説明

ポリエステル樹脂組成物及び同樹脂組成物の製造方法と、同樹脂組成物からなるポリエステル繊維並びにその繊維製品

【課題】重合過程において特定の手段を講じることにより、紡糸・延伸工程やその後の後加工工程の操業性が安定し、優れた色調や光沢感等の品位の高いポリエステル繊維を得ることができるポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成され、下記式(a)〜(c)を満足するように、アルカリ土類金属のカルボン酸塩及びリン酸エステルから形成された平均粒子径0.01〜3μmの粒子とゲルマニウム酸化物とを含んでなるポリエステル樹脂組成物である。
(a)100≦M1≦500
(b)0.5×M1≦P≦1.5×M1
(c)20≦G≦150
ただし、M1、P及びGは、それぞれ出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する、アルカリ土類金属原子の含有量(ppm)、リン原子の含有量(ppm)及びゲルマニウム原子の含有量(ppm)を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散染料は勿論、常圧でカチオン染料による染色も可能なポリエステル繊維用として好適なポリエステル樹脂組成物及びその樹脂組成物の製造方法と、同樹脂組成物を用いた異形断面或いは細繊度を含むポリエステル繊維と、同ポリエステル繊維を使った繊維製品に関するものであり、製糸性・後加工工程通過性等に安定した操業性を与え、特に色調に優れたポリエステル樹脂組成物からなる、分散染料やカチオン染料が染着可能なポリエステル繊維と同繊維を使った繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維、特にポリエチレンテレフタレート繊維は、耐熱性、耐薬品性及び機械的性質などに優れているので、衣料用途や産業用途に広く利用されている。しかしながら、その反面繊維構造が強固であるため、通常染色は高温高圧下で行わねばならない。
【0003】
そこで、ポリエステル繊維の染色性を改良する目的で、ポリエステルポリマーを改質して染色性を改良する方法が多数提案されている。例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分をポリエステルに共重合してカチオン染料により染色可能とする方法が特公昭34−010497号公報(特許文献1)等で知られている。
【0004】
また、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分等のカチオン可染成分に加えて、アジピン酸、イソフタル酸等の第三成分を共重合することにより、常圧でカチオン染料にも染色可能なポリエステル繊維も得られている。例えば、特公昭57−032139号公報(特許文献2)では、金属スルホネート基含有イソフタル酸に加えて、ランダム共重合タイプのジカルボン酸を共重合成分とすることにより、カチオン染料に常圧染色可能なポリエステル繊維を得ている。例えば、特開平08−269820号公報(特許文献3)や特開昭61−239015号公報(特許文献4)において、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分とアジピン酸成分を共重合したポリマーを紡糸することにより、分散染料及びカチオン染料に常圧で染色可能なポリエステル繊維を得ることが示されている。
【0005】
一方、近年の消費者ニーズの多様化の中で、上記ポリエステル繊維は市場の要請に応じて、様々な断面形状を持つ繊維や極細繊維が、仮撚加工やインターレース交絡等の糸加工工程を経て製造されている。これらの繊維は製造時に金属面との摩擦によって、糸切れや毛羽等が発生し、生産性や製品価値を低下させる問題がある。
【0006】
これらの問題を解決するにあたって、通常、無機粒子として酸化チタン(TiO2 )を添加したポリエステルを使用して繊維化している。酸化チタンを添加した繊維は繊維表面の滑性が大きいため、金属面との摩擦によるトラブルの発生は少なくなるが、隠蔽力が大きく、製品の光沢を失わせるため、全く使用されないか、あるいは光沢感が要求される繊維については少量が使用されるに過ぎない。また特に、テレフタル酸を出発原料としエステル化反応を経由する直接重合方法によって得られた上記改質ポリエステル樹脂組成物を繊維化すると、滑性が大きい酸化チタンを添加したものであっても、繊維製造時における毛羽や糸切れが頻発し、生産性や製品価値を低下させるという問題があった。
【0007】
一方、前述のように無機粒子をポリエステルに添加するのではなく、ポリエステルの合成時にカルシウム化合物やリン化合物等を添加して微粒子を形成させる内部粒子法が提案されている。例えば、特公昭49−013234号公報(特許文献5)によれば、特定の金属化合物とリン化合物により内部粒子を形成させる製造方法が提案されている。また、
特開昭59−126456号公報(特許文献6)によれば、ホウ素化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物で内部粒子を形成させる製造方法が提案されている。また、特開2004−300268号公報(特許文献7)においては、内部粒子の粒子径範囲を制限することで、紡糸フィルターの圧力上昇を防ぐことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭34−010497号公報
【特許文献2】特公昭57−032139号公報
【特許文献3】特開平08−269820号公報
【特許文献4】特開昭61−239015号公報
【特許文献5】特公昭49−013234号公報
【特許文献6】特開昭59−126456号公報
【特許文献7】特開2004−300268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、テレフタル酸とエチレングリコールを直接エステル化し、重縮合工程を経て、スルホイソフタル酸の金属塩成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸と脂肪族ジカルボン酸としてアジピン酸とを共重合させたポリエステル樹脂組成物を繊維化するにあたり、特に単繊維繊度の小さい異形断面糸を製造するに際し、延伸時に毛羽が発生し、品位が低下するという課題に着目し、重縮合反応を行ったのち、5−ナトリウムスルホイソフタル酸とアジピン酸を共重合させるポリエステル樹脂組成物の重合過程で上記従来技術による内部粒子法を採用する場合について詳しく検討した。この従来技術による内部粒子法を採用して得られたポリマーの色調は悪く、また製糸時において紡糸、延伸時の糸切れや紡糸フィルターの昇圧が著しく、糸加工工程においても毛羽が頻発するなどの問題が多発した。
【0010】
本発明者らは、こうした問題を解決せんとして更に検討を重ねた結果、重合過程において特定の手段を講じることにより、紡糸・延伸工程やその後の後加工工程の操業性が安定し、優れた色調や光沢感等の品位の高いポリエステル樹脂組成物からなるカチオン染料にも染色可能なポリエステル繊維を提供することができることを知り、また、この技術はカチオン染料に染色可能なポリエステル繊維のみならず、分散染料に染色可能なポリエステル繊維全般に応用できることを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るポリエステル樹脂組成物の基本構成は、
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステル樹脂に下記式(a)〜(c)を満足するように、カルボン酸のアルカリ土類金属塩及びリン酸エステルから形成された平均粒子径0.01〜3μmの粒子とゲルマニウム酸化物とを含んでなるポリエステル樹脂組成物にある。
