説明

ポリエステル樹脂組成物の積層体

【課題】バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステル樹脂フィルムからなる層を有する積層体を提供する。
【解決手段】少なくとも2層を有する積層体10であって、第1の層11が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50〜95質量%含んでなり、第2の層12が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来の原料から得られたバイオマスポリエステル樹脂組成物からなる層を有する積層体に関し、より詳細には、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール成分として用いたポリエステルを含む樹脂組成物からなる第1の層を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、その機械的特性、化学的安定性、耐熱性、透明性などに優れ、かつ安価であることから、各種産業用途に広く使用されている。ポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位とを重縮合して得られ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す場合がある)は、エチレングリコールとテレフタル酸とを原料として、これらをエステル化反応させた後に重縮合反応させて製造されている。これらの原料は化石資源である石油から生産され、例えば、エチレングリコールはエチレンから、テレフタル酸はキシレンから工業的に生産されている。
【0003】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、汎用高分子材料であるポリエステルをこれらバイオマス原料から製造する試みも行われている。
【0004】
例えば、バイオマス原料を用いたポリエステルとして、バイオマス原料のひとつであるイソソルビドとテレフタル酸およびエチレングリコールからなるポリエステルが提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、トウモロコシやサトウキビ等の植物から得られるデンプンや糖類を微生物で発酵させて得られたバイオマスエタノールが実用化されており、このバイオマスエタノールからエチレンを経由して工業的にエチレングリコールを製造することにも成功している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−512304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ポリエステルの原料であるエチレングリコールに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレングリコールに代えて、植物由来のエチレングリコールをその原料としたポリエステルは、従来の化石燃料から得られるエチレングリコールを用いて製造されたポリエステルと、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。さらに、このようなバイオマス由来のポリエステルからなる層を有する積層体も、従来の化石燃料から得られる原料からなる積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルを含む樹脂組成物からなる層を有する積層体を提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造された積層体と機械的特性等の物性面で遜色ないポリエステル樹脂フィルムの積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による積層体は、少なくとも2層を有するものであって、
第1の層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50〜95質量%含んでなり、
第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の態様においては、前記樹脂組成物が、ジオール単位が化石燃料由来のジオールまたはバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルからなる樹脂製品をリサイクルして得られるポリエステルをさらに含んでなることが好ましい。
【0011】
本発明の態様においては、前記樹脂組成物が、前記リサイクルして得られるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、5〜45質量%含んでなることが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、前記化石燃料由来のジカルボン酸がテレフタル酸であることが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、前記樹脂組成物が添加剤をさらに含んでなることが好ましい。
【0014】
本発明の態様においては、前記添加剤を、樹脂組成物全体に対して5〜50質量%含んでなることが好ましい。
【0015】
本発明の態様においては、前記添加剤が、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料からなる群から選択される1種または2以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の態様においては、前記ポリエステル中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10〜19%であることが好ましい。
【0017】
本発明の態様においては、第1の層が2軸延伸されてなる樹脂フィルムであることが好ましい。
【0018】
本発明の態様においては、無機物または無機酸化物からなる第3の層をさらに有することが好ましい。
【0019】
本発明の態様においては、積層体が、積層フィルムまたは包装用袋であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少なくとも2層を有する積層体において、第1の層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50〜95質量%含んでなることで、カーボンニュートラルな樹脂からなる層を有する積層体を実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明のポリエステル樹脂組成物の積層体は、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステル樹脂組成物の積層体と比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないポリエステル樹脂組成物を用いているため、従来のポリエステル樹脂組成物の積層体を代替することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による積層体の一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明による積層体の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明による積層体の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<積層体>
