説明

ポリエステル樹脂の製造方法

【課題】固相重合時に環状三量体を速やかに低減することができ、加熱時の環状三量体の増加が少ないため金型汚れを発生させにくく飲料充填容器用途に適したポリエステル樹脂が得られるポリエステル樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの低次縮合物を液相重縮合し、次いで固相重縮合させてポリエステル樹脂を製造する方法において、下記(a)(b)(c)を満足するように液相重縮合を行い、かつ(f)を満足するように固相重縮合を行うことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
(a)0.1≦M1≦1.0
(b)0.01≦M2≦10
(c)0.1≦M2/M1
(f)IV≧0.70
(M1は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのGe原子のモル量、M2は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのアルカリ金属原子のモル量、IVは生成ポリエステル樹脂の固有粘度(dl/g))

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相重合時に環状三量体を速やかに低減することができ、また加熱時の環状三量体の増加が少ないため金型汚れを発生させにくく飲料充填容器用途に適したポリエステル樹脂を提供するポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレートは、機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリア性に優れており、ジュース、清涼飲料、炭酸飲料等の飲料充填容器の素材をはじめとしてフィルム、シート、繊維等の素材として好適に使用されている。
【0003】
このようなポリエステル樹脂は、通常テレフタル酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール等の脂肪族ジオールを原料として製造される。具体的には、まず、芳香族ジカルボン酸類と脂肪族ジオール類とのエステル化反応により低次縮合物(エステル低重合体)を形成し、次いで重縮合触媒の存在下にこの低次縮合物を脱グリコール反応(液相重縮合)させて、高分子量化している。また、飲料充填容器の素材として用いる場合には、通常、固相重縮合を行う。固相重縮合では、分子量をさらに高めるとともに、金型汚れの原因となる環状三量体含有量を低減させている。さらにこのポリエステル樹脂は、例えば射出成形機械等の成形機に供給して中空成形体用プリフォームを成形し、このプリフォームを所定形状の金型に挿入し延伸ブロー成形し、あるいはさらに熱処理(ヒートセット)して中空成形容器に成形される。
【0004】
このようなポリエステル樹脂の製造方法では、重縮合触媒として、従来アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物等が使用されている。
しかしながら、アンチモン化合物を触媒として製造したポリエチレンテレフタレートは、アンチモンに起因する析出物のため透明性がゲルマニウム化合物を触媒として製造したポリエチレンテレフタレートに劣っている。一方、ゲルマニウム化合物はかなり高価であるため、ポリエステル樹脂の製造コストが高くなるという問題があった。そこでポリエステル樹脂の製造コストを下げる方法が種々検討されている。
【0005】
ポリエステル樹脂の製造に要するコストを下げようとする場合、重合に使用するゲルマニウムの量を減らす方法がまず考えられる。その際低下する触媒活性を補うために固相重合時間を長くすることが必要である。しかしこの場合、ポリエステルの分子量は比較的容易に目標領域に到達させることができるが、ポリエステル中の環状三量体含有量は固相重合時間を延ばすことによってはさほど低減させることができない。すなわちポリエステル中の環状三量体含有量を目標領域にまで低減させるためにはさらなる固相重合時間の延長が必要となるが、そうするとポリエステルの分子量が高くなりすぎ、成形性その他の品質に悪影響を及ぼすこととなる。このようなことが起こる原因は、現行のゲルマニウム触媒では分子量増加速度と環状三量体低減速度のバランスがゲルマニウム触媒の使用量によって変化し、特にゲルマニウム使用量を低下させたときに環状三量体低減速度に不利になるためである。結果として、ポリエステル重合に使用するゲルマニウムの量を単純に減らすことによってポリエステル樹脂の製造に要するゲルマニウムのコストを下げようとすることは困難であった。
【0006】
また、使用するゲルマニウムの量を減らすことによる活性低下を補うために助触媒を添加する方法も考えられる。このような助触媒を添加する例としては、アルカリ土類金属を添加する例(特許文献1)、アルミニウム化合物およびフェノール系化合物を添加する例(特許文献2)、アルミニウム、ケイ素、鉄、ストロンチウム、ジルコニウム、スズ、タ
ングステン、鉛の化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物を添加する例(特許文献3)、リチウム、ナトリウム、カリウムの炭酸塩または重炭酸塩を添加する例(特許文献4)、マグネシウム、カルシウム、マンガン、亜鉛化合物を添加する例(特許文献5)、スルホン酸化合物を添加する例(特許文献6)、アルミニウム、バリウム、コバルト、マグネシウム、マンガン、ストロンチウム、亜鉛、リンの化合物(アルカリ金属のリン酸塩、アルカリ土類金属のリン酸塩)を添加する例(特許文献7)などがある。
【0007】
これらのうち、特許文献1にはアルカリ土類金属化合物の添加により固相重合時の環状三量体低減速度が促進されることが示されているが、アルカリ金属化合物またはチタン化合物を添加することは記載されていない。
【0008】
特許文献2にはアルミニウム化合物およびフェノール系化合物を添加することにより固相重合時の環状三量体低減速度が促進されることが示されているが、アルカリ金属化合物又はチタン化合物を添加することは記載されていない。
【0009】
特許文献3にはアルミニウム化合物の添加により製品ポリエステル樹脂の加熱時の環状三量体増加が抑制されることは示されているものの、固相重合時の環状三量体低減速度については言及がない。また、特許文献3にはアルカリ金属化合物またはチタン化合物を添加することは記載されているが、これらの化合物と固相重合時の環状三量体低減速度との関係については言及がない。
【0010】
特許文献4にはリチウム、ナトリウム、カリウムの炭酸塩または重炭酸塩の添加により液相重縮合速度が向上することは示されているものの、固相重縮合時の環状三量体低減速度については言及がない。また、特許文献4ではチタン化合物を添加することは記載されていない。
【0011】
特許文献5にはマンガン化合物の添加によりエステル化反応速度が向上することは示されているものの、固相重縮合時の環状三量体低減速度については言及がない。また、特許文献5にはアルカリ金属化合物またはチタン化合物を添加することは記載されていない。
【0012】
特許文献6にはスルホン酸化合物の添加により液相重縮合反応速度が向上することは示されているものの、固相重縮合時の環状三量体低減速度については言及がない。また、特許文献6にはアルカリ金属化合物またはチタン化合物を添加することは記載されていない。
【0013】
特許文献7にはアルミニウム、バリウム、コバルト、マグネシウム、マンガン、ストロンチウム、亜鉛、リンの化合物(アルカリ金属のリン酸塩、アルカリ土類金属のリン酸塩等)の添加により液相重縮合反応速度が向上することは示されているものの、固相重縮合時の環状三量体低減速度については言及がない。
【特許文献1】特開平9−296029号公報
【特許文献2】特開2003−268095号公報
【特許文献3】特開2001−226474号公報
【特許文献4】特公昭48−33036号公報
【特許文献5】特開昭55−115426号公報
【特許文献6】特開昭60−250028号公報
【特許文献7】特開2000−154242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたもので、固相重合時に環状三量体を速やか
に低減することができ、また加熱時の環状三量体の増加が少ないため金型汚れを発生させにくく、飲料充填容器用途に適したポリエステル樹脂を製造する製造方法を提供することを目的とする。特に、ゲルマニウム使用量が少ない場合であっても固相重合時に環状三量体を速やかに低減することができるポリエステル樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法の第1の形態は、ゲルマニウム化合物およびアルカリ金属化合物の存在下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体との低次縮合物を液相重縮合し、次いで固相重縮合させてポリエステル樹脂を製造する方法において、下記(a)(b)(c)を満足するように液相重縮合を行い、かつ(f)を満足するように固相重縮合を行うことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法である。
(a) 0.1 ≦ M1 ≦ 1.0(mol/ton)
(b) 0.01 ≦ M2 ≦ 10(mol/ton)
(c) 0.1 ≦ M2/M1
(f) IV ≧ 0.70(dl/g)
(M1は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのゲルマニウム原子のモル量を示し、M2は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのアルカリ金属原子のモル量を示し、IVは生成ポリエステル樹脂の固有粘度(dl/g)を示す。)
