説明

ポリエステル樹脂の一体的製造方法

【解決課題】ポリエステルの大規模生産及び各種の用途にアルキレンオキシドを使用可能にすること。
【解決手段】(a)アルケンをエポキシ化触媒の存在下で好適な酸化剤と反応させて、アルキレンオキシドを形成する工程、(b)アルキレンオキシドを95〜99.95重量%含有する粗製アルキレンオキシドフラクションを分離する工程、及び(c)粗製アルキレンオキシドフラクションを、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物及び多価アルコールよりなる群から選ばれた1種以上の化合物と反応させて、ポリエステル樹脂を得る工程を含むポリエステル樹脂の一体的製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリエステル樹脂の一体的製造方法、このような方法で得られるポリエステル樹脂、及びこのようなポリエステルを含む配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルの製造方法は当該技術分野で周知である。本明細書で用語“ポリエステル樹脂”とは、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technologie、第18巻、575頁(1982年)に定義されるように、フラル酸及びイソフタル酸のようなジカルボン酸、又はマレイン酸無水物、フタル酸無水物のようなジカルボン酸無水物と、1,2−プロピレンジオール、ジエチレングリコール及びネオペンチルグリコールのような多価アルコールとの縮合により形成され、交互共重合体に導く重合体を意味する。
【0003】
GB 956,180Aは、エステル及びポリエステルの製造法に関し、この方法は、(i)炭素原子数3以上のオレフィン系又はシクロオレフィン系不飽和化合物(その例としてプロピレンが記載されている)を炭素原子数5以上の飽和脂肪族モノカルボン過酸でエポキシ化し、次いで(ii)得られた、エポキシ化化合物と炭素原子数5以上の高度飽和脂肪族モノカルボン酸とからなる混合物を加熱によりエステルに転化するというものである。工程(i)では塩化亜鉛のような促進剤が使用できる。工程(ii)で使用されるモノカルボン酸は、工程(i)で使用される過酸から誘導される。GB 956,180Aは、過酸から生じるモノカルボン酸と共に形成されるエポキシドを加熱する前に、ポリカルボン酸を加えてポリエステルを製造することを提案している。
【0004】
GB 956,180Aでは、工程(ii)で(ポリ)エステルを製造する前に、エポキシ化化合物は過酸誘導モノカルボン酸から分離しない(過酸は工程(i)で使用される酸化剤である)。これに対し、工程(i)で得られる前記両生成物は、工程(ii)では反応体である。両工程(i)及び(ii)は、ワンポット(one−pot)反応として行なわれる。
ポリエステル樹脂の製造法は、従来、水を連続的に除去しながら、原料を高温で接触させる工程を含んでいる。
【0005】
US−A−5880251に記載される一層早い、エネルギー効率の良い方法は、等量のモノアルキレングリコールの代りにアルキレンオキシドを使用している。この方法では、アルキレンオキシドは酸−及びアルコール−官能性化合物と、水の遊離なく発熱反応で接触させている。
【0006】
アルキレンオキシドを使用する欠点は、工業的規模、即ち、1年当たり数千トンの規模での取扱いが厄介なことである。特に、環境上、有害で毒性のある、エチレンオキシドやプロピレンオキシドのようなアルキレンオキシドの貯蔵、輸送及び取扱いは、厄介であり、しかもコストが非常にかかる(cost intensive)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリエステル樹脂の製造でアルキレンオキシドを使用する欠点は、アルキレンオキシド中にポリ(アルキレン)オキシドが存在することである。ポリ(アルキレンオキシド)が存在すると、ゲルを形成するため、ポリエステルの製造に有害となる可能性があり、所望ポリエステル樹脂の分子量、分子量分布、粘度、官能価等の特性、及び最終の利用特性から逸脱し、例えば利用可能性や塗膜の化学的安定性が低下することが多い。このため、ポリエステルの製造でアルキレンオキシドを使用するのは、小規模生産及び最適の用途に限定されていた。
【特許文献1】GB 956,180A
【特許文献2】US−A−5880251
【特許文献3】EP−A−0755716
【特許文献4】US−A−3578568
【特許文献5】WO−A−02/070497
【特許文献6】US−A−4692535
【特許文献7】US−A−5,352,807
【特許文献8】US−A−4904807
【特許文献9】US−A−5519152
【特許文献10】WO−A−2004/101141
【特許文献11】US−A−3351635
【特許文献12】US−A−4367342
【特許文献13】US−A−6504038
【特許文献14】US−A−4833260
【特許文献15】特開平4−352771
【特許文献16】US−A−5859265
【特許文献17】US−A−6008388
【特許文献18】US−A−6281369
【特許文献19】US−A−6498259
【特許文献20】US−A−6441204
【特許文献21】US−A−6307073
【特許文献22】US−A−3607669
【特許文献23】US−A−4306056
【特許文献24】US−A−4560788
【非特許文献1】Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technologie、第18巻、575頁(1982年)