本発明による積層体は、第1の層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50〜95質量%、好ましくは50〜90質量%含んでなることで、カーボンニュートラルなポリエステル樹脂からなる層を有する積層体を実現できる。また、バイオマス由来のエチレングリコールは、従来の化石燃料由来のエチレングリコールと化学構造が同じであるため、バイオマス由来のエチレングリコールを用いたポリエステルは、従来の化石燃料由来の原料から重合したポリエステルとなんら変わらず、従って、本発明の積層体の第1の層は、従来のポリエステルフィルムと機械的特性等の物性面で遜色がない。また、したがって、本発明の積層体は、カーボンニュートラルなポリエステル樹脂からなる層を少なくとも1層有するため、従来の化石燃料から得られる原料から製造された積層体に比べて、化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、第2の層は、従来の化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる樹脂層である。第1の層と第2の層を組み合わせて積層体を形成することで、耐熱性、耐圧性、耐水性、ヒートシール性、耐ピンホール性、耐突き刺し性、およびその他の物性を付与ないし向上させることができる。また、好ましい態様によれば、積層体は、無機物または無機酸化物からなる第3の層をさらに有してもよい。
【0023】
本発明の一態様によれば、第1の層と、第2の層とを有する積層体が提供される。具体的に、本発明による積層体の一例の模式断面図を図1に示す。図1に示される積層体10は、印刷層13が形成された第1の層11と、第2の層12とを有してなり、第1の層11の印刷面13と、第2の層12とは、接着層14を介して貼合されてなる。
【0024】
本発明の一態様によれば、第1の層と、第2の層と、第3の層とを有する積層体が提供される。具体的に、本発明による積層体の一例の模式断面図を図2に示す。図2に示される積層体20は、第1の層21と、第2の層22と、第3の層23と、第2の層25とをこの順序で有してなり、各層は、それぞれ接着層24を介して貼合されてなる。
【0025】
本発明の一態様によれば、第1の層と、第2の層と、第3の層とを有する積層体が提供される。具体的に、本発明による積層体の一例の模式断面図を図3に示す。図2に示される積層体30は、第1の層31と、第2の層32と、第3の層33と、第2の層34とをこの順序で有してなる。以下、本発明の各層構成について説明する。
【0026】
<第1の層>
本発明において、第1の層は、以下で説明するポリエステルを主成分として含む樹脂組成物からなるものである。なお、積層体は、第1の層を2層以上有してもよい。第1の層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0027】
<ポリエステル>
第1の層を形成する樹脂組成物中に含まれるポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなり、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを用い、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を用いて重縮合反応により得られるものである。
【0028】
バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、市販のバイオマスエチレングリコールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から市販されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
【0029】
ポリエステルのジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を使用する。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体を制限なく使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
【0030】
また、脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸等の、通常炭素数が2以上40以下の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体として、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の低級アルキルエステルや例えば無水コハク酸等の上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物が挙げられる。これらのなかでも、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸又はこれらの混合物が好ましく、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸及びコハク酸のメチルエステル、又はこれらの混合物がより好ましい。
【0031】
これらのジカルボン酸は単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0032】
第1の層を形成する樹脂組成物中に含まれるポリエステルは、上記のジオール成分とジカルボン酸成分に加えて、第3成分として共重合成分を加えた共重合ポリエステルであっても良い。共重合成分の具体的な例としては、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸及び/又はその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の多官能化合物が挙げられる。これらの共重合成分の中では、高重合度の共重合ポリエステルが容易に製造できる傾向があるため、特に2官能及び/又は3官能以上のオキシカルボン酸が好適に使用される。その中でも、3官能以上のオキシカルボン酸の使用は、後述する鎖延長剤を使用することなく、極少量で容易に高重合度のポリエステルを製造できるので最も好ましい。
【0033】
また、上記ポリエステルは、これらの共重合ポリエステルを鎖延長(カップリング)した高分子量のポリエステルであってもよい。鎖延長剤としては、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできるが、その量は、通常ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対し、カーボネート結合ならびにウレタン結合が通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。
【0034】
カーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物が使用可能である。
【0035】
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合体、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが挙げられる。
【0036】
第1の層を形成するポリエステルは、上記したジオール単位とジカルボン酸単位とを重縮合させる従来公知の方法により得ることができる。具体的には、上記のジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造することができる。
