説明

ポリエステル組成物

ある種の補強充填剤、高分子強化剤、および液晶ポリマーを特定の量で含む等方性ポリエステル組成物は、外観表面を有するか、および/または塗装される部品にとって、特に有用である。そのような組成物は、電気器具部品、自動車のボディパネル、電動工具のハウジング、および電子機器のハウジングなどの品目に有用である。そのような組成物をコーティングするための方法も、記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
所定の量の、ある種の補強剤(reinforcing agent)、液晶ポリマー、および強化剤(toughening agent)を含むポリエステル組成物は、平滑な表面を必要とする部品、たとえば自動車のボディパネル、および電気器具部品(appliance part)、たとえば取っ手やハウジングなどを製造するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
金属部品をプラスチックスに置きかえようとするときの課題の1つは、見栄えのよい(平滑な)表面を有するか、および/または、その表面をコーティング(塗装)することによって光沢のある平滑な外観が得られるようなプラスチック部品を製造することにある。これは、多くの場合、ある種の最低レベルの靱性および/または耐熱性に対する必要性と合わせて、特にポリマーや、その他比較的安価な構成成分を使用する際に1つの挑戦課題となる。各種のタイプの熱可塑性プラスチックがそのような用途のために検討され、いくつかのケースでは満足のいくレベルで使用されていて、再使用(たとえばスクラップのため)が可能であり、多くの場合熱硬化性ポリマーよりも靱性があるという面で利点がある。しかしながら、2つまたはそれ以上の環境応力に対する高い抵抗性が必要な場合には、より改良された組成物が依然として求められている。
【0003】
たとえば、特に挑戦課題となる部品の具体的なタイプとしては自動車のボディパネルがあり、たとえば、フェンダー、ボンネット、ドア、持ち上げ式テールゲート、トランク・リッド(trunk lid)、燃料タンクキャップ、バンパー、プロテクティブ・モールディング、サイドパネル、ボディ・シル(body sills)、ミラー・ハウジング、取っ手、スポイラー、ガソリンタンクのフラップカバー、およびハブキャップなどが挙げられる。それらの部品は、狭い寸法公差に合うように精密に成形して、それにより自動車にぴったりと取り付けられるようにしなければならず、また、それらは機械的/衝撃的損傷に充分に耐えられる靱性を有していなければならず、そして、それらは(通常)極めて平滑な表面を有していて、塗装した場合に、良好な表面外観(時に、「クラスA」表面と呼ばれる)を与えねばならない。それらに加えて、それらの部品が充分な耐熱性を有していて、自動車の塗料焼付け炉の中で、過度のサギング、反り、その他の変形などを起こすことなく、高温(時には200℃もの温度で、30分間)に耐えうるのが好ましい。それらの部品を個別に低温で塗装し、次いでそれから塗装後のボディに取り付けること(いわゆる、オフライン塗装)も可能ではあるが、そのようなプロセスは、車両組立てプロセスに顕著なコストアップを招くので、経済的な見地からは、それらの部品を通常の塗装ラインで塗装するのが好ましい。異なった2つのプロセスにおいて塗装された部品のカラーマッチングが困難となる可能性もある。さらに、それらの部品は、通常の使用時に繰り返し遭遇する応力に対しての、最低限の剛性と耐疲労性を有している必要もある。
【0004】
その他の外観部品(appearance parts)は、そのような極端な温度耐久性は必要とはしないが、上述のその他の特質を要求されることも多い。
【0005】
さらに詳しくは、自動車車両[乗用車、トラック、スノーモービル、建設車両、農場用車両(たとえばトラクターまたはコンバイン)など]の外観、たとえば色調、光沢、および/またはショートウェーブ構造およびロングウェーブ構造(short−wave and long−wave structure)に関しては、そのコーティングしたプラスチック部品の表面を観察者が見たときに、自動車のボディのコーティングした金属表面とは、まったく異なっていないか、あるいはほんのわずかしか異なっていないように見えなくてはならない。このことは、たとえばフェンダー、ボンネット、ブートリッド、ドアまたはボディ・シルなどのプラスチック部品には特にあてはまるが、その理由は、それらが、隣接する金属部品に対してつなぎ目の隙間が極力無いように、特に同一平面になるように組み立てられるので、視覚的な違いが特に目立つからである。
【0006】
金属部品とプラスチック部品を混合構成の形に組み立てる、コーティングした自動車ボディの製造においては、3種類の異なったアプローチ方法が存在する:
1.オフライン方法と呼ばれる工法で、この工法では、金属製の自動車ボディとプラスチック部品とは別々にコーティングしておいて、後から組み立てる。
【0007】
オフライン方法の欠点は、コーティングした金属とプラスチックの表面の視覚的な一体化に欠けやすいところにあり、少なくとも、たとえば、コーティングした部品を視覚的に隙間無く側に並べたり、および/または1つの平面の中にコーティングした複数の部品を配置したりしたために、コーティングしたプラスチック部品とコーティングした金属部品が、構造上の理由から視覚的に比較されるような場合にこのようなことが起こりやすい。
【0008】
さらなる欠点は、2つのコーティングラインを稼働させる必要がある点である。
【0009】
2.インライン方法と呼ばれる工法で、この工法では、プライマーとしての電着コーティングをすでに施した金属ボディと、未コーティングのプラスチック部品または場合によってはプラスチックプライマーだけを施したプラスチック部品とを組み立てて、以後の共用のコーティング方法において、1層または複数のさらなるコーティング層を設ける。
【0010】
インライン方法の欠点は、割り込む形の中間工程として、コーティング方法の間に組み立て工程を挿入することであって、このことは、その後のコーティング方法の中に汚れを持ち込む危険性を含んでいることにもなる。
【0011】
3.オンライン方法と呼ばれる工法で、この工法では、金属製の未コーティングのボディ部品と、未コーティングのプラスチック部品または場合によってはプラスチックプライマーだけを施したプラスチック部品とを組み立てて、混合構成の構造を有するボディとし、次いでそれを電着コーティングを含めた、共通のコーティング方法に通すが、ここで、当然のことながら、導電性の金属部品だけが電着コーティングによりコーティングされるのに対して、その後に塗布されるコーティング層はすべて、その電着コーティングした金属部品と、プラスチック部品との両方に塗布されることになる。
【0012】
このオンライン方法は、ボディの基本シェルの構築とコーティング方法を明確に分離していて、外乱の無い一連のコーティングを実施できるので、特に好ましい。
【0013】
電着コーティングの乾燥において高温を使用するので、基本的には、充分な耐熱性と、同時に耐熱変形性を有するプラスチック材料のみが、好適なオンライン方法には特に適している。
【0014】
たとえば、従来から使用されてきた繊維強化熱可塑性プラスチックから製造したプラスチック部品は、せいぜいのところ条件付きで適しているといえるが、その理由は、そのコーティングした表面が、コーティングした金属表面と充分に高度に視覚的一体化ができない、そして特に、自動車メーカーが要求する高い標準に達しないからである。
【0015】
米国特許公報(特許文献1)には、熱可塑性プラスチックたとえばポリアルキレンテレフタレートと、充填剤たとえば特定の粒径範囲を有するウォラストナイトを含む、「クラスA」表面を与えることができる組成物が記載されている。LCP、および/または可塑剤、および/または強化剤をさらに含むような具体的な組成物は開示されていない。
【0016】
米国特許公報(特許文献2)には、LCP、反応性官能基を有する強化剤、および熱可塑性プラスチックを含む組成物が記載されている。可塑剤および充填剤を含む具体的な組成物の存在についての言及はない。
【0017】
米国特許公報(特許文献3)には、ある種の強化剤を含むポリエステル組成物の記載がある。LCPおよび/または本発明の具体的な粒径範囲を有する充填剤を使用することについては、その特許では触れられていない。
【0018】
米国特許公報(特許文献4)には、金属カチオンを含むある種の化合物とPETのための可塑剤とを使用することを含む、ポリエチレンテレフタレート(PET)の結晶化開始システムの記載がある。それらの組成物中における、LCP、および/または特定の粒径範囲を有する充填剤については、何の言及もない。
【0019】
米国特許公報(特許文献5)および米国特許公報(特許文献6)には、LCPを各種の熱可塑性プラスチックとブレンドしたものが記載されている。ポリエステルおよび/または可塑剤および/または特定の粒径範囲を有する充填剤を含む組成物に関する具体的な記述はない。
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,965,655号明細書
【特許文献2】米国特許第6,221,962号明細書
【特許文献3】米国特許第4,753,980号明細書
【特許文献4】米国再発行特許発明第32,334号明細書
【特許文献5】米国特許第4,438,236号明細書
【特許文献6】米国特許第4,433,083号明細書
【特許文献7】米国特許第4,118,372号明細書
【特許文献8】米国特許第3,991,013号明細書
【特許文献9】米国特許第3,991,014号明細書
【特許文献10】米国特許第4,011,199号明細書
【特許文献11】米国特許第4,048,148号明細書
【特許文献12】米国特許第4,075,262号明細書
【特許文献13】米国特許第4,083,829号明細書
【特許文献14】米国特許第4,122,070号明細書
【特許文献15】米国特許第4,130,545号明細書
【特許文献16】米国特許第4,153,779号明細書
【特許文献17】米国特許第4,159,365号明細書
【特許文献18】米国特許第4,161,470号明細書
【特許文献19】米国特許第4,169,933号明細書
【特許文献20】米国特許第4,184,996号明細書
【特許文献21】米国特許第4,189,549号明細書
【特許文献22】米国特許第4,219,461号明細書
【特許文献23】米国特許第4,232,143号明細書
【特許文献24】米国特許第4,232,144号明細書
【特許文献25】米国特許第4,245,082号明細書
【特許文献26】米国特許第4,256,624号明細書
【特許文献27】米国特許第4,269,965号明細書
【特許文献28】米国特許第4,272,625号明細書
【特許文献29】米国特許第4,370,466号明細書
【特許文献30】米国特許第4,383,105号明細書
【特許文献31】米国特許第4,447,592号明細書
【特許文献32】米国特許第4,522,974号明細書
【特許文献33】米国特許第4,617,369号明細書
【特許文献34】米国特許第4,664,972号明細書
【特許文献35】米国特許第4,684,712号明細書
【特許文献36】米国特許第4,727,129号明細書
【特許文献37】米国特許第4,727,131号明細書
【特許文献38】米国特許第4,728,714号明細書
【特許文献39】米国特許第4,749,769号明細書
【特許文献40】米国特許第4,762,907号明細書
【特許文献41】米国特許第4,778,927号明細書
