説明

ポリエステル製造用触媒の製造方法

【課題】チタン化合物とリン化合物を反応させるポリエステル製造用チタン触媒分散液において、チタン触媒粒子の平均粒子径のバラツキ(粒度分布)が小さいポリエステル製造用触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】攪拌装置を備えた反応容器内でチタン化合物とリン化合物を溶媒化合物中で反応させるポリエステル製造用触媒の製造方法であって、チタン化合物、リン化合物およびポリエステル製造用触媒よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が分子内に疎水性基および親水性基を有する化合物であり、反応容器の高さHと直径Dの関係が0.5≦H/D≦2.0であること等を特徴とするポリエステル製造用触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチタン化合物とリン化合物を反応させて得られるポリエステル製造用触媒の製造方法に関し、溶媒中へ分散した際のポリエステル製造用触媒の粒子径の分散が少ないポリエステル製造用触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、芳香族ポリエステルはテレフタル酸などのジカルボン酸と、エチレングリコールなどの脂肪族ジオール類とを原料として製造される。具体的には、まず、芳香族ジカルボン酸類と脂肪族ジオール類とのエステル化反応により低次縮合物(エステル低重合体)を形成し、次いで重縮合触媒の存在下にこの低次縮合物を脱グリコール反応(液相重縮合)させて、高分子量化している。また、場合によっては固相重縮合を行い、更に分子量を高めている。
【0003】
上記の如く製造されるポリエステルの中でも、ポリエチレンテレフタレートなどの飽和ポリエステルを二軸延伸成形して得られるボトルは、透明性、機械的強度、耐熱性及びガスバリヤ性に優れており、ジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器(PETボトル)として広く用いられている。
【0004】
ポリエステルの製造方法では、重縮合触媒として、従来アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物などが使用されている。しかしながら、アンチモン化合物を触媒として製造したポリエチレンテレフタレートは透明性、耐熱性の点でゲルマニウム化合物を触媒として製造したポリエチレンテレフタレートに劣っている。また、得られるポリエステル中のアセトアルデヒド含有量を低減させることも要望されている。しかし、ゲルマニウム化合物はかなり高価であるため、ポリエステルの製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
ところでチタンはエステルの重縮合反応を促進する作用のある元素であることが知られている。また、地球上に豊富に存在する元素のため安価である。さらに、虫歯治療において、詰めものや被せものとして使われるなど、高い安全性が知られている。このような優れた特徴を持つチタンを重縮合触媒として利用するために、多くの検討が行われており、チタンアルコキシド、四塩化チタン、シュウ酸チタニル、オルソチタン酸などが公知である。しかしながら、従来のチタン系触媒を重縮合触媒に用いた場合、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物に比べ活性はあるものの、得られたポリエステルが著しく黄色に着色するなどの問題がある。上記着色問題を解決するために、コバルト化合物をポリエステルに添加して黄味を抑えることが一般的に行われている。確かにコバルト化合物を添加することによってポリエステルの色相(b値)は改善することができるが、コバルト化合物を添加することによってポリエステルの溶融熱安定性が低下し、ポリマーの分解も起こりやすくなるという問題がある。
【0006】
その対策として、種々のチタン化合物が検討されてきた。水酸化チタンをポリエステル製造用触媒として用いること(例えば、特許文献1参照。)、またα−チタン酸をポリエステル製造用触媒として用いること(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。しかしながら、前者の方法では水酸化チタンの粉末化が容易でなく、一方、後者の方法ではα−チタン酸が変質し易いため、その保存、取り扱いが容易でなく、したがっていずれも工業的に採用するには適当ではなく、更に、良好な色調(b値)のポリマーを得ることも困難である。
【0007】
また、チタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物をポリエステル製造用触媒として使用すること(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。確かに、これらの方法によれば、ポリエステルの溶融熱安定性はある程度向上しているものの、得られるポリマーの色調が十分なものではなく、したがってポリマー色調のさらなる改善が望まれている。更に、チタン化合物とリン化合物との錯体をポリエステル製造用触媒とすることも提案されている(例えば、特許文献4参照。)。確かに、この方法によれば溶融熱安定性も向上し、十分な生産性を確保することができる。得られるポリマーの色調も十分に市場の要求に応えることができるものである。この方法で合成されたTi触媒は、微粒子であるが、微量ではあるものの粗大粒子が含まれる。そのため、生産工程内の各種フィルターの目詰まりの原因となり、生産上好ましくない。また、成形時にも異物を除去する目的でフィルターを通すこともある。このときも粗大粒子が存在すると、フィルター目詰まりの原因となり好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭48−002229号公報