また上記の方法においてゲルマニウム化合物およびアルカリ金属化合物に加えてアルカリ土類金属、ホウ素、チタン、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アンチモンから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物を用い、さらに下記(d)を満足するように液相重縮合を行うことが好ましい。
(d) 0.01 ≦ M3 ≦ 10(mol/ton)
(M3は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのアルカリ土類金属、ホウ素、チタン、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アンチモンの総モル量を示す。)
また本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法の第2の形態は、ゲルマニウム化合物およびチタン化合物の存在下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体との低次縮合物を液相重縮合し、次いで固相重縮合させてポリエステル樹脂を製造する方法において、下記(a)(e)を満足するように液相重縮合を行い、かつ(f)を満足するように固相重縮合を行なうことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法である。
(a) 0.1 ≦ M1 ≦ 1.0(mol/ton)
(e) 0.01 ≦ M4 ≦ 10(mol/ton)
(f) IV ≧ 0.70(dl/g)
(M1は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのゲルマニウム原子のモル量を示し、M4は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのチタン原子のモル量を示し、IVは生成ポリエステル樹脂の固有粘度(dl/g)を示す。)
【発明の効果】
【0016】
本発明により、色調や耐熱性が良好で成形時の環状三量体の増加量が少ない、飲料充填容器用途に適したポリエステル樹脂および中空成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(ポリエステル樹脂)
本発明により得られるポリエステル樹脂はポリエチレンテレフタレートを主体とする。ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂は、ジカルボン酸単位とジオ
ール単位からなり、全ジカルボン酸単位中にテレフタル酸単位を好ましくは90mol%以上、より好ましくは95mol%以上含み、全ジオール単位中にエチレングリコール単位を好ましくは90mol%以上、より好ましくは95mol%以上含む。テレフタル酸単位とエチレングリコール単位を前記範囲で含有する限りにおいて、下記に示す共重合モノマー単位を含んでも構わない。
【0018】
本発明により得られるポリエステル樹脂を形成するジカルボン酸単位としては、テレフタル酸のほかに、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スルホンビス安息香酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−スルフィドビス安息香酸、4,4’−オキシビス安息香酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸類等から導かれる繰り返し単位が挙げられる。
【0019】
本発明により得られるポリエステル樹脂を形成するジオール単位としては、エチレングリコールのほかに、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ドデカメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の脂肪族ジオール類、イソソルバイド、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール類、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノール類、ハイドロキノン、レゾルシンなどの芳香族基を含むジオール類等から導かれる繰り返し単位が挙げられる。
【0020】
また本発明により得られるポリエステル樹脂は、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸等の多価カルボン酸類、グリセリン、ジグリセリン、(トリスヒドロキシメチル)メタン、1,1,1,−(トリスヒドロキシメチル)エタン、1,1,1,−(トリスヒドロキシメチル)プロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、サッカロース、1,3,5−トリスヒドロキシエトキシイソシアヌレート等の多価アルコール類、グリコール酸、乳酸、4−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、5−ヒドロキシ−n−吉草酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸類等から導かれる繰り返し単位を含んでいてもよい。
(ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明のポリエステルの製造方法では、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体の低次縮合物を液相重縮合し、次いで固相重縮合させてポリエステル樹脂を製造する。
【0021】
本発明に係るポリエステルの製造方法の第一の形態においては、ゲルマニウム化合物を下記(a)を満足するように添加することを必須とする。
(a) 0.1 ≦ M1 ≦ 1.0(mol/ton)
(M1は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのゲルマニウム原子のモル量を示す。)
M1は0.2〜0.7mol/tonであることがより好ましい。
【0022】
M1が前記範囲未満であるとポリエステル樹脂の生産性が低くなることがある。一方、前記範囲を超えると高価なゲルマニウムの使用量増加によるポリエステルの製造コストの
上昇を招くため好ましくない。
【0023】
本発明に係るポリエステルの製造方法の第一の形態においては、アルカリ金属化合物を下記(b)を満足するように添加することを必須とする。
(b) 0.01 ≦ M2 ≦ 10(mol/ton)
(M2は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのアルカリ金属原子のモル量を示す。)
M2は0.1〜6mol/tonであることがより好ましく、0.2〜3mol/tonであることがさらに好ましい。
【0024】
M2が前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂の固相重合時の環状三量体低減促進効果が十分に得られないことがあり、一方、前記範囲を超えると色調や透明性の悪化等、ポリエステルの品質の悪化を招くことがある。
【0025】
本発明に係るポリエステルの製造方法の第一の形態においては、ゲルマニウム化合物とアルカリ金属化合物を下記(c)を満足するように添加することを必須とする。
(c) 0.1 ≦ M2/M1
M2/M1は0.2〜10であることがより好ましい。
【0026】
M2/M1が前記範囲未満であると、ポリエステル樹脂の固相重合時の環状三量体低減促進効果が十分に得られないことがある。
本発明に係るポリエステルの製造方法の第一の形態においては、アルカリ土類金属、ホウ素、チタン、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アンチモンから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物を下記(d)を満足するように添加することが好ましい。
(d) 0.01 ≦ M3 ≦ 10(mol/ton)
(M3は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのアルカリ土類金属、ホウ素、チタン、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アンチモンの総モル量を示す。)
M3は0.02〜5mol/tonであることがより好ましい。
【0027】
M3が前記範囲内であると、ポリエステル樹脂の固相重合時の環状三量体低減速度がより大きくなり好ましい。一方、前記範囲を超えると色調や透明性の悪化等、ポリエステルの品質の悪化を招くことがある。
【0028】
本発明に係るポリエステルの製造方法の第一の形態においては、固有粘度が下記(f)を満足するように固相重縮合を行うことを必須とする。
(f) IV ≧ 0.70(dl/g)
(IVは生成ポリエステル樹脂の固有粘度(dl/g)を示す。)
IVは0.70〜1.5dl/gであることがより好ましく、0.74〜1.0dl/gであることがさらに好ましい。
【0029】
IVが前記範囲未満であると、上記(b)(c)あるいはさらに(d)を満足するように助触媒が添加されてもなお固相重縮合時に環状三量体が0.5重量%を超え、ポリエステル樹脂の成形時の金型汚れが起こりやすくなり、一方、IVが大きくなり過ぎるとポリエステル樹脂の成形性が悪化する。IVを前記範囲内とすることにより、ゲルマニウム使用量が少ない条件下でも、固相重縮合により環状三量体を0.5重量%以下まで低減することができる。
