説明

ポリエステル湿式不織布および繊維製品

【課題】従来の不織布に較べてソフトであり、着用感に優れた抄紙不織布を得る。
【解決手段】ポリトリメチレンテレフタレートからなり、繊度が0.05〜10dtex、繊維長が2〜25mmである主体繊維とポリエステルからなるバインダー繊維とを湿式抄紙して得られる湿式不織布であって、上記主体繊維とバインダー繊維の重量比率が80/20〜20/80、不織布全体の目付が10〜200g/mの範囲内にあるポリエステル湿式不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル湿式不織布に関し、さらに詳しくは、衛生材料・医療材料や家庭用品などに適応することができる、風合いの柔らかいポリエステル湿式不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湿式不織布の構成繊維としては、パルプ、レーヨンから始まり、近年ではビニロン、ナイロン、ポリエステルといった汎用合成繊維が多く使用されるようになっている。
しかしながら、パルプやレーヨンを用いると、ペーパーライクで、熱処理後に不織布表面が皮膜されたようになり使用が難しい。ナイロンに関しては、繊維としての風合いはソフトであるものの、水分率が高く、不織布生産時に寸法安定性が悪いといった問題がある。
さらに、ポリエステルは、寸法安定性は高いものの、不織布が剛直であるため、得られた不織布もコシがあり過ぎている。例えば、特許文献1(特開2002−227089号公報)や、特許文献2(特開2002−339287号公報)には、湿式抄紙用のバインダー繊維が提案されているが、これらの先行技術で対象とされるポリエステル繊維紙はポリエチレンテレフタレート繊維から構成されるものであり、得られる不織布は、やはり剛直で、コシがありすぎるという問題を有している。
【特許文献1】特開2002−227089号公報
【特許文献2】特開2002−339287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術が有していた問題点を解消し、よりソフトであり着用感に優れた湿式不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートからなり、繊度が0.05〜10dtex、繊維長が2〜25mmである主体繊維とポリエステルからなるバインダー繊維とを湿式抄紙して得られる抄紙不織布であって、上記主体繊維とバインダー繊維の重量比率が80/20〜20/80、不織布全体の目付が10〜200g/mの範囲にあることを特徴とするポリエステル湿式不織布に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、従来の不織布に較べてソフトであり、着用感に優れた抄紙不織布が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明で使用する主体繊維は、ポリトリメチレンテレフタレート短繊維、すなわちトリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維からなる短繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位が約50%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のものをいう。従って第3成分としての他の酸成分および/またはグリコール成分の合計量が約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを含有する。
【0007】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタール酸またはその機能的誘導体とトリメチレングリコールまたはその機能的誘導体とを、触媒の存在下で適当な反応条件下に縮合させることにより製造される。この製造過程において、適当な1種または2種以上の第3成分を添加して共重合ポリエステルとしても良いし、またポリエチレンテレフタレートなどのポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンなどとポリトリメチレンテレフタレートを別個に製造した後、ブレンドしたり、複合紡糸(鞘芯、サイドバイサイドなど)しても良い。
【0008】
添加する第3成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなど)、脂環族グリコール(シクロヘキサングリコールなど)、芳香族ジオキシ化合物(ハイドロキノンビスフェノールAなど)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなど)、脂肪族オキシカルボン酸(p−オキシ安息香酸など)などが挙げられる。また、1個または3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸など、またはグリセリンなど)も重合体が実質的に線状である範囲で使用できる。
【0009】
さらに、ポリトリメチレンテレフタレートには、二酸化チタンなどの艶消し剤、リン酸などの安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体などの紫外線吸収剤、タルクなどの結晶化核剤、アエロジルなどの易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤などを含有させても良い。
【0010】
上記ポリトリメチレンテレフタレート短繊維の繊度は、0.05〜10dtex、好ましくは0.1〜3.3dtexである。0.05dtex未満では、風合いは柔らかくなるものの、抄紙工程における水流の影響を受けやすく地合い悪化の原因となるため好ましくない。一方、10dtexを超えると、風合いが硬くなったり、不織布に占める繊維の構成本数が少なくなり好ましくない。
