説明

ポリエステル繊維充填カバー

【課題】カモまたはガチョウ・ダウンが充填されるカバーの特定の肌触りに非常に近い肌触りを持つ有用な充填カバーを提供する。
【解決手段】キルティングされた羽毛布団、キルト、枕などのように吹き入れポリエステル繊維が充填されたカバーであって、充填物が、0.9〜7dtexの繊度、8〜24mmの切断長、および単位センチメートル当りのベンドの数(Bg)に対するクリンプ(K1)の比が3.5≦K1≦4.5の関係を満たすシリコナイズされた中空のポリエステル繊維を含み、かつ、単位センチメートル当り少なくとも3つのベンドの数Bgである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダウン類似の特性を有するポリエステル繊維で満たされるキルティングされた羽毛布団および枕に関する。
【背景技術】
【0002】
キルティングされた羽毛布団は、織られた布地でつくられた材料の上下シートを有する。これら上下シート間にある材料は、羽毛布団にその断熱を与える充填物である。その充填物材料ができるだけ大きくエアクッションを提供するときに、良好な断熱が得られる。所望のエアクッションを備えたより軽量の材料が、より快適なものと分類される羽毛布団を得させる。ラージ・ピース・フォーム内のカモおよびガチョウ・ダウンは高級充填物材料として使用される。その上、このダウンで満たされた羽毛布団は、楽しくて豪華に感じられるように特別な感触を有している。
【0003】
本質的にツーピースの布から成るダウン羽毛布団は、エッジで縫合され、かつチェス盤パターンに縫い込まれ、通常、縦と横にキルトした縫い目を備え、それから充填物材料が吹き込まれる部屋が形成される。その部屋は、通常、充填物材料が羽毛布団のエリアを覆うように均一に万遍なく分散配布されることを確実にする。特別なケースでは、充填材料の入念な分散配布は、部屋の同等でない充填および/または均等な正方形コーナー形状の形態以外の他のキルティングパターンによって得ることができる。
【0004】
高級なカモおよびガチョウ・ダウンは非常に高価である。このため、これらを合成の繊維材料で代替えする試みは乏しくはなかった。特に充填物材料として、熱的に固定されるそれらの性能のために、高い防皺性を有することから、また、それは新しい状態で、かつ役に立つコースの上の空気の大きいクッションを羽毛布団に与えることから、ポリエステル繊維が適している。
【0005】
充填物材料の重さを減らすために、寝具に充填するために製造されるポリエステル繊維は、通常、中空の繊維の形態で生じる。その上、繊維の表面に加えられるシリコン化処理(siliconisation)は、寝具に改善された感触を与える。しかし、この種の従来の繊維は、ダウンのような通常の方法のキルティングされた羽毛布団のなかに吹き込むことができない。ポリエステル繊維で満たされるキルティングされた羽毛布団は、したがって、通常、材料を満たすとして、それから供給ロールの上へ巻かれる毛羽立てた不織材料でできている材料の高容積ウェブを形成することによって製造される。キルティングマシンと呼ばれるものにおいて、上下覆い材料およびそれらの間にあるポリエステル材料のウェブは、それから供給ロールから引き抜かれて、所望の方法で縫合される。この種の装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0006】
ダウンに類似する方法において、毛羽立てた不織布は繊維方向の全くランダムな分散配布を有しない、そして、その代わりに、不織布が形成される方法のために、繊維は好適な方向に向けられる。
【0007】
この種の羽毛布団がキルティングされるときに、キルティングされた縫い目の下にある繊維は縫い目によって非常に圧縮され、したがって、羽毛布団の中空のスペースの容積に対していかなる貢献もしない。前もってすでに形成された部屋のなかに繊維が吹き込まれる場合は、これは起こらない。
【0008】
従来の合成繊維とともに、ダウンを吹き込む公知の装置において、部屋のなかに繊維を吹くこと、または部屋のなかに繊維を均等に分散させることは、今まで可能でなかった。羽毛布団をダウンおよび羽毛で満たすためのこの種の装置は、例えば73730エスリンゲンのメッサーズ.L.H.ローチ社(Messers.L.H. Lorch AG of 73730 Esslingen)によって製造され、同社のアドレスwww.lorch-ag-de.に記載されている。
【特許文献1】欧州特許EP0406588A2号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、コンパートメントのなかにキルティングされた羽毛布団、キルト、枕などのような充填カバーをつくること、またはコンパートメントが吹込み合成繊維で均等に満たすようにすることにある。また、本発明の目的は、カモまたはガチョウ・ダウンが充填されるカバーの特別な感触に非常に近い感触を有する有用な充填カバーを製造することにある。さらに、本発明の目的は、単位面積当たりの重量が低く、同時に良好な断熱性能を有する充填カバーをつくることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、キルティングされた羽毛布団、キルト、枕などのような吹き入れ(blown-in)ポリエステル繊維が充填されるカバーによって達成され、その充填物は、0.9〜7dtexの繊度(titer)、8〜24mmの切断長、特に11〜28mmの切断長、および単位センチメートル当りのベンドの数(Bg)に対するクリンプ(K1)の比が3.5≦K1≦4.5の関係を満たすシリコン化された(siliconised)中空のポリエステル繊維を含み、かつ、単位センチメートル当り少なくとも3つのベンドの数Bgであることを特徴とする。
【0011】
中空のポリエステル繊維は、ポリエチレン・テレフタル酸塩から成ることが好ましい。
【0012】
14〜20mm、特に18mmの切断長を有するポリエステル繊維が有利である。
【0013】
本発明の特定の実施例において、中空のポリエステル繊維は、繊度(titers)の混合物および/または異なる繊維長さ(different staple length)の繊維の混合物から成る。
【0014】
繊維は、横断面の一つ以上のくぼみを有することができる。
【0015】
繊維は、丸いか、卵形であるか他の適切な横断面を有することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カモまたはガチョウ・ダウンが充填されるカバーの特定の肌触りに非常に近い肌触りを持つ有用な充填カバーが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のコンテキストにおいて使用される中空の繊維は、公知の圧縮−クリンプ機械において製造することができる圧縮−波付け繊維である。しかし、他の方法によってクリンプされた繊維を、例えば三次元に波付けクリンプされた繊維のようなものとして使用してもよい。
【0018】
本発明のコンテキストにとって重要であることは、クリンプされた繊維がセンチメートル当りに波付けされた曲がり(crimped bends)の最小限の数を有するということ、すなわち、センチメートル当りにつき少なくとも3つの曲がりを有するということにある。また、センチメートル当りの曲がりの数(Bg)は、いわゆるクリンプK1に対する特定の比率においてであるべきである。
【0019】
本発明のコンテキストにおいてクリンプというのは以下の比率を意味している。
【0020】
K1=Lv−Lk
Lk
ここで、Lkは、リラックスする、自由な載置状態において波付けされた主要な繊維の長さである。また、Lvは、同じ繊維の長さであるが、伸びた所で、すなわち、繊維はノークリンピング(非波付け)で実質的にまっすぐである。ストレッチング(伸線)は、デクリンピング力(decrimping force)と呼ばれるものを適用することにより行われる。これは、特定の繊維に関する応力−歪み曲線から得られた接線による予備試験において決定される。未だ標準ではないが、この方法は、メッサーズ・トレビラ社(Messrs. Trevira GmbH’s)の操作指示番号320.010.3に記載されている。
【0021】
本発明のコンテキストにおいて使用される繊維は、細かな曲がりを含む平らな繊維である。これらの繊維は、多数の曲がりのための商K1/Bgのために安い価格を有する。
【0022】


