説明

ポリエステル変性熱重合型アクリル塗料および塗装金属材料

【課題】柔軟で加工性の良い厚膜タイプの塗膜が形成可能であって、塗装金属板としたときにブロッキングを起こしにくい塗料、およびそれを用いた塗膜の製法を提供することを目的とする。
【解決手段】重量平均分子量1000〜40000、ガラス転移温度Tgが−20〜60℃、30℃における比重が1.23以下である非結晶性ポリエステル系重合体Aと、
(メタ)アクリル系単量体Bと、
重合開始剤と、
メラミン樹脂を含み、
前記Bは、下記一般式(1)等の化合物を10質量%以上含み、
前記AとBは、A:B=10:90〜90:10の質量割合で配合されるポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
【化1】


[式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数12以下の炭化水素基を表す]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜の塗膜形成に適したポリエステル変性熱重合型アクリル塗料およびその塗膜の製法、ならびにその塗膜を形成した塗装金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
膜厚の塗膜を形成しうる塗料として、塩化ビニル樹脂を主成分とした塗料が知られている。このような塩化ビニル樹脂塗装金属板は、耐久性、加工性、耐疵付き性、防火性等に優れ、10〜30年の長期にわたって優れた特性が持続されることから、内装材、外装材、表装材、電気製品用筐体等に多用されている。しかしながら、塩化ビニル樹脂塗装金属板は、塩化ビニル樹脂がダイオキシン発生源になりうることから廃棄処理に労力を要す。
【0003】
そこで塩化ビニル樹脂を主成分とした塗料に代わる、厚膜の塗膜を形成しうる塗料が望まれている。このような塗料として、未重合の(メタ)アクリル系単量体、(メタ)アクリル系重合体、熱ラジカル重合開始剤、架橋剤、可塑剤、顔料を添加してなる塗料組成物(熱ラジカル重合型アクリル塗料)が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−171579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の塗料は、膜厚の厚い塗膜を形成できるが、塗膜が硬く伸びが少ないという問題が残されている。特に、塗膜の厚みを厚くし、顔料の添加量を増やしたときは、高度な加工が困難になることがある。さらに、特許文献1の塗料は、硬化後の塗膜表面にタックがあり、金属材料の上にこの塗料からなる塗膜を形成した塗装金属材料としたときに、当該金属材料同士がブロッキングすることがあった。
【0005】
かかる事情に鑑み、本発明は、柔軟で加工性の良い厚膜タイプの塗膜(例えば乾燥膜厚で100〜300μm)が形成可能であって、塗装金属材料としたときにブロッキングを起こしにくい塗料、およびそれを用いた塗膜の製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、鋭意検討の結果、特定の非結晶性ポリエステル系重合体Aと、特定の(メタ)アクリル系単量体Bを特定量含み、かつ重合開始剤とメラミン樹脂を含む塗料により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、上記課題は以下の本発明により解決される。
【0007】
本発明において、(メタ)アクリル系単量体は、分子内にアクリロイル基をもつ「アクリル系単量体」または、分子内にメタクリロイル基をもつ「メタクリル系単量体」を意味する。
【0008】
[1] 重量平均分子量が1000〜40000、ガラス転移温度Tgが−20〜60℃、30℃における比重が1.23以下である非結晶性ポリエステル系重合体Aと、
(メタ)アクリル系単量体Bと、
重合開始剤と、
メラミン樹脂を含み、
前記Bは、下記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物を含み、これらの化合物の配合量の合計は、前記B中10質量%以上であり、
前記AとBは、A:B=10:90〜90:10の質量割合で配合される、ポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
【化1】

式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数12以下の炭化水素基を表す。
【化2】

式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは(CHCHO)(n≦4)であって、酸素原子がカルボニル炭素に結合している基を表す。
【化3】

式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数12以下の水酸基含有炭化水素基
を表す。
[2]前記重合開始剤として過酸化物系熱ラジカル重合開始剤が、非結晶性ポリエステル系重合体と(メタ)アクリル系単量体の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部配合されている[1]に記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