【0037】
ポリエステルを製造する際に用いるジオールの使用量は、ジカルボン酸又はその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化及び/又はエステル交換反応及び/又は縮重合反応中の留出があることから、0.1〜20モル%過剰に用いられる。
【0038】
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下に行うのが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
【0039】
重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く第1族〜第14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ−ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、特に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重合時に溶融或いは溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。
【0040】
チタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート及びこれらの混合チタネートが挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等も好適に用いられる。更には、酸化チタンや、チタンと珪素を含む複合酸化物も好適に用いられる。これらの中でも、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)が好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)が好ましい。
【0041】
ジルコニウム化合物としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテイト、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートならびにそれらの混合物が挙げられる。また、酸化ジルコニウムや、例えばジルコニウムと珪素を含む複合酸化物を使用してもよい。これらの中でも、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシドが好ましい。
【0042】
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0043】
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒使用量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。ここで使用する触媒量としては、その使用量を低減させる程生成するポリエステルの末端カルボキシル基量が低減されるので使用触媒量を低減させる方法は好ましい態様である。
【0044】
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、通常、150〜260℃の範囲であり、反応雰囲気は、通常窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。また、反応圧力は、通常、常圧〜10kPaである。また、反応時間は、通常、1時間〜10時間程度である。
【0045】
上記した製造工程において、鎖延長剤(カップリング剤)を反応系に添加してもよい。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で、無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
【0046】
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリエステルは公知の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。具体的には、ジオールとジカルボン酸とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、質量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のポリエステルプレポリマーに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高分子量化したポリエステル系樹脂を得ることができる。質量平均分子量が20,000以上のプレポリマーであれば、少量のカップリング剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステルを製造することができる。
【0047】
得られたポリエステルは、固化させた後、さらに重合度を高めたり、環状三量体などのオリゴマーを除去するために、必要に応じて固相重合を行ってもよい。具体的には、ポリエステルをチップ化して乾燥させた後、100〜180℃の温度で1〜8時間程度加熱してポリエステルを予備結晶化させ、続いて、190〜230℃の温度で、不活性ガス流通下または減圧下で1〜数十時間加熱することにより行われる。
【0048】
上記のようにして得られるポリエステルの固有粘度(オルトクロロフェノール溶液で、35℃にて測定)は、0.5dl/g〜1.5dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.6dl/g〜1.2dl/gである。固有粘度が0.5dl/g未満の場合は引裂き強度をはじめ、半透過反射フィルム基材としてポリエステルフィルムに要求される機械特性が不足することがある。他方、固有粘度が1.5dl/gを越えると、原料製造工程およびフィルム製膜工程における生産性が損なわれる。
【0049】
ポリエステルの製造工程において、または製造されたポリエステルには、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤を添加してもよく、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、ポリエステル樹脂組成物全体に対して、5〜50質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲で添加される。
【0050】
第1の層を形成する樹脂組成物中に5〜45質量%の割合で含まれてもよいポリエステル(以下、リサイクルポリエステルともいう)は、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなり、ジオール単位としてジオール単位が化石燃料由来のジオールまたはバイオマス由来のエチレングリコールを用い、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を用いて重縮合反応により得られたポリエステル樹脂からなる製品をリサイクルして得られるポリエステルである。
【0051】
リサイクルポリエステルのもとになる樹脂(すなわち、リサイクル前のポリエステル樹脂)としては、ジオール単位およびジカルボン酸単位がともに化石燃料由来の原料からなるものであっても、上記したようなバイオマスポリエステルであってもよい。
【0052】
