説明

ポリエステル系樹脂およびポリエステル系接着剤

【課題】ポリエステル系樹脂および、溶液安定性、耐ブロッキング性に優れ、かつアクリル系樹脂に対して優れた接着性を示すポリエステル系接着剤の提供を目的とする。
【解決手段】イソフタル酸を含有する酸成分と、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを含有する多価アルコール成分とを重合してなるポリエステル系樹脂であり、上記多価アルコール成分全体に対する2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの含有割合が1〜15モル%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系樹脂および、溶液安定性、耐ブロッキング性に優れ、かつアクリル系樹脂(メタクリル系樹脂も含む)に対して優れた接着性を示すポリエステル系接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル樹脂は、耐熱性、耐薬品性、耐久性、機械的強度に優れており、フィルム、ペットボトル、繊維、トナー、電機部品など、幅広い用途で用いられている。また、ポリエステル樹脂は、接着性にも優れておりホットメルトの接着剤や、硬化剤等を用いて熱で反応させる熱硬化タイプの接着剤や、紫外線を照射して硬化させる紫外線硬化タイプの接着剤としても利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、耐湿熱性と耐カチオン酸性に優れ、エポキシ樹脂との相溶性と接着性を併せ持った、紫外線硬化エポキシ樹脂接着剤組成物として、芳香族ジカルボン酸成分と、炭素数2〜10のアルキレングリコールを20〜80モル%含有するグリコール成分とからなる共重合ポリエステルを含有する接着剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−183365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、グリコール成分全体に対する炭素数2〜10のアルキレングリコールの含有割合が多すぎるため、ガラス転移温度(Tg)が低くなり、耐ブロッキング性や接着性が劣るという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ポリエステル系樹脂および、溶液安定性、耐ブロッキング性に優れ、かつアクリル系樹脂に対して優れた接着性を示すポリエステル系接着剤の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記特許文献1に記載の炭素数2〜10のアルキレングリコールのなかでも、特に2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールに着目し、多価アルコール成分全体に対する上記2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの含有割合を1〜15モル%とすることが有効であることを突き止めた。そして、イソフタル酸を含有する酸成分と、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを特定の割合(1〜15モル%)で含有する多価アルコール成分とを重合してなるポリエステル系樹脂を含有するポリエステル系接着剤を使用すると、溶液安定性、耐ブロッキング性に優れ、かつアクリル系樹脂に対して優れた接着性を示すことを見いだし、本発明に到達した。
この理由は明らかではないが、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールは、主鎖の炭素数が奇数の5個で、かつ側鎖にエチル基を2個もつため、構造骨格上、非常に結晶性を崩す効果が大きく、溶液安定性に優れるとともに、脂肪族グリコールのため極性がアクリル系樹脂と類似し、アクリル系樹脂に対して優れた接着性を示すものと思われる。
【0008】
すなわち、本発明は、イソフタル酸を含有する酸成分と、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを含有する多価アルコール成分とを重合してなるポリエステル系樹脂であり、上記多価アルコール全体に対する2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの含有割合が1〜15モル%であるポリエステル系樹脂を第1の要旨とする。
また、本発明は、上記ポリエステル系樹脂を含有するポリエステル系接着剤を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明のポリエステル系樹脂は、イソフタル酸を含有する酸成分と、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを特定の割合(1〜15モル%)で含有する多価アルコール成分とを重合してなるポリエステル系樹脂であるため、該ポリエステル系樹脂を含有するポリエステル系接着剤は、溶液安定性、耐ブロッキング性に優れ、かつアクリル系樹脂に対して優れた接着性を示す。
【0010】
また、ポリエステル系樹脂の数平均分子量が、10,000〜50,000であると、接着性や溶液安定性がさらに良好となる。
【0011】
そして、酸成分全体に対するイソフタル酸の含有割合が、10〜100モル%であると、接着性や溶液安定性がさらに向上する。
【0012】
さらに、多価アルコール成分がエチレングリコールを含有するものであると、接着性がより一層向上するようになる。
【0013】
また、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が30〜150℃であると、耐ブロッキング性や接着性がさらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0015】
