説明

ポリエステル層および保護層を有する多層複合体

【課題】ポリエステル層と保護層との間での良好な付着力を可能にする付着助剤を提供する。
【解決手段】次の層:
I.フルオロポリマー成形材料およびポリオレフィン成形材料から選択された内部層I;II.グラフトコポリマー2〜80質量部;b)ポリエステル0〜85質量部、c)ポリアミド、フルオロポリマーおよびポリオレフィンから選択されたポリマー0〜85質量部;d)耐衝撃性を付与するゴムおよび/または通常の助剤または付加剤から選択された添加剤最大50質量部を有する付着補助層II;III.ポリエステル成形材料からなる層IIIを含有する多層複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、熱可塑性ポリエステルからなる遮断層ならびにフルオロポリマーおよびポリオレフィンから選択された、アルコールから遮断する材料からなる保護層を有する多層複合体である。
【背景技術】
【0002】
例えば、内燃機関において液状媒体またはガス状媒体を導くための管として使用される多層複合体を開発する場合、使用される成形材料は、導くべき媒体に対して十分な化学的安定性を有していなければならず、前記管は、燃料、油による長時間の応力または温度作用の後も前記管に課された全ての機械的要件の点で発展されるものでなければならない。自動車工業によって、十分な燃料安定性による要件と共に、燃料用導管の改善された遮断作用が達成され、環境中への炭化水素の放出が減少される。この結果、例えば熱可塑性ポリエステルを遮断層材料として使用するような多層管系が開発された。相応する系は、例えば欧州特許出願公開第0509211号明細書、欧州特許出願公開第0569681号明細書および欧州特許出願公開第1065048号明細書中に記載されている。しかしながら、この公知の管は、ポリエステル成形材料がアルコール分解および加水分解に敏感であり、アルコール含有燃料を使用した場合には、時間と共に良好な機械的強度が失われうるという欠点を有する。
【0003】
前記問題を解決するために、欧州特許出願公開第0637509号明細書には、ポリエステル層を水およびアルコールから保護するフルオロポリマー層が最も内部の層として取り付けられることが提案されている。フルオロポリマー層およびポリエステル層は、付着助剤によって互いに結合されている。付着助剤としては、一面でフルオロポリマー、柔軟性フルオロポリマーまたはフルオロゴムを含有し、他面、結晶性ポリマーまたはポリエステルエラストマーを含有する混合物が開示されている。更に、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、変性されたポリオレフィンまたは例えばエポキシ基、酸無水物基、オキサゾリン基、イソシアネート基、カルボン酸基またはアミノ基を有する”混和剤”が含有されていてよい。しかし、それによって、永続的な付着力から予測して、概して付着力が達成されるかどうかは、証明されていない。燃料中に部分的に溶解されている、開示された成分のために、前記付着助剤は、十分ではない燃料安定性を有する。更に、極めて一般的な記載のために、欧州特許出願公開第0637509号明細書の教示は、前記点で当業者によって直ちに模倣されて作業されうるものではない。
【0004】
別の工業的解決は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第4336289号明細書中に記載されている。このドイツ連邦共和国特許出願公開明細書の記載によれば、ポリエステル層および内在するフルオロポリマー層は、2つの重なり合った付着助剤層によって互いに結合されている。しかし、この種の複合体系は、費用をかけてのみ製造可能である。
【0005】
また、これとは異なり、ポリオレフィン系内部層は、ポリエステル層を水およびアルコールの作用から保護する状態にある。しかし、この場合も、十分な付着力を達成しなければならないという問題が課されている。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0509211号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0569681号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1065048号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0637509号明細書
