説明

ポリエステル製延伸発泡容器

【課題】不活性ガスを含浸させての加熱により形成された発泡層が非発泡のポリエステル容器本体の胴部外面に形成された構造を有していると共に、耐熱性に優れた延伸発泡ポリエステル容器を提供する。
【解決手段】口部5、胴部7、及び底部9を備えた非発泡ポリエステル容器本体1と、容器本体1の胴部外面に設けられた発泡セルを内部に有する発泡ポリエステル層3とから成り、非発泡ポリエステル容器本体1が、固有粘度が0.78以下のポリエステルを用いて形成されており、発泡ポリエステル層3が、固有粘度が0.80以上のポリエステルを用いて形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル製延伸発泡容器に関するものであり、より詳細には、マイクロセルラー技術を利用して発泡されているポリエステル製延伸発泡容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル容器は、透明性、耐熱性、ガス遮断性等の特性に優れており、種々の用途に広く使用されている。
【0003】
一方、近年では、資源の再利用が強く求められ、上記のようなポリエステル容器に関しても、使用済みの容器を回収し、リサイクル樹脂として種々の用途への再利用が図られている。ところで、包装容器内に収容される内容物については、光により変質しやすいもの、例えばある種の飲料、医薬品、化粧品などは、顔料等の着色剤を樹脂に配合した樹脂組成物を用いて成形された不透明容器に収容されて提供される。しかるに、資源の再利用の点からは、着色剤の配合は望ましくなく(リサイクル樹脂に透明性を確保することが困難となってしまう)、このため、透明容器の使用が要求されているのが現状であり、従って、光変質性の内容物の収容に適した不透明性容器についてもリサイクル適性の改善が必要である。
【0004】
着色剤を配合せずに遮光性(不透明性)を付与するためには、容器壁に気泡を存在させて発泡容器とすることが考えられ、このような発泡容器も種々提案されており、例えば、特許文献1には化学発泡剤を用いた発泡押出ブロー技術、特許文献2〜3には、ポリエステル樹脂に不活性ガスを含浸した後に加熱することにより発泡を行うマイクロセルラー技術を利用して得られる発泡成形品が提案されている。
【0005】
マイクロセルラー技術を利用しての発泡は、気泡セルを微細にすることができ、発泡の程度もコントロールし易いという利点があり、係る技術を利用した延伸発泡ポリエステル容器は注目されている。
【0006】
上記のような延伸発泡ポリエステル容器は、例えば、不活性樹脂を含浸したポリエステルを用いての射出成形によって試験管形状のプリフォームを成形し、次いで、該プリフォームを加熱して発泡プリフォームとし、この発泡プリフォームをブロー延伸して容器形状に賦形することにより製造される。
【0007】
ところで、上記の延伸発泡ポリエステル容器においても、容器の口部は熱結晶化により耐熱性や強度を向上させることが必要である。容器の口部にはキャップを装着するための螺条が形成されるからである。また、容器内容物を熱間充填したり、或いはホットベンダー等で加温して販売する用途に適用される容器では、耐熱性が要求されるため、ブロー成形後にヒートセット(熱固定)を行い、耐熱性を付与することが必要である。
【0008】
前述したマイクロセルラー技術を利用した延伸発泡ポリエステル容器では、容器口部の結晶化が困難になるという問題がある。即ち、容器口部にはキャップと係合する螺条が形成されるため、このような容器口部での発泡は避けなければならない。このために発泡に際しての加熱は、容器の口部以外の部分について選択的に行われる。しかるに、容器口部に発泡用の不活性ガスが溶解しているため、容器口部の熱結晶化(加熱)を行うと、この時に発泡が生じてしまうからである。
【0009】
特許文献4には、このような容器口部の熱結晶化の問題が有効に解決された延伸発泡ポリエステル容器が提案されている。かかる容器は、所謂オーバーモールドにより成形されるものであり、非発泡ポリエステル容器本体と、該容器本体の胴部外面に設けられた発泡ポリエステル層とから成っている。即ち、この容器では、容器口部が不活性ガスが含浸されていないポリエステルから成形されるため、容器口部について熱結晶化を行ったとしても、この部分について発泡を生じることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−26137号
【特許文献2】特開2005−246822号
【特許文献3】特開2006−321887号
【特許文献4】WO2009/158397
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献4の延伸発泡ポリエステル容器は、発泡セル(気泡の形成)を生じることなく、容器口部の熱結晶化を行うことができるのであるが、胴部等についての耐熱性が不十分であるという課題が残されている。即ち、一般的には、ブロー成形後の熱工程によって耐熱性を向上させることができるのであるが、オーバーモールドにより非発泡の容器本体と発泡層とからなる構造を有する延伸発泡ポリエステル容器では、熱固定による耐熱性向上が不十分であり、このため、かかるポリエステル容器は、容器内容物を熱間充填する用途や加温販売する用途には不適当であり、その改善が求められている。更に、熱固定に際して、気泡が大きく成長してしまい、容器のバリア性が損なわれたり、或いは発泡による遮光性が低下するという問題もあった。