【非特許文献2】Young,Polymer Handbook,第II章,J.Brandrub,E.H.Immerout及びW.McDowell編,Wiley−Interscience,ニューヨーク,1975年
【非特許文献3】Koon−Ling Ring等,“Unsaturated Polyester Resins”,Chemical Economics Handbook,580.1200,1999年4月
【非特許文献4】“Polyesters,Unsaturated”,Encyclopedia of Polymer Science and Technology;第3版,第12巻,256頁
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、
(a)アルケンをエポキシ化触媒の存在下で好適な酸化剤と反応させて、アルキレンオキシドを形成する工程、
(b)アルキレンオキシドを95〜99.95重量%含有する粗製アルキレンオキシドフラクションを分離する工程、及び
(c)粗製アルキレンオキシドフラクションを、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物及び多価アルコールよりなる群から選ばれた1種以上の化合物と反応させて、ポリエステル樹脂を得る工程、
を含むポリエステル樹脂の一体的製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
出願人は、複雑な精製処理を受けていない本質的に粗製のアルキレンオキシドフラクションを用いると、前記欠点は解消できることを見出した。本方法は、アルキレンオキシドを基準として工業的規模でポリエステル樹脂を製造できる上、環境に対する危険性や影響を著しく低下できる。本明細書で“一体的方法”とは、アルキレンオキシドの製造法とポリエステル樹脂の製造法とを単一の方法に組合わせたことを意味する。アルキレンオキシドの製造法との一体的方法は、ポリ(アルキレン)オキシドによる問題を回避すると言う技術的利点を有するばかりでなく、取扱い、輸送及び中間体の貯蔵が減少することにより、著しくコストが低下する上、環境に対する危険性が低下する。更に、資金やエネルギーを著しく必要とするアルキレンオキシドの精製は、減少するか、或いは完全に回避できる。これは、アルキレンオキシドの製造ユニットの近くにポリエステルの製造ユニットを配置すれば、ポリエステルユニットの反応器に直接、粗製アルキレンオキシドを搬送できるので、都合良く達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書で“直接”とは、任意に中間体貯蔵設備を有するが、タンクローリー(road car tanker)、又は他の形態の移動可能なタンクによる輸送を含まない、パイプによる直接接続を意味する。
本明細書で用語“粗製アルキレンオキシドフラクション”とは、本方法で得られるように、アルキレンオキシドを95.00〜99.95重量%と、水、アルデヒド、ケトン及び酸よりなる群から選ばれた化合物を5.0〜0.05重量%とを含有する粗製アルキレンオキシドフラクションを言う。用語“湿潤”又は“乾燥” 粗製アルキレンオキシドとは、以下に説明するように、それぞれ、工程(a)、(b1)及び(b2)、又は工程(a)及び(b1)〜(b3)で得られるようなアルキレンオキシドフラクションを言う。
【0011】
以前は、一般にアルキレンオキシド誘導体の製造には、アルキレンオキシドの含有量が99.95重量%を超える、更に精製したアルキレンオキシド(以下、“純粋なアルキレンオキシド”と言う)だけが満足するものとみなされていた。純粋なアルキレンオキシドは、一般に粗製アルキレンオキシドから、複雑で高価な精製処理により製造される。この追加の精製法は、アルキレンオキシドに近い沸点を有する、及び/又はアルキレンオキシドと共沸混合物を形成する不純物の除去が特に困難なので、通常、多段工程を含んでいる。このような精製法は、EP−A−0755716、US−A−3578568、及びWO−A−02/070497に概説されているように、複雑な設備を必要とし、しかも大量のエネルギーを消費する上、アルキレンオキシドの所望としない取扱いを含んでいる。また前述の精製処理は、US−A−4692535及びWO−A−02/070497に記載されるように、純粋なアルキレンオキシド中に、利用上の問題を起こすことが知られている高分子量のポリ(アルキレンオキシド)を生じ易い。純粋なアルキレンオキシドは、US−A−3,881,996及びUS−A−6,024,840に記載されるように、粗製アルキレンオキシドから次のようにして製造される。即ち、一般に粗製アルキレンオキシドに対し、1回以上の、分別(fractioned)蒸留及び/又は抽出蒸留を行ない、これにより、例えばエチルベンゼン又はオクタンのような重質炭化水素の添加、存在下の抽出蒸留で高沸点の不純物から、アルキレンオキシドを塔頂生成物として分離し、これによりアルキレンオキシドを塔頂生成物として分離する。他の好適な精製処理としては、US−A−5,352,807に記載されるような濾過及び吸着処理がある。純粋なアルキレンオキシドは、全組成物に対しアルキレンオキシドを99.95重量%より多く含有するものとみなされる。好ましくは純粋なアルキレンオキシドは、エステル、アルデヒド及びケトンを100ppmw未満、好ましくは50ppmw未満、最も好ましくは30ppmw未満の濃度で含有する。
【0012】
