説明

ポリエステル及び感圧式接着剤組成物

【課題】本発明は、液晶セル用のガラス基板に偏光フィルムを積層するために使用する感圧式接着剤に関し、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性等を有する接着剤層を形成し得る感圧式接着剤組成物に好適に用いられることの出来るポリエステルを提供することを目的とする。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸系成分を含み、ダイマー酸を含まないCOOH系成分と、一般式(1)に示される水酸基間の炭素数が4以上の直鎖脂肪族ジオール、一般式(2)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール及び/又は下記一般式(3)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール、側鎖にアルキル基を有する他のジオール、及び3個以上の水酸基を有する化合物を含むOH成分と、を反応させてなるガラス転移温度が−80〜0℃のポリエステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種被着体との接着性、耐熱性、耐湿熱性及び透明性に優れた感圧式接着剤組成物に使用することができるポリエステルに関し、更に詳しくは、特に光学部材の積層に好適な前記ポリエステルを含む感圧式接着剤組成物及びそれを用いてなる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクスの飛躍的な進歩により、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、リアプロジェクションディスプレイ(RPJ)、ELディスプレイ、発光ダイオ−ドディスプレイなどの様々なフラットパネルディスプレイ(FPD)が、様々な分野で表示装置として使用されようになってきた。例えば、これらFPDは、パーソナルコンピューターのディスプレイや液晶テレビをはじめ屋内で使用されるばかりでなく、カーナビゲーション用ディスプレイ等のように車両に搭載して使用されたりする。
【0003】
LCDを構成する液晶セル用部材には、偏光フィルムや位相差フィルムが積層されている。又、これらの表示装置には、外部光源からの反射を防ぐための反射防止フィルムや、表示装置の表面の傷付き防止のための保護フィルム(プロテクトフィルム)などが使用されている。更にFPDを表示装置として利用するだけではなく、それらの表面にタッチパネルの機能を設けて、入力装置としても利用されることがある。このタッチパネルにも、保護フィルム、反射防止フィルムやITO蒸着樹脂フィルムなどが使用されている。
【0004】
前記表示装置に使用される種々のフィルムは、感圧式接着剤により被着体に貼着され、使用されている。表示装置に用いられるものであるから、感圧式接着剤は、まず透明性に優れることが要求されるので、アクリル系樹脂を主剤とする感圧式接着剤が一般に使用されている。
【0005】
近年では、光学部材の接着処理おいて、光を有効利用するという観点から、光学部材と被着体との間における屈折率差に基づく界面反射の抑制が求められ、光学部材の屈折率と被着体の屈折率との中間の屈折率を有する感圧式接着剤層の使用が有利であることが知られている。ちなみに界面での屈折率差が大きいと全反射を生じる入射角が小さくなり、光の有効利用度を低下させる。
【0006】
しかしながら従来のアクリル系樹脂を用いた接着剤層の屈折率は、1.46前後であるのに対して、光学部材を形成する材料の屈折率は、例えばガラスで1.52前後、メタクリル系樹脂で1.51前後、ポリカーボネート系樹脂で1.54前後、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂で1.60前後であるため、両者の屈折率の差が大きく、又、例えばガラスからなる光学部材とメタクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂、あるいはPET樹脂からなる光学部材とを接着する際に、前記した中間の屈折率を得ることもできない。
【0007】
従って、偏光フィルムを液晶セル用のガラス部材に貼着するためのアクリル系感圧式接着剤は、偏光フィルム自体の寸法変化を抑えることや、接着剤層の屈折率をより高めることが求められる。このために、接着剤層自体を硬くしたり、接着強さを大きくしたりすることによって、比較的小さい寸法の変化、あるいは比較的短期間の寸法の変化を抑制することはできる。又、芳香環含有の単量体を使用したり、芳香族化合物や硫黄原子を含む化合物、あるいは無機化合物を使用したりすることである程度の屈折率向上は可能である。
【0008】
ところで、前記した種々のフィルムのうち偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系やシクロオレフィン系の保護フィルムで挟んだ3層構造を呈する。各層を構成する材料の特性故に、そもそも熱や湿度によって、偏光フィルムは伸縮による顕著な寸法変化を生ずる。特に、偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系フィルムは延伸処理されたものを用いるため、偏光フィルムをガラス基板に貼着された後、熱や湿度により未延伸の状態に戻ろうとする力が働くことが知られている。この力により寸法変化を生ずるといわれている。
【0009】
近年の液晶パネルの大画面化に伴い、偏光フィルムのサイズも大型化し、偏光フィルムの熱変形量が増大するようになった。従来の感圧式接着剤を使用した場合、接着剤層に残る貼着時の応力の緩和が十分ではないので、偏光フィルムのひずみに接着剤層が十分には追随できず、その結果、大型液晶パネルを高温に曝したり、高湿度に曝したりすると、偏光フィルムに応力が集中し、大型液晶パネルに光漏れが生じるという問題がある。この現象を熱ムラと称することがある。一方、感圧式接着剤の応力緩和が強すぎると、高温や高湿度に曝されたりした時に貼着力が低下して、ガラス基板面で偏光フィルムがズレたり、部分的に剥がれて発泡状態を生じたりする。熱ムラとズレや剥がれは、一方を良好に設計すると他の性能が低下するという、相反する現象であり、この両者を満足するためには感圧式粘着剤の組成に微妙なバランスを取ることが要求される。
【0010】
又、液晶パネルを長期にわたって使用する間にも偏光フィルムは寸法変化し、その応力が接着剤層に蓄積されることとなる。応力が接着剤層に蓄積され続けると、偏光フィルムと液晶セル用ガラス部材間の接着力の分布が不均一となる。そして、長期間の使用中に特に偏光フィルムの周縁部に応力が集中し、その結果液晶素子の周縁部が中央より明るかったり、あるいは暗くなったりするなどの液晶素子表面に色むら・白ヌケが発生する。
【0011】
又、液晶セル用のガラス面に偏光フィルムを貼り付けて積層体とした後、検品工程において、積層工程でのエアーや粉塵の巻き込み等のあるものについては、ガラスセル面から偏光フィルム等を剥がして、もう一度新しい偏光フィルム等を貼り直すことが行われる場合がある。感圧式接着剤は貼着後一般に、接着性促進のために高温下で一定時間保管し、その後検査されるので、その間に接着強度が高くなり過ぎ、偏光フィルム等を剥ぎ取り難いばかりでなく、剥がした後に糊残りが生じたりして、再剥離性が不十分となる場合がある。
【0012】
上記したように、液晶セル用のガラス基板に偏光フィルムを積層するために使用する感圧式接着剤には、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性等が求められる。そして、位相差フィルムや各種ディスプレイのカバーフィルムを積層するための感圧式接着剤にも同様の性能が求められる。
【0013】
これら種々の要求に対して、従来、様々な感圧式接着剤が提案されてきた。例えば、アクリル系樹脂を主剤とする種々の感圧式接着剤が知られている(特許文献1〜5参照)。又、アクリル系樹脂にポリステルやポリウレタンを併用する感圧式接着剤も知られている(特許文献6〜9参照)。
【0014】
アクリル系樹脂を感圧式接着剤として用いることにより、接着剤層の発泡や偏光板の液晶セルからの浮き剥がれは抑制できるが、偏光板の寸法変化による応力を吸収・緩和することができず、偏光板の周縁部に応力が集中するため、液晶表示装置の周縁部と中央部の明るさが異なり、液晶表示装置表面に色むら・白ヌケが発生する問題があった。