(a)100≦M1≦500
(b)0.5×M1≦P≦1.5×M1
(c)20≦G≦150
ただし、M1、P及びGは、それぞれ出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する、アルカリ土類金属原子の含有量(ppm)、リン原子の含有量(ppm)及びゲルマニウム原子の含有量(ppm)を示す。
【0012】
好ましい態様によれば、
下記式(a’)、(b’)及び(c)を満足するように、カルボン酸のアルカリ金属塩
又はアルカリ金属の水酸化物とリン酸エステルとから形成された平均粒子径0.01〜3μmの粒子をさらに含んでいる。
(a’)100≦M1+M2≦500
(b’)0.5×(M1+M2)≦P≦1.5×(M1+M2)
(c)20≦G≦150
ただし、M2は、それぞれ出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する、アルカリ金属原子の含有量(ppm)を示す。
【0013】
また他の好ましい態様としては、
ポリエステル樹脂として、下記式(d)及び(e)を満足するようにスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩単位及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸単位が共重合されてなるポリエステル樹脂を用いる。
(d)0.8≦S≦5
(e)2≦A≦15
ただし、S及びAは、それぞれポリエステル樹脂中のスルホイソフタル酸単位の共重合率(モル%)及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率(モル%)を示す。
【0014】
更に他の態様によれば、
ポリエステル樹脂として、下記式(d)及び(e)を満足するようにスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩単位及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸単位が共重合されてなるポリエステル樹脂を用いる。
(d)0.8≦S≦5
(e)2≦A≦15
ただし、S及びAは、それぞれポリエステル樹脂中のスルホイソフタル酸単位の共重合率(モル%)及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率(モル%)を示す。
【0015】
一方、本発明に係るポリエステル樹脂組成物の製造方法の基本構成は、テレフタル酸とエチレングリコールとのポリエステルオリゴマーに、アルカリ土類金属原子、リン原子及びゲルマニウム原子の出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する含有量が下記式(a)〜(c)を満足するようにカルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸エステル及びゲルマニウム酸化物を添加剤として添加し、重縮合を行うポリエステル樹脂組成物の製造方法にある。
(a)100≦M1≦500
(b)0.5×M1≦P≦1.5×M1
(c)20≦G≦150
ただし、M1、P及びGは、それぞれ出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する、アルカリ土類金属原子の含有量(ppm)、リン原子の含有量(ppm)及びゲルマニウム原子の含有量(ppm)を示す。
【0016】
この製造方法に係る発明の好ましい態様によれば、アルカリ土類金属原子、リン原子及びゲルマニウム原子の出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する含有量が下記式(a’)、(b’)及び(c)を満足するように、添加剤として、さらにカルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ金属の水酸化物を添加することをも含んでいる。
(a’)100≦M1+M2≦500
(b’)0.5×(M1+M2)≦P≦1.5×(M1+M2)
(c)20≦G≦150
ただし、M2は、出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する、アルカリ金属原子の含有量(ppm)を示している。
【0017】
また他の好ましい態様によれば、
下記式(d)及び(e)を満足するようにモノマーとしてスルホイソフタル酸のエチレングリコールエステルのアルカリ金属塩及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸を添加することもできる。
(d)0.8≦S≦5
(e)2≦A≦15
ただし、SおよびAは、それぞれポリエステル樹脂中のスルホイソフタル酸単位の共重合率(モル%)および炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率(モル%)を示す。
【0018】
さらに他の好ましい態様によれば、
下記式(d)及び(e)を満足するようにモノマーとしてスルホイソフタル酸エチレングリコールエステルのアルカリ金属塩及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸を添加してよい。
(d)0.8≦S≦5
(e)2≦A≦15
ただし、SおよびAは、それぞれポリエステル樹脂中のスルホイソフタル酸単位の共重合率(モル%)および炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率(モル%)を示す。
【0019】
上記各製造方法において、好ましくはテレフタル酸とエチレングリコールとのポリエステルオリゴマーに、添加する添加剤及びモノマーをあらかじめエチレングリコールに溶解または分散して添加するとよい。
こうして得られたポリエステル樹脂組成物からなる本発明のポリエステル繊維の単繊維繊度が0.6〜3dtexであることが好ましく、かかるポリエステル繊維はマルチフィラメントとして繊維製品の少なくとも一部に用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂組成物中に金属化合物及びリン酸エステルによって形成された粒子とゲルマニウム酸化物とを含み、このゲルマニウム酸化物により粒子の均質な分散性が得られる。その結果、紡糸・延伸工程、その後の後加工工程において優れた操業性を与え、また濁りや着色が無く、品位の高いポリエステル樹脂組成物および繊維、並びにカチオン可染性が付与可能なポリエステル樹脂組成物および繊維が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
≪主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されたポリエステル樹脂≫
本発明のポリエステル樹脂組成物におけるポリエステル樹脂は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されていることが必要である。これは、15モル%を限度に共重合モノマーを含んでもよいということである。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂のテレフタル酸以外のジカルボン酸モノマーとしては、特に限定はしないが、スルホイソフタル酸の金属塩単位0.8モル%以上、5モル%以下と炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸単位2モル%以上、15モル%以下とを共に共重合することが好ましい。式で示すと以下のようになる。
(d)0.8≦S≦5
(e)2≦A≦15