本発明のポリエステル系樹脂は、イソフタル酸を含有する酸成分と、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを含有する多価アルコール成分とを重合してなるものである。
本発明においては、上記多価アルコール成分全体に対する2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの含有割合が従来よりも低い(1〜15モル%)ことが最大の特徴である。
【0016】
また、本発明のポリエステル系接着剤は、上記ポリエステル系樹脂(以下、「ポリエステル系樹脂(A)」と記すことがある。)を含有するものである。
【0017】
以下、各成分について説明する。
[酸成分]
本発明のポリエステル系樹脂(A)に使用する酸成分は、イソフタル酸を含有することが必要である。
酸成分全体に対するイソフタル酸の含有割合は、10〜100モル%であることが好ましく、特に好ましくは20〜80モル%、さらに好ましくは30〜70モル%である。イソフタル酸の含有割合が多すぎると、接着力が低下する傾向があり、少なすぎると溶液安定性が低下する傾向がある。
【0018】
また、上記酸成分としては、イソフタル酸以外のジカルボン酸や、3官能以上の多価カルボン酸があげられる。
上記ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等があげられ、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、接着力の点で、テレフタル酸、セバシン酸、アジピン酸が好ましく、特に好ましくはテレフタル酸、セバシン酸である。
また、上記3官能以上の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等があげられる。
【0019】
本発明で使用する酸成分としては、イソフタル酸およびテレフタル酸の双方からなるもの、および、更にセバシン酸及び/またはアジピン酸を加えたものであることが好ましい。これらのモル比(モル%)は、イソフタル酸10〜90モル%、テレフタル酸10〜90モル%、セバシン酸及び/またはアジピン酸0〜40モル%が好ましく、
特に好ましくはイソフタル酸20〜80モル%、テレフタル酸20〜80モル%、アジピン酸及び/またはセバシン酸0〜30モル%、
さらに好ましくはイソフタル酸40〜60モル%、テレフタル酸40〜60モル%、セバシン酸及び/またはアジピン酸0〜20モル%である。
【0020】
[多価アルコール成分]
本発明のポリエステル系樹脂(A)に使用する多価アルコール成分は、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを含有することが必要である。
多価アルコール成分全体に対する2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの含有割合は、1〜15モル%であることが必要であり、好ましくは2〜15モル%、特に好ましくは2〜14モル%である。2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの含有割合が多すぎると、接着力が低下し、耐ブロッキング性も低下することとなり、少なすぎると溶液安定性が低下することとなる。
【0021】
また、上記多価アルコール成分としては、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール以外のジオールや、3官能以上の多価アルコールがあげられる。
上記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5− ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジエタノール等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、接着性の点で、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールが好ましく、特に好ましくはエチレングリコールである。
また、上記3官能以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等があげられる。
【0022】
本発明で使用する多価アルコール成分としては、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールおよびエチレングリコールの双方からなるもの、および、更にネオペンチルグリコールを加えたものが好ましい。これらのモル比(モル%)は、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール1〜15モル%、エチレングリコール55〜99モル%、ネオペンチルグリコール0〜30モル%が好ましく、
特に好ましくは2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール2〜15モル%、エチレングリコール55〜98モル%、ネオペンチルグリコール0〜30モル%、
さらに好ましくは2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール2〜14モル%、エチレングリコール55〜98モル%、ネオペンチルグリコール0〜30モル%である。
【0023】
[ポリエステル系樹脂(A)]
本発明で用いるポリエステル系樹脂(A)は、例えば、イソフタル酸を含有する酸成分と、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを含有する多価アルコール成分とを所定の割合で配合し、触媒存在下、エステル化反応および重合反応を行うことにより得ることができる。
【0024】
酸成分と多価アルコール成分の仕込み比率としては、酸成分1当量あたり、多価アルコール成分が1〜2当量であることが好ましく、1.2〜1.7当量であることがより好ましい。多価アルコール成分が少なすぎると酸価が高くなり高分子量化するのが難しくなる傾向があり、多すぎると収率が低下する傾向がある。