【特許文献2】特公昭47−026597号公報
【特許文献3】特開昭58−038722号公報
【特許文献4】特許第3897756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の問題点を踏まえ、本願発明はポリエステル製造用チタン触媒分散液において、チタン触媒粒子の平均粒子径のバラツキ(粒度分布)が小さいポリエステル製造用触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、触媒の調整条件、反応容器の形状、装備により、合成されるポリエステル製造用触媒の粒度分布をシャープに制御できることを見出した。具体的には、本発明は、攪拌装置を備えた反応容器内でチタン化合物とリン化合物を溶媒化合物中で反応させるポリエステル製造用触媒の製造方法であって、
チタン化合物、リン化合物およびポリエステル製造用触媒よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が分子内に疎水性基および親水性基を有する化合物であり、
反応容器の高さHと直径Dの関係が下記式1を満たし、反応容器の高さの5〜99%の長さを有する注入配管または循環配管が、該注入配管または該循環配管の先端が反応容器の内部方向を向くように反応容器内に設置されており、
式1 0.5≦H/D≦2.0
1)チタン化合物、リン化合物および溶媒化合物が注入配管から反応容器内に添加され、当該チタン化合物、リン化合物および溶媒化合物の中で2種以上の化合物が反応容器内へ添加する化合物の反応容器内への添加が開始する時点以降の段階で、該反応容器の内部方向に向いている注入配管の先端が反応容器内の化合物中に浸漬しているか
または
2)チタン化合物、リン化合物および溶媒化合物が反応容器内に添加され、反応容器内に存在するチタン化合物、リン化合物および溶媒化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の化合物が反応容器外から循環配管を通じて反応容器内に加えられる時点以降の段階で、該反応容器の内部方向に向いている循環配管の先端が反応容器内の化合物中に浸漬していることを特徴とするポリエステル製造用触媒の製造方法により上記課題を解決することができることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によりポリエステル製造用チタン触媒において、そのチタン触媒の粒子径のバラツキ(粒度分散)を小さくすることができ、ポリエステル製造工程において、異物を取り除く目的で設置されているポリマーフィルターの目詰まりが減り、ポリマーフィルター洗浄、ポリマーフィルター交換をする頻度を減らしてポリエステルを連続的に、且つ安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1にて製造したポリエステル製造用触媒の粒度分布を表したグラフである。
【図2】比較例1にて製造したポリエステル製造用触媒の粒度分布を表したグラフである。
【図3】比較例2にて製造したポリエステル製造用触媒の粒度分布を表したグラフである。
【図4】比較例4にて製造したポリエステル製造用触媒の粒度分布を表したグラフである。
【図5】本発明の製造方法を竪型反応容器を用いて実施する場合における反応容器と、注入配管および攪拌翼を有する攪拌軸の配置を表したイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の製造方法はチタン化合物とリン化合物を溶媒化合物中で反応させるポリエステル製造用触媒の製造方法である。
【0014】
(触媒製造に用いる原料のチタン化合物ついて)
本発明で使用するチタン化合物としては、一般的に、ポリエステル用重合触媒として使用可能なチタン化合物を使用することができるが、下記一般式(I)で表されるチタン化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含むチタン化合物を使用することが望ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
上記式中、R、R、R及びRはそれぞれ同一若しくは異なって、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、mは1〜4の整数を示し、かつmが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもどちらでもよい。ここで、一般式(I)で表されるチタン化合物としては、具体的にはテトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラペンチロキシチタン、テトラヘキシルオキシチタン、テトラオクチルオキシチタン、テトラデシルオキシチタン、テトラフェノキシチタン、オクタアルキルトリチタネート(8つのアルキル基が炭素数1〜10である化合物)、又はヘキサアルキルジチタネート(6つのアルキル基が炭素数1〜10である化合物)などが好ましく用いられる。より好ましくはテトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタンを用いることである。これらの化合物が単独でポリエステル製造工程において触媒化合物として用いられることはポリエステル製造分野における当業者において公知である。
【0017】
一般式(I)で表れるチタン化合物以外に用いても本発明に良い触媒化合物として、三酸化二アンチモン、二酸化ゲルマニウム、トリアセチルアセトナトアルミニウム等を具体的に上げることができる。これらの化合物はチタン化合物、リン化合物またはポリエステル製造用触媒の特性を阻害しない範囲、具体的にはポリエステル製造用触媒に対して0〜20重量%の範囲内で用いることが好ましい。特に以下で述べるような界面活性効果を増加させるような範囲である触媒化合物の種類、量で用いることは好ましくない。
【0018】
