説明

ポリエステル重合体、樹脂組成物、成形体、及びフィルム

【課題】耐熱性に優れるポリエステル重合体、及び該ポリエステル重合体を含む樹脂組成物、成形体、及びフィルムをを提供する。
【解決手段】下記式(C)で表される部分構造を含むジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位と、環構造を含むジオール化合物由来の繰り返し単位と、を含み、前記式(C)で表される部分構造が主鎖の一部を構成するポリエステル重合体、並びに該ポリエステル重合体と難燃剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含む樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル重合体、樹脂組成物、成形体、及びフィルムに関する。
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、資源の脱石油化が検討され、様々な天然資源が注目されている。プラスチックの分野でも脱石油化が図られ、グルコースの発酵により得られる乳酸を原料としたポリ乳酸が包装材料等に広く用いられている。
【0003】
ポリ乳酸は透明性に優れるが、耐熱性が低いため、射出成形等による成形品への適用は高温に曝されない限定的用途に留まっている。
【0004】
ところで、天然物(好ましくは植物)由来の成分として、松脂等から採取できるロジンがある。このロジンは種々のカルボン酸から構成されるが、そのカルボン酸のうちアビエチン酸を高分子材料に利用することが知られている。例えば、アビエチン酸をフェノール樹脂又はエポキシ樹脂の末端部に修飾することにより、ロジン変性フェノール樹脂及びロジン変性エポキシ酸樹脂として塗料等の結合剤とすることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、アビエチン酸を多価アルコールと重合させた重合体も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−274150号公報
【特許文献2】特開平6−33395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂は、フェノール樹脂又はエポキシ樹脂を主骨格としているため、石油依存の原料であり、地球環境保護の観点に至っていない。また、特許文献2に記載の重合体は、不規則に重合しゲル化してしまうため、高い分子量の線状重合体とはならない。従って、このような重合体は、成形体等の工業的な用途に利用することは困難であった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、植物由来の化合物に由来する主骨格を有し、耐熱性に優れるポリエステル重合体を提供することを課題とする。また該ポリエステル重合体を含む樹脂組成物、成形体、及びフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 下記式(C)で表される部分構造を含むジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位と、環構造を含むジオール化合物由来の繰り返し単位と、を含み、前記式(C)で表される部分構造が主鎖の一部を構成するポリエステル重合体。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。n、及びmは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表す。Cyはヘテロ原子を含んでもよい不飽和の6員環又は7員環を表す。*、**は結合手を表す。*はRから延びる結合手であってもよい。)
【0011】
<2> 前記ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位は、下記一般式(A10)で表される繰り返し単位及び下記一般式(A20)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記<1>に記載のポリエステル重合体。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。Lは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。R、R、n、m、およびCyは、式(C)におけるR、R、n、m、およびCyとそれぞれ同義である。)
【0014】
<3> 前記ジオール化合物由来の繰り返し単位は芳香環基を含む、前記<1>又は<2>に記載のポリエステル重合体。
【0015】
<4> 前記ジオール化合物由来の繰り返し単位が下記一般式(B2)で表される繰り返し単位である、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のポリエステル重合体。
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、Lは、酸素原子、カルボニル基、スルホニル基、及びアルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表し、Lが複数存在する場合、それぞれのLは同じでも異なっていてもよい。R及びRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。またR及びRが複数存在する場合、それぞれのR及びRは同じでも異なっていてもよい。n1及びn2はそれぞれ独立して0〜4の整数を表し、n3は0〜2の整数を表す)
【0018】
<5> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のポリエステル重合体と、難燃剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含む樹脂組成物。
【0019】
<6> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のポリエステル重合体を含む成形体。
<7> 難燃剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含む前記<6>に記載の成形体。
<8> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のポリエステル重合体を含む樹脂層を有するフィルム。
<9> 難燃剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含む前記樹脂層を有する前記<8>に記載のフィルム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、植物由来の化合物に由来する主骨格を有し、耐熱性に優れるポリエステル重合体を提供することができる。また該ポリエステル重合体を含む樹脂組成物、成形体、及びフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例にかかるジカルボン酸化合物のH−NMRスペクトルの一例を示す図である。
【図2】本実施例にかかるポリエステル重合体のH−NMRスペクトルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示すものとする。
【0023】
<ポリエステル重合体>
本発明のポリエステル重合体(以下、「デヒドロアビエチン酸系重合体」ともいう)は、下記式(C)で表される部分構造を含むジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種と、環構造を含むジオール化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種と、を含み、下記式(C)で表される部分構造が主鎖の一部を構成してなることを特徴とする。また前記ポリエステル重合体は必要に応じて、式(C)で表される部分構造を含まないジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位や、環構造を含まないジオール化合物由来の繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
式(C)で表される部分構造を主鎖の一部として含み、さらに環構造を有することで、耐熱性に優れるポリエステル重合体を構成することができる。さら前記ポリエステル重合体は、透明性が高く、また低密度に構成することができる。これは例えば、式(C)で表される部分構造に加えて環構造を有することにより、分子間の結合力が大きくなるためと考えることができる。
【0024】
前記ポリエステル重合体は、高い耐熱性を示す。また、前記ポリエステル重合体が有する式(C)で表される部分構造は、バイオマス資源として入手可能な松脂由来のロジン等から得ることができるデヒドロアビエチン酸(下記式(A))から誘導できる。
従って、前記デヒドロアビエチン酸系重合体は、ポリ乳酸等の従来のバイオマスポリマーよりも耐熱性の点で優位な、新規なバイオマスポリマーとして提供することができる。さらに前記デヒドロアビエチン酸系重合体は、高耐熱性を有する特性を生かした用途に利用でき、例えば、シート、フィルム、繊維、成形材料、等の様々な形態で種々の用途に利用できる。
【0025】
【化4】

