説明

ポリエステル組成物およびポリエステル成形品

【課題】本発明の目的は、ポリエステルおよびそれよりなる繊維、繊維製品に関する。さらに詳しくは、撥水性、熱安定性に優れたポリエステル組成物を提供することである。
【解決手段】ポリエステル組成物であって、下記一般式(I)で示されるエポキシ化合物とヒンダードフェノール系熱安定剤を含有することを特徴とするポリエステル組成物によって上記課題の解決が達成される。
【化1】


[上記化学式中、Rは酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでも良い炭化水素残基を表し、nは1〜4の整数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルおよびそれよりなる繊維、繊維製品に関する。さらに詳しくは、撥水性、熱安定性に優れたポリエステル組成物及びそれよりなる繊維、繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレートは、その機械的、物理的及び化学的性能が優れているため、繊維、フィルム又はその他の成形物に広く利用されている。その中でも特にポリエチレンテレフタレートは、機械的特性、化学的特性、成形性等に優れており、古くからポリエステル繊維用に利用されている。
ポリエステルは疎水性の化合物であるが、その撥水性は充分なレベルでなく、衣料用品、雨具、スポーツウェアなど撥水性を要求される各種繊維用品に使用する際は、布帛を撥水加工し、撥水性を付与することが一般的に行われている。
【0003】
撥水加工の問題点としては、使用時の摩擦や洗濯などの影響で、表面をコーティングしている撥水剤の剥離などの影響で撥水性能が低下するといった問題点がある。それに対し、シリコーン系撥水剤を使用して洗濯耐久性を向上させた撥水性布帛が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、シリコーン系撥水剤やフッ素系撥水剤で変性した熱可塑性樹脂を布帛表面に塗布することにより、耐久性のある撥水性布帛が得られる事が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、布帛表面に微細な凸部を形成させることにより、耐久性のある撥水性布帛が得られることが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかし、これらの方法では、着用時や洗濯時の擦れや揉みにより皮膜に亀裂が生じたり、剥離したりする事で撥水性能が低下するという問題があった。
【0004】
また、フッ素系モノマーやケイ素系モノマーの低温プラズマ重合により、布帛を構成する繊維表面に撥水層を形成させる方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。一方、フッ素系樹脂を鞘とした芯鞘複合繊維(例えば、特許文献5参照。)、フッ素樹脂を混連分散させたポリエステル繊維や芯鞘複合繊維(例えば、特許文献6〜8参照。)が開示されている。しかし、これらの方法でも洗濯やドライクリーニングによる撥水性能の低下を抑えることはできず耐久性に問題があり、さらにアルカリ減量加工時に混練分散させた粒子が脱落して撥水機能が低下するという問題があった。さらに、ポリテトラフルオロエチレン及びその共重合体等の含フッ素ポリマーからなる合成繊維も知られているが、この繊維はヤング率が高いため風合が硬く、一般衣料用に使用できないと共に、染色する事ができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭61−009432号公報
【特許文献2】特開平09−195169号公報
【特許文献3】特開2004−256939号公報
【特許文献4】特開平04−343764号公報
【特許文献5】特開昭53−031851号公報
【特許文献6】特開昭62−238822号公報
【特許文献7】特開平06−136616号公報
【特許文献8】特開平06−220718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、洗濯を繰返しても撥水性能の低下が少ない、優れた撥水性能を有し、かつ良好な風合と染色性を有する合成繊維を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリエステル組成物であって、下記一般式(I)で示されるエポキシ化合物とヒンダードフェノール系熱安定剤を含有することを特徴とするポリエステル組成物によって、解決されることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
【化1】