ただし、SおよびAは、それぞれポリエステル樹脂中のスルホイソフタル酸単位の共重合率(モル%)および炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率(モル%)を示す。
【0023】
Sが0.8モル%以上とすることによりカチオン染料の染着座席が不足することがないため染着量が少なくなることもなく、カチオン染料特有の鮮明性が乏しくなることもない
。また、Sが5モル%以下であれば重合時においてポリマーの溶融粘度が上昇することもなく、適切な重合度のポリマーを得ることができ、その結果、繊維強度が低下するという問題がないので好ましい。スルホイソフタル酸の金属塩の例としては、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩)等が挙げられる。また必要に応じてこれら化合物のマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類塩を併用しても良い。中でも、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩が最もよく使われる。
【0024】
炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸が好ましく、中でもアジピン酸が好ましい。アジピン酸を用いることによって、繊維の非晶構造に適当な乱れが生じるために染色性の向上に寄与する。Aが2モル%以上であると常圧染色における染色性が適切な範囲に保たれる。Aが15モル%以下であると、ポリエステル樹脂のガラス転移温度や融点が適切な範囲に保たれ、繊維製品として必要な力学特性、堅牢性、耐熱性等が得られるため好ましい。
ポリエステル樹脂を形成するエチレングリコール以外のグリコールモノマーとしては、特に限定はしない。
本発明では、ポリエステル樹脂の重縮合は、以下のiからiiiの工程からなる公知の方法で行えばよい。
【0025】
すなわち、
iエステル化工程
テレフタル酸をエチレングリコールでエステル化して得られるビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートとポリエステルオリゴマーとが存在するエステル化反応缶に、テレフタル酸とエチレングリコールとのスラリーを連続的に供給し、250℃の温度で3〜8時間程度反応させて、エステル化反応率95%付近のポリエステルオリゴマーを連続的に得る。これを重縮合反応缶に移送する。
【0026】
ii重縮合触媒の添加工程
この重縮合反応缶に、重縮合触媒のエチレングリコール溶液を添加し、必要に応じて、共重合モノマーや着色防止剤(一般的にはトリエチルホスフェート)等の添加剤をエチレングリコール溶液又は分散液として添加する。
このとき添加剤及びモノマーをあらかじめエチレングリコールに溶解または分散して添加することが均一分散のため好ましい。
【0027】
iii重縮合工程
エチレングリコールを留去(減圧下でエチレングリコールを除去)することによって重縮合反応を開始し、引き続き留去しながら予め決めた攪拌停止トルクになるまで反応を行った後、常法によってストランドを払い出し、チップ化する。
【0028】
本発明において、共重合させるアジピン酸成分は、ポリエステル樹脂を合成する任意の段階において添加できるが、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応開始時にアジピン酸の粉体を添加する方法及びテレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応によって得た、ビスヒドロキシエチルテレフタレートにアジピン酸またはビス(2−ヒドロキシ)アジペートの分散液または溶液として添加する方法が一般的である。
【0029】
また、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の粉体についても、アジピン酸と同様にポリマーを合成する任意の段階で添加でき、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応開始時に5−ナトリウムスルホイソフタル酸の粉体を添加する方法、及びテレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応によって得た、ビスヒドロキシエチルテレフタレートに5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルや5−ナトリウムスルホイソフ
タル酸エチレングリコールエステル等のアルキレングリコールエステルの分散液または溶液として添加する方法が一般的である。なお、ポリエステル樹脂には、必要に応じて少量の添加剤、例えば艶消し剤、顔料、酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤等が含有されていてもよい。
【0030】
≪カルボン酸のアルカリ土類金属塩≫
本発明では、カルボン酸のアルカリ土類金属塩を使用する。カルボン酸のアルカリ土類金属塩の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、シュウ酸マグネシウム、プロピン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸カルシウム、酢酸マンガン等が挙げられる。
【0031】
特にカルボン酸のマグネシウム塩を用いた場合は、ポリエステル樹脂中に形成される粒子の粒子径が比較的小さいので結果としてポリエステル繊維の製糸工程の安定性が良好となるし、粒子の屈折率とポリエステル樹脂の屈折率が近くなるので、粒子を分散して含むポリエステル樹脂組成物の透明度が高くなるため好ましい。
【0032】
酢酸のアルカリ土類金属塩を用いた場合は、取扱性及びコストの観点より好ましい。
したがって、カルボン酸のアルカリ土類金属塩として酢酸マグネシウムが最適である。
本発明において、カルボン酸のアルカリ土類金属塩は、エチレングリコール溶液として重縮合反応缶に添加することが好ましく、溶液の濃度は特に制限はないが、完全に溶解する濃度であることが好ましい。
【0033】
≪粒子≫
カルボン酸のアルカリ土類金属塩と後述のリン酸エステルとをそれぞれエチレングリコール溶液として前記ii重縮合触媒の添加工程で重縮合反応缶に添加し、両者を反応させて粒子を形成する。この反応は、ii重縮合触媒の添加工程で両者が添加されてから開始する。その後、iii重縮合工程においてエチレングリコールが留去されるにつれ、両者の反応物の溶解度が低下し、反応物が粒子として析出する。一旦析出した粒子は、さらに重縮合の進行とともに凝集し、二次粒子となることもある。
本発明では、この粒子や二次粒子(以下、併せて単に粒子という。)が製糸安定性に寄与する。
【0034】
≪粒子の平均粒子径≫
本発明において、粒子の平均粒子径は、0.01μm以上3.0μm以下である。より好ましくは0.02μm以上1.5μm以下である。平均粒子径が0.01μm以上であれば、粒子が微細過ぎることもなく、繊維の易滑性や走行性を向上させることができ、工程通過性向上に寄与する。また、平均粒子径が3.0μm以下であれば、ポリエステル繊維を紡糸する際に溶融ポリマーをろ過するフィルターが目詰まりすることもなく、圧力が上昇したり、糸切れを生じたりするなどの工程通過性の低下がない。
【0035】
以上は、カルボン酸のアルカリ土類金属塩とリン酸エステルとの場合を述べたが、本発明においては、カルボン酸のアルカリ金属塩とリン酸エステルとの場合及びアルカリ金属の水酸化物とリン酸エステルとの場合でも同様である。
【0036】
≪(a)100≦M1≦500≫
本発明でカルボン酸のアルカリ土類金属塩としてポリエステル樹脂組成物中に含まれるアルカリ土類金属原子の含有量(M1)は、100〜500ppmとすることが必要であり、より好ましくは100〜300ppmである。M1が100ppm以上とすることで、ポリエステル繊維の製糸工程の安定性を良好とするのに十分な粒子が得られる。500ppm以下に抑えることで、粗大粒子の発生を抑制できるので、紡糸する際に溶融したポ