[3]前記メラミン樹脂は、非結晶性ポリエステル系重合体と(メタ)アクリル系単量体の合計100質量部に対し、5〜30質量部配合されている[1]または[2]に記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
[4]前記メラミン樹脂は、分子内にイミノ基またはメチロール基を有する、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
[5]前記非結晶性ポリエステル系重合体と前記(メタ)アクリル系単量体の合計100質量部に対し、0.1〜100質量部の顔料がさらに配合されている、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
[6]さらに可塑剤が添加されている[1]〜[5]のいずれかに記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
[7]粘度が0.1〜10Pa・sに調整されている[1]〜[6]のいずれかに記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
[8]金属材料の表面に、[1]〜[7]のいずれかに記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料を重合硬化させた塗膜を有する塗装金属材料。
[9]前記[1]〜[7]のいずれかに記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料を基材表面に塗布し、未重合の(メタ)アクリル系単量体の2質量%以上を揮発させながら重合硬化させて造膜する塗膜の製法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、柔軟で加工性の良い厚膜タイプの塗膜(例えば乾燥膜厚で100〜300μm)が形成可能であって、塗装金属材料としたときにブロッキングを起こしにくい塗料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.本発明の塗料
(1)非結晶性ポリエステル系重合体
本発明のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料(以下「本発明の塗料」ともいう)は、非結晶性ポリエステル系重合体(「A」成分ともいう)を含む。非結晶性ポリエステル系重合体は、(メタ)アクリル系単量体(「B」成分ともいう)の重合体とともに塗膜のマトリックスを形成する。非結晶性ポリエステル系重合体は、特に塗膜に柔軟性を付与する機能を担う。非結晶性ポリエステル系重合体は、多塩基酸と多価アルコールを脱水しながらエステル化反応して得られる。エステル化反応の方法としては、直接エステル化法またはエステル交換法がある。
【0011】
一般に、結晶性の高いポリエステルは溶剤等との溶解性が低い。よって、本発明では非結晶性ポリエステル系重合体を使用する。非結晶性ポリエステル系重合体と(メタ)アクリル系単量体との相溶性を上げるには、非結晶性ポリエステル系重合体に使用される多塩基酸に含まれる芳香族成分の含有率を下げる必要がある。芳香族成分の含有率を下げると、ポリエステルのガラス転移温度Tgが低下する。ガラス転移温度Tgが60℃以下になると、他の条件との関係もあるが、(メタ)アクリル系単量体への溶解性が向上する。ただし、芳香族成分の含有量を低下させてTgを−20℃より低くすると、ポリエステルは加水分解しやすくなり、耐候性が低下する上、塗装硬化後の塗膜にタック(ベタツキ)が発生しやすくなる。以上から、本発明の非結晶性ポリエステル系重合体のTgは−20〜60℃である必要があり、好ましくは、Tgは−20〜30℃である。TgはDSCにより測定されることが好ましい。
【0012】
また、非結晶性ポリエステル系重合体の原料となる多価アルコールは、分岐構造を有することが好ましい。このような重合体は、B成分である(メタ)アクリル系単量体との相溶性が向上するからである。分岐構造を有する多価アルコールを原料とするポリエステルは、分子内に立体障害が大きい部位を有するため、分子のパッキングが粗となり密度が低い。
このようなことから本発明の非結晶性ポリエステル系重合体は30℃における比重が1.23以下である。非結晶性ポリエステル系重合体の比重が低くなると高分子鎖のパッキングが緩くなるため、(メタ)アクリル系単量体が非結晶性ポリエステルの高分子鎖間に侵入しやすくなり、(メタ)アクリル系単量体との相溶性が向上する。
【0013】
本発明の非結晶性ポリエステル系重合体の分子量は重量平均分子量が1000〜40000である。本発明において「〜」はその両端の数値を含む。重量平均分子量はGPCによって、標準ポリスチレン検量線より測定される。分子量が高すぎると非結晶性ポリエステル系重合体の(メタ)アクリル系単量体への溶解性が低下し、分子量が低すぎると塗膜性能が低下する。非結晶性ポリエステル系重合体の重量平均分子量が前記範囲にあると両者のバランスに優れる。
非結晶性ポリエステル系重合体の分子量は原料とする多塩基酸と多価アルコールの仕込み比や反応時間等により調整できる。
【0014】
上記非結晶性ポリエステル系重合体は水酸基およびカルボキシル基を含有している。水酸基価は2〜200mgKOH/g程度、好ましくは4〜80mgKOH/g程度の範囲であり、酸価は2〜40mgKOH/g程度、好ましくは5〜50mgKOH/g程度の範囲である。
【0015】