【0030】
本発明に係るポリエステルの製造方法の第二の形態においては、ゲルマニウム化合物を下記(a)を満足するように添加することを必須とする。
(a) 0.1 ≦ M1 ≦ 1.0(mol/ton)
(M1は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのゲルマニウム原子のモル量を示す。)
M1は0.2〜0.7mol/tonであることがより好ましい。
【0031】
M1が前記範囲未満であるとポリエステル樹脂の生産性が低くなることがある。一方、前記範囲を超えるとポリエステルの重合が過度に進行することがあり、また、高価なゲルマニウムの使用量増加によるポリエステルの製造コストの上昇を招くため好ましくない。
【0032】
本発明のポリエステルの製造方法の第二の形態においては、チタン化合物を下記(e)を満足するように添加することを必須とする。
(e) 0.01 ≦ M4 ≦ 10(mol/ton)
(M4は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのチタン原子のモル量を示す。)
M4は0.015〜1mol/tonであることが好ましく、0.02〜0.4mol/tonであることがより好ましく、0.02〜0.1mol/tonであることがさらに好ましい。
【0033】
M4が前記範囲未満であるとポリエステル樹脂の固相重合時の環状三量体低減促進効果が十分に得られないことがあり、一方、前記範囲を超えると色調や透明性の悪化等、ポリエステルの品質の悪化を招くことがある。特にチタンはポリエステルの黄色着色を生じさせやすいため、可能な限り使用量を少なくすることが好ましい。
【0034】
本発明に係るポリエステルの製造方法の第二の形態においては、固有粘度が下記(f)を満足するように固相重縮合を行うことを必須とする。
(f) IV ≧ 0.70(dl/g)
(IVは生成ポリエステル樹脂の固有粘度(dl/g)を示す。)
IVは0.70〜1.5dl/gであることがより好ましく、0.74〜1.0dl/gであることがさらに好ましい。
【0035】
IVが前記範囲未満であると、上記(e)を満足するようにチタン化合物が添加されてもなお固相重縮合時に環状三量体が0.5重量%を超え、ポリエステル樹脂の成形時の金型汚れが起こりやすくなり、一方、IVが大きくなり過ぎるとポリエステル樹脂の成形性が悪化する。IVを前記範囲内とすることにより、ゲルマニウム使用量が少ない条件下でも固相重縮合により環状三量体を0.5重量%以下まで低減することができる。
【0036】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、酢酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシドなどが挙げられる。これらはそのまま、あるいは水やエチレングリコール等に分散または溶解して用いることができる。
【0037】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるアルカリ金属化合物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物である。
【0038】
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物としては、これらの元素の単体、水素化物、酸化物、硫化物、水酸化物、有機金属化合物、アルコキシド、酢酸塩などの脂肪酸塩、炭酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、アミノ酸塩、硫酸塩、有機スルホン酸塩、リン酸塩、有機ホスホン酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩などが挙げられる。
【0039】
これらの化合物の中では、リチウム、ナトリウム、カリウムの化合物が好ましく、リチウム、ナトリウムの化合物がより好ましい。カリウムやセシウムも固相重合時の環状三量体低減促進効果を有するが、同時に固相重合活性の促進効果も大きく、結果として分子量増加速度と環状三量体低減速度のバランスが環状三量体低減速度に不利になる場合がある。
【0040】
具体的な化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが好ましい。
【0041】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるアルカリ土類金属化合物は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物である。
【0042】
ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物としては、これらの元素の単体、水素化物、酸化物、硫化物、水酸化物、有機金属化合物、アルコキシド、酢酸塩などの脂肪酸塩、炭酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、アミノ酸塩、硫酸塩、有機スルホン酸塩、リン酸塩、有機ホスホン酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩などが挙げられる。
【0043】
これらの化合物の中では、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル、酸化ホウ素、臭化ホウ素、フッ化ホウ素、フェニルボロン酸などが挙げられ、特にホウ酸、アルカリ金属のホウ酸塩などのホウ酸塩が好ましい。
【0044】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるチタン化合物としては、例えば、
四フッ化チタン、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、ヘキサフロロチタン酸などのハロゲン化チタン化合物;
α−チタン酸、β−チタン酸、チタン酸アンモニウム、チタン酸ナトリウム、ペルオキソチタン酸錯体、アナターゼなどのチタン酸化合物;
硫酸チタン、硫酸チタニル、硝酸チタン、リン酸チタン、ケイ酸チタンなどの無機酸チタン塩化合物;
テトラメチルチタン、テトラエチルチタン、テトラベンジルチタン、テトラフェニルチタン、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジクロライドなどのチタン有機金属化合物;
テトラフェノキシチタンなどのアリーロキシチタン化合物;
テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン、テトラキス(トリフェニルシロキシ)チタンなどのシロキシチタン化合物;
酢酸チタン、プロピオン酸チタン、乳酸チタン、クエン酸チタン、酒石酸チタン、シュウ酸チタニルカリウム、シュウ酸チタニルナトリウム、有機スルホン酸チタン、有機ホスホン酸チタンなどの有機酸チタン塩化合物;
テトラキス(ジエチルアミノ)チタン、チタンテトラピロリドなどのチタンアミド化合物;または下記に詳述されるアルコキシチタン化合物など、およびそれらの加水分解物が挙げられる。
【0045】
上記のチタン化合物の加水分解物を得る方法には、例えば欧州特許EP1013692号公報記載の方法を用いることができる。
なお、上記のアルコキシチタン化合物としては、例えば、
チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシドなどのチタンテトラアルコキシド類;
ポリ(ジブチルチタネート)、Ti7O4(OC2H5)20、Ti16O16(OC2H5)32などの縮合チタンアルコキシド類;
クロロチタントリイソプロポキシド、ジクロロチタンジエトキシドなどのハロゲン置換チタンアルコキシド類;
チタンアセテートトリイソプロポキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシドなどのカルボン酸基置換チタンアルコキシド類;
チタントリス(ジオクチルピロホスフェート)イソプロポキシド、チタン(モノエチルホスフェート)トリイソプロポキシドなどのホスホン酸基置換チタンアルコキシド類;
チタントリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキシドなどのスルホン酸基置換チタンアルコキシド類;
アンモニウムヘキサエトキシチタネート、ナトリウムヘキサエトキシチタネート、カリウムヘキサエトキシチタネート、ナトリウムヘキサ−n−プロポキシチタネート、マグネシウムナトリウムヘキサ−n−プロポキシチタネートなどのアルコキシチタネート類;
チタンビス(2,4−ペンタンジオナート)ジイソプロポキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシドなどのβ−ジケトネート置換チタンアルコキシド類;
チタンビス(アンモニウムラクテート)ジイソプロポキシドなどのα−ヒドロキシカルボン酸置換チタンアルコキシド類;および
チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、2−アミノエトキシチタントリイソプロポキシドなどのアミノアルコール置換チタンアルコキシド類などが挙げられる。
【0046】
これらの中では、四塩化チタン、α−チタン酸、酢酸チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、およびそれらの加水分解物が好ましい。
