説明

ポリエステル系杢調複合糸及び織編物

【課題】 製編織して染色することにより、明瞭な杢感を有し、ソフト感とふくらみ感に優れた布帛となり、かつ環境低負荷型のポリエステル系杢調複合糸及び織編物を提供する。
【解決手段】 (1)非捲縮のポリ乳酸マルチフィラメントA(糸条A)と仮撚捲縮を有するポリエステルマルチフィラメントB(糸条B)とからなる複合糸であって、糸条Aの熱水収縮率が糸条Bの熱水収縮率より大きいポリエステル系杢調複合糸。糸条Bはポリエチレンテレフタレートが好ましく、糸条Bの単糸繊度は1.0dtex以下が好ましい。糸条Aと糸条Bとの熱水収縮率差は5%以上が、糸条Aと糸条Bとの染色色差はグレースケールで1.0級差以上が好ましい。上記(1)のポリエステル系杢調複合糸を少なくともその一部に用いた織編物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製編織して染色することにより、杢感、ソフト感とふくらみ感に優れた布帛となり、かつ環境低負荷型のポリエステル系杢調複合糸及び織編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成繊維マルチフィラメント、中でも特にポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた複合糸は、汎用性の点から幅広く用いられており、その特徴を活かすべく様々な提案がなされてきた。
【0003】
例えば特許文献1では、長手方向に複屈折率が20×10−3〜60×10−3 の範囲で太細斑を有するポリエステルマルチフィラメントAと、捲縮を有するポリエステルマルチフィラメントBとからなる混繊糸であって、前記混繊糸の20〜80質量%がカチオン可染性ポリエステルである杢調嵩高加工糸が提案されている。
この加工糸は、明瞭かつ急激な濃淡変化がなく、織編物に斑のある触感、ナチュラル感、ソフト感を付与できるとともに、梳毛ウール調のヌメリ感、ナチュラルな杢外観を付与することができる。
【0004】
しかし、この加工糸は、複屈折率の低いカチオン可染性ポリエステル糸が複合されているため、ピリング、スナッギング等の物性が悪く、また、ポリエステルマルチフィラメントAは弛緩熱処理を施されており、ポリエステルマルチフィラメントBは仮撚加工を施されていることから、加工糸を構成するいずれの糸条も熱水収縮率が低いため、コシのない織編物しか得ることができなかった。さらに、分散染料単独で染色した場合、カチオン可染性ポリエステルは若干染まりやすい傾向にあるが、2糸条間で明瞭な染色色差を得るためには分散染料とカチオン染料を併用した両染めが必要であり、染料を余分に使用することに加え、いずれの糸条も石油由来のもので、かつ廃棄しても自然界では分解され難いため、その生産や廃棄処理で消費するエネルギーが大きく、これらが環境に与える影響は大きい。
【0005】
この環境問題の点で、近年、植物由来で生分解性を有する脂肪族ポリエステルを用いる傾向が強まってきており、様々な加工糸の提案がなされている。
例えば特許文献2には、2種以上の異なる断面形状を有するフィラメントからなるポリエステル系混繊糸であって、少なくとも1種のフィラメントが融点130℃以上の脂肪族ポリエステルを主体とするポリエステルで形成されているポリエステル系混繊糸が提案されている。
この混繊糸は、ソフト感、反発感及び発色性に優れ、さらにドライ感、吸水性及び生分解性を有するものの、単にフィラメント群間で断面形状が異なることにより前記特徴を付与しているため、ふくらみ感に欠けるとともに、フィラメント群間の色差が発現し難く、この混繊糸を使用した織編物は表面効果が乏しいという問題があった。
【0006】
すなわち、脂肪族ポリエステルは、その特性上高温での染色が困難であり、110〜115℃近辺での染色が主流となっているのに対し、PETのような芳香族ポリエステルは逆に高温での染色が不可欠で、前記温度では染着性が低い。しかし、特許文献2記載の発明では、異なる断面形状を有するフィラメント群で混繊糸を構成することでPETの発色性などを向上させるもので、発色性が向上すれば染着性の差は小さくなり、この混繊糸を構成する脂肪族ポリエステルと他のポリエステルとの染着性の差を積極的に活用しようという技術思想は全くない。