【特許文献5】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4336289号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それに応じて、ポリエステル層と保護層との間での良好な付着力を可能にする付着助剤を開発するという課題が課された。更に、燃料との接触によって損なわれることのない付着力を可能にするという課題が課された。更に、付着力は、複合体の使用時間の間、十分に保持されたままでなければならない。この場合には、全体的にできるだけ簡単な工業的解決が努力して達成されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、次の層:
I.場合によっては付着力が変性されたフルオロポリマー成形材料および場合によっては付着力が変性されたポリオレフィン成形材料から選択された内部層I;
II. 次の組成:
a)次のモノマー:
グラフトコポリマーに対して0.5〜25質量%の少なくとも4個、有利に少なくとも8個、特に有利に少なくとも11個の窒素原子および有利に少なくとも146g/mol、特に有利に少なくとも500g/mol、殊に有利に少なくとも800g/molを有するポリアミンならびに
ラクタム、ω−アミノカルボン酸および/または等モル量のジアミンとジカルボン酸との組合せ物から選択されたポリアミド形成性モノマーを使用しながら製造されるグラフトコポリマー2〜80質量部;
b)ポリエステル0〜85質量部、有利に10〜75質量部、特に有利に25〜65質量部、
c)ポリアミド、フルオロポリマーおよびポリオレフィンから選択されたポリマー0〜85質量部、この場合a)、b)およびc)の質量部の総和は、100を生じ;
d)耐衝撃性を付与するゴムおよび/または通常の助剤または付加剤から選択された添加剤最大50質量部、有利に最大30質量部、特に有利に最大20質量部を有する付着補助層II;
III. ポリエステル成形材料からなる層IIIを含有する多層複合体によって解決された。
【0008】
成分II.c)の中で、有利には、5〜75質量部、特に有利には、10〜65質量部、殊に有利には、20〜55質量部が使用される。
【0009】
多層複合体は、一般に管または中空体である。
【0010】
層Iに使用されるフルオロポリマーは、例えばポリ弗化ビニリデン(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、三元成分、例えばプロペン、ヘキサフルオロプロペン、弗化ビニルまたは弗化ビニリデンにより変性されたETFE(例えば、EFEP)、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(E-CTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペン−弗化ビニリデンコポリマー(THV)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペンコポリマー(FEP)またはテトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA)であってよい。
【0011】
層II自体の付着助剤がフルオロポリマーを十分な量で含有しない場合には、層Iのフルオロポリマーは、特に付着力により変性されており、即ち官能基が存在しており、この官能基は、付着助剤のアミノ基と反応することができ、ひいては相結合を可能にする。この種の付着力の変性は、一般に2つの方法で可能である:
例えば、米国特許第5576106号明細書、米国特許第2003148125号明細書、米国特許第2003035914号明細書、米国特許第2002104575号明細書、特開平10−311461号公報、欧州特許出願公開第0726293号明細書、欧州特許出願公開第0992518号明細書またはWO 9728394の記載と同様に、フルオロポリマーは、組み込まれた官能基、例えば酸無水物基またはカーボネート基を有するか;または
フルオロポリマー成形材料は、官能基を有する、フルオロポリマーと混合可能であるかまたはフルオロポリマーと少なくとも相容性であるポリマーを含有する。この種の系は、例えば欧州特許出願公開第0637511号明細書またはこれと等価の米国特許第5510160号明細書ならびに欧州特許出願公開第0673762号明細書またはこれと等価の米国特許第5554426号明細書中に開示されており、この場合これらの刊行物は、参考のために記載されている。欧州特許出願公開第0673762号明細書の変性されたフルオロポリマーは、
PVDF97.5〜50質量%、有利に97.5〜80質量%、特に有利に96〜90質量%ならびに
少なくとも次の構成成分:
i)エステル構成成分14〜85質量%、
ii)イミド構成成分0〜75質量%、
iii)カルボン酸構成成分0〜15質量%および
iv)カルボン酸無水物構成成分7〜20質量部
を有するアクリレートコポリマー2.5〜50質量%、有利に2.5〜20質量%、特に有利に4〜10質量%からなる。