本発明に好適な粗製アルキレンオキシドは、ポリエステル樹脂の製造に有用であることが知られている1種以上のアルキレンオキシドを含有する。このようなアルキレンオキシドは、有利には炭素原子数2〜8、好ましくは2〜6、最も好ましくは2〜4からなる脂肪族化合物を含有する。
【0013】
好ましいアルキレンオキシドは、粗製エチレンオキシド、粗製プロピレンオキシド及び粗製ブチレンオキシドよりなる群から選ばれる。更に好ましい粗製アルキレンオキシドは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドを含み、そのうち粗製プロピレンオキシドが最も好ましい。
【0014】
本方法で使用される粗製アルキレンオキシドは、工程(a)及び(b)に従って製造される。工程(a)ではアルケン原料は好適な酸化剤と反応させる。好適な酸化剤は、アルケンを相当するアルキレンオキシドにエポキシ化できる。酸化剤としては酸素、及び空気、亜酸化窒素のような酸素含有ガス又は混合物が挙げられる。他の好適な酸化剤は、芳香族又は脂肪族ヒドロパーオキシドのようなヒドロパーオキシド化合物である。ヒドロパーオキシド化合物としては、好ましくは過酸化水素、tert−ブチルヒドロパーオキシド、エチルベンゼンヒドロパーオキシド、及びイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシドが挙げられ、中でもエチルベンゼンヒドロパーオキシドが最も好ましい。好ましくは酸化剤は、飽和脂肪族モノカルボン過酸ではない。更に好ましくは酸化剤は過酸ではない。
【0015】
好適なエポキシ化触媒は、基体及び酸化剤に依存して変化し得る。エチレンオキシドの製造に好適な方法は、US−A−4904807、US−A−5519152及びWO−A−2004/101141に記載の方法が挙げられる。例えばプロピレンと、エチルベンゼンヒドロパーオキシド又はtert−ブチルヒドロパーオキシドのような有機ヒドロパーオキシド酸化剤とからのプロピレンオキシドの製造は、例えばUS−A−3351635に記載されるような、可溶化したモリブデン触媒、或いはUS−A−4367342及びUS−A−6504038に記載されるような、シリカ上にチタニアを担持した不均質触媒の存在下で行なうことができる。US−A−4833260には、過酸化水素及びチタニウムシリケートゼオライトを用いたオレフィンエポキシ化が記載されている。他の工業的に実用化された技術は、銀触媒上での酸素との反応によるエチレンのエチレンオキシドへの直接エポキシ化である。更に、触媒の存在下で酸素及び水素によるオレフィンの直接エポキシ化が例えば特開平4−352771、US−A−5859265、US−A−6008388、US−A−6281369、US−A−6498259、US−A−6441204及びUS−A−6307073に記載されている。これらの文献は、パラジウム又は金のような貴金属及びチタニア又はゼオライトのような担体を取入れた不均質触媒を用いてアルキレンオキシドを製造する方法を開示している。プロピレンオキシドの特に好ましい製造法は、例えばUS−A−6504038に記載されるような一体的スチレンモノマー/プロピレンオキシド法である。この方法は、製造されるポリエステル樹脂が不飽和ポリエステル樹脂である場合、特に関心がある。この方法では、ジカルボン酸又はジカルボン酸無水物の少なくとも一部はスチレンモノマーのビニル基とラジカル共重合可能な化合物を含有する。この化合物は好ましくはマレイン酸及び/又はマレイン酸無水物である。
【0016】
工程(a)で得られた反応混合物は、水及びアルキレンオキシドの他、酸化剤、未反応アルケン及び反応の副生物を含有する。
【0017】
工程(a)で生成するアルキレンオキシドは、次に工程(b)において、粗製アルキレンオキシドフラクションとして分離される。この粗製アルキレンオキシドフラクションは、一般に“湿潤粗製”アルキレンオキシドとして知られ、アルキレンオキシドを95〜99.95重量%、及び水、アルデヒド、ケトン及び酸から選ばれた化合物を5〜0.05重量%含有する。これらの不純物は、アルキレンオキシドに近い沸点を有する、及び/又はアルキレンオキシドと共沸混合物を形成するので、除去困難である。
【0018】
工程(b)は、一般に(b1)反応混合物から未反応アルケンを除去する工程、及び(b2)工程(b1)で得られた混合物から少なくとも1回の蒸留処理により湿潤粗製アルキレンオキシドを分離する工程とからなる。
【0019】
工程(b1)及び(b2)で得られる湿潤粗製アルキレンオキシドは、アルキレンオキシドに近い沸点を有する、及び/又はアルキレンオキシドと共沸混合物を形成する、水や前述のアルデヒドのような副生物を少量含有する。水の含有量は、好ましくは50〜5000ppmw(百万部当たり重量部)、更に好ましくは100〜4800ppmwである。工程(b)で得られる湿潤粗製アルキレンオキシドは、水を、なお更に好ましくは4500ppmw以下、再び更に好ましくは4000ppmw以下、なお更に好ましくは3500ppmw以下、最も好ましくは3000ppmw以下含有する。
【0020】
工程(b1)では、アルキレンオキシド含有反応混合物は、最初の蒸留で未反応アルケン及び若干の低沸点不純物を含む塔頂フラクションを生成する。この蒸留処理は、1〜20×10N/m(バール)の範囲の圧力及び10〜250℃の範囲の温度で行なうことができる。この蒸留で未反応アルケンは除去でき、同時に他の低沸点不純物も粗製アルキレンオキシドから除去できる。本方法で使用される粗製アルキレンオキシドは、高処理量を維持しながら、工程(b2)の蒸留ユニットを小型化できることから、工程(a)、(b1)及び(b2)を含む方法で製造することが好ましい。工程(b2)では、粗製アルキレンオキシドは、一般に工程(b1)で得られた反応混合物から塔頂生成物として低沸点汚染物と一緒に除去される。この蒸留処理は、0.1〜20×10N/m(バール)の範囲の圧力及び0〜250℃の範囲の温度で行なうことができる。この蒸留処理は、0.1〜1×10N/m(バール)の範囲の圧力及び10〜200℃の範囲の温度で行なうことが好ましい。