【特許文献42】米国特許第4,816,555号明細書
【特許文献43】米国特許第4,849,499号明細書
【特許文献44】米国特許第4,851,496号明細書
【特許文献45】米国特許第4,851,497号明細書
【特許文献46】米国特許第4,857,626号明細書
【特許文献47】米国特許第4,864,013号明細書
【特許文献48】米国特許第4,868,278号明細書
【特許文献49】米国特許第4,882,410号明細書
【特許文献50】米国特許第4,923,947号明細書
【特許文献51】米国特許第4,999,416号明細書
【特許文献52】米国特許第5,015,721号明細書
【特許文献53】米国特許第5,015,722号明細書
【特許文献54】米国特許第5,025,082号明細書
【特許文献55】米国特許第5,086,158号明細書
【特許文献56】米国特許第5,102,935号明細書
【特許文献57】米国特許第5,110,896号明細書
【特許文献58】米国特許第5,143,956号明細書
【特許文献59】欧州特許出願公開第356,226号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、
組成物中の全成分を合計したものを重量パーセントの基準として、 (a)少なくとも約40重量パーセントの、約100℃以上の融点(MP)を有する1つまたは複数の等方性ポリエステル(IPE)、
(b)約0.5〜約20重量パーセントの液晶ポリマー(LCP)であって、その融点が、前記等方性ポリエステルの冷結晶点(cold crystallization)(CCP)よりも少なくとも50℃高いか、または、前記等方性ポリエステルが冷結晶点を有さない場合には、前記液晶ポリマーの前記融点が150℃以上である、液晶ポリマー、
(c)約1.0〜約35重量パーセントの補強剤であって、その平均アスペクト比が約2.0以上であり、その最も長い寸法の平均が20μm以下である、補強剤、および
(d)約3〜約30重量パーセントの高分子強化剤であって、前記等方性ポリエステルに対して反応性の官能基を有する強化剤
を含む組成物に関する。
【0022】
本発明はさらに、上記の組成物を製造するための方法に関し、ここで前記組成物にはさらに、少なくとも1つまたは複数の活性成分および場合によっては1つまたは複数の不活性成分を含み、その方法は、
(a)第一の混合工程において、前記等方性ポリエステルおよび前記高分子強化剤を含む原料を混合して、中間組成物を形成する工程、および、次いで
(b)1つまたは複数の後続混合工程において、前記中間組成物、および前記1つまたは複数の活性成分を含む原料を混合する工程
を含むが、
ただし、前記1つまたは複数の不活性成分のそれぞれは、最初に前記第一の混合工程の中においてか、または、1つまたは複数の前記後続混合工程の中において混合される。
【0023】
上述の本発明の組成物は、金属およびプラスチック組成物(上記)の外観表面を有する、金属部品および少なくとも1つのプラスチック部品から組み立てられた基材をコーティングするための方法においてコーティングすることが可能であり、それには、含まれるのは以下の連続する工程:
(1)基材に電着コーティングをし、析出しなかった電着コーティング剤を基材から除き、析出した電着コーティングを加熱架橋し、それによって、その金属表面上に電着コーティングプライマーを形成する工程、
(2)金属およびプラスチックの外観表面の少なくとも一部または全部、好ましくは全部に少なくとも1つの追加のコーティングを塗布し、硬化する工程、である。
【0024】
これら2つの工程は、互いに独立して実施することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本明細書にはある種の用語が使用されているが、それらのいくつかについて以下で定義する。
【0026】
「外観(visible)基材表面」という用語は、直接目でみることが可能であり、特に観察者が、たとえば、特別な技術的手段や観察手段を用いなくても見ることが可能な外側の基材表面を意味している。
【0027】
「液晶ポリマー」という用語は、米国特許公報(特許文献7)に記載されているように、TOT試験または、その合理的な変法を用いて試験したときに異方性であるポリマーを意味している(その特許を参照することにより本明細書に取り入れたものとする)。有用なLCPとしては、ポリエステル、ポリ(エステル−アミド)、およびポリ(エステル−イミド)を挙げることができる。ポリマーの好ましい形態の1つは、「全芳香族」であって、これはすなわち、ポリマー主鎖の中の基がすべて芳香族のものであるが(エステル基のような結合基は例外とする)、ただし、芳香族ではない側基が存在していてもよい。
【0028】
本明細書において「等方性」という用語は、上述のようなTOT試験法により試験をしたときに、等方性であるポリマーを意味する。LCPおよび等方性ポリマーは、互いに排反的な化学種である。
【0029】
「IPE」という用語は、等方性である縮合ポリマーを意味していて、ポリマー中の繰り返し単位を結合している基の50パーセントを超えるものが、エステル基であるようなものである。したがって、IPEには、その結合基の半分以上がエステル基である、ポリエステル、ポリ(エステル−アミド)およびポリ(エステル−イミド)が含まれる。結合基の内の少なくとも70%がエステルであるのが好ましく、結合基の内の少なくとも90%がエステルであればより好ましく、そして、実質的に全部の結合基がエステルであれば、特に好ましい。エステル結合基の割合は、第一近似としては、IPEを製造する際に使用したモノマーのモル比によって推測することが可能である。
【0030】
特に断らない限り、融点は、ASTM試験法D3418に従い、加熱速度10℃/分で測定したものである。融点は、溶融発熱が最大のところとみなし、最初の加熱において測定する。2つ以上の融点が存在するような場合には、そのポリマーの融点は、それらの融点の内の最高値とする。LCPの場合は例外として、融点は、その融点のところでの融解熱が少なくとも3J/gであるのが好ましい。
【0031】
特に断らない限り、平均粒径は、光学顕微鏡法により倍率700倍で測定し、得られた画像をコンピューター解析して、粒子の平均(時には、数平均と呼ばれることがある)の長さと幅を計算する。アスペクト比とは、粒子の最も長い寸法を、その粒子の最も短い寸法で割り算をした比である。平均アスペクト比は、光学顕微鏡法により求めた粒子の平均長さを平均幅で割って求める。必要とされるアスペクト比を有することができる粒子のタイプとしては、針状粒子、繊維、フィブリド、フィブリル、および板状粒子などが挙げられる。
【0032】
「CCP」という用語は、以下のようにして求めた数値を意味する。「純粋な(pure)」(射出成形プロセスにおいてIPEを安定化させるために必要な抗酸化剤および/または離型性を改良するために必要な潤滑剤のような少量の原料を例外として、その組成物中に他の成分を含まない)IPEを、温度が50℃の金型を使用して、厚み1.59mm(1/16”)のプラックに射出成形する。そのプラックから取り出した(測定器にとって)適切なサイズのサンプルを、示差走査熱量計の中に入れて、周囲温度(約20〜35℃)から10℃/分の速度で昇温加熱する。加熱している際のIPEの結晶化から来る発熱ピークを、CCPとみなす。IPEの融点より低い温度で結晶化が起きなければ、そのIPEはCCPを持たない。別な工法として、CCPを「クイッククエンチ(Quick Quench)法」で求めることも可能であるが、その工法では、DSCパンの中でサンプルをその原料の融点より高い温度に加熱することにより完全に溶融させ、次いで直ちに、DSCパン中のその原料をドライ/アセトンまたは液体窒素浴の中に落として冷却させる。それから、上記のようにしてDSCを測定する。
【0033】
「組成物中の全成分を合計したものを重量パーセントの基準としている」という表現は、それらのパーセントが、(a)、(b)、(c)および(d)の合計量に加えて、その組成物中に存在するすべての他の成分を合わせたものを基準にしている、ということを意味している。
【0034】
使用されるIPEは、要求される融点を有しているIPEであれば、どのようなものであってもよい。IPEの融点は、好ましくは約150℃以上、より好ましくは約200℃以上、特に好ましくは約220℃以上、極めて好ましくは約240℃以上である。ポリエステル(ほとんどまたは全部がエステル結合基である)は通常、1つまたは複数のジカルボン酸と、1つまたは複数のジオールから誘導される。IPEの好ましいタイプの1つにおいては、そのジカルボン酸には、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の1つまたは複数を含み、そのジオール成分には、HO(CHOH(I)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、HO(CHCHO)CHCHOH(II)、およびHO(CHCHCHCHO)CHCHCHCHOH(III)の1つまたは複数を含むが、ここでnは2〜10の整数であり、mは平均して1〜4、そしてzは平均して約7〜約40である。(II)および(III)は複数の化合物の混合物であってもよく、そこではmとzはそれぞれ変化させることが可能であるために、mとzは平均値となり、そのためそれらは整数である必要はない、ということに注意されたい。IPEを形成させるために使用可能なその他の二酸としては、セバシン酸およびアジピン酸が挙げられる。その他のジオールとしては、ディアノール(Dianol,登録商標){たとえば、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、仏国セデックス07、パリ75321(75321Paris、Cedex 07,France)のセピック・S.A.(Seppic,S.A.)から入手可能}およびビスフェノールAを挙げることができる。好ましいポリエステルでは、nが2、3または4、および/またはmが1である。
【0035】
本明細書の重合プロセスの文脈において、「ジカルボン酸」という用語は、ジカルボン酸そのものを意味するか、または、そのような重合プロセスにおいて使用することが可能な各種単純な誘導体、たとえばジエステルを意味する。同様にして、「ジオール」という用語も、ジオールを意味するか、または、ポリエステルを形成させるための重合プロセスにおいて使用することが可能な、ジオールの各種単純な誘導体を意味する。
【0036】
好ましいIPEの具体例としては、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレン2,6−ナフトエート)、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)(PCT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)とポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールのブロックを含む熱可塑エラストマー性ポリエステル(米国19898,デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE,19898,USA)の本願特許出願人から、ハイトレル(Hytrel,登録商標)として入手可能)、および上述のジオールおよび/またはジカルボン酸のいずれかを含むこれらの各種ポリマーのコポリマーが挙げられる。(適切な融点を有する)2つ以上のIPEが存在する場合にはその組成物の中のそのようなポリマーを合わせたものを、成分(a)とみなす。組成物には少なくとも約50重量パーセントの成分(a)が含まれているのが好ましい。2つ以上のIPEのブレンド物を使用する場合には、そのポリマーのIPE「部分(fraction)」が、150℃以上の少なくとも1つの融点を有しているのが好ましい(混合条件にもよるが、2つ以上のIPEを使用した場合、エステル交換反応が起きる可能性がある)。