【0015】
又、アクリル系樹脂にポリステルやポリウレタンを併用する感圧式接着剤は、アクリル系樹脂と、ポリエステルやポリウレタンとは相溶性が悪く、アクリル系樹脂に対し、ポリエステルやポリウレタンを少量混合する程度であれば透明性をさほど損なうことはないが、ポリエステルやポリウレタンを多く混合しようとすると、感圧式接着剤自体が白化したり、分離したりする。偏光フィルム等を液晶セル用のガラスに貼着するための感圧式接着剤には、極めて高度な透明性が要求される。そして、上記のような、相溶性の悪い感圧式接着剤を用いて偏光フィルム等を液晶セル用のガラスに貼着しようとしても、接着剤層に相分離や揺らぎが発生してしまうという問題点があった。
【0016】
ところで、耐薬品性、加工性の良さから、繊維、塗料の他、食品包装用積層体形成用や金属板とプラスチックフィルムとの積層用をはじめとする感圧式接着剤以外の接着剤(以下、単に接着剤という)等の様々な技術分野では、従来からポリエステル系接着剤が使用されてきた。しかし、感圧式接着剤の技術分野では、ポリエステル系感圧式接着剤は講学上検討されたことはあったようであるが、実務上はほとんど検討されてなく、アクリル系感圧式接着剤がその大部分を占めていた。
【0017】
感圧式接着剤は、感圧式接着シートを形成するために用いられる。感圧式接着シートの基本的積層構成は、シート状基材/感圧式接着剤層/剥離シートのような片面感圧式接着シート、あるいは剥離シート/感圧式接着剤層/シート状基材/感圧式接着剤層/剥離シートのような両面感圧式接着粘着シートである。使用時に、剥離シートが剥がされ、感圧式接着剤層が被着体に貼付される。感圧式接着剤は、貼着の際被着体に感圧式接着剤層が触れるその瞬間に感圧式接着剤層がタックを有すのみならず、接着剤とは異なり、貼着中も完全に固化することなく、タックと適度な固さを有しつつ、貼着状態を維持するための凝集力を有することが必要である。凝集力は分子量に大きく依存する。
【0018】
アクリル系樹脂は、付加重合により形成されるので、数十万以上の分子量のものを簡単に形成することができる。一方、ポリエステル系樹脂は縮合により形成されるので、そのような高分子量のものを形成することは事実上無理である。ポリエステル系樹脂の場合、縮合と分解とが平衡状態に達してしまうと、分子量はもはやそれ以上大きくはならないからであり、反応条件を変え、さらに縮合を進めようとすると劣化との競合となるからである。従って、タックを有しつつ、凝集力を発現するためには、分子量が比較的大きく、凝集力を発現しやすいアクリル系樹脂を主剤とし、その主剤に対して、比較的少量の硬化剤を用い、タックを発現させやすいアクリル系感圧式接着剤が好適であるといえる。一方、比較的分子量の小さいポリエステル樹脂は、比較的多量の硬化剤でしっかり架橋させ、接着性能を発現するための接着剤に好適であるといえる。
【0019】
タックを発現するためには柔軟な性質を有する脂肪族系の原料を多く用いる必要がある。アクリル系樹脂の場合には、数十万以上の分子量にすることが出来るため、この分子量効果により耐熱性や耐湿熱性を付与される。一方、アクリル系樹脂と比べ、比較的分子量の小さいポリエステル系樹脂を感圧式接着剤として用いる場合、脂肪族系の原料を多く用いると、比較的分子量が小さいため、十分な耐熱性や耐湿熱性を得ることが出来ない。
【0020】
又、ポリエステル系樹脂の原材料は、アクリル系樹脂の原材料に比して高価である。さらに縮合反応は逐次反応なので付加重合に比して、分子量を大きくするためには必然的に長時間を要する。その結果、ポリエステル系樹脂は、アクリル系樹脂に比して高価となる。そこで、長年にわたり、ポリエステル系樹脂は接着剤に適用され、アクリル系樹脂は感圧式接着剤に適用されてきた。
【0021】
しかし、感圧式接着シートの用いられる分野も多岐にわたり、要求レベルが上がったり、新たな要求が追加されたり、従来のアクリル系感圧式接着剤では種々の要求に十分応えられなくなりつつある。そこで、ポリエステル系樹脂の感圧式接着剤への適用が検討されるようになってきた。
【0022】
例えば、ダイマー酸を必須とするジカルボン酸成分と、側鎖にアルキル基を有するグリコールを30モル%以上含むグリコール成分とから形成されるガラス転移温度(Tg)が−60〜0℃のポリエステルを用いてなる感圧式接着剤が知られている(特許文献10参照)。ダイマー酸を必須とすることによって、芳香族ジカルボン酸を相当量使用しながらも、タックを付与できたものと推測する。しかし、ダイマー酸は天然物由来の成分であるため、品質のバラつきが大きく、感圧式接着シートとしての性能がバラつきやすい。また、ダイマー酸を用いるとポリエステル系樹脂が着色するので、着色を忌む分野、例えば光学用途や各種表示部装置を構成するための感圧式接着剤には適用できない。
【0023】
又、特許文献11や12では、カーボネート構造やシクロヘキサン構造を含有するポリエステル系樹脂が開示されているが、いずれも耐熱性や耐湿熱性は不十分である(特許文献11、12参照)。
【0024】
更に、芳香族ジカルボン酸を含む酸性分と、側鎖に炭化水素基を有するグリコールを含むジオール成分と、3価以上のアルコール及び/又はカルボン酸からなるポリエステルからなる感圧式接着剤が知られている(特許文献13参照)。特許文献13に開示される感圧式接着剤は、耐熱性と耐湿熱性には優れるが、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性等をすべて満足するものではない。光学特性で重要な高屈折率を発現するためには、COOH系成分中に少なくとも芳香族ジカルボン酸系成分を50モル%以上必要とし、耐熱性及び耐湿熱性と良好な応力緩和性のバランスを取るためには、側鎖にアルキル基を有するジオール成分と共に、直鎖脂肪族ジオール成分を併用することが重要である。また優れた粘着性を有するものの、再剥離しようとした時に粘着性が強すぎて、偏光フィルム等を剥ぎ取り難かったり、剥がした後に糊残りが生じたりする。
【特許文献1】特開平01−066283号公報
【特許文献2】特開平10−279907号公報
【特許文献3】特開2002−121521号公報
【特許文献4】特開2003−013029号公報
【特許文献5】特開2002−014225号公報
【特許文献6】特開2003−073646号公報
【特許文献7】特開2004−002827号公報
【特許文献8】特開2004−083648号公報
【特許文献9】特開2002−053835号公報
【特許文献10】特開平04−328186号公報
【特許文献11】特開2002−194314号公報
【特許文献12】特開2004−99792号公報
【特許文献13】特開2007−099879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、液晶セル用のガラス基板に偏光フィルムを積層するために使用する感圧式接着剤に関し、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性等を有する接着剤層を形成し得る感圧式接着剤組成物に好適に用いられることの出来るポリエステルを提供することを目的とする。更に、該感圧式接着剤組成物と光学部材からなる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者らは、上記問題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に達した。即ち、本発明は、芳香族ジカルボン酸系成分(a1)を50〜70モル%含み、ダイマー酸を含まないCOOH系成分(A)と、
下記一般式(1)に示される水酸基間の炭素数が4以上の直鎖脂肪族ジオール(b1) を25〜55モル%、
下記一般式(2)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b2)及び/又は下記一般式(3)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b3)を合計で20〜50モル%、
側鎖にアルキル基を有する他のジオール(b4)、
及び3個以上の水酸基を有する化合物(b5)を0.1〜5モル%、
を含むOH成分(B)と、を反応させてなるガラス転移温度が−80〜0℃のポリエス テルに関する。
【0027】
一般式(1)
【0028】
【化1】



