説明

ポリエステル樹脂組成物およびそれを用いた二軸配向フィルム

【課題】優れた寸法安定性と耐加水分解性を有しながらも、フィルムなどに成形するときなどの作業環境に優れるポリエステル樹脂組成物およびそれを用いた二軸配向フィルムの提供。
【解決手段】ジカルボン酸成分A(6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸)とジカルボン酸成分B(ベンゼンジカルボン酸またはナフタレンジカルボン酸)とで表されるジカルボン酸成分の合計の割合が全ジカルボン酸成分の90〜100モル%であると共に、ジカルボン酸成分Aが全ジカルボン酸成分の5〜80モル%を占め、かつ、全ジオール成分の90〜100モル%が炭素数2〜10のアルキレングリコールである共重合ポリエステルが、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状カルボジイミド化合物を含有するポリエステル樹脂組成物およびそれを用いた二軸配向フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法安定性に優れると共に耐加水分解性も良好である新規なポリエステル樹脂組成物およびそれを用いた二軸配向フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートに代表されるポリエステルは優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、フィルムなどに幅広く使用されている。特にポリエチレン−2,6−ナフタレートは、ポリエチレンテレフタレートよりも優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、それらの要求の厳しい用途、例えば高密度磁気記録媒体などのベースフィルムなどに使用されている。しかしながら、近年の高密度磁気記録媒体などでの寸法安定性、特に温度や湿度の変化に対する寸法安定性の要求はますます高くなってきており、さらなる特性の向上が求められている。
【0003】
温度や湿度の変化に対する寸法変化を小さくする方法としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合、湿度膨張係数と温度膨張係数とはともにヤング率と非常に密接な関係にあり、その方向のヤング率を高くすればよい。しかしながら、ヤング率を高めるにはその方向により厳しい延伸条件で延伸することとなり、例えばフィルム中に存在する粗大異物とポリマーの界面に剥離が生じ、フライスペックと言われる欠陥が生じやすくなる。また、特許文献3では、湿度膨張係数の小さいポリマーとして、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を酸成分として用いたポリエステルが提案されている。しかしながら、その実施例を見ても分かるように、湿度膨張係数は低いものの、温度膨張係数が非常に高いものであった。
【0004】
そこで、さらに研究を進めたところ、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合成分として用いても湿度膨張係数を小さくでき、しかも温度膨張係数はヤング率を高くしていくことで小さくできるとの知見を得た(特許文献4、5)。また、例えば太陽電池のバックシート用フィルムなどの用途では長期間の経時耐久性が要求され、例えば耐加水分解性の面で不十分な場合があり、特許文献6では、カルボジイミド化合物を含有した6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合成分とした芳香族ポリエステルが提案されている。ここで用いられているカルボジイミド化合物は、線状のカルボジイミド化合物である。しかしながら、線状カルボジイミド化合物がポリエステルの末端に結合する反応に伴いイソシアネート基を有する化合物が遊離し、イソシアネート化合物の独特の臭いを発生し、作業環境を悪化させることが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−135428号公報
【特許文献2】特開昭60−221420号公報
【特許文献3】特開昭61−145724号公報
【特許文献4】特開2008−189799号公報
【特許文献5】特開2008−189800号公報
【特許文献6】特開2010−31174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、フィルムなどに成形したときに優れた寸法安定性と耐加水分解性戸を有しながらも、その製造段階でイソシアネート化合物が遊離することによる臭い、すなわち作業環境の悪化のないポリエステル樹脂組成物およびそれを用いた二軸配向フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために検討を重ねた結果、上記の共重合ポリエステルに環状構造の中にカルボジイミド基を有する化合物を配合すれば、温度膨張係数(αt)および湿度膨張係数(αh)などの共重合ポリエステルが有している優れた性能を維持しながら、耐加水分解性などの経時耐久性に優れ、またその製造段階でポリエステルの末端に反応してもイソシアネート化合物を遊離しない成形体が容易に得られることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
かくして本発明によれば、「下記式(A)または下記式(B)で表されるジカルボン酸成分の合計の割合が全ジカルボン酸成分の90〜100モル%であると共に、下記式(A)で表されるジカルボン酸成分が全ジカルボン酸成分の5〜80モル%を占め、かつ、全ジオール成分の90〜100モル%が炭素数2〜10のアルキレングリコールである共重合ポリエステルが、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている下記式(1)で表される環状カルボジイミド化合物を含有するポリエステル樹脂組成物」が提供される。
【0009】
【化1】