リサイクルポリエステルのもとになる樹脂に使用される化石燃料由来のジオールとしては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、およびその誘導体が挙げられ、従来のポリエステルのジオール単位として用いられるものを好適に使用することができる。脂肪族ジオールとは、2個のOH基を有する脂肪族及び脂環式化合物であれば特に制限はされないが、炭素数の下限値が2以上であり、上限値が通常10以下、好ましくは6以下の脂肪族ジオールが挙げられる。具体的には、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。これらの中でも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロピレングリコ−ル及び1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルが好ましく、特にエチレングリコールが好ましい。
【0053】
上記のようにして得られるポリエステルを含む樹脂組成物は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、ポリエステル中の全炭素に対して10〜19%含まれることが好ましい。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエステル中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、ポリエステル中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioを、以下のように定義する。
bio(%)=PC14/105.5×100
【0054】
ポリエチレンテレフタレートを例にとると、ポリエチレンテレフタレートは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエステル中のバイオマス由来の炭素の含有量Pbioは20%となる。本発明においては、樹脂組成物中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10〜19%であることが好ましい。樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量が10%未満であると、カーボンオフセット材料としての効果が乏しくなる。一方、上記したように、樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量は20%に近いほど好ましいが、フィルムの製造工程上の問題や物性面から、樹脂中には上記したようなリサイクルポリエステルや添加剤を含む方が好ましいため、実際の上限は18%となる。
【0055】
<樹脂フィルム>
積層体の第1の層は、上記した樹脂組成物からなるポリエステル樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂組成物をフィルムに加工するには、従来のポリエステル樹脂からフィルムを成形する方法を採用することができる。具体的には、上記した樹脂組成物を乾燥させた後、ポリエステルの融点以上の温度(Tm)〜Tm+70℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、樹脂組成物を溶融し、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化することによりフィルムを成形することができる。溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。
【0056】
積層体の第1の層は、2軸延伸されていることが好ましい。2軸延伸は従来公知の方法で行うことができる。例えば、上記のようにして冷却ドラム上に押し出されたフィルムを、続いて、ロール加熱、赤外線加熱などで加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムとする。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。縦延伸は、通常、50〜100℃の温度範囲で行われる。また、縦延伸の倍率は、フィルム用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上4.2倍以下とするのが好ましい。延伸倍率が2.5倍未満の場合は、ポリエステルフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムを得ることが難しい。
【0057】
縦延伸されたフィルムは、続いて横延伸、熱固定、熱弛緩の各処理工程を順次施して二軸延伸フィルムとなる。横延伸は、通常、50〜100℃の温度範囲で行われる。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上5.0倍以下が好ましい。2.5倍未満の場合はフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムが得られにくく、5.0倍を超える場合は製膜中に破断が発生しやすくなる。
【0058】
横延伸のあと、続いて熱固定処理を行うが、好ましい熱固定の温度範囲は、ポリエステルのTg+70〜Tm−10℃である。また、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。さらに熱収縮率の低滅が必要な用途については、必要に応じて熱弛緩処理を行ってもよい。
【0059】
上記のようにして得られる樹脂フィルムは、延伸フィルムの厚さは、その用途に応じて任意であるが、通常、5〜500μm程度である。このような樹脂フィルムの破断強度は、MD方向で5〜40kg/mm、TD方向で5〜35kg/mmであり、また、破断伸度は、MD方向で50〜350%、TD方向で50〜300%である。また、150℃の温度環境下に30分放置した時の収縮率は、0.1〜5%である。このように、本発明による樹脂組成物からなるフィルムは、従来の化石燃料由来の材料のみから製造されるポリエステルフィルムの物性と同等である。
【0060】
<第2の層>
本発明において、第2の層は、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる樹脂層である。第2の層は、従来公知の原料を用いて形成することができ、その組成および形成方法は、特に限定されない。積層体が、第2の層をさらに有することで、耐熱性、耐圧性、耐水性、ヒートシール性、耐ピンホール性、耐突き刺し性、およびその他の物性を付与ないし向上させることができる。なお、積層体は、第2の層を2層以上有してもよい。第2の層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0061】
第2の層としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体またはアイオノマー等樹脂を使用できる。これらの樹脂を押し出しラミネート法により形成しても良いし、予め、Tダイ法またはインフレーション法等により製膜したフィルムとして、耐熱性基材層とドライラミネートあるいは押出ラミネート法等により積層しても良い。
【0062】