【0012】
従って、本発明の目的は、不活性ガスを含浸させての加熱により形成された発泡層が非発泡のポリエステル容器本体の胴部外面に形成された構造を有していると共に、耐熱性に優れた延伸発泡ポリエステル容器を提供することにある。
本発明の他の目的は、発泡を生じることなく、容器口部の熱結晶化が行われている、延伸発泡ポリエステル容器を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、延伸成形や熱固定に際しての発泡セルの成長が有効に抑制された延伸発泡ポリエステル容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、非発泡ポリエステル容器本体と発泡ポリエステル層とからなるオーバーモールドにより成形された延伸発泡ポリエステル容器について検討した結果、このような構造の容器ではプリフォームを加熱した際、プリフォームの外面と内面との間に温度差が生じ、この結果、成形された容器には歪が残り、熱固定を行っても、この歪の残存により耐熱性を効果的に向上させることが困難となるという知見を見出し、かかる知見に基づいて、本発明を完成させるに至った。
【0014】
本発明によれば、口部、胴部、及び底部を備えた非発泡ポリエステル容器本体と、該非発泡ポリエステル容器本体の胴部外面に設けられた発泡セルを内部に有する発泡ポリエステル層とから成る延伸発泡ポリエステル容器であって、該非発泡ポリエステル容器本体が、固有粘度が0.78以下のポリエステルを用いて形成されており、該発泡ポリエステル層が、固有粘度が0.80以上のポリエステルを用いて形成されていることを特徴とする延伸発泡ポリエステル容器が提供される。
【0015】
本発明の延伸発泡ポリエステル容器においては、
(1)前記口部が熱結晶化されていること、
(2)前記非発泡ポリエステル容器本体の胴部の密度法による結晶化度が25%以上であること、
(3)前記非発泡ポリエステル容器本体を形成するポリエステル中に赤外吸収剤が分散されていること、
(4)内容物の熱間充填に使用されること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の延伸発泡ポリエステル容器においては、口部を備えたポリエステル容器本体が非発泡体であり、発泡材である不活性ガスが内部に含浸されていない。従って、発泡セルを生じせしめることなく、容器口部の熱結晶化を行うことができる。
【0017】
また、非発泡のポリエステル容器本体は固有粘度の低いポリエステルを用いて形成され、胴部外面に設けられている発泡ポリエステル層は、固有粘度の高いポリエステルを用いて形成されている。この結果、このポリエステル容器の製造過程において、プリフォームの加熱による歪の発生を有効に回避することができ、優れた耐熱性を付与することが可能となる。
即ち、延伸成形に供されるプリフォームは、容器本体となる内側部分が不活性ガスが含浸されていないポリエステルからなっており、その胴部外面には、不活性ガスが含浸されたポリエステル層が形成されている。このような構造のプリフォームは、赤外線ヒータ等によって外面側から加熱され、これにより、樹脂に溶解している不活性ガスが過飽和状態となり、外面のポリエステル層内に発泡セルが生成し、発泡層が形成されることとなる。この場合、発泡セルは胴部外面側のポリエステル層にのみ生成し、内側の容器本体となる部分には生成しない。このため、発泡のための上記加熱を行うと、発泡セルの形成によってプリフォームの外面側の熱伝導性が大きく低下し、この結果、プリフォームの外面側の温度が高く、発泡セルが生成していない内面側の温度は外面側に比して低くなる。特に、赤外線による加熱を行った場合には、電磁波である赤外線が外面側の発泡セルにより散乱されてしまうため、内面側の加熱が十分に行われず、外面側と内面側との温度差は一層大きくなる傾向がある。
【0018】
このように内面側と外面側との間に温度差が生じてしまうと内面側に歪が発生してしまい、このような歪は最終的に延伸成形された容器内に残存することとなる。従って、熱固定による結晶化を行ったとしても、歪が残留しているために結晶化が阻害され、非発泡の容器と比較すると、その耐熱性等の特性が低いものとなってしまう。
【0019】
しかるに、本発明においては、プリフォーム外面側(発泡層を形成する部分)を形成するポリエステルの固有粘度が高いためポリエステルの発泡温度が高く、より高い温度まで透明の非発泡状態を維持するため、加熱中の熱伝導性の低下や赤外線の散乱を有効に抑制することができる。さらに、プリフォームの内面側(容器本体となる部分)を形成するポリエステルの固有粘度が低く且つ外面側を形成するポリエステルの固有粘度が高いため、上記のようにプリフォームの内面側の温度が低く且つ外面側の温度が高いという温度分布が生じた状態においての歪の発生を有効に抑制することができるのである(即ち、上記のような温度分布が生じた状態での両ポリエステルの熱運動性がほぼ同等となっている)。即ち、結晶性が高められ、熱固定により耐熱性等の特性を効果的に向上させることができる。