(式(A)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である)
(式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基である)
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物を用いて得られるフィルムなどの成形品は、温度膨張係数(αt)および湿度膨張係数(αh)が低く、機械的強度なども高いことから、温度や湿度などの環境変化に対して優れた寸法安定性を有し、また耐加水分解性などの経時耐久性にも優れ、これらの性能が要求される、例えば太陽電池のバックシートなどのベースフィルムとして好適に用いることができるものでありながら、その製造段階で遊離するイソシアネート化合物の臭いによる作業環境の悪化がない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[共重合ポリエステル]
本発明のポリエステル樹脂組成物を形成する共重合ポリエステルは、前記式(A)または式(B)で表されるジカルボン酸成分と、炭素数2〜10のアルキレングリコールであるジオール成分とからなる共重合ポリエステルである。
【0012】
〔ジカルボン酸成分〕
前記式(A)で表されるジカルボン酸成分は、式中のRが炭素数2〜10のアルキレン基であるものであり、なかでもRの炭素数が2〜4の6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸が好ましく、さらにはRの炭素数が偶数のものが好ましい。これらの中でも、温度や湿度などの環境変化に対する寸法安定性の点からは、特にRの炭素数が2である6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸が好ましい。
【0013】
一方前記式(B)で表されるジカルボン酸成分は、式中のRがフェニレン基またはナフタレンジイル基であるものであり、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、機械的特性などの点からテレフタル酸または2、6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特に2、6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0014】
上記式(A)および式(B)で表されるジカルボン酸成分の合計の割合は、共重合ポリエステルの全ジカルボン酸成分を基準として90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは100モル%であり、10モル%以下の割合であれば、例えばアジピン酸、セバシン酸、ジフェニルジカルボン酸などの他のジカルボン酸成分を共重合していてもよい。上記式(A)および式(B)で表されるジカルボン酸成分の合計割合が90モル%未満の場合には、寸法安定性や機械的特性が低下して本発明の目的を達成できなくなる。
【0015】
本発明においては、さらに、前記式(A)で表されるジカルボン酸成分が全ジカルボン酸成分の5〜80モル%を占めていることが大切である。前記式(A)で表されるジカルボン酸成分の割合は、好ましくは7モル%以上、より好ましくは10モル%以上、特に好ましくは15モル%以上であり、5モル%未満の場合には、湿度膨張係数の低減効果が不十分となる。一方、80モル%を超える場合には成形性が不十分となる。また、驚くべきことに、式(A)で表されるジカルボン酸成分による湿度膨張係数の低減効果は、少量で非常に効率的に発現されるので、湿度膨張係数の観点に加えて製膜性も向上できるという観点から、好ましい6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の共重合割合は、50モル%未満、さらに40モル%以下、特に30モル%以下が好ましい。
【0016】
このような特定量の式(A)および式(B)で表されるジカルボン酸が共重合された共重合ポリエステルを用いることによって、温度膨張係数と湿度膨張係数の小さい寸法安定性に優れた成形品、例えばフィルムを製造することができる。
【0017】
〔ジオール成分〕
ジオール成分は、全ジオール成分を基準として炭素数2〜10のアルキレングリコールが90〜100モル%であり、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは98〜100モル%である。10モル%以下の割合であれば、例えばジエチレングリコール、ビスフェノールAなどの他のジオール成分を共重合していてもよい。
【0018】
好ましく用いられる炭素数2〜10のアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等があげられ、これらの中でも特にエチレングリコールが好ましい。
【0019】
上記ジカルボン酸成分とジオール成分とからなる共重合ポリエステルは、P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度が0.4〜3dl/gの範囲が好ましく、さらには0.4〜1.5dl/g、特に0.5〜1.2dl/gの範囲が好ましい。
【0020】
また、DSCで測定した融点は、200〜260℃の範囲が好ましく、さらには210〜255℃、特に220〜253℃の範囲が好ましい。この融点が上限を越えると、溶融押出して成形する際に、流動性を高めるにはより高温にすることが必要になって熱劣化しやすくなり、一方、下限未満になると、製膜性は優れるものの、ポリエステルの持つ機械的特性などが損なわれやすくなる。