リエステル樹脂組成物をろ過するフィルターの目詰まりが発生せず、ポリエステル繊維の製糸工程の安定性を良好に保つことができる。
【0037】
≪リン酸エステル≫
本発明におけるリン酸エステルは、前述のように、カルボン酸のアルカリ土類金属塩と反応して粒子を形成し、ポリエステル繊維の製糸工程の安定性に寄与する。リン酸、亜リン酸、ホスホン酸類、ホスフィン酸類等でも反応することが知られているが、本発明ではリン酸エステルを使用する。その理由は、粒子の粒子径が比較的小さいので結果としてポリエステル繊維の製糸工程の安定性が良好となるし、粒子の屈折率とポリエステル樹脂の屈折率が近くなるので、粒子を含んでなるポリエステル樹脂組成物の透明度が高くなるため好ましい。リン酸エステルの中でもトリエチルホスフェートが最適である。本発明において、リン酸エステルは、エチレングリコール溶液として重縮合反応缶に添加することが好ましく、溶液の濃度は特に制限はないが、完全に溶解する濃度であることが好ましい。
【0038】
≪(b)0.5×M1≦P≦1.5×M1≫
本発明のポリエステル樹脂組成物中のリン原子の含有量(P)は、M1の0.5〜1.5倍とする必要がある。PをM1の0.5倍以上とすることで、ポリエステル繊維の製糸工程の安定性を良好とするのに十分な粒子が得られるとともに、金属アンチモンの析出によるくすみを抑制でき、ポリエステル繊維の品位を保つことができる。
PをM1の1.5倍以下とすることで、繊維の熱安定性を低下させるジエチレングリコールの副生が抑えられ好ましい。
【0039】
≪ゲルマニウム酸化物≫
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ゲルマニウム酸化物を含む。
【0040】
ゲルマニウム酸化物の例としては、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム等が挙げられるが、安全性を考慮すると二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0041】
ゲルマニウム酸化物は、エチレングリコール溶液として重縮合反応缶に添加することが好ましく、溶液の濃度は特に制限はないが、完全に溶解する濃度であることが好ましい。
【0042】
ゲルマニウム酸化物は、著しく大きな粒子の発生を抑え、微細な粒子の均質な分散性が得られるので、ポリエステル繊維の製糸時の毛羽発生を抑制し、糸斑が軽減される。また、金属アンチモンの析出によるくすみが抑えられ、色調の良い樹脂組成物が得られる。その結果、得られるポリエステル繊維もくすみが抑えられ、光沢感が高く色調の良いポリエステル繊維が得られる。ゲルマニウム酸化物の添加量を高くすると、粒子数の最大変動幅が小さくなる。ここで、最大変動幅は以下のようにして求める。
【0043】
≪最大変動幅の測定方法≫
得られたポリエステル繊維6mgを270℃に加熱した2枚のカバーガラスの間にはさみ、溶融プレス後急冷し、薄膜状の試料とする。これを透過型電子顕微鏡(H−7600、日立製作所製)を用いてTEM観察を実施する。解析ソフトウェアとして日本ローパー(株)Image−ProPLUS用いて、TEM観察された画像の粒子計測を5回実施し、粒子数をそれぞれ計数する。粒子数の平均値を100%とし、それぞれの粒子計測で得られた粒子数を%で表した。そのうち一番大きく平均値からずれているものを最大変動幅とした。
【0044】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、変動幅が±15%以内、より好ましくは±10%以内である。この変動幅が±15%以内の場合には、粒子の分散性が良好で、マルチフィラメントの製糸性も良好である。
ゲルマニウム酸化物もエチレングリコール溶液として前記ii重縮合触媒の添加工程で重縮合反応缶に添加する。
【0045】
≪(c)20≦G≦150≫
本発明におけるゲルマニウム酸化物の添加量(G)は、ポリエステル樹脂組成物に対してゲルマニウム原子の量として、20ppm以上、150ppm以下とすることが必要であり、より好ましくは30ppm以上、120ppm以下である。添加量が20ppm以上の場合は、内部粒子の分散性が保たれ、0.6dtex以上3dtex以下の単繊維繊度となるマルチフィラメントの製糸性が確保される。例えば、単繊維繊度が上記範囲内で、かつ総繊度が84dtex以下の場合にも製糸性が保たれる。また、添加量が増加するにつれて粒子数の最大変動幅は小さくなるが、添加量が120ppmを超えると分散性に及ぼす効果は頭打ちになるので、ゲルマニウム金属が希少金属で資源性に乏しく、高価であることから、150ppm以下とすれば添加によるコストアップを避けられる。
【0046】
≪カルボン酸のアルカリ金属塩≫
本発明のポリエステル樹脂組成物では、カルボン酸のアルカリ土類金属塩の一部に代えてカルボン酸のアルカリ金属塩を用い、それとリン酸エステルとから形成された平均粒子径0.01〜3μmの粒子をさらに分散することが好ましい。カルボン酸のアルカリ金属塩は、粒子形成の他にもポリエステル樹脂の重縮合中のジエチレングリコールの副生を抑制する。
【0047】
カルボン酸のアルカリ金属塩の例としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウムが挙げられる。中でも、酢酸塩、とりわけ酢酸ナトリウムが取り扱いが容易な上、ジエチレングリコールの副生を抑制する効果もあるので好ましい。
カルボン酸のアルカリ金属塩は、エチレングリコール溶液として重縮合反応缶に添加することが好ましく、溶液の濃度は特に制限はないが、完全に溶解する濃度であることが好ましい。
【0048】
≪アルカリ金属の水酸化物≫
本発明のポリエステル樹脂組成物では、カルボン酸のアルカリ土類金属塩の一部に代えてアルカリ金属の水酸化物を用い、それとリン酸エステルとから形成された平均粒子径0.01〜3μmの粒子をさらに分散してもよい。アルカリ金属の水酸化物も、粒子形成の他にもポリエステル樹脂の重縮合中のジエチレングリコールの副生を抑制する。
【0049】
アルカリ金属の水酸化物の例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。中でも、水酸化ナトリウムは取り扱いが容易な上、ジエチレングリコールの副生を抑制する効果もあるので好ましい。
アルカリ金属の水酸化物は、エチレングリコール溶液として重縮合反応缶に添加することが好ましく、溶液の濃度は特に制限はないが、完全に溶解する濃度であることが好ましい。
【0050】
≪アルカリ金属原子の含有量(M2)≫
本発明では、カルボン酸のアルカリ金属塩の場合もアルカリ金属の水酸化物の場合も、出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対するアルカリ金属原子の含有量(M2)が以下の二式を同時に満足することが好ましい。
(a’)100≦M1+M2≦500
(b’)0.5×(M1+M2)≦P≦1.5×(M1+M2)
ここで、M1及びPは、それぞれ出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対するアルカリ土類金属原子の含有量(ppm)及びリン原子の含有量(ppm)を示す。
【0051】
M1+M2が100ppm以上とすることで、ポリエステル繊維の製糸工程の安定性を良好とするのに十分な粒子が得られる。500ppm以下に抑えることで、粗大粒子の発生を抑制できるので、紡糸する際に溶融したポリエステル樹脂組成物をろ過するフィルターの目詰まりが発生せず、ポリエステル繊維の製糸工程の安定性を良好に保つことができる。