【0021】
ポリエステルの形成中、副生物はポリエステル樹脂に取込まれるので、湿潤粗製アルキレンオキシドは、ポリエステルの処方を変更することなく、或いは極めて僅かに変更するだけでポリエステル樹脂の製造中、適応できる。いかなる特定の理論にも束縛されたくないが、工程(c)では湿潤粗製アルキレンオキシド中に存在する水は、2官能性アルコールとして有利に作用するか、或いは反応混合物中に存在する無水物と反応して酸を形成するものと考えられる。この水は、反応して重合体中に入るか、或いは連続的に除去されるので、本方法に悪影響はないことが判った。
【0022】
好ましい原材料は湿潤粗製アルキレンオキシドであるが、水の存在が望ましくない場合のポリエステル配合物には、任意の工程(b3)を追加して得られる“乾燥粗製”アルキレンオキシドが使用できる。この工程(b3)では、例えばUS−A−3607669に記載されるように、工程(b2)で得られたアルキレンオキシドフラクション中になお存在する水の一部は、粗製アルキレンオキシドから塔頂生成物として除去できる。このような蒸留処理では、粗製アルキレンオキシドに1種以上の共留剤成分を添加してよい。共留剤成分は、分離すべき物質に添加して、例えば共沸混合物の平衡を変化させることにより、蒸留を容易にし、したがって分離及び方法を簡素化するための化合物である。好ましい共留剤成分は、炭素原子数4又は5の脂肪族炭化水素である。蒸留処理は、1〜20×10N/mの範囲の圧力及び0〜200℃の範囲の温度で行なうことができる。この蒸留処理は、5〜10×10N/mの範囲の圧力及び10〜150℃の範囲の温度で行なうことが好ましい。工程(b3)で得られた乾燥粗製アルキレンオキシドは、水を再び更に好ましくは100ppmw未満、なお更に好ましくは80ppmw未満、最も好ましくは50ppmw未満含有する。
【0023】
粗製アルキレンオキシドフラクションは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドよりなる群から選ばれた1種以上のアルキレンオキシドを全組成物に対し、95〜99.95重量%、及びアルキレンオキシド以外の化合物を5.0〜0.05重量%含有する。粗製アルキレンオキシドフラクションは、アルキレンオキシドを少なくとも96重量%、更に好ましくは96重量%より多く、なお更に好ましくは少なくとも97重量%、更に好ましくは97重量%より多く、なお更に好ましくは少なくとも99重量%、再び更に好ましくは99重量%より多く、最も好ましくは少なくとも99.5重量%含有する。粗製アルキレンオキシドフラクションは、アルキレンオキシドを好ましくは99.93重量%以下、更に好ましくは99.90重量%未満、再び更に好ましくは少なくとも99.85重量%以下、なお更に好ましくは99.83重量%未満、再び更に好ましくは99.8重%以下、更に好ましくは99.8重量%未満、なお更に好ましくは99.79重量%以下、最も好ましくは99.78重量%以下含有する。残部は工程(a)のエポキシ化反応で生じる化合物、又は工程(a)及び/又は工程(b)中でのこれら化合物の反応生成物である。
【0024】
粗製アルキレンオキシドフラクションは、アルケン及びアルカンのような炭化水素、及びアルデヒド、ケトン、アルコール、エーテル、酸及びエステルのような酸素含有副生物、例えば水、アセトン、酢酸アルデヒド、プロピオン酸アルデヒド、蟻酸メチル、及び相当する炭素酸を含有してもよい。
【0025】
粗製アルキレンオキシドフラクションは、重量平均分子量が2000を超えるポリ(アルキレンオキシド)を少量含有してもよいが、好ましくは50ppmw未満である。特記しない限り、ここで述べる分子量は、重量平均分子量であり、また官能価は公称官能価(Fn)である。
【0026】
粗製アルキレンオキシドフラクションは、重量平均分子量が2000を超えるポリ(アルキレンオキシド)を更に好ましくは30ppmw以下、なお更に好ましくは20ppmw以下、特に更に好ましくは15ppmw以下、再び更に好ましくは12ppmw以下、なお更に好ましくは5ppmw以下、最も好ましくは3ppmw以下含有する。水、及び未反応アルケンのような軽質沸点不純物の殆どは、工程(b1)及び(b2)により容易に行なえるが、アルキレンオキシドからの炭化水素、アルデヒド及び酸の分離は、精留によっても特に困難である。沸点が近接するこれら汚染物の分離には、例えばトレー数が極めて多い塔を必要とし、したがって、処理量が著しく制限される。乾燥粗製アルキレンオキシドは、水を好ましくは少なくとも5ppmw、更に好ましくは少なくとも10ppmw含有する。水の含有量をこれよりも低下させるには、コストがかさむ上、煩雑である。
【0027】
したがって、また本方法は、アルキレンオキシド、多価アルコール、及び/又はジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物、アルデヒド及び/又はケトンの共重合に関する。ポリエステルの製造条件下では、アルデヒド及び/又はケトンは、アセタール又はケタール構造の形成下でアルコールのような求核基と反応してポリエステル樹脂となる。また本発明は、本方法で得られるポリエステル樹脂に関する。このようなポリエステル樹脂は、工程(a)及び(b)の副生物として得られるアルデヒド、アルコール、酸又はケトンから誘導された単位を好ましくは0.02〜5重量%含有する。
