説明

ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂の製造方法およびポリエステル樹脂よりなる中空成形体

【課題】
成形時に金型汚れを発生させにくく飲料充填容器用途に適したポリエステル樹脂およびそれよりなる中空成形体を提供することを目的とする。
【課題手段】
芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とからなるポリエステル樹脂であって、遊離のカルボン酸の含有量が1.6〜100ppmであり、アセトアルデヒド含有量が4ppm以下であることを特徴とするポリエステル樹脂。
本発明のポリエステル樹脂遊離のカルボン酸が1価であり、その含有量が1.6〜100ppmであり、アセトアルデヒド含有量が4ppm以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱時の環状三量体の増加が少ないため金型汚れを発生させにくく飲料充填容器用途に適したポリエステル樹脂の製造方法およびそのポリエステル樹脂よりなる中空成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレートは、機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリア性に優れており、ジュース、清涼飲料、炭酸飲料等の飲料充填容器の素材をはじめとしてフィルム、シート、繊維等の素材として好適に使用されている。
【0003】
このようなポリエステル樹脂は、通常テレフタル酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール等の脂肪族ジオールを原料として製造される。具体的には、まず、芳香族ジカルボン酸類と脂肪族ジオール類とのエステル化反応により低次縮合物(エステル低重合体)を形成し、次いで重縮合触媒の存在下にこの低次縮合物を脱グリコール反応(液相重縮合)させて、高分子量化している。また、飲料充填容器の素材として用いる場合には、通常、固相重縮合を行い、さらに分子量を高めている。さらにこのポリエステル樹脂は、たとえば射出成形機械等の成形機に供給して中空成形体用プリフォームを成形し、このプリフォームを所定形状の金型に挿入し延伸ブロー成形し、あるいはさらに熱処理(ヒートセット)して中空成形容器に成形される。
【0004】
ところが、上記したような方法で得られる従来公知のポリエステル樹脂には環状三量体などのオリゴマー類が含有されており、このオリゴマー類がブロー成形金型内面に付着して金型汚れを発生させる原因となっている。このような金型汚れは、得られる中空成形容器の表面肌荒れや透明性低下などの品質低下の原因となる。
【0005】
本発明者らは上記のような状況にかんがみ、成形時に金型汚れを発生させにくいポリエステル樹脂を得るべく鋭意検討したところ、成形時に金型汚れが発生する主な原因は、ポリエステル樹脂の成形時に環状三量体などのオリゴマー類が多量に生成してポリエステル樹脂中に含まれる環状三量体などのオリゴマー類の総量が増加してしまうことにあることを見出すとともに、固相重縮合を経て得られるポリエステル樹脂を水と接触させることにより成形時の環状三量体の増加を著しく抑制でき、金型汚れを低減できることを見出し、すでに提案した(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、他の手法として、環状三量体生成反応の反応点であるポリエステル分子鎖の末端を1官能性のモノマーで封止することにより成形時の環状三量体増加を抑制する提案もなされている(たとえば、特許文献2、特許文献3参照)。特許文献2によれば、全ジカルボン酸成分に対し1官能性成分単位を0.4〜5モル%含有するポリエステル樹脂を用いると、成形時の環状三量体の増加が抑制され、金型汚れが抑制されることが記されている。また特許文献3によれば、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを製造する際に、エステル化反応または溶融重縮合時のいずれかに、テレフタル酸1モルに対して(アルコール等の)カルボン酸封鎖剤を2.5×10-3モル以上、4×10-3モル未満の割合で添加することにより、溶融成形時の環状三量体の増加が抑制されることが記されている。しかしながら、ポリエステル樹脂の重合系にこれらの1官能性のモノマーを共存させることは、重合速度の低下を招き、ポリエステルの生産性を損なう恐れがある。
【特許文献1】特公平7−14997号公報
【特許文献2】特許3136774号公報
【特許文献3】特開2000−319372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような状況にかんがみてなされたもので、金型汚れを発生させにくく飲料充填容器用途に適したポリエステル樹脂およびそれよりなる中空成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とからなるポリエステル樹脂であって、遊離のカルボン酸の含有量が1.6〜100ppmであり、アセトアルデヒド含有量が4ppm以下であることを特徴とするポリエステル樹脂である。
【0009】
ここで、遊離のカルボン酸とはポリエステル分子鎖中に取り込まれていないカルボン酸を指し、その含有量は後述する方法でポリエステル樹脂から熱水により抽出されるカルボン酸量で定義される。
【0010】
本発明のポリエステル樹脂は、遊離の1価カルボン酸の含有量が1.6〜100ppmであり、アセトアルデヒド含有量が4ppm以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明のポリエステル樹脂は、ホウ素、アルミニウム、チタン、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンチモン、ゲルマニウムから選ばれる原子Mを、それらの総量ΣMとして0.1ppm以上含有することが好ましい。
【0012】
また、本発明のポリエステル樹脂は、環状三量体含有量が0.5重量%以下であることが好ましい。
また、本発明の中空成形体は、上記のポリエステル樹脂よりなる。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体との低次縮合物を液相重縮合し、ついで固相重縮合させてポリエステル樹脂を製造する方法において任意の時点で、1価のカルボン酸、その塩またはそのエステルを、全ジカルボン酸成分に対し0.001〜1.0モル%添加してポリエステルの重合を行なうことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法である。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、重縮合触媒としてホウ素、アルミニウム、チタン、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンチモン、ゲルマニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物を用い、かつ1価のカルボン酸を(1価のカルボン酸)/(重縮合触媒として用いられる元素)のモル比として1〜1000となる量添加してポリエステルの重合を行なうことが好ましい。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを液相重縮合し、ついで固相重縮合した後に、得られたポリエステル樹脂を水で処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、色調が良好で飲料充填容器用途に適したポリエステル樹脂および中空成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(ポリエステル樹脂)
本発明のポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とからなるものである。
【0018】
ここで、芳香族ジカルボン酸としては、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スルホンビス安息香酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−スルフィドビス安息香酸、4,4’−オキシビス安息香酸などを使用することができる。これらは1種単独で用いることもできるし、2種以上を用いることもできる。
【0019】
また、脂肪族ジオールとしては、たとえば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ドデカメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどを使用することができる。これらは1種単独で用いることもできるし、2種以上を用いることもできる。
【0020】
また、本発明では、芳香族ジカルボン酸とともに、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸類等を原料として使用することができる。また、脂肪族ジオールとともに、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール類、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノール類、ハイドロキノン、レゾルシンなどの芳香族基を含むジオール類等を原料として使用することができる。
【0021】