また、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、シリカ蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミナ蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、シリカ蒸着延伸ナイロンフィルム、アルミナ蒸着延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールコート延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロン6/メタキシリレンジアミンナイロン6共押共延伸フィルムまたはポリプロピレン/ エチレンービニルアルコール共重合体共押共延伸フィルム等のいずれか、またはこれらの2 以上のフィルムを積層した複合フィルムであってもよい。
【0063】
<第3の層>
本発明において、第3の層は、無機物または無機酸化物からなるものであり、無機物もしくは無機酸化物の蒸着膜または金属箔からなるものが好ましい。蒸着膜は、従来公知の無機物または無機酸化物を用いて、従来公知の方法により形成することができ、その組成および形成方法は特に限定されない。積層体が、第3の層をさらに有することで、酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性や、可視光および紫外線等の透過を阻止する遮光性を、付与ないし向上させることができる。なお、積層体は、第3の層を2層以上有してもよい。第3の層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0064】
蒸着膜としては、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の無機物または無機酸化物の蒸着膜を使用することができる。特に、包装用材料(袋)等に適するものとしては、アルミニウム金属の蒸着膜、あるいは、ケイ素酸化物またはアルミニウム金属もしくはアルミニウム酸化物の蒸着膜を用いるのがよい。
【0065】
無機酸化物の表記は、例えば、SiO、AlO等のようにMO(ただし、式中、Mは、無機元素を表し、Xの値は、無機元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。Xの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0〜2、アルミニウム(Al)は、0〜1.5、マグネシウム(Mg)は、0〜1、カルシウム(Ca)は、0〜1、カリウム(K)は、0〜0.5、スズ(Sn)は、0〜2、ナトリウム(Na)は、0〜0.5、ホウ素(B)は、0〜1、5、チタン(Ti)は、0〜2、鉛(Pb)は、0〜1、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は、0〜1.5の範囲の値をとることができる。上記において、X=0の場合、完全な無機単体(純物質)であり、透明ではなく、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。包装用材料には、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)が好適に使用され、ケイ素(Si)は、1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は、0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0066】
本発明において、上記のような無機物または無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、使用する無機物または無機酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å位、好ましくは、100〜1000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。更に具体的に説明すると、アルミニウムの蒸着膜の場合には、膜厚50〜600Å位、更に、好ましくは、100〜450Å位が望ましく、また、酸化アルミニウムあるいは酸化珪素の蒸着膜の場合には、膜厚50〜500Å位、更に、好ましくは、100〜300Å位が望ましいものである。
【0067】
蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ−ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0068】
また、他の態様によれば、第3の層は、金属を圧延して得られた金属箔であってもよい。金属箔としては、従来公知の金属箔を用いることができる。酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性や、可視光および紫外線等の透過を阻止する遮光性の点からは、アルミニウム箔等が好ましい。
【0069】
<他の層>
本発明による積層体は、第1〜第3の層以外に、その他の層を少なくとも1層さらに有してもよい。その他の層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。その他の層は、第1〜第3の層のいずれか1層または2層以上の上に、形成することができる。その他の層としては、例えば、印刷層や接着層を挙げることができる。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、その形成方法は特に限定されない。また、接着層は、いずれか2層をラミネートにより貼合するために形成される、接着剤層または接着樹脂層である。ラミネート用接着剤としては、例えば、1液あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他等の溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等のラミネート用接着剤を使用することができる。上記の接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で塗布することができる。その塗布量としては、0.1g/m〜10g/m(乾燥状態)位が好ましく、1g/m〜5g/m(乾燥状態)位がより好ましい。
【0070】
また、接着樹脂層としては、熱可塑性樹脂層からなる樹脂層が使用される。具体的には、接着樹脂層の材料としては、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン・αオレフィンとの共重合体樹脂、エチレン・ポリプロピレン共重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレン・マレイン酸共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂、無水マレイン酸をポリオレフィン樹脂にグラフト変性した樹脂等を使用することができる。これらの材料は、一種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
<層構成>
本発明の積層体の層構成については、第1の層および第2の層をそれぞれ少なくとも1層有するものであれば、特に限定されず、従来の積層フィルムと同様の層構成であってもよい。また、例えば、PET/PE(PEF)、PET/CPP、PET/CNY、PET/PET/PE、PET/PET/CPP、PET/AL/PE、PET/AL/CPP、PET/ONY/PE、PET/ONY/CPP、ONY/PET/PE、ONY/PET/CPP、PET/PVA/PE、PET/PVA/CPP、PET/PVC/PE、PET/PVC/CPP、PET/AL/ONY/PE、PET/AL/ONY/CPP、PET/ONY/AL/PE、PET/ONY/AL/CPP、PET/紙/PE、PET/紙/CPP、紙/AL/PET/PE、紙/AL/PET/CPP、およびOPP/PET/AL/OPP等が挙げられる。また、バリアフィルムと積層してもよい。例えば、PET/AL蒸着PET/CPP、ONY/透明蒸着PET/CPP、およびPET/AL蒸着CPP等が挙げられる。なお、各略称の名称は、以下のとおりである。PET:ポリエチレンテレフタレート、PE:ポリエチレン、PEF:ポリエチレンフィルム、CNY:無延伸ナイロン、ONY:延伸ナイロン、AL:アルミニウム箔、CPP:未延伸ポリプロピレン、OPP:二軸延伸ポリプロピレン、PVA:ポリビニルアルコール、PVC:ポリ塩化ビニル。