【0028】
工程(b)で分離された粗製アルキレンオキシドフラクションは、アルキレンオキシド以外の化合物(不純物)を5.0〜0.05重量%含有する。これらの不純物のため、このような組成アルキレンオキシドから製造した最終のポリエステル樹脂は、純粋なアルキレンオキシドから製造したものとは異なる。したがって、本方法で得られるポリエステル樹脂は、純粋な出発原料から製造した従来のポリエステル樹脂とは異なる。
【0029】
本発明では粗製アルキレンオキシドは、アルキレンオキシド単独で、或いは少なくとも1種の純粋なアルキレンオキシドと組合わせて使用できる。これは、例えばポリオールの製造領域では1種の粗製アルキレンオキシドしか製造されず、一方、ポリオール配合物には該領域では製造されない他のアルキレンオキシドが必要である場合、有利である。したがって、これら他のアルキレンオキシドは、市販の純粋なアルキレンオキシドの供給源となり得る。純粋なアルキレンオキシドは、本方法を実施する前又は実施中に、例えば粗製アルキレンオキシドを最初に供給し、次いで本方法の後の段階で粗製アルキレンオキシドと純粋なアルキレンオキシドとの混合物を供給するか、或いは本方法を実施中、現場で粗製アルキレンオキシドと純粋なアルキレンオキシドとを混合するか、或いは反応の他の成分に添加する前に、これらのアルキレンオキシドを混合すれば、ポリエステル配合物中に導入できる。2種以上のアルキレンオキシドを必要とする場合の配合物、例えばプロピレンオキシド部分とエチレンオキシド部分とを有するポリエステル樹脂の配合物には少なくとも1種の粗製アルキレンオキシド50〜99重量%と、少なくとも1種の純粋なアルキレンオキシド50〜1重量%との組合わせが採用される。
【0030】
この組合わせは、粗製アルキレンオキシドを好ましくは75重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは85重量%含有する。本方法は、粗製アルキレンオキシドと純粋なアルキレンオキシドとの混合物が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドよりなる群から選ばれた1種以上のアルキレンオキシドを全組成物に対し、95〜99.95重量%含有し、粗製アルキレンオキシドの製造によるアルキレンオキシド以外の化合物を5〜0.05重量%含有するような方法で行なうことが好ましい。
【0031】
工程(c)では、工程(b)で得られた粗製アルキレンオキシドは、不飽和ポリエステル樹脂を形成するための他の原材料と反応させる。この反応は、カルボン酸官能性化合物とアルキレンオキシドとの任意に触媒の存在下での初期反応でヒドロキシアルキルエステル反応生成物を形成するが、次いで更に、存在するアルキレンオキシド及び/又は無水物と反応できる。粗製アルキレンオキシドと1種以上のジカルボン酸無水物とを1個以上の活性水素原子を有する開始剤化合物による開始下で反応させることが好ましい。本方法の開始剤化合物は、活性水素原子を1個以上、好ましくは2〜6個有する化合物である。この活性水素原子は、通常、ヒドロキシ基の形態で存在するが、例えばアミン基、チオール基又はカルボキシル基の形態で存在してもよい。好適な開始剤化合物としては、水、無水物又はプロピレンオキシドとの反応に有用な1分子当たり1個以上の活性水素原子を有するアルコールが挙げられる。好適な脂肪族開始剤化合物としては、1分子当たり2〜6個のヒドロキシル基を有する多価アルコールがある。このような開始剤化合物の例は、水、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ジ−及びポリ−グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール、マンニトール、2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)及び2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)である。ヒドロキシル基の形態で1個以上、更に好ましくは2個以上の活性水素基を有する脂肪族アルコールが好ましい。この脂肪族アルコールは、1分子当たり、好ましくは5個以下、更に好ましくは4個以下、最も好ましくは3個以下のヒドロキシル基を有する。
【0032】
開始剤化合物と無水物又はアルキレンオキシド間の開環反応により、エステル結合により結合した、アルキレンオキシドモノグリコール及びアルキレンオキシドジカルボン酸の交互ユニットの重合が起こるが、エーテル結合が可能で、最終のポリエステル樹脂中で耐えられる。本方法の工程(c)で使用されるジカルボン酸無水物は環式無水物が好ましい。
【0033】
工程(c)の反応は、好適な触媒の存在下で行なうことが好ましい。好適な触媒としては、亜鉛、錫、マンガン、マグネシウム及び/又はカルシウムよりなる群から選ばれた二価金属を含有する化合物、例えば等価の酸化物、塩化物、アセテート、ブチレート、ホスフェート、ナイトレート、ステアレート、オクタノエート、オレエート及びナフテネート、或いはUS−A−4306056に記載されるようなアミン、及びUS−A−4560788に記載されるようなアルキル四級アミン化合物が挙げられる。塩化亜鉛、酢酸亜鉛又は酸化亜鉛のような亜鉛化合物を使用すると、淡色の生成物が得られるので、亜鉛化合物が特に望ましい。他の好適な触媒としては、アンバーライトIR−45(OH)(アミン型樹脂)、アンバーライトIRC−50(カルボン酸型樹脂)のようなイオン交換樹脂、及び鉛、コバルト、希土類、カドミウム及びニッケルの塩が挙げられる。この触媒は、種々の量で、例えばジカルボン酸無水物及び開始剤化合物に対し、0.001〜1重量%の範囲で使用できる。反応は一般に100〜240℃の範囲の温度及び1〜15バールの範囲の圧力で行なわれる。このような本方法の好ましい実施態様では、各種用途に所望の特性を有する不飽和ポリエステル樹脂の製造が可能である。開始剤分子の異なる官能価や、温度及び粗製アルキレンオキシド対ジカルボン酸無水物の重量比により、異なる分子や分子量分布及び官能価を有するポリエステル樹脂の製造が可能である。このような樹脂は、例えば粗製プロピレンオキシドフラクション、フタル酸無水物及びマレイン酸無水物を基準にして配合できる。