さらに本発明では、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸等の多価カルボン酸類、グリセリン、ジグリセリン、(トリスヒドロキシメチル)メタン、1,1,1,−(トリスヒドロキシメチル)エタン、1,1,1,−(トリスヒドロキシメチル)プロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、サッカロース、1,3,5−トリスヒドロキシエトキシイソシアヌレート等の多価アルコール類、グリコール酸、乳酸、4−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、5−ヒドロキシ−n−吉草酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸類等を原料として使用することができる。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレートおよびこれらの共重合体、およびそれらとポリグリコール酸またはポリ乳酸との共重合体が特に好ましい。
【0023】
なお、3価以上の多価カルボン酸や3価以上の多価アルコールなどの3価以上の多官能性モノマーの含有量は、モノマー換算で1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましい。多官能性モノマーの含有量が上記範囲を超えると、ゲル成分が増加するなどポリエステル樹脂の品質に悪影響を与えることがある。
【0024】
(遊離カルボン酸)
本発明のポリエステル樹脂は、遊離のカルボン酸の含有量が1.6〜100ppmであることを必須とする。本発明のポリエステル樹脂の遊離のカルボン酸の含有量は1.6ppm〜30ppmであることが好ましく、1.8〜20ppmであることがより好ましく、2.0〜10ppmであることがさらに好ましく、3.0〜8.0ppmであることが特に好ましい。
【0025】
本発明において、ポリエステル樹脂中の遊離のカルボン酸の含有量は、ポリエステル樹脂1gを冷凍粉砕し、3mlの水中で120℃、4時間保持し、水中に抽出されたカルボン酸をイオンクロマト法で定量した値と定義される。
ポリエステル樹脂中の遊離のカルボン酸の含有量が前記範囲内であると、ポリエステルを熱水で処理することにより成形時の環状三量体の増加を抑制することができる。
【0026】
ポリエステル樹脂中に遊離のカルボン酸が特定量含有されていることによりポリエステルを熱水で処理することによる成形時の環状三量体の増加の抑制が可能となる機構の詳細は不明である。しかしながら、(1)本発明のポリエステル樹脂の成形時の環状三量体の増加の抑制が、熱水処理前には顕著でなく熱水処理後に顕著にあらわれること、(2)本発明で有効な遊離のカルボン酸の含有量(1.6〜100ppm;酢酸として全ジカルボン酸成分対し5×10-4〜3.2×10-2モル%)が特許文献2における0.4〜5モル%や特許文献3における0.25〜0.4モル%と比較して桁違いに小さいこと、などから、本発明における遊離のカルボン酸の効果の発現機構は、前記特許文献2や特許文献3に報告されているようなポリエステル鎖の末端封止とは異なる機構であると推定される。
【0027】
ポリエステル樹脂中の遊離のカルボン酸の含有量が前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂の溶融成形時の環状三量体の増加が大きくなり、金型汚れを引き起こすことがある。一方、遊離のカルボン酸の含有量が前記範囲を超えると、フレーバー性その他の品質に悪影響を及ぼすことがある。
【0028】
(1価カルボン酸)
本発明のポリエステル樹脂は、遊離の1価カルボン酸の含有量が1.6ppm〜100であることが好ましい。本発明のポリエステル樹脂の遊離の1価カルボン酸の含有量は1.6ppm〜30ppmであることが好ましく、1.8〜20ppmであることがより好ましく、2.0〜10ppmであることがさらに好ましく、3.0〜8.0ppmであることが特に好ましい。
遊離の1価カルボン酸の含有量が前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂の溶融成形時の環状三量体の増加が大きくなり、金型汚れを引き起こすことがある。一方、遊離の1価のカルボン酸の含有量が前記範囲を超えると、フレーバー性その他の品質に悪影響を及ぼすことがある。
【0029】
なお、1価のカルボン酸としては、他のエステル形成性官能基を有しない単官能の1価カルボン酸であることが好ましい。他のエステル形成性官能基を有しない単官能の1価カルボン酸であると、成形時の環状三量体の増加の抑制効果がより大きくなることがある。他のエステル形成性官能基を有するカルボン酸としては、グリコール酸等のヒドロキシカルボン酸や、ピロメリット酸等の多塩基酸があげられる。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂に含有されるホウ素、アルミニウム、チタン、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンチモンおよびゲルマニウムの含有量が、それらの原子の総量ΣMとして0.1〜500ppmであることが好ましい。本発明のポリエステルに含有される前記の元素の総量ΣMは0.1〜300ppmであることが好ましく、1〜200ppmであることがより好ましく、2〜100ppmであることがさらに好ましく、3〜30ppmであることが特に好ましい。
【0031】
ΣMが前記範囲未満であるとポリエステル樹脂の生産性が低くなることがあり、一方、前記範囲を超えると、ポリエステル樹脂を溶融成形する際に色調などの品質が悪化することがある。
【0032】
本発明のポリエステル樹脂は、チタンをチタン原子として0.1ppm〜200ppm含有することが好ましい。本発明のポリエステル樹脂中のチタン含有量は、チタン原子として0.1〜50ppmであることがより好ましく、1〜14ppmであることがさらに好ましい。
チタン含有量が前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂の生産性が低くなることがあり、一方、前記範囲を超えると、ポリエステル樹脂を溶融成形する際に色調などの品質が悪化することがある。
【0033】
本発明のポリエステル樹脂はアルミニウムを含有してもよい。本発明のポリエステル樹脂はアルミニウムをアルミニウム原子として0.1〜200ppm含有することが好ましい。本発明のポリエステルのアルミニウム含有量は1〜100ppmであることがより好ましく、2〜50ppmであることがさらに好ましく、3〜30ppmであることが特に好ましい。
アルミニウム含有量が前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂の生産性が低くなることがあり、一方、前記範囲を超えると、ポリエステル樹脂を溶融成形する際に色調などの品質が悪化することがある。
【0034】
本発明のポリエステル樹脂中のチタンおよびアルミニウムの含有比は、チタン原子とアルミニウム原子の重量比として1000以下であることが好ましく、0.01〜100であることがより好ましく、0.1〜10であることがさらに好ましく、0.2〜10であることが特に好ましい。
チタン原子とアルミニウム原子の重量比が前記範囲を外れると、ポリエステル樹脂の生産性と色調のバランスが悪化することがある。
【0035】
本発明ポリエステル樹脂は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を、それらの原子の総量MAとして0.1ppm以上含有することが好ましい。本発明のポリエステルに含有されるアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総量MAは0.1〜300ppmであることが好ましく、1〜200ppmであることがより好ましく、2〜100ppmであることがさらに好ましく、3〜30ppmであることが特に好ましい。
【0036】
MAが前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂を溶融成形する際に色調などの品質が悪化することがあり、一方、前記範囲を超えると、得られるポリエステル成形体の透明性などの品質が悪化することがある。
【0037】
本発明のポリエステル樹脂のアンチモン含有量は、アンチモン原子として100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
本発明のポリエステル樹脂のゲルマニウム含有量は、ゲルマニウム原子として60ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明のポリエステル樹脂は、リンを含有してもよい。本発明のポリエステルのリン含有量はリン原子として0.1ppm〜100ppmであることが好ましく、2〜50ppmであることがより好ましく、3〜20ppmであることがさらに好ましい。
【0040】
リン含有量が前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂を溶融成形する際に色調などの品質が悪化することがあり、一方、前記範囲を超えると、ポリエステル樹脂の生産性が低くなることがある。
【0041】
本発明のポリエステル樹脂は、窒素を含有してもよい。本発明のポリエステルの窒素含有量は窒素原子として0.1〜500ppmであると好ましく、1〜200ppmであるとより好ましい。
【0042】
窒素の含有量が前記範囲内であると、ポリエステル樹脂を溶融成形する際に色調やアセトアルデヒド含有量などの樹脂品質が向上できることがある。
【0043】
本発明のポリエステル樹脂はイオウをイオウ原子として0.1〜500ppm含有することが好ましい。本発明のポリエステルのイオウ含有量はイオウ原子として0.1〜200ppmであることが好ましく、1〜100ppmであることがより好ましく、2〜50ppmであることがさらに好ましく、3〜30ppmであることが特に好ましい。
【0044】
イオウ含有量が前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂を溶融成形する際の環状三量体の増加量が大きくなることがあり、一方、前記範囲を超えると、ポリエステル樹脂を溶融成形する際に色調などの品質が悪化することがある。
【0045】
本発明のポリエステル樹脂に含有されるイオウ含有量と、ホウ素、アルミニウム、チタン、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンチモンおよびゲルマニウムから選ばれる元素の含有量の関係は下記(A)(B)を満足することが好ましい。
(A) 2 ≦ (Σn/W)/(S/32)
(B) 1 ≦ S ≦ 500(ppm)(ppm)
ここで、Sは生成ポリエステルに対するイオウ化合物由来のイオウ原子の量(ppm)を示し、Mは生成ポリエステルに対する元素i由来の原子の量(ppm)を示し、Wは元素iの原子量を示し、nは元素iの化合物中の元素iの酸化数を示し、Σn/Wはすべての元素iのn/Wの総和を示す。元素iはホウ素、アルミニウム、チタン、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンチモン、ゲルマニウムから選ばれる元素を示す。
【0046】
ここで、(A)式は、ポリエステル樹脂に含有される価数の異なる各元素由来のプラス電荷の総量とイオウの量との比を示すものであり、ポリエステル樹脂に含有される各元素由来のプラス電荷の総モル量とイオウのモル量との比が2以上であることに相当する。
【0047】
(A)式を満足しない場合、ポリエステル樹脂中の環状三量体濃度が高くなることがあり、またポリエステル樹脂中のジエチレングリコールなど副生成物が増加することがある。一方、(B)式を満足しない場合、ポリエステル樹脂の生産性が低くなることがあり、またポリエステル樹脂を溶融成形する際の環状三量体の増加量が大きくなることがある。
【0048】
本発明のポリエステルの製造方法においては好ましくは下式(A−2)(B−2)を満足することが好ましい。
(A−2) 3 ≦ (Σn/W)/(S/32)
(B−2) 1 ≦ S ≦ 200(ppm)
本発明のポリエステルの製造方法においてはさらに好ましくは下式(A−3)(B−3)を満足することが好ましい。
(A−3) 4 ≦ (Σn/W)/(S/32)
(B−3) 2 ≦ S ≦ 100(ppm)
(CT)
本発明のポリエステル樹脂の第1の形態と第3の形態においては、ポリエステル樹脂に含有される環状三量体量CTが0.50重量%以下であることを必須とする。本発明のポリエステル樹脂の環状三量体量CTは、0.40重量%以下であることがより好ましい。CTが前記範囲外であると、中空成形体等の成形時に金型汚れが起こりやすくなる。
【0049】
また、本発明のポリエステル樹脂は、射出成形機を用いて280℃で成形して得られる成形体に含有される環状三量体量と、成形前のポリエステル樹脂に含有される環状三量体量との差が0.1重量%以下であることが好ましく、0.05重量%以下であることがより好ましい。成形前後の環状三量体量の差が上記範囲外であると、中空成形体等の成形時に金型汚れが起こりやすくなる。
【0050】
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂中のジエチレングリコール単位の含有割合DEGが3.0重量%以下であることが好ましい。本発明のポリエステル樹脂のDEGは0.1〜3.0重量%であることが好ましく、0.5〜2.0重量%であることがより好ましく、0.8〜1.8重量%であることが特に好ましい。DEGが前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂の成形性が悪化することがあり、一方、前記範囲を超えると、ポリエステル樹脂の耐熱性が低下することがある。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂中に含有されるアセトアルデヒド量AAが4ppm以下であることを必須とし、3ppm以下であることがより好ましく、2ppm以下であることがさらに好ましい。AAが上記範囲外であると、得られたポリエステルから成形された容器の内容物の味やにおいに悪影響を与えることがある。
【0052】
(ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体との低次縮合物を液相重縮合し、ついで固相重縮合させてポリエステル樹脂を製造する方法において、任意の時点で、1価のカルボン酸、その塩またはそのエステルを、全ジカルボン酸成分に対し0.001〜1.0モル%添加してポリエステルの重合を行なうことを特徴とする
【0053】
ここで、1価のカルボン酸としては、たとえば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、フェニル酢酸、1−ナフタレンカルボン酸、2−ナフタレンカルボン酸、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、ベンジル酸、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、フルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グリシン、アラニン、およびニコチン酸などが挙げられる。
なお、1価のカルボン酸としては、他のエステル形成性官能基を有しない単官能の1価カルボン酸であることが好ましい。他のエステル形成性官能基を有するカルボン酸であると、ポリエステル鎖内に共重合されて、ポリエステルの品質に影響を与えることがある。
【0054】
1価のカルボン酸の塩としては、たとえば、前記のカルボン酸のアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、トリメチルオキソニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、スカンジウム塩、イットリウム塩、ランタン塩、セリウム塩、チタン塩、ジルコニウム塩、ハフニウム塩、バナジウム塩、ニオブ塩、タンタル塩、クロム塩、モリブデン塩、タングステン塩、マンガン塩、レニウム塩、鉄塩、ルテニウム塩、オスミウム塩、コバルト塩、ロジウム塩、イリジウム塩、ニッケル塩、パラジウム塩、白金塩、銅塩、銀塩、金塩、亜鉛塩、カドミウム塩、水銀塩、アルミニウム塩、ガリウム塩、インジウム塩、タリウム塩、ゲルマニウム塩、スズ塩、鉛塩、アンチモン塩、およびビスマス塩などが挙げられる。
【0055】
1価のカルボン酸のエステルとしては、たとえば、前記のカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、i−プロピルエステル、n−ブチルエステル、i−ブチルエステル、sec−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、パルミチルエステル、ステアリルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、1−ナフチルエステル、2−ナフチルエステル、グリコール酸エステル、乳酸エステル、マンデル酸エステル、ベンジル酸エステル、エチレングリコールとのエステル、およびグリセリンとのエステルなどが挙げられる。
【0056】
これらの中では、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好ましい。
1価のカルボン酸、その塩またはそのエステルのなかでは1価のカルボン酸が好ましい。1価カルボン酸であると、成形時の環状三量体の増加の抑制効果がより大きくなることがある。
【0057】
前記の1価カルボン酸、その塩またはエステルの添加量は、全ジカルボン酸成分に対し0.001〜1.0モル%であり、好ましくは0.01〜0.5モル%であり、より好ましくは0.05〜0.25モル%であり、特に好ましくは0.1〜0.2モル%である。
【0058】
1価のカルボン酸、その塩またはエステルの添加量が前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂の溶融成形時の環状三量体の増加が大きくなり、金型汚れを引き起こすことがある。一方、1価のカルボン酸またはその塩、もしくはホウ素含有プロトン酸またはその塩の添加量が前記範囲を超えると、フレーバー性その他の品質に悪影響を及ぼすことがある。
【0059】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、必要に応じて重縮合触媒を用いることができる。用いられる重縮合触媒としては、たとえば、ホウ素、アルミニウム、チタン、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンチモン、ゲルマニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物などが挙げられる。
