説明

ポリエステル異収縮混繊糸およびその製造方法

自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aと、熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸Bとから構成されるポリエステル混繊糸において、該ポリエステルマルチフィラメント糸Aが、コアー部と、該コアー部の長さ方向に沿ってコアー部から放射状に突出した複数のフィン部とからなり、且つ下記(ア)〜(ウ)式の要件を同時に満足しているポリエステル混繊糸。(ア)1/20≦S/S≦1/3(イ)0.6≦L/D≦3.0(ウ)W/D≦1/4(Sはコアー部の断面、Dはコアー部の断面が真円のときはその直径また真円でないときはその外接円直径を表わし、またS、LおよびWはそれぞれフィン部の断面積、最大長さおよび最大幅を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸と熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸とからなるポリエステル混繊糸に関するものである。さらに詳しくは、従来にないドライタッチと高反撥性を兼ね備えた布帛を得るに特に適したポリエステル混繊糸に関するものである。
【背景技術】
熱処理によって伸長する自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸と、熱処理によって収縮する熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸とからなる混繊糸は、熱処理によって嵩高となり、ソフトで柔軟な風合が得られるため、織編物用途を始めとして、広く用いられるようになってきている。
従来このようなポリエステル混繊糸を製造するには、それぞれ別々に作成した自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸と熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸とをエアジェットノズルで混繊するか、あるいは弛緩熱処理を施すことによって自発伸長性となるポリエステルマルチフィラメント糸を弛緩熱処理しながら、該弛緩熱処理後の自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸に、連続的に熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸を供給して、エアジェットノズルで混繊する方法(例えば、特開平1−250425号公報参照)が用いられている。
このようなポリエステル混繊糸を、例えば、高反撥性ウールライクタッチを有する梳毛調織物などに用いる場合には、弛緩熱処理後の自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸に、さらにスリットヒータ、パイプヒータ等の非接触型ヒータを用いて、高温で第2の弛緩熱処理を施し、その後で熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸と混繊することが行われている。そして、この第2の弛緩熱処理においては、自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸が非接触型ヒータ内で揺れてヒータと接触しやすいため、均染性が悪化すると共に糸切れが発生しやすいという問題があり、これを解決する方法として、例えば特許第3054059号公報には、弛緩熱処理によって自発伸長性となるポリエステルマルチフィラメント糸と熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸とをあらかじめ交絡させた後に弛緩熱処理する方法が提案されている。
しかしながら、これらの方法により得られるポリエステル混繊糸では、ソフトで柔軟な風合は得られるものの、ドライタッチな風合に優れかつソフトで反撥のある布帛を得ることはできなかった。
【発明の開示】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解決し、自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸と熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸とからなり、従来にないドライタッチと高反撥性を兼ね備えた布帛を得るに摘したポリエステル混繊糸を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、自発伸長性となるポリエステルマルチフィラメント糸として、コアー部と、該コアー部の長さ方向に沿ってコアー部から放射状に突出した複数のフィン部とからなるポリエステルマルチフィラメント糸を用いれば、従来にないドライタッチと高反撥性を兼ね備えた布帛を得るに適したポリエステル混繊糸が得られること、その際、自発伸長性となるポリエステルマルチフィラメント糸と熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸とをあらかじめ交絡させた後に弛緩熱処理すれば、得られる混繊糸の品質が良好になることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち本発明によれば、自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aと、熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸Bとから構成されるポリエステル混繊糸において、該ポリエステルマルチフィラメント糸Aが、コアー部と、該コアー部の長さ方向に沿ってコアー部から放射状に突出した複数のフィン部とからなり、且つ下記(ア)〜(ウ)式の要件を同時に満足することを特徴とするポリエステル混繊糸が提供される。
(ア)1/20≦S/S≦1/3
(イ)0.6≦L/D≦3.0
(ウ)W/D≦1/4
(Sはコアー部の断面、Dはコアー部の断面が真円のときはその直径また真円でないときはその外接円直径を表わし、またS、LおよびWはそれぞれフィン部の断面積、最大長さおよび最大幅を表わす。)
また、本発明によれば、弛緩熱処理を施すことによって自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aとなるポリエステルマルチフィラメント糸A’と、熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸B’とを引き揃え、オーバーフィード下にインターレースノズルに供給して交絡せしめた後、弛緩熱処理を施して該ポリエステルマルチフィラメント糸A’に自発伸長性を付与し、さらに非接触ヒータにより第2の弛緩熱処理を施すことを特徴とする上記ポリエステル混繊糸の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係るポリエステルマルチフィラメント糸Aのフィラメント横断面の一例を示す断面図である。
第2図は、本発明のポリエステル混繊糸を製造するための工程の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明で用いられるポリエステルは、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルを対象とするものであり、染色性、抗ピル性、熱収縮特性等を改善するために、少量(通常、15モル%以下、好ましくは10モル%以下)の第3成分を共重合したものであってもよい。また、他種ポリマーを少量(通常、ポリエステルに対して10重量%以下)混合してもよい。さらに、制電剤、艶消剤、紫外線吸収剤、染色性改良剤の添加剤を配合したものであってもよい。
本発明のポリエステル混繊糸は、自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aと、熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸Bとから構成されるが、該自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aと熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸Bとは、同一ポリエステルで構成されていてもよく、また、共重合成分、混合ポリマー、添加剤などの種類、量が異なるポリエステルで構成されていてもよい。なかでも、自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸がポリエチレンテレフタレートで構成され、一方熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸が、第3成分として例えばイソフタル酸成分を5〜15モル%程度共重合した(全酸成分を基準)ポリエチレンテレフタレートで構成されているものが好ましい。
本発明で用いられる自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aは、2000〜5000m/分程度の比較的高い紡糸速度で紡糸したポリエステル未延伸糸(通常、中間配向糸POYと呼ばれる)、または1000m/分前後の紡糸速度で紡糸した低配向ポリエステル未延伸糸もしくは中間配向糸を低倍率で延伸したものを弛緩熱処理することなどによって得られる。例えば、ポリエステル低配向未延伸糸を低倍率延伸した後に、90℃以下の温度で、20%以上収縮処理する方法、複屈折率が0.02〜0.08の中間配向糸を(ガラス転移点+20)℃以下の温度で延伸した後、弛緩熱処理する方法、紡糸速度1500〜4500m/分の速度で紡糸した複屈折率(Δn)が0.03以上のポリエステル中間配向糸(POY)を低温延伸した後、弛緩熱処理する方法、あるいは同中間配向糸を二次転移点(Tg)〜Tg+20℃の範囲で延伸後、収縮率20%以上で弛緩熱処理する方法等を挙げることができる。