【0011】
また、上記ポリトリメチレンテレフタレート短繊維の繊維長は、2〜25mm、好ましくは5〜10mmである。2mm未満では、不織布としての強度が得られにくいため好ましくない。一方、25mmを超えると、抄紙法による繊維分散が極めて悪くなり、地合い悪化の原因となるため好ましくない。
【0012】
上記ポリトリメチレンテレフタレート短繊維の捲縮については、ストレート繊維、捲縮を付与した繊維のどちらでも良い。通常、ストレート繊維は抄紙法の工程安定性、捲縮繊維は嵩性向上のために各々用いられている。
【0013】
なお、本発明の不織布を構成する繊維としては、上記ポリトリメチレンテレフタレート以外に、各種合成繊維(ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、オレフィン系、アラミド系)を用いることができる。特に、ポリエチレンテレフタレートが寸法安定性などの観点から好ましい。
ここで、本発明において、主体繊維となる上記ポリトリメチレンテレフタレート短繊維の比率は、50重量%以上であることが好ましい。50重量%未満では、ポリトリメチレンテレフタレート短繊維の有する特徴を発揮することが不十分となり、本発明の特徴である柔軟性に優れた不織布を得ることができないため好ましくない。
【0014】
次に、本発明の不織布に用いられるポリエステルからなるバインダー繊維の形態としては、未延伸繊維、あるいは、複合繊維を用いることができる。
なお、未延伸繊維からなるバインダー繊維を用いる場合、抄紙後のドライヤーの後、熱圧着工程が必要であるため、抄紙後、カレンダー/エンボス処理を施すことが好ましい。
ここで、未延伸繊維や複合繊維からなるバインダー繊維の繊度は、通常、0.2〜3.3dtex、好ましくは0.5〜1.7dtex、繊維長は、通常、1〜20mm、好ましくは3〜10mmである。
【0015】
上記のバインダー繊維のうち、未延伸繊維としては、紡糸速度が好ましくは800〜1,200m/分、さらに好ましくは900〜1,150m/分で紡糸された未延伸ポリエステル繊維が挙げられる。ここで、未延伸繊維に用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられ、好ましくは生産性、水への分散性などの理由から、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートが好ましい。
【0016】
一方、バインダー繊維のうち、複合タイプとしては、非晶性共重合ポリエステルのように、抄紙後に施す80〜170℃の熱処理によって融着し、接着効果を発現するポリマー成分と、これらのポリマーより融点が20℃以上高い他のポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの通常のポリエステルとのサイドバイサイド型または芯鞘型複合繊維が挙げられる。
ここで、本発明の複合繊維において、バインダー成分をなす上記非晶性共重合ポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの酸成分と、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分とのランダムまたはブロック共重合体として得られる。中でも、従来から広く用いられているテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびジエチレングリコールを主成分として用いることがコストの面で好ましい。このような共重合ポリエステルは、ガラス転移点が50〜100℃の範囲となり、明確な結晶融点を示さない。
本発明のバインダー繊維は、バインダー成分が単繊維の表面の全部または一部を形成していれば、従来からバインダー繊維として広く使用されている芯鞘型、偏心芯鞘型でも良く、あるいはサイドバイサイド型でも差し支えない。
【0017】
そのほか、複合繊維としては、固有粘度が0.9〜1.5のポリトリメチレンテレフタレートAと、固有粘度が0.3〜0.7のポリエチレンテレフタレートBとを、A:B=30:70〜70:30の重量比率で、サイド・バイ・サイド型または偏心芯鞘型に貼り合わせたポリエステル系複合繊維(特開2001−288621号公報)、あるいは、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル、ポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステル、およびポリブチレンテレフタレート系ポリエステルの群から選ばれた少なくとも1種のポリエステルと共重合ポリエステルとからなり、共重合ポリエステルが少なくとも繊維表面に露出された複合繊維(特開2001−123332号公報)などが挙げられる。
このうちでも、ポリトリメチレンテレフタレートを芯成分とし、上記非晶性共重合ポリエステルを鞘成分とする芯鞘型複合繊維が好ましい。
【0018】
本発明の湿式不織布を構成する主体繊維とバインダー繊維の重量比率は、80/20〜20/80、好ましくは70/30〜50/50である。主体繊維が80重量%を超える(バインダー繊維が20%未満)と、不織布の形態を構成する接着点が少なくなり過ぎ、強度不足となるため好ましくない。一方、主体繊維が20重量%未満(バインダー繊維が80重量%を超える)では、接着点が多くなり過ぎ、不織布そのものが硬くなるため好ましくない。
【0019】
本発明の湿式不織布を製造する装置としては、通常の長網抄紙機、短網抄紙機、丸網抄紙機、あるいはこれらを複数台組み合わせて多層抄きなどにしても何ら問題ない。
本発明の不織布について、熱処理工程としては、抄紙工程後、ヤンキードライヤー、エアースルードライヤーのどちらでも可能である。また、その後、金属/金属ローラー、金属/ペーパーローラー、金属/弾性ローラーなどのカレンダー/エンボスを施しても良い。