【0037】
成分(c)の補強剤は、その平均アスペクト比が約2.0以上、好ましくは約2.5以上、より好ましくは約3.0以上、そして特に好ましくは約4.0以上である。多くの場合、粒子のアスペクト比が大きくなるにつれて、ヒートサグ(下記参照)が減少し、剛性が上がる。平均の最大寸法は、約20μm以下、より好ましくは約15μm以下、極めて好ましくは約10μm以下である。最も長い寸法の好適な最小の平均値は、約0.10μm以上、より好ましくは約0.5μm以上である。その最大寸法が約100μm以上となるのが、粒子の10%未満であるのが好ましく、5%未満であればより好ましい。これらの比率や寸法はいずれも、必要に応じて、補強剤の各種他の比率や寸法と組み合わせることができる。補強剤の粒径が範囲の下限に近い場合に、表面平滑性が改良されることが多い。
【0038】
成分(c)のための有用な補強剤の具体例としては、ウォラストナイト、マイカ、タルク、アラミド繊維、フィブリルまたはフィブリド、炭素繊維、チタン酸カリウム・ホイスカー、窒化ホウ素・ホイスカー、ホウ酸アルミニウム・ホイスカー、硫酸マグネシウム・ホイスカーおよび炭酸カルシウム・ホイスカーなどが挙げられる。好ましい補強充填剤は、ウォラストナイト、マイカ、タルク、チタン酸カリウム・ホイスカー、窒化ホウ素・ホイスカーおよびホウ酸アルミニウム・ホイスカーであり、特に好ましい補強剤は、ウォラストナイト、タルクおよびチタン酸カリウム・ホイスカーである。これら具体的な補強剤はすべて、先に述べたような適切な寸法を有していなければならない。これらの補強剤は、熱可塑性プラスチックにおいて使用される補強剤をコーティングするのに一般的に使用される、接着促進剤またはその他の原料を用いてコーティングされていてもよい。
【0039】
補強剤(c)の量は、好ましくは組成物の約3〜約30重量パーセント、より好ましくは約5〜20重量パーセントである。一般的に言って、組成物中の補強剤(c)の量が多くなるほど、その組成物は剛直になり、多くの場合そのヒートサグ(下記参照)が少なくなり、時には表面がより粗くなる。
【0040】
融点に関する要求を満たしてさえいれば、各種のLCP[成分(b)]をこの組成物中で使用することができる。好適なLCPは、たとえば下記の特許に記載されている:米国特許公報(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献7)、(特許文献14)、(特許文献15)、(特許文献16)、(特許文献17)、(特許文献18)、(特許文献19)、(特許文献20)、(特許文献21)、(特許文献22)、(特許文献23)、(特許文献24)、(特許文献25)、(特許文献26)、(特許文献27)、(特許文献28)、(特許文献29)、(特許文献30)、(特許文献31)、(特許文献32)、(特許文献33)、(特許文献34)、(特許文献35)、(特許文献36)、(特許文献37)、(特許文献38)、(特許文献39)、(特許文献40)、(特許文献41)、(特許文献42)、(特許文献43)、(特許文献44)、(特許文献45)、(特許文献46)、(特許文献47)、(特許文献48)、(特許文献49)、(特許文献50)、(特許文献51)、(特許文献52)、(特許文献53)、(特許文献54)、(特許文献55)、(特許文献56)、(特許文献57)、および(特許文献58)、ならびに(特許文献59)。多くの場合において、使用するLCPが、比較的高い融点、好ましくは約250℃を超える、より好ましくは約300℃を超える、さらにより好ましくは約325℃を超える、さらにより好ましくは約350℃を超える融点を有していることが好ましい。しかしながら、LCPの融点が高過ぎるために、組成物を成形、溶融加工するのに必要な温度が原因で、使用するIPEに顕著な分解が起きるようなことがあってはならない。この場合の「顕著な分解」とは、その組成物が目的とする用途で使用するには適さなくなってしまうような分解のことを意味する。
【0041】
組成物にはLCPを、約0.5〜約20重量パーセント、好ましくは約1.0〜約15重量パーセント、より好ましくは約2.0〜約10重量パーセント含む。一般的に言って、LCPの量が多くなるほど、ヒートサグが少なくなり、剛性が上がるが、通常は表面外観に大きな影響が出ることはない。驚くべきことには、1群のLCPの融点がヒートサグ試験の温度よりも充分に高くても、LCPの融点が高いほど、ヒートサグが少なくなる(良好になる)ことが見出された。また、多くの組成物において、LCPを存在させることによって、LCPを含まない同様の組成物と比較して、組成物の色安定性が改良されることも観察された。
【0042】
高分子強化剤(成分D)はポリマー、典型的にはエラストマーであるかまたは比較的低融点、一般に200℃未満、好ましくは150℃未満の融点のポリマーであって、IPEと反応することが可能な官能基を、結合した形で有している。IPEには通常カルボキシル基およびヒドロキシル基が含まれているので、それらの官能基は通常カルボキシル基および/またはヒドロキシル基と反応することが可能である。そのような官能基の例としては、エポキシ、無水カルボキシル(carboxylic anhydride)、ヒドロキシル(アルコール)、カルボキシル、イソシアナト、および一級または二級アミノを挙げることができる。好適な官能基は、エポキシおよび無水カルボキシルであり、エポキシが特に好ましい。それぞれの官能基を高分子強化剤に「結合」させるには通常、既に存在しているポリマーの上に小分子をグラフトさせる工法によるか、または、高分子量のより強靱な分子を共重合により製造する際に、所望の官能基を含むモノマーを共重合させる工法による。グラフト化の1例としては、炭化水素ゴムの上に、フリーラジカルグラフト化工法を用いて、無水マレイン酸をグラフトさせることができる。そのようにして得られるグラフトポリマーには、無水カルボキシル基および/またはカルボキシル基がそれに結合されている。官能基をポリマー中に共重合によって導入する高分子強化剤の1例としては、エチレンと、適当な官能基を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーとのコポリマーがある。本明細書においては「(メタ)アクリル酸エステル」という用語は、その化合物が、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルのいずれか、またはそれら2つの混合物であるということを意味する。有用な(メタ)アクリル酸エステル官能性化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、および(メタ)アクリル酸2−イソシアナトエチルなどが挙げられる。エチレンと2官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーに加えて、そのようなポリマーの中にはその他のモノマーを共重合させることも可能であって、そのようなモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、非官能化(メタ)アクリル酸エステル、たとえば(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、および(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。好適な強化剤としては、たとえば米国特許公報(特許文献3)に記載されているようなものを挙げることができる(参照することにより本明細書に取り入れたものとする)。特に好ましい強化剤は、エチレン、アクリル酸エチルまたはアクリル酸n−ブチル、およびメタクリル酸グリシジルのコポリマーである。
【0043】
高分子強化剤には、官能基を含むモノマーを約0.5〜約20重量パーセント、好ましくは約1.0〜約15重量パーセント、より好ましくは官能基を含むモノマーを約7〜約13重量パーセント含んでいるのが、好ましい。高分子強化剤の中に2つ以上のタイプの官能性モノマーが存在していてもよい。高分子強化剤の量および/または官能基の量が多くなるほど、組成物の靱性が高くなることが見出された。しかしながら、それらの量も、特に最終的な部品の成形が済むより前にその組成物が架橋をおこしてしまう程には、多くしてはならない。組成物中に、高分子強化剤が約5〜約25重量パーセント存在するのが好ましく、約10〜約20重量パーセントであればより好ましい。2つ以上の高分子強化剤の混合物を、同一の組成物中で使用することもできる。その内の少なくとも1つには反応性官能基が含まれていなければならないが、その他の(単一または複数の)ものにはそのような官能基は含まれていても、含まれていなくてもよい。たとえば、官能基を含まない強化剤の例を挙げれば、エチレン−アクリル酸n−ブチルコポリマー、エチレン/アクリル酸n−ブチル/一酸化炭素コポリマー、およびプラストマー性ポリエチレン、たとえばエンゲージ(Engage,登録商標)8180(エチレン/1−オクテンコポリマー)またはエンゲージ(Engage,登録商標)7447(エチレン/1−ブテンコポリマー)(米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmiongton,DE,USA)のデュポン−ダウ・エラストマーズ(DuPont−Dow Elastomers)から入手可能)などがある。
【0044】
その他の成分、特に熱可塑性組成物に一般的に添加されるような成分が、その組成物中に存在していてもよい。そのような成分としては、抗酸化剤、顔料、充填剤、潤滑剤、離型剤、難燃化剤、(塗料)接着促進剤、エポキシ化合物、結晶成核剤、可塑剤などが挙げられる。その他のポリマーたとえば、ポリオレフィン、ポリアミド、および非晶質ポリマーたとえば、ポリカーボネート、スチレン(コ)ポリマー、およびポリ(フェニレンオキシド)などを存在させてもよい。それらの成分全部を合計して、好ましくは全組成物の約60重量パーセント未満、極めて好ましくは約40重量パーセント未満、より好ましくは約25重量パーセント未満とする。それらの物質の内のいずれかが固体の粒子状物質であるならば、その粒子の最も長い寸法の平均が約20μm以下、より好ましくは約15μm以下であるのが好ましい。好適なその他の成分としては、IPEのための可塑剤があり、特にPETがIPEとして存在する場合には、全組成物の約0.5〜約8重量パーセントの量で存在させるのが好ましい。
【0045】
その他の成分で好ましいものとしては、エポキシ化合物または樹脂がある。そのような化合物または樹脂は、約1000未満の平均分子量を有しているのが好ましい(先に述べたような高分子強化剤は、たとえそれにエポキシ基が含まれていたとしても、本明細書においては、このエポキシ化合物または樹脂の一部とはみなさない)。このエポキシ原料は、全組成物の0.1〜約1.0重量パーセントのレベルで存在させるのが好ましい。有用なエポキシ化合物または樹脂としては、エポン(Epon,登録商標)1009F、1002Fもしくは1031、またはアラルダイト(Araldite,登録商標)GT7099もしくはGT6099などを挙げることができる。いくつかのケースにおいては、このエポキシ化合物または樹脂が、溶融粘度を安定させ、および/またはその組成物の色安定性を改良すると考えられる。外観部品が塗料またはその他のコーティング剤によってコーティングされていないような場合には、後者は特に重要である。
