説明

ポリエステル樹脂用結晶核剤及びその製造方法

【課題】粒子径が小さく、かつ、保管時の二次凝集を生じにくいポリエステル樹脂用結晶核剤を得ることができるポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法を提供する。
【解決手段】スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法であって、前記ポリエステル樹脂用結晶核剤を、含水率が8質量%以下になるまで乾燥後、粉砕媒体を用いない粉砕機で粉砕することを特徴とするポリステル樹脂用結晶核剤の製造方法である。前記粉砕後のポリエステル樹脂用結晶核剤の体積平均粒子径が0.5〜50μmの範囲内で、かつ、250μmメッシュパスが90質量%以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法に関し、詳しくは、粒子径が小さく、かつ、保管時の二次凝集を生じにくいポリエステル樹脂用結晶核剤を得ることができるポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法に関する。
【0002】
ポリエチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂は、透明性、耐熱性、耐薬品性、力学的特性、電気的特性、ガスバリアー性、コストパフォーマンスにおいて優れており、特に主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート(以下、PET樹脂と記す場合がある)は、炭酸飲料、ジュース、ミネラルウォーター等のボトル容器、化粧品、医薬品容器、洗剤・シャンプー容器、電子写真用トナー、食品、医薬品等の包装材料等に、広く採用されている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートは、結晶性高分子であるにも関わらず、成形条件の幅が極めて狭く、成形サイクルの向上が困難で、成形材料の利用は未だ限られている。
【0003】
この欠点はポリエステル樹脂の結晶性に由来するものであり、結晶核剤の添加によって、ポリエステル樹脂の結晶化温度が上昇し、成形サイクルが改善されることが知られている。
【0004】
本発明者等は、特許文献1において、スルホンアミド化合物金属塩をポリエステル樹脂用結晶核剤として、ポリエステル樹脂組成物の結晶化を促進させる発明を提供しており、従来の結晶核剤では到達できなかった成形サイクルを実現している。
【0005】
しかし、ポリエステル樹脂に添加するスルホンアミド化合物金属塩が250μmを超える粒子を含む場合、ポリエステル樹脂との溶融混練の際に融け残ってしまう場合がある。そのような結晶核剤を、例えば繊維材料に適用した場合、繊維の延伸時に繊維が破断してしまったり、フィルム材料に適用した場合は、フィルム表面にフィッシュアイが現れたり、シートを均一に延伸できなかったり、フィルム表面に穴が開いてしまったりする場合がある。また、ボトル容器やシートの成形において当該結晶核剤を利用した場合、ポリエステル樹脂の結晶化促進作用が強すぎて、成形品の一部又は全体が白色化して、外観を損ねる問題があった。
【0006】
この問題は、ポリエステル樹脂中に前記ポリエステル樹脂用結晶核剤を均一に分散させることによって改善されることがわかっている。均一に分散させるためには、例えば、体積平均粒子径が、0.5〜50μmの範囲内で、且つ、250μmのメッシュパスになるまで粉砕することによって、上記問題を解決することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−327028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、体積平均粒子径が0.5〜50μmになるまで上記結晶核剤の粉砕を長時間行った場合、粉砕品が固まって槽内に付着したり(固着)、粉砕時に発生する熱によって粉砕品が溶融して塊状(融着)状態となってしまって、殆ど回収することができず、安定した粉砕ができない問題があった。また、輸送や倉庫保管時に粉砕品が二次凝集してブロッキングが発生する問題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、上記従来の問題を解決し、粒子径が小さく、かつ、保管時の二次凝集を生じにくいポリエステル樹脂用結晶核剤を得ることができるポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、上記結晶核剤を含水率が特定値以下になるまで乾燥し、且つ、粉砕媒体を用いない粉砕機を利用して粉砕することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法は、スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法であって、前記ポリエステル樹脂用結晶核剤を、含水率が8質量%以下になるまで乾燥後、粉砕媒体を用いない粉砕機で粉砕することを特徴とするものである。
【0012】