【0060】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、1価のカルボン酸と重縮合触媒として用いられる元素のモル比は、(1価のカルボン酸)/(重縮合触媒として用いられる元素)として好ましくは1〜1000であり、より好ましくは10〜500であり、さらに好ましくは15〜100である。(1価のカルボン酸)/(重縮合触媒として用いられる元素)のモル比が前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂の溶融成形時の環状三量体の増加が大きくなり、金型汚れを引き起こすことがある。一方、前記範囲を超えると、フレーバー性その他の品質に悪影響を及ぼすことがある。
【0061】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル、酸化ホウ素、臭化ホウ素、フッ化ホウ素、フェニルボロン酸などが挙げられ、特にホウ酸が好ましい。
【0062】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるアルミニウム化合物としては、たとえば、
フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化水酸化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウム化合物;
炭酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムナトリウムなどの無機酸アルミニウム塩化合物;
水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウム、水素化リチウムアルミニウムなどのその他の無機アルミニウム化合物;
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルモキサンなどのアルミニウム有機金属化合物;
トリフェノキシアルミニウムなどのアリーロキシアルミニウム化合物;
トリス(トリメチルシロキシ)アルミニウム、トリス(トリフェニルシロキシ)アルミニウムなどのシロキシアルミニウム化合物;
酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、有機スルホン酸アルミニウム、有機ホスホン酸アルミニウムなどの有機酸アルミニウム塩化合物;
トリス(ジエチルアミノ)アルミニウム、アルミニウムトリピロリドなどのアルミニウムアミド化合物;
アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−2−エチルヘキソキシドなどのアルミニウムアルコキシド類;
およびそれらの加水分解物が挙げられる。
【0063】
これらの中では、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムトリ-sec-ブトキシドなどが好ましい。
【0064】
これらのアルミニウム化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのアルミニウム化合物は、必要に応じて、溶媒、たとえば水やアルコール類で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0065】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において必要に応じて用いられるチタン化合物としては、たとえば、
四フッ化チタン、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、ヘキサフロロチタン酸などのハロゲン化チタン化合物;
α−チタン酸、β−チタン酸、チタン酸アンモニウム、チタン酸ナトリウム、ペルオキソチタン酸錯体、アナターゼなどのチタン酸化合物;
硫酸チタン、硝酸チタン、リン酸チタン、ケイ酸チタンなどの無機酸チタン塩化合物;
テトラメチルチタン、テトラエチルチタン、テトラベンジルチタン、テトラフェニルチタン、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジクロライドなどのチタン有機金属化合物;
テトラフェノキシチタンなどのアリーロキシチタン化合物;
テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン、テトラキス(トリフェニルシロキシ)チタンなどのシロキシチタン化合物;
酢酸チタン、プロピオン酸チタン、乳酸チタン、クエン酸チタン、酒石酸チタン、シュウ酸チタニルカリウム、有機スルホン酸チタン、有機ホスホン酸チタンなどの有機酸チタン塩化合物;
テトラキス(ジエチルアミノ)チタン、チタンテトラピロリドなどのチタンアミド化合物;または下記に詳述されるアルコキシチタン化合物など、およびそれらの加水分解物が挙げられる。
【0066】
上記のチタン化合物の加水分解物を得る方法には、たとえば欧州特許EP1013692号公報記載の方法を用いることができる。
【0067】
なお、上記のアルコキシチタン化合物としては、たとえば、
チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシドなどのチタンテトラアルコキシド類;
ポリ(ジブチルチタネート)、Ti7O4(OC2H5)20、Ti16O16(OC2H5)32などの縮合チタンアルコキシド類;
クロロチタントリイソプロポキシド、ジクロロチタンジエトキシドなどのハロゲン置換チタンアルコキシド類;
チタンアセテートトリイソプロポキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシドなどのカルボン酸基置換チタンアルコキシド類;
チタントリス(ジオクチルピロホスフェート)イソプロポキシド、チタン(モノエチルホスフェート)トリイソプロポキシドなどのホスホン酸基置換チタンアルコキシド類;
チタントリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキシドなどのスルホン酸基置換チタンアルコキシド類;
アンモニウムヘキサエトキシチタネート、ナトリウムヘキサエトキシチタネート、カリウムヘキサエトキシチタネート、ナトリウムヘキサ−n−プロポキシチタネートなどのアルコキシチタネート類;
チタンビス(2,4−ペンタンジオナート)ジイソプロポキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシドなどのβ−ジケトネート置換チタンアルコキシド類;
チタンビス(アンモニウムラクテート)ジイソプロポキシドなどのα−ヒドロキシカルボン酸置換チタンアルコキシド類;および
チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、2−アミノエトキシチタントリイソプロポキシドなどのアミノアルコール置換チタンアルコキシド類などが挙げられる。
【0068】
これらの中では、四塩化チタン、α−チタン酸、酢酸チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、およびそれらの加水分解物が好ましい。
【0069】
また国際特許公開WO2004/111105に記載の、チタンと脂肪族ジオールと3価以上の多価アルコールを含有するチタン含有溶液、および溶液中のチタン含有化合物の粒子直径が主として0.4nm以上5nm以下であるチタン含有溶液も好ましく用いることができる。
【0070】
これらのチタン化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのチタン化合物は、必要に応じて、溶媒、たとえば水やアルコール類で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0071】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、1価のカルボン酸とチタンのモル比は、(1価のカルボン酸)/(チタン)として好ましくは1〜1000であり、より好ましくは10〜500であり、さらに好ましくは15〜100である。(1価のカルボン酸)/(チタン)のモル比が前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂の溶融成形時の環状三量体の増加が大きくなり、金型汚れを引き起こすことがある。一方、前記範囲を超えると、フレーバー性その他の品質に悪影響を及ぼすことがある。
【0072】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるガリウム化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、塩化ガリウム、硝酸ガリウム、酸化ガリウムなどが挙げられ、特に酸化ガリウムが好ましい。
【0073】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるマンガン化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸マンガンなどの脂肪酸マンガン塩、炭酸マンガン、塩化マンガン、マンガンのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸マンガンまたは炭酸マンガンが好ましい。