【0046】
「その他の成分」を分類するまた別な方法としては、それらの成分が高分子強化剤、成分Dの官能基と、(特に混合条件下で)容易に反応する官能基を含んでいるかどうかで分ける方法がある。本明細書においては、成分、特に相補的な反応性官能基を含む「その他の成分」を「活性成分」(あるいは、そのような反応性の基を含まない場合には、「不活性成分」)と名付ける。以下の表に、成分Dの一部となりうる「反応性基」と共に、活性成分の一部となりうる相補的な反応性基の、部分的なリストを挙げる。
【0047】
【表1】

【0048】
活性成分に含まれず、したがって不活性成分となるものは、数平均分子量が約5,000以上、好ましくは約10,000以上であるポリマーで、その相補末端基の一部または全部が(高分子強化剤の官能基に対して)反応性であってもよい。末端基ではない反応性基を有し、かつ反応性の末端基は有していても、有していなくてもよいポリマーは、活性成分である。
【0049】
1つの好ましいタイプの組成物においては、(存在しているIPEを基準にして)25ppm未満、好ましくは10ppm未満の「遊離の」金属カチオン、たとえばアルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンを組成物に添加する。「遊離の」金属カチオンという用語は、組成物中に存在する官能基、たとえばカルボキシル基と容易に反応してカルボン酸塩を形成することが可能な、カチオンを意味する。遊離の金属カチオンは、カルボン酸塩たとえば酢酸塩、または4−ヒドロキシ安息香酸塩として、他の金属塩たとえば金属ハライドとして、および、高分子カルボン酸塩の金属塩として、加えることができる。添加する遊離金属カチオンに含まないのは、鉱物質または他の化合物の一部である、他の成分または金属カチオンの中の通常の不純物であり、その場合は、その金属カチオンがその成分または鉱物質に堅固に結合されている。
【0050】
また別の好適な成分は、潤滑剤であって、これは時には離型剤または剥離剤と呼ばれることもある。典型的には、(全組成物の)約0.05〜約1.0重量パーセントの潤滑剤を使用する。多くのタイプの物質が潤滑剤として市販されており、本発明の組成物においては、離型性および塗料接着性(その部品が塗装されると仮定して)、さらにはその他の物理的性質のおよぼす効果に、特に注意を払うべきである。潤滑剤は活性成分であっても、不活性成分であってもよい。たとえば好適な潤滑剤の1つのタイプは、ポリエチレンワックスであって、通常数平均分子量約1,000〜約10,000を有するポリエチレンである。それらのワックスの末端基は、非極性(たとえばメチル末端基)であってもよいし、あるいは極性基、たとえばカルボキシル基であってもよい。カルボキシル末端のワックスは、適切な反応性基を有する高分子強化剤と共に、(それらの分子量が約5000より低い場合には)反応性成分と考えられる。そのようなワックスは市販されていて、たとえばリコワックス(Licowax,登録商標)ブランドの商品群(米国28205、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte,NC,28205,USA)のクラリアント・コーポレーション(Clariant Corp.)から入手可能)を参照されたい。いくつかの組成物においては、不活性な潤滑剤たとえば、リコワックス(Licowax,登録商標)PE520または190が好ましい。しかしながら、活性成分でもあるたとえばリコワックス(Licowax,登録商標)PED521またはPED191のような潤滑剤を使用することも可能である。また別の有用な(タイプの)潤滑剤は、ロクソイル(Loxoil,登録商標)HOB7119、ペンタエリスリトールテトラステアレートである。
【0051】
本明細書に記載の組成物は、典型的な溶融混合法により製造することができる。たとえば成分を、単軸または2軸スクリュー押出機、またはニーダーに仕込んで、通常の方法で混合する。その混合装置の少なくとも一部における成分の温度は、存在しているLCPの融点またはそれ以上とするのが好ましい(その混合装置の各ゾーンの測定温度または設定温度は、機械的な発熱があるために、実際の原料の温度よりも低い)。成分のいくつか、たとえば充填剤、可塑剤、結晶化成核剤、および潤滑剤(離型剤)は、押出機の下流側の1つまたは複数のポイントから添加することができ、それによって、固形物たとえば充填剤の磨砕を減少させ、および/または分散を改良し、および/または熱的に比較的不安定な成分の熱履歴を低減させ、および/または蒸発による揮発性成分の損失を抑制する。原料を混合した後で、それらを成形(カット)して、ペレットまたは溶融成形機に供給するのに適したその他の粒子とする。溶融成形は、熱可塑性プラスチックのための通常の方法、たとえば射出成形、熱成形、押出し、吹込み成形、またはそれらの方法の各種組合せによって、実施することができる。
【0052】
1つまたは複数の「活性成分」がその組成物中に存在する場合、上述の混合方法のうちの特定の変法が好ましい。その変法においては、IPE、場合によってはおよび好ましくは、LCP、および高分子強化剤、および場合によってはさらなる不活性成分を第一の混合工程で混合し、1つまたは複数のその後の混合工程において、各種反応性成分および場合によっては上述のような不活性成分をIPEを含むその中間組成物に混ぜ込む。これを実施するには、各種の方法が使用できる。たとえば、第一の混合工程は、単軸または2軸スクリュー押出機または他のタイプの混合装置の中を1回通過させることによって実施し、次いで、その他の成分を、単軸または2軸スクリュー押出機または他の混合装置の中へ2回目の通過の間に添加する。別な方法として、第一の混合工程を、単軸または2軸スクリュー押出機または類似の装置の「バックエンド」(フィードエンド)において実施し、次いで第二の混合工程のために添加する原料をその押出機のバレルの下流側のどこかに添加して、それによってそれらの第二の混合工程のための原料を混合する。その第二の混合工程のために添加する原料は、いわゆる「サイドフィーダー」または「バーティカルフィーダー」、および/または(原料が液体ならば)溶融ポンプで添加することができる。異なった成分を導入するために、2つ以上のサイドフィーダーを使用してもよい。先に述べたように、また別な理由から、サイドフィーダーおよび/またはバーティカルフィーダーで、不活性成分を添加するのが好ましい。1つまたは複数のサイドフィーダーおよび/またはバーティカルフィーダーを有する押出機を使用するのが、第一および第二の混合工程を実施するのに好ましい方法である。不活性な潤滑剤を使用する場合には、それを第二の混合工程において添加するのが好ましい。2つ以上の混合工程を実施する場合、それらの工程のための機械は、同一(のタイプ)であっても異なっていてもよい。
【0053】
[たとえば押出機速度(rpm)によって測定されるような]混合強度が、組成物の性質、特に靱性に影響する可能性があることもまた見出された。比較的高いrpmが好ましいのではあるが、混合機のローター速度が高すぎると靱性が損なわれる可能性がある。最適の混合強度は、混合機の形状、温度、混合される組成物などによって決まり、簡単な実験により容易に求めることができる。
【0054】
本明細書に記載される組成物は、「外観部品(appearance parts)」として特に有用であるが、外観部品とは、その表面外観が重要となる部品のことである。これは、組成物の表面が直接目に触れるかどうか、または、塗料またはその他の物質たとえば金属を用いてコーティングされているかどうか、によって適用される。そのような部品としては、自動車のボディパネルたとえば、フェンダー、フェーシア、ボンネット、タンクフラップ、およびその他の外装部品;自動車の内装パネル;電気器具部品たとえば、取っ手、制御盤、シャシ(ケース)、洗濯機のタブおよび外装部品、冷蔵庫の内装および外装パネル、および食器洗浄機の全面および内装パネル;ドリルやのこぎりなどの電動工具用ハウジング;電子機器のキャビネットおよびハウジングたとえば、パソコンハウジング、プリンターハウジング、周辺機器のハウジング、サーバーのハウジング;乗り物たとえば、列車、トラクター、芝刈り機デッキ、トラック、スノーモービル(特にスノーモービルのボンネット)、旅客機、および船の外装および内装パネル;建築物のための装飾内装パネル;家具たとえばオフィスおよび/またはホーム用椅子およびテーブル;および電話機およびその他の電話設備、などが挙げられる。先に述べたように、それらの部品は塗装してもよいし、あるいは、未塗装で、その組成物の色のままに残してもよい。
【0055】
組成物は、顔料および/または染料を用いて着色することも可能であるので、各種の色彩を与えることができる。その組成物から製造された部品がこのタイプの着色をされていることは、特にコスト的に魅力があるが、その理由は、そのような部品は、その後で1つまたは複数の追加の工程においてコーティングする(ペインティングする)必要がないからである。極端に高い光沢および/または画像鮮明性が必要ないといった場合には、これは、コーティングに対する、より良好な総合的な代替えとなることが多い。
【0056】
表面にコーティング(着色されていてもよい)を塗布するまた別な方法は、染料昇華(捺染)プロセスである。
【0057】
自動車(輸送機器)のボディパネルは、特に挑戦課題となる用途である。先に述べたように、これらの材料は好ましくは、平滑かつ再現性のよい外観表面を有し、耐熱性が高くて、そのため大きな歪みを与えることがなく、自動車のEコートおよび塗装炉(温度が約200℃に達する可能性がある)を各工程30分までの時間をかけて通過させることが可能であり、靱性が充分に高くて小さな衝撃でくぼみ傷やその他の機械的な損傷が生じないようにすべきである。良好な靱性を有し、なおかつ、良好な耐熱性と優れた表面外観を維持できるような組成物を得ることはこれまで極めて困難であるとされてきたが、その理由は、一般的に言って、それらの性質の1つを改良すると他の性質が低下してしまうからである。本発明の組成物においては、良好な耐熱性と良好な靱性を達成することが可能であるが、それについては、本明細書のいくつかの実施例において説明する。
【0058】
この用途における耐熱性は一般に、ヒートサグ試験により測定する。この試験においては、片持ばりの形で浮かせた試験片を、所定の時間のあいだ試験温度に加熱し、室温に冷却した後に、その部品が垂れ下がった量を測定する。その数値が低いほど、そのヒートサグ性は良好である。本発明の組成物においては、IPEおよび/またはLCPの融点が高いほど、強化剤の含量が低いほど、LCP含量が高いほど、そして、補強充填剤含量が高いほど、ヒートサグが改良される(低くくなる)。その一方で、靱性は、強化剤含量が高いほど、補強充填剤含量が低いほど、LCP含量が低いほど、強化剤の中の官能基含量が(限度内で)高いほど、改良される(高くなる)。先に述べたように、本発明の組成物は多くの場合、自動車のボディパネルまたはその他の部品のための必要な性質を有する材料を得るための、寛容性が広い。
【0059】
コーティングプロセスにおいて、本発明においては好ましくは、金属部品と本明細書において定義した少なくとも1つのプラスチック部品から混合構成として組み立てた基材、特に自動車のボディを、少なくとも部分的に、好ましくは全体にコーティングする。
【0060】
