説明

ポリエステル樹脂成形体及びその製造方法

【課題】透明性及び結晶性を高い次元で実現できるポリエステル樹脂成形体、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂100質量部に対し、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤0.001〜1質量部を配合したポリエステル樹脂組成物を成形後、1秒〜2分間アニール処理してなることを特徴とするポリエステル樹脂成形体である。また、ポリエステル樹脂100質量部に対し、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤0.001〜1質量部を配合したポリエステル樹脂組成物を250〜300℃で成形した後、100℃〜200℃の範囲内の温度で、1秒〜2分間アニール処理することを特徴とするポリエステル樹脂成形体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂成形体及びその製造方法に関し、詳しくは、透明性と結晶化に優れたポリエステル樹脂成形体とその製造方法に関する。
【0002】
ポリエチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂は、透明性、耐熱性、耐薬品性、力学的特性、電気的特性、ガスバリヤー性、コスト/性能において優れており、特に主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート(以下、PET樹脂と記す場合がある)は、炭酸飲料、ジュース、ミネラルウォーター等のボトル容器、化粧品、医薬品容器、洗剤・シャンプー容器、電子写真用トナー、食品、医薬品等の包装材料等に、広く採用されている。二軸延伸により得られた二軸延伸ブローボトルは、耐熱性、透明性、光沢に優れ、ガスバリヤー性が比較的良好である。しかし、PET樹脂製の二軸延伸ブローボトルは、酒やビールなどのアルコール類、サイダーやコーラなどの炭酸飲料、果実飲料等のジュース類の飲料容器、医薬品などの容器としては、ガスバリヤー性が未だ十分でなく、内容物の保護の観点からガスバリヤー性を改善することが求められている。
【0003】
PET樹脂製ボトル容器においては、高温で殺菌した飲料を熱充填したり、飲料を充填後高温で殺菌する場合があり、PET樹脂製ボトル容器の耐熱性が乏しいと、これらの熱処理時に、PET樹脂製ボトル容器の収縮、変形が起こる場合がある。
【0004】
PET樹脂製ボトル容器の耐熱性を向上させる方法としては、延伸したボトル容器を熱固定させる方法や、ボトル口栓部を熱処理して結晶化度を高める方法が提案されている。例えば、特許文献1では、延伸ブロー金型の温度を高温にして熱処理する方法が提案されているが、この方法により同一金型で多数のPET樹脂製ボトルを成形し続けると、金型に樹脂が付着して次第に汚れ、成形品のPET樹脂製ボトルを白色化させて、商品価値を損なう問題がある。
【0005】
また、特許文献2、3では、プリフォーム又は成形されたボトルの口栓部を熱処理して結晶化を進めて、耐熱性を向上させる方法が提案されているが、この方法は、結晶化に要する処理時間・温度が生産性に大きく影響する。特にPET樹脂は、結晶性樹脂でありながら、結晶化速度が極めて遅いため、成形条件の幅が極めて狭く、かつ加工サイクルの向上が困難であった。
【0006】
また、包装材料においては、内容物の酸化や変質を抑制して、味、鮮度、効能等を維持するために、使用する包装材料には酸素や水蒸気の透過に対するガスバリヤー性が要求される。特に、食品用途においては、内容物の視認性確保や種々雑多な物の包装性確保のために、包装材料には、上記ガスバリヤー性に加えて、透明性、耐熱性、柔軟性等の諸特性が要求されている。
【0007】
また、有機EL、有機薄膜太陽電池、有機トランジスタ、フレキシブル液晶等の新規分野においても、高いガスバリヤー性、透明性、耐熱性、柔軟性等の諸特性を有するシートの開発が求められている。
【0008】
結晶化速度に優れたポリエステル樹脂組成物を提供することを目的として、本発明者等は、ポリエステル樹脂に対し、結晶核剤としてスルホンアミド化合物の金属塩を添加したポリエステル樹脂組成物を提案している(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭59−6216号公報
【特許文献2】特開昭55−79237号公報
【特許文献3】特開昭58−110221号公報
【特許文献4】特開2007−327028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ポリエステル樹脂に対して、特許文献4に記載の結晶核剤として提案されているスルホンアミド化合物の金属塩を添加して成形加工すると、成形サイクルは短縮されるものの、得られるポリエステル樹脂成形体の結晶化が不十分な場合があった。
また、結晶化を進行させるために、成形品に熱処理(アニール処理)を実施すると、結晶性が改善されるものの、成形品が白化して透明性が失われ、商品価値を損なうことがあるという問題があった。
【0011】
