説明

ポリエステル樹脂の製造方法

【課題】 環境への負担が少なく、着色を抑制した透明なポリエステル樹脂、特にカラートナー用に好ましく用いることができるポリエステル樹脂が得られるポリエステル樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】 ジカルボン酸を含有する多価カルボン酸とジオールを含有する多価アルコールとを水溶性チタン化合物およびリン化合物、好ましくはチタンラクテートおよびトリフェニルホスファイトの存在下で重縮合することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境への負担が少なく、着色を抑制した透明なポリエステル樹脂が得られるポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとを重合触媒の存在下で重縮合させてることにより製造されている。ここで用いる重合触媒としては、例えば、リン化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物等が用いられてきた。中でもスズ化合物は色調や透明性に優れるポリエステル樹脂が得られる為、頻繁に使用されている。しかしながら、このスズ化合物、例えばトリブチルスズ等は環境を汚染するという問題がある。またアンチモン化合物は安価で且つ重合活性が高いため広く使用されるが、反応中に異物が析出しポリマーを濁らせるため、透明性を落とすなど品質を悪化させるといった問題がある。更に、ゲルマニウム化合物は、高価なためポリエステル樹脂の製造コストが高くなる、ポリエステル樹脂を合成する際の反応時間が長く着色もするといった問題があり、チタン化合物は軽金属であり、環境負荷はないが、加水分解を受けやすく、特に重縮合時の水が系中に多く存在する際には触媒活性が長く続かない、得られるポリエステルの着色がひどく、濁りも生じるといった問題を抱えている。
【0003】
このような状況において、環境に付加をかけず、着色を抑制した透明なポリエステル樹脂を製造する方法として、例えば、重縮合触媒としてリン酸とテトラーn−ブトキシチタネートを用いてポリエステル樹脂を合成する製造方法等が記載されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、該製造方法でも十分満足のいく透明なポリエステル樹脂を得るのは困難である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−210872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は環境への負担が少なく、着色を抑制した透明なポリエステル樹脂が得られるポリエステル樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは環境負荷のない軽金属であるチタン化合物の中でも、加水分解の進行が遅い水溶性チタン化合物と助触媒としてリン化合物を併用することで環境への負担を少なくしながらも着色を抑制した透明なポリエステル樹脂が得られること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、ジカルボン酸を含有する多価カルボン酸とジオールを含有する多価アルコールとを水溶性チタン化合物およびリン化合物の存在下で重縮合することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば着色を抑制した透明なポリエステル樹脂を多大な負担を環境にかけることなく製造することができる。得られるポリエステル樹脂は、例えば、トナー、中でもカラートナー用途として特に好ましく使用できる。また、重縮合反応も短時間化が可能で、用いる触媒も安価なものであり、製造コストを抑制することもできる。また、本発明のポリエステル樹脂の製造方法は反応制御しやすい利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いる多価カルボン酸はジカルボン酸を含有するもので、更に3官能以上のカルボン酸を含有しても良い。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、修酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、ドデシルコハク酸、ドデシル無水コハク酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸等の脂肪族のジカルボン酸;フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸およびその無水物、ヘキサヒドロフタル酸およびその無水物、テトラブロムフタル酸およびその無水物、テトラクロルフタル酸およびその無水物、ヘット酸およびその無水物、ハイミック酸およびその無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等の芳香族または脂環族のジカルボン酸等が挙げられる。
【0010】
前記3官能以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0011】
前記した多価カルボン酸はそれぞれ単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。さらに、前記多価カルボン酸は、そのカルボキシル基の一部または全部がアルキルエステル、アルケニルエステルまたはアリ−ルエステルとなっているものも使用できる。
【0012】
また、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸のような一塩基酸も本発明の効果を損なわない範囲内で併用することができる。更に、例えば、ジメチロ−ルプロピオン酸あるいはジメチロ−ルブタン酸の如き3官能の原料成分としてのヒドロキシ酸あるいは6−ヒドロキシヘキサン酸のような、1分子中に水酸基とカルボキシル基を併有する化合物あるいはそれらの反応性誘導体も使用できる。
【0013】
本発明の製造方法では多価カルボン酸として高融点のジカルボン酸を含有する多価カルボン酸が好ましい。一般的に高融点の融点を持つジカルボン酸は重縮合に際し反応性が劣る。本発明の製造方法はこのような反応性の劣る原料を使用しても効率良くポリエステル樹脂を製造できるので、これらの反応性が劣る原料を用いることにより本発明の効果を特に享受することができる。高融点の融点を持つジカルボン酸を含有する多価カルボン酸としては、例えば、ポリエステル樹脂を合成する際の反応温度よりも高い融点を有する多価カルボン酸等が挙げられる。具体的には、260℃以上の融点を有するジカルボン酸を含有する多価カルボン酸等が挙げられる。この260℃以上の融点を有するジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等が挙げられる。中でも、本発明で用いる多価カルボン酸としては、テレフタル酸を含有する多価カルボン酸がより好ましい。