(式中、aは4以上の整数を表す。)
【0029】
一般式(2)
【0030】
【化2】


(式中、R1は炭素数4以上のアルキル基を表し、R2はアルキル基を表す。又、b、d はそれぞれ独立に1以上の整数を表す。)
【0031】
一般式(3)
【0032】
【化3】



(式中、R3、R4は少なくとも一方が炭素数3以上のアルキル基を表し、他方がアルキ ル基を表す。又、b、dはそれぞれ独立に1以上の整数を表し、cは0以上の整数を表 す。)
【0033】
更に本発明は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、2.0〜6.0である上記ポリエステルに関する。
【0034】
更に本発明は、水酸基価が、0.1〜50mgKOH/gである上記ポリエステルに関する。
【0035】
更に本発明は、重量平均分子量(Mw)が、30000〜300000である上記ポリエステルに関する。
【0036】
更に本発明は、上記ポリエステルと、上記ポリエステル中の反応性官能基と反応しうる官能基を有する化合物(C)と、を含む感圧式接着剤組成物に関する。
【0037】
更に本発明は、化合物(C)が、ポリイソシアネート化合物である上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0038】
更に本発明は、シランカップリング剤を含むことを特徴とする上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0039】
更に本発明は、上記感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層上に光学部材が積層されてなる積層体に関する。
【0040】
更に本発明は、液晶セル用ガラス部材、上記感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層、及び光学部材が、順次積層されてなる液晶セル用部材に関する。
【発明の効果】
【0041】
本発明のポリエステルは、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性に優れた接着剤層を形成し得る感圧式接着剤組成物に好適に使用することができる。更に、本発明の感圧式接着剤組成物を用いることにより、特に耐熱性や耐湿熱性を必要とされる光学部材用途においては、従来よりも過酷な熱あるいは湿熱条件下でも発泡や剥がれ等が発生せず、又、液晶セル用のガラス基板面に偏光フィルムを貼り付けて積層体とした後に、ガラス基板面から偏光フィルム等を剥がして、もう一度新しい偏光フィルム等を貼り直す場合に、偏光フィルム等を剥ぎ取り難くかったり、剥がした後に糊残りが生じたりしない、再剥離性の良好な接着剤組成物と光学部材からなる積層体を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
まず、本発明のポリエステルについて説明する。本発明のポリエステルは、芳香族ジカルボン酸系成分(a1)を50〜70モル%含み、ダイマー酸を含まないCOOH系成分(A)と、下記一般式(1)に示される水酸基間の炭素数が4以上の直鎖脂肪族ジオール(b1)を25〜55モル%、下記一般式(2)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b2)及び/又は下記一般式(3)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b3)を合計で20〜50モル%、側鎖にアルキル基を有する他のジオール(b4)、及び3個以上の水酸基を有する化合物(b5)を0.1〜5モル%を含むOH成分(B)と、を反応してなるガラス転移温度が−80〜0℃のポリエステルである。
【0043】
一般式(1)
【0044】
【化4】



(式中、aは4以上の整数を表す。)
【0045】
一般式(2)
【0046】
【化5】



(式中、R1は炭素数4以上のアルキル基を表し、R2はアルキル基を表す。又、b、d はそれぞれ独立に1以上の整数を表す。)
【0047】
一般式(3)
【0048】
【化6】