【0020】
また、本発明においては、発泡層を形成するポリエステルの固有粘度が高いため、発泡後に行われるプリフォームの延伸或いはその後の熱固定に際しての発泡セルの成長(セルの粗大化)も有効に回避することができ、延伸や熱固定による物性低下を有効に防止することができる。
【0021】
更に、本発明によれば、非発泡ポリエステル容器本体を形成するポリエステル中に黒鉛等の赤外吸収剤を分散させておくことができ、これにより、プリフォームの内面側(容器本体となる部分)の熱吸収性が高められ、プリフォーム加熱時の内外面温度分布を回避し、歪の発生を更に効果的に抑制することができる。
【0022】
本発明の延伸発泡ポリエステル容器は、非発泡のポリエステル容器と同様に熱固定によって耐熱性等の特性を向上させることができ、従って、耐熱性が要求される用途、例えば、熱間充填用の容器或いは加温販売用の容器等として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の延伸発泡ポリエステル容器の部分側断面図である。
【図2】本発明の延伸発泡ポリエステル容器の製造工程において、延伸成形に供される発泡プリフォームの側断面図である。
【図3】本発明の延伸発泡ポリエステル容器の製造プロセスを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<延伸発泡ポリエステル容器>
図1を参照して、全体として10で示す本発明の延伸発泡ポリエステル容器は、ポリエステル容器本体1と容器本体1の外面に形成されている発泡ポリエステル層3とからなっている。
【0025】
図1から理解されるように、容器本体1の上部には口部5が形成されており、口部5の外面にはキャップを装着するための螺条5aが形成されており、螺条5aの下側にはサポートリング5bが形成されている。また、口部5の下方には湾曲した肩部6を介して胴部7が形成されており、胴部7の下端は、底部9で閉じられている。
【0026】
一方、発泡ポリエステル層(以下、単に発泡層と呼ぶ)3は、上記容器本体1の口部5の下方部分の外面を覆うように設けられており、従って、胴部7及び底部9は発泡層3により覆われている。この発泡層3の内部には、不活性ガスを発泡剤とするマイクロセルラーにより形成された多数の発泡セルが分布しており、これによりこの容器10には遮光性が付与されている。
尚、図1の例では、発泡層3は口部5の下方に位置する肩部6、胴部7及び底部9の全体を覆うように設けられているが、かかる発泡層3は、口部5を覆っていない限り、少なくとも胴部7を覆うように設けられていればよく、例えば、底部9の外面には発泡層3が必ずしも設けられていなくてもよい。
【0027】
上記のような構造を有する延伸発泡ポリエステル容器10は、所謂オーバーモールドにより成形されるものであり、例えば、図2に示すオーバーモールド構造のプリフォーム20を加熱し、ブロー延伸することにより、図1に示す延伸発泡ポリエステル容器が製造される。
【0028】
即ち、図2のプリフォーム20は、非発泡のポリエステルから形成されており且つ全体として試験管形状を有する芯管21と、不活性ガスが含浸されているポリエステルから形成された発泡前駆体層23とからなっている。芯管21は、図1に示されている容器10の本体1に賦形されるものであり、芯管21の上端には、本体1と同様の口部5が形成されている。また、発泡前駆体層23は、容器10の発泡層3となるものであり、発泡層3に対応して、芯管21の口部5の下方部分を覆うように設けられている。発泡前駆体層23は実質的に非発泡状態であるのがより好ましい。この場合プリフォームは透明であるので、プリフォーム加熱開始直後は加熱ヒータからの赤外線が、内面側に効果的に透過することができる。すなわち、前駆体23がプリフォーム成形時点で初めから発泡している場合と比べると、前駆体23が非発泡状態である場合の方が内面側への加熱がより効果的に行なわれ、外面側と内面側の温度差が小さくなり、歪が生じにくくなる。
【0029】
上述したプリフォーム20から得られる本発明の延伸発泡プリエステル容器10において、容器本体1(芯管21)や発泡層3(発泡前駆体層23)を形成するポリエステルとしては、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート/シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)等がその代表として挙げられる。更に、これらの重合体に、共重合成分としてエチレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール等のジオール類;或いはイソフタル酸、ペンゾフェノンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、プロピレンビス(フェニルカルボン酸)、ジフェニルオキサイドジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ジエチルコハク酸等のジカルボン酸を含有させた共重合ポリエステルも使用することができる。
