説明

ポリエステル布の処理方法

本発明は、ポリエステル含有布及び/又は被服のピリング性質を低める方法及び/又は色彩鮮明化の方法に関し、ここで前記方法は、前記布を、洗剤の不在下でポリエステル加水分解酵素により処理することを含んで成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル布及び/又は被服のピリング(pilling)性を低める方法及び/又は色彩鮮明化の方法に関し、ここで前記方法は、前記布を、洗剤の不在下でポリエステル加水分解酵素により処理することを含んで成る。本発明はまた、ポリエステル含有布及び被服のバイオ−仕上げ方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(エチレンテレフタレート)繊維は、織物産業により利用されるポリエステルの主要部分である。その繊維は、例えばテレフタル酸エチレングリコールの重縮合、及び溶融物からの繊維の引き出しにより生成される。
【0003】
その強度のために、ポリエステル布及び/又は被服は、ピル形成を受けやすく、そしてたぶん、ポリエステルステープルファイバー材料に適用される最も重要な布−仕上げ方法は、ピリング制御のために企画されたそれらの方法である。すべてのステープルファイバー材料は、洗濯及び着用の間、軽い磨耗にゆだねられる場合、布表面で絡みあった繊維の小ボール又は“ピル”を形成する傾向がある。屈曲磨耗に対して高い耐性を有する、実質的な割合の繊維を含む場合、ピルが、不正な取扱い及び外観を生成するのに十分な数で布の表面上に保持され得る。
【0004】
Hatch in Textile Science (St. Paul: West Publishing Company, 1993. pages 52-53,218, 420)によれば、ピリングの機構は次の通りである:i)機械的作用が布本体からの繊維のその表面への移動を引き起こし、ii)さらなる作用がピルを形成する他の突出する繊維の周囲での表面繊維の回転を引き起こし、iii)追加の作用がより多くのピルを形成するか、又はピルを付着する繊維を切断し続けることができる。布のピリング性は、表面毛羽形成、毛羽の絡み合う速度、及び最終的に、ピル分解の速度に依存する。ピル分解の速度は、付着繊維の靭性に直接的に関係している。
【0005】
バイオ−仕上げは、織物繊維又は糸が抗−ピリング、軟度及び平滑性のような性質を付与するために酵素により処理される最終工程である。この概念は、最初の実験がセルラーゼを用いて綿識布に対して行われた日本において、最初に展開された。
【0006】
ピリング防止は、綿、ポリエステル及びブレンドされた布の製造のための前進する挑戦である。ピリングの問題に対する単純な解決法は存在しない。繊維産業においては、ポリエステル繊維は、織物商品に見出される紡糸機の種類に適合するよう、中−及び高−靭性フィラメントとして、及び種々の長さ及び繊維色のステープルファイバーとして生成される。ステープルファイバーは通常、中位の靭性を得るために引き抜かれるが、しかし磨耗耐性のいくらかの損失を犠牲にして改良された“ピリング”性能を得るために、より低い平均分子量のポリマーから紡糸され得る。また、仕上げ剤は、布の表面からの突出する毛の除去により、及び糸内を移動する繊維の傾向を低めるために熱処理により、布のピリング性を低めることができる。
【0007】
Bazin, J. and Sasserod, S., 58eme Congress de l'Association des Chimistes de l'industrie Textile Science, Mullhouse, France. October 25,1991は、100%綿及びポリエステル綿の両者上にピリングの劇的低下をもたらした毛羽レベルの低下を、セルラーゼを用いて得られることを開示する。
アメリカ特許5,997,584号は、テレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素及び/又はエチレングリコールジベンジルエステル加水分解酵素により、洗剤の存在下で、ポリエステル布又は被服を処理することを含んで成る、その布又は被服のピリング性を低める方法を開示する。
【発明の開示】
【0008】
布のピリングは、生地の美しい性質を変える。布の平滑性、色彩及び一般的な取扱は、妥協され得る。従って、ポリエステル布及び被服のピリング性を低めるための改良された方法を提供することが本発明の目的である。特に、本発明は、エチレングリコールジベンジルエステル(BEB)及び/又はテレフタル酸ジエチルエステル(ETE)加水分解酵素の群が、洗剤の不在下で、ポリエステル布及び被服のピリング性を低めることができることを提供する。
【0009】
本発明者は、酵素的バイオ−仕上げがピル防止のための永続的仕上げを提供することを見出した。エチレングリコールジベンジルエステル(BEB)及び/又はテレフタル酸ジエチルエステル(ETE)加水分解酵素が洗剤の不在下でポリエステル布及び被服のピリング性を低めることができることが示されている(例3を参照のこと)。より特定には、本発明者は、エステラーゼ、好ましくはクチナーゼ群内のエチレングリコールジベンジルエステル(BEB)及び/又はテレフタル酸ジエチルエステル(ETE)加水分解酵素が、洗剤の不在下で、ポリエステル布及び被服のピリング性を低めることができることを示している。また、エチレングリコールジベンジルエステル(BEB)及び/又はテレフタル酸ジエチルエステル(ETE)加水分解酵素の組み合わせが、ポリエステル及び綿ブレンドの布の改良されたバイオ−仕上げ/ピリングを提供することが見出された。
【0010】
さらに、エチレングリコールジベンジルエステル(BEB)及び/又はテレフタル酸ジエチルエステル(ETE)加水分解による処理は、洗剤の不在下で、ポリエステル布及び/又は被服の色彩鮮明化できる。
【0011】
ピリング性を低めるためへのETE加水分解酵素及び/又はBEB加水分解酵素の使用による実験から、本発明の方法が色彩鮮明化の改良をもたらすことが見出された。従って、好ましい態様においては、本発明の方法は、従来の色彩鮮明化方法と同時に行われ得る。色彩鮮明化方法は、例えばEP 220,016号 ; WO 91/17243号; WO 89/09259号; WO 91/19807号; WO 94/07998号及び WO 96/29397号に記載されている。
【0012】
用語“色彩鮮明化”(color clarification)とは、本明細書において使用される場合、被服及び/又は布の表面から毛羽及びピルを除去することによる複数回の洗浄サイクルを通して初期色彩の保存性を意味する。色彩鮮明化能力は、生地の反射率を測定することによって決定され得る。