(触媒製造に用いる原料のリン化合物について)
リン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリ−sec−ブチルホスフェート、トリ−tert−ブチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸トリエステル類、トリフェニルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリスオクタデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類、メチルアッシドホスフェート(モノメチルホスフェート)、エチルアシッドホスフェート(モノエチルホスフェート)、n−プロピルアシッドホスフェート(モノ−n−プロピルホスフェート)、イソプロピルアッシドホスフェート(モノイソプロピルホスフェート)、ブチルアッシドホスフェート(モノブチルホスフェート)、ヘキシルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ドデシルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジ−n−プロピルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェート、ジドデシルホスフェート、ジフェニルホスフェートなどの酸性リン酸エステルなどのリン化合物が用いられる。これらの化合物の中で酸性リン酸エステルを用いることが好ましい。より好ましくはブチルアッシドホスフェート(モノブチルホスフェート)、オクチルアシッドホスフェートを用いることである。
【0019】
(分子内の疎水性基と親水性基について)
本発明の製造方法に用いるチタン化合物、リン化合物、ポリエステル製造用触媒においては、そのチタン化合物、リン化合物およびポリエステル製造用触媒よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が分子内に疎水性基および親水性基を有する化合物であることが必要である。疎水性基を含む疎水性物質は一般に、電気的に中性の非極性物質であり、分子内に炭化水素基を持つ物質をあげることができる。そして、疎水性基は水に対する親和性が低い、すなわち水に溶解しにくい、あるいは水と混ざりにくい物質が共通して有している官能基であり、それらの疎水性物質の疎水性を担っている官能基を指す。疎水性基には、具体的にはアルキル基、アリール基、アラルキル基を上げることができ、あるいはこれらの官能基の1個又は2個以上の水素原子がフッ素原子その他のハロゲン原子に置き換えられたフルオロアルキル基等も該当する。炭素数は1分子あたり3個以上あることが好ましい。より好ましくは、分子内に分岐のない直鎖型のアルキル基を含んでいることである。
【0020】
一方、疎水性基が電気的に中性の非極性物質であるに対して、親水性基は一般に双極子モーメントや誘電率を有する官能基である。親水性基は、水分子との間に水素結合を作ることで、水に溶解しやすいかあるいは水に混ざりやすい性質を有している。その水と溶解する、もしくは水と混ざるのは熱力学的に好ましい、即ち自由エネルギーを減少させる現象の1つでもあり、日常的に見られる現象でもある。また、そのような親水性の分子を有する化合物は水のほかに極性溶媒にも可溶であることも知られている。このような特性を有する具体的な親水性基には、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、1級アミド基、尿素基(ウレア基)、スルホニル基、スルホン酸基、燐酸、燐酸エステル基、亜燐酸、亜燐酸エステル等を挙げることができる。また、1または2以上のメチレンオキシ基、エチレンオキシ基もそのエーテル酸素部分の存在により親水性基として作用しえるが、一般的にこのような官能基のみが親水性基を構成する界面活性剤は非イオン性界面活性剤(ノニオン系界面活性剤)と呼ばれ、後述するような起泡力が小さいことが知られている。よってこれらの官能基が分子内に多く存在しないことが好ましい化学構造といえる。更に既に金属イオンなどと塩を形成し、電気的に極性を帯びているカルボキシル塩、スルホン酸塩、4級アンモニウム塩基、4級ホスホニウム塩基、フェノラート塩基、アルコラート塩基なども親水性基に含まれる。これらの官能基は一分子内に同一種若しくは異種の官能基が1個または2個以上有していても良い。
【0021】
本発明の製造方法に用いるチタン化合物、リン化合物、これらを反応させて得られるポリエステル製造用触媒の少なくとも一の化合物はこれらの疎水性基と親水性基の特性の反する2種の官能基の両方を1分子内に有しており、水のような極性溶媒またはヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、p−キシレンなどの無極性有機溶媒のいずれにも分散可能・溶解可能な、いわゆる両親媒性化合物と呼ばれる化合物であり、界面活性剤や極性脂質が代表的な化合物として挙げることができる。より好ましくは、得られるポリエステル製造用触媒がこれらの疎水性基、親水性基の官能基の両方を1分子内に有しており、界面活性を有し、起泡力があることである。
【0022】
(溶媒化合物について)
上記のチタン化合物とリン化合物を反応させてポリエステル製造用触媒を製造するのであるが、直接双方を反応させようとすると反応熱によりいずれかの化合物が熱分解を起こしたり、流動性にかけるがゆえに反応が進行しにくいことがあり得る。そこでこれらの問題を回避するために溶媒となる水又は所定の有機化合物などの溶媒化合物を用いることがある。
【0023】