特に、本発明の不織布にカレンダー加工を施すと、表面平滑性の向上(厚みの均一化)、接着点を形成することによる強度アップという効果を奏する。
【0020】
本発明の不織布の目付は、10〜200g/m、好ましくは15〜50g/mである。10g/m未満では、不織布が薄過ぎるため、強度が弱くなりすぎ好ましくない。一方、200g/mを超えると、不織布の剛性が増し、本発明の特徴である柔軟性を達成することができないため好ましくない。
【0021】
また、本発明の湿式不織布の厚みは、好ましくは0.01〜2.0mm、さらに好ましくは0.1〜1.0mmである。ここで、不織布の厚みは、JIS P8118(紙および板紙の厚さと密度の試験方法)により測定された値である。厚みが0.01mm未満では、コシがなくペーパーライク、あるいはフィルムライクなものとなってしまう。一方、2.0mmを超えると、厚み方向において、表層と中心部で熱の伝わり方が変わるため、風合いの変化や場合によっては層間剥離の原因となる。
【0022】
以上のようにして得られる本発明の不織布は、引張り強度が、JIS P8113(紙および板紙の引張強さ試験方法)に規定される裂断長で0.5〜5km、好ましくは0.7〜4kmの範囲内である。0.5km未満では強度が弱過ぎるため、好ましくない。一方、5kmを超えると、剛性が増して来るため好ましくない。この引張り強度は、使用する原綿の構成(繊度、繊維長、混合比率)や熱処理条件により調整することができる。
【0023】
また、本発明の不織布は、柔らかさが、JIS L1096(一般織物試験方法)に規定される剛軟度で4〜7cm、好ましくは4.5〜6.5の範囲内である。4cm未満では、柔らかすぎコシがなさすぎるため好ましくない。一方、7cmを超えると、柔軟性に欠け、本発明の目的を達成することができない。この剛柔度は、使用する原綿の構成(繊度、繊維長、混合比率)や熱処理条件により調整することができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明をさらに下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により、なんら限定を受けるものではない。なお、実施例中に記載した物性は以下の方法により測定した。
(1)引張り強度(裂断長)、伸度:
JIS P8113(紙および板紙の引張強さ試験方法)に基づいて実施した。
(2)引裂強さ:
JIS P8116(紙および板紙の引裂強さ試験方法)に基づいて実施した。
(3)剛軟度:
JIS L1096(一般織物試験方法)に基づき実施した。
【0025】
実施例1
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)、紡糸速度1,150m/分で紡糸された未延伸ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.2dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ、以下同じ)を60/40の重量比率で混合攪拌し、TAPPI(熊谷理機工業社製、型番:No.2555、標準角型シートマシン。以下同じ)を用いて、50g/mを抄紙した後、ヤンキードライヤー乾燥(120℃×2分)、カレンダー加工(160℃×120kg/cm、金属/ペーパーローラー)を施してシートを得た。得られた物性を表1に示す。
【0026】
実施例2
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)、芯鞘複合型バインダー短繊維〔繊度1.7dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ、芯/鞘(重量比)=50/50、芯:ポリトリメチレンテレフタレート、鞘:共重合ポリエステル(酸性分がモル比でテレフタル酸60%、イソフタル酸40%、ジオール成分がモル比でエチレングリコール95%、ジエチレングリコール5%の割合で共重合された非晶性共重合ポリエステル、以下同じ)を60/40の重量比率で混合攪拌し、TAPPIを用いて、50g/mを抄紙した後、ヤンキードライヤー乾燥(120℃×2分)を施してシートを得た。得られた物性を表1に示す。
【0027】
実施例3
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)、未延伸ポリエチレンテレフタレート短繊維(繊度1.2dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)を60/40の重量比率で混合攪拌し、TAPPIを用いて50g/mを抄紙した後、ヤンキードライヤー乾燥(120℃×2分)、カレンダー加工(160℃×120kg/cm、金属/ペーパーローラー)を施してシートを得た。得られた物性を表1に示す。
【0028】
実施例4
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)、芯鞘複合型バインダー短繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ、芯/鞘=50/50、芯:ポリエチレンテレフタレート、鞘:共重合ポリエステルを60/40の重量比率で混合攪拌し、TAPPIを用いて50g/mを抄紙した後、ヤンキードライヤー乾燥(120℃×2分)を施してシートを得た。得られた物性を表1に示す。
【0029】
比較例1
ポリエチレンテレフタレート短繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)、未延伸ポリエチレンテレフタレート短繊維(繊度1.2dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)を60/40の重量比率で混合攪拌し、TAPPIを用いて50g/m2を抄紙した後、ヤンキードライヤー乾燥(120℃×2分)、カレンダー加工(160℃×120kg/cm、金属/ペーパーローラー)を施してシートを得た。得られた物性を表1に示す。
