初期試料重量)
0:測定後の試料重量(絶対乾燥重量)
【0049】
製造例1(ポリエステルP−1の製造)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 17,500g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 16,250g、テレフタル酸 11,454g、ドデセニルコハク酸無水物 1,608g、トリメリット酸無水物 4,800g及びジブチル錫オキサイド 15gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、220℃で攪拌し、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が120℃に達するまで反応させて、ポリエステルP−1を得た。得られたポリエステルP−1の軟化点は125℃、ガラス転移点は65℃であり、酸価は19.0mgKOH/g、数平均分子量は3,580で、LogPは3.96であった。
【0050】
LogPの計算例
ポリエステルを構成するモノマーに由来する各構成単位のLogP値とポリマー鎖中のそのモノマー由来の構成単位のモル比率は下記のようになる。
(各モノマーのlogP値と各モノマー由来の構成単位のモル比)
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(logP:6.50、モル比率:25.0%)
・ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(logP:5.64、モル比率:25.0%)
・テレフタル酸(logP:0.57、モル比率:34.5%)
・ドデセニルコハク酸無水物(logP:5.90、モル比率:12.5%)
・トリメリット酸無水物(logP:−0.14、モル比率:3.0%)
【0051】
従って、各モノマーのLogP値とモル比を乗じたものを合計し100で徐することにより、上記ポリエステルP−1のLogP値として3.96の値が得られる。
6.50×25.0+5.64×25.0+0.57×34.5+5.90×12.5−0.14×3.0)/100
【0052】
製造例2(ポリエステルP−2の製造)
ポリオキシプロピレン(2.2)―2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3920g、ポリオキシエチレン(2.0)―2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1560g、ドデセニルコハク酸無水物1672g、テレフタル酸1354g、ジオクチル酸錫(II)25gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、常圧下230℃で5時間反応させ、更に減圧下で反応をした。無水トリメリット酸307gを加え、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が120℃に達するまで反応させて、ポリエステルP−2を得た。得られたポリエステルP−2の軟化点は115℃、ガラス転移点は57℃、酸価は14.9mgKOH/g、数平均分子量は4200、LogPは4.41であった。
【0053】
製造例3(ポリエステルP−3の製造)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン525g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1950g、テレフタル酸1552g、グリセリン138g及びジオクチル酸錫(II)21gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、220℃で攪拌し、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が120℃に達するまで反応させて、ポリエステルP−3を得た。得られたポリエステルP−3の軟化点は121℃、ガラス転移点は73℃、酸価は20.2mgKOH/g、LogPは2.80であった(グリセリンのLogPとして1.69を用いた)。

以上のポリエステルP−1〜P−3の各々の原料組成及び性状について、表1にまとめて示す。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1
窒素導入管、還流冷却管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコにポリエステル樹脂(P−1)2,000gを入れ、25℃でメチルエチルケトン3,600gに溶解させた。次いで、25%アンモニア水36.9gを添加して、攪拌下でイオン交換水4667gを加えた後、減圧下50℃でメチルエチルケトンを留去し、ポリエステル分散液E1(Lot.1)を得た。得られたポリエステル分散液E1(Lot.1)中のポリエステル粒子の体積中位粒径は93nm、変動係数(CV値)は19.3、固形分は35.3%であった。
上記と同様の操作を更に2回行い、ポリエステル分散液E1(Lot.2)およびポリエステル分散液E1(Lot.3)を得た。得られたポリエステル分散液E1(Lot.2、3)の体積中位粒径はそれぞれ96nm、94nm、変動係数(CV値)はそれぞれ20.5、19.7、固形分はそれぞれ34.4%、36.1%であった。
ポリエステル分散液E1(Lot.1〜3)のバッチ間の体積中位粒径の標準偏差は1.2nmであった。
【0056】
実施例2
実施例1において、25%アンモニア水の量を27.6gに変更した他は、同様にして、ポリエステル分散液E2(Lot.1〜3)を得た。
得られたポリエステル分散液E2(Lot.1〜3)の、各々の体積中位粒径、変動係数、及び固形分は表2に示す通りであった。
【0057】
実施例3
実施例1において、ポリエステル樹脂をP−2に、25%アンモニア水の量を32.5gに変更した他は、同様にして、ポリエステル分散液E3(Lot.1〜3)を得た。
得られたポリエステル分散液E3(Lot.1〜3)の、各々の体積中位粒径、変動係数、及び固形分は表2に示す通りであった。
【0058】
実施例4
実施例3において、25%アンモニア水の量を25.3gに変更した他は、同様にして、ポリエステル分散液E4(Lot.1〜3)を得た。
得られたポリエステル分散液E4(Lot.1〜3)の、各々の体積中位粒径、変動係数、及び固形分は表2に示す通りであった。
【0059】
比較例1
実施例1において、25%アンモニア水の量を46.1gに変更した他は、同様にして、ポリエステル分散液E5(Lot.1〜3)を得た。
得られたポリエステル分散液E5(Lot.1〜3)の、各々の体積中位粒径、変動係数、及び固形分は表2に示す通りであった。
【0060】
比較例2
実施例1において、25%アンモニア水の量を23.0gに変更した他は、同様にして、ポリエステル分散液E6(Lot.1〜3)を得た。
得られたポリエステル分散液E6(Lot.1〜3)の、各々の体積中位粒径、変動係数、及び固形分は表2に示す通りであった。
【0061】
比較例3
実施3において、25%アンモニア水の量を18.1gに変更した他は、同様にして、ポリエステル分散液E7(Lot.1〜3)を得た。
ただし、ポリエステル分散液E7(Lot.1、3)では溶剤の留去の過程で樹脂の析出が起こったため操作をとりやめた。
得られたポリエステル分散液E7(Lot.2)の体積中位粒径、変動係数、及び固形分は表2に示す通りであった。
【0062】
比較例4
実施例1において、ポリエステルをP−3に、25%アンモニア水の量を36.7gに変更した他は、同様にして、ポリエステル分散液E8(Lot.1〜3)を得た。
得られたポリエステル分散液E8(Lot.1〜3)の、各々の体積中位粒径、変動係数、及び固形分は表2に示す通りであった。
【0063】
比較例5
比較例4において、25%アンモニア水の量を22.4gに変更した他は、同様にして、ポリエステル分散液E9(Lot.1〜3)を得た。
ただし、ポリエステル分散液E9(Lot.1、2)では溶剤の留去の過程で樹脂の析出が起こったため操作をとりやめた。
得られたポリエステル分散液E9(Lot.3)の体積中位粒径、変動係数、及び固形分は表2に示す通りであった。
【0064】
上記実施例1〜4、比較例1〜5の各々の仕込み組成、ポリエステルの酸価に対する電解質当量A、ポリエステルの酸価B、AとBの積(A×B)、および得られたポリエステル分散液E1〜9の体積中位粒径、変動係数(CV値)、固形分、Lot(バッチ)間の体積中位粒径の標準偏差を表2に示す。