【0014】
尚、3官能以上のカルボン酸を用いる場合にはトリメリット酸が好ましい。
【0015】
本発明で用いる多価アルコールはジオールを含有するもので、更に3官能以上のアルコールを含有しても良い。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF等のビスフェノール類、ビスフェノールAのポリアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのポリアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのポリアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノール誘導体類等の芳香族のジオール類;シクロヘキサンジメタノール等の脂環族のジオール類等が挙げられる。
【0016】
前記したビスフェノールAのポリアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0017】
前記したビスフェノールSのポリアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0018】
前記したビスフェノールFのポリアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0019】
また、「カ−ジュラE10」[シェルケミカル社製 分岐脂肪酸のモノグリシジルエステル]等の脂肪族モノエポキシ化合物もかかるジオ−ル類として使用することができる。
【0020】
前記3官能以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ソルビト−ル、1,2,3,6−ヘキサンテトロ−ル、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリト−ル、2−メチルプロパントリオ−ル、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−ト等が挙げられる。
【0021】
また、下記に示すようなポリエポキシ化合物も3官能以上のアルコールとして使用することができる。例えば、エチレングリコール、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等各種の脂肪族ないしは脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル類;
【0022】
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはポリテトラメチレングリコールの如き、各種のポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのポリグリシジルエーテル類;アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、プロパントリカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸もしくはトリメリット酸の如き、各種の脂肪族ないしは芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル類;ブタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン、ドデカジエン、シクロオクタジエン、α−ピネンもしくはビニルシクロヘキセンの如き、各種の炭化水素系ジエンのビスエポキシド類;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートの如き、各種の脂環式ポリエポキシ化合物;またはポリブタジエンもしくはポリイソプレンの如き、各種のジエンポリマーのエポキシ化物;「EGM−400」[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の、3−グリシドキシプロピル基を有する、環状のポリシロキサンの商品名]等のポリエポキシ化合物が挙げられる。
【0023】
更に、一分子中に2個以上のエポキシ基を有する多価エポキシ化合物もジオール類を含む多価アルコール類として使用することができる。例えば、2〜4価のエポキシ化合物、5価以上のエポキシ化合物等が挙げられる。前記2〜4価のエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのうち、耐可塑剤性が良好なことから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0024】
前記5価以上のエポキシ化合物としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体あるいは共重合体、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。これらの中でも、反応性が良好なことからクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とフェノールノボラック型エポキシ樹脂がより望ましい。また、前記2〜4価のエポキシ化合物と5価以上のエポキシ化合物は2種以上を併用しても差し支えない。
【0025】
前記した多価アルコ−ルは、単独で使用してもよいし2種以上のものを併用することもできる。さらに、これらの多価アルコ−ル類の他、ステアリルアルコ−ルなどの1価の高級アルコ−ル等も本発明の特徴を損なわない範囲で併用することができる。
【0026】
本発明の製造方法で用いる多価アルコールとしては二級の水酸基を含有するジオールを用いるのが好ましい。二級の水酸基を含有するジオールは一般的に重縮合に際し反応性が劣る。本発明の製造方法はこのような反応性の劣る原料を使用しても効率良くポリエステル樹脂を製造できるので、これらの反応性が劣る原料を用いることにより本発明の効果を特に享受することができる。
【0027】
前記二級の水酸基を含有するジオールはとしては、例えば、プロピレングリコール、ビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0028】
尚、本発明の製造方法で得られるポリエステル樹脂をトナー用のポリエステル樹脂として用いる場合には多価カルボン酸としてエチレングリコールを含有する多価アルコールやシクロヘキサンジメタノールを含有する多価アルコールを用いるのが好ましい。
【0029】
本発明で重合触媒として用いる水溶性チタン化合物は、それ自身で水に溶解するものである。水溶性チタン化合物としては、例えば、ジーi―プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジーn―プトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等が挙げられる。中でもチタンラクテートが好ましい。