本発明の非結晶性ポリエステル系重合体の原料となる多塩基酸の例には、2価カルボン酸や、3価以上のカルボン酸が含まれる。前者の具体例には、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族カルボン酸や、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,10−デカンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族カルボン酸が含まれる。また後者の例には、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸が含まれる。
さらに、前記多塩基酸は、ε−カプロラクトン、ラクチド等のヒドロキシカルボン酸であってもよい。
【0016】
本発明の非結晶性ポリエステル系重合体の原料となる多価アルコールの例には、2価のアルコール、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールが含まれる。
2価のアルコールの具体例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリエチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類、これらのグリコール類にε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のポリエステルジオール類、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカン等の脂環式2価アルコールが含まれる。
多価アルコールの例には、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2、6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトールが含まれる。
【0017】
非結晶性ポリエステル系重合体は、通常、1種類の重合体を使用すればよいが、2種類以上の重合体を併用してもよい。この場合は、非結晶性ポリエステルを構成する多価アルコールは、共通していることが好ましい。
【0018】
(2)(メタ)アクリル系単量体
(メタ)アクリル系単量体は、塗装工程においてそれ自身が重合して塗膜のマトリクスを形成するが、一方で、塗料における上記の非結晶性ポリエステル系重合体の溶剤としての機能も有する。発明者らは、検討の結果、(メタ)アクリル系単量体を前記非結晶性ポリエステル系重合体と類似の構造を有すると、両者の相溶性が顕著に改善され、塗料とすることができることを見出した。具体的には、(メタ)アクリル系単量体の一部または全部を、使用する非結晶性ポリエステル系重合体の原料である多価アルコールから誘導される化合物とすることが有効であることを見出した。以上から、本発明の(メタ)アクリル系単量体は、前記一般式(3)で表される化合物、前記一般式(1)で表される化合物または(2)で表される化合物を特定量含む。本発明において、(メタ)アクリル系単量体を単に「モノマー」ともいう。
【0019】
一般式(1)、(2)または(3)のいずれかで表される化合物は、A成分である非結晶性ポリエステル系重合体との溶解性が良好であるため、(メタ)アクリル系単量体がこれらを含むと、A成分とB成分との相溶性が良好となる。よって、両者の相溶性を十分に確保する観点から、(メタ)アクリル系単量体は、前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物を含み、これらの化合物の配合量の合計は、(メタ)アクリル系単量体中10質量%以上である。前記配合量の合計量は30質量%以上とすることが好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル系単量体は、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体(一般式(3)の化合物)を必須成分として含むことが特に好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、重合硬化時に架橋剤と反応しうるため、塗膜の性質を向上させる。この水酸基を有する化合物の、(メタ)アクリル系単量体全部に占める割合は、1〜30質量%とすることが好ましく、2〜30質量%とすることがより好ましい。この場合、前記一般式(2)の化合物と前記一般式(3)の化合物の合計量は、(メタ)アクリル系単量体に対して、10〜50質量%とすることが好ましい。前記一般式(2)の化合物と前記一般式(3)の化合物の合計(「ジ(メタ)クリレート化合物」ともいう)量中の一般式(2)の化合物と一般式(3)の化合物の比率は任意としてよい。
【0021】
これらの単量体から得られた共重合体のTgは、−30〜50℃であることが好ましく、特に−10〜40℃であることがより好ましい。Tgは、Foxの式により算出される。
【0022】
一般式(1)で表される(メタ)アクリル系単量体として以下のものが例示できる。
ポリテトラメテレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル1,5ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等。
【0023】
一般式(2)で表される(メタ)アクリル系単量体として以下のものが例示できる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等。
【0024】