それらの金属部品は、各種の金属、たとえば、亜鉛メッキした鋼または亜鉛メッキなしの鋼、アルミニウムおよびアルミニウム合金、マグネシウムおよびマグネシウム合金などから製造した部品であってよい。それらの金属部品は、前処理されていてもされていなくてもよいが、たとえば、従来からのリン酸塩処理および/または不動態化処理をしてあるものでもよい。
【0061】
プラスチック部品は、従来からの方法たとえば、UV照射、火炎処理またはプラズマ処理により前処理されていてもよいし、あるいは当業者には公知の従来からのプラスチック用プライマー、特に、静電気を利用した塗装をするのに充分な導電性をそのプラスチック部品に与えるための導電性プライマーを用いてコーティングされていてもよく、それらの処理をしてから、それらを金属部品と一緒に組み立てる。
【0062】
金属部品と、場合によってはプラスチック用プライマーを具備した少なくとも1つのプラスチック部品とを、当業者公知の従来からの方法、たとえば、ねじ止め、クリップ止め、および/または接着などにより組み立てて、本発明による方法を用いてコーティングさせる基材を形成させる。
【0063】
可能な限り最小の接続幅を有し、特に、近接する金属部品と同一平面にもある、基材の少なくともその(それらの)プラスチック部品を、金属部品と共に組み立てる。
【0064】
場合によっては、それでもまだ足りない、一般的にはその少なくとも1つのプラスチック部品とは組成が異なり、また一般的には熱変形に対する抵抗性がより低い、プラスチック部品を(もしあれば)、本発明における方法の工程(1)が完了した後に取り付けることもでき、また、工程(2)のさらなるコーティングプロセスにかけることも可能であり(上述のインライン方法と比較されたい)、および/または本発明における方法が完了した後に取り付けて、最終のコーティングした形態とすることもできる(上述のオフライン方法と比較されたい)。
【0065】
好ましくは静電気を利用したスプレーコーティングによる、本発明による方法の工程(2)において起きる、少なくとも1つのさらなるコーティング層の塗布の観点からは、金属と(単一または複数の)プラスチック部品とが互いに電気的に絶縁されていないように組み立てられていれば好都合であって、たとえば、導電性プライマーと金属との間の直接的な電気的な接触は、直接接触させるか、または導電性の結合要素、たとえば金属製のねじを介することによって確保することができる。
【0066】
金属部品の上に防錆プライマー層を作るためには、本発明による方法の工程(1)において金属部品と少なくとも1つのプラスチック部品から組み立てた基材を、当業者公知の従来からの方法で電着コーティング浴の中でコーティングする。
【0067】
好適な電着コーティング剤としては、固形分含量がたとえば10〜30重量パーセントの、従来からの水性のコーティング組成物が挙げられる。
【0068】
電着コーティング組成物は、当業者公知の従来からの陽極電着コーティング剤であってよい。その陽極電着コーティング組成物のバインダーバインダー基剤は、任意に選択することができる。陽極電着バインダーの例としては、ポリエステル、エポキシ樹脂エステル、(メタ)アクリル系コポリマー樹脂、平均分子質量(Mw)がたとえば、300〜10000で、カルボキシル基含量が、たとえば、35〜300mgKOH/gの酸価に相当するマレイン化(maleinate)オイルまたはポリブタジエンオイルなどが挙げられる。そのカルボキシル基の少なくとも一部が、塩基を用いた中和により、カルボン酸塩基に変換される。それらのバインダーは、自己架橋性であってもよいし、あるいは、別途の架橋剤を用いて架橋させてもよい。
【0069】
電着コーティング層を塗布するためには、当業者には公知の従来からの陰極電着コーティング剤を、本発明による方法において使用するのが好ましい。陰極電着コーティング組成物には、カチオン性基、またはカチオン性基に変換させることが可能な基、たとえば塩基性基を有するバインダーを含む。例としては、アミノ、アンモニウムたとえば四級アンモニウム、ホスホニウムおよび/またはスルホニウム基を挙げることができる。窒素含有塩基性基が好ましく、前記の基は、四級化された形態で存在することができるし、あるいは、それらが、通常の中和剤、たとえば、有機モノカルボン酸、たとえばギ酸、乳酸、メタンスルホン酸または酢酸を用いてカチオン性基に変換される。塩基性樹脂の例としては、たとえば、20〜200mgKOH/gのアミン価に相当する、一級、二級および/または三級アミノ基を有するものが挙げられる。バインダーの重量平均分子質量(Mw)が300〜10,000であるのが好ましい。そのようなバインダーの例を挙げれば、アミノ(メタ)アクリル樹脂、アミノエポキシ樹脂、末端二重結合を有するアミノエポキシ樹脂、一級OH基を有するアミノエポキシ樹脂、アミノポリウレタン樹脂、アミノ基含有ポリブタジエン樹脂、または変性エポキシ樹脂−二酸化炭素−アミン反応生成物などがある。それらのバインダーは、自己架橋性であってもよいし、あるいは、その混合物中に公知の架橋剤を用いて使用してもよい。そのような架橋剤の例としては、アミノプラスチック樹脂、ブロックトポリイソシアネート、末端二重結合を有する架橋剤、ポリエポキシ化合物、またはエステル交換反応をすることが可能な基を含む架橋剤などが挙げられる。
【0070】
バインダーおよび各種独立した架橋剤とは別に、その電着コーティング組成物には、顔料、充填剤および/または通常のコーティング添加剤が含まれていてもよい。好適な顔料の例としては、従来からの無機および/または有機着色顔料および/または充填剤、たとえばカーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、カオリン、タルクまたは二酸化ケイ素などが挙げられる。添加剤の例としては、特に、濡れ剤、中和剤、レベリング剤、触媒、腐食防止剤、へこみ防止剤(anti−cratering agent)、消泡剤、溶媒などが挙げられる。
【0071】
電着コーティングは当業者公知の通常の方法で実施し、たとえば、析出電圧は200〜500Vとする。電着コーティングを析出させてから、その基材から、当業者公知の通常の方法、たとえば水を用いたすすぎ洗いによって、過剰になっていて付着はしているが析出したものではない電着コーティングを洗い流す。その後その基材を、電着コーティングを架橋させるために、目的温度たとえば200℃までに合わせて、炉の温度をたとえば220℃として焼き付ける。
【0072】
本発明による方法のその次の工程(2)において、少なくとも1つのさらなるコーティング層を、好ましくはスプレー塗布、特に静電気を利用したスプレー塗布を用いて、少なくともこのようにして得られ、金属表面の上に焼き付けた電着コーティング層を備えた、基材上の金属およびプラスチックの外観表面の全部に塗布する。
【0073】
さらなるコーティング層を1層だけ塗布した場合には、それは一般に着色トップコートである。しかしながら、2層以上のさらなるコーティング層を塗布するのが好ましい。複数のコーティング層から形成される従来からの多層コート構成の例は下記の通りである:
・プライマーサーフェーサー/トップコート、
・プライマーサーフェーサー/ベースコート/クリヤコート、
・ベースコート/クリヤコート、
・プライマーサーフェーサー代用層/ベースコート/クリヤコート。
【0074】
プライマーサーフェーサーまたはプライマーサーフェーサー代用(substitute)コーティングは主として、跳ね石(stone−chip)防護および表面のレベリングに使用され、その上にある、環境からの影響を防ぎ、着色トップコートまたは着色および/または実効性のあるベースコートおよび保護クリヤコートからできている装飾トップコートのための表面を与える。
【0075】
例として挙げた多層コート構成には、表面全体または表面の一部の上に、特に、高い引掻き抵抗性を付与するための透明なシーリングコートを用いることも可能である。
【0076】
電着コーティング層の後のそれらのコーティング層はすべて、適切なコーティング層を塗布するために当業者周知の、通常のコーティング剤を用いて塗布することが可能である。これはそれぞれ、希釈剤としてのたとえば、水および/または有機溶媒を含む液状コーティング剤でもよいし、あるいは粉体コーティング剤であってもよい。そのコーティング剤は単一成分コーティング剤であっても、多成分コーティング剤であってもよく、それらは物理的に乾燥させるものであっても、酸化または化学的に架橋させるものであってもよい。具体的には、プライマーサーフェーサー、トップコート、クリヤコートおよびシーリングコートにおいては、これらは通常化学的に架橋させるシステムであって、熱的(対流炉によるか、および/または赤外線照射による)および/またはエネルギー照射、特に紫外線照射の作用によって硬化させることができる。
【0077】
本発明による方法の工程(2)において2層以上のコーティング層を塗布する場合には、それらのコーティング層は、基本的には、それぞれ次のコーティング層を塗布する前に個別に硬化させておくべきであるという訳ではない。むしろ、それらのコーティング層を、当業者には公知のウェット−オン−ウェット法によって塗布して、少なくとも2層のコーティング層を同時に硬化させることも可能である。具体的には、たとえばベースコートとクリヤコートの場合では、ベースコートを塗布した後で、場合によっては短い蒸発段階を挟んでから、クリヤコートを塗布し、ベースコートと共に硬化させる。
【0078】
本発明によるオンライン方法によって、金属部品と、熱可塑性プラスチックをベースとしたプラスチック部品とから混合構成の形で組み立て、熱変形に対して充分な抵抗性を有し、コーティングしたプラスチック表面と金属表面が極めて調和のとれた視覚的印象を与える基材を得ることが可能となる。
【0079】
表面品質は各種の方法によって評価することができる。その1つは、単純な視覚的なもので、その表面の平滑性と反射性を観察して、それが周囲の状況をどれだけ正確に映しているかを見る。もう一つの、より体系的な方法は、DOIである。外観表面(平滑性などを有している必要がある)が、好ましくは約65以上、より好ましくは約70以上のDOIを有しているのが好ましいが、そのDOIは、オートスペクト(Autospect,登録商標)ペイント・アピアランス・クオリティ・メジャーメント(Paint Appearance Quality Measurement)システムを用いて測定したものである。製造する部品の表面品質には、組成物そのもの以外の要因も影響するということは、当業者のよく理解しているところである。たとえば、成形物表面の状態(多孔度、平坦度)、充填時間や充填圧などの成形条件、たとえばゲートの位置および部品の厚みなど金型の設計、金型温度および溶融温度、ならびにその他の要因が、表面品質に影響する可能性がある。塗装する場合には、その表面品質はさらに、使用した塗装技術、および塗布した塗料の品質の影響も受ける。
【0080】
(試験方法)
DOI:この測定は、米国18170、ミシガン州プリマス(Plymouth,MI,48170,USA)のパーセプトロン(Perceptron)から入手可能な、オートスペクト(Autospect)ペイント・アピアランス・クオリティ・メジャーメント・システム(Paint Appearance Quality Measurement System)(QMS)を使用して実施した。このシステムを用いて、塗装した表面と未塗装の表面について測定することができる。
【0081】
(サグ試験)
ASTM標準の、長さ20.3cm(8”)厚み0.32cm(1/8”)の引張試験片を、金属製支持具で1端を水平に固定して片持ばりの形態とし、その固定部分から試験片が15.2cm(6”)突き出ているようにする。支持具に取り付けた試験片を200℃で30分加熱し、室温に冷却してから、試験片の先端が下方へ垂れ下がっている距離(mm)を測定する。