【0021】
一般に共重合ポリエステルは、ホモポリエステルに比較すると融点が低く、機械的強度が低下する傾向にある。しかし、本発明の共重合ポリエステルは、式(A)または式(B)で表されるジカルボン酸成分の合計の割合が全ジカルボン酸成分に対して90モル%以上を占める共重合ポリエステルであり、式(A)で表されるジカルボン酸成分のホモポリエステルに比べて融点は低くなるものの、成形品の機械的強度は同じ程度であるという優れた特性を有する。
【0022】
本発明における共重合ポリエステルのDSCで測定したガラス転移温度(以下、Tgと称することがある。)は、好ましくは80〜125℃、より好ましくは95〜123℃、特に好ましくは110〜120℃の範囲にある。Tgがこの範囲にあると、耐熱性および寸法安定性に優れたフィルムなどの成形体を得ることができる。融点やガラス転移温度は、共重合成分の種類と共重合量の制御などによって調整できる。
【0023】
[共重合ポリエステルの製造方法]
上記共重合ポリエステルは、公知のポリエステル製造方法にしたがって製造することができる。例えば、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸もしくはそのエステル形成性誘導体と例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸やテレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体と、例えばエチレングリコールとをエステル化反応もしくはエステル交換反応させ、ポリエステル前駆体を製造する。そして、得られたポリエステル前駆体を重縮合触媒の存在下で重縮合し、さらに必要に応じて固相重合することにより製造することができる。なお、前述の式(A)と(B)の割合が異なる2種類のポリマーを作り、前述の式(A)と(B)の割合が目的となるようにそれらを溶融混練してもよい。この場合、一方のポリエステルとして前記式(A)で表される芳香族ジカルボン酸成分が含まれないものを用いても構わない。
【0024】
上記ポリエステル前駆体を製造する工程では、エチレングリコールを全酸成分のモル数に対して、1.1〜6倍モル、さらに2〜5倍モル、特に3〜5倍モル用いることが生産性の点から好ましい。
【0025】
また、ポリエステル前駆体を製造する際の反応温度としては、エチレングリコールの沸点以上で行うことが好ましく、特に190〜250℃の範囲で行なうことが好ましい。190℃よりも低いと反応が十分に進行しにくく、250℃よりも高いと副反応物であるジエチレングリコールが生成しやすい。また、反応を常圧下で行うこともできるが、さらに生産性を高めるために加圧下で行ってもよい。より詳しくは、絶対圧力で10kPa以上200kPa以下、反応温度は通常150℃以上250℃以下、好ましくは180℃以上230℃以下で、反応時間10分以上10時間以下、好ましくは30分以上7時間以下行われるのが好ましい。
【0026】
このポリエステル前駆体を製造する工程では、公知のエステル化もしくはエステル交換反応触媒を用いてもよい。例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、チタン化合物などがあげられる。
【0027】
つぎに、重縮合温度は、得られる共重合ポリエステルの融点以上でかつ230〜280℃以下、より好ましくは融点より5℃以上高い温度から融点より30℃高い温度の範囲である。重縮合反応では通常50Pa以下の減圧下で行うのが好ましい。50Paより高いと重縮合反応に要する時間が長くなり且つ重合度の高い共重合ポリエステルを得ることが困難になる。
【0028】
重縮合触媒としては、少なくとも一種の金属元素を含む金属化合物が挙げられる。なお、重縮合触媒はエステル化反応やエステル交換反応の触媒として併用してもよい。金属元素としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、コバルト、ロジウム、イリジウム、ジルコニウム、ハフニウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。より好ましい金属としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、スズなどであり、中でも、チタン化合物はエステル化反応やエステル交換反応と重縮合反応との双方の反応で、高い活性を発揮するので好ましい。
【0029】
これらの触媒は単独でも、あるいは併用してもよい。かかる触媒量は、共重合ポリエステルの繰り返し単位のモル数に対して、0.001〜0.5モル%、さらには0.005〜0.2モル%が好ましい。
【0030】
[環状カルボジイミド化合物]
本発明において、カルボジイミド化合物は環状構造を有する(以下、本カルボジイミド化合物を環状カルボジイミド化合物と略記することがある。)。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
【0031】
環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していてよいことはいうまでもない。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に、10〜15が好ましい。
【0032】
ここで、環状構造中の原子数とは、環状構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15の範囲が選択される。
【0033】
環状構造は、下記式(C)で表される構造であることが好ましい。
【化2】