したがって、本発明のポリエステル混繊糸を製造する際に使用されるポリエステルマルチフィラメント糸A’とは、自発伸長性を付与するための弛緩熱処理を施す前の状態のポリエステルマルチフィラメント糸を意味し、具体的には、中間配向糸(POY)あるいは低倍率延伸糸である。
本発明においては、上記の自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aが、コアー部と、該コアー部の長さ方向に沿ってコアー部から放射状に突出した複数のフィン部とからなるポリエステルマルチフィラメント糸であること、その際、図1に示すように、コアー部の断面積および直径(コアー部が真円でないときは外接円直径)をそれぞれSおよびD、また各フィン部の断面積、最大長さおよび最大幅をそれぞれS、LおよびWとするとき、下記(ア)〜(ウ)の要件を同時に満足することが肝要である。
(ア)1/20≦S/S≦1/3
(イ)0.6≦L/D≦3.0
(ウ)W/D≦1/4
ここで、1/20>S/Sまたは1/3<S/Sの場合、すなわち、その断面積がコアー部の断面積の1/20より小さいか、または1/3より大きいフィン部が存在する場合は、得られる混繊糸のドライタッチ感が不足し好ましくない。
また、0.6>L/Dの場合、すなわちその最大長さがコアー部の直径の0.6倍未満のフィン部が存在する場合、得られる混繊糸のドライタッチ感が不足し、一方、3.0<L/Dの場合、すなわち、その最大長さがコアー部の直径の3.0倍を超えるフィン部が存在する場合は、フィン部の折れ曲がりが発生し、粗硬な風合しか得られなかったり、均染性が低下するため好ましくない。
さらに、W/D>1/4の場合、すなわちその最大幅がコアー部の直径の1/4より大きいフィン部が存在する場合には、混繊糸とした際にソフトな風合いが得られず好ましくない。
上記フィン部の最大幅は、小さいほどソフト感が増すが、あまり小さくなり過ぎると、フィン部の折れ曲がりが発生し、均染性を悪化させる等の問題が発生するので、W/Dの最小値は1/8程度に止めることが好ましい。
一方、熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸Bとしては、沸水収縮率が8.0%以上のポリエステルマルチフィラメント延伸糸が好ましく用いられ、さらに好ましくは、沸水収縮率が10〜16%のポリエステルマルチフィラメント延伸糸が用いられる。かかる熱収縮性ポリエステルマルチフィラメントとしては、熱セットを行っていないポリエステルマルチフィラメント延伸糸、第3成分として例えばイソフタル酸を5〜15モル%程度共重合させたポリエステルからなるマルチフィラメント延伸糸等を例示することができる。
なお、本発明のポリエステル混繊糸は、自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aが相対的に混繊糸の外側に位置し、熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸Bが相対的に混繊糸の内側に位置するので、混繊糸の風合を改善する意味で、ポリエステルマルチフィラメント糸Aの単繊維繊度を2〜9dtex、熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸Bの単繊維繊度を3〜11dtexとし、かつ、前者が後者よりも小さくなるようにするのが好ましい。また、自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aと熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸Bとの混繊比は、深色・ふくらみという観点から、重量比(A:B)で8:2〜5:5の範囲内にあることが好ましい。
以上に説明した本発明の混繊糸は、例えば以下の方法により、糸切れの発生が少なく品質の良好なものを安定して製造することができる。すなわち、例えば図2に示す装置を用い、弛緩熱処理を施すことによって自発伸長性を発現するポリエステルマルチフィラメント糸A’と、熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸B’とを引き揃え、供給ロール1と第1引取ロール(加熱ロール)2との間に設けたインターレースノズル3により、オーバーフィード下で交絡させる。
図2では、第1引取ロール2が加熱されており、しかも供給ロール1と第1引取ロール2との間でポリエステルマルチフィラメント糸A’、B’がオーバーフィードされていることから、第1引取ロール2に巻回されたポリエステルマルチフィラメントA’は、このロール上で弛緩熱処理され、自発伸長性が付与されることになる。次いで、第1引取ロール2と第2引取ロール4との間に設けた非接触ヒータ5により、第2の弛緩熱処理を施して熱固定を行い、パッケージ6に巻き取る。
ここで、ポリエステルマルチフィラメント糸A’と熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸B’とを交絡させる際には、交絡数50〜90ヶ/mの交絡を付与するのが好ましく、そのためにはオーバーフィード率を通常1.0〜1.5%とするのが好適である。