【0025】
ポリエステル系樹脂(A)の製造に関しては、まずエステル化反応が行われた後、重合反応が行われる。
【0026】
上記エステル化反応においては触媒が用いられ、上記触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系触媒や、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、触媒活性が高い点から、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネートが好ましい。
【0027】
上記触媒の配合量は、全共重合成分に対して1〜10000ppmであることが好ましく、10〜5000ppmであることがより好ましく、10〜3000ppmであることがさらに好ましい。触媒の配合量が少なすぎると重合反応が充分に進行しない傾向があり、多すぎても反応時間短縮等の利点はなく、副反応が起こりやすい傾向がある。
【0028】
エステル化反応時の温度は、140〜260℃が好ましく、160〜250℃がより好ましく、180〜250℃がさらに好ましい。エステル化反応時の温度が低すぎると反応が充分に進まない傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こる傾向がある。また、圧力は常圧下で実施される。
【0029】
エステル化反応が行われた後、重合反応が行われるが、このときの反応条件は、上記のエステル化のときと同様の触媒をさらに同程度の量添加し、反応温度としては好ましくは220〜280℃、より好ましくは230〜270℃に設定し、反応系を徐々に減圧して最終的には5hPa以下で反応させることが好ましい。反応温度が低すぎると反応が充分に進行しない傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こる傾向がある。
【0030】
本発明において、上記ポリエステル系樹脂(A)の数平均分子量は、10,000〜50,000であることが好ましく、特に好ましくは10,000〜40,000、さらに好ましくは10,000〜30,000である。数平均分子量が高すぎると接着力が低下する傾向があり、低すぎると溶液安定性が低下する傾向がある。
なお、上記数平均分子量は、末端基法により酸価と水酸基価から計算した値である。
【0031】
また、上記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、30〜150℃が好ましく、特に好ましくは35〜120℃、さらに好ましくは35〜100℃である。Tgが高すぎると接着力が低下する傾向があり、低すぎると耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
なお、上記Tgは、TAインスツールメント社製の示差走査熱量計DSC2920を用いて測定した。
【0032】
本発明のポリエステル系接着剤においては、上記ポリエステル系樹脂(A)を有機溶剤に溶解して使用することができる。
上記有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソホロン、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキノン等のケトン系溶剤、ジエチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤等があげられる。
本発明のポリエステル系接着剤全体に対する有機溶剤の使用量は、通常、20〜80重量%であり、好ましくは40〜80重量%、特に好ましくは60〜80重量%である。
【0033】
なお、本発明のポリエステル系接着剤には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、耐電防止剤等の添加剤、無機または有機の充填剤、金属粉や顔料等の粉体,粒子状等の添加剤等を、必要に応じて配合することができる。
【0034】
上記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール樹脂等があげられる、上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、チヌビン系化合物等があげられ、上記安定剤としては、例えば、リン酸、亜リン酸もしくはこれらのエステル化合物等があげられる。
また、上記耐電防止剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル等があげられ、上記無機または有機の充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、セルロース等があげられ、上記金属粉や顔料等の粉体,粒子状等の添加剤としては、例えば、酸化チタン等があげられる。
【0035】
本発明のポリエステル系接着剤は、通常、上記ポリエステル系樹脂(A)を有機溶剤に溶解し、この適量を被着体に塗工した後、熱ロールで圧着する等の形態で使用される。
上記被着体としては、例えば、合成樹脂フィルム、金属箔(錫メッキ銅、銅等)、木材、紙、繊維等が用いられる。
【0036】
上記合成樹脂フィルムを形成する合成樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のアクリル系樹脂等の他、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。これらのなかでも、アクリル系樹脂が好ましい。