【0034】
式中、Qは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基である。ヘテロ原子とはこの場合、O、N、S、Pを指す。この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
【0035】
結合基は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであり、上記で規定される環状構造を形成するための必要炭素数を有する結合基が選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
結合基(Q)は、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
【0036】
【化3】

【0037】
式中、ArおよびArは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0038】
およびRは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。
【0039】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0040】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0041】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0042】
上記式(1−1)、(1−2)においてXおよびXは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0043】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0044】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0045】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0046】
上記式(1−1)、(1−2)においてs、kは0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。s及びkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。
【0047】
上記式(1−3)においてXは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0048】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0049】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0050】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0051】
また、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0052】
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として、以下(a)〜(c)で表される化合物が挙げられる。
【0053】
[環状カルボジイミド化合物(a)]
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(2)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(a)」ということがある。)を挙げることができる。
【0054】
【化4】

【0055】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(2)の化合物においては、脂肪族基、脂環族基、芳香族基は全て2価である。Qは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基であることが好ましい。
【0056】
【化5】

【0057】
式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらは全て2価である。
かかる環状カルボジイミド化合物(a)としては、以下の化合物が挙げられる。
【0058】
【化6】

【0059】
【化7】

【0060】
【化8】

【0061】
【化9】

【0062】
【化10】

【0063】
【化11】

【0064】
【化12】

【0065】
【化13】

【0066】
【化14】

【0067】
【化15】

【0068】
【化16】

【0069】
【化17】

【0070】
【化18】

【0071】
【化19】

【0072】
[環状カルボジイミド化合物(b)]
さらに、本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(3)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(b)」ということがある。)を挙げることができる。
【0073】
【化20】

【0074】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(3)の化合物においては、Qを構成する基の内一つは3価である。
は、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基であることが好ましい。
【0075】
【化21】

【0076】
式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Yは結合部であり、複数の環状構造がYを介して結合し、式(3)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(b)としては、下記化合物が挙げられる。
【0077】
【化22】

【0078】
【化23】

【0079】
【化24】

【0080】
【化25】

【0081】
[環状カルボジイミド化合物(c)]
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(4)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(c)」ということがある。)を挙げることができる。
【0082】
【化26】

【0083】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。ZおよびZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(4)の化合物において、Qは4価である。従って、これらの基の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
は、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基であることが好ましい。
【0084】
【化27】

【0085】
Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。ZおよびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。ZおよびZは結合部であり、複数の環状構造がZおよびZを介して結合し、式(4)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(c)としては、下記化合物を挙げることができる。
【0086】
【化28】

【0087】
【化29】

【0088】
【化30】

【0089】
[環状カルボジイミド化合物の製造方法]
本発明の環状カルボジイミド化合物の製造方法は特に限定無く、従来公知の方法により製造することができる。例として、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法などが挙げられる。
【0090】
また、本発明の環状カルボジイミド化合物は、以下の文献に記載された方法により製造することができる。
Tetrahedron Letters,Vol.34,No.32,515−5158,1993.
Medium−and Large−Membered Rings from Bis(iminophosphoranes):An Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.61,No.13,4289−4299,1996.
New Models for the Study of the Racemization Mechanism of Carbodiimides.Synthesis and Structure(X−ray Crystallography and 1H NMR) of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.43,No8,1944−1946,1978.
Macrocyclic Ureas as Masked Isocyanates, Henri Ulrich etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.48,No.10,1694−1700,1983.
Synthesis and Reactions of Cyclic Carbodiimides,
R.Richteretal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.59,No.24,7306−7315,1994.
A New and Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides from Bis(iminophosphoranea)and the System BocO/DMAP,Pedro Molina etal.
【0091】
製造する化合物に応じて、適切な製法を採用すればよいが、例えば、(1)下記式(d−1)で表されるニトロフェノール類、下記式(d−2)で表されるニトロフェノール類および下記式(e)で表される化合物を反応させ、下記式(f)で表されるニトロ体を得る工程、
【化31】

【化32】

(2)得られたニトロ体を還元して下記式(g)で表わされるアミン体を得る工程、
【化33】

(3)得られたアミン体とトリフェニルホスフィンジブロミドを反応させ下記式(h)で表されるトリフェニルホスフィン体を得る工程、および
【化34】

(4)得られたトリフェニルホスフィン体を反応系中でイソシアネート化した後、直接脱炭酸させることによって製造したものは、本願発明に用いる環状カルボジイミド化合物として好適に用いることができる。
(上記式中、ArおよびArは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい芳香族基である。EおよびEは各々独立に、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基およびメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−ブロモベンゼンスルホニルオキシ基からなる群から選ばれる基である。Arは、フェニル基である。Xは、下記式(i−1)から(i−3)の結合基である。)
【0092】
【化35】