(式中、R3、R4は少なくとも一方が炭素数3以上のアルキル基を表し、他方がアルキル基を表す。又、b、dはそれぞれ独立に1以上の整数を表し、cは0以上の整数を表す。)
【0049】
本発明では、COOH系成分(A)として、芳香族ジカルボン酸系成分(a1)を50〜70モル%含み、ダイマー酸を含まないことを特徴としている。芳香族ジカルボン酸系成分(a1)の使用量が50モル%未満であると耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する。又、芳香族ジカルボン酸系成分の使用量が50モル%未満であると、屈折率が低くなり、光の有効利用度を低下させる。一方、70モル%を超えて使用すると接着性が低下し十分な接着力を得ることができない。又、ダイマー酸はタックを付与するには有用ではあるが、耐熱性、耐湿熱性に問題があり、更に接着層が着色するという問題が起こり光学部材の積層に使用することができない。
【0050】
本発明の芳香族ジカルボン酸系成分(a1)としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;
無水フタル酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物等の芳香族ジカルボン酸無水物類が挙げられる。
【0051】
又、上記のような芳香族ジカルボン酸系成分や芳香族ジカルボン酸無水物類を低級アルコール、例えば炭素数1〜4のアルキルアルコールのエステル化物を用いることもできる。芳香族ジカルボン酸系成分や芳香族ジカルボン酸無水物類の低級アルコールのエステル化物を用いる場合には、OH成分(B)と脱水縮合ではなく、脱アルコールによるエステル交換反応によって、エステル結合を生成する。
【0052】
更に、芳香族トリカルボン酸無水物や芳香族テトラカルボン酸無水物をモノアルコールでハーフエステル化した化合物を芳香族ジカルボン酸として使用することができる。
【0053】
芳香族トリカルボン酸無水物としては、例えば、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0054】
芳香族テトラカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸無水物等が挙げられる。
【0055】
モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、n−アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソオクタノール、ノナノール、デカノール、イソウンデカノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の直鎖または分岐脂肪族アルコール類;
ベンジルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、フェネチルアルコール等の芳香脂肪族モノアルコール類;
シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環族モノアルコール類が挙げられる。
【0056】
これら芳香族ジカルボン酸系成分(a1)は、単独でまたは2種以上で用いることができる。これらの中でも、耐熱性、耐湿熱性の点から、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0057】
芳香族ジカルボン酸成分(a1)以外のCOOH系成分(A)としては、例えば、シトラコン酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族、脂環族ジカルボン酸類;
無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、ブチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ブチルマレイン酸無水物、ペンチルマレイン酸無水物、ヘキシルマレイン酸無水物、オクチルマレイン酸無水物、デシルマレイン酸無水物、ドデシルマレイン酸無水物、ブチルグルタミン酸無水物、ヘキシルグルタミン酸無水物、ヘプチルグルタミン酸無水物、オクチルグルタミン酸無水物、デシルグルタミン酸無水物、ドデシルグルタミン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルペンタヒドロ無水フタル酸、メチルトリヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸等の脂肪族、脂環族ジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0058】
場合によっては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸等の3官能以上のカルボン酸化合物やその無水物を併用することができる。
【0059】
本発明では、OH成分(B)として、上記一般式(1)に示される水酸基間の炭素数が4以上の直鎖脂肪族ジオール(b1)を25〜55モル%、上記一般式(2)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b2)及び/又は上記一般式(3)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b3)を合計で20〜50モル%、側鎖にアルキル基を有する他のジオール(b4)、及び3個以上の水酸基を有する化合物(b5)を0.1〜5モル%を含むことを特徴としている。
【0060】
上記一般式(1)に示されるジオール(b1)としては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。本発明は、上記一般式(1)中のaが4以上であり、その使用量がOH成分(B)中に25〜55モル%であることを特徴とする。aが4未満であると、十分な初期粘着力を得ることができない。aが10以上であると凝集力が低下する傾向があるため、aが4〜9であるジオールが好ましい。又、ジオール(b1)の使用量が25モル%未満であると十分なタックを得ることができず、55モル%を超えると凝集力が低下する傾向にある。
【0061】
上記一般式(2)に示されるジオール(b2)としては、例えば、2−ブチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ヘキシル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ヘキシル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−ブチル−2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。本発明は、特に、上記一般式(2)中のR1が炭素数4以上のアルキル基であることを特徴とするが、R1が炭素数4未満であると、耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する。耐熱性、耐湿熱性、初期粘着力のバランスを考えると上記一般式(2)中のb及びdが1〜4、R1が炭素数4〜9のアルキル基、R2が1〜9のアルキル基であるジオールが好ましい。
【0062】
上記一般式(3)に示されるジオール(b3)としては、例えば、2−ヘキシル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−ブチル−4−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−プロピル−4−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−5−メチル−1,6−ヘキサンジオール、2−ヘキシル−5−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,5−ジブチル−1,6−ヘキサンジオール、等が挙げられる。本発明は、特に、上記一般式(3)中のR3、R4の少なくとも一方が炭素数3以上のアルキル基であることを特徴とするが、炭素数3未満であると、耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する。耐熱性、耐湿熱性、初期粘着力のバランスを考えると上記一般式(3)中のb及びdが1〜3、R3、R4の少なくとも一方が炭素数3〜9のアルキル基であるジオールが好ましい。
【0063】
上記ジオール(b2)と上記ジオール(b3)との使用量の合計は、OH成分(B)中に20〜50モル%であることを特徴とする。20モル%未満であると耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する。又、50モル%を超えるとタックが下がる傾向にあり、重合時間も長くなり生産性に問題を生じる。
【0064】
側鎖にアルキル基を有する他のジオール(b4)としては、例えば、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,3,5−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1, 6−ヘキサンジオール等が挙げられる。他のジオール(b4)は、上述の(b1)〜(b3)及び後述する(b5)の量と要求性能、価格等を考慮して、必要に応じて使用することができるOH成分(B)である。ジオール(b4)は、OH成分(B)に対して、0〜54.9モル%の範囲で使用することができ、10〜40モル%の範囲で使用することが好ましい。
【0065】
3個以上の水酸基を有する化合物(b5)としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。化合物(b5)使用量は、OH成分(B)中に0.1〜5モル%であることを特徴とする。光学部材への使用を考慮すると0.5〜3モル%がより好ましい。0.1モル%未満であると凝集力が低下し、更に耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する。又、5モル%を超えると合成時に高粘度となり生産性に問題を生じ、場合によってはゲル化を起こす。
【0066】
本発明のポリエステルは、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性に優れた接着剤層を形成し得る感圧式接着剤組成物を提供するものである。即ち、芳香族ジカルボン酸系成分は、ポリエステルに耐熱性、耐湿熱性、高屈折率を付与し、水酸基間の炭素数が4以上の直鎖脂肪族ジオール(b1)は良好な応力緩和性と優れた接着性を付与し、側鎖にアルキル基を有するジオール(b2)及び/又は(b3)は、耐熱性、耐湿熱性、適度な応力緩和性を付与する。更に、3個以上の水酸基を有する化合物(b5)は、ポリエステル中に官能基である水酸基の数を増加させて、ポリエステルの架橋反応を促進する。架橋反応の促進により、耐熱性、耐湿熱性を向上させるが、一方で応力緩和性を低下させる。
【0067】
前述した様に、感圧式接着剤組成物には、熱ムラと耐熱性、耐湿熱性という、相反する性能が要求されている。上記ポリエステルは、用いるジカルボン酸系成分とジオール成分とにより、様々な性質を付与することが出来る。これ等の各成分を組み合わせることにより、相反する性能を全て満足させることが可能となる。
【0068】
