説明

ポリエステル樹脂およびその製造方法

【課題】チタニウム触媒を用いて、黄変せず色調に優れ、熱安定性に優れる上、副産物としてのオリゴマーの含量が減少したポリエステル樹脂を製造することができる方法を提供すること。熱安定性および色調に優れる上、副産物としてのオリゴマーの含量が減少し、物性が向上したポリエステル樹脂を提供すること。
【解決手段】ジカルボン酸とジオールをエステル化反応またはエステル交換反応させる段階;ならびにチタニウム触媒の存在下で重縮合反応および固相重合反応させる段階を含むポリエステル樹脂の製造方法。前記チタニウム触媒を、最終的に得られるポリエステル樹脂におけるチタニウム含量が0.1〜100ppmとなるように添加し、前記エステル化反応もしくはエステル交換反応の初期もしくは末期、または重縮合反応の初期に、理論樹脂獲得量を基準としてリン原子が0.1ppm〜50ppmとなるようにリン化合物を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂およびポリエステル樹脂の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、チタニウム触媒を用いてポリエステル樹脂を製造するにあたり、チタニウム触媒と安定剤として用いられるリン化合物の含量を制御することにより、前記触媒の活性および反応性を向上させることによって、黄変せず優れた色調を有し、熱安定性に優れる上、オリゴマーの含量が少なく、酸素による熱分解物が少ないポリエステル樹脂を得ることができるポリエステル樹脂の製造方法、および前記方法により得ることができるポリエステル樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリエステル樹脂は、低価格でありながらも機械的・化学的物性およびガス遮断性に優れるため、各種容器、フィルム、繊維などの製造に幅広く用いられている。このようなポリエステル樹脂の重合には、様々な触媒が使用されている。ところが、広く使用されている触媒、例えばアンチモン触媒は、環境的に好ましくない重金属を含む上、適正反応性を得るためには樹脂に対して数百ppmを使用しなければならないという問題点がある。更に、アンチモン触媒を多量に使用すると、ポリエステル樹脂にヘイズが発生し、放射または成形工程の際にアンチモンが析出されるので、設備の洗浄周期が短くなり、特に容器に成形される場合には高温の内容物によりアンチモンが抽出されるという問題点があった。
【0003】
ポリエステル樹脂の製造のためには、アンチモン触媒のほかに、ゲルマニウム触媒も使用されている。しかし、ゲルマニウム触媒は、環境親和的であるが高価なので、商業的に有用ではないという問題点があった。
【0004】
前記アンチモン触媒およびゲルマニウム触媒などの問題点を改善することが可能な触媒であって、環境親和的でありながら安価であり、しかも反応性に優れて数ppm未満の少量添加によっても適正な重合反応性を示すチタニウム触媒が従来から注目を浴びてきている(特許文献1および2参照)。しかし、従来のチタニウム触媒を使用する製造方法により得られるポリエステル樹脂は、黄変化程度が大きく色調に劣り、熱安定性が低く、オリゴマー含量が多いという問題点があった。
【特許文献1】米国特許第5,656,716号明細書
【特許文献2】米国特許第5,789,528号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況下、本発明の目的は、チタニウム触媒を用いて、黄変せず色調に優れ、熱安定性に優れる上、副産物としてのオリゴマーの含量が減少したポリエステル樹脂を製造することができる方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、熱安定性および色調に優れる上、副産物としてのオリゴマーの含量が減少し、物性が向上したポリエステル樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、チタニウム触媒を用いてポリエステル樹脂を製造する際、チタニウム触媒およびリン化合物の使用量を制御することにより、黄変せずに色調に優れ、更に熱安定性に優れ、しかも副産物としてのオリゴマーの含量が少ないポリエステル樹脂を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的を達成する手段は、以下の通りである。
[1] ジカルボン酸とジオールをエステル化反応またはエステル交換反応させる段階;ならびに
チタニウム触媒の存在下で重縮合反応および固相重合反応させる段階
を含むポリエステル樹脂の製造方法であって、
前記チタニウム触媒を、最終的に得られるポリエステル樹脂におけるチタニウム含量が0.1〜100ppmとなるように添加し、
前記エステル化反応もしくはエステル交換反応の初期もしくは末期、または重縮合反応の初期に、理論樹脂獲得量を基準としてリン原子が0.1ppm〜50ppmとなるようにリン化合物を添加することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