本発明のポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法は、前記粉砕後のポリエステル樹脂用結晶核剤の体積平均粒子径が0.5〜50μmの範囲内で、かつ、250μmメッシュパスが90質量%以上であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法は、前記ポリエステル樹脂用結晶核剤が、ベンゼンスルホンアミド金属塩、トルエン−4−スルホンアミド金属塩、N−フェニル−ベンゼンスルホンアミド金属塩、N−フェニル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド金属塩、および、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド金属塩からなる群から選択されるものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明のポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法は、前記ポリエステル樹脂用結晶核剤が、ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩、トルエン−4−スルホンアミドナトリウム塩、N−フェニルーベンゼンスルホンアミドナトリウム塩、N−フェニル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩、および、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシドナトリウム塩からなる群から選択されるものであることが好ましい。
【0015】
また、本発明のポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法は、前記粉砕媒体を用いない粉砕機が、ロール式粉砕機、高速回転衝撃式粉砕機、気流式粉砕機、および、せん断・磨砕式粉砕機からなる群から選択されるものであることが好ましい。
【0016】
また、本発明のポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法は、前記粉砕後のポリステル樹脂用結晶核剤の回収量が90%以上であることが好ましい。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂用結晶核剤は、前記製造方法で得られたことを特徴とするものである。
【0018】
本発明のポリエステル樹脂用結晶核剤は、前記製造方法で得られたものをさらに乾燥して、含水率が1質量%以下に調整されたものであることが好ましい。
【0019】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、前記ポリエステル樹脂用結晶核剤を0.001〜1質量部含んでなるものである。
【0020】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物においては、前記ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートであるものが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、スルホンアミド化合物又はスルホンイミド化合物からなるポリエステル樹脂用結晶核剤であって、粒子径が小さく、かつ、保管時の二次凝集を生じにくいポリエステル樹脂用結晶核剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の粉砕方法について、以下に詳述する。
本発明に係るスルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤とは、スルホンアミド骨格又はスルホンイミド骨格を有する化合物の金属塩を表す。スルホンアミド骨格又はスルホンイミド骨格を有する化合物としては、例えば、スルホンアミド、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、トルエン−4−スルホンアミド、4−クロロベンゼンスルホンアミド、4−アミノベンゼンスルホンアミド、N−ブチル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−フェニル−ベンゼンスルホンアミド、N−フェニル−メチル−ベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−ピリジン−2−イルベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−(5−メチル−チアゾール−2−イル)−ベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−チアゾール−2−イル−ベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−(5−メチル−イソキサゾール−3−イル)−ベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−(2,6−ジメトキシ−ピリミジン−4−イル)−ベンゼンスルホンアミド、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド、4−アミノ−6−クロロ−ベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジアミド、6−エトキシ−ベンゾチアゾール−2−スルホン酸アミド、5−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸アミド、4−ナトリウムオキシ−ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ベンゼンスルホニルアミノ−フェニル)−ベンゼンスルホンアミド等が挙げられ、本発明においては、ベンゼンスルホンアミド、トルエン−4−スルホンアミド、N−フェニル−ベンゼンスルホンアミド、N−フェニル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシドの金属塩であるものが好ましく用いられる。
【0023】
上記スルホンアミド化合物又はスルホンイミド化合物の金属塩における金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウム又はバリウムから選択される金属が挙げられ、それらの中でも、カリウム、リチウム、ナトリウム、カルシウムは、ポリエステル樹脂の結晶化促進効果に優れているので好ましく、ナトリウムが、特に好ましい。
【0024】
本発明において、ポリエステル樹脂用結晶核剤の含水率を8質量%以下に乾燥させる方法としては、公知の乾燥機を使用することができる。本発明で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などが挙げられる。
【0025】
前記ポリエステル樹脂用結晶核剤の含水率とは、株式会社リガク製サーモプラス2を用いて、窒素下(流量:200ml/min)、試料:5mg、昇温速度:50℃/minの条件で、室温から150℃に到達したときの重量減少量を測定試料に含まれた水分量として、該水分量と測定試料の重量の比を含水率として評価したものであり、本発明においては、ポリエステル樹脂用結晶核剤の含水率を8質量%以下に乾燥すればよく、好ましくは5質量%以下の乾燥が好ましい。含水率が8質量%を超えていると、前記粉砕機によるポリエステル樹脂用結晶核剤の粉砕時間が長くなって粉砕効率が悪化したり、粉砕槽内において粉砕品同士が凝集したり、粉砕槽に粉砕品が付着して固まったり、あるいは粉砕後に二次凝集する恐れがある。また、0.01質量%未満までの乾燥は、不経済であり、本発明の粉砕方法においては0.01〜8質量%の範囲内に乾燥されていればよい。
【0026】
本発明のポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法では、上記ポリエステル樹脂用結晶核剤を、含水率を8質量%以下になるまで乾燥させた後、粉砕媒体を用いない粉砕機で粉砕する。本発明において粉砕媒体とは、固体のものを指し、例えば、ガラス、メノー、窒化ケイ素、ジルコニア、ステアタイトなどのセラミック等の非金属製;アルミナ、チタニアの等の金属製;タングステンカーバイト、クローム鋼、ステンレススチール等の合金製のものが挙げられる。形態としては限定されず、例えば、ビーズ、ボール状のものが挙げられる。
【0027】
本発明において使用される粉砕機としては、上記粉砕媒体を用いないものであれば特に限定されず、ロール式、高速回転衝撃式、気流式、又はせん断・磨砕式の粉砕方式を利用する粉砕機が挙げられ、これら粉砕方式を組み合わせたものであってもよく、粉砕機器を連結したものであってもよく、また、分級機構を導入したシステムも採用することができる。
【0028】
上記ロール式粉砕機としては、回転するロールの間で粉砕が行われるロール回転型ミル、ローラーがテーブルや容器内で転動するローラー転動型ミル等が挙げられる。
【0029】
上記高速回転衝撃式粉砕機としては、高速回転するローターに試料を衝突させて、その衝撃力による微細化を達成するものが挙げられ、例えば、ローターに固定式あるいはスイング式の衝撃子を取り付けたハンマーミルタイプのハンマー型、回転する円盤にピンや衝撃ヘッドを取り付けたピンミルタイプの回転円盤型、試料がシャフト方向に搬送されながら粉砕する軸流型、狭い環状部での粒子の微細化を行うアニュラー型等が挙げられる。
【0030】
上記気流式粉砕機(ジェットミル)としては、高速気流体の持つ運動エネルギーを利用して、試料を加速して衝突させて破砕するものを表し、粒子を直接衝突板に衝突させる形式のものと、粒子同士の摩擦による微粒子化が主体的な粉砕を行うものが挙げられる。
【0031】
上記せん断・磨砕式粉砕機としては、圧縮力下でのせん断摩擦力を利用した磨砕型の粉砕機が挙げられる。
【0032】
なお、粉砕媒体を用いる媒体式粉砕機としては、容器が回転又は振動などの運動をすることにより、内部の粉砕媒体を駆動する容器駆動型ミルと、容器内部にある撹拌機構により媒体に運動力を与える媒体撹拌型ミルが挙げられる。上記容器駆動型ミルとしては、ボールミルなどの転動式ボールミル、振動ミル、遠心ミル、遊星ミル、ハイスイングミル等が挙げられ、上記媒体撹拌型ミルとしては、容器の形状により、塔型、撹拌槽型、流通管型、アニュラー型等が挙げられる。
【0033】