【0012】
詳細については、前記刊行物に指摘されており、その記載内容は、明らかに本明細書中の記載に属する。
【0013】
層Iについて選択的に使用されるポリオレフィンは、第1にポリエチレン、殊に高密度のポリエチレン(HDPE)またはアイソタクチックポリプロピレンであることができる。この場合、ポリプロピレンは、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよく、例えばコモノマーとしてエチレンまたは1−ブテンが用いられ、この場合には、ランダムコポリマーならびにブロックコポリマーが使用されてよい。更に、ポリプロピレンは、例えば公知術水準に相応して、エチレン−プロピレンゴム(EPM)またはEPDMにより耐衝撃性に変性されていてよい。
【0014】
また、層Iのポリオレフィンは、層IIそれ自体の付着助剤がポリオレフィンを十分な量で含有せず、特に付着助剤のアミノ基と反応しうる官能基が存在している範囲内で付着力により変性されている。適当な官能基は、第1にカルボキシル基、カルボン酸無水物基、カーボネート基、アシルラクタム基、オキサゾリン基、オキサジン基、オキサジノン基、カルボジイミド基またはエポキシ基である。
【0015】
官能基は、公知技術水準に相応して、オレフィン系不飽和官能性化合物、例えばアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノブチルエステル、無水マレイン酸、無水アトニット酸、無水イタコン酸またはビニルオキサゾリンとの反応によって、一般にラジカル的および/または熱的にポリオレフィン鎖上にグラフトされるかまたはオレフィン系不飽和官能性化合物とオレフィンとのラジカル共重合によって主鎖中に組み込まれる。
【0016】
成分II.a)のグラフトコポリマーの場合、アミノ基の濃度は、有利に100〜2500mmol/kgの範囲内にある。
【0017】
ポリアミンとしては、例えば次の物質種を使用することができる:
ポリビニルアミン(Roempp Chemie Lexikon, 第9版、第6巻、第4921頁、GeorgThieme Verlag Stuttgart 1992);
交互ポリケトンから製造されるポリアミン(ドイツ連邦共和国特許出願公開第19654058号明細書);
デンドリマー、例えば
((HN−(CH))N−(CH))−N(CH)−N((CH)−N((CH))−NH))
(ドイツ連邦共和国特許出願公開第19654179号明細書)または
トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N−ビス(2−アミノエチル)−N′,N′−ビス[2−[ビス(2−アミノエチル)アミノ]エチル]−1,2−エタンジアミン、
3,15−ビス(2−アミノエチル)−6,12−ビス[2−[ビス(2−アミノエチル)アミノ]エチル]−9−[2−[ビス[2−ビス(2−アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]3,6,9,12,15−ペンタアザヘプタデカン−1,17−ジアミン(J.M. Warakomski, Chem.Mat. 1992, 4, 1000 - 1004);
4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾロンの重合および引続く加水分解によって製造されうる直鎖状ポリエチレンイミン(Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie,第E20巻、第1428〜1487頁、Georg Thieme Verlag Stuttgart, 1987);
アジリジンの重合によって得ることができ(Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie,第E20巻、第1428〜1487頁、Georg Thieme Verlag Stuttgart, 1987)かつ一般に次のアミノ基分布:
第1級アミノ基25〜46%、
第2級アミノ基30〜45%および
第3級アミノ基16〜40%
を有する分枝鎖状ポリエチレンイミン。
【0018】
ポリアミンは、好ましい場合に最大20000g/mol、特に有利に最大10000g/mol、殊に有利に最大5000g/molの数平均分子量Mを有する。
【0019】
ポリアミド形成性モノマーとして使用されるラクタムまたはω−アミノカルボン酸は、4〜19個、殊に6〜12個の炭素原子を有する。特に有利には、ε−カプロラクタム、ε−アミノカプロン酸、カプリルラクタム、ω−アミノカプリル酸、ラウリンラクタム、ω−アミノドデカン酸および/またはω−アミノウンデカン酸が使用される。
【0020】