従来の繊維(4.4dtex) 本発明の繊維(4.4dtex)
K1 18.0 13.2
Bg 3.0 3.3
K1/Bg 6.0 4.0

表に、従来の圧縮−波付けクリンプによって製造した4.4dtexの繊度を有する繊維と4.4dtex繊度の本発明の繊維とを比較して示す。後者の本発明の繊維は、かなり低いK1のため多数の曲がりを有している。本発明の繊維の比率K1/Bgは4.0であり、これは従来バージョンの6.0よりむしろ小さい。
【0023】
驚くべきことに、本発明の充填カバーは高級品を構成するということが判明した。特に、本発明の充填カバーは、カモまたはガチョウ・ダウンを含むカバーと比肩するところに位置するほどダウンに類似する肌触りを有するものである。
【0024】
本発明の充填カバーの製品は、以下のように実施することができる。キルト羽毛布団の製造を下記に示す。
【0025】
繊維は、圧縮梱包内に供給され、引裂き機または繊維オープナーのなかに開放され、配管を通ってコンテナ内に吹き込まれる。圧力下のコンテナ内では、繊維は複数のローラにより連続的な動きが保たれる。繊維は、それからそれらの方法でつくられ、空圧手段によってもう一度再び計量のために、1つのコンパートメントに要求される繊維の量に計量される。各コンパートメントは、全部縫合されたキルト羽毛布団の全てのコンパートメントが満たされるまで、別々に離して満たされる。最終的に、カバーは吹き入れ穴(blow-in hole)のところで縫い閉じられる。
【0026】
キルト羽毛布団の充填と同様の手順を枕の充填にも適用してもよい。枕は、単一の大きなコンパートメントを考えることができ、それを充填した後に、吹き入れ穴のところで縫い閉じられる。
【0027】
これと同様に、本発明の繊維およびその吹き込み方法は、ベッドカバーの製造にも用いられ、また枕にも同様に用いられ、キルティングを有していない。
【0028】
純真綿繊維、混合繊維、綿/合成およびポリエステル繊維を、充填物の間に挿入されるトップおよびボトム材料として用いてもよい。
【0029】
ヤーン厚みはNM160〜NM50を用い、ワープおよびウェフト内のフィラメント密度は30フィラメント/cmより大きい。空気に対する繊維の浸透性は最大60リットル/m2sである(DIN53887に従って測定)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キルティングされた羽毛布団、キルト、枕などのように吹き入れポリエステル繊維が充填されたカバーであって、
充填物が、0.9〜7dtexの繊度、8〜24mmの切断長、および単位センチメートル当りのベンドの数(Bg)に対するクリンプ(K1)の比が3.5≦K1≦4.5の関係を満たすシリコナイズされた中空のポリエステル繊維を含み、かつ、単位センチメートル当り少なくとも3つのベンドの数Bgであることを特徴とするポリエステル繊維充填カバー。
【請求項2】
前記中空ポリエステル繊維がポリエチレン・テレフタル酸塩繊維であることを特徴とする請求項1記載の充填カバー。
【請求項3】
前記中空ポリエステル繊維の切断長が14〜20mmであることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の充填カバー。
【請求項4】
前記切断長が18mmであることを特徴とする請求項3記載の充填カバー。
【請求項5】
前記中空ポリエステル繊維がタイターの混合物から成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の充填カバー。
【請求項6】
前記中空ポリエステル繊維が異なる切断長であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の充填カバー。


【公表番号】特表2006−507030(P2006−507030A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−520363(P2004−520363)
【出願日】平成15年1月17日(2003.1.17)
【国際出願番号】PCT/EP2003/000431
【国際公開番号】WO2004/007347
【国際公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願人】(505013549)トレビラ・ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】