説明

ポリエステル複合加工糸

【課題】 織編物に優れたストレッチ性と良好な品位とを付与できるポリエステル複合加工糸を提供することを課題とする。本発明のポリエステル複合加工糸は、単糸繊度が細いと共に特定の捲縮性能を有するポリエステル潜在捲縮糸を用いて得られているので、混繊性に優れると共に織編物に優れた伸縮特性と良好な品位とを付与することが可能となる。
【解決手段】 単糸繊度が0.8〜1.5dtexで、沸水30分処理後の伸縮伸長率が30〜50%であるポリエステル潜在捲縮糸を用いて複合混繊してなるポリエステル複合加工糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル潜在捲縮糸と他のポリエステル糸とを複合混繊してなるポリエステル複合加工糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、潜在捲縮糸と他糸との複合加工糸が多数提案されている。
【0003】
潜在捲縮糸には、様々なタイプのものがあるが、いずれも製織編後に行う染色加工により捲縮を発現し、ストレッチ性やストレッチバック性などの特性を織編物に付与しうるものである。潜在捲縮糸の中でも特に溶融粘度の異なる2つのポリマーをサイドバイサイド型に張り合わせたタイプのものが、捲縮発現が容易である観点から最も多く用いられている。
【0004】
潜在捲縮糸は、生糸状態においてフィラメント同士が収束しながらコイル状の顕在捲縮を発現しているが、この顕在捲縮は、加工糸を得る過程においても依然として発現し続ける。複合加工糸は、一般にインターレースノズルやタスランノズルなどの混繊ノズルに複数の糸を同時に供給することで得ることができ、加工糸の混繊性を高める観点から、オーバーフィード状態で各糸を供給するのが一般的である。しかしながら、供給糸として潜在捲縮糸を用いると、オーバーフィード状態であっても顕在捲縮が発現し、その結果、混繊性を十分に高めることができず、交絡間距離が著しく離れる、所謂交絡飛びが発生する。交絡飛びを有する複合加工糸を使用すると、織編物上に部分的な筋状欠点や柄流れといった品位上の欠点が生じる。
【0005】
潜在捲縮糸における開繊性を高める手段の一例として、単糸繊度を細くする手段があげられ、特許文献1には、単糸繊度が1.5dtex以下の潜在捲縮糸が開示されている。
【特許文献1】特開2006−57196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単純に単糸繊度を細くしただけでは、織編物におけるストレッチ性やストレッチバック性などの伸縮特性が低減するという問題が発生する。
【0007】
これを解決するには、潜在捲縮糸の捲縮性能を一層高めればよく、一例として、フィラメントを構成するポリマー間の極限粘度差を大きくする手段があげられる。しかしながら、ポリマー間の極限粘度差を大きくすると、溶融紡糸時の吐出糸条の屈曲が大きくなり、糸条が紡糸口金に付着して切断が生じ、安定した紡糸ができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消するものであり、織編物に優れたストレッチ性と良好な品位とを付与できるポリエステル複合加工糸を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)単糸繊度が0.8〜1.5dtexで、沸水30分処理後の伸縮伸長率が30〜50%であるポリエステル潜在捲縮糸を用いて複合混繊してなることを特徴とするポリエステル複合加工糸。
【0010】
(2)前記ポリエステル潜在捲縮糸が、下記(a)〜(c)の3成分のうち少なくとも1種を(a)〜(c)の合計が5〜15モル%となる割合で含有するポリエチレンテレフタレートよりなる高溶融粘度ポリエステル成分と、ポリエチレンテレフタレートよりなる低溶融粘度ポリエステル成分とが互いにサイドバイサイド型に貼り合わされた形状を呈し、かつ下記(1)の条件を満足するポリエステル複合繊維からなるマルチフィラメント糸であることを特徴とする上記(1)記載のポリエステル複合加工糸。
(a)2,2−ビス{4−(Β−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン
(b)スルホン酸塩基化合物
(c)イソフタル酸
(1)0.05≦〔Η〕A−〔Η〕B≦0.30
ただし、〔Η〕Aは高溶融粘度ポリエステル成分の極限粘度、〔Η〕Bは低溶融粘度ポリエステル成分の極限粘度である。
【0011】