ジアミンとジカルボン酸との組合せ物は、例えばヘキサメチレンジアミン/アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン/ドデカン二酸、オクタメチレンジアミン/セバシン酸、デカメチレンジアミン/セバシン酸、デカメチレンジアミン/ドデカン二酸、ドデカメチレンジアミン/ドデカン二酸およびドデカメチレンジアミン/2,6−ナフタリンジカルボン酸である。しかし、また、それと共に、別の組合せ物、例えばデカメチレンジアミン/ドデカン二酸/テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸/テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸/カプロラクタム、デカメチレンジアミン/ドデカン二酸/ω−アミノウンデカン酸、デカメチレンジアミン/ドデカン二酸/ラウリンラクタム、デカメチレンジアミン/テレフタル酸/ラウリンラクタムまたはデカメチレンジアミン/2,6−ナフタリンジカルボン酸/ラウリンラクタムが使用されてもよい。
【0021】
1つの好ましい実施態様において、グラフトコポリマーは、付加的にオリゴカルボン酸を使用しながら製造され、この場合このオリゴカルボン酸は、それぞれ残りのポリアミド形成性モノマーの総和に対してジカルボン酸0.015〜約3モル%およびトリカルボン酸0.01〜約1.2モル%から選択されている。これに関連して、全ての前記モノマーのジアミンとジカルボン酸との等量の組合せ物が個別的に考慮される。こうして、ポリアミド形成性モノマーは、全体的に僅かに過剰量のカルボキシル基を有する。ジカルボン酸を使用する場合には、有利に0.03〜2.2モル%、特に有利に0.05〜1.5モル%、殊に有利に0.1〜1モル%、殊に0.15〜0.65モル%が添加され、トリカルボン酸を使用する場合には、有利に0.02〜0.9モル%、特に有利に0.025〜0.6モル%、殊に有利に0.03〜0.4モル%、殊に0.04〜0.25モル%が添加される。オリゴカルボン酸を共用する場合には、溶剤安定性および燃料安定性は、殊に加水分解安定性およびアルコール分解安定性ならびに応力亀裂安定性は、明らかに改善されるが、しかし、膨潤挙動も明らかに改善され、ひいては寸法安定性ならびに拡散に対する遮断作用も明らかに改善される。
【0022】
オリゴカルボン酸としては、6〜24個のC原子を有する全ての任意のジカルボン酸またはトリカルボン酸、例えばアジピン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、シクロヘキサン−1.4−ジカルボン酸、トリメシン酸および/またはトリメリット酸が使用されてよい。
【0023】
付加的に所望の場合には、3〜50個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、芳香族、アラルキル系のモノカルボン酸および/またはアルキルアリール置換されたモノカルボン酸、例えばラウリル酸、不飽和脂肪酸、アクリル酸または安息香酸が調節剤として使用されてよい。この調節剤を用いた場合には、分子形状を変化させることなく、アミノ基の濃度を減少させることができる。付加的に、こうして官能基、例えば二重結合または三重結合等を導入することができる。しかし、グラフトコポリマーがアミノ基の実質的な含量を有することは、望ましい。特に有利には、グラフトコポリマーのアミノ基の濃度は、150〜1500mmol/kgの範囲内、殊に有利に250〜1300mmol/kgの範囲内、特に有利に300〜1100mmol/kgの範囲内にある。この場合、アミノ基は、以下、アミノ末端基であるだけでなく、場合によっては存在するポリアミンの第2級アミン官能基または第3級アミン官能基である。
【0024】
前記のグラフトコポリマーの製造は、欧州特許出願公開第1065048号明細書中に詳細に記載されている。
【0025】
成分II.b)のポリエステルならびに層IIIのポリエステルとしては、直鎖状に構成された熱可塑性ポリエステルがこれに該当する。この熱可塑性ポリエステルは、ジオールをジカルボン酸またはそのポリアミド形成性誘導体、例えばジメチルエステルとの重縮合によって製造される。適当なジオールは、式HO−R−OHを有し、この場合Rは、2〜40個、特に2〜12個のC原子を有する2価の分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族基および/または脂環式基を表わす。適当なジカルボン酸は、式HOOC−R’−COOHを有し、この場合R’は、6〜20個、特に6〜12個のC原子を有する2価の芳香族基を表わす。
【0026】
ジオールの例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールならびにC36−ジオール二量体ジオールが挙げられる。このジオールは、単独で使用されてもよいし、ジオール混合物として使用されてもよい。