【0034】
或いは、工程(c)の反応は、任意に縮合反応を含む、幾つかの異なる工程で行なってよい。好ましくは粗製アルキレンオキシドフラクションは、エステルオリゴマーを得るため、まずジカルボン酸と反応させる。この第一段階の終了後、多価アルコールと、二酸又は二酸無水物とを加え、この反応混合物を更に100〜240℃の範囲の温度で反応させ、最終的に所望の不飽和ポリエステル生成物を生じる。これにより、異なる官能価を導入すると共に、異なるブロックを有する特定の樹脂構造を設計することができる。
【0035】
しかし、反応器中には全ての原材料が存在してもよく、また工程(c)の反応は単一段階の反応として行なってもよい。工程(c)は単一の反応器で行なってもよいし、或いは別々の段階で行なう場合、まずオリゴマーを分離し、次いで反応させてもよい。しかし、反応は単一の反応器で、かつ使用される全て又は殆どの原材料の存在下で行なうことが好ましい。好適なジカルボン酸又はジカルボン酸無水物としては、例えばフタル酸、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、アジピン酸、セバシン酸及び/又はアゼライン酸が挙げられる。これらは単独で又はα,β−不飽和ジカルボン酸、例えばフマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロロマレイン酸、及びそれらの無水物と組合わせて使用できる。フタル酸又はフタル酸無水物、イソフタル酸、フマル酸、マレイン酸及びマレイン酸無水物が好ましい。第一段階の付加反応は一般に100〜240℃の範囲の温度、及び0.1〜1.5MPa(1〜15バール)の範囲の圧力で行なわれる。好適な多価アルコールとしては、ジオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール;グリコール、例えば水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加体、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加体;トリオール、例えばグリセロール;トリメチロールプロパン;又はテトラオール、例えばペンタエリリトールが挙げられる。これらは単独で又は組合わせて使用できる。
【0036】
本方法の工程(c)では、粗製アルキレンオキシドは、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物及び多価アルコールよりなる群から選ばれた1種以上の化合物と反応させる。前記1種以上の化合物は、ジカルボン酸無水物及び多価アルコールよりなる群から選ぶことが好ましい。更に好ましくは、前記1種以上の化合物はジカルボン酸無水物である。
【0037】
ジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物の少なくとも一部は、スチレンモノマーと共重合可能な不飽和を含むことが好ましい。このような不飽和としては、特にエチレン的に不飽和の化合物、例えばフマル酸及びマレイン酸が挙げられる。このような不飽和は、ポリエステル樹脂をスチレンモノマーと共重合させるために必要で、スチレンモノマーはポリエステル樹脂の溶剤としてもコモノマーとしても使用される。不飽和ポリエステル樹脂用のコモノマーとして通常使用されている別の原材料としては、ビニルエステル及びアルコールがあり、またスチレンモノマーと少なくとも少し共重合可能であれば、他のアセチレン的又はオレフィン的に不飽和の化合物でもよい。本発明による不飽和ポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではないが、α,β−不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの反応生成物がある。α,β−不飽和ジカルボン酸の好ましい例としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸及びそれらの無水物が挙げられる。これらのα,β−不飽和ジカルボン酸は単独で又は組合わせて使用できる。本発明による不飽和ポリエステル樹脂は、最終の利用においてスチレンモノマーと共重合できるような方法で配合される。この共重合は、通常、ラジカル始動剤(starter)、即ち、熱に曝すとラジカルを作る化合物、例えば有機過酸化物、過酸の無機塩、例えばアルカリ金属塩及びアゾ化合物の添加により行なわれる。共重合は、Young,Polymer Handbook,第II章,J.Brandrub,E.H.Immerout及びW.McDowell編,Wiley−Interscience,ニューヨーク,1975年に定義されているとおりである。
【0038】