【0074】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるコバルト化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸コバルトなどの脂肪酸コバルト塩、炭酸コバルト、塩化コバルト、コバルトのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸コバルトまたは炭酸コバルトが好ましい。
【0075】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられる亜鉛化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸亜鉛などの脂肪酸亜鉛塩、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛のアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸亜鉛または炭酸亜鉛が好ましい。
【0076】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられ、特にテトラエトキシシランが好ましい。
【0077】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるジルコニウム化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムブトキシド、炭酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどが挙げられ、特にジルコニウムブトキシドが好ましい。
【0078】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるスズ化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸スズ、塩化スズ、酸化スズ、シュウ酸スズ、硫酸スズなどが挙げられ、特に酢酸スズが好ましい。
【0079】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるスカンジウム化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸スカンジウム、塩化スカンジウム、酸化スカンジウム、シュウ酸スカンジウム、硫酸スカンジウムなどが挙げられ、特に酢酸スカンジウムが好ましい。
【0080】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるイットリウム化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、酸化イットリウム、シュウ酸イットリウム、硫酸イットリウムなどが挙げられ、特に酢酸イットリウムが好ましい。
【0081】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるランタン化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸ランタン、塩化ランタン、酸化ランタン、シュウ酸ランタン、硫酸ランタンなどが挙げられ、特に酢酸ランタンが好ましい。
【0082】
これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0083】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるアンチモン化合物としては、酸化アンチモン、酢酸アンチモン、塩化アンチモンなどが挙げられる。
【0084】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、酢酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシドなどが挙げられる。
【0085】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、必要に応じて用いられるアルカリ金属化合物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物である。
【0086】
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物としては、これらの元素の単体、水素化物、酸化物、硫化物、水酸化物、有機金属化合物、アルコキシド、酢酸塩などの脂肪酸塩、炭酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、アミノ酸塩、硫酸塩、有機スルホン酸塩、リン酸塩、有機ホスホン酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩などが挙げられる。
【0087】
これらの化合物の中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムなどが好ましい。
【0088】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、必要に応じて用いられるアルカリ土類金属化合物は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物である。
【0089】
ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物としては、これらの元素の単体、水素化物、酸化物、硫化物、水酸化物、有機金属化合物、アルコキシド、酢酸塩などの脂肪酸塩、炭酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、アミノ酸塩、硫酸塩、有機スルホン酸塩、リン酸塩、有機ホスホン酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩などが挙げられる。
【0090】
これらの化合物の中では、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどが好ましい。
【0091】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法においては、必要に応じてその他の金属化合物を用いることができる。
【0092】
鉄化合物としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、乳酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、ナフテン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、酸化鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、シュウ酸三カリウム鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトナート、フマル酸鉄(III)、四酸化三鉄などが挙げられ、特に鉄(III)アセチルアセトナートが好ましい。
【0093】
ニッケル化合物としては、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、ギ酸ニッケル、水酸化ニッケル、硫化ニッケル、ステアリン酸ニッケルなどが挙げられ、特に酢酸ニッケルが好ましい。
【0094】
銅化合物としては、酢酸銅、臭化銅、炭酸銅、塩化銅、クエン酸銅、2−エチルヘキサン銅、フッ化銅、ギ酸銅、グルコン酸銅、水酸化銅、銅メトキシド、ナフテン酸銅、硝酸銅、酸化銅、フタル酸銅、硫化銅などが挙げられ、特に酢酸銅が好ましい。
【0095】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法においては、必要に応じてリン化合物を用いることができる。リン化合物を用いると、ポリエステル樹脂の色調などの品質が向上できることがある。
【0096】
上述した、必要に応じて用いられるリン化合物としては、たとえば、
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ-n-ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;
トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類;
メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート等の酸性リン酸エステル類;
メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、3,5−ジ(t−ブチル)−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸などの有機ホスホン酸およびその塩またはエステル類;および
リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などのリン化合物およびそれらの塩などが挙げられる。
【0097】
これらの中では、トリ-n-ブチルホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、フェニルホスホン酸、リン酸、ピロリン酸などが好ましい。
【0098】