【0030】
本発明においては、上記のポリエステルの中でも、容器本体1(芯管21)を形成するポリエステルとしては固有粘度(IV)が0.78dl/g以下、好ましくは0.65乃至0.76dl/gのものが使用され、発泡層3(発泡前駆体層23)を形成するポリエステルとしては固有粘度(IV)0.80dl/g以上、好ましくは0.82乃至1.0dl/gのものが使用される。即ち、容器本体1を固有粘度(IV)の低いポリエステルを用いて形成し、発泡層3を固有粘度の高いポリエステルで形成することにより、プリフォーム20から容器10を成形する際に、内面側に位置する容器本体1での歪の発生を有効に防止することができ、その結晶性を高め、熱固定による耐熱性等の向上をもたらすことが可能となる。また、容器成形時(ブロー延伸時や熱固定時)での発泡セルの成長粗大化を有効に回避し、物性低下を防止することができる。さらに、固有粘度(IV)の高いポリエステルは、一般にコポリエステルであり、このようなポリエステルを用いて発泡層3を形成することは、発泡セルの微細化という点でも有利である。
【0031】
尚、用いるポリエステルの固有粘度(IV)が必要以上に小さい時には、容器本体1(芯管21)の成形が困難となり、また、固有粘度(IV)が必要以上に高い時には、発泡が困難となる恐れがある。このため、容器本体1を形成するポリエステル及び発泡層3を形成するポリエステルの何れも、その固有粘度(IV)は、上記の好適範囲にあることが望ましい。
【0032】
また、容器本体1を形成するポリエステルは、上記範囲の固有粘度(IV)を有していると共に、ホモポリマーであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートホモポリマーが最適である。このようなホモポリエステルを用いて上記本体1を形成することにより、その結晶性を向上させ、熱固定により耐熱性等の特性を大きく向上させることができる。
【0033】
更に、容器本体1を形成するポリエステル中には、赤外吸収剤が配合されていることが好ましい。赤外吸収剤の配合により、容器本体1の熱吸収性が高められ、前述したプリフォーム20を加熱して延伸成形する際に生ずる温度分布を有効に回避し、該温度分布による歪の発生を効果的に防止することができるからである。
【0034】
このような赤外吸収剤としては、黒鉛、金属アンチモン、酸化鉄、有機系顔料等を例示することができ、これらの赤外吸収剤はそれぞれ一種単独或いは二種以上の組み合わせで使用することができる。
尚、このような赤外吸収剤を多量に使用するとリサイクル性に適しているという発泡容器の特性が損なわれてしまうため、その量は可及的に少ないことが望ましく、例えば、容器本体1を形成するポリエステル100重量部当り0.005乃至3.0重量部、特に0.01乃至1.0重量部の量で配合されることが好適である。
【0035】
上述した本発明の延伸発泡ポリエステル容器10においては、口部5が熱結晶化されていることが好ましく、この熱結晶化により口部5の耐熱性や強度を高め、キャップとの螺合性を向上させ、安定した密封構造を形成することができる。
即ち、この熱結晶化は、前述した容器本体1を形成しているポリエステルの熱結晶化温度領域(一般に140〜200℃)に口部5を加熱することにより実行されるが、この容器本体1は非発泡であり、発泡セルを形成するための不活性ガスは含浸されていない。従って、熱結晶化のための熱処理に際して、発泡を生じることがなく、口部5の発泡による不都合は完全に防止される。
尚、この熱結晶化は、ブロー延伸によって形成された容器10の口部5について行ってもよいし、ブロー延伸に供するプリフォーム20の口部5について行ってもよい。
【0036】
また、先に述べたように、本発明においては、固有粘度(IV)の高いポリエステルを用いて発泡層3を形成するため、加熱による発泡層3中の発泡セルの成長粗大化が有効に防止されている。従って、発泡セルを成長粗大化させることなく、容器本体1の胴部7等を熱固定して耐熱性を向上させることができる。例えば、このような熱固定によって、少なくとも胴部7(及び底部9)の密度法による結晶化度が25%以上、特に30乃至40%の範囲となるように熱固定することができる。
尚、この熱固定は、前記ポリエステルの熱結晶化温度領域に容器本体1の胴部7等を加熱保持しておくことによりなされる。
【0037】
更に、本発明の延伸発泡ポリエステル容器10においては、図1には示されていないが、発泡層3の外面に発泡セルが存在していない薄い表皮層(通常、5乃至100μm程度の厚み)を形成しておくことが好ましい。この表皮層については後述するが、表皮層の形成により、この外面を平滑な面とし、その印刷適性やラベル貼着性を高めることができる。
【0038】