また国際特許公開WO2004/111105号パンフレットに記載の、チタンと脂肪族ジオールと3価以上の多価アルコールを含有するチタン含有溶液、および溶液中のチタン含有化合物の粒子直径が主として0.4nm以上5nm以下であるチタン含有溶液も好ましく用いることができる。
【0047】
これらのチタン化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのチタン化合物は、必要に応じて、溶媒、例えば水やアルコール類で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0048】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるアルミニウム化合物としては、例えば、
フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化水酸化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウム化合物;
炭酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムなどの無機酸アルミニウム塩化合物;
硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムリチウム、硫酸アルミニウムアンモニウムなどのアルミニウムミョウバン類;
水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウムなどアルカリ金属のアルミン酸塩、水素化リチウムアルミニウムなどのその他の無機アルミニウム化合物;
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルモキサンなどのアルミニウム有機金属化合物;
トリフェノキシアルミニウムなどのアリーロキシアルミニウム化合物;
トリス(トリメチルシロキシ)アルミニウム、トリス(トリフェニルシロキシ)アルミニウムなどのシロキシアルミニウム化合物;
酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、有機スルホン酸アルミニウム、有機ホスホン酸アルミニウムなどの有機酸アルミニウム塩化合物;
トリス(ジエチルアミノ)アルミニウム、アルミニウムトリピロリドなどのアルミニウムアミド化合物;
アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシ
ド、アルミニウムトリ−2−エチルヘキソキシドなどのアルミニウムアルコキシド類;
およびそれらの加水分解物が挙げられる。
【0049】
これらの中では、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミニウムミョウバン類、酢酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムトリ-sec-ブトキシド、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウ
ム、メチルアルモキサンなどが好ましい。
【0050】
これらのアルミニウム化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのアルミニウム化合物は、必要に応じて、溶媒、例えば水やアルコール類で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるガリウム化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、塩化ガリウム、硝酸ガリウム、酸化ガリウムなどが挙げられ、特に酸化ガリウムが好ましい。
【0052】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるマンガン化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸マンガンなどの脂肪酸マンガン塩、炭酸マンガン、塩化マンガン、マンガンのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸マンガンまたは炭酸マンガンが好ましい。
【0053】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるコバルト化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸コバルトなどの脂肪酸コバルト塩、炭酸コバルト、塩化コバルト、コバルトのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸コバルトまたは炭酸コバルトが好ましい。
【0054】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられる亜鉛化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸亜鉛などの脂肪酸亜鉛塩、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛のアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸亜鉛または炭酸亜鉛が好ましい。
【0055】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられ、特にテトラエトキシシランが好ましい。
【0056】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるジルコニウム化合物としては
、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムブトキシド、炭酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどが挙げられ、特にジルコニウムブトキシドが好ましい。
【0057】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるスズ化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸スズ、塩化スズ、酸化スズ、シュウ酸スズ、硫酸スズなどが挙げられ、特に酢酸スズが好ましい。
【0058】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるスカンジウム化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸スカンジウム、塩化スカンジウム、酸化スカンジウム、シュウ酸スカンジウム、硫酸スカンジウムなどが挙げられ、特に酢酸スカンジウムが好ましい。
【0059】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるイットリウム化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、酸化イットリウム、シュウ酸イットリウム、硫酸イットリウムなどが挙げられ、特に酢酸イットリウムが好ましい。
【0060】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるランタン化合物としては、酢酸塩などの脂肪酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩、酸化物などが挙げられるが、好ましい具体的化合物として、酢酸ランタン、塩化ランタン、酸化ランタン、シュウ酸ランタン、硫酸ランタンなどが挙げられ、特に酢酸ランタンが好ましい。
【0061】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるアンチモン化合物としては、酸化アンチモン、酢酸アンチモン、塩化アンチモンなどが挙げられる。ただし、アンチモンは重合反応系内で異物を生じる傾向があり、その結果ポリエステル樹脂の透明性等に悪影響を及ぼす傾向があるため、高い透明性が要求される用途に用いる場合には使用しないことが望ましい。
【0062】
これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法においては、必要に応じてその他の金属化合物を用いることができる。
【0063】
鉄化合物としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、乳酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、ナフテン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、酸化鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、シュウ酸三カリウム鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトナート、フマル酸鉄(III)、
四酸化三鉄などが挙げられ、特に鉄(III)アセチルアセトナートが好ましい。
【0064】
ニッケル化合物としては、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、ギ酸ニッケル、水酸化ニッケル、硫化ニッケル、ステアリン酸ニッケルなどが挙げられ、特に酢酸ニッケルが好ましい。
【0065】
銅化合物としては、酢酸銅、臭化銅、炭酸銅、塩化銅、クエン酸銅、2−エチルヘキサン銅、フッ化銅、ギ酸銅、グルコン酸銅、水酸化銅、銅メトキシド、ナフテン酸銅、硝酸