【0082】
(機器衝撃試験(Instrument Impact Test))
この試験では、重量が7.3kg(16ポンド)で直径1.27cm(1/2”)の半球形の先端を有するドロップハンマー(tup)を、厚み0.32cm(1/8”)の成形プラックに、1.09mの高さから落下させた場合の、力と時間の関係を測定する。この場合、プラックに当たったときのドロップハンマーの公称速度は4.5m/秒となる。プラックは上面および底面をクランプ止めし、そのクランプの両方に中心を合わせて直径3.81cm(1.5”)の穴が開けられていて、ドロップハンマーがそれらの穴の中心でプラックに当たるようになっている。ドロップハンマーには加速度計が取り付けてあって、衝撃の際の力をデジタルに記録する。破壊するための最大の力と全エネルギーをデータから計算する。報告するデータは3回の測定の平均値である。
【0083】
類似の測定器で、シースト(Ceast,登録商標)ダート・テスター(Dart Tester)(シースト・S.p.a.(Ceast S.p.a.)製)を用いて、落槍衝撃(dart impact)も測定した。報告するデータは3回の測定の平均値である。
【0084】
(引張弾性率、強さおよび伸び)
ASTM試験法D256を採用し、引張速度5.08cm(2”)/分で測定した。
【0085】
(曲げ弾性率(3点))
ASTM試験法D790を採用して測定した。
【0086】
(融点)
ASTM D3418−82により、加熱速度10℃/分で測定した。溶融発熱のピークを融点とする。LCPの融点としては、第二の発熱(second heat)を採用した。
【0087】
(コンパウンディング方法および成形方法)
コンパウンディング方法A:ポリマー組成物は、30mmのウェルナー・アンド・プライデラー(Werner and Pfleiderer)2軸スクリュー押出機の中でコンパウンディングすることにより調製した。すべての成分を一緒にブレンドし、押出機のリア部(バレル1)にフィードしたが、ただし、ニグロス(Nyglos,登録商標)およびその他の鉱物質はバレル5(10バレル中の)の中にサイドフィードし、また可塑剤は液体注入ポンプを用いて添加した。この方法から外れることがあれば、実施例の中に明記する。バレル温度の設定としては280〜310℃として、実際の溶融温度が、組成物と押出機速度とスクリューのrpmに応じて290〜350℃になるようにした。
【0088】
(コンパウンディング方法B)
この方法は、方法Aと同一であるが、ただし、40mmのウェルナー・アンド・プライデラー(Werner and Pfleiderer)2軸スクリュー押出機を使用した。サイドフィードする原料はバレル6(10バレル中の)の中にフィードした。
【0089】
樹脂は、3オンスまたは6オンス射出成形機で、ASTM試験用の試験片に成形した。溶融温度は280〜300℃、金型温度は110〜130℃であった。
【0090】
実施例においては、各種の成分を使用したが、それらについて以下に定義する:
3GT:ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)
アメリケム(Americhem,登録商標)1859R3:PETコポリエステル中40%カーボンブラックのコンセントレート(アメリケム・インコーポレーテッド(Americhem,Inc.)、米国44221,オハイオ州カイヤホガ・フォール(Cuyahoga Fall,OH,44221,USA)製)
クラスチン(Crastin,登録商標)6155:テレフタル酸、アジピン酸、および1,4−ブタンジオールのコポリマー(米国19898,デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE,19898,USA)の本願特許出願人より入手可能)
クラスチン(Crastin,登録商標)6129:インヘレント粘度が約1.2のポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)ポリマー(米国19898,デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE,19898,USA)の本願特許出願人より入手可能)
クライスター(Crystar,登録商標)1906:PETコポリマー、インヘレント粘度(IV)が0.65で、約12モルパーセントのポリエチレンオキシドと共重合させたもの(米国19898,デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE,19898,USA)の本願特許出願人より入手可能)
クライスター(Crystar,登録商標)3934:IV=0.67のPETホモポリマー(米国19898,デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE,19898,USA)の本願特許出願人より入手可能)
ホスタモント(Hostamont,登録商標)NAV101:モンタン酸ナトリウム(独国スルツバッハ・アム・タウンス(Sulzbach am Taunns)D−65840のクラリアント・コーポレーション(Clariant Corp.)より入手可能)
ハイトレル(Hytrel,登録商標)5556:ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールのブロックを含む熱可塑エラストマー性ポリエステル(米国19898,デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE,19898,USA)の本願特許出願人より入手可能)
イルガノックス(Irganox,登録商標)1010:抗酸化剤(米国10591,ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY,10591,USA)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)より入手可能)
LCP1:50/50/87.5/12.5/320(モル部)のヒドロキノン/4,4'−ビフェノール/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/4−ヒドロキシ安息香酸のコポリマー、約25ppmのカリウムカチオンを含む、融点360℃
LCP2:100/33/34/33/300(モル部)のヒドロキノン/テレフタル酸/イソフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/4−ヒドロキシ安息香酸のコポリマー、融点325℃
LCP3:100/70/30/250(モル部)のヒドロキノン/イソフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/4−ヒドロキシ安息香酸のコポリマー、融点270℃
LCP4:50/50/70/30/270/50(モル部)のヒドロキノン/テレフタル酸/イソフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/4−ヒドロキシ安息香酸/6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のコポリマー、融点230℃
LCP5:50/50/70/30/320(モル部)のヒドロキノン/4,4'−ビフェノール/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/4−ヒドロキシ安息香酸のコポリマー、融点334℃
リコワックス(Licowax,登録商標)PE520:金型潤滑剤として使用されるポリエチレンワックス(米国28205、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte,NC,28205,USA)のクラリアント・コーポレーション(Clariant Corp.)より入手可能)その酸価は0mgKOH/g−ワックスであると報告されている。
リコワックス(Licowax,登録商標)PED521:金型潤滑剤として使用される酸化ポリエチレンワックス(米国28205、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte,NC,28205,USA)のクラリアント・コーポレーション(Clariant Corp.)より入手可能)その酸価は18mgKOH/g−ワックスであると報告されている。
ニグロス(Nyglos,登録商標)4:長さが平均約9μmのウォラストナイト繊維(サイジングなし)(カナダ国アルバータ州カルガリー(Calgary,AB,Canada)のナイコ・ミネラルズ(NYCO Minerals)より入手可能)
ニグロス(Nyglos,登録商標)4W20544:長さが平均約10μmのウォラストナイト繊維(カナダ国アルバータ州カルガリー(Calgary,AB,Canada)のナイコ・ミネラルズ(NYCO Minerals)より入手可能)
PEN:ポリ(エチレン2,6−ナフトエート)
プラストホール(Plasthall,登録商標)809:ポリエチレングリコール400ジ−2−エチルヘキサノエート
ポリマーA:エチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸グリシジル(66.75/28/5.25重量%)コポリマー、メルトインデックス12g/10分
ポリマーB:エチレン/アクリル酸n−ブチル/一酸化炭素(57/33/10重量%)コポリマー、メルトインデックス12g/10分
ポリマーC:エチレン/アクリル酸n−ブチル(73/27重量%)コポリマー、メルトインデックス4g/10分
ポリマーD:エチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸グリシジル(66/22/12重量%)コポリマー、メルトインデックス8g/10分
ポリマーE:エチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸グリシジル(72.6/26/1.4重量%)コポリマー、メルトインデックス15g/10分
ポリマーF:エチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸グリシジル(66.75/28/5.25重量%)コポリマー、メルトインデックス12g/10分
ポリマーG:エチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸グリシジル(63/20/17重量%)コポリマー、メルトインデックス14g/10分
サーリン(Surlyn,登録商標)8920:エチレン/メタクリル酸(85/15重量%)コポリマー、ナトリウムを用いて中和したもの、メルトインデックス0.9g/10分(米国19898,デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE,19898,USA)の本願特許出願人より入手可能)
テフロン(Teflon,登録商標)TE9050:テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとからの粉体化コポリマー(米国19898,デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE,19898,USA)の本願特許出願人より入手可能)