そこで本発明の目的は、上記従来の問題を解決し、透明性及び結晶性を高い次元で実現できるポリエステル樹脂成形体、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤をポリエスエル樹脂に配合し、成形後、特定のアニール処理を行うことによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明のポリエステル樹脂成形体は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤0.001〜1質量部を配合したポリエステル樹脂組成物を成形後、1秒〜2分間アニール処理してなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂成形体は、前記アニール処理が、100℃〜200℃の範囲内の温度で行われるものであることが好ましい。
【0015】
また、本発明のポリエステル樹脂成形体は、前記アニール処理が、120℃〜180℃の範囲内の温度で行われるものであることが好ましい。
【0016】
また、本発明のポリエステル樹脂成形体は、前記ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0017】
また、本発明のポリエステル樹脂成形体は、前記ポリエステル樹脂用結晶核剤が、ベンゼンスルホンアミド金属塩、トルエン−4−スルホンアミド金属塩、N−フェニル−ベンゼンスルホンアミド金属塩、N−フェニル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド金属塩、および、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド金属塩からなる群から選択されるものであることが好ましい。
【0018】
また、本発明のポリエステル樹脂成形体は、前記ポリエステル樹脂用結晶核剤が、ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩、トルエン−4−スルホンアミドナトリウム塩、N−フェニル−ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩、N−フェニル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩、および、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシドナトリウム塩からなる群から選択されるものであることが好ましい。
【0019】
また、本発明のポリエステル樹脂成形体は、前記成形が、シート形状への延伸成形であることが好ましい。
【0020】
また、本発明のポリエステル樹脂成形体は、前記成形が、ボトル形状への延伸成形であることが好ましい。
【0021】
また、本発明のポリエステル樹脂成形体は、顕微ラマンにおける1730cm−1近傍の極大ピークの半値幅が、18cm−1以下であることが好ましい。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂成形体は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤0.001〜1質量部を含んでなるポリエステル樹脂成形体を延伸したものであって、顕微ラマンにおける1730cm−1近傍の極大ピークの半値幅が、18cm−1以下であることを特徴とするものである。
【0023】
本発明のポリエステル樹脂成形体は、炭酸ガス透過係数が、1.0×10−17〜5.3×10−17mol・m/m・s・Paであることが好ましい。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂成形体の製造方法は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤0.001〜1質量部を配合したポリエステル樹脂組成物を250〜300℃で成形した後、100℃〜200℃の範囲内の温度で、1秒〜2分間アニール処理することを特徴とするものである。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂成形体の製造方法は、前記アニール処理を、120℃〜180℃の範囲内の温度で、1秒〜2分間行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、結晶核剤として、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用核剤を配合して成形後、特定のアニール処理を行うことにより、透明性と結晶性の要望を満たすポリエステル樹脂成形体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のポリエステル樹脂成形体、および、その製造方法について、以下に詳述する。
本発明に係るスルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤とは、スルホンアミド骨格又はスルホンイミド骨格を有する化合物の金属塩を表す。