本発明の方法は、たぶん、ポリエステル繊維の高められた親水性のために、特に油性しみの改良された土壌開放性を可能にする。
最終的に、本発明の方法は、ポリエステル布及び/又は被服の帯電防止性を改良することが見出された。
【0013】
従って、第1の観点においては、本発明は、テレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素(ETE加水分解酵素)、エチレングリコールジベンジルエステル加水分解酵素(BEB加水分解酵素)、及びそれらの組合せから成る群から選択された酵素により前記布又は被服を、洗剤の不在下で処理することを含んで成る、ポリエステル布又は被服のピリング性を低めるための方法を提供する。
【0014】
第2の観点においては、本発明は、テレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素(ETE加水分解酵素)、エチレングリコールジベンジルエステル加水分解酵素(BEB加水分解酵素)、及びそれらの組合せから成る群から選択された酵素により前記布又は被服を、洗剤の不在下で処理することを含んで成る、ポリエステル布又は被服の色彩鮮明化方法を提供する。
【0015】
第3の観点においては、本発明は、テレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素(ETE加水分解酵素)、エチレングリコールジベンジルエステル加水分解酵素(BEB加水分解酵素)、及びそれらの組合せから成る群から選択された酵素により前記布又は被服を、洗剤の不在下で処理することを含んで成る、ポリエステル布又は被服のバイオ−仕上げ方法を提供する。
本発明の他の観点は、次の詳細な記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、ポリエステル布及び/又は被服のピリング性を低めるために向けられる。さらに、本発明は、ポリエステル布及び/又は被服の色彩鮮明化の改良方法を提供する。さらに、本発明はまた、ポリエステル及びポリエステル含有布又は被服のバイオ−仕上げの方法にも関する。
【0017】
本明細書において使用される場合、単数形は、特にことわらない限り、複数の場合を包含する。従って、例えば、“テレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素”は、1又は複数のテレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素の使用を包含する。
【0018】
特にことわらない限り、本明細書において使用されるすべての技術的及び科学的用語は、当業者により通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似するか又は同等のいずれかの方法及び材料が本発明の実施又は試験に使用されるが、好ましい方法及び材料が現在、記載されている。本明細書に言及されるすべての出版物は、それに関して引用される材料の開示及び記載のために、引用により本明細書に組み込まれる。
【0019】
ポリエステル布又は被服
本発明の方法により処理されるポリエステル布及び/又は被服は、ポリエステル、例えばマイクロデニールポリエステルを含んで成るいずれかの布又は布ブレンドであり得る。実際的に、ピリング性は、異なった材料の繊維とのブレンドにポリエステル繊維を含んで成る布及び/又は被服において最も明白である。ポリエステル布ブレンドは、本発明においては、少なくともポリエステル及びセルロースブレンド、例えばポリエステル及び綿ブレンドを包含する。他の重要なポリエステル布ブレンド(すなわち、ポリエステル含有ブレンド)は、ポリエステル及び羊毛ブレンド;ポリエステル及び絹ブレンド;ポリエステル及びアクリル酸誘導体ブレンド;ポリエステル及びナイロンブレンド;ポリエステル、ナイロン及びポリウレタンブレンド、ポリエステル及びポリウレタンブレンド(例えば LYCRATM, SPANDEXTM)、レーヨン(ビスコース)、セルロースアセテート及びテンセルを包含する。
【0020】
好ましい態様においては、布は、50%(w/w)以上のポリエステル、特に75%(w/w)以上のポリエステル、90%(w/w)以上のポリエステル、又は95%(w/w)以上のポリエステルを含んで成る布ブレンドである。最も好ましい態様においては、本発明の方法は、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリエステル材料、すなわち純粋なポリ(エチレンテレフタレート)ポリエステル材料から実質的に成る布又は被服に適用される。
【0021】
ポリエステル加水分解酵素
本発明の方法は、ポリエステル加水分解酵素により布は被服を処理することを含んで成る。ある酵素群が、テレフタル酸ジエチルエステル(ETE)及び/又はエチレングリコールジベンジルエステル(BEB)を加水分解でき、そして従って、ポリエステル加水分解酵素である。
酵素がETE及び/又はBEB加水分解酵素である決定は、例1に記載のようにして行われ得る。
【0022】
本発明の方法は、ETE加水分解酵素及び/又はBEB加水分解酵素により布又は被服を、洗剤の不在下で処理することを含んで成る。好ましい態様においては、本発明の方法は、ETE加水分解酵素により布被服を処理することを含んで成る。もう1つの好ましい態様においては、本発明の方法は、BEB加水分解により布又は被服を処理することを含んで成る。BEB加水分解酵素は特に、下記例1に定義されるように、BEB10加水分解酵素又はBEB30加水分解酵素であり得る。好ましくは、ETE加水分解酵素は、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%及び最も好ましくは少なくとも95%の加水分解活性を有する。好ましくはBEB10又はBEB30加水分解酵素は、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%及び最も好ましくは少なくとも95%の加水分解活性を有する。最も好ましい態様においては、BEB10, BEB30及びETE加水分解活性は、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%及び最も好ましくは少なくとも95%である。
【0023】
本発明の方法の態様においては、ポリエステル、又はポリエステル包含布又は被服は、処理液体1ml当たり約0.0001〜10mgの酵素タンパク質、好ましくは、処理体積1ml当たり0.0006〜1mgの酵素タンパク質、特に処理体積1ml当たり0.006〜1.2mgの酵素タンパク質の範囲の量のETE加水分解酵素及び/又はBEB加水分解酵素により処理される。ETE加水分解酵素及び/又はBEB加水分解酵素は、いずれかの便利な起源;例えば細菌、菌類、酵母、哺乳類又は植物起源に由来する。