本発明のポリエステルは、上記COOH系成分(A)とOH成分(B)を触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより得られる。通常、150℃〜260℃の温度で脱水及び/又は脱アルコール反応によりエステル化を行う。分子量の調整はCOOH系成分(A)とOH成分(B)との仕込み比により行う。通常はCOOH系成分(A)中のCOOH官能基1モル(酸無水物基1個のCOOH官能基は2モル)に対してOH成分(B)中のOH官能基を過剰に仕込む。OH/COOH=1/1〜2/1の比率で仕込むことが好ましく、1.05/1〜1.50/1の比率で仕込むことがより好ましい。1/1に近い程高分子量となり、2/1に近い程低分子量となる。更に高分子量とするためには、5mmHg以下の減圧下で脱ジオール反応を行う場合もある。
【0069】
脱ジオール反応には触媒を用いるのが好ましい。例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系、三酸化アンチモン等のアンチモン系、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系などの触媒や酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイドなどをあげることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらのなかでも、触媒の活性が高い点から、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネートが好ましい。
【0070】
本発明のポリエステルは、ガラス転移温度が−80〜0℃であることを特徴とする。ガラス転移温度が−80℃未満の場合、該ポリエステルを用いて得られる感圧式接着剤層の凝集力が低下し、浮き剥がれが生じる。一方、ガラス転移温度が0℃を超えると、感圧式接着剤層が十分なタックを発現しない。尚、ガラス転移温度は、DSC(示差熱熱重量測定装置)を用いて測定した。
【0071】
本発明のポリエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2.0〜6.0が好ましく、3.0〜5.0がより好ましい。Mw/Mnが2.0未満であると耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する場合がある。又、6.0を超えると高粘度化してハンドリングに問題を生じる場合がある。
【0072】
本発明のポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、30000〜300000の範囲にあることが接着性の点で好ましく、50000〜200000の範囲にあることがより好ましい。Mwが30000未満であると凝集力を発現できずに、耐熱性や耐湿熱性が低下する場合がある。一方、Mwが300000を超えると、樹脂の流動性が不良となって、樹脂積層体を作製することが困難となる場合がある。
【0073】
本発明のポリエステルの水酸基価は、0.1〜50mgKOH/gであることが好ましく、3〜20mgKOH/gであることがより好ましい。0.1mgKOH/g未満であると、凝集力が低下する場合があり、50mgKOH/gを超えると粘着量や耐湿熱性が低下する場合がある。
【0074】
本発明の感圧式接着剤組成物は、前記ポリエステルと、架橋剤として前記ポリエステル中の反応性官能基と反応しうる官能基を有する化合物(C)とを含有することを特徴とする。前記ポリエステル中の反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。従って、本発明に用いられる化合物(C)の有する官能基としては、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシリル基、メチロール基等が挙げられる。化合物(C)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、多官能シラン化合物、N−メチロール基含有化合物などが挙げられるが、これらの中でも、架橋剤として作用するために、ポリエステル中の水酸基と反応し得る官能基を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。特にポリイソシアネート化合物や多官能シラン化合物は、架橋反応後の樹脂組成物の接着性や被覆層への密着性に優れていることから好ましく用いられる。
【0075】
ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0076】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0077】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0078】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0079】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0080】
又、上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体や、イソシアヌレート環を有する3量体等も使用することができる。更には、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。なおポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のうちのいずれかの基、またはこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。又、ポリオールとジイソシアネートの反応物もポリイソシアネートとして使用することができる。
【0081】
これらポリイソシアネート化合物の内、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)、キシリレンジイソシネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:水添MDI)等の無黄変型または難黄変型のポリイシソアネート化合物を用いると耐候性、耐熱性あるいは耐湿熱性の点から、特に好ましい。
【0082】
化合物(C)としてポリイソシアネート化合物を使用する場合、反応促進のため、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。例えば三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられ、単独でもあるいは複数を使用することもできる。
【0083】
多官能シラン化合物としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどのメタクリロキシ基とアルキル基とアルコキシ基を2つ有するシラン化合物;
γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのアクリロキシ基とアルキル基とアルコキシ基を2つ有するシラン化合物;
γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシアルキル基とアルコキシ基を3つ有するシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン;
5−ヘキセニルトリメトキシシラン、9−デセニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシランなどのアルキル基を有するアルコキシシラン;
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのアミノアルキル基とアルコキシ基とを有するシラン;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキサメチルシラザン、ジフェニルジメトキシシラン、1, 3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビニルトリス( 2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0084】
本発明の感圧式接着剤組成物は、ポリエステル100重量部に対して、化合物(C)を0.001〜20重量部含有することが好ましく、0.01〜10重量部含有することがより好ましい。化合物(C)の使用量が、20重量部を越えると感圧式接着剤組成物から形成されると感圧式接着剤層の架橋構造が密になり、感圧式接着剤層のタックが低下傾向となり、被着体に対する接着性が低下したり、応力緩和性が低下したりして、熱ムラを生ずる傾向にある。又、0.001重量部未満では、充分な架橋構造が得られないため、凝集力が低下し、耐熱性、耐湿熱性が低下する傾向にあるため、好ましくない。ポリエステル中の反応性官能基と化合物(C)中の官能基との反応により、樹脂組成物が三次元架橋し、各種基材や被着体との密着性を確保するだけでなく、従来よりも過酷な条件下における耐熱性及び耐湿熱性をも向上することができるため、光学部材用として好ましく使用することができる。
【0085】
本発明の感圧式接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で有れば、各種樹脂、カップリング剤、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、タッキファイヤ、可塑剤、充填剤及び老化防止剤等を配合しても良い。
【0086】
本発明の感圧式接着剤組成物を使用して、感圧式接着層とシート状基材とからなる積層製品(以下、「接着シート」という。)を得ることができる。例えば、種々のシート状基材に本発明の感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥・硬化することによって感圧式接着シートを得ることができる。感圧式接着シートを構成する感圧式接着層は、「感圧式」であるから室温程度でタックを有する。感圧式接着剤組成物を塗工するに際し、適当な液状媒体、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、その他の炭化水素系溶媒等の有機溶媒や、水をさらに添加して、粘度を調整することもできるし、感圧式接着剤組成物を加熱して粘度を低下させることもできる。ただし、水やアルコール等は多量に添加するとポリエステルと化合物(C)との反応阻害を引き起こす可能性があるため、注意が必要である。
【0087】
シート状基材としては、セロハン、各種プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、金属板、木材等の平坦な形状のものが挙げられる。又、各種基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。更に表面を剥離処理したものを用いることもできる。
【0088】
各種プラスチックシートとしては、各種プラスチックフィルムともいわれ、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂のフィルム等が挙げられる。
【0089】