【0027】
記載されたジオール25モル%までは、下記の一般式
【0028】
【化1】

〔式中、R’’は、2〜4個のC原子を有する2価基を表わし、xは、2〜20の値をとることができる〕を有するポリアルキレングリコールによって代替されていてよい。
【0029】
芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、1.4−ナフタリンジカルボン酸、1.5−ナフタリンジカルボン酸、2.6−ナフタリンジカルボン酸または2.7−ナフタリンジカルボン酸、ジフェン酸およびジフェニルエーテル−4.4′−ジカルボン酸がこれに該当する。このジカルボン酸30モル%までは、脂肪族ジカルボン酸または脂環式ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸またはシクロヘキサン−1.4−ジカルボン酸によって代替されていてよい。
【0030】
適当なポリエステルの例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2.6−ナフタレート、ポリプロピレン−2.6−ナフタレートおよびポリブチレン−2.6−ナフタレートである。原則的には、同じ型の層IIIのポリエステルならびに成分IIb)のポリエステルであってよい。これが当てはまらない場合には、互いに相容性のポリエステルが有利に選択される。
【0031】
前記ポリエステルの製造は、公知技術に属する(ドイツ連邦共和国特許出願公開第2407155号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2407156号明細書、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie, 第4版,第19巻,第65頁以降,Verlag Chemie, Weinheim, 1980)。
【0032】
ポリエステル成形材料は、前記ポリエステルの1つまたは混合物としての前記ポリエステルの多数を含有することができる。更に、別の熱可塑性樹脂は複合体能を損なわない限り、別の熱可塑性樹脂、殊に耐衝撃性を付与するゴムを40質量%まで含有することができる。更に、ポリエステル成形材料は、ポリエステルにとって通常の助剤および添加剤、例えば難燃剤、安定剤、加工助剤、充填剤、殊に導電率を改善するために、強化繊維、顔料または類似物を含有することができる。記載された薬剤の量は、望ましい性質が著しく損なわれることがないように計量供給すべきである。
【0033】
成分II.c)のポリアミドとしては、第1に脂肪族ホモアミドおよび脂肪族コポリアミド、例えばPA 46、PA 66、PA 68、PA 612、PA 88、PA 810、PA1010、PA 1012、PA 1212、PA 6、PA 7、PA 8、PA 9、PA 10、PA 11およびPA 12がこれに該当する。(ポリアミドの符号は、国際規格に相応し、この場合、第1の符号は、出発ジアミンのC原子数を表わし、最後の数字は、ジカルボン酸のC原子数を表わす。1つの数字だけが記載されている場合には、α,ω−アミノカルボン酸またはこれから誘導されたラクタムから出発していることを意味し、その他の点については、H. Domininghaus, Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften, 第272頁以降, VDI-Verlag, 1976に指摘されている)。
【0034】
コポリアミドを使用する場合には、このコポリアミドは、例えばアジピン酸、セバシン酸、コルク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタリン−2.6−ジカルボン酸等を共酸(Cosaeure)として含有することができるかまたはビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンまたは類似物をコジアミンとして含有することができる。ラクタム、例えばカプロラクタムもしくはラウリンラクタムまたはアミノカルボン酸、例えばω−アミノウンデカン酸は、共成分として同様に組み込まれていてよい。
【0035】
前記ポリアミドの製造は、公知である(例えば、D.B. Jacobs, J. Zimmermann, Polymerization Processes, 第424〜467頁, Interscience Publishers, New York, 1977;ドイツ連邦共和国特許出願公告第2152194号明細書)。
【0036】