本発明においては、上記ポリエステル樹脂用結晶核剤は、前記粉砕媒体を用いない粉砕機により、体積平均粒子径が好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは1μm〜30μmの範囲内であって、かつ、250μmのメッシュパスが好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上になるまで粉砕される。
【0034】
体積平均粒子径が0.5μm未満では、粉砕に要するエネルギー消費が多くなって不経済であり、50μmより大きいと上記粉砕品をポリエステル樹脂に配合して成形した際、ポリエステル樹脂中に分散せずに凝集し、成形品の外観を損ねる場合がある。また、250μmのメッシュパスが90質量%未満では、ポリエステル樹脂との溶融混練時に樹脂中に、粗大粒子が融け残って成形品の外観や物性に悪影響する場合がある。
【0035】
また、本発明の粉砕方法においては、前記、ポリエステル樹脂用結晶核剤の粉砕品の回収率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上である。90%未満では、前記粉砕機の粉砕槽内に堆積して粉砕に支障をきたす可能性がある。
【0036】
本発明においては、前記ポリエステル樹脂用結晶核剤の粉砕品は、さらに1質量%以下の含水率になるまで乾燥するのが好ましい。含水率が1質量%を超えるものをポリエステル樹脂に配合して成型した場合、気泡が発生して成形品の外観を損ねる場合がある。また、0.01質量%未満に乾燥させるのは、不経済である。乾燥方法は、上記と同様に公知の乾燥方法を用いることができる。
【0037】
粉砕品同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理して利用するのが好ましい。解砕する装置としては、公知の解砕処理装置を用いることができ、例えば、ジェットミル、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
【0038】
本発明に係るポリエステル樹脂とは、通常の熱可塑性ポリエステル樹脂が用いられ、特に制限されるべきものではない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリエステルの構成成分と他の酸成分及び/又はグリコール成分(例えばイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタール酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ダイマー酸のような酸成分、ヘキサメチレングリコール、ビスフェノールA、ネオペンチルグリコールアルキレンオキシド付加体のようなグリコール成分)を共重合したポリエーテルエステル樹脂;ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸樹脂、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2−オキセタノン)等の分解性脂肪族ポリエステル;芳香族ポリエステル/ポリエーテルブロック共重合体、芳香族ポリエステル/ポリラクトンブロック共重合体、ポリアリレートなどの広義のポリエステル樹脂も使用される。
なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリ乳酸からなる群から選択される一種以上のポリエステル樹脂が好ましく使用され、特に、ポリエチレンテレフタレートは、透明性に優れ、安価であるためより好ましい。
【0039】
また、上記ポリエステル樹脂は、単独、又は複数樹脂のブレンド(例えば、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンドなど)、もしくはそれらの共重合体(例えば、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合体など)であってもよいが、特に、融点が200℃〜300℃のものが耐熱性を有する特性を示すため、好ましく使用される。
【0040】
ポリエステル樹脂100質量部に対する、ポリエステル樹脂用結晶核剤の添加量は、0.001〜1質量部であり、より好ましくは、0.005〜0.5質量部である。0.001質量部より少ないと、結晶核剤としての作用効果が低く、1質量部より多いと、ポリエステル樹脂中への分散性が低下し、成形品の外観や物性に悪影響を与える場合がある。
【0041】
前記ポリエステル樹脂用結晶核剤を配合したポリエステル樹脂には、必要に応じてさらに通常の他の添加剤を配合することができる。他の添加剤の配合方法としては、ポリエステル樹脂に他の添加剤を目的に応じた配合量で混合して、押出機などの成形加工機で溶融混錬して造粒、成形する方法が挙げられ、前記ポリエステル樹脂用結晶核剤と一緒に他の添加剤を配合してもよく、前記ポリエステル樹脂用結晶核剤を配合したポリエステル樹脂の成形後に、他の添加剤を添加して、成形加工機を用いて成形してもよい。
他の添加剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物、重金属不活性化剤、本発明に用いる結晶核剤以外のその他の結晶核剤、難燃剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト、充填剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、可塑剤などがあげられる。