再び更に好ましくは、本方法の工程(c)では、不飽和化合物としては、マレイン酸及び/又は更に好ましくはマレイン酸無水物が挙げられる。マレイン酸又は無水物の二重結合は、シス配置を有し、高度の立体障害を有するポリエステル鎖になる。これにより、通常、スチレンモノマーとの最後の架橋反応の速度は低下する。しかし、このポリエステル縮合反応中、温度が180〜200℃の範囲になれば、シス配置の二重結合は、トランス異性体、即ち、フマル酸構造に転位する。ポリエステル鎖中にフマル酸単位を有するポリエステル樹脂は、マレイン酸単位だけを有するポリエステル樹脂よりもスチレンに対する反応性が20倍高い。いかなる特定の理論に束縛されたくないが、これは、一層直線的な配置のため低下した立体障害によるものである。
【0039】
したがって、本発明は、好ましくは工程(c)が存在するマレイン酸単位の少なくとも一部がフマル酸配置に転位するような方法で、更に好ましくは本質的に全てのマレイン酸単位がフマル酸配置に転位するような方法で行なわれるような方法で実施される。
【0040】
また本発明は不飽和ポリエステル樹脂の製造方法に関する。“不飽和ポリエステル樹脂”とは、マレイン酸のような不飽和ジカルボン酸又はそれぞれのジカルボン酸無水物と多価アルコールとの縮合により形成された重合体を意味する。次に、得られたポリエステル樹脂は、Koon−Ling Ring等,“Unsaturated Polyester Resins”,Chemical Economics Handbook,580.1200,1999年4月及び“Polyesters,Unsaturated”,Encyclopedia of Polymer Science and Technology;第3版,第12巻,256頁に記載されるように、スチレン、及び最終用途の要求に応じて、任意に熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂又はポリウレタンのような他の樹脂種とブレンドされる。
【0041】
不飽和ポリエステル樹脂の場合、アルキレンオキシドは、好ましくは一体的プロピレンオキシド/スチレンモノマー法に由来して、プロピレンオキシドである。これにより、最小限に安定化されたスチレンモノマーが使用でき、またこれら2つの方法を直接、一緒にリンクすることにより、コスト効率及びコスト及び環境に対する危険性の低下が追加される。したがって、本方法は、このプロピレンオキシド/スチレンモノマー法に直接リンクすることが好ましい。
【0042】
スチレンモノマーは、通常、少量のラジカル禁止剤、通常、フェノール性化合物を添加すると、無制御の重合に対し安定化される。フェノール性化合物の例は、ヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、p−tert−ブチルカテコール、tert−ブチルヒドロキノン、トルイルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ナフテン酸銅、塩化銅等である。特にキノン型ラジカル禁止剤は、活性を残すためにほぼ化学量論量の溶解酸素の存在を必要とし、10〜50ppmの範囲で使用される。安定化スチレンモノマーとブレンドした不飽和ポリエステル樹脂は、安定化の影響を中和するため、利用時に増量したラジカル禁止剤を必要とし、コストの増大及び極めて危険な化合物の高濃度化を生じる。スチレンモノマー中に安定剤が存在すると、反応性は低下する。したがって、工程(b)で得られたスチレンモノマーは、工程(c)の反応器に直接、移送することが好ましく、更に好ましくは安定化しないか、或いは中間体の保存及びポリエステル反応器への移送に必要なレベルまでしか安定化しない。スチレンモノマーは、不飽和ポリエステル樹脂に、ポリエステル樹脂対スチレンモノマーの重量比が40:60〜99:1重量/重量、好ましくは55:45〜97:3となるような量で添加することが好ましい。スチレンモノマー及び不飽和ポリエステル樹脂の所要量を決定することは、当業者の通常の熟練内である。
【0043】
不飽和ポリエステル樹脂にかなり重要な別の原材料はジシクロペンタジエン(DCPD)である。この化合物は、通常、不飽和ポリエステル樹脂の製造中に添加される。140℃を超える温度では、DCPDは、2つのシクロペンタジエン分子に解離する。次いで、これらの分子は、シス配置のマレイン酸無水物によりディールス・アルダー反応を受け、これにより、硬質の二環構造をポリエステル樹脂構造に導入する。こうして、剛性、したがって、ポリエステル樹脂のガラス転移温度が増大する一方、材料の疎水性も増大する。
【0044】
その結果、ハンドレイアップ法に利用した場合は、乾燥時間が短縮すると共に、スチレンの所要量も低下する。更に、この不飽和ポリエステル樹脂の疎水性により、海用及び衛生用に広く使用される。したがって、工程(d)は、140℃以上の温度及びジシクロペンタジエンの存在下で行なうことが好ましい。ジシクロペンタジエンの使用上の欠点は、強い典型的な匂いのあることである。最小量でさえ、これと接触する全ての管、配管及びタンクに典型的な匂いを与える。このような匂いを充分に除去するのは困難で、またコストが非常にかかるので、通常は専用の輸送兼取扱い材料が必要である。したがって、本方法は、DCPDの製造場所で行なわれるような方法で行なうことが好ましい。そうすると、DCPDは中間体の取扱い及び保存、及び/又は輸送なしで、本方法に直接使用でき、専用設備の量を最少化できる。
【0045】