スルホンアミド骨格又はスルホンイミド骨格を有する化合物としては、例えば、スルホンアミド、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、トルエン−4−スルホンアミド、4−クロロベンゼンスルホンアミド、4−アミノベンゼンスルホンアミド、N−ブチル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−フェニルベンゼンスルホンアミド、N−フェニル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−ピリジン−2−イルベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−(5−メチル−チアゾール−2−イル)−ベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−チアゾール−2−イル−ベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−(5−メチル−イソキサゾール−3−イル)−ベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−(2,6−ジメトキシ−ピリミジン−4−イル)−ベンゼンスルホンアミド、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド、4−アミノ−6−クロロ−ベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジアミド、6−エトキシ−ベンゾチアゾール−2−スルホン酸アミド、5−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸アミド、4−ナトリウムオキシ−ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ベンゼンスルホニルアミノ−フェニル)−ベンゼンスルホンアミド等が挙げられ、本発明においては、ベンゼンスルホンアミド、トルエン−4−スルホンアミド、N−フェニル−ベンゼンスルホンアミド、N−フェニル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド等の金属塩であるものが好ましく用いられる。
【0028】
上記スルホンアミド化合物又はスルホンイミド化合物の金属塩における金属塩としては、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウム又はバリウムから選択される金属が挙げられ、それらの中でも、カリウム、リチウム、ナトリウム、カルシウムは、ポリエステル樹脂の結晶化促進効果に優れているので好ましく、ナトリウムが、特に好ましい。
【0029】
本発明において、ポリエステル樹脂は、通常の熱可塑性ポリエステル樹脂が用いられ、特に制限されるべきものではない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリエステルの構成成分と他の酸成分及び/又はグリコール成分(例えばイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタール酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ダイマー酸のような酸成分、ヘキサメチレングリコール、ビスフェノールA、ネオペンチルグリコールアルキレンオキシド付加体のようなグリコール成分)を共重合したポリエーテルエステル樹脂;ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸樹脂、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2−オキセタノン)等の分解性脂肪族ポリエステル;芳香族ポリエステル/ポリエーテルブロック共重合体、芳香族ポリエステル/ポリラクトンブロック共重合体、ポリアリレートなどの広義のポリエステル樹脂も使用される。なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリ乳酸からなる群から選択される一種以上のポリエステル樹脂が好ましく使用され、特に、ポリエチレンテレフタレートは、透明性に優れ、安価であるためより好ましい。
【0030】
また、上記ポリエステル樹脂は、単独、又は複数樹脂のブレンド(例えば、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンドなど)、もしくはそれらの共重合体(例えば、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合体など)であってもよいが、特に、融点が200℃〜300℃のものが耐熱性を有する特性を示すため、好ましく使用される。
【0031】
ポリエステル樹脂100質量部に対する、前記ポリエステル樹脂用結晶核剤の添加量は、0.001〜1質量部であり、好ましくは、0.005〜0.1質量部、より好ましくは、0.005〜0.05質量部である。0.001質量部より少ないと、結晶核剤としての作用効果が殆ど得られず、1質量部より多いと、ポリエステル樹脂中への分散性が低下し、ポリエステル樹脂成形体の外観に悪影響を与える場合がある。
【0032】
スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤を配合したポリエステル樹脂には、必要に応じてさらに通常の他の添加剤を配合することができる。他の添加剤の配合方法としては、ポリエステル樹脂に他の添加剤を目的に応じた配合量で混合して、押出機などの成形加工機で溶融混錬して造粒、成形する方法が挙げられ、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤と一緒に他の添加剤を配合してもよく、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤を配合したポリエステル樹脂の成形後に、他の添加剤を添加して、成形加工機を用いて成形してもよい。