上記の反応において、反応を阻害しないような一般的な化合物を用いることができ、好ましくは、該溶媒化合物としてエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、へキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられることである。より好ましくは該溶媒化合物として、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコールまたは1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)を用いることである。これらの溶媒化合物はチタン化合物もしくはリン化合物が重量濃度として0.1〜50重量%となる範囲内で用いることが好ましい。重量濃度が高いと無溶媒の際のような問題が発生し、重量濃度が低いと溶媒が多く必要になることがある。また、液状とした時のポリエステル製造用触媒の濃度が低く、ポリエステ製造時に触媒を適量加えるためには溶媒を含めた量として多く必要になるなどの問題が発生することがある。更にチタン化合物とリン化合物の反応終了後に溶媒化合物の一部を除去するために加熱・濃縮を行うとポリエステル製造用触媒の加熱分解を促進することがあり、ポリエステル製造用触媒としての機能が失活することがあり好ましくない。
【0024】
(触媒となるポリエステル製造用触媒の合成について)
以下、本発明のポリエステル製造用触媒の製造方法についてより詳細に説明する。なお、図5には本発明のポリエステル製造用触媒の製造方法を実施する場合の典型的な竪型反応容器の例を示した。
【0025】
まず、本発明のポリエステル製造用触媒を製造するに当っては、上述したチタン化合物とリン化合物を溶媒化合物中で反応させる必要がある。更に反応を行う際には、下記1)〜3)の全ての要件、および4−1)または4−2)のいずれか1つの要件を満たす反応容器(図5中のa)内・条件にてで反応させることが必要である。
1)攪拌装置(図5中では攪拌軸と攪拌翼のみを示す。)を備えていること
2)反応容器の高さH(図5中のb)と直径D(図5中のc)の関係が、数式0.5≦H/D≦2.0を満たすこと
3)反応容器の高さHの5〜99%の長さを有する注入配管(図5中のe,f)または循環配管が、該注入配管の先端(図5中のg)または循環配管の先端が反応容器の内部方向を向くように反応容器内に設置されていること、
4−1)チタン化合物、リン化合物および溶媒化合物が注入配管(図5中のe)から反応容器(図5中のa)内に添加され、当該チタン化合物、リン化合物および溶媒化合物の中で2種以上の化合物が反応容器内へ添加する化合物の反応容器内への添加が開始する時点以降の段階で、該反応容器の内部方向に向いている注入配管の先端(図5中のg)が反応容器内の化合物中に浸漬していること、
または
4−2)チタン化合物、リン化合物および溶媒化合物が反応容器(図5中のa)内に添加され、反応容器内に存在するチタン化合物、リン化合物および溶媒化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の化合物が反応容器外から循環配管を通じて反応容器内に加えられる時点以降の段階で、該反応容器の内部方向に向いている循環配管の先端が反応容器内の化合物中に浸漬していること。
【0026】
攪拌装置を備えていることとは、反応容器内の液体を攪拌する装置を備えていることを表し、いわゆる通常の反応容器に備えられている公知の攪拌装置が備えられていれば良い。高粘度であっても攪拌可能な程度に流動性を有していれば良い。具体的には、竪型反応容器の場合には、垂直方向に伸びておりその下方の先端に攪拌翼を有する攪拌軸(図5中のd)を有しており、攪拌軸の上方で、好ましくは反応容器外にモーターや減速機(図5中では示していない。)を有している場合などが挙げられる。また横型の反応容器の場合には、横型円筒内の水平回転軸に固定した攪拌翼により、攪拌を行う場合などが挙げられる。攪拌装置、攪拌軸は1つの反応容器に対して1本(1組)又は2本(2組)以上設置されていても良い。また液体のチタン化合物、液体のリン化合物、溶媒化合物およびポリエステル製造用触媒並びに溶媒化合物を溶媒とするこれらの化合物の溶液・分散液の粘度特性などにより、適正な攪拌装置の動力、攪拌軸・攪拌翼の素材・形状、その他の攪拌装置の仕様が適宜選択できることは言うまでもない。
【0027】
反応容器の高さHと直径Dが、数式0.5≦H/D≦2.0を満たすことによって後述するような溶液・分散液の気泡の発生を抑制することができるので好ましい形態である。より好ましくはHとDが数式0.7≦H/D≦1.8を満たすことである。更に好ましくは1.0≦H/D≦1.7を満たすことである。H/Dが0.5未満の場合には反応容器の直径に対して高さが小さい、底の浅い反応容器で反応させることを意味する。この場合には、反応容器内に液体が満たされ清置していた場合であっても気液界面の面積が広くなり、同時に攪拌時に空気の巻き込み(持込み)量が多くなりやすく、また、底の浅い反応容器のため多くの攪拌翼が必要になるなど気液界面の乱れが起こり、気泡が発生しやすいと考えられ好ましくない。一方、H/Dが2.0を超える場合には、逆には反応容器の高さに対して直径が小さい、底が深い反応容器で反応させることを意味する。この場合には、後述の注入配管を通してチタン化合物、リン化合物、溶媒化合物(以下、チタン化合物等と称することがある。)が反応容器内へ添加される場合に、既に反応容器内に形成されている気液界面に強い衝撃を与えることがあり、気泡が発生しやすくなり好ましくない。また、攪拌効率が良くないことがあり好ましくない。
【0028】