【0072】
<加工処理>
本発明による積層体には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。また、本発明による積層体に、ラミネート加工(ドライラミネートや押し出しラミネート)、製袋加工、およびその他の後処理加工を施して、成型品を製造することもできる。
【0073】
<用途>
本発明による積層体は、包装製品、各種ラベル材料、蓋材、シート成型品、ラミネートチューブ等の用途に好適に使用することができ、特に、積層フィルムまたは包装用袋(例えば、ピロー袋、スタンディングパウチや4方パウチ等のパウチ)が好ましい。積層体の厚さは、その用途に応じて、適宜決定することができる。例えば、5〜500μm、好ましくは10〜300μm程度の厚みのフィルムないしシート状の形態で用いられる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
実施例1
<バイオマス由来のポリエステルの合成>
テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とをスラリーとして反応槽に供給し、常法の直重方法で、エステル化反応を240℃で5時間行った。その後、トリメチルフォスフェート(アルドリッチ社製)を0.013質量部添加(酸成分に対して15mmol%)してから高温真空条件下の重合反応に移行させた。まず、40分間で、真空度を4000Pa、重合温度280℃にまで昇温し、ついでその重合温度280℃のまま、真空度を200Paまで下げて溶融重合反応を行った。反応時間は3時間であった。合成したポリマーは、ストランドの形で流水中に吐出し、ペレタイザによってペレット化した。そのペレットを160℃において5時間乾燥後、窒素雰囲気下50Paの真空下205℃で固相重合して固有粘度0.8dl/gのポリマーを得た。なお、固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン(成分比:3/2)溶媒を用い、35℃で測定した溶融粘度から算出した。得られたポリマーの示差熱分析(装置:島津製作所DSC−60、測定条件:ヘリウムガス中、6℃/分で昇温)を行ったところ、ガラス転移温度は69℃を示し、化石燃料由来の原料から得られる既知のポリエチレンテレフタレートと同等であった。また、得られたバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートの放射製炭素測定を行ったところ、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は16%であった。
【0076】
<フィルムの作製1>
上記のようにして得られたポリエチレンテレフタレートペレット90質量部と、滑剤として平均粒子径0.9μmの多孔性シリカを200ppm含む化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートマスターバッチ10質量部とを乾燥した後押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、低速側駆動ロールの速度を6.5m/min、高速側駆動ロールの速度を22m/minとして、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して厚みが12.02μmである二軸延伸ポリエステルフィルム1を得た。
【0077】
<フィルムの作製2>
上記のようにして得られたポリエチレンテレフタレートペレット60質量部と、リサイクルPET(フィルム製膜時の耳ロス等の製造工程内ロス部分をリペレットしたもの)30質量部と、上記で使用したポリエチレンテレフタレートマスターバッチ10質量部とを乾燥した後押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、低速側駆動ロールの速度を6.5m/min、高速側駆動ロールの速度を22m/minとして、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して厚みが12.13μmである二軸延伸ポリエステルフィルム2を得た。
【0078】
<フィルムの作製3>
従来の化石燃料由来の原料から製造されているポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.83dl/g)60質量部と、リサイクルPET(フィルム製膜時の耳ロス等の製造工程内ロス部分をリペレットしたもの)30質量部と、上記で使用したポリエチレンテレフタレートマスターバッチ10質量部とを乾燥した後押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、低速側駆動ロールの速度を6.5m/min、高速側駆動ロールの速度を22m/minとして、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して厚みが12.06μmである二軸延伸ポリエステルフィルム3を得た。
【0079】
<放射製炭素測定>
得られたフィルム1の放射製炭素測定を行ったところ、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は14%であった。また、フィルム2および3についても同様に放射製炭素測定を行ったところ、バイオマス由来の炭素の含有量はそれぞれ、10%および0%であった。
【0080】
<フィルムの評価>
得られた各フィルムのMD方向(巻き取り方向)とTD方向(MD方向と90度の角度のなす方向)のそれぞれから、幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、引張試験機(テンシロンRTC−125A、オリエンテック社製)を用いて、温度23℃、湿度50RH%の環境下において、試験片の強伸度測定を行った。また、MD方向およびTD方向のF5値(フィルムが5%伸張したときの引張強度)を測定した。MD方向およびTD方向それぞれの引張強度(kg/mm)および破断伸度(%)、ならびにF5値(kg/mm)は、表1に示される通りであった。
【0081】
また、MD方向とTD方向のそれぞれから切り出した試験片を150℃の加熱オーブンに入れ、JIS/C−2318に準拠した150℃で30分熱処理したときの熱収縮率を測定した。結果は、表1に示される通りであった。
【0082】
また、上記で得られた各フィルムを、幅50mm、長さ50mmに切り出して試験片とし、この試験片を用いてヘイズメーター(NDH4000、日本電色工業社製)により、23℃、湿度50RH%の環境下でのフィルムのヘイズ測定を行った。測定は、JIS K7136:2000に準拠して行った。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
【0083】