更に、ポリアミドとしては、混合した脂肪族/芳香族重縮合体も適当であり、例えば米国特許第2071250号明細書、米国特許第2071251号明細書、米国特許第2130523号明細書、米国特許第2130948号明細書、米国特許第2241322号明細書、米国特許第2312966号明細書、米国特許第2512606号明細書および米国特許第3393210号明細書ならびにKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, 第3版,第18巻,第328頁以降および第435頁以降, Wiley & Sons, 1982中に記載されている。更に、適当なポリアミドは、ポリ(エーテルエステルアミド)またはポリ(エーテルアミド)であり;この種の生成物は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第2523991号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2712987号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第3006961号明細書中に記載されている。
【0037】
ポリアミド末端基に関しては、何らの制限もない。しかし、末端基の50%超がアミノ末端基である場合には、最善の結果は、一般に得ることができる。
【0038】
フルオロポリマーとしてならびに場合によっては成分II.c)の成分として含有されていてよいポリオレフィンとして、層Iと同じ化合物が使用されてよい。この場合、層Iがフルオロポリマー成形材料からなる場合に、成分II.c)は、同様に有利に同じ型のフルオロポリマーを含有していてよく、他方で、成分II.c)中でのポリオレフィンの使用はこの場合に層の付着力を改善しないものと思われる。
【0039】
これと同様に、層Iがポリオレフィン成形材料からなる場合に、成分II.c)は、同様に有利に同じ型のポリオレフィンを含有していてよく、他方で、成分II.c)中でのフルオロポリマーの使用はこの場合に層の付着力を改善しないものと思われる。
【0040】
場合によっては成分II.c)中に含有されているフルオロポリマーまたはポリオレフィンは、特に上記の記載と同様に付着力が変性されている。この場合には、層Iの成形材料の付着力の変性は、断念されてよい。
【0041】
成分II.d)の添加剤としては、層IIIのポリエステル成形材料についての記載と同様に使用されてよい。
【0042】
層I〜IIIと共に、本発明による複合体中には、なお他の層、例えば適当な付着助剤(層IV)により層IIIと結合された、ポリアミド成形材料またはポリオレフィン成形材料からなる層Vが含まれていてよい。このために適した付着助剤は、公知技術水準である。更に、前記のポリアミド層またはポリオレフィン層には、ゴムまたは熱可塑性エラストマーからなる外被が続くことができる。同様に、内部層Iには、さらに最も内部のフルオロポリマー層またはポリオレフィン層が続くことができる。
【0043】
1つの実施態様において、多層複合体は、付加的に再生層を含む。本発明による複合体を製造する場合には、例えば、押出装置の運転開始過程から廃棄物が繰返し生じるかまたは押出吹込成形の場合の中央部が膨らんだ小さな丸い窓ガラスの形で廃棄物が繰返し生じるかまたは管の組立ての場合にも廃棄物が繰返し生じる。前記廃棄物からなる再生層は、再生物配合物の場合による脆性ができるだけ十分に補償されるように、2つの別の層の間に埋設される。
【0044】
本発明による多層複合体は、殊に液体もしくはガスを導くかまたは貯蔵するための、例えば管、供給管または容器である。この種の管は、真っ直ぐの形または波形の形で形成されていてもよいし、部分的な区間だけ波形にされている。波形管は、公知技術水準であり(例えば、米国特許第5460771号明細書)、したがってさらなる記載は割愛することにする。このような多層複合体の重要な使用目的は、燃料用導管、タンク用供給管、蒸気用管路(即ち、燃料蒸気が導入される管路、例えば通気導管)、ガソリンスタンド用導管、冷却液用導管、空調設備用導管または燃料容器、例えば石油缶もしくはタンクとして使用することである。
【0045】
燃焼可能な液体、ガスまたはダスト、例えば燃料または燃料蒸気を導くかまたは貯蔵するための本発明による多層複合体を使用する場合には、複合体に属する層の1つまたは付加的な内部層に導電性を備えさせることが望ましい。これは、導電性の添加剤を配合することによって公知技術水準により行なうことができる。導電性の添加剤としては、例えば導電性カーボンブラック、金属スパンコール、金属粉末、金属化されたガラス玉、金属化されたガラス繊維、金属繊維(例えば、不銹鋼からなる金属繊維)、金属化されたホイスカー、炭素繊維(また、金属化された炭素繊維)、固有の導電性ポリマーまたは黒鉛フィブリルが使用されてよい。また、種々の導電性添加剤の混合物が使用されてもよい。