【0093】
【化36】

【0094】
【化37】

【0095】
[組成物]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上記の共重合ポリエステルに、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状カルボジイミド化合物からなる改質剤を含有している必要がある。
上記の環状カルボジイミド化合物からなる改質剤は、前記共重合ポリエステル100質量部に対して、0.05〜10質量部、好ましくは0.08〜8質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部、特に好ましくは0.3〜2質量部含有している必要がある。該改質剤の含有量が0.05質量部未満の場合には、耐加水分解性の向上効果が不十分となり、一方、10質量部を超える場合にはポリエステル樹脂の溶融粘度が高くなり過ぎ、溶融押出の際に負荷が大きくなるので好ましくない。
【0096】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、そのカルボキシル末端基量が1〜20当量/10gであることが好ましく、より好ましい範囲は、1〜18当量/10g、特に好ましい範囲は1〜15当量/10gである。この末端基量が20当量/10gを超える場合には、耐加水分解性などの経時耐久性の改善効果が小さくなる場合があり、一方、1当量/10g未満とするためには、前記改質剤を多量に添加したり、共重合ポリエステルを長時間固相重合することが必要となり、生産性が低下しやすい。
【0097】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法は、前記環状カルボジイミド化合物を、前記共重合ポリエステルの重合反応系に添加しても、重合反応が完了した後に溶融混合してもよいが、重合反応が完了した後に混合するのが好ましい。この場合、本発明の環状カルボジイミド化合物を使用しているため、ペレット化する際に重合反応槽より取り出したとき、遊離イソシアネート化合物による臭いの発生がなく作業環境を維持することができる。また、一旦ペレット化した共重合ポリエステルを溶融押出し機を用いて溶融混合してもよく、本発明の環状カルボジイミド化合物を含有した共重合ポリエステルが押出し機から出てくるとき、遊離イソシアネート化合物による臭いの発生がなく作業環境を維持することができる。この場合には、前記環状カルボジイミド化合物を比較的高濃度に含有するポリエステルペレットをあらかじめ作製し、次いで共重合ポリエステルと溶融混合し、目的とする前述の式(A)および(B)の濃度を調整する方法が好ましい。この場合、前述の式(A)と(B)の割合が異なる2種類のポリマーを、前述の式(A)と(B)の割合が目的となるように溶融混練を行ってもよく、もちろん、一方のポリエステルとして前記式(A)で表される芳香族ジカルボン酸成分が含まれないものを用いても構わない。
【0098】
このようにして得られる本発明のポリエステル樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の熱可塑性ポリマー、紫外線吸収剤等の安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、顔料、核剤、充填剤あるいはガラス繊維、炭素繊維、層状ケイ酸塩などを必要に応じて配合してもよい。なお、他種熱可塑性ポリマーとしては、液晶性樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルイミド、ポリイミドなどが挙げられる。
【0099】
[フィルムの製造方法]
本発明のポリエステル樹脂組成物を原料とし、これを乾燥後、該ポリエステル樹脂組成物の融点(Tm:℃)ないし(Tm+50)℃の温度に加熱された押出機に供給して、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出す。この際、本発明の環状カルボジイミド化合物を含有した共重合ポリエステルがダイより出てくるとき、遊離イソシアネート化合物による臭いの発生がなく作業環境を維持することができる。なお、使用するポリエステル樹脂組成物は、1種類に限られず、例えば前述の式(A)の割合が多いポリマーと、前述の式(B)の多いポリマーとを作り、前述の式(A)と(B)の割合が目的の範囲となるように前記改質剤と共に溶融混練して用いてもよく、そのような方法を採用することで、前述の式(A)と(B)の割合を任意に且つ簡便に変更することができる。この押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化して未延伸フィルムとし、さらに該未延伸フィルムを二軸延伸することで二軸配向フィルムとすることができる。
【0100】
なお、後述の延伸を進行させやすくする観点から、冷却ドラムによる冷却は非常に速やかに行なうことが好ましく、20〜60℃の低温で行なうことが好ましい。このような低温で行うことで、未延伸フィルムの状態での結晶化が抑制され、その後の延伸をよりスムーズに行うことができる。
【0101】
二軸延伸としては、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸でもよい。
ここでは、逐次二軸延伸で、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行う製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸はポリエステルのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜8倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜8倍に延伸し、さらに熱処理としてポリマーの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒熱固定処理するのが好ましい。なお、熱固定の時間はさらに1〜15秒が好ましい。
【0102】
なお、通常であれば、延伸倍率を上げると製膜安定性が損なわれるが、本発明のポリエステル樹脂組成物は延伸性が高いので、そのような問題は無く、特に延伸倍率をより高くできることから、厚みが10μm以下、特に8μm以下の薄いフィルムで有用である。フィルム厚みの下限は特に制限されないが、通常1μm程度、好ましくは3μmである。
一方、縦延伸と横延伸とを同時に行う同時二軸延伸でも同様に延伸でき、上記逐次二軸延伸で説明した延伸倍率や延伸温度などを参考にすればよい。
【0103】