また、各フィルムの表面にコロナ処理を行ったものと、行わないもののそれぞれについて、幅50mm、長さ50mmに切り出した試験片に、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業社製)を使用して、23℃、湿度50RH%の環境下での、ぬれ張力を測定した。測定はJIS K6768:1999に準拠して行った。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
【0084】
また、上記で得られた表面にコロナ処理を施した試験片どうしの摩擦係数、およびコロナ処理を行わなかった試験片どうしの摩擦係数を、摩擦係数測定器(AFT−200、大栄科学精器製作所製)を用いて、23℃、湿度50RH%の環境下で測定した。測定はJIS K7125:1999に準拠して行った。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
【0085】
また、比較対照として、一般のポリエステルフィルム4(E−5100、東洋紡績社製)を用意した。フィルム4の物性のカタログ値を表1に併記する。
【0086】
【表1】

【0087】
表1からも明らかなように、バイオマス由来のエチレングリコールを用いて合成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(バイオマスPETフィルム)1および2は、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステルフィルム(PETフィルム)3〜4と比較しても遜色ない物性を有することがわかる。
【0088】
実施例1
<積層体の作製1>
上記のようにして得られたバイオマスPETフィルム1(厚さ12μm)の一方の面にコロナ処理を施した。そして、バイオマスPETフィルム1のコロナ処理面に、印刷層(絵柄及び白押さえ)を形成した。次に、バイオマスPETフィルム1の印刷面と、一般の直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製:T.U.X FC−D、厚さ80μm)とをドライラミネートで貼合して、積層フィルムを得た。印刷インキは東洋インキ社製のNEW LP スーパーを使用した。ドライラミネートによる貼合にはウレタン系接着剤(三井化学社製:タケラックA−515V/タケネートA−5)を使用し、乾燥時の塗布量が3.5g/mになるようにグラビア版にて塗布した。貼合後、40℃×48時間のエージングを行った。この積層フィルムは、図1に示されるような層構成を有していた。この積層フィルムを使用して、外寸法100mm×140mm、折り込み巾30mm、外周部のシール巾5mmのスタンディングパウチを作成した。
【0089】
実施例2
<積層体の作製2>
上記のようにして得られたバイオマスPETフィルム1(厚さ12μm)と、一般のナイロンフィルム(東洋紡績社製:ハーデンN1200、厚さ15μm)と、アルミ箔(日本製箔社製:1N30材、厚さ7μm)と、未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製:FRTK−G、厚さ70μm)とをこの順序でドライラミネートで貼合して、積層フィルムを得た。ドライラミネートによる貼合にはウレタン系接着剤(三井化学社製:タケラックA−515V/タケネートA−5)を使用し、乾燥時の塗布量が3.5g/mになるようにグラビア版にて塗布した。貼合後、40℃×48時間のエージングを行った。この積層フィルムは、図2に示されるような層構成を有していた。この積層フィルムを使用して、外寸法130mm×170mm、外周部のシール巾10mmの4方パウチを作成した。
【0090】
実施例3
<積層体の作製3>
上記のようにして得られたバイオマスPETフィルム1(厚さ12μm)と、アルミ箔(日本製箔社製:1N30材、厚さ7μm)とを押し出しラミネート法により300℃で押し出した低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製:Z568、厚さ15μm)で貼合した。アルミ箔上にも、押し出しラミネート法により低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製:Z568、厚さ30μm)を、アンカーコート剤を介して300℃の樹脂温で押し出して、積層フィルムを得た。この積層フィルムは、図3に示されるような層構成を有していた。この積層フィルムを使用して、外寸法100mm×150mm、背シール巾部10mmのピロー袋を作成した。
【0091】
比較例1
<積層体の作製4>
上記で用意した一般のPETフィルム4(厚さ12μm)の一方の面にコロナ処理を施した。そして、PETフィルム4のコロナ処理面に、印刷層(絵柄及び白押さえ)を形成した。次に、PETフィルム4の印刷面と、一般の直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製:T.U.X FC−D、厚さ80μm)とをドライラミネートで貼合して、積層フィルムを得た。印刷インキは東洋インキ社製のNEW LP スーパーを使用した。ドライラミネートによる貼合にはウレタン系接着剤(三井化学社製:タケラックA−515V/タケネートA−5)を使用し、乾燥時の塗布量が3.5g/mになるようにグラビア版にて塗布した。貼合後、40℃×48時間のエージングを行った。この積層フィルムは、図1に示されるような層構成を有していた。この積層フィルムを使用して、外寸法100mm×140mm、折り込み巾30mm、外周部のシール巾5mmのスタンディングパウチを作成した。
【0092】
比較例2
<積層体の作製5>
上記で用意した一般のPETフィルム4(厚さ12μm)と、一般のナイロンフィルム(東洋紡績社製:ハーデンN1200、厚さ15μm)と、アルミ箔(日本製箔社製:1N30材、厚さ7μm)と、未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製:FRTK−G、厚さ70μm)とをこの順序でドライラミネートで貼合して、積層フィルムを得た。ドライラミネートによる貼合にはウレタン系接着剤(三井化学社製:タケラックA−515V/タケネートA−5)を使用し、乾燥時の塗布量が3.5g/mになるようにグラビア版にて塗布した。貼合後、40℃×48時間のエージングを行った。この積層フィルムは、図2に示されるような層構成を有していた。この積層フィルムを使用して、外寸法130mm×170mm、外周部のシール巾10mmの4方パウチを作成した。
【0093】
比較例3
<積層体の作製6>
上記で用意した一般のPETフィルム4(厚さ12μm)と、アルミ箔(日本製箔社製:1N30材、厚さ7μm)とを押し出しラミネート法により300℃で押し出した低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製:Z568、厚さ15μm)で貼合した。アルミ箔上にも、押し出しラミネート法により低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製:Z568、厚さ30μm)を、アンカーコート剤を介して300℃の樹脂温で押し出して、積層フィルムを得た。この積層フィルムは、図3に示されるような層構成を有していた。この積層フィルムを使用して、外寸法100mm×150mm、背シール巾部10mmのピロー袋を作成した。
【0094】
<積層体の評価>
実施例1および比較例1で得られた各積層フィルムを、幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とした。PETフィルムとポリエチレンフィルムの間を剥離し、引張試験機(テンシロンRTC−125A、オリエンテック社製)を用いて、T時剥離強度の測定を行った。この測定における引張速度は50mm/分であった。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0095】