【0030】
前記水溶性チタン化合物の市販品としては、例えば、プレンアクトシリーズ〔味の素(株)製〕、チタンコートシリーズ〔日本曹達(株)製〕、オルガチックスシリーズ〔松本製薬工業(株)製〕等が挙げられる。
【0031】
本発明で用いるリン化合物は前記重合触媒として用いる水溶性チタン化合物の助触媒としての機能を有する。リン化合物としては、例えば、リン酸、トリフェニルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリー2−エチルヘキシルホスフェート、トリイソプロピルフェニルホスフェート等が挙げられる。中でも、非水溶性のリン化合物が好ましく、トリフェニルホスファイト、トリメチルホスファイトがより好ましく、トリメチルホスファイトが特に好ましい。
【0032】
従って、本発明の製造方法では前記水溶性チタン化合物としてチタンラクテートを用い、且つ、リン化合物としてトリメチルホスファイトを用いるのが最も好ましい。
【0033】
本発明の製造方法では、水溶性チタン化合物およびリン化合物を含有させれば良く、他の触媒を使用しない系が好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲内で他の触媒を併用することができる。他の触媒としては、例えば、テトラーn−プロピルチタネート、テトラ−iープロピルチタネート、テトラーn−ブチルチタネート等のチタンアルコキシド等が挙げられる。
【0034】
本発明の製造方法はジカルボン酸を含有する多価カルボン酸とジオールを含有する多価アルコールから一部構成されるポリエステルにおいて水溶性チタン化合物およびリン化合物の存在下で重縮合することを特徴とする。具体的には、前記ポリエステル樹脂の原料成分である多価カルボン酸及び多価アルコ−ルを必須として、窒素雰囲気中で加熱下に脱水縮合させる。この際使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器の如き回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押し出し機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。また、上記脱水縮合の際、必要に応じて反応系を減圧することによって、エステル化反応を促進することもできる。
【0035】
本発明の製造方法では前記水溶性チタン化合物とリン化合物とを、合計の使用量がポリエステル樹脂を構成する原料の合計100重量部に対して0.001〜1.0重量部となるように用いるのが着色しにくく、反応効率も良好なことから好ましく、0.004〜0.5重量部となるように用いるのがより好ましく、0.008〜0.2重量部となるように用いるのが更に好ましい。
【0036】
また、本発明の製造方法では前記水溶性チタン化合物とリン化合物とを、水溶性チタン化合物中のチタン原子の含有量(Ti)とリン化合物中のリン原子の含有量(P)との重量比〔(Ti)/(P)で0.1〜15となるように用いるのが着色しにくく、反応効率も良好なことから好ましく、1〜5がより好ましい。
【0037】
本発明の製造方法で得られるポリエステル樹脂は着色を抑制した透明なポリエステル樹脂である。トナー、特にカラートナー用のポリエステル樹脂として好ましく使用できる。
【0038】
実施例
以下に、実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明する。例中特に断らない限り「部」、「%」は重量基準である。
【0039】
実施例1
1,4−シクロヘキサンジメタノール〔長瀬産業(株)製〕172.4g、ビスフェノールA型エチレンオキサイド付加物〔日本乳化(株)製〕1800gを5リットルの4つ口フラスコに入れ加熱溶解させた後、テレフタル酸〔三菱化学(株)製〕1051gを加え、更にチタンラクテート〔松本製薬工業(株)製〕3g及びトリフェニルホスファイト〔和光純薬工業(株)製〕3部を投入し窒素気流下にて徐々に昇温し265℃で7時間反応させた。その後210℃まで降温しカ−ジュラE10〔シェルケミカル社製 分岐脂肪酸のモノグリシジルエステル〕を全原料の合計重量の0.1重量%となるように加え30分反応させた後に取り出し、ポリエステル樹脂1を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリエステル樹脂1の重量平均分子量(Mw)は11,140であった。
【0040】
得られたポリエステル樹脂1の着色度、透明度の評価を行った。測定サンプルの調製方法と各評価方法を下記に示す。結果を第1表に示す。
【0041】
<測定サンプルの調製>
冷却し固化したポリエステル樹脂1を180℃で溶解した。その後(真空度の条件)で1時間かけて脱気した。続いて40mm×40mm×3mmのシリコン製の型に脱気した溶液状ポリエステル樹脂1を流し込み、固化して測定サンプルを得た。
【0042】
<着色度の評価>
着色度の評価は明るさと黄味度を測定することにより評価した。測定には日本電色工業(株)製のカラーメーターであるZE2000を用いた。明るさは測定値が高いほどポリエステル樹脂1の明るさが明るいことを表す。黄味度は測定値が低いほどポリエステル樹脂1が着色していないことを表す。
【0043】
<透明度の評価>
透明度の評価は曇価を測定することにより行った。測定にはスガ試験機(株)製の直読ヘーズコンピューターを用いた。測定値が低いほど透明性に優れていることを表す。
【0044】
比較例1
1,4−シクロヘキサンジメタノール172.4g、ビスフェノールA型エチレンオキサイド付加物1800gを5リットルの4つ口フラスコに入れ加熱溶解させた後、テレフタル酸1051gを加え、更にジブチルチンオキシド〔日東化成(株))製〕3gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温し255℃で6.5時間反応させた。その後210℃まで降温しカ−ジュラE10を全原料の合計重量の0.1重量%となるように加え30分反応させた後に取り出し、比較対照用ポリエステル樹脂1´を得た。GPC法による比較対照用ポリエステル樹脂1´のMwは12,700であった。
【0045】
実施例1と同様にして着色度、透明度の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0046】
比較例2
1,4−シクロヘキサンジメタノール172.4g、ビスフェノールA型エチレンオキサイド付加物1800gを5リットルの4つ口フラスコに入れ加熱溶解させた後、テレフタル酸1051gを加え、更にチタンラクテート3gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温し255℃で11時間反応させた。その後210℃まで降温しカ−ジュラE10を全原料の合計重量の0.1重量部%となるように加え30分反応させた後に取り出し、比較対照用ポリエステル樹脂2´を得た。GPC法による比較対照用ポリエステル樹脂2´のMwは11,330であった。