サームクス(Thermx,登録商標)13787:ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)(米国テネシー州キングスポート(Kingsport,TN USA)のイーストマン・ケミカルズ・インコーポレーテッド(Eastman Chemicals,Inc.)より入手可能)
ウルトラノックス(Ultranox,登録商標)626:抗酸化剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート(米国26501,ウェストバージニア州モーガンタウン(Morgantown,WV,26501,USA)のGE・スペシャルティ・ケミカルズ・インコーポレーテッド(GE Specialty Chemicals,Inc.)から入手可能)
ユニプレックス(Uniplex,登録商標)810:可塑剤、平均分子量946のポリ(エチレングリコール)ジラウレート(米国27406,ノースカロライナ州グリーンズボロ(Greensboro,NC,27406,USA)のユニテックス・ケミカル・コーポレーション(Unitex Chemical Corp.)から入手可能)
【0091】
実施例においては、組成物の量はすべて重量部で表されている。
【0092】
(実施例1〜4)
表1に列挙した組成物を、コンパウンディング方法Aにより製造した。プラック(7.6×12.7cm、3”×5”)を射出成形し、次いでプライマー処理し、自動車の塗装ラインを模したラボ試験室においてスプレー塗装した。ヒートサグとDOIを測定した。鋼製プラックのDOIは73.5であった。ヒートサグおよびDOIのデータを表1に示す。LCP成分の融点が高くなるほど、ヒートサグが小さくなることが観察された。
【0093】
【表2】

【0094】
(比較例A)
表2に示す組成物をコンパウンディング方法Aにより調製し、成形してプラック(7.6×15.2cm、3”×6”)にし、プライマー処理し、自動車のOEM塗装ラインを模したラボ試験室においてスプレー塗装した。結果を表2に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
(比較例B−I)
LCPを加えないPET成形組成物をコンパウンディング方法Aによりコンパウンディングし、標準手法によりプラックを成形した。そのデータから、ポリマーAのようなグラフトゴムは、組成物中におけるゴムレベルを上げるにつれて落槍衝撃値を上げる効果があるが、同時に、ゴムレベルの上昇につれてヒートサグの値も大きくなることがわかる。非グラフトゴムたとえばポリマーBおよびCは、ゴム強化剤としては効果が無く、また、ゴムレベルを上げてもヒートサグの増加はない。配合と結果を表3に示す。
【0097】
【表4】

【0098】
(実施例5および比較例J)
これらの組成物は、コンパウンディング方法Aにより調製し、標準手法により射出成形した。その配合に5%のLCP5を添加することによって、ナトリウム源としてサーリン(Surlyn,登録商標)ナトリウムを含む強靱化PET組成物における伸びが増加し、ヒートサグが減少する。組成と結果を表4に示す。
【0099】
【表5】

【0100】
(実施例6〜9)
これらの実施例においては、強化剤の中のメタクリル酸グリシジルの量を変化させた。寸法を合わせたウォラストナイトも使用した。組成物をコンパウンディング方法Aで製造し、試験片は標準手法により射出成形した。組成とそれらの性質を表5に示す。
【0101】
【表6】

【0102】
(実施例10〜12および比較例K)
組成物をコンパウンディング方法Aにより製造し、標準手法によって成形した。組成と物理的性質を表6に示す。
【0103】
【表7】

【0104】
(実施例13〜18)
これらの実施例においては、存在していたPETのいくつかを他のポリエステルに置きかえた。組成物はコンパウンディング方法Aにより成形し、標準法により成形したが、その組成と物理的性質を表7に示す。
【0105】
【表8】

【0106】
(実施例19〜23および比較例L〜P)
1つを除いてその他すべての実施例で、PETを他のポリエステルと置きかえた。組成物はコンパウンディング方法Aにより製造し、標準手法により成形したが、ただし、押出機中の混合バレルおよびダイの温度設定は300℃とした。組成と物理的性質を表8に示す。
【0107】
【表9】

【0108】
(実施例24〜26)
これらの実施例においては、組成物はコンパウンディング方法Aにより製造し、組成物を成形するための標準方法を用いた。組成と性質を表9に示す。これらの組成物は、耐熱性が幾分低く、そのため、電気器具のための外観部品のような品目に有用である。
【0109】
【表10】

【0110】
(実施例27〜37)
これらの組成物はコンパウンディング方法Bにより製造し、標準手法により射出成形した。潤滑剤(「リコワックス(Licowax,登録商標)」)の一部はサイドフィード(「第二混合段」)し、一部はリアフィード(「第一混合段」)したが、このことは表10の中に示してあり、また表10には、組成とそれらの性質を示している。
【0111】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物中の全成分を合計したものを重量パーセントの基準として、
(a)少なくとも約40重量パーセントの、約100℃以上の融点(MP)を有する1つまたは複数の等方性ポリエステル、
(b)約0.5〜約20重量パーセントの液晶ポリマーであって、その融点が、前記等方性ポリエステルの冷結晶点(cold crystallization point)よりも少なくとも50℃高いか、または、前記等方性ポリエステルが冷結晶点を有さない場合には、前記液晶ポリマーの前記融点が150℃以上である、液晶ポリマー、
(c)約1.0〜約35重量パーセントの補強剤であって、その平均アスペクト比が約2.0以上であり、その最も長い寸法の平均が約20μm以下である補強剤、および
(d)約3〜約30重量パーセントの高分子強化剤であって、前記等方性ポリエステルに対して反応性の官能基を有する強化剤、
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
25ppm未満の遊離の金属カチオンを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記等方性ポリエステルが、約200℃以上の融点を有することを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記等方性ポリエステルが本質的に、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の1つまたは複数、ならびに、HO(CHOH(I)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、HO(CHCHO)CHCHOH(II)、およびHO(CHCHCHCHO)CHCHCHCHOH(III)の1つまたは複数、から誘導される繰り返し単位からなり、ここでnは2〜10の整数、mは平均して1〜4、そしてzは平均して約7〜約40であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記等方性ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン2,6−ナフトエート)、またはポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記等方性ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記補強剤が、約3.0以上の平均アスペクト比を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記補強剤が、約10μm以下の平均最大寸法を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記補強剤が、ウォラストナイト、マイカ、タルク、チタン酸カリウム・ホイスカー、窒化ホウ素・ホイスカー、またはホウ酸アルミニウム・ホイスカーであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記補強剤が、ウォラストナイト、タルク、またはチタン酸カリウム・ホイスカーであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記補強剤が、前記組成物の約5〜約20重量パーセントであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記液晶ポリマーが、約300℃以上の融点を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記液晶ポリマーが、前記組成物の約2.0〜約10重量パーセントであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記高分子強化剤が、エポキシまたは無水カルボキシル官能基を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記高分子強化剤が、エポキシ官能基を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記高分子強化剤が、エポキシ含有(メタ)アクリル酸エステルおよびエチレンから誘導される繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1〜13または15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記高分子強化剤が、官能基を含む1つまたは複数のモノマーを約1.0〜約15重量パーセント含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、前記高分子強化剤を約5〜約20重量パーセント含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
エポキシ化合物もしくは樹脂、または潤滑剤の1つまたは複数をさらに含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
組成物を製造するための方法であって、その組成物が
組成物中の全成分を合計したものを重量パーセントの基準として、
(a)少なくとも約40重量パーセントの、約100℃以上の融点(MP)を有する1つまたは複数の等方性ポリエステル、
(b)約0.5〜約20重量パーセントの液晶ポリマーであって、その融点が、前記等方性ポリエステルの冷結晶点よりも少なくとも50℃高いか、または、前記等方性ポリエステルが冷結晶点を有さない場合には、前記液晶ポリマーの前記融点が150℃以上である、液晶ポリマー、
(c)約1.0〜約35重量パーセントの補強剤であって、その平均アスペクト比が約2.0以上であり、その最も長い寸法の平均が約20μm以下である、補強剤、および
(d)約3〜約30重量パーセントの高分子強化剤であって、前記等方性ポリエステルに対して反応性の官能基を有する強化剤を含み、
そして前記組成物はさらに、少なくとも1つまたは複数の活性成分および場合により1つまたは複数の不活性成分を含み、
前記方法が、
(a’)第一の混合工程において、前記等方性ポリエステルおよび前記高分子強化剤を含む原料を混合して、中間組成物を形成する工程、および、次いで
(b’)1つまたは複数の後続混合工程において、前記中間組成物、および前記1つまたは複数の活性成分を含む原料を混合する工程
を含むが、