【0007】
【特許文献1】特開2002−115140号公報
【特許文献2】特開2000−226747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を解決し、2糸条間の染色性の違いによる欠点を逆に利用し、製編織して染色することにより、明瞭な杢感を有し、ソフト感とふくらみ感に優れた布帛となり、かつ環境低負荷型のポリエステル系杢調複合糸を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸マルチフィラメントとポリエステルマルチフィラメントからなる複合糸において、ポリ乳酸マルチフィラメントを非捲縮とし、ポリエステルマルチフィラメントに仮撚捲縮を付与することで、杢感、ソフト感とふくらみ感に優れ、かつ環境低負荷型のポリエステル系杢調複合糸が得られることを知見して本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、次の構成を要旨とするものである。
(1)非捲縮のポリ乳酸マルチフィラメントAと仮撚捲縮を有するポリエステルマルチフィラメントBとからなる複合糸であって、前記ポリ乳酸マルチフィラメントAの熱水収縮率がポリエステルマルチフィラメントBの熱水収縮率より大きいことを特徴とするポリエステル系杢調複合糸。
(2)ポリエステルマルチフィラメントBがポリエチレンテレフタレートである上記(1)記載のポリエステル系杢調複合糸。
(3)ポリエステルマルチフィラメントBの単糸繊度が1.0dtex以下である請求項上記(1)又は(2)記載のポリエステル系杢調複合糸。
(4)ポリ乳酸マルチフィラメントAとポリエステルマルチフィラメントBとの熱水収縮率差が5%以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエステル系杢調複合糸。
(5)ポリ乳酸マルチフィラメントAとポリエステルマルチフィラメントBとの染色色差がグレースケールで1.0級差以上である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル系杢調複合糸。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリエステル系杢調複合糸を少なくともその一部に用いた織編物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリエステル系杢調複合糸を製編織して染色すれば、得られる織編物に、ふくらみ感とソフト感を付与することができ、さらには明瞭な杢により優れた表面効果を付与することが可能となる。また、本発明のポリエステル系杢調複合糸は、少なくともその一部に植物由来の原料を用いるため、環境への負荷を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステル系杢調複合糸は、非捲縮のポリ乳酸マルチフィラメントAと仮撚捲縮を有するポリエステルマルチフィラメントBとで構成されているが、まず、ポリ乳酸マルチフィラメントA(糸条A)について説明する。
【0013】
糸条Aを形成するポリ乳酸としては、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、L−乳酸とD−乳酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体からなる群から選ばれる重合体が挙げられる。乳酸の単独重合体であるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の融点はそれぞれ約180℃であるが、乳酸系重合体として上記共重合体を用いる場合には、機械的強度、融点等を考慮して共重合体成分の共重合比を決定することが好ましい。例えば、L−乳酸とD−乳酸との共重合体の場合には、L−乳酸とD−乳酸のいずれか一方がモル比で0.9から1.0未満、他方が0を超え0.1未満の範囲にすることが好ましく、また、L−乳酸又はD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体の場合には、例えば上記乳酸をモル比で0.9から1.0未満、共重合成分であるヒドロキシカルボン酸が0を超え0.1未満の範囲にすることが好ましい。