【0024】
好ましくは、ETE加水分解酵素及び/又はBEB加水分解酵素は、微生物源に由来する。より好ましい態様においては、ETE加水分解及び/又はBEB加水分解酵素は、カンジダ(Candida)の株、特にカンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)(Candida rugosA),ヒューミコラ(Humicola)の株、特にヒューミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、例えばヒューミコラ・インソレンスDSM1800、シュードモナス(Pseudomonas)の株、特にシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)に由来する。
【0025】
上記に開示されるように、酵素は、いずれかの起源、例えば細菌、菌類、酵母、哺乳類又は植物起源に由来する。用語“由来する”とは、本明細書においては、酵素が、それが天然に存在する、すなわち酵素のアミノ酸配列の本体が天然の酵素と同一である生物から単離されたことを意味する。用語“由来する”とはまた、酵素が、宿主生物において組換え的に生成されることを意味し、前記組換え生成された酵素は、天然の酵素と同一の本体を有するか、又は修飾されたアミノ酸配列を有し、例えば欠失され、挿入され、そして/又は置換される1又は複数のアミノ酸を有し、すなわち組換え的に生成された酵素は天然のアミノ酸配列の変異体及び/又はフラグメントであり、又は当業界において知られている核酸シャフリングにより生成される。天然の変異体は、天然の酵素の意味内に包含される。
【0026】
さらに、用語“由来する”とは、例えばペプチド合成により合成的に生成される酵素を包含する。用語“由来する”とはまた、例えば、インビボ又はインビトロのいずれかにおいて、グリコシル化、リン酸化又は他の化学的修飾により修飾された酵素も包含する。この用語は、それが天然において存在する生成から単離された酵素、又は同じタイプの生物において組換え的に発現された酵素、又は例えばペプチド合成により合成的に生成された酵素を包含する。組換え的に生成される酵素に関しては、用語“由来する”とは、酵素の識別を言及し、そしてそれが組換え的に生成される宿主生物の識別を意味しない。
【0027】
酵素はまた、精製され得る。用語“精製された”とは、本明細書において使用される場合、それが由来する生物からの他の成分を有さない酵素を包含する。用語“精製された”とは、それが由来する天然の生物からの成分を有さない酵素も包含する。酵素は精製され得、そしてわずかな少量の他のタンパク質が存在する。表現、“他のタンパク質”とは、特に他の酵素に関する。用語“精製された”とは、本明細書において使用される場合、他の成分、特に他のタンパク質、及び本発明の酵素起源の細胞に存在する特定の他の酵素の除去を意味する。
【0028】
酵素は、“実質的に純粋”であり、すなわちそれが生成される生物、すなわち組換え生成される酵素のための宿主生物から他の生成を有さない。好ましい態様においては、酵素は、少なくとも75%(w/w)純粋、より好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%純粋である。もう1つの好ましい態様においては、酵素は100%純粋である。
【0029】
酵素は、処理工程への使用のために適切ないずれかの形で、例えば、乾燥粉末又は顆粒、無糖塵性顆粒、液体、安定化された液体、又は保護された酵素の形で保存することができる。顆粒は、例えばアメリカ特許第4,106,991号及び第4,661,452号に開示のようにして生成され得、そして任意には、当業界において知られている方法により被覆され得る。液体酵素調製物は例えば、確立された方法に従って、安定剤、例えば糖、糖アルコール又はもう1つのポリオール、乳酸又はもう1つの有機酸を添加することにより安定化され得る。保護された酵素は、ヨーロッパ特許第238,216号に開示される方法に従って調製され得る。
【0030】
処理
本発明は、ポリエステル布及び/又は被服のピリング性を低めるための方法を提供する。さらに、本発明は、ポリエステル布及び/又は被服の色彩鮮明化の改良方法を提供する。さらに、本発明はまた、ポリエステル、及びポリエステルブレンド布又は被服のバイオ−仕上げ方法にも関する。
【0031】
本発明の処理は、当業界において良く知られている原理に従っての方法に適合する選択された条件下で実施され得る。反応条件、例えば酵素/基質の濃度/用量、pH、温度及び処理の時間の個々は、例えば酵素源、基質のタイプ、処理が行われる方法に依存して、変更され得ることが理解されるであろう。
本発明の方法はさらに、酵素−基質相互反応を改良できる1又は複数の化学物質の添加を包含し(基質の接近性を改良し、そして/又は反応生成物を溶解するために)、前記化学物質は酵素処理の前、又はそれと同時に添加され得る。そのような化学物質は特に、湿潤剤及び分散剤、等、又はそれらの混合物であり得る。
【0032】
酵素用量は、適用される酵素、及び与えられる反応時間及び条件の関数であるべきである。好ましくは、酵素は、布及び/又は被服1g当たり約0.05μg〜約5000μgの合計量で添加され得る。
酵素処理は好ましくは、約30℃〜約100℃、より好ましくは約40℃〜約90℃の温度範囲で行われ得る。そのpH範囲は、適用される酵素に依存して、好ましくは約5〜約11のpH、より好ましくは約7〜約11のpHであり得る。反応時間は好ましくは、約15分〜約3時間の範囲である。
【0033】
好ましい態様においては、本発明の方法は、他の酵素、特にタンパク質分解酵素、脂質分解酵素、セルロース分解酵素、アミロース分解酵素、オキシダーゼ酵素、又はペルオキシダーゼ酵素、又はそれらの組合せの存在下で行われる。
本発明のバイオ−仕上げ処理は、ポリエステル布又は被服のバイオ−仕上げ方法であって、テレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素(ETE加水分解酵素)、エチレングリコールジベンジルエステル加水分解酵素(BEB加水分解酵素)、及びそれらの組合せから成る群から選択された酵素により前記布又は被服を、洗剤の不在下で処理することを含んで成る。
【0034】
ポリエステル布又は被服は、1つの態様においては、100%のポリエステル、又は実質的に100%のポリエステルから成るポリエステル布であり得る。もう1つの態様においては、ポリエステル含有布又は被服は、上記“ポリエステル布又は被服”セクションにおいて言及される布又は被服のいずれかを含むポリエステルブレンドである。