なお、ポリエステル分散液の生産安定性及び熱転写シートの離型性は以下の方法で評価した。
【0065】
[生産安定性]
各実施例、比較例の各々の分散液3Lotについて、それぞれ体積中位粒径、CV値及び固形分量を測定した。体積中位粒径については、その標準偏差を算出した。標準偏差が小さいほど、安定して生産できていることを示す。
【0066】
[離型性(転写シートとの離型性の評価)]
ポリエステル分散液(30重量%)2.5gにジエチレングリコールジエチルエーテル0.12g、KF615A(信越化学工業社製、ポリエーテル変性シリコーン)0.04gを混合して塗工液(受容層組成物)を製造した。
合成紙YUPO FGS−250(YUPO社製 厚さ250μm、坪量200g/m2)に得られた塗工液(受容層組成物)をワイヤーバーにより乾燥後に5.0g/m2になるように、25℃で塗布した後50℃で乾燥させて熱転写受像シートを得た。
【0067】
この熱転写受像シートに昇華型プリンタ(キヤノン社製、SELPHY ES−1)を用いてモノクロの階調パターン(18階調)を印画した。モノクロの階調パターンとは、L値を0から255まで15刻みで変化させた0.6cm四方のベタ画像である。
階調パターン印画時のインクリボンと染料受容層の剥離音から、下記基準で熱融着性を判断した。
A:剥離時に異音はなく、熱転写染料受容層とインクリボンとの熱融着に起因する問題もない
B:剥離時に若干の異音が聞こえるものの、熱融着に起因する問題はない
C:熱融着しており、剥離が困難である
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のポリエステル分散液は、小粒径かつシャープな粒度分布を有するポリエステル分散液として安定して製造でき、またこれを用いて得られる熱転写受像シートは離型性に優れていることから、熱転写受像シートに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)LogP値が3.0〜5.0であるポリエステルを有機溶剤に溶解しポリエステルの溶液を得る工程、
(2)工程(1)で得られたポリエステルの溶液に、式
10≦A×B≦18
(式中、Aはポリエステル溶液中のポリエステルの中和当量、Bはポリエステルの酸価(mgKOH/g)を示す。)
を満たすように中和剤を添加して、ポリエステルを中和する工程、及び
(3)工程(2)で中和されたポリエステルの溶液に水を添加してポリエステルを乳化させる工程、
を有する、ポリエステル分散液の製造方法。
【請求項2】
ポリエステルが、(a)式(1)
【化1】

(式中、ROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基又はプロピレン基を表し、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、かつxとyの和の平均値が2〜7である。)
で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含有し、かつ(b)上記2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイド付加物中における、エチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物の含有比率(エチレンオキサイド付加物/プロピレンオキサイド付加物)がモル比で50/50〜0/100であるアルコール成分を用いて得られる、請求項1記載のポリエステル分散液の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法で得られるポリエステル分散液。
【請求項4】
請求項3記載のポリエステル分散液に離型剤を添加する工程を有する、熱転写受像シート用受容層組成物の製造方法。
【請求項5】
基材、及び該基材の少なくとも一方の面に、請求項4記載の製造方法で得られる熱転写受像シート用受容層組成物からなる染料受容層を有する、熱転写受像シート。

【公開番号】特開2010−6976(P2010−6976A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168823(P2008−168823)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】