また、上記の例のように、第1引取ロール2を加熱して、その上で自発伸長性付与のための弛緩熱処理を施すと、装置がコンパクトになるため好ましいが、インターレースノズル3での交絡に適したオーバーフィード率よりも、弛緩熱処理によって自発伸長性を付与するのに必要とされるオーバーフィード率(弛緩率)の方が大きい場合は、第1引取ロール2の下流側にさらに引取ロールを設け、その引取ロールとの間で所定の弛緩熱処理を施すようにしてもよい。また、第1引取ロール2を加熱ロールとする場合に、該ロール2の糸条入側の直径よりも糸条出側の直径を小さくして該ロール上で所定のオーバーフィード率(弛緩率)で熱処理するようにしてもよい。
ポリエステルマルチフィラメント糸A’に自発伸長性を付与する際の弛緩熱処理における温度およびオーバーフィード率(弛緩率)は、ポリエステルマルチフィラメント糸A’にどのような糸を用いるかによって変わってくるが、例えば2000〜3500m/分、好ましくは2500〜3500m/分の紡糸速度で紡糸した中間配向糸(POY)を用い、第1引取ロール(加熱ロール)2上で弛緩熱処理する場合は、ロール表面温度を100〜130℃、オーバーフィード率(弛緩率)を1.0〜1.5%とするのが好ましい。
非接触ヒータ5による第2の弛緩熱処理は、ポリエステル混繊糸に、高反撥性ウールライクタッチの梳毛調織物とするのに適した特性を付与するための熱固定処理であり、210℃〜240℃で、1.5〜2.5%のオーバーフィード率にて処理するのが好ましく、処理時間は通常、0.01〜0.30秒である。得られたポリエステル混繊糸の沸水収縮率は、通常、5〜13%程度となる。非接触ヒータ5としては、スリットヒータ、パイプヒータ等用いることができる。
上記の方法においては、弛緩熱処理によって自発伸長性となるポリエステルマルチフィラメント糸A’と熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸B’とを交絡させた後、弛緩熱処理してマルチフィラメント糸A’に自発伸長性を付与することが必要であり、これによって第2の弛緩熱処理時に糸条が非接触ヒータ5に接触するようなことがなく、均染性の良好なポリエステル混繊糸を、糸切れの発生を少なくして、安定に製造することが可能となる。ポリエステルマルチフィラメント糸A’を単独で弛緩熱処理して自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸とし、第2の弛緩熱処理により熱固定した後、熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸Bと交絡させてポリエステル混繊糸を製造する方法では、非接触ヒータにより第2の弛緩熱処理を行う際に、糸条が非接触ヒータに接触し、染色斑が発生すると共に、糸切れも多くなるので好ましくない。
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明の構成および効果をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
固有粘度が0.62のポリエチレンテレフタレートを常法により溶融し、3,000m/分の紡糸速度で紡糸して、84dtex/24フィラメント(単繊維繊度:3.3dtex)のポリエステル中間配向糸(POY)(ポリエステルマルチフィラメント糸A’)を得た。なお、このポリエステルマルチフィラメントのS/S、L/D、W/Dは表1に示すとおりであった。
一方、固有粘度が0.64のポリエチレンテレフタレートイソフタレート共重合ポリエステル(イソフタル酸を10.0モル%共重合)を280℃で溶融し、1450m/分の紡糸速度で紡糸した未延伸糸を、87℃で2.9倍に延伸して、沸水収縮率15%、56dtex/12フィラメント(単繊維繊度:4.7dtex)の熱収縮性ポリエステル糸(熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸B’)を得た。
このポリエステルマルチフィラメント糸A’および熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸B’を用い、図2に示す装置でポリエステル混繊糸を製造した。すなわち、両ポリエステルマルチフィラメント糸A’及びB’を引き揃えて、供給ロール1と第1引取ロール(表面温度が120℃の加熱ロール)2との間に設けたインターレースノズル3に、600m/分の速度、1.2%のオーバーフィード率で供給し、196kPa(2.0kg/cm)の圧空により交絡させ、65ヶ/mのインターレースを付与した。
次いで、1.2%のオーバーフィード率のままで、表面温度が120℃の加熱ロール2に糸条を8回巻回し、弛緩熱処理を施して、ポリエステルマルチフィラメント糸A’に自発伸長性を付与した。その後、加熱ロール2と第2引取ロール4との間に設けたスリットヒータ5により、230℃で、2.0%のオーバーフィード率にて0.05秒間、第2の弛緩熱処理を施して熱固定を行い、第2引取ロール(冷ロール)4に2回巻回した後、パッケージ6に巻き取った。ポリエステル混繊糸の製造中、スリットヒータ5への糸条の接触は認められず、糸切れは、1日、1錘当たり、わずか1回であった。得られた混繊糸を、経60本/cm、緯35本/cmの平織物に織成し、常法により、135℃下60分間染色して黒色に染めた。得られた染色織物は、従来にないドライタッチと高反撥性を兼ね備えたふくらみ感のある織物であり、染色斑は全く認められなかった。