また、二軸配向フィルムが積層フィルムの場合、2種以上の溶融ポリエステル樹脂組成物をダイ内で積層してからフィルム状に押出し、好ましくはそれぞれのポリエステル樹脂組成物の融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度で押出すか、2種以上の溶融ポリエステル樹脂組成物をダイから押出した後に積層し、急冷固化して積層未延伸フィルムとし、ついで前述の単層フィルムの場合と同様な方法で二軸延伸および熱処理を行うとよい。このとき、全てのフィルム層が本発明のポリエステル樹脂組成物である必要はなく、少なくとも一つのフィルム層が本発明のポリエステル樹脂組成物からなるものであれば良い。また、二軸配向フィルムの表面に塗布層を設けてもよく、その場合、前記した未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムの片面または両面に所望の塗布液を塗布し、後は前述の単層フィルムの場合と同様な方法で二軸延伸および熱処理を行うことが好ましい。
【実施例】
【0104】
以下に実施例および比較例をあげて、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。
【0105】
(1)固有粘度
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
【0106】
(2)共重合量
(グリコール成分)試料10mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに80℃で溶解し、イソプロピルアミンを加えて十分に混合した後に、600MHzのH−NMRを日本電子株式会社製、JEOL A600を用いて80℃で測定し、それぞれのグリコール成分量を求めた。
(酸成分)試料60mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、150MHzの13C−NMRを日本電子株式会社製、JEOL A600を用いて140℃で測定し、それぞれの酸成分量を求めた。
【0107】
(3)温度膨張係数(αt)
得られたフィルムを、フィルムの幅方向(TD方向)が測定方向となるように幅4mmに切り出し、セイコーインスツル株式会社製、商品名TMA/SS6000に測定長20mmでセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、80℃で30分前処理し、その後室温まで降温させた。その後30℃から80℃まで2℃/minで昇温して、各温度でのサンプル長を測定し、次式より温度膨張係数(αt)を算出した。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を用いた。
αt={(L60−L40)}/(L40×△T)}+0.5×10−6
ここで、上記式中のL40は40℃のときのサンプル長(mm)、L60は60℃のときのサンプル長(mm)、△Tは20(=60−40)℃、0.5×10−6(/℃)は石英ガラスの温度膨張係数(αt)である。
【0108】
(4)湿度膨張係数(αh)
得られたフィルムを、フィルムの幅方向(TD方向)が測定方向となるように幅5mmに切り出し、ブルカー・エイエックスエス株式会社製、商品名TMA4000SAに測定長15mmでセットし、30℃の窒素雰囲気下で、湿度20%RHと湿度80%RHにおけるそれぞれのサンプルの長さを測定し、次式にて湿度膨張係数(αh)を算出した。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値をαhとした。
αh=(L80−L20)/(L20×△H)
ここで、上記式中のL20は20%RHのときのサンプル長(mm)、L80は80%RHのときのサンプル長(mm)、△H:60(=80−20)%RHである。
【0109】
(5)カルボキシル末端基量
得られたフィルムを、窒素雰囲気下、200℃でベンジルアルコールに溶解させた後、滴定法によりカルボキシル末端基量(当量/10g)を測定した。
【0110】
(6)耐加水分解性
得られたフィルムについて、フィルムの縦方向(MD方向)に100mm長、横方向(MD方向)に10mm幅に切り出して短冊状の試料片とし、121℃・2atm・濡れ飽和モード・100%RHに設定した環境試験機内に一定時間(100時間)放置する。その後試料片を取り出し、その縦方向の破断強度を5回測定し、平均値を求めた。その平均値を放置前の破断強度の測定値で割った値を破断強度保持率(%)とし、下記基準にて耐加水分解性を評価した。なお、耐加水分解性は破断強度保持率の高いものが良好と判断される。
破断強度保持率(%)=(処理時間100時間後の破断強度)/(処理前の破断強度)×100
◎:破断強度保持率 75%以上
○:破断強度保持率 60%以上75%未満
△:破断強度保持率 40%以上60%未満
×:破断強度保持率 40%未満
【0111】
(7)作業環境の良否:
樹脂組成物およびフィルム製造時、作業環境がイソシアネート臭により悪化するかどうかにより判定した。悪化しない場合には良と評価した。
【0112】
[参考例1]環状カルボジイミド化合物(I)の製造:
o−ニトロフェノール(0.11mol)と1,2−ジブロモエタン(0.05mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物A(ニトロ体)を得た。
【0113】
次に中間生成物A(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(1g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)200mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了する。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物B(アミン体)が得られた。
【0114】
次に攪拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させる。そこに中間生成物B(0.05mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下する。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物C(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
【0115】
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert-ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに、25℃で中間生成物C(0.05mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を精製することで、下記構造式にて示される環状カルボジイミド化合物(I)(MW=252)を得た。この構造はNMR,IRにより確認した。
【0116】
【化38】