一般式(3)で表される(メタ)アクリル系単量体として以下のものが例示できる。
2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等。
【0025】
その他、上記式以外の(メタ)アクリル系単量体としては、以下のものが例示できる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル。
シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル。
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアクリル酸アリールエステル。
メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキジエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル。
エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のグリコール系(メタ)アクリル酸エステル。
グリシジルエーテル(メタ)アクリレート等の官能基含有単量体。
【0026】
これらの(メタ)アクリル系単量体は、2種以上を組み合わせて使用することができる。また、本発明の塗料は、これらの(メタ)アクリル系単量体と共重合可能なその他のモノマーを含んでいてもよい。当該モノマーの例には、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸(ただし、(メタ)アクリル酸を除く)、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の有機ケイ素基含有ビニル単量体、スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリロニトリルが含まれる。
【0027】
ポリエステルと(メタ)アクリル系単量体の配合割合は、質量割合で、[ポリエステル]:[(メタ)アクリル系単量体の合計]=10:90〜90:10の範囲で選定される。ポリエステルの配合量が少なすぎると、塗装時の(メタ)アクリル系単量体の揮発量が多くなり、気泡が生じて塗膜の平滑性が低下する。逆にポリエステルの配合量が多すぎると塗料の粘度が上昇し、塗装作業性が低下する。
【0028】
(3)重合開始剤
(メタ)アクリル系単量体の重合には、熱ラジカル重合開始剤(以下単に「重合開始剤」ともいう)が使用される。重合開始剤の例には、可酸化物系、アゾ系の熱ラジカル重合開始剤が含まれるが、本発明においては、過酸化物系熱ラジカル重合開始剤の使用が好ましい。重合開始剤は1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。その際に、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリン等の分解促進剤を併用してもよい。重合開始剤は、非結晶性ポリエステル系重合体と(メタ)アクリル系単量体の合計量100質量部(以下「樹脂ユニット」ということがある)に対し、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜3質量部の割合で配合される。重合開始剤の配合量が少ないと塗装時の重合、すなわち硬化に時間がかかり、(メタ)アクリル系単量体の揮発分が多くなる。逆に重合開始剤の配合量が過剰だと、塗装時に多量の気泡が発生し、ワキ、肌荒れ等の塗膜欠陥が生じやすくなる。
【0029】
過酸化物系熱ラジカル重合開始剤の例には、イソブチルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ2エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシネオデカネート、3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2エチルヘキサネート、t−へキシルパーオキシ2エチルヘキサネート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシベンゾエートが含まれる。なかでも、本発明の重合開始剤としては、1分間半減期温度が100〜170℃である熱重合開始剤が好ましい。
【0030】
(4)メラミン樹脂
本発明の塗料は、メラミン樹脂を含む。メラミン樹脂は架橋剤として機能する。メラミン樹脂の配合量は、ポリエステルと(メタ)アクリル系単量体の合計量(樹脂ユニット)100質量部に対し、3〜30質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましく、5〜20質量部であることがさらに好ましい。メラミン樹脂の配合量が少なすぎると塗膜の強度が低下し、逆に多すぎると塗膜の柔軟性が損なわれることがある。
【0031】
メラミン樹脂とは、メラミンとアルデヒドから合成される熱硬化性樹脂であり、下記一般式(4)または(5)で表される化合物またはそのオリゴマーをいう。
【0032】
【化4】

【0033】
一般式(4)において、Rは、水素原子、ヒドロキシメチル基、またはアルコキシメチル基(−CHOXで表される基、Xはアルキル基)である。
【0034】
本発明のメラミン樹脂は、Rはアルコキシメチル基(−CHOXで表される基、Xはアルキル基)であって、Rの一部は、水素原子またはヒドロキシメチル基に置き換えられている「アルキル化メラミン樹脂」であることが好ましい。溶剤や他の樹脂等への相溶性に優れるからである。