反応容器の高さHの5〜99%の長さを有する注入配管(図5中のe、f)が、その注入配管の先端(図5中のg)が反応容器の内部方向を向くように反応容器内に設置されていることが必要である。注入配管が反応容器の上方から反応容器の内部方向に向くようして反応容器内に設置されており、その注入配管の反応容器内に挿入されている部分の長さが、反応容器の高さの5〜99%の長さを有していることが必要である。反応容器の内部方向とは、反応容器内の上方下方、側部方向のいずれを向いていても良い。チタン化合物等を注入するにあたっては反応容器の下方を向いている方が一般的な態様であり好ましいと考えられる。そしてこの注入配管を通じてチタン化合物、リン化合物、溶媒化合物(以下、チタン化合物等と称することがある。)が反応容器内に添加され、攪拌・および必要に応じた適正な加熱によりチタン化合物とリン化合物の反応が反応容器内にて起こり、ポリエステル製造用触媒が製造されるのである。このように設計された反応容器内にて、まずは1種類目に投入される液体状のチタン化合物等が注入配管を通して反応容器内に添加される。好ましくは反応容器内の粘度が急激に上昇したり、チタン化合物とリン化合物の反応により発生する反応熱を拡散するために都合が良い溶媒化合物が1種類目として選択されるであろう。この時点で、チタン化合物等中で1種類目に反応容器内に添加された化合物によって反応容器の内部方向に向けられた注入配管の先端が浸漬されるまで添加されることが重要である。ここで注入配管の先端が反応容器内に添加された化合物(恐らく溶媒化合物であろう。)に浸漬していれば、その注入配管の全体はアルファベットのJのような形状であり、その注入配管の先端が反応容器の上方を向いていても、その注入配管の全体はアルファベットのLのような形状であり、その注入配管の先端が反応容器の側部方を向いていても良い。
【0029】
次に、2種類目に反応容器内に添加されるチタン化合物等を反応容器内に添加するときに、当該注入配管を用いて、この配管内を通じてチタン化合物を反応容器内に添加することによって、その注入配管の先端(図5中のg)が既にチタン化合物等により浸漬されているので、注入配管内から1番目に添加された液体状のチタン化合物中に直接的に添加することができる。好ましくはチタン化合物またはリン化合物のいずれかであろう。またこれらの化合物が固体であったり、粘度の高い液体の場合には反応容器内への添加が困難ことがあるので、溶媒化合物を用いて溶液または分散液などにされた状態で反応容器内に添加されても良い。この際に、上記のような特段の装置構造を有さない容器内に加えると、溶媒化合物と添加されるチタン化合物またはリン化合物の種類の選択により界面活性ナ状態となり反応容器内に泡が発生することがある。しかし、このように操作を行うことによって、この2種類目以降の化合物を反応容器内に添加する際に気液界面に強い衝撃を与えることなく、空気等の反応容器内に存在する気体(通常は空気か窒素であろう。)を巻き込むことが少なくなり、気泡の発生を極力抑制することができる。図5では注入配管は1本の場合を示しているが、チタン化合物等毎に、すなわち反応容器内に2本以上、好ましくは3本以上設置されていても良い。またチタン化合物、リン化合物そのものが液体でない場合や、液体であっても粘度の高い場合には、溶媒化合物とおなじ化合物で適正な粘度を有する溶液、分散液とした形態で反応容器内に添加しても良い。またチタン化合物、リン化合物、溶媒化合物の全てが同時に添加される場合には、これらの化合物が接触し、攪拌などにより気体を巻きこむ際に気泡が発生する可能性がある。
【0030】
本発明のポリエステル製造用触媒の製造方法におけるより詳細な反応条件を示す。具体的には、撹拌速度を120rpm以下にし、50〜200℃で5〜180分間反応させることで、粗大粒子が少なく、粒子径分布の標準偏差が小さい触媒を得ることができる。反応温度が50℃未満であると、十分に反応が進行させることができず、ポリエステル製造用触媒を製造することができないことがあり、反応温度が200℃より高いと原料のチタン化合物、リン化合物もしくは一旦得られたポリエステル製造用触媒の熱分解反応、これらの化合物間における副反応、あるいは溶媒を用いている場合には溶媒の熱分解反応、先述の化合物にさらに溶媒を加えた化合物間での副反応が進行する場合があり、目的とするポリエステル製造用触媒を収率よく製造することができなくなることがあり好ましくない。チタン化合物およびリン化合物を反応させポリエステル製造用触媒を製造するに当たり、撹拌が必要である。撹拌速度は5rpm以上120rpm以下が望ましい。120rpmより早くすると、溶液が渦を巻き気泡が生じ易くなる。また、5rpm未満とすると、撹拌が不十分で触媒粒子の粒度制御ができない。攪拌は竪型反応容器に限らず、横型反応容器であっても良い。反応時間も同様である。長いと粗大粒子が形成され易く、短いと目的の反応生成物が得られない。
【0031】
チタン化合物、リン化合物、溶媒化合物との攪拌効率を上げるために、反応容器内に添加されたチタン化合物、リン化合物、または反応して得られるポリエステル製造用触媒の少なくともいずれか1種の化合物と溶媒化合物を含む溶液・分散液を循環させることもできる。具体的には反応容器の底部分からチタン化合物、リン化合物、ポリエステル製造用触媒の少なくとも1種の化合物と溶媒化合物の溶液・分散液等の一部を抜き出し、ポンプなどの動力を用いて循環配管を通して反応容器の側部または上部方向に送り、再び反応容器内の上部または側部から反応容器中に戻すという操作を行うことである。チタン化合物、リン化合物の溶媒化合物への溶液・分散液や、ポリエステル製造用触媒の溶媒化合物等への溶液・分散液が静置状態において、沈降し易いもしくは凝集し易い等の不安点な状態の場合には、このような操作を行うことが好ましい。更により好ましいのはチタン化合物とリン化合物を反応させて得られるポリエステル製造用触媒が溶媒化合物に対して不溶である場合である。この場合不溶とはチタン化合物とリン化合物を反応させる反応温度において双方の重量比率が8:2,5:5,2:8のいずれの比率で混合した場合においても均一な系が得られない場合を言う。この溶液・分散液を循環させる際も、上記のような特段の装置構造を有さない容器内にて循環操作を行うと、溶媒化合物、添加されるチタン化合物もしくはリン化合物または反応して得られるポリエステル製造用触媒の選択により反応容器内に泡が発生することがある。しかし、上記のように循環配管の先端が反応容器内に浸漬している状態で循環操作を行うことによって、この2種類目以降の化合物を反応容器内に添加する際に気液界面に強い衝撃を与えることなく、空気等の反応容器内に存在する気体(通常は空気か窒素であろう。)を巻き込むことが少なくなり、気泡の発生を極力抑制することができる。逆に高所から溶液・分散液を反応容器内の溶液・分散液の気液界面上に落下させると、落下させた際の衝撃で気泡が発生する場合が顕著に見られる。気泡の表面には、触媒が濃縮されたような形になっているため、局所的に反応が進み、粗大な触媒粒子が生成されてしまうものと考える。この循環溶液を通す配管の先端も注入配管の先端(図5中のg)と同じく、その先端が溶液・分散液に浸かっている状態にあることが落下の衝撃を小さくすることができるので、望ましい。