【0026】
以下、ポリエステル重合体について詳細に説明する。ポリエステル重合体は、下記式(C)で表される部分構造を有するジカルボン酸化合物と、環構造を有するジオール化合物とを原料モノマーとして使用し、これを重合させて得られる共重合体であり、その分子構造中に下記式(C)で表される骨格(以下、「デヒドロアビエチン酸系骨格」と称する。)を含む繰り返し単位を、デヒドロアビエチン酸系骨格が主鎖の一部を構成するように有してなる。
【0027】
【化5】

【0028】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。n、mはそれぞれ独立に、0〜2の整数(好ましくは0、又は1であり、さらに好ましくは1である。)を表す。Cyはヘテロ原子を含んでもよい不飽和の6員環又は7員環を表す。*、**は結合手を表す。*はRから延びる結合手であってもよい。)
【0029】
及びRが表す炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、ヘキシル基などが挙げられ、炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましい。特に好ましいアルキル基としては、メチル基、(イソ)プロピル基である。
【0030】
Cyが表すヘテロ原子を含んでもよい不飽和の6員環の例としてはシクロヘキセン、シクロヘキセノンであり、不飽和の7員環の例としては、シクロヘプテン、シクロヘプテノン、などが挙げられる。
また、Cyの環が含むヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、リン原子が好ましい。これらのうちで好ましいものは、窒素原子である。
Cyとしては、好ましくはシクロヘキセンである。
【0031】
また、式(C)で表される骨格としては、下記式(D)で表される骨格が好ましい態様である。
式(D)において、*、**は結合手を表す。
【0032】
【化6】