上記の延伸発泡ポリエステル容器10において、容器本体1や発泡層3の厚みは特に制限されず、容器10の使用形態や大きさ等によって適宜設定することができるが、一般的には、容器本体1の胴部7の厚みが20乃至1000μm程度の範囲であり、この胴部7上の発泡層3の厚みは20乃至500μm程度の範囲である。
【0039】
<延伸発泡ポリエステル容器の製造>
上述した本発明の延伸発泡ポリエステル容器10は、図2に示す構造のプリフォーム20を成形し、次いで、ブロー延伸することにより製造されるのは先に述べたとおりであるが、具体的には、以下のようにして製造される。
【0040】
先ず、前述した容器本体1の形成用ポリエステルを使用し、このポリエステルに適宜赤外吸収剤を配合し、常法に従っての射出成形により図2に示されている形状の芯管21を成形する。
【0041】
次いで、前述した発泡層3の形成用ポリエステルを使用し、このポリエステルを射出成形機の溶融混練部に供給して溶融混練しながら不活性ガス(炭酸ガス又は窒素ガス)を高圧で供給して樹脂に含浸せしめ、このポリエステルに不活性ガスを含浸せしめる。
【0042】
不活性ガスの含浸は、最終的に成形される容器10の発泡層3中に存在させる発泡セルの個数に応じて、十分な量のガスを溶解させるように行われる。例えば、発泡セルの個数を多くして遮光性を高める場合には、ガスの含浸量を多くし、そうでない場合には、ガスの含浸量は少なく設定される。
【0043】
一方、射出金型内には、先に成形された非発泡の芯管21が配置されており、上記のようにして不活性ガスが含浸されたポリエステルは、そのまま射出され、芯管21の外面に発泡層3となる発泡前駆体層23が形成される。
【0044】
以後のプロセスは図3に示す手順で行われる。
図3を参照して、上記工程で得られたプリフォーム20は、冷却固化された状態で、所定時間、常圧下(大気圧)に置かれる(図3(a))。即ち、大気圧下に開放することにより、発泡前駆体層23の表面から不活性ガスが放出され、これによって、不活性ガスが溶解していないかあるいは不活性ガス濃度が低くなった表皮層25が形成されることとなる。常圧、常温下での不活性ガスの溶解度はほとんどゼロであるから、冷却固化されている発泡前駆体層23を常圧下に保持することにより、その表面から不活性ガスが徐々に放出され、上記のような表皮層25が形成されることとなるわけである。
以降の工程で加熱が行われ、発泡前駆体層23の全体が発泡してしまうと、その表面に発泡による凹凸が形成されてしまい、平滑性が損なわれてしまうため、外観が損なわれたり、或いは印刷適正やラベル貼着性が低下してしまうなどの問題を生じるが、上記のようにして表皮層25を形成しておくことにより、最終的に形成される容器の外表面(特に胴部表面)に、発泡セルが分布していない表皮層を形成することができ、発泡による表面平滑性の低下を回避することができる。
【0045】
尚、上記の表皮層25の厚みは、冷却固化した状態での常圧下に開放する時間によって調整することができる。即ち、この開放時間が長いほど、表皮層25の厚みが大きくなり、開放時間が短いほど、表皮層25の厚みは薄くなる。但し、この開放時間をあまり長くすると、不活性ガスがほとんど放出されてしまい、遮光性等の目的とする特性を得るに足る数の発泡セルを形成することが困難となってしまうので注意を要する。
【0046】
次いで、上記のような表皮層25が形成されているプリフォーム20を、加熱(工程(b))し、加熱に続いて延伸成形する(工程(c))ことにより、図1の延伸発泡ポリエステル容器10を得ることができる。
【0047】
上記の工程(b)における加熱は、芯管21や発泡前駆体層23を形成しているポリエステルのガラス転移点(Tg)以上であって且つ結晶化温度未満(即ち、融点未満)にプリフォーム20が保持されるように行われる。即ち、結晶化温度以上に加熱されると、延伸成形が困難となってしまうからである。
【0048】
上記の加熱は、プリフォーム20を延伸成形するために行われるものであるが、この時の加熱によって発泡前駆体層23中に発泡セル40が生成し、プレ発泡層3’が形成されることとなる。即ち、発泡前駆体層23を形成しているポリエステル中に溶解している不活性ガスの内部エネルギー(自由エネルギー)の急激な変化がもたらされ、この結果、相分離が引き起こされ、気泡(発泡セル40)としてポリエステルと分離するため発泡が生じるのである。
尚、発泡前駆体層23の表面に形成されている表皮層25には不活性ガスが放出されているため、この表皮層25中に発泡セル40が形成されることはなく、この加熱工程(b)においても、表皮層25はそのままの形態で残ることとなる。
【0049】
また、上記のようにして生成する発泡セル40は実質的に球形状であり、等方に分布している。この段階で遮光性が発現するが、発泡セル40の形状が球形状であるため、その遮光性は低く、次の延伸成形工程(c)での延伸によって発泡セル40を引き伸ばして扁平状とすることにより遮光性が高められる。
【0050】
加熱工程(b)で形成されるプレ発泡層3’中の発泡セル40のセル密度(表皮層25を除く領域での密度)は、前述した不活性ガスの溶解量に依存し、この溶解量が多いほど、セル密度を高くし、また球状の発泡セル40の径を小さくすることができ、溶解量が少ないほど、セル密度は小さく、発泡セル40の径は大きくなる。また、発泡セル40の径は、上記の加熱時間により調整することができ、例えば、発泡のための加熱時間が長いほど、発泡セル40の径は大きく、加熱時間が短いほど、発泡セル40は小径となる。