【0052】
同時に、M1+M2は以下の条件も満足することが好ましい。すなわち、PがM1+M2の0.5〜1.5倍とすることが好ましい。PをM1+M2の0.5倍以上とすることで、ポリエステル繊維の製糸工程の安定性を良好とするのに十分な粒子が得られるとともに、金属アンチモンの析出によるくすみを抑制でき、ポリエステル繊維の品位を保つことができる。P をM1+M2の1.5倍以下とすることで、繊維の熱安定性を低下させるジエチレングリコールの副生が抑えられ好ましい。
【0053】
≪ポリエステル繊維≫
本発明のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル繊維の好ましい単繊維繊度は、0.3dtex以上3.0dtex以下であり、より好ましくは0.6dtex以上2.0dtex以下である。本発明のポリエステル樹脂組成物は、粒子の分散性が良好であるため、上記のような単繊維繊度が小さい場合に、易滑性や走行性が向上し、延伸時の毛羽の発生を抑制することができる。特に、総繊度が84dtex以下の場合には、製糸性、後加工工程通過性の向上に対する効果が顕著である。本発明のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル繊維にカチオン可染性を付与し、比較的強度が低いポリエステル繊維とした場合は、上記効果が顕著である。
また、ポリエステル繊維の断面形状は特に限定されないが、粒子の形成により、異形断面での毛羽の発生の抑制に効果がある。
【0054】
本発明の改質ポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル繊維は、公知の溶融紡糸製造方法を採用することができる。まず、溶融紡糸工程で、紡糸口金から吐出孔より吐出したマルチフィラメント糸は、公知の方法で未延伸糸として巻き取った後に延伸を行っても、吐出後一旦巻き取ることなく延伸した後、巻き取って延伸糸としてもよい。
【0055】
≪紡糸方法≫
本発明では、紡糸温度270〜300℃、紡糸速度1000〜2000m/分、延伸温度70〜90℃、熱セット温度120〜160℃、延伸速度400〜1000m/分、延伸倍率は未延伸糸の最大延伸倍率の0.65〜0.85倍程度が好ましい。最大延伸倍率とは、延伸温度80℃、熱セット温度145℃、延伸速度600m/分の条件下で未延伸糸が切断されるまで延伸した時の倍率をいう。
なお、紡糸及び延伸の製糸条件は上記具体例に制限されるものではなく、2000m/分以上の高速紡糸により、半未延伸糸として巻き取るPOY法、あるいは2000m/分以上で高速紡糸し、一旦、巻き取ることなく、続けて延伸するスピンドロー法等により得たものであってもよい。
【0056】
更に、本発明の効果が損なわれない限り、他の繊維との複合繊維としてもよい。
【0057】
また、本発明のポリエステル繊維の形態は、長繊維としても短繊維としてもよく、必要に応じて捲縮加工、仮撚加工、薬液による処理等の後加工を施して用いる。
【0058】
≪本発明のポリエステル繊維の用途≫
本発明のポリエステル繊維の用途である水着、スポーツインナー、ランジェリー、ファンデーション、エンブロイダリーレース等の繊維製品には、本発明のポリエステル繊維を
単独で用いても、他の繊維を含んでいてもよい。他の繊維と複合することにより、例えば、光沢感、清涼感、シャリ感、ウェット感といった風合いを繊維製品に付与することができる。
【0059】
なお、複合する他の繊維としては、例えば、綿、麻、絹等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、又はポリエステル繊維等の熱可塑性繊維等を用いることができる。また、それぞれの繊維を構成する単繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、得られる繊維製品の風合いや光沢感を考慮して、菊型、円形、扁平、Y字型等の糸断面形状を適宜選択すればよい。また、前記他の繊維の単繊維繊度、染色特性等についても特に限定されない。さらに、本発明のポリエステル繊維を撚糸してもよく、この場合の撚糸の撚り方向及び撚り数に関しても特に限定されるものではなく、構成糸条の本数、撚り数等は目的の繊維製品の風合いや外観が得られる範囲で適宜選択すればよい。
【実施例】
【0060】
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
【0061】
(1)極限粘度(〔η〕)
溶媒:フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物
温度:20℃
手順:0.5質量%溶液となるようポリエステル樹脂組成物のサンプルに20℃の溶媒を加え、加熱して溶解する。室温まで冷却し、これを全自動粘度計( サン電子製AVS−6型) を用いて相対粘度ηr を測定する。この測定した相対粘度から極限粘度〔η〕を算出した。
【0062】
(2)ジエチレングリコール含有量(D%)
得られたポリエステル樹脂組成物をアルカリ加水分解した。所定量の加水分解物をガスクロマトグラフGC−9A(島津製作所製)を用いて、その中のエチレングリコール(以下、EGと略記する)とジエチレングリコール(以下、DEGと略記する)のモル数を定量し、EGとDEGのモル数の和に対するDEGのモル数の割合(%)として求めた。
【0063】
(3)粒子の大きさ
ポリエステル繊維6mgを270℃に加熱した2枚のカバーガラスの間にはさみ、溶融プレス後急冷し、薄膜状の試料とした。これを透過型電子顕微鏡H−7600(日立製作所製)を用いてTEM観察及びEDS分析を実施した。TEM観察画像内の粒子の平均粒子径を測定した。平均粒子径によって次の4ランクに分けた。なお、平均粒子径の測定には、解析ソフトウェアとして日本ローパー(株)Image−ProPLUSを用いた。
【0064】
表1中では以下の表記を用いた。
A:平均粒子径0.01μm以上3.0μm未満
B:平均粒子径3.0μm以上5.0μm未満
C:平均粒子径0.01μm未満
D:平均粒子径5.0μm以上
E:内部粒子が確認できない。
【0065】
(4)粒子の変動幅
得られたポリエステル繊維6mgを270℃に加熱した2枚のカバーガラスの間にはさみ、溶融プレス後急冷し、薄膜状の試料とする。これを透過型電子顕微鏡(H−7600、日立製作所製)を用いてTEM観察を実施する。解析ソフトウェアとして日本ローパー(株)Image−ProPLUS用いて、TEM観察された画像の粒子計測を5回実施
し、粒子数をそれぞれ計数する。粒子数の平均値を100%とし、それぞれの粒子計測で得られた粒子数を%で表した。そのうち一番大きく平均値からずれているものを最大変動幅とした。表1には、最大変動幅を示した。
【0066】
(5)毛羽数の測定
延伸糸を用い、整経機を用いて毛羽数を測定した。なお測定長は3×108 mとし、毛羽数(個/108 m)を表1に示した。2個/108 m以下を合格とした。
【0067】
(6)強度及び伸度
JIS L 1013に準拠し、テンシロンUTM−4−100型(オリエンテック社製)を用いて測定した。
【0068】
(7)染料吸尽率
得られたポリエステル繊維を筒編地とし、以下の染色原液、染色条件で染色した。染色後の染残液を、分光光度計BPS−3T型(日立製作所製)を用いて、波長λ=590μmで吸光度Uを測定した。Uと染色原液の吸光度U0とから、次式で吸尽率を求めた。表1に吸尽率を示した。
【0069】
吸尽率(%)=〔(U0−U)/U0〕×100
染色原液:Astrazon Blue FRR(バイエル社製カチオン染料)1.5%o.w.f、
助剤:酢酸0.6ml/l、酢酸ナトリウム0.6g/l
染色条件
浴比:1/100中
常圧沸騰状態で30分
吸尽率90%以上を合格とした。
【0070】
(実施例1)