[上記化学式中、Rは酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでも良い炭化水素残基を表し、nは1〜4の整数を表す。]
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、着用、洗濯を繰返しても撥水性能の低下が少ない優れた撥水性を示し、且つ良好な風合と染色性を有する合成繊維を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を詳しく説明する。
<ポリエステル>
本発明におけるポリエステルとは、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合反応により得られるエチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルが好ましく用いられる。ここで主たるとは全繰り返し単位中70モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることを表す。さらに本発明のポリエステルの特性を損なわない範囲で、テレフタル酸以外の他のジカルボン酸を併用することができる。例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(カルボキシル基の位置が異なる各構造異性体を含む)、ジフェニルジカルボン酸(カルボキシル基の位置が4,4’−に限定されず、カルボキシル基の位置が異なる各構造異性体を含む)、ジフェニルエーテルジカルボン酸(同前)、ジフェノキシエタンジカルボン酸(同前)、ジフェニルスルホンジカルボン酸(同前)、ジフェニルケトンジカルボン酸(同前)、フランジカルボン酸(同前)等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸(カルボキシル基の位置が異なる各構造異性体を含む)、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。本発明のポリエチレンテレフタレートの特性を損なわない範囲とは、全酸成分に対して30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0011】
また本発明においては、ポリエステルの特性を損なわない範囲でエチレングリコール以外の他のジオール成分を併用することができる。このようなジオール成分としては、一般のポリエステルの原料として使用されるジオール、例えば、1,2−プロピレングリコール、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオ−ル)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチルオクタンジオールなどの直鎖または分岐鎖のある脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、2,2−ノルボルナンジメタノール、3−メチル−2,2−ノルボルナンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、2,6−ノルボルナンジメタノール、パーヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3−ジメタノール、アダマンタンジメタノール、1,3−ジメチル−5,7−アダマンタンジメタノール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−ジメチル−5,7−アダマンタンジオールなどの脂環式ジオール;ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ナフタレンジオール、フェナンスロリンジオール、キシリレンジオール[ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼン]、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールS、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物またはプロピレンオキシド付加物などの芳香族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリメチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテルグリコールなどが挙げられる。上記ジオール成分は1種又は2種以上混合して目的によって任意に使用できる。さらに少量のグリセリンのような多価アルコール成分を用いてもよい。本発明においてポリエステルとは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンナフタレートのいずれかを含むことが好ましい。本発明のポリエステルの特性を損なわない範囲とは、全ジオール成分に対して30モル%以下が好ましく、更に好ましくは25モル%以下、更により好ましくは20モル%以下である。
【0012】
本発明におけるポリエステルの製造方法としては、公知の任意の方法で合成すればよい。通常、テレフタル酸とアルキレングリコールとを直接エステル化反応させる方法、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとアルキレングリコールとをエステル交換反応させる方法、またはテレフタル酸とアルキレンオキサイドを反応させる方法によってテレフタル酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を生成させる第一段の反応を行い、引続いて重合触媒の存在下に減圧加熱して所望の重合度になるまで重縮合させる第二段の反応によって製造される。この際に下記に述すエポキシ化合物、触媒化合物、熱安定剤を製造完了前の適切な段階で反応系内に供給すればよい。この適切な段階は試行錯誤で容易に見出すことができる。
【0013】
第一段階の反応(エステル交換反応)時の反応温度は、通常180〜230℃であり、反応圧力は常圧〜0.3MPaである。また、第二段階の反応(重縮合反応)時の反応温度は、通常200〜260℃であり、反応圧力は通常60〜0.1kPaである。このようなエステル交換反応および重縮合反応は一段で行っても、複数段階に分けて行っても良い。これらの反応段階で用いるエステル交換触媒としては、ナトリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、チタン、亜鉛、マンガン等の金属化合物を使用するのが好ましい。重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物、スズ化合物を使用するのが好ましい。触媒の使用量は、エステル交換反応、重縮合反応を進行させるために必要な量であるならば、特に限定されるものではなく、また複数の触媒を併用することも可能である。
【0014】
また、第一段階の反応、第二段階の反応もしくは反応終了後のいずれかにおいて安定剤を添加することも好ましい。その安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート等の酸性リン酸エステル、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、もしくはポリリン酸等のリン化合物、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤が好ましい。
【0015】
<エポキシ化合物>
本発明に用いるポリエステルは下記一般式(I)で表されるエポキシ化合物を含む必要がある。
【0016】
【化2】