【0035】
アルキル化メラミン樹脂のうち、Rの一部が水素原子に置き換えられたメラミン樹脂、すなわち、複数のRのうち、一部がアルコキシメチル基であり、その余が水素原子である樹脂を「イミノ基型アルキル化メラミン樹脂」という。この場合、前記アルコキシメチル基は、メトキシメチル基(前記Xがメチル基)またはブトキシメチル基(前記Xがブチル基)であることが好ましい。イミノ基型アルキル化メラミン樹脂において、アルコキシメチル基がメトキシメチル基である樹脂を「イミノ基型メチル化メラミン樹脂」といい、アルコキシメチル基がブトキシメチル基である樹脂を「イミノ基型ブチル化メラミン樹脂」という。アルコキシメチル基が、メトキシメチル基、ブトキシメチル基の双方を含む樹脂を「イミノ基型メチル化ブチル化メラミン樹脂」という。
【0036】
アルキル化メラミン樹脂のうち、Rの一部がヒドロキシメチル基に置き換えられたメラミン樹脂、すなわち、複数のRのうち、一部がアルコキシメチル基であり、その余がヒドロキシメチル基である樹脂を「メチロール基型アルキル化メラミン樹脂」という。この場合、前記アルコキシメチル基は、メトキシメチル基(前記Xがメチル基)またはブトキシメチル基(前記Xがブチル基)であることが好ましい。前記同様に、メチロール基型アルキル化メラミン樹脂の例には、「メチロール基型メチル化メラミン樹脂」、「メチロール型ブチル化メラミン樹脂」、「メチロール型メチル化ブチル化メラミン樹脂」が含まれる。
【0037】
アルキル化メラミン樹脂のうち、Rの一部が水素原子とヒドロキシメチル基の双方に置き換えられたメラミン樹脂、すなわち、複数のRのうち、一部がアルコキシメチル基であり、別の一部が水素原子であり、その余がヒドロキシメチル基である樹脂を、「メチロール・イミノ基型アルキル化メラミン樹脂」という。前記同様に、メチロール・イミノ基型樹脂の例には、「メチロール・イミノ基型メチル化メラミン樹脂」、「メチロール・イミノ型ブチル化メラミン樹脂」、「メチロール・イミノ型メチル化ブチル化メラミン樹脂」が含まれる。
【0038】
一般式(4)において、Rのほとんどがアルコキシメチル基である樹脂を「オールアルキル基型アルキル化メラミン樹脂」という。「Rのほとんどがアルコキシメチル基である」とは、メラミン樹脂が、酸等の反応促進剤を用いることなく自己縮合性をほぼ示さなくなる程度まで、すなわち自己の反応によりホルマリンをほぼ出さない程度までに、Rがアルコキシメチル基となっていることを意味する。前記同様に、オールアルキル基型アルキル化メラミン樹脂の例には、「オールアルキル基型メチル化メラミン樹脂」、「オールアルキル基型ブチル化メラミン樹脂」、「オールアルキル基型メチル化ブチル化メラミン樹脂」が含まれる。
【0039】
一般式(5)の化合物は、ベンゾグアナミン樹脂とも呼ばれる。一般式(5)においてRは、一般式(4)と同様に定義される。
【0040】
【化5】

【0041】
前述のとおり、メラミン樹脂は、塗装工程において、主として本発明の塗料に含まれる非結晶性ポリエステル系重合体の水酸基や、(メタ)アクリル系単量体の水酸基と反応するため、架橋剤になりうる。よって、塗膜の強度や耐熱性を向上させる。一般に、ポリエステル樹脂の架橋剤としてはポリイソシアネート等が知られている。しかし、ポリイソシアネート等を含む塗料は、塗装条件によっては完全に架橋反応できない場合があり、架橋反応できなかったポリイソシアネート等が塗膜表面にブリードし、塗膜のベタツキを増大させることがあった。ところが、本発明の架橋剤であるメラミン樹脂は、架橋反応できなかった場合にも、メラミン樹脂同士で縮合反応して高分子量化するため、ブリードしにくい。従って、本発明の塗膜は、表面のベタツキ性がないという利点を有する。
【0042】
このようなことから、本発明のメラミン樹脂としては、反応性に優れるものが好ましい。すなわち、本発明のメラミン樹脂としては、メチロール基型アルキル化メラミン樹脂、イミノ基型アルキル化メラミン樹脂やメチロール・イミノ型アルキル化メラミン樹脂が好ましく、イミノ基型アルキル化メラミン樹脂がより好ましい。これらの樹脂は分子内にイミノ基またはメチロール基を有し、反応性に優れる。これらの樹脂に含まれるアルコキシメチル基がメトキシメチル基であると、さらに反応性に優れる。一方、これらの樹脂に含まれるアルコキシメチル基がブトキシメチル基であると、前記メトキシメチル基を有する樹脂より反応性は劣るものの、塗料としたときの保存安定性に優れる。よって、前記アルコキシメチル基は所望の特性に応じて適宜選択してよい。
本発明において、オールアルキル基型メラミン樹脂を用いる場合は、反応性を向上させるために、芳香族スルホン酸等の反応促進剤を併用することが好ましい。
【0043】
(5)可塑剤
本発明の塗料は、加工時の衝撃付加で塗膜に生じる割れを防止するために、分子量が500以上の可塑剤を含んでいてもよい。しかしながら、本発明の塗料は非結晶性ポリエステル重合体を含み柔軟性に優れるため、可塑剤を必ずしも配合させる必要はない。可塑剤を使用しない場合、可塑剤が表面にブリードすることはなく、塗膜のベタツキが生じにくいというメリットがある。
【0044】