【0033】
前記デヒドロアビエチン酸系骨格として、下記構造が好ましい構造として挙げられる。
【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
上記した骨格のうち、好ましくは(D−1)、および(D−3)であり、より好ましくは(D−1)である。
【0038】
「デヒドロアビエチン酸系骨格」はさらに置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基の例としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基などが挙げられる。
これらのうちで好ましいものは、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、クロロ原子、ヨウ素原子である。
【0039】
前記ポリエステル重合体は、前記デヒドロアビエチン酸系骨格である上記式(C)で表される部分構造を主鎖の一部を構成するように含んでいれば、デヒドロアビエチン酸系骨格を含むジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の構成及び結合態様は特に限定されるものではない。
【0040】
前記ポリエステル重合体の重量平均分子量は限定的でないが、好ましくは5000〜700000、より好ましくは10000〜500000である。重量平均分子量がこの範囲であることにより、ポリエステル重合体は、耐熱性、成形性等に優れ、工業的利用の点で良好となる。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフェィー(GPC)による分子量測定(ポリスチレン換算)で得られた値である。
【0041】
前記ポリエステル重合体のガラス転移温度(Tg)は限定的でないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは150〜400℃、更に好ましくは150〜350℃である。ガラス転移温度がこの範囲であることにより、ポリエステル重合体は、耐熱性、成形性等に優れ、工業的利用の点で良好となる。
なお、前記ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、30〜400℃の温度範囲について、窒素気流下に昇温速度10℃/min.の条件で観察される吸熱ピークとして測定される。
【0042】
前記ポリエステル重合体の密度は限定的でないが、好ましくは1.25g/cm以下、より好ましくは0.90g/cm〜1.25g/cm、更に好ましくは1.00g/cm〜1.20g/cmである。密度がこの範囲であることにより、ポリエステル重合体は、耐熱性、成形性等に優れ、工業的利用の点で良好となる。
なお、ポリエステル重合体の密度は、精密比重計を用いて通常の条件により測定される。
【0043】
本発明のポリエステル重合体は、成形性を有しながらも、耐熱性に優れている。これは、デヒドロアビエチン酸系骨格が有する化学構造的に安定した3環状部分(式(C)における3環状部分)が、主骨格として二次元的に連結していくためであると推察される。
【0044】
既述のごとく、バイオマス資源を用いて得られる従来のバイオマスポリマーは、通常、耐熱性に劣るという問題があるが、本発明のポリエステル重合体は、バイオマス資源に由来する原料物資を用いることができるにも拘らず、上記のごとく優れた耐熱性を示す。
【0045】
前記ポリエステル重合体には、デヒドロアビエチン酸系骨格を含む繰返し単位を有するものに対して、更に化学処理等を施したポリエステル重合体の誘導体も含む。
【0046】
[ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位]
本発明のポリエステル重合体を構成するジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位は、デヒドロアビエチン酸系骨格を、ポリエステル重合体の主鎖の一部を構成するように含んでいれば、その構造は特に限定されない。中でもジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位は、耐熱性の観点から、下記一般式(A10)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(A20)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0047】
【化10】

【0048】
(式中、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。Lは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。R、R、n、m、およびCyは、式(C)におけるR、R、n、m、およびCyとそれぞれ同義である。)
【0049】
一般式(A10)中、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。前記アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖又は分岐鎖の鎖状であっても、環状であってもよい。
は、耐熱性の観点から、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルケニレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合であることが好ましく、炭素数2〜4の鎖状のアルキレン基、炭素数5〜6の環状のアルキレン基、炭素数2〜4の鎖状のアルケニレン基、炭素数5〜6の環状のアルケニレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は単結合であることがより好ましい。
【0050】
で表される連結基を構成するアルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は可能な場合には置換基を有していてもよい。アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基における置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
【0051】
で表される連結基の具体例として、以下の連結基を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。以下の具体例中、*はデヒドロアビエチン酸系骨格への結合位置を示し、**はカルボニル基への結合位置を示す。
【0052】
【化11】

【0053】
一般式(A10)におけるLとしては、耐熱性の観点から、単結合、(L1−ex−4)、(L1−ex−10)又は(L1−ex−12)であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0054】
のデヒドロアビエチン酸系骨格への結合位置は、イソプロピル基を13位とした場合に、11位、12位、及び14位のいずれであってもよいが、12位又は14位であることが好ましく、12位であることがより好ましい。
【0055】
前記ポリエステル重合体の好適な態様の一つは、2つのデヒドロアビエチン酸系骨格が直接又は連結基を介して結合してなる二量体構造を、主鎖の一部として繰り返し単位中に含むものである。この二量体構造を含む繰り返し単位は、例えば、上記一般式(A2)で表される。
【0056】
一般式(A20)中、Lは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。前記アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖又は分岐鎖の鎖状であっても、環状であってもよい。
【0057】
で表される連結基は、耐熱性の観点から、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルケニレン基、及び炭素数6〜18のアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種から構成されることが好ましく、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、炭素数2〜4の鎖状のアルキレン基、炭素数5〜6の環状のアルキレン基、炭素数2〜4の鎖状のアルケニレン基、炭素数5〜6の環状のアルケニレン基、及び炭素数6〜8のアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は単結合であることがより好ましい。
【0058】
で表される連結基を構成するアルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は可能な場合には置換基を有していてもよい。アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基における置換基としては、前記Lにおける置換基と同様のものを挙げることができる。
で表される連結基の具体例として、以下の連結基を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0059】
【化12】