【0014】
乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体におけるヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられる。これらの中でも、コストが安価である点から特にヒドロキシカプロン酸又はグリコール酸が好ましい。
【0015】
次に、ポリエステルマルチフィラメントB(糸条B)を形成するポリエステルとしては、PET、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ乳酸等いずれでもよいが、本発明においては、PETが好ましく用いられる。PETは高温での仮撚加工が可能なため、後述の仮撚捲縮を強固にできるとともに、熱水収縮率が小さくなるため、熱水収縮率の大きいポリ乳酸からなる糸条Aとの複合糸を使用すれば、製編織、染色して得られる織編物のふくらみ感を大きくすることができる。また、ポリ乳酸からなる糸条Aは、110〜115℃近辺での染色でも、その屈折率の低さから染色性が高く、これに対し、前記温度近辺でのPETの染色性が低いことから2糸条間の色差が大きくなり、染色後の織編物に明瞭な杢感を付与することができる。
【0016】
また、本発明においては、糸条Bを形成するポリエステルとしてポリ乳酸を用いることもでき、この場合には、ポリ乳酸のヤング率の低さから、製編織、染色して得られる織編物の風合いを一層ソフトでふくらみ感のあるものにできるとともに、複合糸の全てがポリ乳酸で構成されるため生分解性があり、環境への負荷を一層小さくすることができる。
【0017】
なお、糸条Bを形成するポリエステルとしてポリ乳酸を用いる場合には、同じくポリ乳酸で形成された糸条Aとの染色性の差は小さくなる。しかし、後述するように糸条Aは非捲縮で糸条Bは仮撚捲縮を有するため、仮撚捲縮の有無によって染色後の織編物に杢感を付与することができる。
【0018】
本発明のポリエステル系杢調複合糸は、糸条Aが非捲縮で、かつ糸条Bが仮撚捲縮を有し、かつ糸条Aの熱水収縮率が糸条Bの熱水収縮率より大きいことが必要である。非捲縮糸と仮撚捲縮糸とが複合されていることにより、糸条Aと糸条Bとの間、及び糸条Bのフィラメント間に微細な空間が形成されてふくらみ感が生じるとともに、染色などの熱処理後にヤング率の低い糸条Aが複合糸の芯部に配置されるため、製編織、染色して得られる織編物にソフト感を付与することができる。また、非捲縮糸と仮撚捲縮糸とが複合されているので、仮撚による配向の進行及び断面変形により仮撚捲縮糸の染色性が低下し、非捲縮糸同士あるいは仮撚捲縮糸同士が複合されている場合に比べて、2糸条間の色差が大きくなるため、明瞭な杢感を表現できる。したがって、糸条A、糸条Bともにポリ乳酸を用いる場合でも、染色後の織編物に杢感を付与することができる。
【0019】
糸条Aと糸条Bの両方に仮撚捲縮がある場合には、ふくらみ感は得られるものの、全体的な断面変形が生じるため風合いがガサツクとともに、染色しても糸条Aと糸条Bとの色差が出難く、織編物に明瞭な杢感を表現することができない。一方、糸条Aと糸条Bの両方が非捲縮の場合は、ふくらみ感が得られないことに加えて、糸条Aと糸条Bとの色差が出難く、明瞭な杢感を表現することができない。
【0020】
また、糸条Bを形成するポリエステルとしてPETを用いた場合は、特にその屈折率の高さと断面変形、及び配向の進行による相乗効果により、淡色化が助長されるため、芯側の糸条Aとの間に大きな色差が生じ、織編物の表面効果を一層向上させることができる。加えて、糸条Bの単糸繊度が1.0dtex以下である場合には、染色性がさらに低下し、糸条Aとの染色色差が大きくなって、より明瞭な杢感が得られるとともに、極細糸による表面のソフト感をも得ることができる。
【0021】