【0042】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
上記フェノール系酸化防止剤の使用量は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。
【0043】
上記リン系酸化防止剤とは、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
上記リン系酸化防止剤の使用量は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。
【0044】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩、又は金属キレート、特にニッケル、クロムの塩、又はキレート類等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤の使用量は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.001〜5質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0045】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、ビス{4−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジル}デカンジオナート、ビス{4−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ウンデシルオキシ)ピペリジル)カーボナート、TINUVIN NOR 371等が挙げられる。
上記ヒンダードアミン系光安定剤の使用量は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.001〜5質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0046】
上記その他の結晶核剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、亜鉛粉末、アルミニウム粉末等の単体物;酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ、ヘマタイト、マグネタイト等の金属酸化物;タルク、アスベスト、カオリン、モンモリロナイト、クレー、ピロフィライト等の粘土・鉱石類、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;リン酸カルシウム等の無機リン酸塩;芳香族オキシスルホン酸の金属塩、有機リン化合物のマグネシウム塩、有機リン化合物の亜鉛塩等の有機リン酸塩;珪酸カルシウム塩、珪酸マグネシウム塩等の無機珪酸塩;モノカルボン酸ナトリウム塩、モノカルボン酸リチウム塩、モノカルボン酸バリウム塩、モノカルボン酸マグネシウム塩、モノカルボン酸カルシウム塩、ステアリン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、4−第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム及び2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等のカルボン酸金属塩;ナトリウムビス(4−第三ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート及びリチウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル金属塩;ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、及びビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール等の多価アルコール誘導体;N,N’,N”−トリス[2−メチルシクロヘキシル]―1,2,3−プロパントリカルボキサミド、N,N’,N”−トリシクロヘキシル−1,3,5−ベンゼントリカルボキミド、N,N’−ジシクロヘキシル−ナフタレンジカルボキサミド、1,3,5−トリス(2,2−ジメチルプロピオニルアミノ)ベンゼン等のアミド化合物;ポリカプロラクトン、ポリグリコール、ポリオレフィン、ナイロン6、ポリテトラフルオロエチレン粉末、高融点PET、ポリエステルオリゴマーのアルカリ金属塩等の高分子物質等が挙げられる。
上記その他の結晶核剤の使用量は、本発明で用いられる結晶核剤との合計量が、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.001〜1質量部となるように用いられる。
【0047】
上記難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物及び赤リン等のリン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、及び、臭素化スチレン等の臭素系難燃剤等が挙げられる。