【0117】
[参考例2]環状カルボジイミド化合物(II)の製造:
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
【0118】
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
【0119】
次に攪拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
【0120】
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させる。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記構造式に示す化合物(II)(MW=516)を得た。構造はNMR、IRにより確認した。
【0121】
【化39】

【0122】
[参考例3]
6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチル32kg(69.9モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル7.3kg(30.0モル)、エチレングリコール16.7kgを攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)を9.2g(15ミリモル%)添加し、反応槽全体を窒素により0.20MPaの圧力下で加熱し、圧力一定のまま内温を250℃まで上げた。その後反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルホスホノアセテート4.5g(20ミリモル%)を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。
【0123】
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、重合反応槽では250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、固有粘度0.62dl/gで、酸成分の30モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の70モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(PA1)を得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.3μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.3重量%となるように含有させた。
【0124】
[参考例4]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル30kg(123.0モル)、エチレングリコール15.3kgを攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)を5.3g(7ミリモル%)添加し、反応槽全体を窒素により0.1MPaの圧力下で加熱して、反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を240℃まで上げた。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルホスホノアセテート4.1g(15ミリモル%)を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。
【0125】
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、重合反応槽では250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、固有粘度0.61dl/gの芳香族ポリエステル(PB1)を製造した。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.3μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。
【0126】
[参考例5]
6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチル 13.5kg(29.5モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル 19.4kg(79.5モル)、エチレングリコール15.3kgを攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)を8.0g(12ミリモル%)添加し、反応槽全体を窒素により0.10MPaの圧力下で加熱、圧力一定のまま内温を245℃まで上げた。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルホスホノアセテート3.9g(16ミリモル%)を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。
【0127】
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、重合反応槽では250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、固有粘度0.63dl/gで、酸成分の73モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の27モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(PA2)を得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.3μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。
【0128】
[参考例6]
6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチル32kg(69.9モル)、ジメチルテレフタレート5.8kg(29.9モル)、エチレングリコール16.7kgを攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)を9.2g(15ミリモル%)添加し、反応槽全体を窒素により0.20MPaの圧力下で加熱し、反応の進行に従い圧力一定のまま内温を250℃まで上げた。その後反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルホスホノアセテート4.5g(20ミリモル%)を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。
【0129】
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、重合反応槽では250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、固有粘度0.63dl/gで、酸成分の30モル%がテレフタル酸成分、酸成分の70モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(PA3)を得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.3μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。
【0130】
[参考例7]
テレフタル酸ジメチル35kg(180.4モル)、エチレングリコール22.4kgを攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)を5.5g(5ミリモル%)添加し、反応槽全体を窒素により0.1MPaの圧力下で加熱して、反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を240℃まで上げた。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルホスホノアセテート4.0g(10ミリモル%)を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。
【0131】
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、重合反応槽では250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、固有粘度0.61dl/gの芳香族ポリエステル(PB2)を製造した。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.3μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。
【0132】
[実施例1]
参考例3および4で得られた芳香族ポリエステル(PA1)と(PB1)とを、重量比で38:62の割合で、さらに参考例1で作製した環状カルボジイミド化合物(I)を芳香族ポリエステル100質量部に対して1質量部の割合で混合し、押し出し機に供給して295℃(平均滞留時間:20分)でダイから溶融状態で回転中の温度50℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が135℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度150℃で横延伸倍率8.0倍、熱固定処理(200℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ5.0μmの二軸延伸フィルムを得た。操作中、悪臭は感じられず作業環境は良好であった。得られたポリエステル樹脂および二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
(ダイから溶融状態で押出されるポリエステル樹脂について一部サンプリングを行い測定を行った。)
【0133】
[実施例2]
参考例3および4で得られた芳香族ポリエステル(PA1)と(PB1)とを、重量比で21:79の割合で、さらに参考例2で作製した環状カルボジイミド化合物(II)を芳香族ポリエステル100質量部に対して1質量部の割合で混合し、押し出し機に供給して295℃(平均滞留時間:20分)でダイから溶融状態で回転中の温度50℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が140℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.6倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度155℃で横延伸倍率7.4倍、熱固定処理(200℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ5.0μmの二軸延伸フィルムを得た。操作中、悪臭は感じられず作業環境は良好であった。得られたポリエステル樹脂および二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
(ダイから溶融状態で押出されるポリエステル樹脂について一部サンプリングを行い測定を行った。)
【0134】
[実施例3]
参考例5で得られた芳香族ポリエステル(PA2)と、参考例2で作製した環状カルボジイミド化合物(II)を芳香族ポリエステル100質量部に対して0.5質量部の割合で混合しそれ以降は実施例1と同様におこなった。操作中、悪臭は感じられず作業環境は良好であった。得られたポリエステル樹脂および二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
【0135】
[実施例4]
参考例3および4で得られた芳香族ポリエステル(PA1)と(PB1)とを、重量比60:40の割合で、さらに参考例2で作製した環状カルボジイミド化合物(II)を芳香族ポリエステル100質量部に対して1質量部の割合で混合し、押し出し機に供給して300℃(平均滞留時間:15分)でダイから溶融状態で回転中の温度50℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が140℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度145℃で横延伸倍率7.4倍、熱固定処理(205℃で5秒間)および冷却を行い、厚さ5.0μmの二軸延伸フィルムを得た。操作中、悪臭は感じられず作業環境は良好であった。得られたポリエステル樹脂および二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
【0136】
[実施例5]
参考例6および7で得られた芳香族ポリエステル(PA3)と(PB2)とを、重量比で65:35の割合で、さらに参考例1で作製した環状カルボジイミド化合物(I)を芳香族ポリエステル100質量部に対して0.5質量部の割合で混合し、押し出し機に供給して290℃(平均滞留時間:20分)でダイから溶融状態で回転中の温度40℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が110℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度115℃で横延伸倍率5.5倍、熱固定処理(205℃で5秒間)および冷却を行い、厚さ5.0μmの二軸延伸フィルムを得た。操作中、悪臭は感じられず作業環境は良好であった。得られたポリエステル樹脂および二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
【0137】
[実施例6]
環状カルボジイミド化合物(I)を芳香族ポリエステル100質量部に対して2質量部の割合に変更したほかは実施例1と同様におこなった。操作中、悪臭は感じられず作業環境は良好であった。得られたポリエステル樹脂および二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
【0138】
[比較例1]
実施例1において、環状カルボジイミド化合物(I)の代わりにポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド)(分子量:約10000)添加した以外は同様な操作を繰り返した。操作中、イソシアネートガス起因の悪臭が発生し、作業環境は良好ではなかった。
得られたポリエステル樹脂および二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
【0139】
[比較例2]
実施例1において、環状カルボジイミド化合物(I)を添加しなかったこと以外は同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル樹脂および二軸配向フィルムの特性を表1に示す。
【0140】
【表1】