【0060】
としては、耐熱性の観点から、(L2−ex−2)、(L2−ex−5)、(L2−ex−9)又は(L2−ex−11)であることが好ましく、(L2−ex−2)であることがより好ましい。
【0061】
の2つのデヒドロアビエチン酸系骨格への結合位置はそれぞれ独立に、イソプロピル基を13位とした場合に、11位、12位、及び14位のいずれであってもよいが、12位又は14位であることが好ましく、12位であることがより好ましい。
【0062】
上記のように、ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位は、一般式(A10)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(A20)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種であることが好ましいが、下記一般式(A1)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(A2)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましく、更に耐熱性が良好となる。
【0063】
【化13】

【0064】
一般式(A1)、一般式(A2)中、L、Lは一般式(A10)、及び(A20)におけるL、Lとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0065】
前記ポリエステル重合体を構成するジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位中における、一般式(A10)で表される繰り返し単位及び一般式(A20)で表される繰り返し単位の総含有率は特に制限されないが、ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の総量を50モル%とした場合、耐熱性と密度の観点から、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることが更に好ましい。
【0066】
前記ポリエステル重合体は、デヒドロアビエチン酸系骨格を含むジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含むものであるが、必要に応じて、デヒドロアビエチン酸系骨格を含まないその他のジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含んでいてもよい。
その他のジカルボン酸化合物としては、ポリエステル重合体を構成するのに通常用いられるジカルボン酸化合物を特に制限なく用いることができ、例えば、合成高分子V(朝倉書店)P.63〜91等に記載のジカルボン酸化合物を用いることができる。
【0067】
その他のジカルボン酸化合物としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類や、シクロへキサンジカルボン酸、ジシクロへキサンジカルボン酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類が挙げられる。
前記ポリエステル重合体におけるその他のジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の含有率は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されない。例えば、その他のジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の含有率は、前記ポリエステル重合体を構成するジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位中に、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。
【0068】
[ジオール化合物由来の繰り返し単位]
本発明のポリエステル重合体は、環構造を有するジオール化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含む。前記ジオール化合物に含まれる環構造は、ポリエステル重合体の側鎖部分に含まれていても、主鎖の一部を構成するように含まれていてもよいが、耐熱性の観点から、ジオール化合物に含まれる環構造が主鎖の一部を構成していることが好ましい。これによりさらに耐熱性が向上する。
【0069】
前記ジオール化合物に含まれる環構造は、脂肪族環であっても、芳香族環であってもよく、また炭化水素環であってもヘテロ環であってもよい。さらに脂肪族環は不飽和結合を含むものであってもよい。
またジオール化合物に含まれる環の数は特に制限されないが、例えば1〜5とすることができ、耐熱性の観点から、1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。ジオール化合物が2以上の環構造を含む場合、2以上の単環が共有結合又は連結基で連結した構造であっても、縮環構造であってもよい。
【0070】
前記環構造を有するジオール化合物由来の繰り返し単位の具体例としては、例えば、シクロへキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゼン、及び4−ヒドロキシエチルフェノール等に由来する繰り返し単位や、下記一般式(B2)で表されるジオール化合物由来の繰り返し単位を挙げることができる。
前記環構造を有するジオール化合物由来の繰り返し単位は、耐熱性の観点から、下記一般式(B2)で表されるジオール化合物由来の繰り返し単位であることが好ましい。
【0071】
【化14】