【0051】
上記のような現象を利用してこの加熱工程(b)での加熱条件を設定することにより、発泡セル40の径やセル密度を調整することができるわけであるが、本発明では、プレ発泡層3’となる発泡前駆体層23が固有粘度(IV)の高いポリエステルで形成されているため、発泡セル40の粗大化が抑制され(発泡セル40が大径のものとなり難い)、発泡セル40の径が微細で且つセル密度を大きくすることが可能となっている。例えば、発泡前駆体層23(プレ発泡層3’)の温度が95乃至115℃となるように加熱を行い且つ加熱時間を調整することにより、プレ発泡層3’における発泡セル4Aのセル密度が10乃至1010cells/cm程度とし、平均径が3乃至50μm程度となるように設定することができ、これにより最終的に得られる発泡層3に安定して高い遮光性を付与することができる。
【0052】
尚、上記加熱は、赤外線加熱、高周波誘導加熱、熱風加熱、オイルバス等のそれ自体公知の手段を用いて行うことができる。
【0053】
ところで、上記のような加熱を行った場合、発泡セル40は芯管21の外面のプレ発泡層3’のみに生成し、内側の芯管21(容器本体1となる部分)には生成しない。しかも、プレ発泡層3’の熱伝導性が発泡セル40の生成によって大きく低下することとなる。従って、この加熱工程(b)において、プリフォーム20の加熱を行うと、外面側に位置するプレ発泡層3’の温度が高く、内面側の芯管21の温度はプレ発泡層3’に比して低温となる。既に述べたように、赤外線加熱の場合には、赤外線が発泡セル40により散乱されてしまうため、このようなプレ発泡層3’と芯管21との温度差は一層大きくなる。従って、このような温度差が生じたまま延伸成形(更には熱固定)が行われると、最終的に得られる容器10の本体1に歪が残留してしまい、熱固定による結晶化によって十分な耐熱性等を付与することが困難となってしまう。
【0054】
本発明においては、繰り返し説明したように、プレ発泡層3’及び発泡層3となる発泡前駆体層23を形成するポリエステルの固有粘度(IV)が高いため、気泡の生成する温度が高く、高い温度までプリフォームが透明の非発泡状態を維持し加熱中の赤外散乱による加熱ムラが抑制されるためプリフォーム20の芯管21(容器本体1となる部分)とプレ発泡層3’の温度差が小さくなる。さらに、プリフォーム20の芯管21を形成するポリエステルの固有粘度(IV)が低く、且つプレ発泡層3’及び発泡層3となる発泡前駆体層23を形成するポリエステルの固有粘度(IV)が高いため、内面側の芯管21の温度が低く、外面側のプレ発泡層3’の温度が高いという温度分布が生じた状態での歪の発生は有効に抑制される。即ち、温度の高いプレ発泡層3’のポリエステルは熱運動性が低く、温度の低い芯管21のポリエステルの熱運動性は高く、両ポリエステルの熱運動性がほぼ同等となり、温度分布による歪の発生を抑制することが可能となるのである。
【0055】
また、本発明では、芯管21のポリエステル中に前述した赤外吸収剤が配合されている場合には、芯管21の熱吸収性が高められ、従って、プレ発泡層3’から芯管21への熱伝導が迅速に行われ、この結果、芯管21の温度が速やかに上昇し、プレ発泡層3’と芯管21との温度差が緩和され、歪の発生を一層有効に抑制することが可能となる。
【0056】
上記のようにして加熱されたプリフォーム20は延伸成形金型内に導入されて、延伸成形が行われる(工程(c))。即ち、延伸金型内のプリフォーム20内に加圧流体を吹き込み、延伸棒による軸方向引張延伸と周方向膨張延伸とを行うことにより、二軸延伸ブロー成形が行われ、図1に示す形状の延伸発泡ポリエステル容器10が得られる。
【0057】
かかる延伸成形において、軸方向延伸倍率や周方向延伸倍率は特に制限されるものではないが、一般的に、軸方向延伸倍率は、1.3乃至3.5倍、特に1.5乃至3倍とすることが好ましく、また、周方向延伸倍率は、2乃至5.5倍、特に3乃至5倍程度が好適である。更に、ブロー成形時に吹き込む加圧流体としては、プリフォーム20の温度よりも少なくとも10℃高い温度に保持されている高温流体を用いるのがよい。
【0058】
このような延伸成形によって、図3に示されているようにプレ発泡層3’、表皮層25及び芯管21は、引き伸ばされて薄肉化され、表面に薄い表皮層25を有する発泡層3により肩部6、胴部7及び底部9が覆われた容器本体1が形成される。
かかる発泡層3においては、発泡セル40も引き伸ばされ、扁平形状のものとなっている。従って、このような発泡セル40の形状変化により光に対する遮光性が高められる。例えば、前述した発泡セル40の形状が球形となっているプレ発泡層3’での500nmの波長の光に対する透過率は50%程度であるが、延伸成形により発泡セル40の形状が扁平状となっている発泡層3では、同じ条件での光に対する透過率は15%以下、特に10%以下、さらには5%以下となり、著しく高い遮光性を示す。
【0059】