【0047】
実施例1と同様にして着色度、透明度の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0048】
実施例2
エチレングリコール〔日曹油化工業(株)製〕418g、ネオペンチルグリコール〔三菱ガス化学(株)製〕705.9gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸2124g、p−tert−ブチル安息香酸〔扶桑化学(株)製〕240gを加え、チタンラクテート3g及びトリメチルホスファイト3gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で20時間反応させ取り出し、ポリエステル樹脂2を得た。GPC法によるポリエステル樹脂2のMwは6,900であった。
【0049】
実施例1と同様にして着色度、透明度の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0050】
比較例3
エチレングリコール418g、ネオペンチルグリコール705.9gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸2124g、p−tert−ブチル安息香酸240gを加え、ジブチルチンオキシド3gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で25時間反応させ取り出し、比較対照用ポリエステル樹脂3´を得た。GPC法による比較対照用ポリエステル樹脂3´のMwは7,400であった。
【0051】
実施例1と同様にして着色度、透明度の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0052】
比較例4
エチレングリコール418g、ネオペンチルグリコール705.9gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸2124g、p−tert−ブチル安息香酸240gを加え、チタンラクテート3gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で19.5時間反応させ取り出し、比較対照用ポリエステル樹脂4´を得た。GPC法による比較対照用ポリエステル樹脂4´のMwは6,900であった。
【0053】
実施例1と同様にして着色度、透明度の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0054】
実施例3
エチレングリコール83.6g、ネオペンチルグリコール141g、プロピレングリコール〔日曹油化工業(株)製〕820gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸2124g、p−tert−ブチル安息香酸240gを加え、チタンラクテート3g、トリメチルホスファイト3gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で20時間反応させ取り出し、ポリエステル樹脂3を得た。GPC法によるポリエステル樹脂3のMwは5,700であった。
【0055】
実施例1と同様にして着色度、透明度の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0056】
比較例5
エチレングリコール83.6g、ネオペンチルグリコール141g、プロピレングリコール820gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸2124g、p−tert−ブチル安息香酸240gを加え、ジブチルチンオキシド3部を投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で14.5時間反応させ取り出し、比較対照用ポリエステル樹脂5´を得た。GPC法による比較対照用ポリエステル樹脂5´のMwは5,400であった。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
本発明の実施例、比較例から明らかな通り、本発明の製造方法で得られたポリエステル樹脂は環境に悪影響を及ぼす錫形触媒を用いずとも着色を抑制した透明なポリエステル樹脂が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸を含有する多価カルボン酸とジオールを含有する多価アルコールとを水溶性チタン化合物およびリン化合物の存在下で重縮合することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記多価カルボン酸として、ポリエステル樹脂を合成する際の反応温度よりも高い融点を有する多価カルボン酸を用い、且つ、多価アルコールとして二級の水酸基を含有するジオールを用いる請求項1記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記多価カルボン酸としてテレフタル酸を含有する多価カルボン酸を用い、且つ、多価アルコールとしてプロピレングリコールおよび/またはビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物を含有する多価アルコールを用いる請求項1記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記水溶性チタン化合物としてチタンラクテートを用い、且つ、リン化合物としてトリメチルホスファイトを用いる請求項1記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記水溶性チタン化合物とリン化合物とを、合計の使用量がポリエステル樹脂を構成する原料の合計100重量部に対して0.008〜0.2重量部となるように用いる請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記水溶性チタン化合物とリン化合物とを、水溶性チタン化合物中のチタン原子の含有量(Ti)とリン化合物中のリン原子の含有量(P)との重量比〔(Ti)/(P)で0.1〜15となるように用いる請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2007−246789(P2007−246789A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74152(P2006−74152)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】