前記したように、本発明のポリエステル系杢調複合糸は、糸条Aの熱水収縮率が糸条Bの熱水収縮率より大きいことが必要であるが、糸条Aと糸条Bとの熱水収縮率差が5%以上ある場合は、ふくらみ感がより強調されるとともに、芯のしっかりした織編物が得られるため好ましい。この意味で熱水収縮率差は7%以上がより好ましいが、30%を超えると糸条Aの収縮が大き過ぎ、製編織しても風合いの硬い織編物となるため、30%以下が好ましい。
【0022】
また、本発明においては、糸条Aと糸条Bとの染色色差がグレースケールで1.0級差以上であることが好ましい。染色後にこのような色差を発現することで、製編織、染色して得られる織編物の杢感が一層明瞭となり、表面効果に富んだものとなる。
【0023】
本発明のポリエステル系杢調複合糸における糸条Aと糸条Bとの混繊割合や、複合糸の糸条繊度は特に限定されるものではないが、混繊割合は糸条Aが20〜80質量%、糸条Bが80〜20質量%が好ましく、また、複合糸の糸条繊度は30〜350dtexが好ましい。
【0024】
また、本発明のポリエステル系杢調複合糸を構成する糸条A、糸条Bには、酸化チタン等の艶消し剤や機能性を付与するための帯電防止剤、抗菌剤、消臭剤等が添加されていてもよい。さらに、糸条A、糸条Bのフィラメントの断面形状は通常の丸断面に限らず、多角、中空、偏平、その他特殊断面形状のものであってもよい。例えば糸条Aに丸断面糸、糸条Bに中空糸を使用した場合には、糸条A、B間の色差がさらに大きくなり杢感が強調されるため好ましく適用される。
【0025】
次に、本発明の織編物は、本発明のポリエステル系杢調複合糸を少なくともその一部に用いたものである。このような構成を有するため、前記したように表面効果に富んだ織編物となる。これを効果的に発現させるためには、ポリエステル系杢調複合糸が織編物の30質量%以上、特に50質量%以上となるように使用することが好ましく、ポリエステル系杢調複合糸のみで織編物を形成してもよい。
【0026】
次に、本発明のポリエステル系杢調複合糸の製法例について図面を用いて説明する。
図1は、本発明のポリエステル系杢調複合糸の一製法例を示す概略工程図である。図1において、ポリ乳酸からなる供給糸1は、スプール2から引き出され、ガイド3を通り、フィードローラ4、ヒータ5、デリベリローラ7の間で延伸されて糸条Aとなり、流体処理領域に供給される。なお、延伸や熱処理の工程が不要であれば、除くことができる。
【0027】
一方、ポリエステルからなる供給糸11は、スプール12から引き出され、ガイド13を通り、フィードローラ14、ヒータ15、仮撚施撚体16、デリベリローラ17の間で仮撚加工が施されて仮撚捲縮を有する糸条Bとなり、流体処理領域に供給される。
次いで、上記の2糸条A、Bは、流体処理ノズル8、第2デリベリローラ9により混繊処理されて本発明のポリエステル系杢調複合糸となり、パッケージ10に巻き取られる。
【0028】
なお、本発明のポリエステル系杢調複合糸を得るための具体的な加工条件は、供給糸の物性に応じて通常の条件を採用すればよく、上記仮撚施撚体16としては、3軸フリクションディスク、ニップベルトや仮撚ベルトのいずれも採用できる。また流体処理ノズル8としては、インターレースノズルやタスランノズルを使用でき、長いピッチの杢感を得る場合にはインターレースノズル、細かいピッチの杢感を得る場合にはタスランノズルを使用すればよい。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例における各物性は、次の方法にて測定、評価した。
(1)熱水収縮率
JIS−L−1013に準拠して測定した。
(2)糸条Aと糸条Bとの染色色差
糸条Aと糸条Bとの色差を目視にて確認し、グレースケールによって判定を行った。測定は10個所について行い、その平均値を染色色差とした。
(3)杢感、ソフト感及びふくらみ感
熟練者3人による官能試験にて評価を行い、特に優れているものを◎、優れているものを○、普通のものを△、不良のものを×と4段階で評価した。
【0030】
なお、実施例では、下記の染色処方で染色を行った。
・精練
精練剤:サンモールFL(日華化学社製) 2g/l
温度×時間:80℃×20分
・染色
分散染料:Cibacet Black EL-FGL(チバスペシャルテイケミカルズ社製)
10%o.m.f.