(3)交絡間距離のバラツキが150%以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のポリエステル複合加工糸。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリエステル複合加工糸は、単糸繊度が細いと共に特定の捲縮性能を有するポリエステル潜在捲縮糸を用いて得られているので、混繊性に優れると共に織編物に優れた伸縮特性と良好な品位とを付与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のポリエステル複合加工糸には、ポリエステル潜在捲縮糸が用いられる。
【0015】
本発明に用いる潜在捲縮糸の単糸繊度としては、0.8dtex〜1.5dtexとする。単糸繊度が1.5dtexを超えると、混繊時に単糸同士の絡み付きが低下し、交絡不良を引き起こす。一方、単糸繊度が0.8dtex未満では、織編物におけるストレッチ性やストレッチバック性などの伸縮特性が低減する。
【0016】
また、本発明に用いる潜在捲縮糸の沸水30分処理後の伸縮伸長率としては、30〜50%の範囲内にあることが必要である。30%未満では捲縮性能が不十分であり、織編物において十分なふくらみ感とストレッチ性とを具現することができない。一方、50%を超えると、織編物の表面に楊柳調のシボが発現して品位が低下する。ここで、沸水30分処理後の伸縮伸長率とは、次の方法により測定して得られる値をいう。
【0017】
(沸水30分処理後の伸縮伸長率の測定方法)
サンプリング後の試料に湿熱処理を加え、JIS L1013 8.11 B法に準じて測定する。すなわち、まず、JIS L1013 8.11 B法に準じて棒に掛けて輪にしたものを5個用意し、それぞれに8.82mN×表示テックス数×2の荷重を掛ける。次に、この5個の試料をひとまとめにして、約50cmの間隔を置いて上下を綿糸でしっかり結んだ後、直ちに荷重を取り除く。そして、試料を巻き取ったりせずにフリーな状態のまま標準状態(温度20℃、湿度65%RH)で24時間放置する。次いで同じくフリーな状態のまま沸水中に30分間保持するという処理を行い、24時間風乾する。その後、JIS L1013 8.11 B法記載のa、bを測定し、次式で伸縮伸長率を算出する。
【0018】
【数1】

【0019】
ただし、aは0.176mN×表示テックス数×10の荷重を掛けて30秒後の試料長(cm)であり、bは8.82mN×表示テックス数×10の荷重を掛けて30秒後の試料長(cm)である。
【0020】
本発明における潜在捲縮糸としては、上記の特性を満足するものでありさえすればよく、それ以外の形態等の点で特に限定されるものではない。ただし、本発明に用いる潜在捲縮糸の熱水収縮率としては、3〜8%の範囲内にあることが好ましく、5〜7%が特に好ましい。また、乾熱収縮率としては、4〜10%の範囲内にあることが好ましい。熱水収縮率が3%未満であったり、乾熱収縮率が4%未満であったりすると、織編物の染色加工時におけるリラックス工程で十分な幅入れができず、その結果として織編物のストレッチ性が低下する傾向にある。一方、熱水収縮率が8%を超えたり、乾熱収縮率が10%を超えたりすると、織編物の表面に楊柳調のシボが発現して品位が低下する傾向にある。
【0021】
また、本発明における潜在捲縮糸の形状としては、溶融粘度の異なる2種類のポリエステル成分が互いにサイドバイサイド型に貼り合わされた形状、又は芯成分と鞘成分に偏心配置された形状を呈するものが好ましく、捲縮特性の調整が比較的容易に行えることからサイドバイサイド型が特に好ましい。
【0022】
そこで本発明における潜在捲縮糸として特に好ましい、溶融粘度の異なる2種類のポリエステル成分が互いにサイドバイサイド型に貼りあわされた形状を呈するものについて次に説明する。
【0023】
溶融粘度が相対的に高い方の成分、すなわち高溶融粘度ポリエステル成分としては、下記(a)〜(c)の3成分のうち少なくとも1種を含有するポリエチレンテレフタレートが好ましい。
(a)2,2−ビス{4−(Β−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン
(b)スルホン酸塩基化合物
(c)イソフタル酸
【0024】
上記(a)〜(c)の3成分のうち少なくとも一種を含有することで、高溶融粘度ポリエステル成分は、熱収縮率が高くなり、低溶融粘度ポリエステル成分との熱収縮率差を大きくすることができ、その結果、繊維全体の潜在捲縮性能を高めることが可能となる。つまり、高溶融粘度ポリエステル成分と低溶融粘度ポリエステル繊維との極限粘度差をあまり大きくしなくても潜在捲縮率を高めることができるので、単糸繊度の小さい繊維であっても紡糸直後の糸条の屈曲が小さく、操業性よく生産することが可能となる。
【0025】
なお、本発明でいうポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)とは、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリマーの総称であり、エチレンテレフタレート以外の成分が共重合等により含有されているものを除外しないことはいうまでもない。