【0030】
比較例2
ポリエチレンテレフタレート短繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)、芯鞘複合型バインダー短繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ、芯/鞘(重量比)=50/50、芯:ポリエチレンテレフタレート、鞘:共重合ポリエステルを60/40の重量比率で混合攪拌し、TAPPIを用いて50g/mを抄紙した後、ヤンキードライヤー乾燥(120℃×2分)を施してシートを得た。得られた物性を表1に示す。
【0031】
比較例3
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.7dtex、繊維長25mm、捲縮ナシ)、未延伸ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.2dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)を60/40の重量比率で混合攪拌し、TAPPIを用いて50g/mを抄紙した後、ヤンキードライヤー乾燥(120℃×2分)、カレンダー加工(160℃×120kg/cm、金属/ペーパーローラー)を施してシートを得た。得られた物性を表1に示す。
【0032】
比較例4
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)、未延伸ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.2dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)を60/40の重量比率で混合攪拌し、TAPPIにより8g/m2を抄紙した後、ヤンキードライヤー乾燥(120℃×2分)、カレンダー加工(160℃×120kg/cm、金属/金属)を施してシートを得た。得られた物性を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
比較例5
ポリトリメチレンテレフタレート短繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ)、木材パルプ(NBKP)、芯鞘型複合バインダー繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm、捲縮ナシ、芯/鞘(重量比)=50/50、芯:ポリトリメチレンテレフタレート、鞘:共重合ポリエステルを50/20/30の重量比率で混合攪拌し、TAPPIを用いて50g/mを抄紙した後、ヤンキードライヤー乾燥(120℃×2分)を施してシートを得た。
得られた不織布は、目付が50.5g/m、厚みが0.15mm、密度が0.34g/cm、裂断長が0.4km、伸度が5.3%、引裂き強度が65g、剛柔度が3.9cmであった。
比較例5で得られた不織布は、パルプが入ったことにより、ペーパーライクなものとなり、強度および剛軟度が低下し、目標とする不織布を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の湿式不織布は、風合いが柔らかいので、おむつや生理用品などの衛生材料、マスクや手術着などの医療材料、ワイパー、キッチンペーパー、お茶パック、あくとりシートなどの家庭用品などの用途のほか、各種フィルター用途などに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレートからなり、繊度が0.05〜10dtex、繊維長が2〜25mmである主体繊維とポリエステルからなるバインダー繊維とを湿式抄紙して得られる湿式不織布であって、上記主体繊維とバインダー繊維の重量比率が80/20〜20/80、不織布全体の目付が10〜200g/mの範囲内にあることを特徴とするポリエステル湿式不織布。
【請求項2】
バインダー繊維が、紡糸速度800〜1,200m/分で紡糸された未延伸ポリエステル繊維である、請求項1に記載のポリエステル湿式不織布。
【請求項3】
バインダー繊維を形成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリトリメチレンテレフタレートである、請求項1または2に記載のポリエステル湿式不織布。
【請求項4】
バインダー繊維が芯鞘複合型繊維であり、芯部がポリトリメチレンテレフタレート、鞘部が非晶性共重合ポリエステルで形成される、請求項1に記載のポリエステル湿式不織布。
【請求項5】
厚みが0.01〜1.0mmの範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル湿式不織布。
【請求項6】
カレンダー加工されたものである、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル湿式不織布。
【請求項7】
引張り強度が、JIS P8113(紙および板紙の引張強さ試験方法)に規定される裂断長で0.5〜5kmの範囲内である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル湿式不織布。
【請求項8】
柔らかさが、JIS L1096(一般織物試験方法)に規定される剛軟度で4〜7cmの範囲内である、請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル湿式不織布。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステル湿式不織布を用いてなる、衛生材料、医療材料および家庭用品の群から選ばれた少なくとも1種の繊維製品。