好ましい態様においては、布又は被服バイオ−仕上げは、セルロース分解酵素、例えばエンドグルカナーゼ、特に菌類エンドグルカナーゼの存在下で行われる。しかしながら、追加の酵素が添加され得る。1つの態様においては、布又は被服はさらに、プロテアーゼ、アミラーゼ、他のセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、オキシダーゼ及びペクチナーゼ、ETE又はBEBヒドロリアーゼ以外のリパーゼ、及びそれらのいずれかの組合せから成る群から選択された酵素により処理される。
【0035】
洗剤
本発明の態様においては、洗剤は、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤 両性イオン界面活性剤及び半−極性界面活性剤、又はそれらの組合せと同じ意味である。
【0036】
他の酵素
本発明のポリエステル加水分解酵素は、他の酵素と組合して添加され得る。
そのような酵素は、他のプロテアーゼ、リパーゼ、セミラーゼ、セルラーゼ、ペルオキシダーゼ/及びオキシダーゼを包含する。
【0037】
プロテアーゼ
アルカリ溶液における使用のために適切ないずれかのプロテアーゼが使用され得る。適切なプロテアーゼは、動物、植物又は微生物起源のものを包含する。微生物起源が好ましい。化学的に修飾された、又はタンパク質構築された変異体が含まれる。プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ又は金属プロテアーゼ、好ましくはアルカリ微生物プロテアーゼ又はトリプシン−様プロテアーゼであり得る。アルカリプロテアーゼの例は、スブチリシン、特にバチルスに由来するそれらのもの、例えばスブチリシンNovo、スブチリシンCarlsberg、スブチリシン309、スブチリシン147及びスブチリシン168(WO89/06279号に記載される)である。トリプシン−様プロテアーゼの例は、トリプシン(例えば、ブタ又はウシ起源のもの)、及びWO89/06270号に記載されるフサリウムプロテアーゼである。
【0038】
好ましい市販のプロテアーゼ酵素は、Novozymes A/S (Denmark)により、商品名ALCALASE TM, SAVINASE TM, PRIMASE TM, DURAZYMTM, 及び ESPERASE TMとして市販されるそれら、Genencor International Inc., (USA)により、商品名MAXATASE TM, MAXACAL TM, MAXAPEMTM, PROPARASE TM, PURAFECT TM 及び PURAPECTTM OXP及びSolvay Enzymesによる商品名OPTICLEANTM 及び OPTIMASETMを包含する。プロテアーゼ酵素は、組成物中、0.00001重量%〜2重量%の酵素タンパク質のレベルで、好ましくは組成物中、0.0001重量%〜1重量%の酵素タンパク質のレベルで、より好ましくは組成物中、0.001重量%〜0.5重量%の酵素タンパク質のレベルで、さらにより好ましくは組成物中、0.01重量%〜0.2重量%の酵素タンパク質のレベルで、本発明に従って組成物中に導入され得る。
【0039】
リパーゼ
アルカリ溶液における使用のために適切ないずれかのリパーゼが使用され得る。適切なリパーゼは、細菌又は菌類起源のそれらのものを包含する。化学的に修飾された又はタンパク質構築された変異体が包含される。
【0040】
有用なリパーゼの例は、ヨーロッパ特許第258068号及び第305216号に記載のようなヒューミコラ・ラウギノサリパーゼ、ヨーロッパ特許第238023号に記載されるようなリゾムコル・ミエヘイリパーゼ、ヨーロッパ特許第214761号に記載されるようなカンジタ リパーゼ、例えばC. アンタルクチカ リパーゼ、例えばC. アンタルクチカ リパーゼA又はB、シュードモナス リパーゼ、例えばP.アルカリゲネス又はP.シュードアルカリゲネスリパーゼ(ヨーロッパ特許第218272号)、P.セパシア リパーゼ(ヨーロッパ特許第331376号)、P.スツゼリ(P.stutzeri)リパーゼ(イギリス特許第1,372,034号)、P.フルオレセンス リパーゼ、バチルス リパーゼ、例えばB.スブチリス リパーゼ(Dartoisなど. (1993), Biochemica et Biophysica Acta, 1131, 253-360)、B. ステアロサーモフィラスリパーゼ(日本特許64/744992)又はB.プミラスリパーゼ(WO91/16422号)からのリーパーゼを包含する。
【0041】
さらに、多くのクローン化されたリパーゼ、例えばペニシリウム・カメムベルチ(Penicillium camembertii)リパーゼ(Yamaguchi など., (1991), Gene 103,61-67)、ゼオトリカム・カンジダム(Geotricum candidum)リパーゼ(Schimada, Y. など., (1989), J. Biochem. , 106,383-388)、及び種々のリゾプス(Rhizopus)リパーゼ、例えばR. デレマル(R. delemar)リパーゼ(Hass, M. J など., (1991), Gene 109,117- 113)、R. ニベウス(R. niveus)リパーゼ(Kugimiya など., (1992), Biosci. Biotech. Biochem. 56,716-719)及びR. オリザエ(R. oryzae)リパーゼが有用である。
【0042】
特に適切なリパーゼ、例えばM1 LIPASETM, LUMA FASTTM 及び LiPOMAXTM (Genencor International Inc, USA), LIPOLASETM and LIPOLASE ULTRATM (Novozymes A/S, Denmark), 及び LIPASE P“Amano”(Amano Pharmaceutical Co. Ltd.)である。
リパーゼ酵素は、組成物中、0.00001重量%〜2重量%の酵素タンパク質のレベルで、好ましくは組成物中、0.0001重量%〜1重量%の酵素タンパク質のレベルで、より好ましくは組成物中、0.001重量%〜0.5重量%の酵素タンパク質のレベルで、さらにより好ましくは組成物中、0.01重量%〜0.2重量%の酵素タンパク質のレベルで、本発明に従って組成物中に導入され得る。
【0043】
アミラーゼ
アルカリ溶液における使用のために適切ないずれかのアミラーゼ(α及び/又はβ)が使用され得る。適切なアミラーゼは、細菌又は菌類起源のそれらのものを包含する。化学的に修飾された又はタンパク質構築された変異体が包含される。アミラーゼは、バチルス、例えばイギリス特許第1,296,839号により詳細に記載される、B.リケニルホルミスの特定株から得られるα−アミラーゼを包含する。市販のアミラーゼは、DURAMYLTM, TERMAMYLTM, FUNGAMYLTM 及び BANTM (Novozymes A/S, Denmarkから入手される) 及び RAPIDASETM 及び MAXAMYL PTM (Genencor International Inc., USAから入手される)である。