[2] 前記チタニウム触媒は、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−I−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、酢酸チタン、水酸化チタン、複金属系のチタニウム触媒およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、[1]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
[3] 前記チタニウム触媒は、複金属系のチタニウム触媒であり、
前記ポリエステル樹脂におけるチタニウム以外の金属含量は、1〜50ppmであることを特徴とする、[2]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
[4] 前記リン化合物は、亜リン酸、リン酸、リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリノニルフェニル、亜リン酸ベンジル、メチル亜リン酸メチルエステル、フェニル亜リン酸エチルエステルおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
[5] ジカルボン酸とジオールをチタニウム触媒およびリン化合物の存在下でエステル交換反応および重合反応することにより製造されたポリエステル樹脂において、
前記チタニウム触媒は、最終的に得られるポリエステル樹脂におけるチタニウム含量が0.1〜100ppmとなるように添加され、
前記リン化合物は、理論樹脂獲得量を基準としてリン原子が0.1〜50ppmとなるように添加され、
2L/分の窒素気流下、210℃の温度で16時間滞留させた樹脂の物性は、
L−b≧70、
Δb≦3、および
0.8≦R≦1.5、
(ここで、Lおよびbはハンター色座標を示し、Rは((IVS−IV0)/滞留時間)*100で定義される固相固有粘度増加速度を示し、IVSは樹脂の平均固有粘度値、IV0は固相重合前樹脂の固有粘度値をそれぞれ示す)を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂。
[6] 前記チタニウム触媒は、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−I−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、酢酸チタン、水酸化チタン、複金属系のチタニウム触媒およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、[5]に記載のポリエステル樹脂。
[7] 前記チタニウム触媒は、複金属系のチタニウム触媒であり、
前記ポリエステル樹脂におけるチタニウム以外の金属含量は、1〜50ppmであることを特徴とする、[6]に記載のポリエステル樹脂。
[8] 前記リン化合物は、亜リン酸、リン酸、リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリノニルフェニル、亜リン酸ベンジル、メチル亜リン酸メチルエステル、フェニル亜リン酸エチルエステルおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、[5]〜[7]のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法によれば、前述した樹脂の物性を満足し、黄変しないため色調に優れ、更に熱安定性に優れ、しかもオリゴマーの含量が少なく、酸素による熱分解物が少ないポリエステル樹脂を得ることができる。特に、本発明の製造方法によって製造されたポリエステル樹脂を原料として用いた樹脂容器では、容器内の内容物の味の変質が少なく、匂いが減少する。よって、本発明の製造方法によって製造されたポリエステル樹脂は、様々な製品の原料として適するものと期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、
ジカルボン酸とジオールをエステル化反応またはエステル交換反応させる段階;ならびに
チタニウム触媒の存在下で重縮合反応および固相重合反応させる段階
を含むポリエステル樹脂の製造方法であって、
前記チタニウム触媒を、最終的に得られるポリエステル樹脂におけるチタニウム含量が0.1〜100ppmとなるように添加し、
前記エステル化反応もしくはエステル交換反応の初期もしくは末期、または重縮合反応の初期に、理論樹脂獲得量を基準としてリン原子が0.1ppm〜50ppmとなるようにリン化合物を添加することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法
である。前述したように、本発明者らは、チタニウム触媒を用いたポリエステル樹脂製造工程におけるチタニウム触媒とリン化合物の最適含量を見出すことに成功し、樹脂が黄変せずに副産物の含量が減少して優れた物性を示すポリエステル樹脂を製造することができる、ポリエステル樹脂の製造方法を完成するに至った。