【0046】
有利には、導電性層は、導くことができるかまたは貯蔵することができる媒体と直接接触して存在し、最大10Ω/□、有利に最大10Ω/□の表面抵抗を有する。多層管の抵抗を測定するための測定方法は、SAE J 2260(1996年11月、第7.9章)中に説明されている。
【0047】
多層複合体の完成は、一工程または多工程で、例えば多成分射出成形、同時押出、同時押出吹込成形(例えば、3D-吹込成形、開いた金型半分内への異形成形押出、3D-チューブマニプレーション(Schlauchmanipulation)、真空吹込成形、3D-吹込成形、順次吹込成形)の道程上での一工程法により行なうことができるかまたは多工程法、例えば被覆により行なうことができる。
【0048】
本発明は、以下、例示的に説明される。
【0049】
実施例において、次の成形材料を使用した:
内部層(層I):
フルオロポリマー1:市販のPVDF95質量%と次の基本構成成分:
メチルメタクリレートから導き出された57質量%、
N−メチルグルタルイミド型30質量%、
メタクリル酸から導き出された3質量%および
無水グルタル酸型10質量%から構成されているポリグルタルイミド5質量%(溶融液中でのメチルメタクリレートとメチルアミンの水溶液との反応によって製造された)とからなる、欧州特許出願公開第0673762号明細書に記載の混合物。
フルオロポリマー2:Daikin Industries Ltd.社,日本、のNEOFLON(登録商標)RP 5000、変性されたEFEP。
フルオロポリマー3:Daikin Industries Ltd.社,日本、のNEOFLON(登録商標)RP 5000 AS、導電性に調節され、変性されたEFEP。
ポリオレフィン1:STAMYLAN(登録商標)P 83 MF 10、DSM Deutschland GmbH社のPPコポリマー。
ポリオレフィン2:VESTOLEN(登録商標)A 6013、DSM Deutschland GmbH社のPE-HD。
【0050】
付着助剤(層IIおよびIV):
グラフトコポリマーの製造
ラウリンラクタム9.5kgを加熱釜中で180℃〜210℃で溶融し、耐圧性重縮合釜中に移し;引続き、水475gおよび次亜リン酸0.54gを添加した。ラクタム分解を280℃で生じる固有圧下で実施し;その後に、3時間、5バールの残留水蒸気圧に放圧し、ポリエチレンイミン500g(BASF AG社, Ludwigshafen在、 LUPASOL G 100)およびドデカン二酸15gを供給した。
【0051】
2つの成分を生じる固有圧下に混入し;引続き、大気圧に放圧し、次に280℃で2時間窒素を溶融液上に導いた。澄明な溶融液を溶融液ポンプによりストランドとして搬出し、水浴中で冷却し、引続き造粒した。
HV1:PA12 12.6kg(ηrel=2.1)、VESTODUR(登録商標)3000 22.82kg(165cm3/gの溶液粘度Jを有するDegussa AG社のホモポリブチレンテレフタレート)およびグラフトコポリマー5.0kgをBerstorff社の二軸混練機ZE 25 33D上で270℃および150r.p.m.ならびに10kg/hの通過量で溶融混合し、造粒した。
HV2:HV1と同様ではあるが、しかし、PA12を無水マレイン酸によりグラフトされたポリプロピレン(Mitsui Chemicals Inc.,社、日本、のADMER(登録商標)QB 520E)。
HV3:HV1と同様ではあるが、しかし、PA12を無水マレイン酸によりグラフトされたポリエチレン(Mitsui Chemicals Inc.,社、日本、のADMER(登録商標)NF 408 E)。
【0052】
ポリエステル層(層III):
PES:Degussa AG社の耐衝撃性に変性されたホモポリブチレンテレフタレート
外部層(層V):
PA12:Degussa AG社の耐衝撃性に変性され軟質にされたポリアミド(VESTAMID(登録商標)X 7293)
ポリオレフィン2:前記と同様。
【実施例】
【0053】
例1〜5
2個の45番(45-er)の押出機および3個の30番(30-er)の押出機を装備した5層の装置上で、8×1の寸法を有する管を約12m/分の押出速度で製造した。
【0054】
【表1】

【0055】
管の特性決定:
例1〜5の管の場合、フルオロポリマー内部層またはポリオレフィン内部層とポリエステル層との間の付着力は、押出により新しくなり、燃料貯蔵(CM15での内部接触貯蔵、イソオクタン42.5体積%、トルエン42.5体積%およびメタノール15体積%からなる試験用燃料、80℃で1週間ごとの燃料交換、1000時間)後に前記個所での結合が分離不可能であるような高さになった。
【0056】