(1)ポリエステルゴマーの存在するエステル化反応缶にテレフタル酸(以下、TPAと略記する)とEGとのモル比が1/1.6のスラリーを連続的に供給した。エステル化反応缶内を温度250℃、圧力0.1MPaに保ち、滞留時間8時間となるようにエステル化反応を行った。その結果、反応率95%のポリエステルオリゴマーを連続的に得た。得られたポリエステルオリゴマー46.5kgを重縮合反応缶に移送した。
【0071】
(2)その重縮合反応缶に、炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸(以下、ADと略記する)の濃度が25重量%に調整されたEG分散液7.3kg、カルボン酸のアルカリ土類金属塩である酢酸マグネシウム及びカルボン酸のアルカリ金属塩である酢酸リチウムを添加した。
このとき、M1(マグネシウム原子)=120ppm、M2(リチウム原子)=55ppmとなるようにした。
【0072】
(3)重縮合反応缶内の温度を235℃とし、5分間撹拌混合を行った。
(4)さらに、重縮合反応缶に、リン酸エステルであるトリエチルホスフェート、ゲルマニウム酸化物である二酸化ゲルマニウム及びスルホイソフタル酸である5−ナトリウムスルホイソフタル酸(以下、SIPと略記する)のEGエステルの濃度が35重量%となるように調整されたEG溶液5.6kgを添加した。
このとき、P=140ppm、G=30ppmとなるようにした。
【0073】
(5)重縮合反応缶内の温度235℃とし、60分間撹拌混合を行った。
(6)さらに、重縮合反応缶に、重縮合触媒として三酸化アンチモンを出来上がりのポリ
エステル樹脂組成物に対して化合物として340ppm添加した。
【0074】
(7)重縮合反応缶内の温度を280℃まで昇温しながら、圧力を徐々に減じて60分後に1.2hPa以下とした。この条件で撹拌しながら、予め決めた攪拌停止トルクになるまで重縮合反応を行い、常法により払い出してチップ化した。得られたポリエステル樹脂組成物におけるポリエステル樹脂は、スルホイソフタル酸単位の共重合率S(モル%)=2、炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率A(モル%)=5であった。さらに、色調が良好で、極限粘度〔η〕=0.56、D%=4.3モル%であった。また、粒子の平均粒子径はAランク、最大変動幅は±5%であった。
【0075】
(8)続いて、得られたポリエステル樹脂組成物のチップを常法にて乾燥し、36ホールの三角断面の紡糸口金を設置した紡糸装置を用い、紡糸温度290℃、紡糸速度1600m/分で紡糸し、得られた未延伸糸を延伸速度600m/分、延伸温度78℃、熱セット温度150℃、最大延伸倍率の0.72倍で延伸し、56dtex/36フィラメント(以下、fと略記する)の延伸したポリエステル繊維を得た。ポリエステル繊維の評価結果を表1に示した。
【0076】
(実施例2)
ADのEG分散液の添加量を14kg(A=10モル%)に、SIPのEGエステルのEG溶液の添加量を7.5kg(S=3モル%)に変更し、二酸化ゲルマニウムの添加量(G)を60ppmとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物及びポリエステル繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0077】
また、得られたポリエステル繊維を用いて織物(経糸密度10.56本/cm、緯糸密度135本/2.54cm、サテン組織)を織成した。常法による精練後に染色温度100℃、染色時間30分の条件でカチオン染料〔Astrazon Blue FRR(バイエル社製カチオン染料)〕にて染色を行った。得られた織物について、その風合いを評価したところ、優れた色調が得られ、カチオン染料特有の鮮明性にも優れており、適度なふくらみ感、ソフト性のあるものであった。
【0078】
(実施例3)
酢酸マグネシウム、酢酸リチウム及びトリエチルホスフェートの添加量を、M1=150ppm、M2=60ppm、P=230ppmとなるよう変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物を得た。評価結果を表1に示した。
得られたポリエステル樹脂組成物を紡糸するに際して、12ホールの円形断面の紡糸口金を用い、紡糸速度を1400m/分で紡糸すること以外は実施例1と同様に行い、ポリエステル繊維(33dtex/12f)を得た。評価結果を表1に示した。
【0079】
(実施例4)
酢酸マグネシウム、酢酸リチウム及びトリエチルホスフェートの添加量を、M1=200ppm、M2=80ppm、P=390ppmとなるよう変更し、二酸化ゲルマニウムの添加量(G)を90ppmとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物を得た。評価結果を表1に示した。
得られたポリエステル樹脂組成物を紡糸するに際して、96ホールの円形断面の紡糸口金を用い、紡糸速度を1400m/分で紡糸すること以外は実施例1と同様に行い、ポリエステル繊維(66dtex/96f)を得た。評価結果を表1に示した。
【0080】
(実施例5)
二酸化ゲルマニウムの添加量(G)を150ppmとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物を得た。評価結果を表1に示した。
得られたポリエステル樹脂組成物を紡糸するに際して、48ホールの円形断面の紡糸口金を用い、紡糸速度を1400m/分で紡糸すること以外は実施例1と同様に行い、ポリエステル繊維(56dtex/48f)を得た。評価結果を表1に示した。
【0081】
(実施例6)
二酸化ゲルマニウムの添加量(G)を20ppmとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物及びポリエステル繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0082】
(実施例7)
(1)実施例1と同様。
(2)重縮合反応缶に、カルボン酸のアルカリ土類金属塩である酢酸マグネシウム及びカルボン酸のアルカリ金属塩である酢酸リチウムを添加した。
このとき、M1(マグネシウム原子)=120ppm、M2(リチウム原子)=55ppmとなるようにした。
【0083】
(3)実施例1と同様。
(4)さらに、重縮合反応缶に、リン酸エステルであるトリエチルホスフェート及びゲルマニウム酸化物である二酸化ゲルマニウムを添加した。
このとき、P=140ppm、G=60ppmとなるようにした。
【0084】
(5)実施例1と同様。
(6)実施例1と同様。
(7)重縮合反応缶内の温度を280℃まで昇温しながら、圧力を徐々に減じて60分後に1.2hPa以下とした。この条件で撹拌しながら、予め決めた攪拌停止トルクになるまで重縮合反応を行い、常法により払い出してチップ化した。得られたポリエステル樹脂組成物におけるポリエステル樹脂は、スルホイソフタル酸単位の共重合率S(モル%)=0、炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率A(モル%)=0であった。さらに、色調が良好で、極限粘度〔η〕=0.73、D%=2.1モル%であった。また、粒子の平均粒子径はAランク、最大変動幅は±3%であった。
【0085】
(8)続いて、得られたポリエステル樹脂組成物のチップを常法にて乾燥し、96ホールの円形断面の紡糸口金を設置した紡糸装置を用い、紡糸温度295℃、紡糸速度1400m/分で紡糸し、得られた未延伸糸を延伸速度600m/分、延伸温度83℃、熱セット温度145℃、最大延伸倍率の0.72倍で延伸し、56dtex/96fの延伸したポリエステル繊維を得た。ポリエステル繊維の評価結果を表1に示した。
【0086】
(実施例8)