可塑剤を使用する場合、可塑剤は1分子中に3個以上のエステル結合をもつものが好適である。その具体例には、トリメリット酸誘導体、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等の脂肪酸誘導体、リン酸誘導体、ポリエステル系可塑剤、アクリル系単量体を主成分とするアクリル系低分子単量体等が含まれる。可塑剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。可塑剤の配合量は、樹脂ユニット100質量部に対し、20質量部以下が好ましい。塗膜の柔軟性に及ぼす可塑剤の影響は1質量部以上の配合量でみられるが、過剰量の可塑剤を配合すると塗膜にベタツキが発生しやすくなる。
【0045】
(6)顔料
本発明の塗料は、顔料を含んでいてもよい。顔料の例には、体質顔料、無機・有機の着色顔料、防錆顔料が含まれる。体質顔料としては、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム等が例示される。無機着色顔料としては、チタン白、硫化亜鉛、鉛白、黄色酸化鉄、酸化クロム、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデン赤、パーマネントレッド、ベンガラ、黄土、クロムグリーン、紺青、群青、アルミ粉末、銅合金粉末等が例示される。有機着色顔料としては、ハンザエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、フラバンスロンイエロー、インダンスレンブルー等が例示される。個々の顔料は、必要とする肉持ち、防錆性能、色調に応じて単独で、あるいは2種以上を組み合わせて添加される。
【0046】
顔料の配合量は、樹脂ユニット100質量部に対し、0.1〜100質量部であることが好ましい。必要とする色調や防錆作用は0.1質量部以上の顔料配合でみられるが、過剰に添加すると塗料自体が増粘し、美麗な膜面をもつ塗膜が得られにくくなる。
【0047】
(7)その他の添加剤
本発明の塗料は、充填材、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0048】
(8)塗料の粘度
本発明の塗料の粘度は、0.1〜10Pa・sであることが好ましく、0.2〜0.5Pa・sであることがより好ましい。塗料の粘度が低すぎると、基材に塗布した後、硬化までに流動してしまうことがあり、均一な塗膜が得られないことがある。また、塗料の粘度が高すぎると、塗布時に塗りすじ等が生じ、塗腹から気泡が抜け難くなることがある。粘度は非結晶性ポリエステル系重合体と(メタ)アクリル系単量体の配合比により調整できる。粘度は、B型粘度計で測定されることが好ましい。
【0049】
2.塗装金属材料
(1)基材
本発明の塗料は、種々の基材の上に塗布され、乾燥・焼付けの工程を経て厚膜タイプの塗膜を有する塗装金属材料を形成する。基材の例には、鋼板、鋼箔、アルミニウム(合金)板、アルミニウム(合金)箔、銅(合金)板、銅(合金)箔等の金属板や金属箔が含まれる。鋼板の具体例には、Znめっき鋼板、Zn−Al系めっき鋼板、Zn−Al−Mg系めっき鋼板、Alめっき鋼板、ステンレス鋼板等が含まれる。これらの鋼板は塗装原板とも呼ばれる。塗装原板は、下地金属に対する防食作用や塗膜密着性を向上させるため、化成処理されていることが好ましい。
【0050】
(2)下塗り塗装
本発明の塗装金属材料は、本発明の塗膜と塗装原板の間に、下塗り塗膜を有していてもよい。下塗り塗膜は、例えば化成処理した塗装原板にアクリル変性エポキシ樹脂塗料を塗布・焼付けすることにより形成できる。アクリル変性エポキシ樹脂塗膜は、エポキシ系やポリエステル系の下塗り塗膜に比較して、本発明の塗膜との密着性により優れる。下塗り塗膜は、必要に応じ防錆顔料を含んでいてもよい。この場合、防錆顔料は樹脂100質量部に対し10〜30質量部とすることが好ましい。
【0051】
3.塗装金属材料の製造方法
本発明の塗装金属材料は、発明の効果を損なわない範囲で任意に製造できるが、以下、好ましい製造方法を説明する。
本発明の塗装金属材料は、(a)基材を準備する工程、(b)本発明の塗料を前記基材に塗布し、乾燥・焼付けする工程、を経ることにより製造されることが好ましい。本発明においては、塗料を基材に塗布して形成された膜であって、乾燥・焼付け前の膜を「塗布膜」といい、乾燥・焼付け後の膜を「塗膜」または「乾燥塗膜」という。
(b)工程における塗料の塗布には、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、ナイフコート等が採用でき、塩化ビニル塗膜の作製と同様な条件下で厚膜塗装が可能である。このため、新たな設備を必要とすることなく、経済的である。この際、塗布膜は、乾燥膜厚が100μm以上になるように設定される。100μm未満となるような厚みの塗布膜では、重合開始剤の分解により発生したラジカルが空気中の酸素と結合して消失し、重合が十分に進行しないことがある。塗膜厚さの上限は特に規制されないが、乾燥膜厚で概ね400μm程度以下の範囲が好ましい。
【0052】
次いで、焼付け処理により重合硬化反応を生じさせ、ポリエステル変性熱重合型アクリル塗膜を形成する。本発明の塗料は、熱ラジカル重合開始剤を含むので、未重合(メタ)アクリル系単量体のほぼ全量がラジカル重合する。その際、気泡の発生が抑えられ、塩化ビニル樹脂塗膜と同程度に厚膜化しても気泡のない耐久性に優れた塗膜が形成される。焼付け時に未重合(メタ)アクリル系単量体のうち、2質量%以上、好ましくは5〜10質量%を揮散させると、表面の塗膜強度および擦過性がより優れた塗膜が得られる。焼付け処理条件は、加熱温度:120〜250℃、加熱時間:30〜600秒の範囲で調整すればよい。この焼付け処理条件は、塩化ビニル樹脂塗膜の成膜条件とほぼ同等であり、塗装条件の大幅な変更を必要としない。また、この条件範囲で未重合の(メタ)アクリル系単量体を揮散することが可能である。