これらのリン化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのリン化合物は、必要に応じて、溶媒、たとえば水やアルコール類で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0099】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、必要に応じて用いられる窒素化合物は、アンモニア、ヒドロキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピロリジン、モルホリン、1,4,7−トリアザシクロノナン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、アミノエタノール、アニリン、ピリジンなどのアミン化合物、および、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム化合物などが挙げられる。
【0100】
これらの化合物の中では、トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどが好ましい。
【0101】
上記のアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物および窒素化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの化合物は、必要に応じて、水、アルコール類などの溶媒で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0102】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、必要に応じて用いられるイオウ化合物としては、
硫黄単体;
硫化アンモニウム、硫化ナトリウムなどのサルファイド化合物;
亜硫酸、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウムなどのスルフィン酸化合物;
硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類;
硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムリチウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウムなどの硫酸塩;
三酸化硫黄、過硫酸、チオ硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウムなどその他の無機硫黄化合物;
硫酸ジメチル、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、などのその他の有機硫黄化合物などが挙げられる。
【0103】
これらの中では、硫酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウムなどが好ましい。
【0104】
上記の硫黄化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの化合物は、必要に応じて、水、アルコール類などの溶媒で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
なお、上記のイオウ化合物は、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウムや4−カルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウムのような共重合性のイオウ化合物であってもよいが、好ましくは共重合性のイオウ化合物でないことが好ましい。
【0105】
(ポリエステル製造方法)
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合させることを特徴とする。芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とは、芳香族ジカルボン酸およびその塩、エステル、酸無水物または酸塩化物などを指す。脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とは、脂肪族ジオールおよびそのアルコキシド、エステルまたはエーテルなどを指す。
【0106】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法においては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重縮合させることが好ましい。
以下、ポリエステル樹脂の製造方法の一例について説明する。
【0107】
(エステル化工程)
まず、ポリエステル樹脂を製造するに際して、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化させる。エステル形成性誘導体としては、酸無水物、芳香族ジカルボン酸と単官能アルコールのエステル、脂肪族ジオール単官能カルボン酸とのエステル等があげられる。
【0108】
具体的には、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを含むスラリーを調製する。
【0109】
このようなスラリーには芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体1モルに対して、通常1.005〜1.5モル、好ましくは1.01〜1.2モルの脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体が含まれる。このスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給される。
【0110】
エステル化反応は好ましくは2個以上のエステル化反応基を直列に連結した装置を用いて脂肪族ジオールが還流する条件下で、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら行う。
【0111】
エステル化反応工程は通常多段で実施され、第1段目のエステル化反応は、通常、反応温度が240〜270℃、好ましくは245〜265℃であり、圧力が0.02〜0.3MPaG(0.2〜3kg/cm2 G)、好ましくは0.05〜0.2MPaG(0.5〜2kg/cm2G)の条件下で行われ、また最終段目のエステル化反応は、通常、反応温度が250〜280℃、好ましくは255〜275℃であり、圧力が0〜0.15MPaG(0〜1.5kg/cm2G)、好ましくは0〜0.13MPaG(0〜1.3kg/cm2 G)の条件下で行われる。
【0112】
エステル化反応を2段階で実施する場合には、第1段目および第2段目のエステル化反応条件がそれぞれ上記の範囲であり、3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段の1段前までエステル化反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件であればよい。
【0113】
例えば、エステル化反応が3段階で実施される場合には、第2段目のエステル化反応の反応温度は通常245〜275℃、好ましくは250〜270℃であり、圧力は通常0〜0.2MPaG(0〜2kg/cm2 G)、好ましくは0.02〜0.15MPaG(0.2〜1.5kg/cm2G)であればよい。
【0114】
これらの各段におけるエステル化反応率は、特に制限はされないが、各段階におけるエステル化反応率の上昇の度合いが滑らかに分配されることが好ましく、さらに最終段目のエステル化反応生成物においては通常90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。
【0115】
このエステル化工程により、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応物である低次縮合物(エステル低重合体)が得られ、この低次縮合物の数平均分子量が500〜5,000程度である。
【0116】
上記のようなエステル化工程で得られた低次縮合物は、次いで重縮合(液相重縮合)工程に供給される。
【0117】
(液相重縮合工程)
液相重縮合工程においては、エステル化工程で得られた低次縮合物を、減圧下で、かつポリエステル樹脂の融点以上の温度(通常250〜280℃)に加熱することにより重縮合させる。この重縮合反応では、未反応の脂肪族ジオールを反応系外に留去させながら行われることが望ましい。
【0118】
重縮合反応は、1段階で行ってもよく、複数段階に分けて行ってもよい。例えば、重縮合反応が複数段階で行われる場合には、第1段目の重縮合反応は、反応温度が250〜290℃、好ましくは260〜280℃、圧力が0.07〜0.003MPaG(500〜20Torr)、好ましくは0.03〜0.004MPaG(200〜30Torr)の条件下で行われ、最終段の重縮合反応は、反応温度が265〜300℃、好ましくは270〜295℃、圧力が1〜0.01kPaG(10〜0.1Torr)、好ましくは0.7〜0.07kPaG(5〜0.5Torr)の条件下で行われる。
【0119】
重縮合反応を3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段目の1段前間での重縮合反応は、上記1段目の反応条件と最終段目の反応条件との間の条件で行われる。例えば、重縮合工程が3段階で行われる場合には、第2段目の重縮合反応は通常、反応温度が260〜295℃、好ましくは270〜285℃で、圧力が7〜0.3kPaG(50〜2Torr)、好ましくは5〜0.7kPaG(40〜5Torr)の条件下で行われる。
【0120】