常法にしたがって適当な方法で上記シート状基材に感圧式接着剤組成物を塗工した後、感圧式接着剤組成物が有機溶媒や水等の液状媒体を含有する場合には、液状媒体を除去したり、感圧式接着剤組成物が揮発すべき液状媒体を含有しない場合は、溶融状態にある接着剤層を冷却して固化したりして、シート状基材の上に接着剤層を形成することができる。感圧式接着剤層の厚さは、0.1μm〜200μmであることが好ましく、1μm〜100μmであることがより好ましい。0.1μm未満では十分な接着力が得られないことがあり、200μmを超えても接着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【0090】
本発明の感圧式接着剤組成物をシート状基材に塗工する方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては接着剤組成物の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60〜180℃程度の熱風加熱でよい。
【0091】
本発明の積層体は、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等の種々の光学特性を持つ、いわゆるシート(前述の通りフィルムともいう)状の光学部材に、上記本発明の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層が積層された状態のものである。感圧式接着剤層の他の面には、剥離処理されたシート状基材を積層することができる。
【0092】
本発明の積層体は、
(ア)剥離処理されたシート状基材の剥離処理面に感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥し、シート状の光学部材を感圧式接着剤層の表面に積層したり、
(イ)シート状の光学部材に感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥し、感圧式接着剤層の表面に剥離処理されたシート状基材の剥離処理面を積層したりすることによって得ることができる。
【0093】
このようにして得た積層体から感圧式接着剤層の表面を覆っていた剥離処理されたシート状基材を剥がし、例えば、感圧式接着剤層を液晶セル用ガラス基板に貼着することによって、「シート状の光学部材/感圧式接着剤層/液晶セル用ガラス基板」という構成の液晶セル部材を得ることができる。
【0094】
本発明の感圧式接着剤は、ポリエステルで構成されているため、基材への密着性を向上させており、耐可塑剤性や低温接着性に優れ、発泡体の様な基材に対する密着性が必要とされる用途にも、好適に使用される。特に主鎖骨格に芳香環を含有することができるため、該感圧式接着剤組成物の乾燥及び/又は硬化後の屈折率は、1.45以上を維持することが可能である。光学部材用フィルムやガラス等の光学用部材に使用される材料の屈折率は、先に述べたように、1.50〜1.58程度のものであり、感圧式接着剤組成物を乾燥及び/又は硬化させた後の屈折率が1.45未満であると光学フィルムや光学用部材との屈折率差が大きくなる。そのため、例えば、該感圧式接着剤組成物から得られる接着剤層が光学フィルムの一種であるフィルム導光板上に設けられた場合、浅い角度で全反射が起こり、光の有効的な利用性が低下する場合がある。又、光学フィルムや光学用部材との屈折率差を低減するために、本発明の感圧式接着剤組成物の乾燥及び/又は硬化後の屈折率が1.49〜1.60の範囲で制御できることも重要である。特に1.50〜1.55の範囲で制御が可能である。
【実施例】
【0095】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」及び「%」は、特にことわらない限り「重量部」及び「重量%」を表す。
【0096】
[ポリエステルの合成]
(合成例1)
攪拌機、温度計、水分離装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、COOH系成分(A)と,OH成分(B)とを、それぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0097】
[重合槽]
イソフタル酸 215.70部
セバシン酸 232.76部
1,4−ブタンジオール 53.40部
1,6−ヘキサンジオール 70.65部
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 96.22部
2−メチル−1,3−プロパンジオール 77.67部
トリメチロールプロパン 3.61部
【0098】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、160℃に昇温した。160℃で脱水を確認してから30分毎に10℃ずつ昇温し、250℃まで温度を上げて脱水反応を行った。250℃で更に反応を続け、酸価が15mgKOH/g以下になったら、150℃まで温度を下げた。150℃でテトラブチルチタネート0.1部を加えて、温度を240℃まで昇温し、240℃になったら徐々に減圧を開始し、5mmHg以下で5時間脱ジオール反応を行った。所定の分子量になったことを確認して反応を終了した。このポリエステルをメチルエチルケトン/酢酸エチル混合溶液(重量比=1/1)に溶解し、固形分50%に調整してポリエステル溶液(A−1)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表1に示した。
【0099】
尚、表1には上記仕込み重量部を各成分の分子量で徐したモル%で示し、表2にはCOOH系成分(A)とOH系成分(B)それぞれでのモル%を示した。
【0100】
(合成例2、3、5、6、7)
合成例1と同様の方法で、表1の仕込みモル%に従って合成を行い、固形分50%のポリエステル溶液(A−2)、(A−3)、(A−5)、(A−6)、(A−7)を得た。夫々の樹脂溶液の特性値を表1に示した。
【0101】
(合成例4)
攪拌機、温度計、水分離装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、COOH系成分(A)と,OH成分(B)とを、それぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0102】
[重合槽]
ジメチルテレフタル酸 130.56部
1,4−ブタンジオール 28.87部
1,6−ヘキサンジオール 37.85部
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 189.52部
ネオペンチルグリコール 62.88部
トリメチロールプロパン 3.31部
酢酸亜鉛(触媒) 0.035部
【0103】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、160℃に昇温した。160℃で脱メタノールを確認してから30分毎に10℃ずつ昇温し、210℃まで温度を上げて脱メタノール反応を行い、メタノールの留出が止まるまで反応を続けた。脱メタノール反応が終了したら150℃まで温度を下げた。150℃でイソフタル酸93.10部を加えて昇温し、250℃まで温度を上げて脱水反応を行った。酸価が15mgKOH/g以下になったら反応を終了し、150℃まで温度を下げた。次いで、テトラブチルチタネート0.1部を加えて、温度を240℃まで昇温し、240℃になったら徐々に減圧を開始し、5mmHg以下で5時間脱ジオール反応を行った。所定の分子量になったことを確認して反応を終了した。このポリエステルをメチルエチルケトン/酢酸エチル混合溶液(重量比=1/1)に溶解して固形分50%に調整し、ポリエステル溶液(A−4)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表1に示した。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
(比較合成例1)
攪拌機、温度計、水分離装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、COOH系成分(A)と,OH成分(B)とを、それぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0107】
[重合槽]
イソフタル酸 72.2部
セバシン酸 351.9部
1,4−ブタンジオール 97.9部
1,6−ヘキサンジオール 18.9部
ネオペンチルグリコール 203.8部
グリセリン 5.3部
【0108】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、160℃に昇温した。160℃で脱水を確認してから30分毎に10℃ずつ昇温し、250℃まで温度を上げて脱水反応を行った。250℃で更に反応を続け、酸価が15mgKOH/g以下になったら、150℃まで温度を下げた。150℃でテトラブチルチタネート0.1部を加えて、温度を240℃まで昇温し、240℃になったら徐々に減圧を開始し、5mmHg以下で5時間脱ジオール反応を行った。所定の分子量になったことを確認して反応を終了した。このポリエステルをメチルエチルケトン/酢酸エチル混合溶液(重量比=1/1)に溶解して固形分50%に調整し、ポリエステル溶液(A−8)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表3に示した。
【0109】
尚、表3には上記仕込み重量部を各成分の分子量で徐したモル%で示し、表4にはCOOH系成分(A)とOH系成分(B)それぞれでのモル%を示した。
【0110】
(比較合成例2、3、4、5、7、8)
比較合成例1と同様の方法で、表3の仕込みモル%に従って合成を行い、固形分50%のポリエステル溶液(A−9)、(A−10)、(A−11)、(A−12)、(A−14)を得た。ポリエステル溶液(A−15)は減圧を開始して2時間後にゲル化したためポリエステル溶液を得ることが出来なかった。夫々の樹脂溶液の特性値を表3に示した。
【0111】
(比較合成例6)
攪拌機、温度計、水分離装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、COOH系成分(A)と,OH成分(B)とを、それぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0112】
[重合槽]
ジメチルテレフタル酸 88.5部
ジメチルイソフタル酸 115.9部
エチレングリコール 132.7部
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 146.4部
酢酸亜鉛(触媒) 0.035部
【0113】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、160℃に昇温した。160℃で脱メタノールを確認してから30分毎に10℃ずつ昇温し、210℃まで温度を上げて脱メタノール反応を行い、メタノールの留出が止まるまで反応を続けた。脱メタノール反応が終了したら150℃まで温度を下げた。150℃でダイマー酸263.7部と無水トリメリット酸2.9部を加えて昇温し、250℃まで温度を上げて脱水反応を行った。酸価が20mgKOH/g以下になったら反応を終了し、150℃まで温度を下げた。次いで、テトラブチルチタネート0.1部を加えて、温度を240℃まで昇温し、240℃になったら徐々に減圧を開始し、5mmHg以下で5時間脱ジオール反応を行った。所定の分子量になったことを確認して反応を終了した。このポリエステルをメチルエチルケトン/酢酸エチル混合溶液(重量比=1/1)に溶解して固形分50%に調整し、ポリエステル溶液(A−13)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表3に示した。
【0114】
【表3】