本発明のポリエステル系接着剤は、合成樹脂等に対する接着性に優れているが、特にアクリル系樹脂に対する接着性に優れているため、インサート成形やインモールド転写用の接着剤用途に非常に有用である。また、本発明のポリエステル系接着剤は、先に述べた錫メッキ銅,銅等の金属箔に対する接着性にも優れているため、電気、電子機器等に使用されるフレキシブルフラットケーブル用の接着剤用途にも有用である。さらに接着剤以外の用途としては塗料、コーティング剤、インキのバインダーなどの用途にも有用である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0038】
〔実施例1〕
温度計、攪拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、酸成分としてテレフタル酸242.6部(1.46mol)およびイソフタル酸242.6部(1.46mol)、多価アルコール成分としてエチレングリコール244.7部(3.942mol)および2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(協和発酵ケミカル社製、商品名「キョーワジオールPD−9」)70.1部(0.438mol)、触媒としてテトラブチルチタネート0.3部(全共重合成分に対して511ppm)を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒としてテトラブチルチタネート0.3部仕込み、1hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A−1)を製造した。さらに、100℃まで冷却し冷却管を取り付け、30%溶液になるようにトルエン/メチルエチルケトン〔80/20(重量比)〕の混合溶剤を加えて攪拌しながら冷却し、ポリエステル系樹脂(A−1)接着剤(30%樹脂溶液)を得た。
【0039】
〔実施例2〕
ポリエステル系樹脂(A−1)の製造において、モノマー組成を、テレフタル酸241.0部(1.45mol)、イソフタル酸241.0部(1.45mol)、エチレングリコール208.9部(3.364mol)、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(協和発酵ケミカル社製、商品名「キョーワジオールPD−9」)18.6部(0.116mol)およびネオペンチルグリコール90.6部(0.87mol)に変更した以外は同様にして、ポリエステル系樹脂(A−2)を製造し、さらに同様にしてポリエステル系樹脂(A−2)接着剤(30%樹脂溶液)を得た。
【0040】
〔実施例3〕
ポリエステル系樹脂(A−1)の製造において、モノマー組成を、テレフタル酸219.4部(1.3185mol)、イソフタル酸219.4部(1.3185mol)、セバシン酸59.3部(0.293mol)、エチレングリコール255.0部(4.102mol)および2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(協和発酵ケミカル社製、商品名「キョーワジオールPD−9」)46.9部(0.293mol)に変更した以外は同様にして、ポリエステル系樹脂(A−3)を製造し、さらに同様にしてポリエステル系樹脂(A−3)接着剤(30%樹脂溶液)を得た。
【0041】
〔実施例4〕
ポリエステル系樹脂(A−1)の製造において、モノマー組成を、テレフタル酸238.3部(1.43mol)、イソフタル酸238.3部(1.43mol)、エチレングリコール231.5部(3.718mol)および2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(協和発酵ケミカル社製、商品名「キョーワジオールPD−9」)91.8部(0.572mol)に変更した以外は同様にして、ポリエステル系樹脂(A−4)を製造し、さらに同様にしてポリエステル系樹脂(A−4)接着剤(30%樹脂溶液)を得た。
【0042】
〔比較例1〕
ポリエステル系樹脂(A−1)の製造において、モノマー組成を、テレフタル酸222.7部(1.34mol)、イソフタル酸222.7部(1.34mol)、エチレングリコール183.0部(2.948mol)および2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(協和発酵ケミカル社製、商品名「キョーワジオールPD−9」)171.6部(1.072mol)に変更した以外は同様にして、ポリエステル系樹脂(A′−1)を製造し、さらに同様にしてポリエステル系樹脂(A′−1)接着剤(30%樹脂溶液)を得た。
【0043】
〔比較例2〕
ポリエステル系樹脂(A−1)の製造において、モノマー組成を、テレフタル酸171.9部(1.03mol)、イソフタル酸171.9部(1.03mol)、エチレングリコール25.7部(0.412mol)および2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(協和発酵ケミカル社製、商品名「キョーワジオールPD−9」)430.5部(2.678mol)に変更した以外は同様にして、ポリエステル系樹脂(A′−2)を製造し、さらに同様にしてポリエステル系樹脂(A′−2)接着剤(30%樹脂溶液)を得た。
【0044】
〔比較例3〕
ポリエステル系樹脂(A−1)の製造において、モノマー組成を、テレフタル酸248.3部(1.49mol)、イソフタル酸248.3部(1.49mol)、エチレングリコール241.2部(3.874mol)およびネオペンチルグリコール62.3部(0.596mol)に変更した以外は同様にして、ポリエステル系樹脂(A′−3)を製造し、さらに同様にしてポリエステル系樹脂(A′−3)接着剤(30%樹脂溶液)を得た。
【0045】
以上の実施例および比較例を表1にまとめて示すとともに、接着剤等の評価を同表に併せて示す。
【0046】
【表1】

【0047】
<ポリエステル系樹脂の測定およびポリエステル系接着剤の評価>
上記で得られたポリエステル系樹脂およびポリエステル系接着剤について、以下の測定および評価を行った。これらの結果を、上記表1に併せて示した。
【0048】
[樹脂組成モル比]
得られたポリエステル系樹脂をd−クロロホルムに溶解した後、バリヤン社製「200MHZ−HMR」を用いて、H−NMRを測定し、各モノマー成分のモル比(mol%)を求めた。