【0009】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法では、まず、ジカルボン酸とジオールをエステル化反応またはエステル交換反応させる段階を行う。具体的には、ジカルボン酸成分反応液およびジオール成分反応液をエステル化反応またはエステル交換反応させることにより、低重縮合物を製造することができる。本段階は、通常のポリエステル樹脂の製造のためのエステル化反応またはエステル交換反応で行うことができる。
【0010】
前記ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸およびそのエステル形成誘導体、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸(trimellitic acid)、ピロメリット酸(pyromellitic acid)、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸およびこれらのエステル形成誘導体を使用することができる。また、前記化合物の1種または2種以上が共重合された化合物を使用することもできる。
【0011】
前記ジオール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール(1,1-cyclohexane dimethylol)、1,4−シクロヘキサンジメチロールなどの脂環族ジオール、キシレングリコール(xylene glycol)、4,4−ジヒドロキシビフェニル(4,4-dihydroxy biphenyl)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(2,2-bis(4-hydroxy phenyl)propane)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(2,2-bis(4-hydroxy phenyl)sulfone)などの芳香族ジオールを使用することができる。また、これらジオールの1種または2種以上がエチレングリコールと共に共重合された化合物を使用することもできる。
【0012】
前記エステル化反応またはエステル交換反応におけるジカルボン酸とジオールの含量比は、ジカルボン酸成分1モルに対してジオール成分1.05〜2モルであることが好ましく、さらに好ましくはジオール成分が1.05〜1.4モルである。ジオール成分の含量が過度に多ければ、副反応が促進されてジエチレングリコールのような好ましくない副反応物が生成されるおそれがあり、ジオール成分の含量が過度に少なければ、エステル化反応が不十分となるか反応時間が遅延するおそれがある。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法では、リン(P)化合物をエステル化反応もしくはエステル交換反応の初期もしくは末期、または重縮合反応の初期に添加する。リン化合物は、理論樹脂獲得量を基準として0.1〜50ppmのリン(P)原子が含まれるように添加する。更に、理論樹脂獲得量を基準として1〜30ppmのリン(P)原子が含まれるようにリン(P)化合物を添加することが好ましい。前記リン(P)原子含量が0.1ppm未満では、黄変が生じるため色調に劣り、前記含量が50ppm超過では、重合速度が低下する傾向がある。
【0014】
前記リン化合物は、亜リン酸(phosphorous acid)、リン酸(phosphoric acid)、リン酸トリフェニル(triphenyl phosphate)、リン酸トリメチル(trimethyl phosphate)、リン酸トリエチル(triethyl phosphate)、リン酸トリブチル(tributyl phosphate)、リン酸モノブチル(monobutyl phosphate)、リン酸ジブチル(dibutyl phosphate)、リン酸ジオクチル(dioctyl phosphate)、リン酸トリノニルフェニル(trinonylphenyl phosphate)、亜リン酸ベンジル、メチル亜リン酸メチルエステル、フェニル亜リン酸エチルエステルおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることができるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
前記エステル化反応またはエステル交換反応は、通常のエステル反応またはエステル交換反応の工程条件で行うことができる。前記反応は、例えば230℃〜260℃の温度および0.5〜2kgf/cm2の圧力下で行うことができる。
【0016】
次に、前記エステル化反応またはエステル交換反応の生成物である低重縮合物を重縮合反応および固相重合反応させる段階を行う。前記重縮合反応の触媒として使用できるチタニウム触媒としては、例えばテトラ−n−プロピルチタネート(tetra-n-propyl titanate)、テトラ−I−プロピルチタネート(tetra-I-pyropyl titanate)、テトラ−n−ブチルチタネート(tetra-n-butyl titanate)、テトラ−t−ブチルチタネート(tetra-t-butyl titanate)、酢酸チタン、水酸化チタン、複金属系のチタニウム触媒およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を使用することができる。