【0115】
【表4】

【0116】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ロボットDSC(示差走査熱量計)「RDC220」(セイコーインスツルメンツ社製)に「SSC5200ディスクステーション」(セイコーインスツルメンツ社製)を接続して測定した。アルミニウムパンに試料約10mgを秤量してDSC装置にセットし(リファレンス:試料を入れていない同タイプのアルミニウムパンとした。)、300℃の温度で5分間加熱した後、液体窒素を用いて−120℃まで急冷処理した。その後10℃/分で昇温し、得られたDSCチャートからガラス転移温度(Tg)を算出した。
【0117】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
Mwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0118】
<分散度(Mw/Mn)>
上記分子量の測定結果より、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)により求めた。
【0119】
<水酸基価の測定>
容量200mlの共栓付三角フラスコ中に溶解前のポリエステル約2gを精秤し、アセチル化試薬(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)5mlをホールピペットで正確に添加した。これにピリジン10gを添加し、100℃で1.5時間反応させた。放冷後、トルエン/エタノール=2/1(容量比)混合液40mlを加えて溶解した。この試料溶液を、フェノールフタレイン溶液を指示薬として、N/2水酸化カリウムのエタノール溶液を用いて、試料溶液が淡紅色を呈するまで滴定した。
【0120】
水酸基価は次式により求めた。
【0121】
水酸基価(mgKOH/g)=[(b−a)×f×28.05/S]+D
S:試料の採取量(g)
a:N/2水酸化カリウムエタノール溶液の滴定量(ml)
b:空実験のN/2水酸化カリウムエタノール溶液の滴定量(ml)
f:N/2水酸化カリウムエタノール溶液の力価
D:ポリエステルの酸価(mgKOH/g)
【0122】
(実施例1)
合成例1で得られたポリエステル溶液(A−1)100部(固形分50%)に対して、トルエンを約25部加え、固形分が40%となるように調整した。次いで、硬化剤である化合物(C)として、TDI/TMP(トルレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)2.5部と、シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.5部加えてよく撹拌して、本発明の感圧式接着剤組成物を得た。
【0123】
これを剥離処理されたポリエステルフィルム(以下、「剥離フィルム」という。)上に乾燥後の厚みが25μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させ、感圧式接着剤層を形成した。乾燥後、感圧式接着剤層に、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系保護フィルム(以下、「TACフィルム」という)で挟んだ三層構造の偏光フィルムの片面を貼り合せ、「剥離フィルム/感圧式接着剤層/TACフィルム/PVA/TACフィルム」なる構成の積層体を得た。次いで、得られた積層体を温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成(暗反応)させて、接着剤層の反応を進行させ、接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0124】
(実施例2〜7)
合成例1で得られたポリエステル溶液(A−1)の代わりに、合成例2〜7で得られたポリエステル溶液(A−2)〜(A−7)をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0125】
(実施例8)
合成例1で得られたポリエステル溶液(A−1)を用いて、化合物(C)を1.0部とした以外は、実施例1と同様の方法で接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0126】
(実施例9)
合成例1で得られたポリエステル溶液(A−1)を用いて、化合物(C)を6.0部とした以外は、実施例1と同様の方法で接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0127】
(実施例10)
合成例1で得られたポリエステル溶液(A−1)を用いて、シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを加えなかった以外は、実施例1と同様の方法で接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0128】
(比較例1〜8)
合成例1で得られたポリエステル溶液(A−1)の代わりに、比較合成例1〜8で得られたポリエステル溶液(A−8)〜(A−15)をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0129】
実施例および比較例で得られた接着加工した偏光板(積層体)について、塗膜の着色度合い、屈折率、耐熱性、耐湿熱性、熱ムラ、および再剥離性を以下の方法で評価した。結果を表5及び表6に示す。
【0130】
<塗膜の着色度合い>
実施例、比較例で得られた感圧式接着剤組成物を、剥離処理されたポリエステルフィルムに塗工して乾燥させ、厚さ25μmの感圧式接着剤層を設けた後に、更に剥離処理されたポリエステルフィルムを貼り合わせた。この剥離処理されたポリエステルフィルムに挟持された感圧式接着剤層を温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成させた後、更に80℃のオーブン中で500時間加熱した後、両方の剥離処理ポリエステルフィルムを取り除き、[日本電色工業(株)社製]の色差計でY値を測定した。加熱後のY値と加熱前のY値の差ΔYを表5及び表6に示した。
【0131】
<塗膜の屈折率の評価>
実施例、比較例で得られた感圧式接着剤組成物を剥離フィルム上に塗工し、120℃のオーブンにて乾燥して、厚さ25μmの感圧式接着剤層を設けた後、ポリエステルフィルムに貼り合わせて積層させ、感圧式接着シートを作製した。その後、アッベ屈折率計「DR−M2」[ATAGO社製]にて、25℃雰囲気下、ナトリウムD線を照射して、接着シート上の接着剤層の屈折率を測定した。その結果を表5及び表6に示した。
【0132】
<耐熱性、耐湿熱性の評価方法>
接着加工した偏光板(積層体)を150mm×80mmの大きさに裁断して剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板の両面に、それぞれの偏光板の吸収軸が直交するようにラミネーターを用いて貼着した。続いて、この偏光板が貼り付けられたガラス板を50℃−5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、偏光板をガラス板に強固に密着させ、偏光板とガラス板との積層物を得た。
【0133】
耐熱性の評価として、上記積層物を80℃のオーブン中で500時間放置した後の偏光板の浮きやハガレ、ガラス板面とのズレを目視で観察した。又、耐湿熱性の評価として、上記積層物を60℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽で500時間放置した後の偏光板の浮きやハガレ、ガラス板面とのズレを目視で観察した。耐熱性、耐湿熱性について、下記の3段階の評価基準に基づいて評価をおこなった。その結果を表5及び表6に示した。
【0134】
○:「浮き、ハガレ、ズレが全く認められず、実用上全く問題なし。」
△:「若干浮きやハガレ、ズレが認められるが、実用上問題がない」
×:「全面的に浮き、ハガレ、ズレがあり、実用不可である」
をそれぞれ意味する。
【0135】
<熱ムラの評価>
接着加工した偏光板(積層体)を150mm×80mmの大きさに裁断して剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板の両面に、それぞれの偏光板の吸収軸が直交するようにラミネーターを用いて貼着した。続いて、この偏光板が貼り付けられたガラス板を50℃−5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、偏光板をガラス板に強固に密着させ、偏光板とガラス板との積層物を得た。この積層物を80℃のオーブン中に24時間放置した後、この積層物の片面から光を当て、反対の面から偏光板の光漏れを目視評価した。その結果を表5及び表6に示した。
【0136】
〇:偏光板の全面が暗黒色の色相で均一。
△:偏光板の四辺部で10mm以内に暗黒色が薄くなっているが実用上問題ない。
×:偏光板の四辺部で10mm以上に暗黒色が薄くなっている。
【0137】
<再剥離性(リワーク性)の評価>
接着加工した偏光板(積層体)を25mm×150mmの大きさに裁断し、剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板にラミネーターを用いて貼り付け、50℃5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、偏光板をガラス板に強固に密着させた。この試験片を23℃、相対湿度50%で1週間放置した後に、180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180度ピール試験を実施し、剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、3段階で評価した。その結果を表5及び表6に示した。
【0138】
○:「曇りがなく、実用上全く問題がない」、
△:「若干曇りが認められるが、実用上問題ない」、
×:「全面的に接着剤層の転着が認められ、実用不可である」
をそれぞれ意味する。
【0139】
【表5】