【0049】
[数平均分子量]
末端基法により酸価と水酸基価より計算した。
【0050】
[ガラス転移温度(Tg)]
得られたポリエステル系樹脂をTAインスツールメント社製の示差走査熱量計DSC2920を用い、測定した。
【0051】
[溶液安定性]
得られたポリエステル系樹脂を混合溶剤〔トルエン/メチルエチルケトン=4/1(重量比)〕に溶解し(固形分30%)、これを23℃、65%RHに1週間放置して、溶液安定性の評価を目視により行った。評価基準は以下の通りである。
〇・・・異常なし
△・・・2〜6日でゲル化した
×・・・1日後にゲル化した
【0052】
[剥離強度(接着性)]
上記ポリエステル系接着剤をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み50μm)に、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗工し、その後ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)シートと熱ロール機(ロール温度150℃、圧力0.1MPa、速度1.5m/分)で貼り合せて、積層体を得た。得られた積層体を、23℃、65%RHの環境下に1日放置した後、オートグラフ(島津製作所製「オートグラフAGS−H 500N」)を用いて、剥離速度100mm/分で180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0053】
[耐ブロッキッグ性]
上記ポリエステル系接着剤をPETフィルム(厚み50μm)に、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗工した後、その上にPETフィルム(厚み50μm)を23℃、65%RHの環境下で、圧力0.1MPa、圧着時間10秒で貼り合わせ、耐ブロッキング性を評価した。評価基準は以下の通りである。
〇・・・接着しない
△・・・ほんの一部に接着が確認された
×・・・大半の部分に接着が確認された
【0054】
上記表1の結果より、実施例は、いずれも多価アルコール成分全体に対する2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの含有割合が1〜15モル%であるポリエステル系樹脂(A−1〜A−4)を使用したため、溶液安定性、耐ブロッキング性に優れ、かつアクルル系樹脂に対して優れた接着性を示した。
【0055】
これに対して、比較例1は、多価アルコール成分全体に対する2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの含有割合が上限を超えたポリエステル系樹脂(A′−1)を使用したため、接着性が劣っていた。
比較例2は、多価アルコール成分全体に対する2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの含有割合が上限を著しく超えたポリエステル系樹脂(A′−2)を使用したため、接着性が劣るとともに、Tgが低く、耐ブロッキング性も劣っていた。
比較例3は、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールに代えて、ネオペンチルグリコールを含有する多価アルコール成分を共重合してなるポリエステル系樹脂(A′−3)を使用したため、溶液安定性が劣っていた。なお、ポリエステル系樹脂(A′−3)は、溶剤溶解後すぐに固化してしまい、塗工できないため、接着性および耐ブロッキング性の評価を行うことができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のポリエステル系接着剤は、溶液安定性に優れた溶剤可溶タイプの接着剤であり、アクリル系樹脂に対する接着性に特に優れるため、インサート成形やインモールド転写用の接着剤用途に非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソフタル酸を含有する酸成分と、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを含有する多価アルコール成分とを重合してなるポリエステル系樹脂であり、上記多価アルコール成分全体に対する2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの含有割合が1〜15モル%であることを特徴とするポリエステル系樹脂。
【請求項2】
ポリエステル系樹脂の数平均分子量が、10,000〜50,000であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系樹脂。
【請求項3】
酸成分全体に対するイソフタル酸の含有割合が、10〜100モル%であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル系樹脂。
【請求項4】
多価アルコール成分がエチレングリコールを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂。
【請求項5】
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が30〜150℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリエステル系樹脂を含有することを特徴とするポリエステル系接着剤。
【請求項7】
接着剤がアクリル系樹脂用接着剤であることを特徴とする請求項6記載のポリエステル系接着剤。

【公開番号】特開2012−241040(P2012−241040A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109644(P2011−109644)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】