ただし、前記1つまたは複数の不活性成分のそれぞれは、最初に前記第一の混合工程においてか、または、1つまたは複数の前記後続混合工程において混合されることを特徴とする方法。
【請求項21】
前記活性成分の1つが潤滑剤であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記不活性成分の1つが潤滑剤であり、それが前記1つまたは複数の後続混合工程において最初に混合されることを特徴とする請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記等方性ポリエステルが本質的に、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の1つまたは複数、ならびに、HO(CHOH(I)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、HO(CHCHO)CHCHOH(II)、およびHO(CHCHCHCHO)CHCHCHCHOH(III)の1つまたは複数、から誘導される繰り返し単位からなり、ここでnは2〜10の整数、mは平均して1〜4、そしてzは平均して約7〜約40であることを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記等方性ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)であることを特徴とする請求項20〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記補強剤が、約3.0以上の平均アスペクト比と、約10μm以下の平均最大寸法を有することを特徴とする請求項20〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記補強剤が、ウォラストナイト、タルクまたはチタン酸カリウム・ホイスカーであり、前記組成物の約5〜約20重量パーセントであることを特徴とする請求項20〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記液晶ポリマーが、約300℃以上の融点を有し、前記組成物の約2.0〜約10重量パーセントであることを特徴とする請求項20〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記高分子強化剤が、エポキシ官能基を含むことを特徴とする請求項20〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、約5〜約20重量パーセントの前記高分子強化剤を含むことを特徴とする請求項20〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜19のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする外観部品(appearance part)。
【請求項31】
自動車のボディパネル、自動車の内装パネル、電気器具部品(appliance part)、電動工具ハウジング、電子機器のキャビネットもしくはハウジング、車両の外装もしくは内装パネル、建築物の装飾内装パネル、家具、または電話もしくはその他の電話設備であることを特徴とする請求項30に記載の外観部品。
【請求項32】
着色されていることを特徴とする請求項30または31に記載の外観部品。
【請求項33】
請求項1〜19のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする自動車、トラック、スノーモービル、建設車両、または農場用車両。
【請求項34】
前記組成物がコーティングされていることを特徴とする請求項32に記載の、自動車、トラック、スノーモービル、建設車両、または農場用車両。
【請求項35】
金属部品および少なくとも1つのプラスチック部品から組み立てられ、金属およびプラスチックの外観表面を有する基材をコーティングするための方法であって、連続して以下の工程、
(1)前記基材に電着コーティングをし、析出しなかった電着コーティング剤を前記基材から除き、前記析出した電着コーティングを加熱架橋し、それによって、前記金属表面上に電着コーティングプライマーを形成する工程、および
(2)少なくとも、前記金属およびプラスチックの外観表面の全部の上に、少なくとも1つの追加のコーティングを塗布し、硬化する工程、を含み、
ただし、前記プラスチック部品の少なくとも一部は、前記基材の前記プラスチック外観表面を形成し、そして、前記プラスチック部品の少なくとも一部は、組成物中の全成分を合計したものを重量パーセントの基準として、
(a)少なくとも約40重量パーセントの、約100℃以上の融点を有する少なくとも1つの等方性ポリエステル、
(b)約0.5〜約20重量パーセントの液晶ポリマーであって、前記等方性ポリエステルの冷結晶点よりも少なくとも50℃高い融点を有するか、または、前記等方性ポリエステルが冷結晶点を有さない場合には、前記液晶ポリマーの前記融点が150℃以上である、液晶ポリマー、
(c)約1.0〜約35重量パーセントの補強剤であって、その平均アスペクト比が約2.0以上であり、その最も長い寸法の平均が20μm以下である、補強剤、および
(d)約3〜約30重量パーセントの高分子強化剤であって、前記等方性ポリエステルに対して反応性の官能基を有する強化剤、
を含む組成を有することを特徴とする方法。
【請求項36】
前記基材が自動車ボディであることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記プラスチック部品が、フェンダー、ボンネット、ドア、持ち上げ式テールゲート、トランク・リッド(trunk lid)、燃料タンクキャップ、バンパー、プロテクティブ・モールディング、サイドパネル、ボディ・シル(body sills)、ミラー・ハウジング、取っ手、スポイラーおよびハブキャップ、からなる群より選択されることを特徴とする請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
請求項35の方法に従ってコーティングされることを特徴とするコーティングされた基材。
【請求項39】
請求項36の方法を含む工法により製造されることを特徴とする車両。
【請求項40】
前記車両が、自動車、トラック、スノーモービル、建設車両、または農場用車両であることを特徴とする請求項39に記載の車両。
【請求項41】
金属部品および少なくとも1つのプラスチック部品から組み立てられ、金属およびプラスチックの外観表面を有する基材をコーティングするための方法であって、前記基材を電着コーティングする工程、前記基材から析出しなかった電着コーティング剤を除去する工程、前記析出した電着コーティングを加熱架橋し、それによって前記金属表面の上に電着コーティングプライマーを形成する工程を含み、
ただし、前記プラスチック部品の少なくとも一部は、前記基材の前記プラスチック外観表面を形成し、そして、前記プラスチック部品の少なくとも一部は、組成物中の全成分を合計したものを重量パーセントの基準として、

(a)少なくとも約40重量パーセントの、約100℃以上の融点を有する少なくとも1つの等方性ポリエステル、
(b)約0.5〜約20重量パーセントの液晶ポリマーであって、前記等方性ポリエステルの冷結晶点よりも少なくとも50℃高い融点を有するか、または、前記等方性ポリエステルが冷結晶点を有さない場合には、前記液晶ポリマーの前記融点が150℃以上である、液晶ポリマー、
(c)約1.0〜約35重量パーセントの補強剤であって、その平均アスペクト比が約2.0以上であり、その最も長い寸法の平均が20μm以下である、補強剤、および
(d)約3〜約30重量パーセントの高分子強化剤であって、前記等方性ポリエステルに対して反応性の官能基を有する強化剤、
を含む組成を有することを特徴とする方法。
【請求項42】
前記基材が自動車ボディであることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記プラスチック部品が、フェンダー、ボンネット、ドア、持ち上げ式テールゲート、トランク・リッド、燃料タンクキャップ、バンパー、プロテクティブ・モールディング、サイドパネル、ボディ・シル、ミラーハウジング、取っ手、スポイラーおよびハブキャップ、からなる群より選択されることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項44】
請求項41の方法に従ってコーティングされることを特徴とするコーティングされた基材。
【請求項45】
請求項41の方法を含む工法により製造されることを特徴とする車両。
【請求項46】
前記車両が、自動車、トラック、スノーモービル、建設車両、または農場用車両であることを特徴とする請求項45に記載の車両。
【請求項47】
金属部品および少なくとも1つのプラスチック部品から組み立てられ、金属およびプラスチック外観表面を有する基材をコーティングするための方法であって、少なくともすべての金属およびプラスチック外観表面の上に少なくとも1つのコーティングを塗布し、硬化する工程を含み、
ただし、前記プラスチック部品の少なくとも一部は、前記基材の前記プラスチック外観表面を形成し、そして、前記プラスチック部品の少なくとも一部は、組成物中の全成分を合計したものを重量パーセントの基準として、
(a)少なくとも約40重量パーセントの、約100℃以上の融点を有する少なくとも1つの等方性ポリエステル、
(b)約0.5〜約20重量パーセントの液晶ポリマーであって、前記等方性ポリエステルの冷結晶点よりも少なくとも50℃高い融点を有するか、または、前記等方性ポリエステルが冷結晶点を有さない場合には、前記液晶ポリマーの前記融点が150℃以上である、液晶ポリマー、
(c)約1.0〜約35重量パーセントの補強剤であって、その平均アスペクト比が約2.0以上であり、その最も長い寸法の平均が20μm以下である、補強剤、および
(d)約3〜約30重量パーセントの高分子強化剤であって、前記等方性ポリエステルに対して反応性の官能基を有する強化剤を含む組成を有することを特徴とする方法。
【請求項48】
前記基材が自動車ボディであることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記プラスチック部品が、フェンダー、ボンネット、ドア、持ち上げ式テールゲート、トランク・リッド、燃料タンクキャップ、バンパー、プロテクティブ・モールディング、サイドパネル、ボディ・シル、ミラーハウジング、取っ手、スポイラーおよびハブキャップ、からなる群より選択されることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項50】
請求項47の方法に従ってコーティングされることを特徴とするコーティングされた基材。
【請求項51】
請求項47の方法を含む工法により製造されることを特徴とする車両。
【請求項52】
前記車両が、自動車、トラック、スノーモービル、建設車両、または農場用車両であることを特徴とする請求項51に記載の車両。

【公表番号】特表2007−505989(P2007−505989A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533175(P2006−533175)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/015523
【国際公開番号】WO2004/104099
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】