【0044】
アミラーゼ酵素は、組成物中、0.00001重量%〜2重量%の酵素タンパク質のレベルで、好ましくは組成物中、0.0001重量%〜1重量%の酵素タンパク質のレベルで、より好ましくは組成物中、0.001重量%〜0.5重量%の酵素タンパク質のレベルで、さらにより好ましくは組成物中、0.01重量%〜0.2重量%の酵素タンパク質のレベルで、本発明に従って組成物中に導入され得る。
【0045】
セルラーゼ
本発明において、用語“セルラーゼ”又は“セルロース分解酵素”とは、グルコース、セロビオース、トリオースは、β−1,4−グルコシド結合により結合されるグルコースのポリマーである。セルロース鎖は、多くの分子内及び分子間水素結合を形成し、不溶性セルロースミクロフィブリルの形成をもたらす。グルコースへのセルロースの微生物加水分解は、次の3種の主要種類のセルラーゼを包含する:セルロース分子中のβ−1,4−グルコシド結合をランダムに分解するエンド−1,4−β−グルカナーゼ(EC 3. 2. 1. 4);非還元端のセルロースを消化するセロビオヒドロラーゼ(EC 3. 2. 1. 91)(エキソグルカナーゼ);及びグルコースを放出するためにセロビオース及び低分子質量セロデキストリンを加水分解するβ−グルコシダーゼ(EC 3. 2. 1. 21)。
【0046】
ほとんどのセルラーゼは、プロリン及びヒドロキシアミノ酸残基に富んでいるリンカーにより分離される、セルロース−結合ドメイン(CBD)及び触媒ドメイン(CAD)から成る。本明細書において、用語“エンドグルカナーゼ”とは、セルロース分解活性、特にエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性を有する酵素を示すものであり、それらは、酵素命名法(1992)に従って、EC 3. 2. 1. 4において分離され、そして1,3−連鎖をまた含むβ−D−グルカンにおける1,4−連鎖をふくむ、セルロース、リケニン及び穀類β−D−グルカンにおけるβ−D−グルコシド連鎖の(エンド)加水分解を触媒できる。
【0047】
アルカリ溶液における使用のために適切ないずれのセルラーゼでも使用され得る。適切なセルラーゼは、細菌又は菌類起源のそれらを包含する。化学的に又は遺伝子的に修飾された変異体が包含される。適切なセルラーゼは、ヒューミコラ・インソレンスから生成される菌類セルラーゼを開示するアメリカ特許第4,435,307号に開示される。特に適切なセルラーゼは、色彩保護利益を有するセルラーゼである。そのようなセルラーゼの例は、ヨーロッパ特許出願番号0495257号、WO91/17243号及びWO96/29397号に記載されるセルラーゼである。
【0048】
市販のセルラーゼは、ヒューミコラ・インソレンスの株により生成されたCELLUZYME TM 及び DENIMAXTM(Novozymes A/S)、及びKAC-500(B)TM (Kao Corporation)を包含する。
セルラーゼ酵素は、組成物中、0.00001重量%〜2重量%の酵素タンパク質のレベルで、好ましくは組成物中、0.0001重量%〜1重量%の酵素タンパク質のレベルで、より好ましくは組成物中、0.001重量%〜0.5重量%の酵素タンパク質のレベルで、さらにより好ましくは組成物中、0.01重量%〜0.2重量%の酵素タンパク質のレベルで、本発明に従って組成物中に導入され得る。
【0049】
本発明の方法の態様においては、セルラーゼは、0.001〜10mgの酵素タンパク質/ml溶液、好ましくは0.005〜0.3mgの酵素タンパク質/ml溶液、特に0.001〜0.003mgの酵素タンパク質/ml溶液の範囲の濃度で使用され得る。
【0050】
ペルオキシダーゼ/オキシダーゼ
ペルオキシダーゼ酵素は、過酸化水素又はその源(例えば、過炭酸塩、過硼酸塩又は過硫酸塩)と組合して使用される。オキシダーゼ酵素は、酸素と組合して使用される。両タイプの酵素は、“溶液漂白”のために、すなわち染色された布が洗液において、好ましくはWO94/12621号及びWO95/01426号に記載されるような増強剤と共に洗濯される場合、染色された布からもう1つの布への織物用染料の移行を妨げるために使用される。適切なペルオキシダーゼ/オキシダーゼは、植物、細菌又は菌類起源のそれらを包含する。化学的に又は遺伝子的に修飾された変異体が包含される。
【0051】
ペルオキシダーゼ/オキシダーゼ酵素は、通常、組成物中、0.00001重量%〜2重量%の酵素タンパク質のレベルで、好ましくは組成物中、0.0001重量%〜1重量%の酵素タンパク質のレベルで、より好ましくは組成物中、0.001重量%〜0.5重量%の酵素タンパク質のレベルで、さらにより好ましくは組成物中、0.01重量%〜0.2重量%の酵素タンパク質のレベルで、本発明に従って組成物中に導入され得る。
上記酵素の混合物、特にプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ及び/又はセルラーゼの混合物が、本明細書において包含される。
【0052】
前記酵素、又は組成物に組込まれるいずれか他の酵素は、通常、組成物中、0.00001重量%〜2重量%の酵素タンパク質のレベルで、好ましくは組成物中、0.0001重量%〜1重量%の酵素タンパク質のレベルで、より好ましくは組成物中、0.001重量%〜0.5重量%の酵素タンパク質のレベルで、さらにより好ましくは組成物中、0.01重量%〜0.2重量%の酵素タンパク質のレベルで、本発明に従って組成物中に導入され得る。
【0053】
材料及び方法:
酵素:
クチナーゼ変異体Aは、ヒューミコラ・インソレンスDSM1800に由来し、そしてWO01/92502号に開示されており、そして次の置換を包含する:E6Q, A14P, E47K, R51P, E179Q, G8D, N15D, S48E, A88H, N91H, A130V, R189V, T29M, T166I, L167P。
クチナーゼ変異体Bは、ヒューミコラ・インソレンスDSM1800に由来し、そしてWO01/92502号に開示されており、そして次の置換を包含する:E6Q, A14P, E47K, R51P, E179Q, G8D, N15D, S48E, A88H, N91H, A130V, R189V。
セルロース分解酵素:配列番号2としてWO91/17243号に開示される、ヒューミコラ・インソレンスDSM1800に由来する、43kdのエンドグルカナーゼ(EG V)。
【0054】
布:
100%Dacronタイプ54織布及び50%/50%ポリエステル綿単一編物を、TestFabrics inc.から得た。100%ポリエステル布を、精練し、すすぎ、そして酵素処理への調製物として乾燥した。ブレンドされた布が、受け入れられる場合、使用された。実験用スワッチを、14×14cmに切断した。すべてのスワッチを、一定温度及び(21±2℃、65±2%のRH(相対的湿度)で一晩、続けた。次に、重量を測定し、そして記録した。
【0055】
方法:
バイオ−仕上げを、Atlas Electric Davices CompanyからのLaunder-O-Meter(LOM)LP2において行った。20のスチールボール、緩衝液及び酵素を、500mlのスチールビーカーに添加した。50mMの炭酸水素ナトリウム緩衝液を、pH8に調節し、そしてすべての実験のために使用した。液体比は20:1であり、そして酵素は、U/ml(液体体積当たりのLU又はECU)として投与された。7.0±0.1gの合計重量を有する2枚のスワッチを、個々のビーカーに使用し、そして個々の処理を二重反復して行った。ビーカーを70℃で、予備加熱されたLauuder−O−Meter中に入れ、そして42rpmで特定された時間インキュベートした。
【0056】
酵素処理に続いて、スワッチ上の残留酵素活性を、2g/lのソーダ灰溶液において10分間、80℃で不活性化した。不活性化の後、スワッチをすすぎ、そして従来の家庭用洗濯機において回転せしめ、そして60分間、タンブル乾燥した。すべてのスワッチを、一定温度及び湿度(21℃±2℃、65±2%のRH)で一晩、条件付けした。
【0057】
重量損失:
条件付けの後、最終スワッチ重量を測定し、そして記録し、重量損失を決定した。平均重量損失を、1つの処理タイプにおいてすべてのスワッチについての重量損失データを平均することにより計算した。
【0058】
ピリング:
ピリングを、ASTM D3786-87 (Pilling Resistance and Other Related Surface Changes of Textile Fabrics-Martindale Pressure Tester Method)に従って測定した。個々のビーカーからのスワッチを、James H. Heal & Co. Ltd.からのNuMartindale Abrasion and Pilling Tester上での125、500及び2000回転後、試験し、そして評価した。ピリング特徴を、1〜5の尺度(5は、ピリングなし、及び1は重度のピリングである)に基づいて標準に視覚的に比較することにより得た。平均ピーリング特徴を、同じ条件下で処理されたすべてのスワッチの平均を取ることにより計算した。
【0059】
HPLC分析:
液体サンプルを、HPLC分析のために、Launder−O−Meterインキュベーションの後、個々のビーカーから得た。サンプルを濾過し、そしてバイアル中に充填した。次に、サンプルを、Agilent1100シリーズHPCL上に注入し、そして254nm、25℃で、種々の波長の検出器により検出した。移動相は、溶媒A−濾過された脱イオン水+0.1%トリフルオロ酢酸、及び溶媒B−100%アセトニトリルの組合せであった。グラジエントが使用され、ここで溶媒Bは、19分間の実験時間の最後で、10%の初期濃度から95%まで上昇した。Alltech(USA)からのAdsorbosil C18カラムを使用した。流速は0.8ml/分であった。個々の注入の後、針をジメチルホルムアミドによりすすぎ、そしてカラムを、初期条件下で5分間、平衡化した。ポリエステルの既知分解生成物についてのピーク領域計数を、同じ条件下で処理されたサンプルについて平均化した。
【0060】
リパーゼ活性(LU):
エステラーゼ活性を、必要により、Novozymes A/S, Denmarkから入手できるNovozymes分析方法2001−07992−01に従って測定した。このアッセイにおいては、グルセロールトリブチレートを、0.1mMのグリシン緩衝液(pH7)においてエステラーゼ組成物と共に30℃でインキュベートした。リパーゼ単位、又はLUは、1分当たり1μモルの滴定できる酪酸を放出する酵素の量である。インキュベーションは、最少2分間、維持され、そして得られる活性が計算され、そしてLU/gとして表された。
【0061】
セルラーゼ活性(ECU):
セルラーゼ活性を、必要により、Novozymes A/S, Denmarkから入手できるNovozymes分析方法302.02/01に従って測定した。このアッセイにおいては、カルボキシメチルセルロース(CMC)を、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.5)においてセルラーゼ組成物と共に40℃で30分間インキュベートした。粘度の低下を、振盪粘度計により測定し、そしてその結果を、標準セルラーゼに比較し、そしてECU/gとしてエンドセルラーゼ単位で表した。
【0062】
装置:
ピリング耐性の改良性を、Martindaleピリング試験機(Swiss 標準SN198525)を用いて決定することができる。
【実施例】
【0063】
本発明は、次の例によりさらに例示されるが、但しそれらは本発明を限定するものではない。
例1加水分解活性
この例は、酵素のテレフタル酸ジエチルエステル(ETE)及び/又はエチレングリコールジベンジルエステル(BEB)加水分解活性を決定するためのアッセイを記載する。
【0064】
ETE加水分解活性
本発明のETE加水分解酵素は、次のアッセイによる決定されるような、テレフタル酸ジエチルエステル(ETE)を加水分解できる酵素である。
試験管において、1,4−ジオキサン中、0.250mlの0.20Mグリシルグリシン(pH8.5)及び0.250mlの10.0Mテレフタル酸ジエチル(ETE)を、2.000mlの脱イオン水に添加する。
【0065】
前記混合物を、30℃で約15分間、攪拌下でプレ−インキュベートし、続いてできるだけ最低の体積で25.0μgの酵素を添加する。次に、この混合物を、30℃で16時間、攪拌下でインキュベーションする。
反応混合物を、逆相HPLC、ODS((オクタドデシルシリケート)カラム上で分析し、そして上昇する濃度のアセトニトリル及び低下する濃度の200mMのNaPO4(pH3.0)により溶離する。
反応生成物の検出を、240nmで分光光度的に行い、この波長で、テレフタル酸及びテレフタレート誘導体が吸着する。
【0066】
BEB加水分解活性
本発明のBEB加水分解酵素は、エチレングリコールジベンジルエステル(BEB)を加水分解できる酵素である。アッセイに存在するジオキサンの量に依存して(BEBは10%ジオキサン溶液には部分的に溶解されるが、しかし30%ジオキサン溶液においては十分に溶解される)、本発明のBEB加水分解酵素は、次のアッセイにより決定される場合、BEB10加水分解酵素又はBEB30加水分解酵素であり得る。