上記難燃剤の使用量は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、1〜70質量部、より好ましくは、10〜30質量部である。
【0048】
本発明のポリエステル樹脂組成物の成形方法は、特に限定されず、押出成形、射出成形、中空成形、ブロー、フィルム、シート等の公知の成形方法を利用することができるが、押出成形の場合、押出成形機の温度条件は、スクリュー部温度が樹脂融点プラス50℃以内であることが好ましい。スクリュー温度が低すぎるとショートが発生して成形が不安定になったり、過負荷に陥りやすく、また成形温度が高すぎると樹脂が熱分解し、得られる成形品の物性が低下したり、着色したりする場合があるため、好ましくない。
【0049】
本発明のポリエステル樹脂組成物の成形後、成形品にアニール処理を加えても良い。アニール処理とは、ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上、融点以下の温度で、1秒から2分間の範囲内の成形品の加熱処理のことである。1秒未満程度の短時間でも成形品の結晶性を改善することができるが、品質管理上アニール効果を一定させるためには1秒以上が好ましく、2分を超えると成形品の結晶化が進みすぎて白化し、透明性を損なう場合がある。
【0050】
上記アニール処理の加熱温度がガラス転移温度以下では、成形品の結晶性が殆ど改善されず、融点以上の温度では成形品が融解して外観を保てなくなる。より好ましい温度は、ガラス転移温度〜ガラス転移温度+150℃の範囲内であり、特に、好ましくは、ガラス転移温度+50℃〜ガラス転移温度+120℃の範囲内である。
加熱方法は特に制限はなく、成形品の全体を均一に加熱できるものが好ましいが、一部分あるいは複数の部分を加熱するものであってもよい。また、成形品の外観を損ねない温度であれば、異なる温度で複数回アニール処理を行ってもよい。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂組成物の用途としては、ボトル、包装材料の他、飲料用ボトル、食品用容器、化粧品、医療用容器、食品用包装材、ラッピング材、シート・フィルム、電化製品の保護シート、輸送用包装材、電子材料の保護膜、日用雑貨、玩具等に利用することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0053】
実施例、比較例における粉砕機とその粉砕条件については、下記表1に記載の通りである。各ポリエステル樹脂用結晶核剤の実施例1〜8の粉砕方法について、下記表2に示し、比較例1〜8の粉砕方法については下記表3にそれぞれ示す。
これらの粉砕結果について、下記表4に示す。尚、含水率、得られた粉砕品の粒子径、および250μmのメッシュパス及び回収率については、下記に従って評価した。
【0054】
(含水率の評価方法)
含水率は、粉砕前のポリステル樹脂用結晶核剤について株式会社リガク社製サーモプラス2/(TG−DTAシリーズ)を用いて水分量を測定し、下記式に基づいて算出した。窒素雰囲気(流量:200ml/min)、測定試料:5mg、昇温速度:50℃/minの条件で室温から150℃に到達したときの重量減少量を測定試料に含まれていた水分量とした。
含水率(%)=(水分量)/(測定試料重量)×100
【0055】
(粒子径の評価方法)
粒子径は、ポリエステル樹脂用結晶核剤の粉砕品について、レーザー回折散乱式粒度分布計(マイクロトラック粒度分布測定装置MT3300;日機装(株)製)によって測定したものをいい、粉砕直後の粉砕品を、乾式下で粒度分布(体積分布)測定し、得られた粒度分布から50%平均粒子径(50%D)及び90%粒子径(90%D)を求めた。
【0056】
上記50%平均粒子径とは、測定した粒子径に対応する直径の球体であると仮定して得られた体積加重平均を表し、上記90%粒子径とは、粒度分布のヒストグラムにおいて粒子径の小さいものから積算していき、積算値が90%を超えた最初の粒子径とした。
【0057】
(250μmのメッシュパス)
250μmのメッシュパスとは、粉砕品について250μmのメッシュパスを通過した割合を表す。試料の投入量に対して、90質量%以上のメッシュパスが得られた場合は○とし、得られなかった場合は×として評価した。尚、粉砕時において粉砕槽内で粉砕品の固着があった場合は×として評価した。
【0058】
(荷重耐性の評価方法)
荷重耐性とは、袋に充填されたポリエステル樹脂用結晶核剤の粉砕品が、積載された状態で輸送された際に、二次凝集してブロッキングが発生する可能性を判断するために検討した。検討方法としては、アルミ製の袋にポリエステル樹脂用結晶核剤の粉砕品を充填し、空気を含まないように密封し、かかる袋を50℃恒温オーブン内にて50g/cmの荷重を加えて静置した。
一ヶ月後にブロッキングが発生した場合は、×とし、ブロッキングしていなかった場合は○として評価した。
【0059】
(回収率)
回収率とは、原料に対して回収できた粉砕品の割合を表す。回収率が90%以上であった場合は○で表し、回収率が90%未満であった場合は×で表して評価した。
【0060】
(粉砕機器と粉砕条件)
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