また、上記の延伸成形に際しては、所謂ワンモールド法を用いることが好ましく、延伸成形金型の温度を、発泡層3や容器本体1(芯管21)を形成するポリエステルの熱結晶化温度領域(一般に、140乃至200℃)に保持し、延伸成形と同時に熱固定を行うことが好適である。即ち、本発明においては、発泡層3を形成するポリエステルの固有粘度(IV)が高いため、熱固定のための加熱に際しての発泡セル40の成長粗大化が有効に抑制されており、従って、かかる熱固定による遮光性の低下或いはガスバリア性等の物性低下も有効に防止されるからである。
【0060】
尚、上記の熱固定は、容器本体1の胴部7での密度法による結晶化度が前述した範囲(25%以上、特に、30%以上)となるように、金型温度及び金型との接触時間を設定すればよい。
【0061】
上記のようにして、プリフォーム20から本発明の延伸発泡容器10を製造することができるが、この製造過程で容器口部5の熱結晶化が行われる。一般的には、プリフォーム20の加熱に先立って口部5を芯管21を形成しているポリエステルの熱結晶化温度以上、融点未満の温度に加熱することにより、口部5の熱結晶化が行われるが、上記の延伸成形及び熱固定後に口部5の熱結晶化を行うこともできることは先に述べた通りである。
また、ワンモールド法によらず、ツーモールド法を用いることも可能であり、例えば、冷却された延伸成形金型を使用し、成形後の容器10を延伸成形金型から取り出し、所定の温度に加熱された熱固定用金型を用いて熱固定を行うこともできる。
【0062】
上述した本発明の延伸発泡ポリエステル容器10は、発泡層3の形成により優れた遮光性を示し、リサイクル適正に優れているばかりか、口部5の熱結晶化や胴部7の熱固定も効果的に行うことができ、従って、耐熱性が要求される用途(熱間充填用や加温販売用容器)として極めて有用である。
尚、図1〜図3では、ボトル形状の容器を例にとって、本発明を説明したが、本発明はボトル形状の容器に限定されるものではなく、例えば、カップ状の容器に本発明を適用することも可能である。この場合には、プリフォームの形状をシート状とし、このシートを、固有粘度(IV)が高く且つ不活性ガスが溶解したポリエステルの基材シートと、基材シートの胴部相当部分を覆うように設けられ且つ固有粘度(IV)の低いポリエステルから成る非発泡シートとから形成し、これを所定の温度に加熱して発泡を行い、次いで、真空成型、プラグアシスト成形等の延伸成形を行ってカップ状の容器とすることも可能である。
【実施例】
【0063】
本発明を次の実験例で説明する。本発明で実施した測定方法は次の通りである。
[結晶化度の測定]
容器の胴部より試験片を切り出し、非発泡である容器本体層をはく離して密度勾配管法により試験片の密度ρ(g/cm)を求める。結晶化度は次式により計算する。
結晶化度(%)={ρc(ρ−ρa)/ρ(ρc−ρa)}×100
ρc:結晶密度(1.455g/cm
ρa:非晶密度(1.335g/cm
[全光線透過率の測定]
分光光度計UV―3100PC(株式会社島津製作所製)を用い、積分球式測定法により波長500nmでのボトル胴部の全光線透過率を測定した。
【0064】
(実施例1)
市販のボトル用ホモポリマーPET樹脂(固有粘度:0.75g/dl)を用いて、射出成形により口部と胴部からなる薄肉試験管形状の容器本体プリフォームを作成した。さらにこのプリフォームの胴部に、市販のボトル用ホモポリマーPET樹脂(固有粘度:0.84g/dl)に射出成形機の加熱筒の途中から窒素ガスを0.15重量%供給しPET樹脂と混練して溶解させ、発泡しないよう保圧の程度を調整(保圧力60MPa、射出保圧時間21秒)して胴部外層を射出形成し、口部および胴部内層はガスが添加されておらず、胴部外層はガスは含浸しているが実質非発泡状態の容器用2層プリフォームを得た。プリフォームの重量は31gであった。
このプリフォームの口部を赤外線ヒータで加熱し熱結晶化を行った。
【0065】
このようにして得られた2層プリフォームを、延伸ブロー成形機内で赤外線ヒータによりプリフォーム表面が約105℃となるまで加熱し、ブロー成型して内容量500mlのボトル(長さ208mm、胴部直径65mm、胴部肉厚0.3mm)に成形した。ブロー金型は150℃に温調し、ボトルの熱固定を行い、離型時に容器内に室温(25℃)のエアーを1秒間ブローするクーリングブローを行った。延伸ブロー成形は通常のプリフォームとほぼ同等の条件で成形可能であり、形状の異方性や肉厚ムラがなく成形性は良好だった。得られたPETボトルは胴部外層の扁平気泡の存在によりパール光沢を有し、表面は平滑で外観良好であった。
【0066】
底面から60mmの高さにおけるボトル胴部内層の結晶化度を密度法により測定すると、32%であった。ボトルの内容積を測定した後、ボトルに85℃の熱水を充填しプラスチック製のクロージャーにて密栓した。5分間放置後、流水にて室温まで冷却した。その後、ボトルの内容積を測定し熱水充填前からの体積収縮率を計算すると、1.88%であり、良好な耐熱性を有していた。
【0067】
(実施例2)