銅、酸化銅、フタル酸銅、硫化銅などが挙げられ、特に酢酸銅が好ましい。
【0066】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法においては、必要に応じてリン化合物を用いることができる。リン化合物を用いると、ポリエステル樹脂の色調などの品質が向上できることがある。
【0067】
上述した、必要に応じて用いられるリン化合物としては、例えば、
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ-n-ブチルホスフェート、ト
リオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;
トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類;
メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート等の酸性リン酸エステル類;
メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、3,5−ジ(t−ブチル)−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸などの有機ホスホン酸およびその塩またはエステル類;および
リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などのリン化合物およびそれらの塩などが挙げられる。
【0068】
これらの中では、トリ-n-ブチルホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチル
アシッドホスフェート、フェニルホスホン酸、リン酸、ピロリン酸などが好ましい。
これらのリン化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのリン化合物は、必要に応じて、溶媒、例えば水やアルコール類で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0069】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法においては、必要に応じて窒素化合物を用いることができる。
上述した、必要に応じて用いられる窒素化合物としては、例えば、アンモニア、ヒドロキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピロリジン、モルホリン、1,4,7−トリアザシクロノナン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、アミノエタノール、アニリン、ピリジンなどのアミン化合物、および、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム化合物などが挙げられる。
【0070】
これらの化合物の中では、トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどが好ましい。
これらの窒素化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの化合物は、必要に応じて、水、アルコール類などの溶媒で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0071】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合させることを特徴とする。芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とは、芳香族ジカルボン酸およびその塩、エステル、酸無水物または酸塩化物などを指す。脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とは、脂肪族ジオールおよびそのアルコキシド、エステルまたはエーテルなどを指す。以下、ポリエステル樹脂の製造方法の一例について説明する。
【0072】
(エステル化工程)
まず、ポリエステル樹脂を製造するに際して、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化させる

【0073】
具体的には、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを含むスラリーを調製する。
このようなスラリーには芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体1モルに対して、通常1.005〜1.5モル、好ましくは1.01〜1.2モルの脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体が含まれる。このスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給される。
【0074】
エステル化反応は好ましくは2個以上のエステル化反応器を直列に連結した装置を用いて脂肪族ジオールが還流する条件下で、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら行う。
【0075】
エステル化反応工程は通常多段で実施され、第1段目のエステル化反応は、通常、反応温度が240〜270℃、好ましくは245〜265℃であり、圧力が0.02〜0.3MPaG(0.2〜3kg/cm2 G)、好ましくは0.05〜0.2MPaG(0.5〜
2kg/cm2G)の条件下で行われ、また最終段目のエステル化反応は、通常、反応温度が250〜280℃、好ましくは255〜275℃であり、圧力が0〜0.15MPaG
(0〜1.5kg/cm2G)、好ましくは0〜0.13MPaG(0〜1.3kg/cm2G)の条件下で行われる。
【0076】
エステル化反応を2段階で実施する場合には、第1段目および第2段目のエステル化反応条件がそれぞれ上記の範囲であり、3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段の1段前までエステル化反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件であればよい。
【0077】
例えば、エステル化反応が3段階で実施される場合には、第2段目のエステル化反応の反応温度は通常245〜275℃、好ましくは250〜270℃であり、圧力は通常0〜0.2MPaG(0〜2kg/cm2 G)、好ましくは0.02〜0.15MPaG(0.
2〜1.5kg/cm2G)であればよい。
【0078】
これらの各段におけるエステル化反応率は、特に制限はされないが、各段階におけるエステル化反応率の上昇の度合いが滑らかに分配されることが好ましく、さらに最終段目のエステル化反応生成物においては通常90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。
【0079】
このエステル化工程により、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応物である低次縮合物(エステル低重合体)が得られ、この低次縮合物の数平均分子量が500〜5,000程度である。
【0080】
上記のようなエステル化工程で得られた低次縮合物は、次いで重縮合(液相重縮合)工程に供給される。
(液相重縮合工程)
液相重縮合工程においては、エステル化工程で得られた低次縮合物を、減圧下で、かつポリエステル樹脂の融点以上の温度(通常250〜280℃)に加熱することにより重縮合させる。この重縮合反応では、未反応の脂肪族ジオールを反応系外に留去させながら行われることが望ましい。
【0081】
重縮合反応は、1段階で行ってもよく、複数段階に分けて行ってもよい。例えば、重縮合反応が複数段階で行われる場合には、第1段目の重縮合反応は、反応温度が250〜2
90℃、好ましくは260〜280℃、圧力が0.07〜0.003MPaG(500〜20Torr)、好ましくは0.03〜0.004MPaG(200〜30Torr)の条
件下で行われ、最終段の重縮合反応は、反応温度が265〜300℃、好ましくは270〜295℃、圧力が1〜0.01kPaG(10〜0.1Torr)、好ましくは0.7
〜0.07kPaG(5〜0.5Torr)の条件下で行われる。
【0082】
重縮合反応を3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段目の1段前間での重縮合反応は、上記1段目の反応条件と最終段目の反応条件との間の条件で行われる。例えば、重縮合工程が3段階で行われる場合には、第2段目の重縮合反応は通常、反応温度が260〜295℃、好ましくは270〜285℃で、圧力が7〜0.3kPaG(50〜
2Torr)、好ましくは5〜0.7kPaG(40〜5Torr)の条件下で行われる

【0083】
触媒として、ゲルマニウム化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、ホウ素、チタン、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタンより選ばれる元素の化合物および、必要に応じてその他の化合物は、重縮合反応時に存在していればよい。このためこれらの化合物の添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程、液相重縮合工程等のいずれの工程で行ってもよい。また、触媒全量を一括添加しても、複数回に分けて添加してもよい。