【0032】
(気泡について:作用効果)
チタン化合物、リン化合物または上記操作にて合成されたポリエステル製造用触媒は、疎水性基と親水性基を有することから、溶媒中であたかも界面活性剤のように振舞い、非常に高い発泡性を有すことが多い。一度発生した気泡は、時間が経過しても容易には消滅せず、長期間にわたって残存することも多い。このような界面上では、溶媒中に分散されている状態に比べてチタン化合物、リン化合物またはポリエステル製造用触媒分子が気泡部分に高濃度に集まり、凝縮されたような形になったり、あるいは分子同士が会合構造をとっていると考えられる。その気泡を形成している時には、疎水性基が形成している気泡の気体側に向き、親水性基が形成している気泡の溶媒側に向いた状態をとっているものと思われる。そのようなチタン化合物(またはリン化合物)が高濃度に集まっている場合には、その高濃度に集まっている場所にもう一方の化合物であるリン化合物(またはチタン化合物)が反応することにより、結果としてポリエステル製造用触媒が高濃度に集まることになる。すなわち、結果としてポリエステル製造用触媒も、その気泡を形成している気易界面に比較的高濃度に集まるものと考えられる。そのため双方の場合とも、ポリエステル製造用触媒の粗大粒子が生成されやすいという点において好ましくない。
【0033】
本発明の製造方法においては、ポリエステル製造用触媒の粗大粒子が少ないので、その後にこのポリエステル製造用触媒が用いられるポリエステル製造工程において、ポリエステル中の異物を取り除くために設置されているポリマーフィルターの目詰まりが減り、ポリマーフィルター洗浄、ポリマーフィルター交換をする頻度を減らしてポリエステルを連続的に、且つ安定して製造することができる。すなわち、ポリエステル製造工程の安定した生産性を確保することができるという効果を有している。またポリエステル製造用触媒の粗大粒子が存在するとポリエステル製造工程の初期において、ポリエステル製造用触媒が原料中に均一に分散されにくく反応不良が起こる可能性があり、これもポリエステル製造工程の生産性を低下させる原因となる。上述のような製造方法操作を採用することにより、得られるポリエステル製造用触媒触媒粒子のメディアン径を20μm以下にすること、もしくはポリエステル製造用触媒粒子の標準偏差を0.3以下にすることができる。より好ましい製造条件を採用することによりメディアン径を10μm以下にすること、もしくはポリエステル製造用触媒粒子の標準偏差を0.25以下にすることもできる。
【0034】
また、反応容器内に溶媒と共にいわゆる消泡作用がある化合物を含ませておくことも可能であるが、ポリエステル製造用触媒の反応を阻害したり、得られたポリエステル製造用触媒を用いてポリエステルを製造する際の反応を阻害したり、熱分解反応を起こすなどの不都合が生じる場合があり、好ましくない場合がある。
【0035】
(添加剤について)
必要に応じて他の添加剤、例えば、整色剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、アルカリ金属 または アルカリ土類金属およびその化合物から選ばれる少なくとも1種を使用してもよい。
【0036】
本発明において使用されるアルカリ金属の化合物は、下記に限定されるものではないが、具体的には、塩化カリウム、カリウムミョウバン、ギ酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素カリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、酪酸カリウム、シュウ酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、ステアリン酸カリウム、フタル酸カリウム、フタル酸水素カリウム、メタリン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、亜硝酸カリウム、安息香酸カリウム、酒石酸水素カリウム、重シュウ酸カリウム、重フタル酸カリウム、重酒石酸カリウム、重硫酸カリウム、硝酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、ギ酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、シュウ酸二ナトリウム、シュウ酸水素ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸水素ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酒石酸水素ナトリウム、重シュウ酸ナトリウム、重フタル酸ナトリウム、重酒石酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、ギ酸リチウム、クエン酸三リチウム、クエン酸水素二リチウム、クエン酸二水素リチウム、グルコン酸リチウム、コハク酸リチウム、酪酸リチウム、シュウ酸二リチウム、シュウ酸水素リチウム、ステアリン酸リチウム、フタル酸リチウム、フタル酸水素リチウム、メタリン酸リチウム、リンゴ酸リチウム、リン酸三リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、亜硝酸リチウム、安息香酸リチウム、酒石酸水素リチウム、重シュウ酸リチウム、重フタル酸リチウム、重酒石酸リチウム、重硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、乳酸リチウム、硫酸リチウム又は硫酸水素リチウム等を例示することができる。