【実施例】
【0053】
1.重合体
本発明の非結晶性ポリエステル系重合体として、東洋紡製バイロンGK890を用意した。GK890は、重量平均分子量が11000、Tgが17℃、水酸基価が21(KOHmg/g)、30℃での比重が1.16であった。
【0054】
2.単量体
本発明の(メタ)アクリル系単量体として、以下の化合物を用意した。
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(一般式(1)に該当)
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート(一般式(3)に該当)
ECA:エトキシジエチレングリコールアクリレート
LA:ラウリルアクリレート
3EGA:トリエチレングリコールジアクリレート(一般式(2)に該当)
【0055】
[実施例1]
1)塗料の調製
40質量部の非結晶性ポリエステル系重合体と、22.5質量部のLA、15質量部のECA、7.5質量部の4HBA、15質量部のHDDAを混合した。次にこの混合物100質量部に対し、17.6質量部のメチロール基型ブチル化メラミン樹脂(大日本インキ(株)製、スーパーベッカミンJ−820−60)、熱ラジカル重合開始剤として2.0質量部の有機過酸化物(日本油脂株式会社社製、パーオクタO)、80質量部の酸化チタン顔料を添加し分散混合して、塗料を得た。
【0056】
2)塗装金属材料の調製
5%Al−Znめっき鋼板を用意し、Ni置換処理を施した後、塗布型クロメート処理を施して化成処理皮膜を形成した。このようにして得た塗装原板にアクリル変性エポキシ樹脂をロールコートし、220℃で100秒間加熱して、乾燥膜厚5μmの下塗り塗膜を形成した。
【0057】
上記の下塗り塗膜の上に、塗料をそれぞれナイフコートにより塗布し、150℃で90秒間加熱して、乾燥膜厚200μmの塗膜を形成した。本塗料は、非結晶性ポリエステル系重合体と(メタ)アクリル系単量体が良好に相溶しており、また粘度は0.5〜2.5Pa・sの範囲であり、良好な塗装作業性を有していた。
【0058】
3)塗装金属材料の評価
得られた各塗装鋼板から試験片を切り出し、ベタツキ試験、ブロッキング性試験を評価した。また、試験片から塗膜を遊離し、ゲル分率を評価した。
【0059】
耐ベタツキ試験は、塗膜表面を指で触り、タックのある塗膜を×(不良)、タックのない塗膜を○(良好)、若干タックが感じられる塗膜を△(やや不良)と評価した。
【0060】
耐ブロッキング試験は、次のように行った。
50mm×50mmの形状に切り出した試験片を、80℃の恒温器(東洋精機製作所:ギヤー式老化試験機)に入れて100時間加熱した。次に、水平、平滑な定盤上に当該サンプルを塗膜面が上になるようにして10枚以上を積層し、常温で加重10kg/cmを加え、24時間放置した。続いて、塗膜を観察して、異常のなかったものを○(良好)、サンプルの塗膜が、その上に積層されたサンプルの基材に付着したものを×(不良)と評価した。
【0061】
ゲル分率は、次のようにして求めた。まず、フッ素樹脂板に、前記と同様にして塗料を塗装して塗膜を形成し、この塗膜をはがし遊離塗膜を得た。次に、アセトンを満たしたソクスレー抽出器に遊離塗膜を入れ、アセトン還流下で3時間保持した。続いて、遊離塗膜を取り出し、重量を測定して、元の重量に対する重量残存率を算出し、ゲル分率とした。
これらの結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2〜8]
メラミン樹脂の種類と添加量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、塗装金属材料を調製し、評価した。ただし、実施例5においては、塗料に反応促進剤として、メラミン樹脂に対して0.5質量%の芳香族スルホン酸を添加した。
【0063】
[実施例9]
一般式(1)の該当する化合物を、HDDAから3EGAに変更した以外は、実施例1と同様にして、塗装金属材料を調製し、評価した。
これらの評価結果を表1に示す。
【0064】
[比較例1]
メラミン樹脂の代わりに、ブロックイソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製デュラネートK6000)を6.36質量部、ブロックイソシアネートに対して200ppmのジブチルスズラウレートを添加した以外は、実施例1と同様にして、塗装金属材料を調製し、評価した。結果を表2に示す。本例は、ポリイソシアネートと、非結晶性ポリエステル系重合体の水酸基が等量で反応する条件であった。
【0065】
[比較例2、3]
ブロックイソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製デュラネートK6000)の配合量を表2に示すとおりに変更した以外は、比較例1と同様にして、塗装金属材料を調製し、評価した。結果を表2に示す。比較例2は、ポリイソシアネートが、非結晶性ポリエステル系重合体の水酸基の量に対して1.2倍の量となる条件であった。比較例3は、ポリイソシアネートが、非結晶性ポリエステル系重合体の水酸基の量に対して2.0倍の量となる条件であった。
【0066】
【表1】

イミノ基型ブチル化メラミン樹脂(大日本インキ(株)製スーパーベッカミンL-145-60)