【0084】
以上のような液相重縮合工程で得られる液相重縮合ポリエステル樹脂の固有粘度[IV]は0.40〜1.0dl/g、より好ましくは0.50〜0.90dl/g、さらに好ましくは0.50〜0.60dl/gであることが望ましい。なお、この液相重縮合工程の最終段目を除く各段階において達成される固有粘度は特に制限されないが、各段階における固有粘度の上昇の度合いが滑らかに分配されることが好ましい。
【0085】
この重縮合工程で得られる液相重縮合ポリエステル樹脂は、通常、溶融押し出し成形されて粒状(チップ状)に成形される。
この液相重縮合工程においては、得られる液相重縮合ポリエステル樹脂のCOOH基濃度を好ましくは60当量/トン以下、より好ましくは55〜10当量/トン、さらに好ましくは50〜15当量/トンとする。液相重縮合ポリエステル樹脂中のCOOH基濃度を上記範囲にすると、固相重合後のポリエステル樹脂の透明性が高くなる。
【0086】
液相重縮合工程において、例えば脂肪族ジオールと芳香族ジカルボン酸のモル比を0.98〜1.3、好ましくは1.0〜1.2とすることにより、液相重合温度を275〜295℃としたときに液相重縮合ポリエステル樹脂中のCOOH基濃度を60当量/トン以下とすることができる。
【0087】
(固相重縮合工程)
この液相重縮合工程で得られるポリエステル樹脂は、さらに固相重縮合工程に供される。
【0088】
固相重縮合工程に供給される粒状ポリエステル樹脂は、予め、固相重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。
このような予備結晶化工程は、粒状ポリエステル樹脂を乾燥状態で通常、120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度に1分から4時間加熱することによって行うことができる。またこのような予備結晶化は、粒状ポリエステル樹脂を水蒸気雰囲気、水蒸気含有不活性ガス雰囲気下、または水蒸気含有空気雰囲気下で、120〜200℃の温度で1分間以上加熱することによって行うこともできる。
【0089】
予備結晶化されたポリエステル樹脂は、結晶化度が20〜50%であることが望ましい。
なお、この予備結晶化処理によっては、いわゆるポリエステル樹脂の固相重縮合反応は進行せず、予備結晶化されたポリエステル樹脂の固有粘度は、液相重縮合後のポリエステル樹脂の固有粘度とほぼ同じであり、予備結晶化されたポリエステル樹脂の固有粘度と予備結晶化される前のポリエステル樹脂の固有粘度との差は、通常0.06dl/g以下である。
【0090】
固相重縮合工程は、少なくとも1段からなり、温度が190〜235℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が120〜0.001kPa、好ましくは98〜0.01kPaの条件下で、窒素、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。使用する不活性ガスとしては窒素ガスが望ましい。
【0091】
ポリエステル樹脂と不活性ガスの流量はバッチ式の場合、ポリエステル樹脂1kgに対し、通常0.1〜50Nm/hrであり、連続式の場合、ポリエステル樹脂1kg/hrに対し、通常0.01〜2Nm/hrである。
【0092】
固相重合の雰囲気として使用される不活性ガスは常に純粋な不活性ガスを使用してもよく、また固相重合工程から排出される不活性ガスを循環再使用してもよい。固相重合工程から排出された不活性ガスには、水、エチレングリコール、アセトアルデヒドなどの縮合物、分解物が含有されている。循環再使用の際には縮合物、分解物を含んだ不活性ガスでもよく、また縮合物、分解物を除去、精製した不活性ガスでもよい。
【0093】
このような固相重縮合工程を経て得られた粒状ポリエステル樹脂には、水処理を行ってもよい。この水処理は、粒状ポリエステル樹脂を40〜180℃の水に3分〜5時間、あるいは40〜180℃の水蒸気または水蒸気含有ガスに5分〜14日間、接触させることにより行われる。
【0094】
このようにして得られたポリエステル樹脂の固有粘度[IV]は、通常0.70dl/g以上、好ましくは0.75〜1.0dl/gであることが望ましい。
このようにして得られたポリエステル樹脂のCOOH基濃度は好ましくは10〜35当量/トン、より好ましくは12〜30当量/トンである。
【0095】
このようにして得られたポリエステル樹脂の密度は、好ましくは1.37g/cm以上、より好ましくは1.38g/cm以上、さらに好ましくは1.39g/cm以上である。
【0096】
上記のようなエステル化工程と重縮合工程とを含むポリエステル樹脂の製造工程はバッチ式、半連続式、連続式のいずれでも行うことができる。
このようなポリエステル樹脂は、特に色相に優れ、透明性に優れ、ボトル用途に用いることが特に好ましい。
【0097】
このようにして製造されたポリエステル樹脂は、従来から公知の添加剤、例えば、安定剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、核剤、染顔料等の着色剤などが添加されていてもよく、これらの添加剤はポリエステル樹脂製造時のいずれかの段階で添加してもよく、成形加工前、マスターバッチにより添加したものであってもよい。
【0098】
これに伴い、上記の添加剤は、粒状ポリエステル樹脂の粒子内部に一様の濃度で含有されていてもよいし、粒状ポリエステル樹脂の粒子表面近傍に濃縮されて含有されていてもよいし、また粒状ポリエステル樹脂の一部の粒子に他の粒子より高濃度で含有されていて
もよい。
【0099】
本発明によって得られるポリエステル樹脂は各種成形体の素材として使用することができ、例えば、溶融成形してボトルなどの中空成形体、シート、フィルム、繊維等に使用されるが、ボトルに使用することが好ましい。
(成形方法)
本発明によって得られるポリエステル樹脂からボトル、シート、フィルム、繊維などを成型する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
【0100】
例えば、ボトルを成形する場合には、上記ポリエステル樹脂を溶融状態でダイより押出してチューブ状パリソンを形成し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造する方法、上記ポリエステル樹脂から射出成形によりプリフォームを製造し、該プリフォームを延伸適性温度まで加熱し、次いでプリフォームを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造する方法などがある。
【0101】
本発明のポリエステル樹脂よりなるボトルは、特に色相に優れ、透明性に優れ、環状三量体およびアセトアルデヒド含有量が少なく、高品質である。
(実施例)
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0102】
元素分析
リンの定量:シート状に溶融成形したポリエチレンテレフタレートを用いて、蛍光X線分析により、ポリエチレンテレフタレートに含まれるリン元素を定量した。
【0103】
金属元素の定量:乾式灰化法で試料を分解後、酸に溶解し、ICP発光分析でポリエチレンテレフタレートに含まれる金属元素を定量した。
固有粘度(IV)
ポリエチレンテレフタレート0.5gをフェノール/テトラクロロエタン(1/1重量比)混合溶媒100mlに加熱溶解した後、冷却して25℃で測定された溶液粘度から固有粘度を算出した。
【0104】
環状3量体オリゴマー(CT)の定量
ポリエチレンテレフタレート0.1gをオルトクロロフェノールに溶解した後、テトラヒドロフランで再析出して濾過して線状ポリエステルを除いた後、濾液を液体クロマトグラフィー(島津製作所製LC7A)に供給してポリエチレンテレフタレートに含まれる環状3量体オリゴマーを定量した。
【0105】
[実施例1]
以下のようにしてテレフタル酸とエチレングリコールとの低次縮合物を製造した。
高純度テレフタル酸 12.81kg、エチレングリコール 4.93kg、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド20%水溶液 6.88gを圧力1.7kg/cm2G、260℃の窒素雰囲気下にて6時間、撹拌しながら反応させ、固有粘度0.28dl/gの低次縮合物を得た。この反応により生成した水は常時系外に留去した。
【0106】
上記で得られた低次縮合物のうち317gを抜き出し、500mlのガラス製重縮合フラスコに入れた。次いで二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液と水酸化リチウムのエチレングリコール溶液を加えた。これを1時間260℃で溶融混合した後、系内を1時間かけて1torrまで減圧すると同時に温度を285℃まで昇温した。さらにエチレ
ングリコールを系外に留去しながら、固有粘度が0.54dl/gになるまで重合した。
【0107】
反応終了後、反応物を反応器外にストランド状に抜き出し、水中に浸漬、冷却した後、ストランドカッターによりチップ状に裁断した。
このように液相重合して得られたポリエチレンテレフタレートはさらに、窒素雰囲気下170℃、2時間乾燥するとともに結晶化を行った後、窒素雰囲気下215℃で16時間固相重合を行なった。結果を表1に示した。
【0108】
[実施例2]
実施例1において、水酸化リチウムのエチレングリコール溶液のかわりに水酸化ナトリウムのエチレングリコール溶液を用いた以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1に示した。
【0109】
[実施例3]