【0072】
一般式(B2)中、Lは、酸素原子、カルボニル基、スルホニル基、及びアルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。Lが複数存在する場合、それぞれのLは同じでも異なっていてもよい。
及びRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。またR及びRが複数存在する場合、それぞれのR及びRは同じでも異なっていてもよい。
n1及びn2はそれぞれ独立して0〜4までの整数を表し、n3は0〜2までの整数を表す。
【0073】
における2価の連結基を構成するアルキレン基は、直鎖や分岐鎖の鎖状アルキレン基であっても、環状アルキレン基であってもよい。またアルキレン基の炭素数は、耐熱性の観点から、1〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。尚、ここでいうアルキレン基の炭素数には、後述する置換基の炭素数を含まないものとする。
さらにアルキレン基は、炭素数1〜6の鎖状又は環状アルキル基、炭素数6〜18のアリール基等の置換基を有していてもよい。アルキレン基における置換基の数は2以上であってもよく、アルキレン基が2以上の置換基を有する場合、2以上の置換基は同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。
【0074】
及びRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を表すが、耐熱性の観点から、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜8のアルキル基、及び炭素数1〜8のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基であることが好ましい。
【0075】
n1及びn2は0〜4の整数を表わすが、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
n3は0〜2の整数を表わすが、0又は1であることが好ましい。
【0076】
以下に一般式(B2)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0077】
【化15】

【0078】
一般式(B2)で表される繰り返し単位としては、耐熱性の観点から、上記(B2−ex−1)、(B2−ex−2)、(B2−ex−3)、(B2−ex−4)、(B2−ex−5)、(B2−ex−6)又は(B2−ex−11)であることが好ましく、上記(B2−ex−1)、(B2−ex−2)又は(B2−ex−3)であることがより好ましい。
【0079】
前記ポリエステル重合体を構成するジオール化合物由来の繰り返し単位中における、一般式(B2)で表される繰り返し単位の含有率は特に制限されないが、ジオール化合物由来の繰り返し単位の総量を50モル%とした場合、耐熱性と密度の観点から、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることが更に好ましい。
【0080】
前記ポリエステル重合体は、環構造を含むジオール化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含むものであるが、必要に応じて、環構造を含まないその他のジオール化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含んでいてもよい。
その他のジオール化合物としては、ポリエステル重合体を構成するのに通常用いられるジオール化合物を特に制限なく用いることができ、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等といったジオール化合物が挙げられる。
前記ポリエステル重合体におけるその他のジオール化合物由来の繰り返し単位の含有率は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されない。例えば、その他のジオール化合物由来の繰り返し単位の含有率は、前記ポリエステル重合体を構成するジオール化合物由来の繰り返し単位中に、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。
【0081】
本発明のポリエステル重合体は、耐熱性の観点から、ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位として、一般式(A1)で表され、Lが単結合、化学式(L1−ex−4)、(L1−ex−10)又は(L1−ex−12)であるジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位、及び、一般式(A2)で表され、Lが化学式(L2−ex−2)、(L2−ex−5)、(L2−ex−9)又は(L2−ex−11)であるジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種と、ジオール化合物由来の繰り返し単位として、化学式(B2−ex−1)、(B2−ex−2)、(B2−ex−3)、(B2−ex−4)、(B2−ex−5)、(B2−ex−6)又は(B2−ex−11)で表されるジオール化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0082】
より好ましくは、ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位として、一般式(A1)で表され、Lが単結合であるジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位、及び、一般式(A2)で表され、Lが(L2−ex−2)であるジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種と、ジオール化合物由来の繰り返し単位として、化学式(B2−ex−1)、(B2−ex−2)、(B2−ex−3)又は(B2−ex−4)で表されるジオール化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含むことである。
【0083】
更に好ましくは、ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位として、下記化学式(A1−ex−1)及び(A2−ex−1)から選ばれる少なくとも1種と、ジオール化合物由来の繰り返し単位として、化学式(B2−ex−1)、(B2−ex−2)、(B2−ex−3)又は(B2−ex−4)で表されるジオール化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含むことである。
【0084】
【化16】