他の添加剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物、重金属不活性化剤、本発明に用いる結晶核剤以外のその他の結晶核剤、難燃剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト、充填剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、可塑剤などがあげられる。
【0033】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
上記フェノール系酸化防止剤の使用量は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。
【0034】
上記リン系酸化防止剤とは、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
上記リン系酸化防止剤の使用量は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。
【0035】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩、又は金属キレート、特にニッケル、クロムの塩、又はキレート類等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤の使用量は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.001〜5質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0036】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、ビス{4−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジル}デカンジオナート、ビス{4−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ウンデシルオキシ)ピペリジル)カーボナート、TINUVIN NOR 371等が挙げられる。
上記ヒンダードアミン系光安定剤の使用量は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.001〜5質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0037】
上記その他の結晶核剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、亜鉛粉末、アルミニウム粉末等の単体物;酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ、ヘマタイト、マグネタイト等の金属酸化物;タルク、アスベスト、カオリン、モンモリロナイト、クレー、ピロフィライト等の粘土・鉱石類、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;リン酸カルシウム等の無機リン酸塩;芳香族オキシスルホン酸の金属塩、有機リン化合物のマグネシウム塩、有機リン化合物の亜鉛塩等の有機リン酸塩;珪酸カルシウム塩、珪酸マグネシウム塩等の無機珪酸塩;モノカルボン酸ナトリウム塩、モノカルボン酸リチウム塩、モノカルボン酸バリウム塩、モノカルボン酸マグネシウム塩、モノカルボン酸カルシウム塩、ステアリン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、4−第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム及び2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等のカルボン酸金属塩;ナトリウムビス(4−第三ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート及びリチウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル金属塩;ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、及びビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール等の多価アルコール誘導体;N,N’,N”−トリス[2−メチルシクロヘキシル]―1,2,3−プロパントリカルボキサミド、N,N’,N”−トリシクロヘキシル−1,3,5−ベンゼントリカルボキサミド、N,N’−ジシクロヘキシル−ナフタレンジカルボキサミド、1,3,5−トリス(2,2−ジメチルプロピオニルアミノ)ベンゼン等のアミド化合物;ポリカプロラクトン、ポリグリコール、ポリオレフィン、ナイロン6、ポリテトラフルオロエチレン粉末、高融点PET、ポリエステルオリゴマーのアルカリ金属塩等の高分子物質等が挙げられる。
上記その他の結晶核剤の使用量は、本発明で用いられる結晶核剤との合計量が、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.001〜1質量部となるように用いられる。
【0038】
上記難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物及び赤リン等のリン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、及び、臭素化スチレン等の臭素系難燃剤等が挙げられる。