【0017】
前記複金属系チタニウム触媒に使用されるチタニウム以外の第2金属としては、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、コバルト、亜鉛、アルミニウム、珪素、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、リチウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、ホウ素、ガリウム、スカンジウム、イトリウム、ハフミウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、ランタン、ルテニウム、ロジウム、パラジウムおよびこれらの混合物などを例示することができる。
【0018】
前記チタニウム触媒は、必ずしも重縮合反応初期に投入しなければならないのではなく、エステル反応の初期または末期に投入してもよい。チタニウム触媒の使用量は、理論樹脂獲得量を基準として0.01ppm〜100ppmであることが好ましく、0.1〜50ppmであることがさらに好ましい。前記チタニウム触媒は、最終的に得られるポリエステル樹脂におけるチタニウムの含量が0.1〜100ppmとなるように添加し、前記第2金属成分が、最終的に得られるポリエステル樹脂における前記第2金属成分の含量が1〜50ppmとなるように添加することが好ましい。最終的に得られる樹脂におけるチタニウムおよび第2金属成分の含量が前記範囲より少ない場合は十分な触媒効果を得ることは困難であり、最終的に得られる樹脂におけるチタニウムおよび第2金属成分の含量が前記範囲より多い場合は、得られるポリエステル樹脂の物性が好ましくないという問題点がある。
【0019】
また、前記重縮合反応において、助触媒および/または呈色剤を使用することもできる。助触媒としては、カルシウム、アンチモン、鉛、マンガン、スズ、ゲルマニウム、セリウム、亜鉛、マグネシウム、リチウム、セシウム、ジルコニウムまたはこれらの混合物を投入することができ、呈色剤としては、コバルト化合物、有機トナー、無機トナーまたはこれらの混合物を投入することができる。更に、必要に応じて、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系化合物を投入してもよい。
【0020】
前記重縮合反応も通常のポリエステル樹脂製造の重縮合反応条件で行うことができる。前記重縮合反応は、例えば250〜300℃、好ましくは260〜300℃の温度および0.5torrの減圧下で行うことができ、好ましくは前記触媒と添加剤を投入した後には、250〜300℃の温度で順次減圧して行うことができる。前記重縮合反応は、最終生成物であるポリエステル重縮合反応物の固有粘度が要求される水準に到達するまで行うことができ、好ましくは固有粘度が0.3〜1.0dl/g、さらに好ましくは0.4〜0.8dl/gに到達するまで行うことができる。溶融重合の際に固有粘度が1.0dl/g超過では、アセトアルデヒドや環状3量体などの副産物が増加し、固有粘度が0.3dl/g未満では、ポリエステル樹脂の機械的強度が不良であり、下記の固相重合反応を行って固有粘度をさらに上昇させる場合、固相重合時間が長くなって経済的に不利であるという問題点がある。
【0021】
更に、本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、前記重縮合反応の生成物であるポリエステル重縮合物の固有粘度を増加させるために、前記ポリエステル重縮合物を固相重合反応させる段階をさらに含む。
【0022】
更に、本発明は、
ジカルボン酸とジオールをチタニウム触媒およびリン化合物の存在下でエステル交換反応および重合反応することにより製造されたポリエステル樹脂において、
前記チタニウム触媒は、最終的に得られるポリエステル樹脂におけるチタニウム含量が0.1〜100ppmとなるように添加され、
前記リン化合物は、理論樹脂獲得量を基準としてリン原子が0.1〜50ppmとなるように添加され、
2L/分の窒素気流下、210℃の温度で16時間滞留させた樹脂の物性は、
L−b≧70、
Δb≦3、および
0.8≦R≦1.5、
を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂
に関する。前記樹脂は、本発明のポリエステル樹脂の製造方法によって得ることができる。
ここで、LおよびbはLab表色計においてハンター(hunter)の彩度式色座標Lとbを意味する。樹脂の色調が良好であるということは、通常L値が高くてb値が低いということなので、L−b値が高いほど、樹脂の総合的な色調が良好であるといえる。色調(L−b)が70未満の樹脂は、色調が非常に不良であると共にアセトアルデヒドやオリゴマーなどの副産物が多くなるという傾向がある。
【0023】