これらは、単一の種類の化合物を用いても又は複数の種類の化合物を併用してもかまわない。またその中でも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸二カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムカリウム、酢酸リチウム、炭酸二リチウム又は炭酸水素リチウムが好ましく用いることができ、好ましくはリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩を、より好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩を、特に好ましくカリウム塩を用いることである。一方アニオン種側から見ると、これらの中で酢酸塩、炭酸塩 または 水酸化物が好ましい。
【0037】
本発明において使用されるアルカリ土類金属の化合物は、下記に制限されるものではないが、具体的には塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、コハク酸カルシウム、酪酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、酪酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム又は硫酸マグネシウム等を例示することができる。これらは単一の種類の化合物を用いても又は複数の種類の化合物を併用してもかまわない。その中でも、酢酸マグネシウム、又は酢酸カルシウムを用いることが好ましい。好ましくはカルシウム塩又はマグネシウム塩を、より好ましくはカルシウム塩を用いることである。一方アニオン種側から見ると、これらの中で酢酸塩、炭酸塩 または 水酸化物が好ましい。またアルカリ金属塩とアルカリ土類金属塩を併用しても構わない。
【0038】
整色剤については、本発明の製造方法によって得られるポリエステル製造用触媒中には、その全質量を基準として整色剤を、この触媒を用いて製造するポリエステル中に0.1〜10質量ppm配合されるように含有していてもよい。なおその整色剤とは、有機の多芳香族環系染料又は顔料を表し、具体的にはアントラキノン系染料であることが好ましく、青色系整色用色素、紫色系整色用色素、赤色系整色用色素、橙色系整色用色素等が挙げられる。これらは単一種で用いても複数種を併用して用いても良いが、青色系整色用色素と紫色系整色用色素を質量比90:10〜40:60の範囲で併用することが好ましい。ここで青色系整色用色素とは、一般に市販されている整色用色素の中で「Blue」と表記されているものであって、具体的には溶液中の可視光吸収スペクトルにおける最大吸収波長が580〜620nm程度にあるものを示す。同様に紫色系整色用色素とは市販されている整色用色素の中で「Violet」と表記されているものであって、具体的には溶液中の可視光吸収スペクトルにおける最大吸収波長が560〜580nm程度にあるものを示す。これらの整色用色素としては油溶染料が特に好ましく、具体的な例としては、青色系整色用色素には、C.I.Solvent Blue 11、C.I.Solvent Blue 25、C.I.Solvent Blue 35、C.I.Solvent Blue 36、C.I.Solvent Blue 45 (Polysynthren Blue)、C.I.Solvent Blue 55、C.I.Solvent Blue 63、C.I.Solvent Blue 78、C.I.Solvent Blue 83、C.I.Solvent Blue 87、C.I.Solvent Blue 94等が挙げられる。紫色系整色用色素には、C.I.Solvent Violet 8、C.I.Solvent Violet 13、C.I.Solvent Violet 14、C.I.Solvent Violet 21、C.I.Solvent Violet 27、C.I.Solvent Violet 28、C.I.Solvent Violet36等が挙げられる。
【0039】
ここで青色系整色用色素と紫色系整色用色素を併用する場合、質量比90:10より青色系整色用色素の質量比が大きい場合は、本発明のポリエステル製造用触媒を用いて得られるポリエステルのカラーa*値が小さくなって緑色を呈し、40:60より青色整色用色素の質量比が小さい場合は、カラーa*値が大きくなって赤色を呈してくる為好ましくない。該整色用色素は、青色系整色用色素と紫色系整色用色素を質量比80:20〜50:50の範囲で併用することが更に好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによりなんら限定を受けるものでは無い。なお、実施例中の各物性値は以下の方法により求めた。なお実施例、比較例において「部」とは重量部を表す。
【0041】
(分析方法、重合方法)
(平均粒径及び粒度分布測定)
触媒粒子の平均粒径及び粒度分布測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2000(島津製作所)を用いて測定した。平均粒径としては、本実施例・比較例においては厳密にはメディアン径で示すこととした。
【0042】
[比較例1]
(触媒の合成方法)