実施例1および比較例1で得られた各積層フィルムを、幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とした。試験片のシール層面同士を、ヒートシールにより接着した。接着したサンプルを引張試験機(テンシロンRTC−125A、オリエンテック社製)を用いて、T時剥離強度の測定を行った。この測定におけるシール圧力は30N/cm、シール時間は1秒、シール温度は180℃、引張速度は300mm/分であった。測定はJIS Z1707に準拠して行った。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0096】
実施例1および比較例1で得られた各スタンディングパウチに、水80ccを充填後、開封部(上縁部)をシールして、水入りのスタンディングパウチを作製した。作製した水入りのスタンディングパウチを50cmの高さから正立落下させて、落下衝撃試験を行った。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
【表2】

【0097】
実施例2および比較例2で得られた各積層フィルムを、幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とした。PETフィルムとナイロンフィルムの間を剥離し、引張試験機(テンシロンRTC−125A、オリエンテック社製)を用いて、T時剥離強度の測定を行った。この測定における引張速度は50mm/分であった。また、ナイロンフィルムとアルミ箔の間、およびアルミ箔と未延伸ポリプロピレンフィルムの間をそれぞれ剥離し、同様の条件で、T時剥離強度の測定を行った。全ての測定結果は、下記の表3に示される通りであった。
【0098】
実施例2および比較例2で得られた各積層フィルムを、試験条件をシール圧力は30N/cm、シール時間は1秒、シール温度は200℃、引張速度は300mm/分とした以外は上記と同様の条件で、シール強度を測定した。測定結果は、下記の表3に示される通りであった。
【0099】
実施例2および比較例2において、水180ccを充填後、外周部をシールして、水入りの4方パウチを作製した。作製した水入りの4方パウチを、120℃・30分の条件で加熱加圧殺菌(日坂製作所社:RCS−60/10RSPXT)を行い、耐レトルト試験を行った。測定結果は、下記の表3に示される通りであった。
【0100】
上記で作製した水入りの4方パウチを、40kg×3分の静置圧力を負荷し、耐圧縮試験を行った。測定結果は、下記の表3に示される通りであった。
【0101】
上記で作製した水入りの4方パウチのシール部を、引き裂くことで開封性を確認した。結果は、下記の表3に示される通りであった。
【表3】

【0102】
実施例3および比較例3で得られた各積層フィルムを、幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とした。PETフィルムとアルミ箔の間を剥離し、引張試験機(テンシロンRTC−125A、オリエンテック社製)を用いて、T時剥離強度の測定を行った。この測定における引張速度は50mm/分であった。測定結果は、下記の表4に示される通りであった。
【0103】
実施例3および比較例3で得られた各積層フィルムを、試験条件をシール圧力は30N/cm、シール時間は1秒、シール温度は170℃、引張速度は300mm/分とした以外は上記と同様の条件で、シール強度を測定した。測定結果は、下記の表4に示される通りであった。
【表4】

【0104】
表2〜4からも明らかなように、バイオマス由来のエチレングリコールを用いて合成されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなる層を有する積層体は、既存のポリエステルフィルムからなる層を有する積層体と比較しても遜色ない物性を有することがわかる。
【符号の説明】
【0105】
10 積層体
11 第1の層
12 第2の層
13 印刷層
14 接着層
20 積層体
21 第1の層
22 第2の層
23 第3の層
24 接着層
25 第2の層
30 積層体
31 第1の層
32 第2の層
33 第3の層
34 第2の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層を有する積層体であって、
第1の層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50〜95質量%含んでなり、
第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなることを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、ジオール単位が化石燃料由来のジオールまたはバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルからなる樹脂製品をリサイクルして得られるポリエステルをさらに含んでなる、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、前記リサイクルして得られるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して5〜45質量%含んでなる、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記化石燃料由来のジカルボン酸がテレフタル酸である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記樹脂組成物が添加剤をさらに含んでなる、請求項1〜4に記載の積層体。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、前記添加剤を、樹脂組成物全体に対して5〜50質量%含んでなる、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記添加剤が、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料からなる群から選択される1種または2以上である、請求項5または6に記載の積層体。
【請求項8】
前記樹脂組成物中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10〜19%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
第1の層が2軸延伸されてなる樹脂フィルムである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
無機物または無機酸化物からなる第3の層をさらに有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の積層体からなる、積層フィルム。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の積層体からなる、包装用袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−96411(P2012−96411A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244721(P2010−244721)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】