上記難燃剤の使用量は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、1〜70質量部、より好ましくは、10〜30質量部である。
【0039】
本発明においては、ポリエステル樹脂の成形方法は、特に限定されず、押出成形、射出成形、中空成形、ブロー、フィルム、シート等の公知の成形方法を利用することができるが、押出成形の場合、押出成形機の温度条件は、スクリュー部温度が前記ポリエステル樹脂の融点プラス50℃以内であることが好ましい。スクリュー温度が低すぎるとショートが発生して成形が不安定になったり、過負荷に陥りやすく、またスクリュー部温度が高すぎると樹脂が熱分解し、得られる成形品の物性が低下したり、着色したりする場合があるため、好ましくない。
【0040】
本発明において、ポリエステル樹脂成形体の延伸とは、ポリエステル樹脂を予備成形した後、一軸、二軸等にて延伸方向に伸長させるように応力を付与して延伸すること、又は筒型(ボトル容器)に延伸することを表し、通常、80〜200℃の温度範囲で行われる。
【0041】
本発明において、上記アニール処理とは、ポリエステル樹脂成形体を、ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上、融点以下の温度で、1秒から2分間の範囲内で加熱することである。1秒未満程度の短時間でもポリエステル樹脂成形体の結晶性を改善することができるが、品質管理上アニール効果を一定させるためには1秒以上が好ましく、2分を超えるとポリエステル樹脂の結晶化が進みすぎて白化し、透明性を損なう場合がある。
加熱温度がガラス転移温度未満では、ポリエステル樹脂成形体の結晶性が殆ど改善されず、融点より高い温度ではポリエステル樹脂が融解してポリエステル樹脂成形体の外観を保てなくなる。好ましい温度は、100〜200℃の範囲内であり、より好ましくは、110〜190℃の範囲内であり、さらに好ましくは120〜180℃の範囲内である。
加熱方法は特に制限はなく、ポリエステル樹脂成形体の全体を均一に加熱できるものが好ましいが、一部分あるいは複数の部分を加熱するものであってもよい。
また、ポリエステル樹脂成形体の外観を損ねない温度であれば、異なる温度で複数回アニール処理を行ってもよい。
【0042】
本発明において、上記ポリエステル樹脂成形体とは、押出成形、射出成形、中空成形、ブロー、フィルム、シート等の公知の成形方法で成形された物を表し、ボトル、包装材料の他、飲料用ボトル、食品用容器、化粧品、医療用容器、食品用包装材、ラッピング材、シート・フィルム、電化製品の保護シート、輸送法包装材、電子材料の保護膜、日用雑貨、玩具等に利用することができる。
【0043】
本発明のポリエステル樹脂成形体は、炭酸ガスのガス透過係数が、1.0×10−17mol・m/m・s・Pa〜5.3×10−17mol・m/m・s・Paの範囲内であるものが好ましい。
炭酸ガスのガス透過係数が、5.3×10−17mol・m/m・s・Paを超えるポリエステル樹脂成形体を包装材料等に用いた場合、内容物の酸化や変質が発生して、味、鮮度、効能等が急速に損なわれることがあるため好ましくない。一方、炭酸ガスのガス透過係数が、1.0×10−17mol・m/m・s・Pa未満のポリエステル樹脂成形体は、実用的な成形条件で製造することが困難であるため好ましくない。炭酸ガスのガス透過係数はJIS K7126−1に準拠して測定することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例をもって具体的に例示して本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によって制限を受けるものではない。
【0045】
(実施例1〜7および比較例1〜4)
実施例1〜7および比較例1〜4について、ポリエステル樹脂成形体の結晶性及び透明性は、以下の方法で評価した。
【0046】
(結晶性の評価方法)
結晶性は、顕微ラマン(日本分光株式会社製NRS−3100、励起レーザー:532nm)を用い、PET樹脂のカルボニル基が観測される1730cm−1付近のラマンスペクトルのピークの半値幅で評価を行った。カルボニル基を示すピークの半値幅が小さいほど、PETの結晶化が進んでいることを表す。
【0047】
(透明性の評価方法)
透明性は、ヘイズ・ガードII(株式会社東洋精機製作所製)で、PET樹脂成形体のHazeを測定し、Hazeが4以下の場合は○とし、Hazeが4を超えた場合は×として評価した。
【0048】
〔実施例1〜7〕
ポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人化成株式会社製TR−8550)100質量部に対し、下記表1に記載のポリエステル樹脂用結晶核剤0.02質量部を配合してよく混合し、二軸押出機(装置:株式会社日本製鋼所製TEX28V,シリンダ温度:270℃,スクリュー速度:200rpm)で造粒して、ペレットを得た。得られたペレットについて、射出成形機(株式会社東芝製射出成形機EC100)で90mm×90mm×2mmのシートを成形(成形条件:射出温度280℃、射出時間15秒、金型温度15℃、金型での冷却時間20秒)した。