[上記化学式中、Rは酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでも良い炭化水素残基を表し、nは1〜4の整数を表す。]
【0017】
は炭素数1〜30までの炭化水素残基としてはnが1のときはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ステアリル基、シクロヘキシル基等の直鎖もしくは分岐鎖のあるアルキル基、環状アルキル基、またはこれらの炭化水素基に1または2以上のエーテル基、チオエーテル基を含む官能基を挙げることができる。フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、またはフェノール基、カテコール基、レゾルシノール基、ハイドロキノンといった芳香族ヒドロキシ基とエーテル結合を有する化合物であっても良い。また炭化水素基はプロペン基、アリルエーテル基等の1又は2以上の不飽和結合を含み、必要に応じてエーテル基を有する炭化水素残基で会っても良い。さらにnが2〜4の時は上記のRで表される官能基がそれに対応した炭化水素残基が採用されるのは言うまでもない。
【0018】
一般式(I)で表される化合物のポリエステルへの共重合量(添加量)としては、全ジオール成分に対して0.1〜20モル%であることが好ましい。共重合量が0.1モル%未満の場合、得られるポリエステル繊維の撥水性が不十分となり、20モル%を超えると本来ポリエステルが有している耐熱性、寸法安定性等の特徴が損なわれる為、好ましくない。一般式(I)で表される化合物の共重合量は1.5〜15モル%の範囲が好ましく、2〜10モル%の範囲が更に好ましい。
【0019】
ここでポリエステル製造時における上記式(I)の化合物の添加時期としては特に限定はないが、共重合率を高めるため、直接エステル化反応の開始前から反応後の任意の段階、あるいはエステル交換反応終了後、エステル交換反応開始前の段階が好ましい。
【0020】
このエポキシ化合物としては、メチルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、2−エチルへキシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4−tert−ブチル安息香酸グリシジルエーテル、ラク酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、グリシジルフェニルエーテル、N−グリシジルフタルイミドを例示することが出来る。
【0021】
<熱安定剤>
本発明のポリエステルには、ヒンダードフェノール系の熱安定剤が含まれることが必要である。熱安定剤としてはヒンダードフェノール系の酸化防止剤が特に好ましく、その添加量は全ポリエステル質量に対して0.1〜1.0質量%の範囲が好ましい。
【0022】
熱安定剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−オクチルチオ−4,6,−ジ(3’,5’−ジヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−sec−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−sec−ブチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−4−メチル−6−(2’アクリロイルオキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)フェノール、ビス[2−t−ブチル−4−メチル−6−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,1,3−トリス(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス−(2’,6’−ジメチル−3’−ヒドロキシ−4’−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが例示される。
【0023】
この中でも特に好ましいのは、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、または3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンである。
【0024】
<ハロゲン化合物>
本発明のポリエステルは、下記一般式(II)で示されるハロゲン化合物を含有することが好ましい。
(II)
[上記数式中、Aはカチオンであり、Xはハロゲン原子を示す。]
【0025】
ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれでも良い。カチオン種は一般的にはアルカリ金属成分が好ましいが、有機のテトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、テトラアリールアンモニウム、テトラアリールホスホニウム、アルキル基とアリール基を双方有する混合アンモニウム、アルキル基とアリール基を双方有する混合ホスホニウム等のカチオン種であっても良い。
【0026】
上記ハロゲン化合物としては、リチウムクロライド(LiCl)、リチウムブロマイド(LiBr)、リチウムアイオダイド(LiI)などのリチウムハライド(LiX)、ナトリウムクロライド(NaCl)、ナトリウムブロマイド(NaBr)、ナトリウムアイオダイド(NaI)などのナトリウムハライド、カリウムクロライド(KCl)、カリウムブロマイド(KBr)、カリウムアイオダイド(KI)などのカリウムハライド(KX)、ルビジウムクロライド(RbCl)、ルビジウムブロマイド(RbBr)、ルビジウムアイオダイド(RbI)などのルビジウムハライド(RbX)、セシウムクロライド(CsCl)、セシウムブロマイド(CsBr)、セシウムアイオダイド(CsI)などのセシウムハライド(CsX)、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド(TBAC)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)およびテトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)などのテトラ−n−ブチルアンモニウムハライド(TBAX)、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド(TBPC)、テトラn−ブチルホスホニウムブロマイド(TBPB)およびテトラ−n−ブチルホスホニウムアイオダイド(TBPI)などのテトラ−n−ブチルホスホニウムハライド(TBPX)、テトラフェニルホスホニウムクロライド(TPPC)、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(TPPB)およびテトラフェニルホスホニウムアイオダイド(TPPI)などのテトラフェニルホスホニウムハライド(TPPX)などが挙げられる。上記、ハロゲン化合物を含むとエポキシ化合物のポリエステルへの反応率があがり、洗濯時の脱落など洗濯耐久性が向上するため、好ましい。添加したエポキシ化合物のポリエステルに対する反応率が14モル%以上あることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、更により好ましくは70モル%以上あることが好ましい。