予め決めた攪拌停止トルクを変更した以外は、実施例7と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物(極限粘度〔η〕=0.67、D%:2.3モル%)及びポリエステル繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0087】
(実施例9)
予め決めた攪拌停止トルクを変更した以外は、実施例7と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物(極限粘度〔η〕=0.62、D%:2.3モル%)を得た。評価結果を表1に示した。
得られたポリエステル樹脂組成物を紡糸するに際して、ポリエステル樹脂組成物の吐出量を変更した以外は実施例7と同様に行い、ポリエステル繊維(40dtex/96f)を得た。評価結果を表1に示した。
【0088】
(実施例10)
二酸化ゲルマニウムの添加量(G)を30ppmとなるように変更したこと以外は、実施例9と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物及びポリエステル繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0089】
(実施例11)
SIPのEGエステルのEG溶液の添加量を1.2kg(S=0.5モル%)に変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物及びポリエステル繊維を得た。評価結果を表1に示した。
得られたポリエステル繊維を実施例2に記載した織製方法で織物を作成した。得られた織物の風合いを評価したところ、SIPの共重合量が少ないため、カチオン染料特有の鮮明性が乏しいもののその他の特性は良好であった。
【0090】
(実施例12)
SIPのEGエステルのEG溶液の添加量を1.2kg(S=0.5モル%)に変更し、二酸化ゲルマニウムの添加量(G)を150ppmとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物を得た。評価結果を表1に示した。
【0091】
得られたポリエステル樹脂組成物を紡糸するに際して、136ホールの円形断面の紡糸口金を用い、紡糸速度を1200m/分で紡糸すること以外は実施例1と同様に行い、ポリエステル繊維(66dtex/136f)を得た。評価結果を表1に示した。
【0092】
(比較例1)
主たる繰り返し単位がポリエチレンテレフタレートから構成されていない(A+S>15モル%)。
ADのEG分散液の添加量を24kg(A=17モル%)に、SIPのEGエステルのEG溶液の添加量を5.6kg(S=2モル%)に変更し、二酸化ゲルマニウムの添加量(G)を60ppmとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物及びポリエステル繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0093】
(比較例2)
酢酸マグネシウム、酢酸リチウム及びトリエチルホスフェートの添加量を、M1=50ppm、M2=30ppm、P=100ppmとなるよう変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物を得た。評価結果を表1に示した。
得られたポリエステル樹脂組成物を紡糸するに際して、8ホールの円形断面の紡糸口金を用い、紡糸速度を1600m/分で紡糸すること以外は実施例1と同様に行い、ポリエステル繊維(33dtex/8f)を得た。評価結果を表1に示した。
【0094】
(比較例3)
酢酸マグネシウム、酢酸リチウム及びトリエチルホスフェートの添加量を、M1=120ppm、M2=55ppm、P=300ppmとなるよう変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物及びポリエステル繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0095】
(比較例4)
酢酸マグネシウム及びトリエチルホスフェートを添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。ポリエステル樹脂組成物及びポリエステル繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0096】
(比較例5)
二酸化ゲルマニウムの添加量(G)を17ppmとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物及びポリエステル繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0097】
(比較例6)
二酸化ゲルマニウムの添加量(G)を0ppmに変更した以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物及びポリエステル繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0098】
(比較例7)
二酸化ゲルマニウムの添加量(G)を0ppmに変更した以外は、実施例7と同様に行い、ポリエステル樹脂組成物及びポリエステル繊維を得た。評価結果を表1に示した。
【0099】
≪まとめ≫
ゲルマニウム酸化物は、著しく大きな粒子の発生を抑え、微細な粒子の均質な分散性が得られるので、ポリエステル繊維の製糸時の毛羽発生を抑制し、糸斑が軽減される。また、金属アンチモンの析出によるくすみが抑えられ、色調の良い樹脂組成物が得られる。その結果、得られるポリエステル繊維もくすみが抑えられ、光沢感が高く色調の良いポリエステル繊維が得られる。ゲルマニウム化合物の添加量を高くすると、粒子の最大変動幅が小さくなる。
【0100】
表1から明らかなように、本発明のポリエステル樹脂組成物は、著しく大きな粒子の発生を抑え、微細な粒子の均質な分散性が得られ、粒子の発生量が十分である。また、製糸に適した極限粘度を有する。そして、本発明のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル繊維は、強度、伸度が十分であり、特にADとSIPを共重合したポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル繊維は、カチオン染料による常圧染色で染色した際の染色性が良好である。
【0101】
比較例1では、主たる繰り返し単位がポリエチレンテレフタレートから構成されていない(A+S>15モル%)ため、得られるポリエステル繊維の強度が低く、実用に値しないものであった。比較例2では、酢酸リチウム及び酢酸マグネシウムの添加量が少ないので十分な量の粒子が発生しなかったため、毛羽が多く製糸工程の安定性が低下した。比較例3では、ポリマー中のPがM1+M2の1.7倍であったため、D%が高くなり、また粗大な粒子が多く発生したため、毛羽が多く製糸工程の安定性が低下した。比較例4では、P=0ppmであるため、粒子が形成されず、その結果毛羽が多く製糸工程の安定性が低下した。比較例5は、G<20ppmであるため、形成された粒子の分散性が悪く、その結果、毛羽が多く製糸工程の安定性が低かった。比較例6及び7では、G=0ppmであるため、粒子の分散性が悪い上に著しく大きな粒子が形成され、その結果毛羽の発生が極めて多く製糸工程の安定性が著しく低かった。
【0102】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステル樹脂に下記式(a)〜(c)を満足するように、カルボン酸のアルカリ土類金属塩及びリン酸エステルから形成された平均粒子径0.01〜3μmの粒子とゲルマニウム酸化物とを含んでなるポリエステル樹脂組成物。