実施例1〜8及び比較例1〜8で得られた粉砕品について、粉砕品の粒子径、250μmメッシュパス、荷重耐性、及び回収率について評価した。これらの結果について、それぞれ下記表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
上記表4の比較例1〜5より、粉砕媒体を用いて粉砕する媒体粉砕機を用いた場合、粉砕品は槽内で固着してしまい、殆ど回収することができず、250μmメッシュパスもごく僅かであった。また、比較例6〜8より粉砕媒体を用いない粉砕機で粉砕した場合であっても、含水率が高い場合は、二次凝集しやすく、荷重試験においてブロッキングしているのが確認された。
これらに対し、実施例1〜8より本発明の粉砕方法は、含水率が8質量%以下でかつ粉砕媒体を用いない粉砕機で粉砕する方法により、所望の粒子径の範囲内で、安定して粉砕できることが確認できた。
【0066】
(参考例)
上記実施例2で得られた粉砕品を減圧乾燥機で乾燥(120℃×5時間)し、含水率を0.3%としたものを、ポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人化成株式会社製TR−8550)100質量部に対して、0.3質量部配合し、よく混合して、二軸押出機(装置:株式会社日本製鋼所製TEX28V,シリンダ温度:270℃,スクリュー速度:200rpm)で造粒したところ、問題なくペレットを得ることができた。
次に、上記実施例2で得られた粉砕品を減圧で乾燥せずに、含水率2.1%のまま上記と同様に二軸押出機で造粒したところ、ストランドが発泡して途中で切れてしまい、ペレットを得るのが困難であった。以上より、ポリエステル樹脂組成物に添加する場合には、粉砕品は含水率が1質量%以下になるまで乾燥して用いるのが好ましいことを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホンアミド化合物金属塩又はスルホンイミド化合物金属塩からなるポリエステル樹脂用結晶核剤の製造方法であって、前記ポリエステル樹脂用結晶核剤を、含水率が8質量%以下になるまで乾燥後、粉砕媒体を用いない粉砕機で粉砕することを特徴とするポリステル樹脂用結晶核剤の製造方法。
【請求項2】
前記粉砕後のポリエステル樹脂用結晶核剤の体積平均粒子径が0.5〜50μmの範囲内で、かつ、250μmメッシュパスが90質量%以上である請求項1記載のポリステル樹脂用結晶核剤の製造方法。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂用結晶核剤が、ベンゼンスルホンアミド金属塩、トルエン−4−スルホンアミド金属塩、N−フェニル−ベンゼンスルホンアミド金属塩、N−フェニル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド金属塩、および、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシド金属塩からなる群から選択されるものである請求項1または2記載のポリステル樹脂用結晶核剤の製造方法。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂用結晶核剤が、ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩、トルエン−4−スルホンアミドナトリウム塩、N−フェニルーベンゼンスルホンアミドナトリウム塩、N−フェニル−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩、および、1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オン1,1−ジオキシドナトリウム塩からなる群から選択されるものである請求項1または2記載のポリステル樹脂用結晶核剤の製造方法。
【請求項5】
前記粉砕媒体を用いない粉砕機が、ロール式粉砕機、高速回転衝撃式粉砕機、気流式粉砕機、および、せん断・磨砕式粉砕機からなる群から選択されるものである請求項1〜4のうち何れか一項記載のポリステル樹脂用結晶核剤の製造方法。
【請求項6】
前記粉砕後のポリステル樹脂用結晶核剤の回収量が90%以上である請求項1〜5のうち何れか一項記載のポリステル樹脂用結晶核剤の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のうち何れか一項に記載の製造方法で得られたポリエステル樹脂用結晶核剤
【請求項8】
さらに乾燥して、含水率が1質量%以下に調整された請求項7記載のポリエステル樹脂用結晶核剤
【請求項9】
ポリエステル樹脂100質量部に対し、請求項7または8記載のポリエステル樹脂用核剤を0.001〜1質量部含んでなるポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
上記ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートである請求項9記載のポリエステル樹脂組成物

【公開番号】特開2011−116895(P2011−116895A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276790(P2009−276790)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】