助剤:ニッカサンソルトSN-130(日華化学社製) 0.5g/l
酢酸:0.2ml/l
温度×時間:110℃×30分
浴比:1:50
・還元洗浄
還元洗浄剤:ソーダ灰 5g/l
ハイドロサルフアイト 1g/l
サンモールFL 1g/l
温度×時間:70℃×20分
【0031】
(実施例1)
L−乳酸を主成分とする数平均分子量が140,000のポリ乳酸(L−乳酸単位:98.2モル%、D−乳酸単位:1.8モル%)を、2軸エクストルーダーを用い、温度205〜225℃で約10分間溶融混練した後、水中にストランド状に押し出してカッティングすることによりチップを作製した。
次に、このチップを用いて紡糸温度220℃、紡糸速度3000m/分で溶融紡糸し、供給糸1として110dtex/36fのポリ乳酸高配向未延伸糸を得た。
【0032】
また、通常のPETを紡糸し、供給糸2として100dtex/144fのPET高配向未延伸糸を得た。
これらを供給糸として、図1に示す工程に従い、表1の条件にて加工して、156dtex/180fのポリエステル系杢調複合糸を得た。
【0033】
次いで、得られたポリエステル系杢調複合糸を用いて、ウォータージェットルームで経糸密度72本/2.54cm、緯糸密度64本/2.54cmで平織物を製織し、前記処方により染色し、仕上げ加工を行った。
【0034】
(比較例1)
供給糸1として、通常のPETを紡糸して得た100dtex/36fのPET高配向未延伸糸を用い、供給糸2として、実施例1のポリ乳酸チップを用いて得られた110dtex/96fのポリ乳酸高配向未延伸糸を用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す工程に従い、表1の条件にて加工して、157dtex/132fのポリエステル系複合糸を得た。
次いで、得られたポリエステル系複合糸を用いて、実施例1と同様にして製織、染色、仕上げ加工を行った。
【0035】
(比較例2)
供給糸2に仮撚を施さない以外は実施例1と同様にして、図1に示す工程に従い、表1の条件にて加工して、151dtex/180fのポリエステル系複合糸を得た。
次いで、得られたポリエステル系複合糸を用いて、実施例1と同様にして製織、染色、仕上げ加工を行った。
【0036】
実施例1と比較例1,2で得られた複合糸と織物の評価結果を併せて表1に示す。
【表1】

【0037】
表1から明らかなように、実施例1で得られた織物は、明瞭な杢感を有し、ソフト感とふくらみ感に優れ、非常にソフトで高質感のものであった。
【0038】
一方、糸条Aが仮撚捲縮を有し、糸条Bが仮撚捲縮を有しない比較例1で得られた織物は、糸条Aと糸条Bとの色差がないので杢外観を呈さず、また、ふくらみ感とソフト感にも欠けていた。次に、糸条A、Bともに仮撚捲縮を有しない比較例2で得られた織物は、糸条Aと糸条Bとの色差がほとんどなくて杢外観を呈さず、また、捲縮がないので、ふくらみ感にも欠けていた。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のポリエステル系杢調複合糸の一製法例を示す概略工程図である。
【符号の説明】
【0040】
1、11 供給糸
2、12 スプール
3、13 ガイド
4、14 フィードローラ
・ ヒータ
16 仮撚施撚体
7、17 デリベリローラ
8 流体処理ノズル
9 第2デリベリローラ
10 パッケージ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非捲縮のポリ乳酸マルチフィラメントAと仮撚捲縮を有するポリエステルマルチフィラメントBとからなる複合糸であって、前記ポリ乳酸マルチフィラメントAの熱水収縮率がポリエステルマルチフィラメントBの熱水収縮率より大きいことを特徴とするポリエステル系杢調複合糸。
【請求項2】
ポリエステルマルチフィラメントBがポリエチレンテレフタレートである請求項1記載のポリエステル系杢調複合糸。
【請求項3】
ポリエステルマルチフィラメントBの単糸繊度が1.0dtex以下である請求項1又は2記載のポリエステル系杢調複合糸。
【請求項4】
ポリ乳酸マルチフィラメントAとポリエステルマルチフィラメントBとの熱水収縮率差が5%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル系杢調複合糸。
【請求項5】
ポリ乳酸マルチフィラメントAとポリエステルマルチフィラメントBとの染色色差がグレースケールで1.0級差以上である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル系杢調複合糸。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル系杢調複合糸を少なくともその一部に用いた織編物。








【図1】
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【公開番号】特開2007−247113(P2007−247113A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74551(P2006−74551)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】