【0027】
ハロゲン化合物の添加量としては、ポリエステルを構成する全酸成分に対して、1〜100ミリモル%の範囲が好ましい。1ミリモル%未満の場合、共重合率はほとんど変化せず、100ミリモル%を超えると、ポリエステル重合中あるいはポリエステル製品の溶融成形中の熱分解が激しくなり、得られる製品が黄変する、重合度が低下するなど、好ましくない。添加量としては、5〜75ミリモル%がさらに好ましく、10〜50ミリモル%が最も好ましい。
【0028】
<その他>
本発明のポリエステルの固有粘度(溶媒:オルトクロロフェノール、測定温度:35℃)は特に限定はないが、0.5〜1.0dL/gの範囲にあることが好ましい。該固有粘度が0.5dL/g未満の場合、得られるポリエステル繊維の機械的特性が不十分となり、1.0dL/gを超える場合、溶融成形性が低下する為好ましくない、ポリエステルの固有粘度は0.6〜0.8dL/gの範囲が更に好ましい。
【0029】
本発明のポリエステル組成物は、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、固相重合促進剤、整色剤、蛍光増白剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、遮光剤又は艶消剤等を含んでいてもよい。これらの内、酸化防止剤は添加するポリオキシエチレン構造の耐熱性を高める為、特に好ましく添加される。
【0030】
本発明のポリエステル繊維の製造方法としては特に限定はなく、従来公知の溶融紡糸方法が用いられる。例えば乾燥したポリエステル組成物を270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の速度は400〜9000m/分で紡糸することができ、必要によって延伸工程などを経て繊維の強度を十分なものに高めることが可能である。また紡糸時に使用する口金の形状についても特に制限は無く、円形、異形、中実又は中空などのいずれも採用することが出来る。
【実施例】
【0031】
本発明をさらに下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。また各種特性は下記の方法により測定した。
(ア)固有粘度(IV)
ポリエステル組成物チップを100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。
(イ)ポリエステル中のエポキシ化合物、安定剤の含有量
ポリマーサンプルを重水素化トリフルオロ酢酸/重水素化クロロホルム=1/1混合溶媒に溶解後、日本電子(株)製JEOL A−600 超伝導FT−NMRを用いて核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)を測定して、そのスペクトルパターンから常法に従って、各含有量を定量した。
(ウ)ポリエステル中のエポキシ化合物の反応率
試料をヘキサフルオロイソプロパノールで溶解し、メタノールで再沈・乾固させたのち、クロロホルムで10回洗浄して未反応シリコーンを除去したものを重水素化トリフルオロ酢酸/重水素化クロロホルム=1/1混合溶媒に溶解後、日本電子(株)製JEOL A−600 超伝導FT−NMRを用いて核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)を測定して、そのスペクトルパターンから常法に従って、各エポキシ化合物のポリエステルへの反応率を定量した。
(エ)撥水性
試験片から単糸を採取し、協和界面科学(株)社製 自動微小接触角測定装置「MCA−2」を使用し、蒸留水を使用して単糸表面の接触角を測定した。115deg以上を可とした。
【0032】
[実施例1]
・ポリエステル組成物チップの製造
テレフタル酸ジメチル(DMT)194.2質量部とエチレングリコール124.2質量部(DMT対比200mol%)との混合物に、酢酸マグネシウム・4水和物0.086質量部(DMT対比20mmol%)をSUS(ステンレス鋼)製容器に仕込んだ。常圧下で140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、リン酸トリメチル0.042質量部(DMT対比30mmol%)になるよう添加し、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.38質量部、ヨウ素カリウム0.0498質量部(DMT対比30mmol%)、ステアリルグリシジルエーテル8.2質量部(ポリエステルを構成する全ジオール成分に対して、エポキシ化合物が2.5モル%になる量)を添加して、エステル交換反応を終了させた。その後、反応生成物に三酸化二アンチモン0.087質量部(DMT対比30mmol%)、撹拌装置、窒素導入口、減圧口および蒸留装置を備えた反応容器に移した。反応容器内温を285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空で重縮合反応を行い、固有粘度0.64dL/gであるポリエステル組成物を得た。さらに常法に従いチップ化した。
【0033】
・ポリエステル繊維の製造
ポリエステル組成物チップを160℃、4時間乾燥後、丸断面の中実繊維用口金を用いて、紡糸温度285℃、巻取速度400m/分で24filの原糸を作り、熱1段延伸機を用い、延伸負荷率0.75倍で延伸して75dtex/24filの延伸糸を得た。得られた延伸糸は更に常法により筒編とした。結果を表1に示した。
【0034】
[実施例2〜5、比較例1〜3]
実施例1において、各化合物の量・種類を変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、着用、洗濯を繰返しても撥水性能の低下が少ない優れた撥水性を示し、且つ良好な風合と染色性を有する合成繊維を得ることができ、産業上の意義は極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル組成物であって、下記一般式(I)で示されるエポキシ化合物とヒンダードフェノール系熱安定剤を含有することを特徴とするポリエステル組成物。
【化1】

[上記化学式中、Rは酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでも良い炭化水素残基を表し、nは1〜4の整数を表す。]
【請求項2】
ポリエステル組成物中に、下記一般式(II)で示されるハロゲン化合物を含有することを特徴とする請求項1記載のポリエステル組成物。
(II)
[上記数式中、Aはカチオンであり、Xはハロゲン原子を示す。]
【請求項3】
請求項1または2記載のポリエステル組成物を溶融成形して得られることを特徴とするポリエステル成形品。
【請求項4】
請求項1または2記載のポリエステル組成物を溶融紡糸して得られるポリエステル繊維。

【公開番号】特開2012−162608(P2012−162608A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22753(P2011−22753)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】