【0067】
BEB10加水分解活性
試験管において、1,4−ジオキサン中、0.250mlの0.20Mグリシルグリシン(pH8.5)及び0.250mlの10.0Mエチレングリコールジベンジルエステル(BEB)を、2.000mlの脱イオン水に添加する。
前記混合物を、30℃で約15分間、攪拌下でプレ−インキュベートし、続いてできるだけ最低の体積で25.0μgの酵素を添加する。次に、この混合物を、30℃で16時間、攪拌下でインキュベーションする。
反応混合物を、逆相HPLC、ODS((オクタドデシルシリケート)カラム上で分析し、そして上昇する濃度のアセトニトリル及び低下する濃度の200mMのNaPO4(pH3.0)により溶離する。
反応生成物の検出を、240nmで分光光度的に行い、この波長で、テレフタル酸及びテレフタレート誘導体が吸着する。
【0068】
BEB30加水分解活性
試験管において、1,4−ジオキサン中、0.250mlの0.20Mグリシルグリシン(pH8.5)、0.250mlの10.0Mエチレングリコールジベンジルエステル(BEB)及び0.500mlの1、4−ジオキサンを、1.500mlの脱イオン水に添加する。前記混合物を、30℃で約15分間、攪拌下でプレ−インキュベートし、続いてできるだけ最低の体積で25.0μgの酵素を添加する。次に、この混合物を、30℃で16時間、攪拌下でインキュベーションする。
【0069】
反応混合物を、逆相HPLC、ODS((オクタドデシルシリケート)カラム上で分析し、そして上昇する濃度のアセトニトリル及び低下する濃度の200mMのNaPO4(pH3.0)により溶離する。
反応生成物の検出を、240nmで分光光度的に行い、この波長で、テレフタル酸及びテレフタレート誘導体が吸着する。
【0070】
微生物源
異なった部生物源からの多くの酵素を、BEB及びETE加水分解活性を決定するためのアッセイにゆだね、そして得られる結果を、下記表1に表す。
【0071】
【表1】

【0072】
例2低められたピリング性
140mlの50mMの炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH8)を、20個のスチールボールを含む個々のLaunder−O−Meterビーカーに添加した。ビーカーを、70℃で平衡化した。2つの織られた100%ポリエステルスワッチ(それぞれ約14×14cm)を、個々のLaunder−O−Meterビーカーに添加した。酵素(ヒューミコラ・インソレンスクチナーゼ)を、異なった用量で、及び酵素を有さないブランクを包含する、1g/lでの用量のTriton X-100の添加を伴って及びその添加を伴わないで、添加した。スワッチを、Launder−O−Meterにおいて、42rpmで、70℃で4時間インキュベートした。インキュベーションの後、スワッチを、家庭用洗剤機械において短時間すすぎ、そして1時間、タンプル乾燥した。
ピリング測定を、Martindaleピリング試験機(Swiss標準SN 198525)を用いて行う。
その結果は、表2に示される。
【0073】
【表2】

【0074】
ピリング特徴を、1〜5の尺度(5はピリングなしであり、そして1は重度のピリングの存在を示す)に基づいて、標準に対して視覚的に比較することにより得る。平均ピリング特徴を、同じ条件下で処理されたすべてのスワッチを平均することにより計算する。
【0075】
例3100%ポリエステルのバイオ−仕上げ
2種のヒューミコラ・インソレンスETE及び/又はBEB加水分解酵素(それぞれ、クチナーゼ変異体A及びBとして言及される2種のクチナーゼ変異体の形)のバイオ−仕上げ効果を、“材料及び方法”のセクションに記載されるように、100%ポリエステルに対して試験した。100%ポリエステル布を、精練し、すすぎ、そして酵素処理への調製物として乾燥した。最初に、ポリエステル布を、それぞれ、クチナーゼ変異体A及びクチナーゼ変異体Bにより酵素的に分解した。クチナーゼ変異体Bは、クチナーゼ変異体Aよりも高い重量損失を付与し、ところがクチナーゼ変異体Aは、ブランクに比較して、重量損失はほとんど与えなかった(図1)。ブランクは、酵素が添加されないで行われる処理として定義される。
【0076】
両酵素は、2000回転で、ブランクに比較して、ピリング特徴の改良性を与えた(図2を参照のこと)。クチナーゼ変異体Aに関して、ほとんどか又はまったく重量損失は存在しなかったが、ピリング特徴の改良性が、ブランクに比較して、観察された。
さらに、HPLC結果を測定し、酵素分解を検出した(図3を参照のこと)。クチナーゼ変異体Bは、ポリエステルの分解生成物のHPLC領域計数によれば、相当に高い分解性を示す。これは、より高いピリング特徴及び重量損失と相互関係する。しかしながら、図3は、両酵素が基質としてポリエステルに対して作用し、そしてピリング防止データが酵素加水分解効果であることを示す。
【0077】
この試験は、100%ポリエステル布が、洗剤の不在下で耐久性のあるバイオ−仕上げを付与するために、ETE及び/又はBEB加水分解酵素により処理され得ることを示す。
【0078】
例4ポリエステル/綿ブレンドのバイオ−仕上げ
ヒューミコラ・インソレンス、DSM1800からの43kDのセルラーゼと組合してのETE及び/又はBEB加水分解酵素(クリナーゼ変異体A)のバイオ−仕上げ効果を、“材料&方法”セクションに記載のようにして、50%/50%ポリエステル綿に対して試験した。ブレンドされた布が未処理のまま使用された。
【0079】
2種の用量応答試験を行った。最初の用量応答は、mlの用量のセルラーゼ当たり0.75ECUを維持し、そしてクチナーゼ変異体Aの用量を、0から50LU/mlに高めた。第2の用量応答試験は、ml用量のクチナーゼ当たり50LUを維持し、そしてセルラーゼの用量を、0から1ECU/mlに高めた。
ポリエステル/綿ブレンドバイオ−仕上げからのすべてのデータが、表3に示される。
【0080】
【表3】

【0081】
個々の用量応答について測定される重量損失は、両酵素の高められた用量と共に上昇した。
両セルラーゼ及びクチナーゼ変異体Aは、ブランクに比較して、ピリング特徴の改良性を与えた。両酵素が組み合わされる場合、ピリング特徴における最も有意な改良性が、評価されたほとんどすべての用量で観察される。
【0082】
HPLC結果を測定し、クチナーゼ活性によるポリエステルポリマーの酵素分解を検出した。ポリエステルの分解生成物の領域計数は、酵素用量の上昇共に、上昇する。セルラーゼ用量の上昇と共に、その領域計数は、変化しない。なぜならば、クチナーゼ変異体Aの用量が一定であったためである。