前記Rは((IVS−IV0)/滞留時間)*100で定義される固相固有粘度増加速度である。ここで、IVSは固有粘度の平均値であり、IV0は固相重合を行う前の樹脂の固有粘度値である。Rが大きいほど、商業的に価値が高くなるが、Rが15を超えると、色調が不良であり、オリゴマーのような副産物の含量が高くなる現象が現われた。これに対し、Rが0.8未満では、固相重合速度が過度に低くなり商業的に価値が低下する。
【0024】
このように、本発明の方法で製造されたポリエステル樹脂および本発明のポリエステル樹脂は、射出ブロー成形、放射、キャスティングなどの通常の方法によって容器、フィルム、繊維などの最終製品に成形することができる。前記ポリエステル樹脂は、アセトアルデヒドおよび環状3量体などの副産物が少ないので、ボトル(bottle)などの各種食品容器の製造に特に適するという利点がある。
【実施例】
【0025】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範疇を限定するものではない。
【0026】
実施例および比較例で使用した主要物性の測定方法および成形物の製造方法は、次の通りである。
1)固相重縮合:チップ状のポリエステル樹脂を100g定量し、図1のようなチューブ管に満たしてチューブ栓を締め付けた後、油浴に浸漬し、2L/分の流量で窒素を流しながら210℃の温度で16時間滞留させた。前記チューブを油浴から取り出して窒素気流の下で常温まで冷却させ、チューブ栓を開いて注意深く上部、下部の各10gを取り出した後、中間部分の80gを別途サンプリングして樹脂の固有粘度と色調を測定した。
2)固有粘度(Intrinsic viscosity:以下「IV」という):樹脂試料を液体窒素を用いて凍結粉砕した後、試料0.36gを濃度が1.2g/dlとなるようにo−クロロフェノール溶媒に150℃の温度で15分間溶解させた。その後、ウベロード粘度計を用いて35℃で原液との相対粘度(ηrel)を測定し、これから比粘度(specific viscosity)ηsp(=ηrel−1)を算出した後、ハギンス(Huggins)式を用いて樹脂の固有粘度値(IV)を換算した。
3)固相固有粘度増加速度(R):前記1)で説明した方式で求めたサンプル80gの固有粘度を3回測定した後、平均値をIVSとし、固相重合を行う前の樹脂の固有粘度値をIV0とし、次式からRを算出した。
R=((IVS−IV0)/滞留時間)*100
4)金属原子含有量:試料2gを混合酸で完全に溶解した後、誘導結合プラズマ発光分光分析法によって金属原子の含有量を求めた。
5)プレフォームおよびボトルの製造:樹脂を170℃で12時間真空乾燥させ、射出成形機(ASB150、日精マシーン)に投入して、高さ145mm、外径28mm、厚さ4mm、重量48gのプレフォームを製造(シリンダ温度275℃、成形サイクル23秒)した後、プレフォームをフロー成形機(Krupp Copolast LB−01)に投入してボトルを製造した。
6)アセトアルデヒドの含有量:プレフォームを凍結粉砕した後、粉砕物約1gを20mlの容器に仕込み、150℃で40分間加熱しながら得られるアセトアルデヒドの量をガスクロマトグラフィーを用いて測定し、純粋アセトアルデヒドの希釈液値と比較してその絶対値を求めた。
7)官能検査:製造したボトルを栓で密閉し、40℃で2時間加熱した後取り出してボトルの内部からの匂いを官能的に評価し、匂いが殆どしない場合には◎、匂いが多少するが我慢できる水準の場合には◇、匂いが不快な程度に激しい場合には×でそれぞれ表示した。
8)樹脂色調:樹脂試料を円柱状の測色用セルに一定量充填した後、Lab表色計においてハンターの彩度式色座標Lとbを反射法で3回測定して平均値を求めた。通常L値が高くてb値が低いことは、樹脂の色調が良好であることはを意味する。よって、L−b値が高いほど樹脂の総合的な色調が良好であるといえる。
【0027】
[実施例1]
テレフタル酸ポリエチレン樹脂の製造
テレフタル酸9960質量部(約60モル)、エチレングリコール5208質量部(約84モル)のスラリー(slurry)反応液をエステル化反応器に仕込んだ後、反応器の温度を250℃に維持し、反応器の圧力を窒素を投入して1.0kgf/cm2に維持しながらエステル化反応を行い、反応中、エステル化反応物中の水と少量のエチレングリコールとの混合液を蒸留カラム(distillation column)を介して反応器の外部に流出させながら反応滞留時間が400分となるようにした。前記エステル化反応の完結後、反応物にトリメチルリン酸をポリエステル樹脂理論獲得量を基準としてリン(P)原子が10ppmとなるように投入し、重縮合触媒としてチタンアルコキシド(titan alkoxide)系列のテトラ−n−ブチル−チタネートをチタニウム原子が樹脂理論獲得量を基準として8ppmとなるように仕込んだ後、呈色剤としてソルベントブルー45を2ppm添加し、その後エステル化反応の生成物である低重縮合物を重縮合反応器へ移送した。
次に、280℃、0.5torrの条件下で重縮合反応を重縮合反応生成物の固有粘度が0.64dl/gに到達するまで行った。重縮合反応の完結後、重縮合反応生成物の固有粘度を測定したところ、0.64dl/gであった。前記重縮合反応生成物を160℃で2時間放置して結晶化させた後、結晶化した反応物を固相重合反応器に移送させ、移送した反応物に窒素を2L/分の流量で引き続き流しながら210℃で16時間滞留させた後、物性を測定した。