実施例1において、水酸化リチウムのエチレングリコール溶液のかわりに酢酸ナトリウム(NaOAc)のエチレングリコール溶液を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を
表1に示した。
【0110】
[実施例4]
実施例1において、水酸化リチウムのエチレングリコール溶液のかわりに塩化ナトリウムのエチレングリコール溶液を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0111】
[実施例5]
実施例1において、水酸化リチウムのエチレングリコール溶液のかわりに硫酸ナトリウムのエチレングリコール溶液を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0112】
[実施例6]
実施例1において、水酸化リチウムのエチレングリコール溶液のかわりに水酸化カリウムのエチレングリコール溶液を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0113】
[実施例7]
実施例1において、水酸化リチウムのエチレングリコール溶液のかわりに水酸化セシウムのエチレングリコール溶液を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0114】
(参考例1)
実施例6において、二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液と水酸化カリウムのエチレングリコール溶液の添加量を変えた以外は実施例6と同様に行った。結果を表1に示した。
【0115】
(参考例2)
参考例1において、水酸化カリウムのエチレングリコール溶液を添加しないこと以外は参考例1と同様に行った。結果を表1に示した。参考例1と参考例2を比較すると、ゲルマニウム含量が1mol/tonを超えるとアルカリ金属による環状三量体低減の効果が表れにくいことがわかる。
【0116】
(比較例1)
実施例1において、水酸化リチウムのエチレングリコール溶液を添加しないこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。実施例1ないし実施例7と比較例1を比較すると、アルカリ金属化合物を添加しない比較例1は環状三量体含量が高くなることがわかる。
【0117】
[実施例8]
以下のようにしてテレフタル酸とエチレングリコールとの低次縮合物を製造した。
高純度テレフタル酸 12.81kg、エチレングリコール 4.93kg、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド20%水溶液 6.88gを圧力1.7kg/cm2G、260℃の窒素雰囲気下にて6時間、撹拌しながら反応させ、固有粘度0.28dl/gの低次縮合物を得た。この反応により生成した水は常時系外に留去した。
【0118】
上記で得られた低次縮合物のうち317gを抜き出し、500mlのガラス製重縮合フラスコに入れた。次いで二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液と水酸化カリウムのエチレングリコール溶液と酢酸マグネシウム四水和物(Mg(OAc)2)のエチレングリコール溶液を加えた。これを1時間260℃で溶融混合した後、系内を1時間かけて1torrまで減圧すると同時に温度を285℃まで昇温した。さらにエチレングリコールを系外に留去しながら、固有粘度が0.54dl/gになるまで重合した。
【0119】
反応終了後、反応物を反応器外にストランド状に抜き出し、水中に浸漬、冷却した後、ストランドカッターによりチップ状に裁断した。
このように液相重合して得られたポリエチレンテレフタレートはさらに、窒素雰囲気下170℃、2時間乾燥するとともに結晶化を行った後、窒素雰囲気下215℃で16時間固相重合を行った。結果を表2に示した。
【0120】
[実施例9]
実施例8において、酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液のかわりに酢酸カルシウム一水和物(Ca(OAc)2)のエチレングリコール溶液を用いた以外は実施例8と同様に行った。結果を表2に示した。
【0121】
[実施例10]
実施例8において、酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液のかわりに酢酸亜鉛二水和物(Zn(OAc)2)のエチレングリコール溶液を用いた以外は実施例8と同様に行った。結果を表2に示した。
【0122】
[実施例11]
実施例8において、酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液のかわりにテトラホウ酸カリウム四水和物(K2B4O7)のエチレングリコール溶液を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示した。
【0123】
[実施例12]
実施例8において、水酸化カリウムのエチレングリコール溶液の添加量を変え、また酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液のかわりにアルミニウムアセチルアセトナート(Al(acac)3)を用いた以外は実施例8と同様に行った。結果を表2に示した。
【0124】
[実施例13]
実施例8において、酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液を添加しない以外は実施例8と同様に行った。結果を表2に示した。
【0125】
(比較例2)
実施例8において、水酸化カリウムのエチレングリコール溶液を添加しない以外は実施例8と同様に行った。結果を表2に示した。
【0126】
(比較例3)
実施例12において、水酸化カリウムのエチレングリコール溶液を添加しない以外は実施例12と同様に行った。結果を表2に示した。
【0127】
[実施例14]
以下のようにしてテレフタル酸とエチレングリコールとの低次縮合物を製造した。
高純度テレフタル酸 12.81kg、エチレングリコール 4.93kg、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド20%水溶液 6.88gを圧力1.7kg/cm2G、260℃の窒素雰囲気下にて6時間、撹拌しながら反応させ、固有粘度0.28dl/gの低次縮合物を得た。この反応により生成した水は常時系外に留去した。
【0128】
上記で得られた低次縮合物のうち317gを抜き出し、500mlのガラス製重縮合フラスコに入れた。次いで二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液と水酸化リチウムのエチレングリコール溶液と酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液を加えた。これを1時間260℃で溶融混合した後、系内を1時間かけて1torrまで減圧すると同時に温度を285℃まで昇温した。さらにエチレングリコールを系外に留去しながら、固有粘度が0.54dl/gになるまで重合した。
【0129】
反応終了後、反応物を反応器外にストランド状に抜き出し、水中に浸漬、冷却した後、ストランドカッターによりチップ状に裁断した。
このように液相重合して得られたポリエチレンテレフタレートはさらに、窒素雰囲気下170℃、2時間乾燥するとともに結晶化を行った後、窒素雰囲気下215℃で16時間固相重合を行った。結果を表3に示した。
【0130】
[実施例15]
実施例14において、酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液のかわりに酢酸カルシウム一水和物のエチレングリコール溶液を用いた以外は実施例14と同様に行った。結果を表3に示した。
【0131】
[実施例16]
実施例14において、酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液のかわりに酢酸亜鉛二水和物のエチレングリコール溶液を用いた以外は実施例14と同様に行った。結果を表3に示した。
【0132】
[実施例17]
実施例14において、酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液のかわりにアルミニウムアセチルアセトナートを用いた以外は実施例14と同様に行った。結果を表3に示した。
【0133】
[実施例18]
実施例14において、酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液のかわりにチタンテトライソプロポキシド(Ti(OPr)4)を用いた以外は実施例14と同様に行った。結果を表3に示した。
【0134】
[実施例19]
実施例14において、酢酸マグネシウム四水和物のエチレングリコール溶液を添加しない以外は実施例14と同様に行った。結果を表3に示した。
【0135】
[実施例20]
実施例18において、水酸化リチウムのエチレングリコール溶液を添加しない以外は実施例18と同様に行った。結果を表3に示した。
【0136】
[実施例21]
以下のようにしてテレフタル酸とエチレングリコールとの低次縮合物を製造した。
高純度テレフタル酸 12.81kg、エチレングリコール 4.93kg、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド20%水溶液 6.88gを圧力1.7kg/cm2G、260℃の窒素雰囲気下にて6時間、撹拌しながら反応させ、固有粘度0.28dl/gの低次縮合物を得た。この反応により生成した水は常時系外に留去した。
【0137】