メチロール・イミノ基型ブチル化メラミン樹脂(大日本インキ(株)製スーパーベッカミンL-117-60)
イミノ基型メチル化メラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ(株)製サイメル325)
メチロール基型メチル化メラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ(株)製サイメル370)
オールアルキル基型メチル化メラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ(株)製サイメル303)
【0067】
【表2】

【0068】
表1、2に示されるとおり、本発明の塗料から形成された塗膜を有する塗装金属材料は、耐ベタツキ性、耐ブロッキング性に優れていた。特に、実施例1〜5と実施例6の比較から、分子内にイミノ基を有するメラミン樹脂を含む塗料から形成された塗膜を有する実施例塗装金属材料は、オールアルキル型のメラミン樹脂を含む塗料から形成された塗膜を有する塗装金属材料に比べ、耐ブロッキング性に優れることが明らかであった。
また、本発明の塗料は塗装作業性に優れ、さらにはサンプルを切り出す際に、塗膜が割れる等の問題は生じなかったため、本発明の塗膜は、加工性に優れていることも明らかであった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の塗料から形成された塗膜を有する塗装金属材料は、柔軟で加工性のよい塗膜を有し、耐ベタツキ性、耐ブロッキング性に優れるため、塗装鋼板の塗料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が1000〜40000、ガラス転移温度Tgが−20〜60℃、30℃における比重が1.23以下である非結晶性ポリエステル系重合体Aと、
(メタ)アクリル系単量体Bと、
重合開始剤と、
メラミン樹脂を含み、
前記Bは、下記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物を含み、これらの化合物の配合量の合計は、前記B中、10質量%以上であり、
前記AとBは、A:B=10:90〜90:10の質量割合で配合される、ポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
【化1】

[式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数12以下の炭化水素基を表す]
【化2】

[式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは(CHCHO)(n≦4)であって、酸素原子がカルボニル炭素に結合している基を表す]
【化3】

[式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数12以下の水酸基含有炭化水素基
を表す]
【請求項2】
前記重合開始剤として過酸化物系熱ラジカル重合開始剤が、非結晶性ポリエステル系重合体と(メタ)アクリル系単量体の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部配合されている、請求項1に記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
【請求項3】
前記メラミン樹脂は、非結晶性ポリエステル系重合体と(メタ)アクリル系単量体の合計100質量部に対し、5〜30質量部配合されている、請求項1または2に記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
【請求項4】
前記メラミン樹脂は、分子内にイミノ基またはメチロール基を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
【請求項5】
前記非結晶性ポリエステル系重合体と前記(メタ)アクリル系単量体の合計100質量部に対し、0.1〜100質量部の顔料がさらに配合されている、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
【請求項6】
さらに可塑剤が添加されている、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
【請求項7】
粘度が0.1〜10Pa・sに調整されている、請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料。
【請求項8】
金属材料の表面に、請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料を重合硬化させた塗膜を有する、塗装金属材料。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル変性熱重合型アクリル塗料を基材表面に塗布し、未重合の(メタ)アクリル系単量体の2質量%以上を揮発させながら重合硬化させて造膜する、塗膜の製法。

【公開番号】特開2009−227948(P2009−227948A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78729(P2008−78729)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【出願人】(000199991)川上塗料株式会社 (12)
【Fターム(参考)】