【0141】
表1中の、B成分は2,6−ナフタレンジカルボン酸成分またはテレフタル成分、A成分は6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、TDはフィルムの幅方向を示す。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明のポリエステル樹脂組成物からなる二軸配向ポリエステルフィルムは、従来のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートやポリアルキレン−6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエートでは達成できなかったような優れた寸法安定性を有し、さらに耐加水分解性などの経時耐久性にも優れた性能を有することから、高密度磁気記録媒体のベースフィルムや太陽電池のバックシート用ベースフィルムとして、好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)または下記式(B)で表されるジカルボン酸成分の合計の割合が全ジカルボン酸成分の90〜100モル%であると共に、下記式(A)で表されるジカルボン酸成分が全ジカルボン酸成分の5〜80モル%を占め、かつ、全ジオール成分の90〜100モル%が炭素数2〜10のアルキレングリコールである共重合ポリエステルが、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状カルボジイミド化合物を含有するポリエステル樹脂組成物。
【化1】

(式(A)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である)
(式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基である)
【請求項2】
環状カルボジイミド化合物が、下記式(C)で表される化合物である請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【化2】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価
の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項3】
環状カルボジイミド化合物を、共重合ポリエステル100質量部に対して、0.05〜10質量部含有する請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなる二軸配向フィルム。

【公開番号】特開2011−256335(P2011−256335A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133898(P2010−133898)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】