なお、織物の風合については、ドライタッチ、ソフト感、高反撥性を総合的にA(極めて良好)〜D(不良)の4段階で官能判定した。
[実施例2、3]
実施例1において、ポリエステルマルチフィラメントA’を表1のように変更する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル混繊糸を得た。織物風合、均染性、延伸性は表1に示すようにいずれも良好な結果であった。
[実施例4]
実施例1において、ポリエステルマルチフィラメント糸A’を、単独で1.2%のオーバーフィード率にて表面温度が120℃の加熱ロール上で弛緩熱処理して自発伸長性を付与した後、230℃のスリットヒータにより、2.0%のオーバーフィード率にて0.05秒間、第2の弛緩熱処理を施して熱固定を行った。次いで、得られた自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aを、熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸B’と引き揃え、実施例1と同じ条件で、インターレースノズルにより、交絡処理を施した。この場合、ポリエステルマルチフィラメント糸A’の第2の弛緩熱処理において、糸条が揺れてスリットヒータに接触する現象が多発し、糸切れが、1日、1錘当たり、20回にも達した。得られた混繊糸を、実施例1と同一条件で織成、染色したところ、風合の良好な織物は得られたが、染色斑の発生が認められた。
比較例1
実施例1において、ポリエステルマルチフィラメントA’を丸断面として、実施例1と同様にしてポリエステル混繊糸を得た。表1に示すように均染性、延伸性は良好な結果であったが、織物風合はドライ感が全くなく、目的とする織物風合は得られなかった。

【産業上の利用可能性】
本発明のポリエステル混繊糸は、従来にないドライタッチとドライタッチと高反撥性を兼ね備えた布帛を得るのに適しており、しかも断糸等が発生しがたく均染性にも優れているので、各種織編物用途に幅広く利用できる。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aと、熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸Bとから構成されるポリエステル混繊糸において、該ポリエステルマルチフィラメント糸Aが、コアー部と、該コアー部の長さ方向に沿ってコアー部から放射状に突出した複数のフィン部とからなり、且つ下記(ア)〜(ウ)式の要件を同時に満足することを特徴とするポリエステル混繊糸。
(ア)1/20≦S/S≦1/3
(イ)0.6≦L/D≦3.0
(ウ)W/D≦1/4
(Sはコアー部の断面、Dはコアー部の断面が真円のときはその直径また真円でないときはその外接円直径を表わし、またS、LおよびWはそれぞれフィン部の断面積、最大長さおよび最大幅を表わす。)
【請求項2】
弛緩熱処理を施すことによって自発伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aとなるポリエステルマルチフィラメント糸A’と、熱収縮性ポリエステルマルチフィラメント糸B’とを引き揃え、オーバーフィード下にインターレースノズルに供給して交絡せしめた後、弛緩熱処理を施して該ポリエステルマルチフィラメント糸A’に自発伸長性を付与し、さらに非接触ヒータにより第2の弛緩熱処理を施すことを特徴とする請求項1記載のポリエステル混繊糸の製造方法。
【請求項3】
自発伸長性付与のための弛緩熱処理を100〜130℃の加熱ローラ上で行う請求項2記載のポリエステル混繊糸の製造方法。
【請求項4】
ポリエステルマルチフィラメント糸A’とポリエステルマルチフィラメント糸B’とを引き揃えて、1.0〜1.5%のオーバーフィード率でインターレースノズルに供給する請求項2記載のポリエステル混繊糸の製造方法。
【請求項5】
インターレースノズルにおいて50〜90ヶ/mのインターレースを付与する請求項4記載のポリエステル混繊糸の製造方法。
【請求項6】
第2の弛緩熱処理を210〜240℃で1.5〜2.5%のオーバーフィード率にて行う請求項2記載のポリエステル混繊糸の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/071149
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517211(P2005−517211)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019820
【国際出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】