所定の大きさであり、その先端に攪拌翼を有する1本の攪拌軸、2本の注入配管(反応容器高さHの60%の長さ)、1本の反応容器内液の循環配管(反応容器高さHの50%の長さ)設備を有する撹拌機付き竪型反応容器(高さ/直径=H/D=1.03)中、窒素雰囲気下エチレングリコール100重量部を加えた。この時には反応容器の内部方向を向くように反応容器内に設置されている注入配管のすべての先端はエチレングリコール中には浸っていなかった。更に221.8重量部のエチレングリコールとテトラ−n−ブトキシチタン2.4重量部からなる溶液をゆっくり徐々に添加して透明なチタン化合物のエチレングリコール溶液(以下、TBT触媒と称する)を得た。このときにその後、60rpmの撹拌下で100℃の温度に加熱コントロールした上記撹拌機付き反応容器内に、上記「TBT触媒」中にモノブチルホスフェートを2.2重量部添加し、120分間撹拌保持した。攪拌保持している間に反応容器高さHの80%長さの循環配管用いて、反応容器内の液体の循環を行った。この循環のときに循環配管の先端は常に反応容器液内にある液体に浸っていなかったので、循環を行うに従って反応容器内には大量の気泡が発生した。得られたポリエステル製造用触媒はエチレングリコールに対して不溶であり、数日間静置ことにより容器の底に凝集するものであった。
【0043】
[実施例1、比較例2〜5]
触媒の合成条件について、攪拌機の攪拌速度、反応温度、反応時間を表1のように変えてチタン化合物とリン化合物を反応させてポリエステル製造用触媒を合成した。また実施例1においては、反応容器のH/Dのみならず、2本の注入配管、循環配管として反応容器高さHの90%の長さのものを用いることによって、テトラ−n−ブトキシチタンのエチレングリコール溶液を徐々に添加する時点から液体の循環操作を行う間を通じて、全ての注入配管と、循環配管の先端はエチレングリコール溶液(分散液)に浸っており、気泡の発生はほとんど見られなかった。一方他の比較例2〜5においては、注入配管・循環配管の先端は共に液体に浸ってない状態であり、いずれも比較例1と同様に反応容器内に大量の気泡の発生が認められた。その結果を、表1及び図1〜4に示した。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によりポリエステル製造用チタン触媒において、そのチタン触媒の粒子径のバラツキ(粒度分散)を小さくすることができ、ポリエステル製造工程において、フィルターの目詰まりが減り、フィルター洗浄、フィルター交換をする頻度を減らしてポリエステルを連続的に、且つ安定して製造することができる。
【符号の説明】
【0046】
a 反応容器
b 反応容器の高さH
c 反応容器の直径D
d 攪拌翼が先端に設置されている攪拌軸
e 注入配管
f 反応容器の高さHの5〜99%の長さ
g 反応容器の内部方向に向いている注入配管の先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌装置を備えた反応容器内でチタン化合物とリン化合物を溶媒化合物中で反応させるポリエステル製造用触媒の製造方法であって、
チタン化合物、リン化合物およびポリエステル製造用触媒よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が分子内に疎水性基および親水性基を有する化合物であり、
反応容器の高さHと直径Dの関係が下記式1を満たし、反応容器の高さの5〜99%の長さを有する注入配管または循環配管が、該注入配管または該循環配管の先端が反応容器の内部方向を向くように反応容器内に設置されており、
式1 0.5≦H/D≦2.0
1)チタン化合物、リン化合物および溶媒化合物が注入配管から反応容器内に添加され、当該チタン化合物、リン化合物および溶媒化合物の中で2種以上の化合物が反応容器内へ添加する化合物の反応容器内への添加が開始する時点以降の段階で、該反応容器の内部方向に向いている注入配管の先端が反応容器内の化合物中に浸漬しているか
または
2)チタン化合物、リン化合物および溶媒化合物が反応容器内に添加され、反応容器内に存在するチタン化合物、リン化合物および溶媒化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の化合物が反応容器外から循環配管を通じて反応容器内に加えられる時点以降の段階で、該反応容器の内部方向に向いている循環配管の先端が反応容器内の化合物中に浸漬していることを特徴とするポリエステル製造用触媒の製造方法。
【請求項2】
該溶媒化合物として、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、へキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられることを特徴とする、請求項1に記載のポリエステル製造用触媒の製造方法。
【請求項3】
チタン化合物とリン化合物を反応させて得られるポリエステル製造用触媒が該溶媒化合物に不溶であることを特徴とする、請求項1〜2に記載のポリエステル製造用触媒の製造方法。
【請求項4】
該溶媒化合物として、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコールまたは1,4−ブタンジオールを用いることを特徴とする、請求項2〜3のいずれかに記載のポリエステル製造用触媒の製造方法。
【請求項5】
撹拌速度が5rpm以上120rpm以下、反応温度が50〜200℃の条件下、5〜180分間チタン化合物とリン化合物を反応させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル製造用触媒の製造方法。
【請求項6】
得られるポリエステル製造用触媒粒子のメディアン径が20μm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル製造用触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−14683(P2013−14683A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148265(P2011−148265)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】