【0140】
【表6】

【0141】
以上のように、本発明の感圧式接着剤組成物は、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の感圧式接着剤組成物は、ポリエステル特有の凝集力を維持しつつ、主鎖骨格に芳香環を導入したポリマーを形成することができるため、アクリル系樹脂では得られなかった接着物性を発現させることができる。その例として、本発明の様な光学積層体での耐熱性、耐湿熱性、光学特性、再剥離性等が挙げられる。特に、光学積層体の用途では、光学特性である、光漏れのないことが重要視され、近年のディスプレイの大型化に伴い、屈折率の制御等、その要求性能はますます厳しくなってきている。そこで、本発明の感圧式接着剤組成物は、上述のようにこれまでは困難であった特性を発揮できるため、さらに有用になると考えられる。
【0143】
又、本発明の感圧式接着剤組成物は、光学部材用途として好適であるほか、一般ラベル・シールのほか、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、タッキファイヤ、接着剤、積層構造体用接着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング用等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート接着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、また、各種樹脂添加剤およびその原料等としても非常に有用に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸系成分(a1)を50〜70モル%含み、ダイマー酸を含まないCOOH系成分(A)と、
下記一般式(1)に示される水酸基間の炭素数が4以上の直鎖脂肪族ジオール(b1) を25〜55モル%、
下記一般式(2)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b2)及び/又は下記一般式(3)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b3)を合計で20〜50モル%、
側鎖にアルキル基を有する他のジオール(b4)、
及び3個以上の水酸基を有する化合物(b5)を0.1〜5モル%、
を含むOH成分(B)と、を反応させてなるガラス転移温度が−80〜0℃のポリエス テル。
一般式(1)
【化1】



(式中、aは4以上の整数を表す。)
一般式(2)
【化2】



(式中、R1は炭素数4以上のアルキル基を表し、R2はアルキル基を表す。又、b、d はそれぞれ独立に1以上の整数を表す。)
一般式(3)
【化3】



(式中、R3、R4は少なくとも一方が炭素数3以上のアルキル基を表し、他方がアルキ ル基を表す。又、b、dはそれぞれ独立に1以上の整数を表し、cは0以上の整数を表 す。)
【請求項2】
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、2.0〜6.0である請求項1記載のポリエステル。
【請求項3】
水酸基価が、0.1〜50mgKOH/gである請求項1又は2記載のポリエステル。
【請求項4】
重量平均分子量(Mw)が、30000〜300000である請求項1〜3いずれか記載のポリエステル。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載のポリエステルと、
前記ポリエステル中の反応性官能基と反応しうる官能基を有する化合物(C)と、を含む感圧式接着剤組成物。
【請求項6】
化合物(C)が、ポリイソシアネート化合物である請求項5記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項7】
更にシランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項6記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項8】
請求項5〜7いずれか記載の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層上に光学部材が積層されてなる積層体。
【請求項9】
液晶セル用ガラス部材、請求項5〜7いずれか記載の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層、及び光学部材が、順次積層されてなる液晶セル用部材。

【公開番号】特開2008−297475(P2008−297475A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146457(P2007−146457)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】