(a)100≦M1≦500
(b)0.5×M1≦P≦1.5×M1
(c)20≦G≦150
ただし、M1、P及びGは、それぞれ出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する、アルカリ土類金属原子の含有量(ppm)、リン原子の含有量(ppm)及びゲルマニウム原子の含有量(ppm)を示す。
【請求項2】
下記式(a’)、(b’)及び(c)を満足するように、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ金属の水酸化物とリン酸エステルとから形成された平均粒子径0.01〜3μmの粒子を含んでなる請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
(a’)100≦M1+M2≦500
(b’)0.5×(M1+M2)≦P≦1.5×(M1+M2)
(c)20≦G≦150
ただし、M2は、出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する、アルカリ金属原子の含有量(ppm)を示す。
【請求項3】
カルボン酸のアルカリ土類金属塩として、酢酸のアルカリ土類金属塩を用いる請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
カルボン酸のアルカリ金属塩として、酢酸のアルカリ金属塩を用いる請求項2記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
ポリエステル樹脂として、下記式(d)及び(e)を満足するようにスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩単位及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸単位が共重合されてなるポリエステル樹脂を用いる請求項1又は3に記載のポリエステル樹脂組成物。
(d)0.8≦S≦5
(e)2≦A≦15
ただし、S及びAは、それぞれポリエステル樹脂中のスルホイソフタル酸単位の共重合率(モル%)及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率(モル%)を示す。
【請求項6】
ポリエステル樹脂として、下記式(d)及び(e)を満足するようにスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩単位及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸単位が共重合されてなるポリエステル樹脂を用いる請求項2又は4に記載のポリエステル樹脂組成物。
(d)0.8≦S≦5
(e)2≦A≦15
ただし、S及びAは、それぞれポリエステル樹脂中のスルホイソフタル酸単位の共重合率(モル%)及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率(モル%)を示す。
【請求項7】
テレフタル酸とエチレングリコールとのポリエステルオリゴマーに、アルカリ土類金属原子、リン原子及びゲルマニウム原子の出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する含有量が下記式(a)〜(c)を満足するように、カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸エステル及びゲルマニウム酸化物を添加剤として添加し、重縮合を行うポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(a)100≦M1≦500
(b)0.5×M1≦P≦1.5×M1
(c)20≦G≦150
ただし、M1、PおよびGは、それぞれ出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する、アルカリ土類金属原子の含有量(ppm)、リン原子の含有量(ppm)およびゲルマニウム原子の含有量(ppm)を示す。
【請求項8】
アルカリ土類金属原子、リン原子及びゲルマニウム原子の出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する含有量が下記式(a’)、(b’)及び(c)を満足するように、添加剤として、さらにカルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ金属の水酸化物を添加する請求項7記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(a’)100≦M1+M2≦500
(b’)0.5×(M1+M2)≦P≦1.5×(M1+M2)
(c)20≦G≦150
ただし、M2は出来上がりのポリエステル樹脂組成物に対する、アルカリ金属原子の含有量(ppm)を示す。
【請求項9】
カルボン酸のアルカリ土類金属塩として、酢酸のアルカリ土類金属塩を用いる請求項7記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
カルボン酸のアルカリ金属塩として、酢酸のアルカリ金属塩を用いる請求項8記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
下記式(d)及び(e)を満足するようにモノマーとしてスルホイソフタル酸のエチレングリコールエステルのアルカリ金属塩及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸を添加する、請求項7又は9記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(d)0.8≦S≦5
(e)2≦A≦15
ただし、SおよびAは、それぞれポリエステル樹脂中のスルホイソフタル酸単位の共重合率(モル%)および炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率(モル%)を示す。
【請求項12】
下記式(d)及び(e)を満足するようにモノマーとしてスルホイソフタル酸エチレングリコールエステルのアルカリ金属塩及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸を添加する、請求項8又は10記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(d)0.8≦S≦5
(e)2≦A≦15
ただし、SおよびAは、それぞれポリエステル樹脂中のスルホイソフタル酸単位の共重合率(モル%)および炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率(モル%)を示す。
【請求項13】
テレフタル酸とエチレングリコールとのポリエステルオリゴマーに、添加する添加剤及びモノマーをあらかじめエチレングリコールに溶解または分散して添加する、請求項7〜12のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなり、単繊維繊度が0.6〜3dtexであるポリエステル繊維。
【請求項15】
請求項14に記載のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる繊維製品。

【公開番号】特開2013−18802(P2013−18802A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150677(P2011−150677)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【出願人】(000228073)日本エステル株式会社 (273)
【Fターム(参考)】