1価のカルボン酸、その塩およびエステル、ならびに必要に応じて重縮合触媒その他の化合物は、重縮合反応時に存在していればよい。このためこれらの化合物の添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程、液相重縮合工程等のいずれの工程で行ってもよい。また、触媒全量を一括添加しても、複数回に分けて添加してもよい。
【0121】
また、これらの化合物はあらかじめ脂肪族ジオールに混合した混合触媒を調製して添加することが好ましい。混合触媒を調製する際には、溶解助剤を用いてもよい。溶解助剤としては、水、水酸化ナトリウムなどの塩基化合物、ヒドロキシカルボン酸などのキレート配位子化合物、あるいは、グリセリンなどの3価以上の多価アルコールなどを用いることができるが、水、水酸化ナトリウム、あるいはグリセリンを用いることが好ましい。なお、混合触媒中のチタン濃度はチタン原子として0.5重量%以上であることが好ましい。
【0122】
また、これらの化合物同士は同じ工程で添加しても、別の工程で添加してもよい。好ましくは、重縮合触媒と1価のカルボン酸、その塩およびエステルとをあらかじめ脂肪族ジオールに混合した混合触媒を調製して添加することが好ましい。
【0123】
これらの混合触媒は均一透明な溶液であることが好ましい。すなわち、溶液のHAZE値が、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であることが望ましい。溶液のHAZE値は、たとえば日本電色工業(株)製ND−1001DPなどの装置を用いて測定することができる。溶液のHAZE値が前記範囲内であると、得られるポリエステル樹脂の透明性が向上できることがある。
【0124】
以上のような液相重縮合工程で得られる液相重縮合ポリエステル樹脂の固有粘度[IV]は0.40〜1.0dl/g、好ましくは0.50〜0.90dl/gであることが望ましい。なお、この液相重縮合工程の最終段目を除く各段階において達成される固有粘度は特に制限されないが、各段階における固有粘度の上昇の度合いが滑らかに分配されることが好ましい。
【0125】
なお、本明細書において、固有粘度は、ポリエステル樹脂を1,1,1−トリクロロエタン/フェノール=1/1(重量比)中、25℃で測定された溶液粘度から算出される。
【0126】
この重縮合工程で得られる液相重縮合ポリエステル樹脂は、通常、溶融押し出し成形されて粒状(チップ状)に成形される。
【0127】
この液相重縮合工程においては、得られる液相重縮合ポリエステル樹脂のCOOH基濃度を好ましくは60当量/トン以下、より好ましくは55〜10当量/トン、さらに好ましくは50〜15当量/トンとする。液相重縮合ポリエステル樹脂中のCOOH基濃度を上記範囲にすると、固相重合後のポリエステル樹脂の透明性が高くなる。
【0128】
液相重縮合工程において、例えば脂肪族ジオールと芳香族ジカルボン酸のモル比を0.98〜1.3、好ましくは1.0〜1.2とすることにより、液相重合温度を275〜295℃としたときに液相重縮合ポリエステル樹脂中のCOOH基濃度を60当量/トン以下とすることができる。
【0129】
(固相重縮合工程)
この液相重縮合工程で得られるポリエステル樹脂は、所望によりさらに固相重縮合することができる。
【0130】
固相重縮合工程に供給される粒状ポリエステル樹脂は、予め、固相重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。
【0131】
このような予備結晶化工程は、粒状ポリエステル樹脂を乾燥状態で通常、120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度に1分から4時間加熱することによって行うことができる。またこのような予備結晶化は、粒状ポリエステル樹脂を水蒸気雰囲気、水蒸気含有不活性ガス雰囲気下、または水蒸気含有空気雰囲気下で、120〜200℃の温度で1分間以上加熱することによって行うこともできる。
【0132】
予備結晶化されたポリエステル樹脂は、結晶化度が20〜50%であることが望ましい。なお、この予備結晶化処理によっては、いわゆるポリエステル樹脂の固相重縮合反応は進行せず、予備結晶化されたポリエステル樹脂の固有粘度は、液相重縮合後のポリエステル樹脂の固有粘度とほぼ同じであり、予備結晶化されたポリエステル樹脂の固有粘度と予備結晶化される前のポリエステル樹脂の固有粘度との差は、通常0.06dl/g以下である。
【0133】
固相重縮合工程は、少なくとも1段からなり、温度が190〜235℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が120〜0.001kPa、好ましくは98から0.01kPaの条件下で、窒素、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。使用する不活性ガスとしては窒素ガスが望ましい。
【0134】
ポリエステル樹脂と不活性ガスの流量はバッチ式の場合、ポリエステル樹脂1kgに対し、0.1〜50Nm3/hrであり、連続式の場合、ポリエステル樹脂1kg/hrに対し、0.01〜2Nm3/hrである。
【0135】
固相重合の雰囲気として使用される不活性ガスは常に純粋な不活性ガスを使用してもよく、また固相重合工程から排出される不活性ガスを循環再使用してもよい。固相重合工程から排出された不活性ガスには、水、エチレングリコール、アセトアルデヒドなどの縮合物、分解物が含有されている。循環再使用の際には縮合物、分解物を含んだ不活性ガスでもよく、また縮合物、分解物を除去、精製した不活性ガスでもよい。
【0136】
このような固相重縮合工程を経て得られた粒状ポリエステル樹脂には、水処理を行ってもよい。この水処理は、粒状ポリエステル樹脂を40〜180℃の水に3分〜5時間、あるいは40〜180℃の水蒸気または水蒸気含有ガスに5分〜14日間、接触させることにより行われる。
【0137】
このようにして得られたポリエステル樹脂の固有粘度は、通常0.70dl/g以上、好ましくは0.75〜1.0dl/gであることが望ましい。
【0138】
このようにして得られたポリエステル樹脂のCOOH基濃度は好ましくは10〜35当量/トン、より好ましくは12〜30当量/トンである。
【0139】
このようにして得られたポリエステル樹脂の密度は、好ましくは1.37g/cm以上、より好ましくは1.38g/cm以上、さらに好ましくは1.39g/cm以上である。
【0140】
このようにして得られたポリエステル樹脂を275℃で成形して得られる段付き角板状成形体の5mm厚のヘイズは好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。
このようにして得られたポリエステル樹脂を275℃で成形して得られる段付き角板状成形体の4mm厚のヘイズは好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下である。
【0141】
上記のようなエステル化工程と重縮合工程とを含むポリエステル樹脂の製造工程はバッチ式、半連続式、連続式のいずれでも行うことができる。
【0142】
このようなポリエステル樹脂は、特に色相に優れ、透明性に優れ、ボトル用途に用いることが特に好ましい。
【0143】
このようにして製造されたポリエステル樹脂は、従来から公知の添加剤、例えば、安定剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、核剤、染顔料等の着色剤などが添加されていてもよく、これらの添加剤はポリエステル樹脂製造時のいずれかの段階で添加してもよく、成形加工前、マスターバッチにより添加したものであってもよい。
【0144】
これに伴い、上記の添加剤は、粒状ポリエステル樹脂の粒子内部に一様の濃度で含有されていてもよいし、粒状ポリエステル樹脂の粒子表面近傍に濃縮されて含有されていてもよいし、また粒状ポリエステル樹脂の一部の粒子に他の粒子より高濃度で含有されていてもよい。
【0145】
本発明によって得られるポリエステル樹脂は各種成形体の素材として使用することができ、例えば、溶融成形してボトルなどの中空成形体、シート、フィルム、繊維等に使用されるが、ボトルに使用することが好ましい。
【0146】
(成形方法)
本発明によって得られるポリエステル樹脂からボトル、シート、フィルム、繊維などを成型する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
【0147】
例えば、ボトルを成形する場合には、上記ポリエステル樹脂を溶融状態でダイより押出してチューブ状パリソンを形成し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造する方法、上記ポリエステル樹脂から射出成形によりプリフォームを製造し、該プリフォームを延伸適性温度まで加熱し、次いでプリフォームを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造する方法などがある。
本発明のポリエステル樹脂よりなるボトルは、特に色相に優れ、透明性に優れ、アセトアルデヒド含有量が少なく、高品質である。
【0148】
(実施例)
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
元素分析
リンの定量:シート状に溶融成形したポリエチレンテレフタレートを用いて、蛍光X線分析により、ポリエチレンテレフタレートに含まれるリン元素を定量した。
金属元素の定量:乾式灰化法で試料を分解後、酸に溶解し、ICP発光分析でポリエチレンテレフタレートに含まれる金属元素を定量した。
固有粘度(IV)