SAE J 2260による−40℃での冷時耐衝撃強さ試験後の破壊率(Bruchquote)は、全ての管の場合に、押出により新しくなり、燃料貯蔵(CM15での内部接触貯蔵、80℃で1週間ごとの燃料交換、1000時間)後にそれぞれ0/10であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の層:
I.フルオロポリマー成形材料およびポリオレフィン成形材料から選択された内部層I;
II. 次の組成:
a)次のモノマー:
グラフトコポリマーに対して0.5〜25質量%の少なくとも4個の窒素原子を有するポリアミンならびに
ラクタム、ω−アミノカルボン酸および/または等モル量のジアミンとジカルボン酸との組合せ物から選択されたポリアミド形成性モノマーを使用しながら製造されるグラフトコポリマー2〜80質量部;
b)ポリエステル0〜85質量部、
c)ポリアミド、フルオロポリマーおよびポリオレフィンから選択されたポリマー0〜85質量部、この場合a)、b)およびc)の質量部の総和は、100を生じ;
d)耐衝撃性を付与するゴムおよび/または通常の助剤または付加剤から選択された添加剤最大50質量部を有する付着補助層II;
III. ポリエステル成形材料からなる層IIIを含有する多層複合体。
【請求項2】
成分II.a)4〜60質量部および/または
成分II.b)10〜75質量部が含有されている、請求項1記載の多層複合体。
【請求項3】
成分II.a)6〜40質量部および/または
成分II.b)25〜65質量部が含有されている、請求項1記載の多層複合体。
【請求項4】
成分II.c)5〜75質量部が含有されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の多層複合体。
【請求項5】
成分II.c)10〜65質量部が含有されている、請求項4記載の多層複合体。
【請求項6】
成分II.c)20〜55質量部が含有されている、請求項4記載の多層複合体。
【請求項7】
フルオロポリマーとしては、PVDF、ETFE、三元成分により変性されたETFE、E−CTFE、PCTFE、THV、FEPおよびPFAの群から選択されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の多層複合体。
【請求項8】
ポリオレフィンとしてポリエチレンまたはアイソタクチックポリプロピレンを使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の多層複合体。
【請求項9】
フルオロポリマーまたはポリオレフィンが付着力を有するように変性されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の多層複合体。
【請求項10】
ポリエステルがポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2.6−ナフタレート、ポリプロピレン−2.6−ナフタレートおよびポリブチレン−2.6−ナフタレートから選択されている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の多層複合体。
【請求項11】
付加的に適当な付着助剤により層IIIと結合された、ポリアミド成形材料またはポリオレフィン成形材料からなる層を有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の多層複合体。
【請求項12】
管または中空体である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の多層複合体。
【請求項13】
全体的にかまたは部分的範囲内で湾曲した管である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の多層複合体。
【請求項14】
燃料用導管、ブレーキ液用導管、冷却液用導管、圧媒液用導管、ガソリンスタンド用導管、空調設備用導管、蒸気管路、容器または供給管である、請求項1から13までのいずれか1項に記載の多層複合体。
【請求項15】
複合体に属する層の1つまたは付加的な内層が導電性を備えている、請求項1から14までのいずれか1項に記載の多層複合体。
【請求項16】
同時押出、被覆、多成分射出成形または同時押出吹込成形によって製造されている、請求項1から15までのいずれか1項に記載の多層複合体。

【公開番号】特開2006−116958(P2006−116958A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295394(P2005−295394)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa AG
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】