実施例1の容器外層樹脂を、市販のボトル用コポリマーPET樹脂(固有粘度:0.84g/dl、IPA:2%)に変えた他は実施例1と同様にボトル成形を行った。ボトルは白色パール調であり、表面は平滑で外観良好であった。ボトル胴部本体層の結晶化度は33%であり、85℃熱水充填による体積収縮率は1.62%であり、良好な耐熱性を有していた。
【0068】
(実施例3)
実施例2の容器本体層樹脂に、赤外吸収剤として0.05重量部の黒鉛を分散させた他は、実施例1と同様にボトル成形を行った。得られたボトルは口部が灰味がかっており、胴部は白色パール調であって、表面は平滑で外観良好であった。ボトル胴部本体層の結晶化度は38%であり、85℃熱水充填による体積収縮率は0.27%であり、極めて良好な耐熱性を有していた。
【0069】
(比較例1)
実施例1のボトル外層樹脂を、本体層樹脂と同じホモポリマーPET樹脂(固有粘度:0.75g/dl)に変えた他は実施例1と同様にボトル成形を行った。ボトルは表面には粗大に成長した気泡による凹凸がみられ、外観が劣っていた。ボトル胴部本体層の結晶化度は31%であり、85℃熱水充填による体積収縮率は2.40%であった。
【0070】
(比較例2)
実施例1の容器本体層樹脂を、容器外層と同じホモポリマーPET樹脂(固有粘度:0.84)に変えた他は実施例1と同様にボトル成形を行った。ボトルは白色パール調であり、表面は平滑で外観良好であった。ボトル胴部本体層の結晶化度は28%であり、85℃熱水充填による体積収縮率は3.35%であり、耐熱性が劣った。
【0071】
(比較例3)
実施例1の容器本体層樹脂を、ホモポリマーPET樹脂(固有粘度:0.84)とし、容器外層樹脂をホモポリマーPET樹脂(固有粘度:0.75)に変えた他は実施例1と同様にボトル成形を行った。ボトルは表面には粗大に成長した気泡による凹凸がみられ、外観が劣っていた。ボトル胴部本体層の結晶化度は27%であり、85℃熱水充填による体積収縮率は3.61%であり、耐熱性が劣った。
【0072】
(実施例4)
実施例1の容器外層樹脂を、市販のボトル用PET樹脂(固有粘度:1.12)に変えた他は実施例1と同様にボトル成形を行った。ボトルは白色パール調であり、表面は平滑で外観良好であった。ボトル胴部本体層の結晶化度は32%であり、85℃熱水充填による体積収縮率は2.12%であった。
【0073】
(比較例4)
市販のボトル用ホモポリマーPET樹脂(固有粘度:0.75g/dl)を用いて、射出成形機の加熱筒の途中から窒素ガスを0.15重量%供給しPET樹脂と混練して溶解させ、発泡しないよう保圧の程度を調整(保圧力60MPa、射出保圧時間21秒)して射出成形により口部と胴部からなる試験管形状のプリフォームを作成した。このプリフォームの形状は実施例1で成形した口部結晶化したオーバーモールドプリフォームと同じになるように設計しており、プリフォーム全体に均一に窒素ガスが溶解している単層プリフォームを得た。
このプリフォームを口部結晶化を行わずに実施例1と同様にブロー成形し、口部が非晶の単層発泡ボトルを得た。
このボトルに85℃の熱水を充填すると、口部が発泡し、さらに軟化変形して密封性が損なわれ、容器として用いることができなかった。
【0074】
表1に(実施例1)〜(実施例4)および(比較例1)〜(比較例3)の本体胴部結晶化度、体積収縮率およびボトル胴部全光線透過率を示す。
【0075】
【表1】

【符号の説明】
【0076】
1:非発泡ポリエステル容器本体
3:発泡ポリエステル層
3’:プレ発泡層
5:口部
7:胴部
9:底部
10:延伸発泡ポリエステル容器
20:プリフォーム
21:芯管
23:発泡前駆体層
25:表皮層
40:発泡セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、胴部、及び底部を備えた非発泡ポリエステル容器本体と、該非発泡ポリエステル容器本体の胴部外面に設けられた発泡セルを内部に有する発泡ポリエステル層とから成る延伸発泡ポリエステル容器であって、該非発泡ポリエステル容器本体が、固有粘度が0.78以下のポリエステルを用いて形成されており、該発泡ポリエステル層が、固有粘度が0.80以上のポリエステルを用いて形成されていることを特徴とする延伸発泡ポリエステル容器。
【請求項2】
前記口部が熱結晶化されている請求項1に記載の延伸発泡ポリエステル容器。
【請求項3】
前記非発泡ポリエステル容器本体の胴部の密度法による結晶化度が25%以上である請求項1または2に記載の延伸発泡ポリエステル容器。
【請求項4】
前記非発泡ポリエステル容器本体を形成するポリエステル中に赤外吸収剤が分散されている請求項1乃至3の何れかに記載の延伸発泡ポリエステル容器。
【請求項5】
内容物の熱間充填に使用される請求項1乃至4の何れかに記載の延伸発泡ポリエステル容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−76751(P2012−76751A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220980(P2010−220980)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】