ポリエチレンテレフタレート0.5gをフェノール/テトラクロロエタン(1/1重量比)混合溶媒100mlに加熱溶解した後、冷却して25℃で測定された溶液粘度から固有粘度を算出した。
酢酸の定量
ポリエステル樹脂1gを冷凍粉砕し、3mlの水中で120℃、4時間保持し、水中に抽出された酢酸をイオンクロマト法で定量した。
アセトアルデヒドの定量
フリーザーミルを用いて冷凍粉砕したポリエチレンテレフタレート2.0gをバイアル瓶に投入して内部標準物質(アセトン)と水を入れて密栓し、120±2℃の乾燥機で1時間加熱した。冷却後、上澄み液をガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製GC−6A)にて測定し、ポリエチレンテレフタレートに含まれるアセトアルデヒド量として算出した。
環状3量体オリゴマー(CT)の定量
ポリエチレンテレフタレート0.1gをオルトクロロフェノールに溶解した後、テトラヒドロフランで再析出して濾過して線状ポリエステルを除いた後、濾液を液体クロマトグラフィー(島津製作所製LC7A)に供給してポリエチレンテレフタレートに含まれる環状3量体オリゴマーを定量した。
b値の定量
ポリエチレンテレフタレートのチップの色調を45°拡散方式色差計(日本電色工業(株)製SQ−300H)で測定した。
密度の定量
密度は四塩化炭素およびヘプタンの混合溶媒を用いた密度勾配管を用いて測定した。
ポリエチレンテレフタレートの溶融処理
ポリエチレンテレフタレートを、除湿Air:0.2L/分流通下で170℃で4時間乾燥した。乾燥したポリエチレンテレフタレートを、シリンダー内の温度を310℃に設定したメルトインデックサ(東洋精機製作所(株)F−B01)に6g入れ、シリンダー内で7分間加熱溶融した後、5kgの荷重にてオリフィスより押し出し、アルミニウム板上に採取した。採取したポリエチレンテレフタレートを円盤状に急冷した。
ΔCT
上記記載の方法で溶融処理を行なったポリエチレンテレフタレートに含まれる環状3量体量(重量%)から原料ポリエチレンテレフタレートに含まれる環状3量体(重量%)の量を引いた値をΔCTとした。
【0149】
(調製例1)
1,000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、氷浴にて冷却した後撹拌しながら四塩化チタン5gを滴下した。塩化水素の発生が止まったら氷浴より取り出し、室温下で撹拌しながら25%アンモニア水を滴下し、液のpHを9にした。これに、室温下で攪拌しながら15%酢酸水溶液を滴下し、液のpHを5にした。生成した沈殿物を濾過により、分離した。洗浄後の沈殿物を、30重量%エチレングリコール含有水でスラリー濃度2.0重量%のスラリーとして30分間保持した後、二流体ノズル式のスプレードライヤーを用いて温度90℃で造粒乾燥を行い、固体状の加水分解物(固体状含チタン化合物)を得た。
【0150】
得られた固体状含チタン化合物の粒径分布は、0.5〜20μmであり、平均粒径は1.8μmであった。
ICP分析法により測定した固体状含チタン化合物中の金属チタン含量は、34.8重量%であり、炭素含有量は11.6重量%、チタンと炭素との重量比(Ti/C)は3であった。
【0151】
(調製例2)
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール102gとグリセリン18gを秤取し、これに参考例1で調製された固体状含チタン化合物3.38gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させた。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は1.0重量%であった。また、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、ND−1001DP)を用いて測定したこの溶液のHAZE値は1.0%であった。
【実施例1】
【0152】
以下のようにしてテレフタル酸とエチレングリコールのとの低次縮合物を製造した。
高純度テレフタル酸 12.81kg、エチレングリコール 4.93kg、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド20%水溶液 6.88gを圧力1.7kg/cm2G、260℃の窒素雰囲気下にて6時間、撹拌しながら反応させ、固有粘度0.28dl/gの低次縮合物を得た。この反応により生成した水は常時系外に留去した。
【0153】
上記で得られた低次縮合物のうち317gを抜き出し、500mlのガラス製重縮合フラスコに入れた。ついで調製例1で得られた触媒を0.39g、 3.9wt%酢酸エチレングリコール溶液を1.95g、調製例2で得られたリン酸エチレングリコール溶液を0.7g加えた。これを1時間260℃で溶融混合した後、系内を1時間かけて1torrまで減圧すると同時に温度を285℃まで昇温した。さらにエチレングリコールを系外に留去しながら、固有粘度が0.54dl/gになるまで重合した。溶融粘度が上昇し始めた時点から重合終了までの時間を測定し、それより液相重合速度を算出した。結果を表1に示した。
【0154】
反応終了後、反応物を反応器外にストランド状に抜き出し、水中に浸漬、冷却した後、ストランドカッターによりチップ状に裁断した。
【0155】
このように液相重合して得られたポリエチレンテレフタレートはさらに、窒素雰囲気下170℃、2時間乾燥するとともに結晶化を行なった後、窒素雰囲気下215℃で16時間固相重合を行なった。得られた固重品ポリエチレンテレフタレートの固有粘度を測定し、それより固相重縮合速度を算出した。結果を表1に示した。
【0156】
固相重合終了後のポリエチレンテレフタレートを90℃、4時間熱水中で処理した。熱水処理前および処理後の試料について前記した方法でΔCTを測定した結果を表1に示す。
【実施例2】
【0157】
参考例1において、酢酸エチレングリコール溶液の添加量を3.9gとしたは参考例1と同様に行なった。90℃・4時間熱水処理も同様に行い、熱水処理前および処理後ΔCTを測定した。結果を表1に示した。
(比較例1)
【0158】
参考例1において、酢酸を加えない以外は参考例1と同様に行なった。90℃・4時間熱水処理も同様に行い、熱水処理前および処理後ΔCTを測定した。結果を表1に示した。
実施例1、実施例2と比較例1の比較より、本願発明の範囲にあるポリエステルは、熱水処理を施すことによりΔCTが顕著に低減されることがわかる。
また重合時に酢酸を添加する実施例1、実施例2と酢酸を添加しない比較例1の比較より、1価カルボン酸は重合速度に影響を与えないことがわかる。
【0159】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とからなるポリエステル樹脂であって、遊離のカルボン酸の含有量が1.6〜100ppmであり、かつアセトアルデヒド含有量が4ppm以下であることを特徴とするポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記遊離のカルボン酸が1価カルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
ホウ素、アルミニウム、チタン、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンチモン、ゲルマニウムから選ばれる原子を、それらの総量ΣMとして0.1〜500ppm含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
環状三量体含有量が0.5重量%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂。
【請求項5】
芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体との低次縮合物を液相重縮合し、ついで固相重縮合させてポリエステル樹脂を製造する方法において、任意の時点で、1価のカルボン酸、その塩またはそのエステルを、全ジカルボン酸成分に対し0.001〜1.0モル%添加してポリエステルの重合を行なうことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項6】
ポリエステル樹脂を製造する方法において、重縮合触媒としてホウ素、アルミニウム、チタン、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンチモン、ゲルマニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物を用い、かつ1価のカルボン酸を(1価のカルボン酸)/(重縮合触媒として用いられる元素)のモル比として1〜1000となる量添加してポリエステルの重合を行なうことを特徴とする請求項5に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項7】
ポリエステル樹脂を製造する方法において、固相重合後のポリエステル樹脂を水で処理することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂からなることを特徴とする中空成形体。

【公開番号】特開2006−348167(P2006−348167A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175930(P2005−175930)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】