上記で得られた低次縮合物のうち317gを抜き出し、500mlのガラス製重縮合フラスコに入れた。次いで二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液と水酸化リチウムのエチレングリコール溶液とアルミニウムアセチルアセトナートを加えた。これを1時間260℃で溶融混合した後、系内を1時間かけて1torrまで減圧すると同時に温度を285℃まで昇温した。さらにエチレングリコールを系外に留去しながら、固有粘度が0.54dl/gになるまで重合した。
【0138】
反応終了後、反応物を反応器外にストランド状に抜き出し、水中に浸漬、冷却した後、ストランドカッターによりチップ状に裁断した。
このように液相重合して得られたポリエチレンテレフタレートはさらに、窒素雰囲気下170℃、2時間乾燥するとともに結晶化を行った後、窒素雰囲気下215℃で16時間固相重合を行なった。結果を表4に示した。
【0139】
[実施例22]
実施例21において、アルミニウムアセチルアセトナートの添加量を変えた以外は実施例21と同様に行った。結果を表4に示した。
【0140】
[実施例23]
実施例21において、アルミニウムアセチルアセトナートの添加量を変えた以外は実施例21と同様に行った。結果を表4に示した。
【0141】
[実施例24]
実施例21において、アルミニウムアセチルアセトナートの添加量を変えた以外は実施例21と同様に行った。結果を表4に示した。
【0142】
[実施例25]
実施例24において、低次縮合物にさらにメチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液を添加した以外は実施例24と同様に行った。結果を表4に示した。
【0143】
[実施例26]
エチレングリコール68.61gとグリセリン4.00gの混合溶媒に水酸化リチウム一水和物0.51gを溶解し、これに0.5mmol/mlのトリエチルアルミニウムデカン溶液18.8mlを、攪拌下滴下した。滴下終了後1時間攪拌を継続した後、一昼夜静置し上層のデカンを取り除き、透明なリチウム/アルミニウムのエチレングリコール/グリセリン溶液(これを「溶液A」とする。)を得た。
【0144】
実施例25において、水酸化リチウムのエチレングリコール溶液とアルミニウムアセチルアセトナートのエチレングリコール溶液のかわりに上記の溶液Aを用い、またメチルア
シッドホスフェートのエチレングリコール溶液の添加量を変えた以外は実施例25と同様に行なった。結果を表4に示した。
【0145】
[実施例27]
エチレングリコール68.86gとグリセリン4.00gの混合溶媒に水酸化リチウム一水和物0.26gを溶解し、これに0.5mmol/mlのトリエチルアルミニウムデカン溶液18.8mlを、攪拌下滴下した。滴下終了後1時間攪拌を継続した後、一昼夜静置し上層のデカンを取り除き、透明なリチウム/アルミニウムのエチレングリコール/グリセリン溶液(これを「溶液B」とする。)を得た。
【0146】
実施例26において、二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液とメチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液の添加量を変え、また溶液Aのかわりに上記の溶液Bを用い添加量を変えたこと以外は実施例26と同様に行なった。結果を表4に示した。
【0147】
[実施例28]
実施例26において、二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液とメチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液の添加量を変え、また溶液Aの添加量を変えた以外は実施例26と同様に行った。結果を表4に示した。
【0148】
(比較例4)
実施例27において、溶液Bおよびメチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液を添加しない以外は実施例27と同様に行った。結果を表4に示した。
【0149】
[実施例29]
以下のようにしてテレフタル酸とエチレングリコールとの低次縮合物を製造した。
高純度テレフタル酸 12.81kg、エチレングリコール 4.93kg、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド20%水溶液 6.88gを圧力1.7kg/cm2G、260℃の窒素雰囲気下にて6時間、撹拌しながら反応させ、固有粘度0.28dl/gの低次縮合物を得た。この反応により生成した水は常時系外に留去した。
【0150】
上記で得られた低次縮合物のうち317gを抜き出し、500mlのガラス製重縮合フラスコに入れた。次いで二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液とチタンテトライソプロポキシドを加えた。これを1時間260℃で溶融混合した後、系内を1時間かけて1torrまで減圧すると同時に温度を285℃まで昇温した。さらにエチレングリコールを系外に留去しながら、固有粘度が0.54dl/gになるまで重合した。
【0151】
反応終了後、反応物を反応器外にストランド状に抜き出し、水中に浸漬、冷却した後、ストランドカッターによりチップ状に裁断した。
このように液相重合して得られたポリエチレンテレフタレートはさらに、窒素雰囲気下170℃、2時間乾燥するとともに結晶化を行った後、窒素雰囲気下215℃で16時間固相重合を行った。結果を表5に示した。
【0152】
[実施例30]
実施例29において、チタンテトライソプロポキシドの添加量を変えた以外は実施例29と同様に行った。結果を表5に示した。
【0153】
[実施例31]
実施例29において、チタンテトライソプロポキシドの添加量を変えた以外は実施例29と同様に行った。結果を表5に示した。
【0154】
【表1】

【0155】
【表2】

【0156】
【表3】

【0157】
【表4】

【0158】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマニウム化合物およびアルカリ金属化合物の存在下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体との低次縮合物を液相重縮合し、次いで固相重縮合させてポリエステル樹脂を製造する方法において、下記(a)(b)(c)を満足するように液相重縮合を行い、かつ(f)を満足するように固相重縮合を行うことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
(a) 0.1 ≦ M1 ≦ 1.0(mol/ton)
(b) 0.01 ≦ M2 ≦ 10(mol/ton)
(c) 0.1 ≦ M2/M1
(f) IV ≧ 0.70(dl/g)
(M1は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのゲルマニウム原子のモル量を示し、M2は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのアルカリ金属原子のモル量を示し、IVは生成ポリエステル樹脂の固有粘度(dl/g)を示す。)
【請求項2】
ゲルマニウム化合物およびアルカリ金属化合物に加えて、アルカリ土類金属、ホウ素、チタン、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アンチモンから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物を用い、さらに下記(d)を満足するように液相重縮合を行うことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
(d) 0.01 ≦ M3 ≦ 10(mol/ton)
(M3は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのアルカリ土類金属、ホウ素、チタン、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アンチモンの総モル量を示す。)
【請求項3】
ゲルマニウム化合物およびチタン化合物の存在下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体との低次縮合物を液相重縮合し、次いで固相重縮合させてポリエステル樹脂を製造する方法において、下記(a)(e)を満足するように液相重縮合を行い、かつ(f)を満足するように固相重縮合を行うことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
(a) 0.1 ≦ M1 ≦ 1.0(mol/ton)
(e) 0.01 ≦ M4 ≦ 10(mol/ton)
(f) IV ≧ 0.70(dl/g)
(M1は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのゲルマニウム原子のモル量を示し、M4は生成ポリエステル樹脂1トンあたりのチタン原子のモル量を示し、IVは生成ポリエステル樹脂の固有粘度(dl/g)を示す。)
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の方法によって製造されるポリエステル樹脂からなる中空成形体。

【公開番号】特開2009−1751(P2009−1751A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166337(P2007−166337)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】