得られたシートについて、二軸延伸装置(株式会社東洋精機製作所製EX−10B)にて、設定温度:90℃、延伸速度:縦横ともに4000mm/minの条件で、二軸延伸装置が設定温度で安定状態であるのを確認し、シートを設置して3分間静置後、縦横に2.5倍に延伸した。得られた延伸シートに対し、下記表1に記載の条件でアニール処理を行い、透明性と結晶性について評価を行った。これらの結果について、それぞれ下記表1に示す。
【0049】
〔比較例1−4〕
比較例1は、アニール処理を行わなかった以外は上記実施例1と同様にしてシートを作成し、透明性および結晶性の評価を行った。比較例2は、上記実施例1において、ポリエステル樹脂用結晶核剤について下記表1に記載の配合に変更した以外は、上記実施例1と同様な方法でシートを作成し、透明性と結晶性について評価を行った。比較例3は、上記実施例3において、ポリエステル樹脂用結晶核剤について下記表1に記載の配合に変更した以外は、上記実施例3と同様な方法でシートを作成し、透明性と結晶性について評価を行った。比較例4は、上記実施例1と同様の配合でシートを作成し、アニール処理の時間を130秒に変更して透明性および結晶性の評価を行った。これらの結果について、それぞれ下記表1に示す。
【0050】
【表1】

1)コントロール:ポリエステル樹脂用結晶核剤非配合
2)アニール処理行わず。
【0051】
上記比較例1より、ポリエステル樹脂用結晶核剤を配合しても、アニール処理を行わない場合、延伸シートの結晶性は満足できるものではなかった。また、比較例4より、アニール処理の時間が2分を超えた場合、延伸シートが白化してしまい透明性を損なうことが確認された。これらに対し、本発明のポリエステル樹脂成形体は、透明性や結晶性に優れることが確認できた。
【0052】
(実施例8〜10および比較例5〜10)
(炭酸ガス透過度・炭酸ガス透過係数の評価方法)
ガスバリヤー性に関する評価方法として、JIS K7126−1に準拠し、差圧式ガス・蒸気透過率測定装置(差圧式ガス透過装置:GTRテック株式会社製GTR−30XAD2,蒸気透過率測定装置:ヤナコテクニカルサイエンス株式会社製G2700T・F)を用いて、23℃、1atmの条件で試験片の炭酸ガス透過度及び炭酸ガス透過係数を測定した。試験片の厚みは、マイクロメーターにて測定した。
【0053】
〔実施例8−10〕
ポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人化成株式会社製TR−8550)100質量部に対し、下記表2に記載のポリエステル樹脂用結晶核剤0.3質量部を配合してよく混合し、二軸押出機(装置:株式会社日本製鋼所製TEX28V、シリンダ温度:270℃、スクリュー速度:200rpm)で造粒して、ペレットを得た。次に、得られたペレットと上記ポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人化成株式会社製TR−8550)を混合して、下記表2に記載の添加量となるように調整し、二軸押出機(装置:株式会社日本製鋼所製TEX28V、シリンダ温度:270℃、スクリュー速度:200rpm)で造粒してペレットを得た。得られたペレットについて、射出成形機(株式会社製東芝製EC100)で100mm×100mm×2mmのシートを成形(成形条件:射出温度280℃、射出時間15秒、金型温度15℃、金型での冷却温度20秒)した。
得られたシートについて、二軸延伸装置(株式会社製東洋精機製作所製EX−10B)にて、設定温度:100℃、延伸速度:2500mm/minの条件で、二軸延伸装置が設定温度で安定状態であるのを確認し、シートを設置して5分間静置後、縦横に3倍に同時に延伸した。得られた延伸シートに対し、下記表2に記載の条件でアニール処理を行い、ガス透過度とガス透過係数について評価を行った。これらの結果について、下記表2に示す。
【0054】
〔比較例5−10〕
比較例5は、ポリエステル樹脂用結晶核剤を配合しなかった以外は上記実施例8と同様の方法でシートを作成し、縦横に3倍に同時に延伸した。得られた延伸シートについてアニール処理を行わないでガス透過度及びガス透過係数について評価を行った。比較例6は、ポリエステル樹脂用結晶核剤を配合しなかった以外は上記実施例8と同様の方法でシートを作成し、縦横に3倍に同時に延伸した。得られた延伸シートについて下記表2記載の通りにアニール処理を行った後にガス透過度及びガス透過係数について評価を行った。比較例7は、上記実施例8と同様の方法で結晶核剤の濃度が下記表2記載の通りになるようにしてペレットを得てシートを作成し、縦横に3倍に同時に延伸した。得られた延伸シートについて下記表2記載の通りにアニール処理を行った後にガス透過度及びガス透過係数について評価を行った。比較例8は、実施例9と同様にしてシートを作成し、縦横に3倍に同時に延伸した。得られた延伸シートについてアニール処理を行わないでガス透過度及びガス透過係数について評価を行った。比較例9は、実施例9と同様の方法でシートを作成し、縦横に3倍に同時に延伸した。得られた延伸シートについて下記表2記載の通りに温度90℃で120秒間のアニール処理を行なった後にガス透過度及びガス透過係数について評価を行った。比較例10は、実施例8と同様の方法で結晶核剤の濃度が下記表2記載の通りになるようにしてペレットを得てシートを作成したが、延伸することができなかったので、ガス透過度およびガス透過係数の評価は行わなかった。なお、上記比較例5および6についてはポリエステル樹脂用結晶核剤を配合していないので、ペレットを造粒した後にさらにポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人化成株式会社製TR−8550)を混合するということは行わなかった。