【0026】
PETに上記(a)〜(c)の成分が含有される態様としては、共重合されていることが好ましいが、ブレンドによるものであってもよい。含有量としては、(a)〜(c)の3成分の合計で5〜15モル%となる割合で含有されることが好ましく、6〜12モル%となる割合で含有されることがより好ましい。当該含有量が5モル%未満では、十分な潜在捲縮性能が得られない傾向にあり、一方、15モル%を超えると、紡糸性が阻害されたり、繊維強度が損なわれたりする傾向にあるので好ましくない。
【0027】
上記3成分の中でも、(a)の2,2−ビス{4−(Β−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンは、熱収縮性を向上させる効果が大きいため好ましい。すなわち、(a)〜(c)の3成分の少なくとも一種が含有されることが好ましいのであるが、少なくとも(a)が含有されることがより好ましく、(a)に加えて(b)及び/又は(c)が含有されることが特に好ましい。
【0028】
(a)の2,2−ビス{4−(Β−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンの含有量としては、2モル%以上が好ましく、4モル%以上がより好ましい。
【0029】
(b)のスルホン酸塩基化合物としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が特に好ましい。(b)のスルホン酸塩基化合物を含有させる場合、その含有量としては、1モル%以上が好ましい。
【0030】
また、(c)のイソフタル酸を含有させる場合、その含有量としては、2モル%以上が好ましい。
【0031】
一方、溶融粘度が相対的に低い方の成分、すなわち低高溶融粘度ポリエステル成分としては、PETが好ましく、特に、95モル%以上がエチレンテレフタレート成分で構成されているPETが好ましい。低溶融粘度ポリエステル成分としては、高溶融粘度ポリエステル成分より熱収縮性が低くなるようにする必要があるため、結晶性を大きく阻害する成分の含有されたものは好ましくない。同様に、上記高溶融粘度ポリエステル成分に含有される(a)〜(c)の成分は、低溶融粘度ポリエステル成分には含有されないことが好ましい。
【0032】
なお、上記した高溶融粘度ポリエステル成分、低溶融粘度ポリエステル成分のいずれにおいても、目的とする特性を損なわない限りは、他の成分、あるいは、艶消剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、難燃剤、抗菌剤、導電性付与剤等の各種添加剤が含有されていてもよい。
【0033】
また、上記した高溶融粘度ポリエステル成分の極限粘度(〔Η〕A)と低溶融粘度ポリエステル成分の極限粘度(〔Η〕B)の差としては、0.05〜0.28が好ましく、0.05〜0.15がより好ましい。〔Η〕Aと〔Η〕Bとの差が0.05未満の場合には、潜在捲縮糸の捲縮性能の発現が不十分となり、十分なふくらみ感やストレッチ性を有する織編物を得ることが困難となる傾向にある。一方、その差が0.28を超えると、両ポリエステル成分の複合流が紡糸口金から吐出される際、糸条の屈曲が大きくなり、糸条が紡糸口金に付着して切断が生じ、安定して紡糸を行うことが困難となる傾向にある。また、複合加工糸の混繊性を低下させる傾向もある。極限粘度の差が0.05〜0.28というのは、あまり大きな差ではない領域を含んでいるが、上記したように高溶融粘度ポリエステル成分には熱収縮率差を大きくすることができる成分が含有されているので、極限粘度の差をあまり大きくしなくても潜在捲縮率の高い複合繊維とすることができ、十分な潜在捲縮性能を有する潜在捲縮糸を得ることができるのである。
【0034】
また、それぞれの極限粘度の値としては、〔Η〕Aは0.45〜0.98、〔Η〕Bは0.40〜0.70であることが好ましい。
【0035】
なお、上記の極限粘度とは、ポリエステルをフェノールとテトラクロロエタンの1:1(質量比)混合溶媒で溶解し、ウベローデ粘度計を使用して、20℃で測定した値である。
【0036】
本発明における潜在捲縮糸は、通常の複合紡糸装置を用いて製造できる。製法の一例としては、まず、紡糸口金の背面で、2つのポリエステル成分をサイドバイサイド型になるように合流させ、同一紡糸孔から吐出し紡糸する。紡糸温度としては、通常、280℃〜310℃の範囲が好ましい。その後、紡出された糸条に冷却風を吹き付けることで冷却固化し、紡糸油剤を付与して一旦引き取り、延伸機で熱延伸するか、あるいは引き取った糸条を紡糸に連続して熱延伸することにより、潜在捲縮糸を得ることができる。
【0037】