不飽和ポリエステル樹脂は、最終の利用においてスチレンモノマーと共重合できるような方法で配合される。この共重合は、通常、ラジカル始動剤、即ち、熱、紫外線、電子線又は同様な照射エネルギーに曝すとラジカルを作る化合物の添加により行なわれる。ラジカル始動剤の量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部、特に1〜5重量部の範囲内である。熱活性化ラジカル始動剤としては、有機過酸化物、例えばジアシルパーオキシド、パーオキシエステル、ヒドロパーオキシド、ケトンパーオキシド、アルキルパーエステル及びパーカーボネート化合物、並びに過酸のアルカリ金属塩が挙げられる。紫外線活性化ラジカル始動剤は、感光性化合物、例えばアシルホスフィンオキシド、ベンゾイルエーテル、ベンゾフェノン、アセトフェノン、チオキサントン化合物である。電子線活性化ラジカル始動剤としては、ハロゲン化アルキルベンゼン、ジスルフィド化合物及び同様な化合物が挙げられる。ラジカル反応を促進又は仲介でき、また前記硬化剤と組合わせて使用できる別の添加剤としては、ナフテン酸コバルト及びコバルトオクトネートのような金属塩;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)p−トルイジン及びジメチルアセトアセトアミドのようなtert−芳香族アミンが挙げられる。
【0046】
所望の用途に依存して、ポリエステル樹脂配合物には、任意に他の樹脂及び添加剤を添加してよい。これらは、熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂又はポリウレタンである。したがって、本発明はまた、本発明方法で得られるプリエステル樹脂を含む配合物に関し、該配合物は、更に熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂及び/又はポリウレタン樹脂を含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルケンをエポキシ化触媒の存在下で好適な酸化剤と反応させて、アルキレンオキシドを形成する工程、
(b)アルキレンオキシドを95〜99.95重量%含有する粗製アルキレンオキシドフラクションを分離する工程、及び
(c)粗製アルキレンオキシドフラクションを、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物及び多価アルコールよりなる群から選ばれた1種以上の化合物と反応させて、ポリエステル樹脂を得る工程、
を含むポリエステル樹脂の一体的製造方法。
【請求項2】
工程(c)の前に、1回以上の蒸留処理により粗製アルキレンオキシドフラクションから水を除去する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粗製アルキレンオキシドフラクションが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドよりなる群から選ばれた1種以上のアルキレンオキシドを全組成物に対し、95〜99.95重量%含有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
粗製アルキレンオキシドフラクションが、水を全組成物に対し、50〜5000ppmw含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
アルキレンオキシドが、スチレンモノマーとプロピレンオキシドとの同時製造法で得られるプロピレンオキシドである請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ジカルボン酸又はジカルボン酸無水物の少なくとも一部が、スチレンモノマーのビニル基とラジカル共重合可能な化合物を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ジカルボン酸又はジカルボン酸無水物がマレイン酸及び/又はマレイン酸無水物である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)が、活性水素原子を1つ以上含有する化合物による開始下で粗製アルキレンオキシドフラクションと1種以上のジカルボン酸無水物とを反応させて行なわれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)が、ジシクロペンタジエンの存在下、140℃以上の温度で行なわれる請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ポリエステル樹脂とスチレンモノマーとの重量比が40:60〜99:1の不飽和ポリエステル樹脂配合物を得るため、該ポリエステル樹脂にスチレンモノマーが添加される請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法で得られるポリエステル樹脂を含む配合物。
【請求項12】
熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂及び/又はポリウレタン樹脂を更に含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法で得られるポリエステル樹脂を含む配合物。



【公表番号】特表2009−506181(P2009−506181A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528489(P2008−528489)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065708
【国際公開番号】WO2007/025941
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】