比較例5〜10について、それぞれの結果を下記表2に示す。
【0055】
【表2】

3)コントロール:ポリエステル樹脂用結晶核剤非配合
4)アニール処理行わず
5)シート延伸不能のため未評価
【0056】
上記比較例6より、結晶核剤を配合せずにアニール処理をした場合、延伸シートのガスバリヤー性は満足できるものではなかった。また、上記比較例7より、結晶核剤の配合量が0.001質量部より少ない場合は、結晶核剤の効果が殆ど得られなかった。また、比較例8より、結晶核剤を配合してもアニール処理を行わない場合、ガスバリヤー性は満足できるものではなかった。また、上記比較例9より、アニール温度を90℃で処理した場合は、アニール時間を2分と長時間実施しても、ガスバリヤー性は殆ど改善しなかった。また、比較例10より、結晶核剤の配合量が0.1質量部を超える場合は、シートが剛直して延伸することができなかった。
これらに対し、上記実施例8〜10の結果から、本発明のポリエステル樹脂成形体は、透明性及びガスバリヤー性に優れることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂100質量部に対し、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤0.001〜1質量部を配合したポリエステル樹脂組成物を成形後、1秒〜2分間アニール処理してなることを特徴とするポリエステル樹脂成形体。
【請求項2】
前記アニール処理が、100℃〜200℃の範囲内の温度で行われるものである請求項1記載のポリエステル樹脂成形体。
【請求項3】
前記アニール処理が、120℃〜180℃の範囲内の温度で行われるものである請求項1記載のポリエステル樹脂成形体。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートである請求項1〜3のうちいずれか一項記載のポリエステル樹脂成形体。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂用結晶核剤が、ベンゼンスルホンアミド金属塩、トルエン−4−スルホンアミド金属塩、N−フェニル−ベンゼンスルホンアミド金属塩、N−フェニル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド金属塩、および、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド金属塩からなる群から選択されるものである請求項1〜4のうちいずれか一項記載のポリエステル樹脂成形体。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂用結晶核剤が、ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩、トルエン−4−スルホンアミドナトリウム塩、N−フェニル−ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩、N−フェニル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩、および、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシドナトリウム塩からなる群から選択されるものである請求項1〜4のうちいずれか一項記載のポリエステル樹脂成形体。
【請求項7】
前記成形が、シート形状への延伸成形である請求項1〜6のうち何れか一項記載のポリエステル樹脂成形体。
【請求項8】
前記成形が、ボトル形状への延伸成形である請求項1〜6のうち何れか一項記載のポリエステル樹脂成形体。
【請求項9】
顕微ラマンにおける1730cm−1近傍の極大ピークの半値幅が、18cm−1以下である請求項1〜8のうちいずれか一項記載のポリエステル樹脂成形体。
【請求項10】
ポリエステル樹脂100質量部に対し、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤0.001〜1質量部を含んでなるポリエステル樹脂成形体を延伸したものであって、顕微ラマンにおける1730cm−1近傍の極大ピークの半値幅が、18cm−1以下であることを特徴とするポリエステル樹脂成形体。
【請求項11】
炭酸ガス透過係数が、1.0×10−17〜5.3×10−17mol・m /m・s・Paである請求項1〜10のうち何れか一項記載のポリエステル樹脂成形体。
【請求項12】
ポリエステル樹脂100質量部に対し、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤0.001〜1質量部を配合したポリエステル樹脂組成物を250〜300℃で成形した後、100℃〜200℃の範囲内の温度で、1秒〜2分間アニール処理することを特徴とするポリエステル樹脂成形体の製造方法。
【請求項13】
前記アニール処理を、120℃〜180℃の範囲内の温度で、1秒〜2分間行う請求項12記載のポリエステル樹脂成形体の製造方法。

【公開番号】特開2011−137127(P2011−137127A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48235(P2010−48235)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】