本発明のポリエステル複合加工糸は、上記のポリエステル潜在捲縮糸を用いて複合混繊してなるものである。つまり、ポリエステル潜在捲縮糸と、それ以外のポリエステル糸条とを混繊することで得られる複合加工糸である。この場合、上記ポリエステル糸条として、複数の糸条を用いてもよいが、通常は一種類のみ用いることが好ましい。
【0038】
本発明に用いる潜在捲縮糸以外のポリエステル糸条としては、特に限定されるものでなく、複数のフィラメントからなる、所謂ポリエステルマルチフィラメント糸条でありさえすればよい。
【0039】
本発明のポリエステル複合加工糸は、混繊性に優れると共に織編物に優れた伸縮特性と良好な品位とを付与することが可能となる。特に、ポリエステル複合加工糸の交絡間距離のバラツキが150%以下であると織編物の品位上有利である。すなわち、バラツキが150%を超えると、複合加工糸中における潜在捲縮糸とそれ以外のポリエステル糸条との間の光沢、発色性等の相違が顕在化し、織編物上に部分的な筋状欠点や柄流れといった品位上の欠点を発生させることがある。この場合、各糸に含有される添加剤の量に差がある場合や、両糸間の色彩が異なる場合などは、上記の欠点が著しくなる傾向にある。交絡間距離のバラツキは小さいほど好ましい。
【0040】
なお、複合加工糸における交絡間距離のバラツキとは、次の方法により測定して得られる値をいう。
【0041】
(交絡間距離のバラツキの測定方法)
試料に8.82mN×表示テックス数の荷重を掛け、そのままの状態で、連続した100箇所の交絡間の距離を測定し、次式で交絡間距離のバラツキを算出する。
交絡間距離のバラツキ(%)=〔(最大値−最小値)〕/相加平均値〕×100
次に、本発明のポリエステル複合加工糸を得るための製法を例示する。
【0042】
まず、ポリエステル潜在捲縮糸と、この糸以外のポリエステル糸条とを用意する。次いで各糸を同時に混繊ノズルへ導くことにより、本発明のポリエステル複合加工糸を得ることができる。
【0043】
混繊ノズルへ各糸を導入する際は、一般にオーバーフィードを掛けながら行うことが好ましい。オーバーフィード率としては、最終的に得られる複合加工糸の糸姿を考慮して適宜設定すればよく、各糸条のオーバーフィード率は、互いに同じであっても異なっていてもよい。さらに、混繊ノズルの圧力も、交絡の強弱を考慮して適宜設定すればよい。
【0044】
また、混繊ノズルの種類としては、特に限定されるものではないが、通常インターレースノズルを用いる。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0046】
(実施例1)
PETに2,2−ビス{4−(Β−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン(BP−A/EOと略記する)を4.5モル%、イソフタル酸(IPAと略記する)を4.0モル%共重合したものであって、極限粘度が0.73のポリエステルを高溶融粘度ポリエステル成分とした。また、極限粘度が0.61のPETを低溶融粘度ポリエステル成分とした。
【0047】
上記の高溶融粘度ポリエステル成分と低溶融粘度ポリエステル成分とを、複合紡糸型溶融押出機に等量供給し、紡糸温度295℃で溶融し、紡糸孔を48個有する紡糸口金の背面で両成分を合流させ、サイドバイサイド型に接合して紡出した。紡出した糸条を冷却固化した後、油剤を付与しながら糸条を集束し、表面速度が3000m/分の引取ローラを介して捲取機で捲取った。次いで、得られた繊維を延伸機に供給し、表面温度85℃のローラと170℃のホットプレートを介して延伸倍率1.6倍で延伸して、56dtex48f(単糸繊度1.2dtex)のポリエステル潜在捲縮糸を得た。この潜在捲縮糸の特性を表1に示す。
【0048】
一方、極限粘度0.61のPETを用い、紡糸速度3000m/分により60dtex144fのポリエステル糸条を得た。
次に、上記で得られた2糸条にそれぞれ3.5%のオーバーフィードを掛けながら、インターレース圧が4.5kg/cmに設定されたインターレースノズルへ2糸条を同時に糸速600m/分で導入して、本発明のポリエステル複合加工糸を得た。
【0049】
次に、ダブルツイスターを使用して、得られたポリエステル複合加工糸をS方向に650T/M加撚し、80℃で30分間撚り止めセットして加撚糸条を得た。
【0050】
緯糸としてこの加撚糸条を用い、経糸としてポリエステル非捲縮糸44dtex24fを無撚りで用いて、経糸密度220本/2.54cm、緯糸密度120本/2.54cmのサテン織物を製織した。このサテン織物を液流染色機にて苛性ソーダ1g/L、界面活性剤1g/Lを併用した水溶液を用いて100℃×20分の条件で精練し、130℃×20分の条件でリラックス処理した後、乾燥した。その後、180℃×20秒の条件で中間セットし、次いで液流染色機で下記処方にて130℃×30分間染色加工し、乾燥後、170℃×20秒間仕上げセットすることにより、織物を得た。
【0051】