【0028】
[実施例2、3および4と比較例1〜3]
テレフタル酸ポリエチレン樹脂の製造
下記表1に示すように、リンとチタニウム触媒の量を変更した以外は、実施例1と同様に行った。
実施例および比較例の物性測定結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明で使用した固相重合反応器の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸とジオールをエステル化反応またはエステル交換反応させる段階;ならびに
チタニウム触媒の存在下で重縮合反応および固相重合反応させる段階
を含むポリエステル樹脂の製造方法であって、
前記チタニウム触媒を、最終的に得られるポリエステル樹脂におけるチタニウム含量が0.1〜100ppmとなるように添加し、
前記エステル化反応もしくはエステル交換反応の初期もしくは末期、または重縮合反応の初期に、理論樹脂獲得量を基準としてリン原子が0.1ppm〜50ppmとなるようにリン化合物を添加することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記チタニウム触媒は、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−I−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、酢酸チタン、水酸化チタン、複金属系のチタニウム触媒およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記チタニウム触媒は、複金属系のチタニウム触媒であり、
前記ポリエステル樹脂におけるチタニウム以外の金属含量は、1〜50ppmであることを特徴とする、請求項2に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記リン化合物は、亜リン酸、リン酸、リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリノニルフェニル、亜リン酸ベンジル、メチル亜リン酸メチルエステル、フェニル亜リン酸エチルエステルおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項5】
ジカルボン酸とジオールをチタニウム触媒およびリン化合物の存在下でエステル交換反応および重合反応することにより製造されたポリエステル樹脂において、
前記チタニウム触媒は、最終的に得られるポリエステル樹脂におけるチタニウム含量が0.1〜100ppmとなるように添加され、
前記リン化合物は、理論樹脂獲得量を基準としてリン原子が0.1〜50ppmとなるように添加され、
2L/分の窒素気流下、210℃の温度で16時間滞留させた樹脂の物性は、
L−b≧70、
Δb≦3、および
0.8≦R≦1.5、
(ここで、Lおよびbはハンター色座標を示し、Rは((IVS−IV0)/滞留時間)*100で定義される固相固有粘度増加速度を示し、IVSは樹脂の平均固有粘度値、IV0は固相重合前樹脂の固有粘度値をそれぞれ示す)を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂。
【請求項6】
前記チタニウム触媒は、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−I−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、酢酸チタン、水酸化チタン、複金属系のチタニウム触媒およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項5に記載のポリエステル樹脂。
【請求項7】
前記チタニウム触媒は、複金属系のチタニウム触媒であり、
前記ポリエステル樹脂におけるチタニウム以外の金属含量は、1〜50ppmであることを特徴とする、請求項6に記載のポリエステル樹脂。
【請求項8】
前記リン化合物は、亜リン酸、リン酸、リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリノニルフェニル、亜リン酸ベンジル、メチル亜リン酸メチルエステル、フェニル亜リン酸エチルエステルおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂。

【図1】
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【公開番号】特開2006−188690(P2006−188690A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373675(P2005−373675)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(504035663)エスケイ ケミカルズ カンパニー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】