この試験は、ポリエステル綿ブレンド布が、耐久性のあるバイオ−仕上げを得るために、洗剤の不在下で、ETE及び/又はBEB加水分解酵素と組合されたセルラーゼにより処理され得ることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、100%ポリエステル布のエステラーゼ分解についての重量損失に対する効果を示す。条件:70℃、pH8での2時間のLaunder−O−Meter処理。
【図2】図2は、100%ポリエステル布についての2000回転でのピリング特徴に対する用量の効果を示す。条件:70℃、pH8での2時間のLaunder−O−Meter処理。
【図3】図3は、100%ポリエステル布についてのポリエステル分解ピークのHPLC領域計数に対する用量の効果を示す。条件:70℃、pH8での2時間のLaunder−O−Meter処理。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル布又は被服のピリング性を低めるための方法であって、テレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素(ETE加水分解酵素)、エチレングリコールジベンジルエステル加水分解酵素(BEB加水分解酵素)、及びそれらの組合せから成る群から選択された酵素により前記布又は被服を、洗剤の不在下で処理することを含んで成る方法。
【請求項2】
前記布又は被服を、テレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素(ETE加水分解酵素)により処理する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記布又は被服を、エチレングリコールジベンジルエステル加水分解酵素(BEB加水分解酵素)により処理する請求項1記載の方法。
【請求項4】
プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ペルオキシダーゼ、オキシダーゼ、ペクチナーゼ、ETE又はBEBヒドロリアーゼ以外のリパーゼ、及びそれらのいずれかの組合せから成る群から選択された酵素により前記布又は被服を処理することをさらに含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記布又は被服を、セルロース分解酵素により処理する請求項4記載の方法。
【請求項6】
ポリエステル布又は被服の色彩鮮明化方法であって、テレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素(ETE加水分解酵素)、エチレングリコールジベンジルエステル加水分解酵素(BEB加水分解酵素)、及びそれらの組合せから成る群から選択された酵素により前記布又は被服を、洗剤の不在下で処理することを含んで成る方法。
【請求項7】
前記布又は被服を、テレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素(ETE加水分解酵素)により処理する請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記布又は被服を、エチレングリコールジベンジルエステル加水分解酵素(BEB加水分解酵素)により処理する請求項6記載の方法。
【請求項9】
プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ペルオキシダーゼ、オキシダーゼ及びペクチナーゼ、ETE又はBEBヒドロリアーゼ以外のリパーゼ、及びそれらのいずれかの組合せから成る群から選択された酵素により前記布又は被服を処理することをさらに含んで成る請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記布又は被服を、セルロース分解酵素により処理する請求項6記載の方法。
【請求項11】
ポリエステル布又は被服のバイオ−仕上げ方法であって、テレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素(ETE加水分解酵素)、エチレングリコールジベンジルエステル加水分解酵素(BEB加水分解酵素)、及びそれらの組合せから成る群から選択された酵素により前記布又は被服を、洗剤の不在下で処理することを含んで成る方法。
【請求項12】
前記ポリエステル含有布又は被服が実質的に100%のポリエステルから成る請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ポリエステル布又は被服が、ポリエステルブレンド、例えばポリエステル及びセルロースブレンド、例えばポリエステル及び綿ブレンド;ポリエステル及び羊毛ブレンド;ポリエステル及び絹ブレンド;ポリエステル及びアクリル酸誘導体ブレンド;ポリエステル及びナイロンブレンド;ポリエステル、ナイロン及びポリウレタンブレンド、ポリエステル及びポリウレタンブレンド、レーヨン(ビスコース)、セルロースアセテート及びテンセルである請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記布又は被服を、さらに、セルロース分解酵素により処理する請求項11〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記布又は被服を、テレフタル酸ジエチルエステル加水分解酵素(ETE加水分解酵素)により処理する請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記布又は被服を、エチレングリコールジベンジルエステル加水分解酵素(BEB加水分解酵素)により処理する請求項11記載の方法。
【請求項17】
プロテアーゼ、アミラーゼ、他のセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、オキシダーゼ、及びペクチナーゼ、ETE又はBEBヒドロリアーゼ以外のリパーゼ、及びそれらのいずれかの組合せから成る群から選択された酵素により前記布又は被服を処理することをさらに含んで成る請求項11記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−511725(P2006−511725A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563971(P2004−563971)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/041020
【国際公開番号】WO2004/059075
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(500132074)ノボザイムス ノース アメリカ,インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】