〈処方〉
・分散染料(ダイスタージャパン株式会社製、「Dianix Blue AC−E(商品名)」) 1%omf
・分散均染剤(明成化学工業株式会社製、「ディスパーGS−57(商品名)」) 0.5g/L
・酢酸(48%) 0.2cc/L
【0052】
(実施例2)
紡糸口金を交換してフィラメント数を70とし、単糸繊度を0.8dtexに変更したこと以外、実施例1と同様にして行い、織物を得た。
【0053】
(比較例1及び2)
紡糸口金を交換してフィラメント数を80及び28とし、単糸繊度をそれぞれ0.7dtex及び2.0dtexに変更したこと以外、実施例1と同様にして行い、織物を得た。
【0054】
(実施例3)
ポリエステル潜在捲縮糸における低溶融粘度ポリエステル成分であるPETの極限粘度を0.68に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行い、織物を得た。
【0055】
(比較例3)
ポリエステル潜在捲縮糸における低溶融粘度ポリエステル成分であるPETの極限粘度を0.44に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行い、織物を得た。
【0056】
(実施例4)
ポリエステル潜在捲縮糸における高溶融粘度ポリエステル成分として、PETにBP−A/EOを4.0モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(SIPと略記する)を2.0モル%共重合したものであって、極限粘度が0.70のポリエステルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして行い、織物を得た。
【0057】
(比較例4)
ポリエステル潜在捲縮糸を製造する際の延伸時のホットプレート温度を195℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行い、織物を得た。
【0058】
上記の実施例及び比較例における、ポリエステル潜在捲縮糸及びポリエステル複合加工糸の物性評価を下記表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
この他、実施例及び比較例で得られた織物のストレッチ性及び品位を、官能試験によって評価した。
【0061】
その結果、実施例で得られた織物は、いずれもストレッチ性及び品位の点で優れていた。
【0062】
一方、比較例1、4の織物は、品位は良好であるものの潜在捲縮糸の伸縮伸長率が低いためストレッチ性に乏しく、さらにソフト感が乏しく風合いの点でも劣る結果となった。また、比較例2、3の織物は、潜在捲縮糸の伸縮伸長率が高いため、ストレッチ性は良好である反面、織物表面に楊柳調のシボが発現した。また、両織物においては、複合加工糸の混繊性が乏しいために交絡状態にばらつきがあった。このため、織物表面に筋状欠点や柄流れなどの品位上の欠点も認められた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸繊度が0.8〜1.5dtexで、沸水30分処理後の伸縮伸長率が30〜50%であるポリエステル潜在捲縮糸を用いて複合混繊してなることを特徴とするポリエステル複合加工糸。
【請求項2】
前記ポリエステル潜在捲縮糸が、下記(a)〜(c)の3成分のうち少なくとも1種を(a)〜(c)の合計が5〜15モル%となる割合で含有するポリエチレンテレフタレートよりなる高溶融粘度ポリエステル成分と、ポリエチレンテレフタレートよりなる低溶融粘度ポリエステル成分とが互いにサイドバイサイド型に貼り合わされた形状を呈し、かつ下記(1)の条件を満足するポリエステル複合繊維からなるマルチフィラメント糸であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル複合加工糸。
(a)2,2−ビス{4−(Β−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン
(b)スルホン酸塩基化合物
(c)イソフタル酸
(1)0.05≦〔Η〕A−〔Η〕B≦0.30
ただし、〔Η〕Aは高溶融粘度ポリエステル成分の極限粘度、〔Η〕Bは低溶融粘度ポリエステル成分の極限粘度である。
【請求項3】
交絡間距離のバラツキが150%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリエステル複合加工糸。


【公開番号】特開2008−50717(P2008−50717A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227887(P2006−227887)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】