【0085】
本発明のポリエステル重合体を構成するジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位とジオール化合物由来の繰り返し単位の含有比率(ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位:ジアミン化合物由来の繰り返し単位)は、特に制限されないが、通常1:1である。
【0086】
[ポリエステル重合体の製造方法]
本発明のポリエステル重合体の製造方法について説明する。
本発明のポリエステル重合体の製造に用いるデヒドロアビエチン酸は、例えば、ロジンから得ることができる。
【0087】
ロジンとは松脂から採取される樹脂成分であり、採取の方法により、「ガムロジン」、「トールロジン」及び「ウッドロジン」の3種がある。ロジンに含まれる構成成分は、これら採取の方法や松の産地により異なるが、一般的には、以下にその構造を示す、アビエチン酸(1)、ネオアビエチン酸(2)、パラストリン酸(3)、レボピマール酸(4)、デヒドロアビエチン酸(5)、ピマール酸(6)、イソピマール酸(7)等のジテルペン系樹脂酸の混合物である。
【0088】
【化17】

【0089】
これらのジテルペン系樹脂酸のうち、(1)から(4)で表される各化合物は、ある種の金属触媒の存在下、加熱処理することにより不均化を起こし、デヒドロアビエチン酸(5)と、下記構造のジヒドロアビエチン酸(8)に変性する。
【0090】
【化18】

【0091】
即ち、本発明のポリエステル重合体を製造する上で必要なデヒドロアビエチン酸(5)は、種々の樹脂酸の混合物であるロジンに適切な化学処理を施すことにより比較的容易に得ることができ、工業的にも安価に製造することができる。なお、ジヒドロアビエチン酸(8)とデヒドロアビエチン酸(5)とは、公知の方法により容易に分離できる。
【0092】
本発明のポリエステル重合体は、例えば、以下の合成経路1又は合成経路2で合成することができる。
【0093】
【化19】

【0094】
【化20】

【0095】
上記合成経路1及び合成経路2中、L、L、L、R、R、n1、n2、及びn3は、前記一般式(A1)、一般式(A2)及び一般式(B2)における、L、L、L、R、R、n1、n2、及びn3と同義であり、好ましい態様も同様である。
また上記合成経路1及び合成経路2には、ジカルボン酸化合物として、一般式(A1−1)又は(A2−1)を単独で用いた例を示したが、一般式(A1−1)で表されるジカルボン酸化合物及び一般式(A2−1)で表されるジカルボン酸化合物を併用してポリエステル重合体を得ることもできる。
【0096】
以下、合成経路1及び合成経路2中、前記一般式(A1−1)で表される化合物又は一般式(A2−1)で表される化合物と、ジオール化合物(B0)とから、最終生成物であるポリエステル重合体を合成する工程(合成経路1及び合成経路2の下段に示す工程)について、詳細に説明する。なお、上記合成経路1及び合成経路2によるポリエステル重合体の詳細な合成例については、後述する実施例において更に具体的に説明する。
尚、以下には、合成経路1および合成経路2としてそれぞれ一般式(A1−1)で表される化合物および一般式(A2−1)で表される化合物を単独で用いる合成経路を示したが、一般式(A1−1)で表される化合物および一般式(A2−1)で表される化合物を併用してポリエステル重合体を合成する工程についても同様である。
【0097】
合成経路1において、一般式(A1)で表される繰り返し単位及び一般式(B2)で表される繰り返し単位を有するポリエステル重合体を合成する工程は、ジオール化合物(B0)と、一般式(A1−1)で表されるジカルボン酸化合物又はその誘導体であるジカルボン酸ハライド誘導体もしくはジエステル誘導体とを公知の方法で重縮合させることにより合成することができる。
また合成経路2において、一般式(A2)で表される繰り返し単位及び一般式(B2)で表される繰り返し単位を有するポリエステル重合体を合成する工程は、ジオール化合物(B0)と、一般式(A2−1)で表されるジカルボン酸化合物又はその誘導体であるジカルボン酸ハライド誘導体もしくはジエステル誘導体とを公知の方法で重縮合させることにより合成することができる。
【0098】
具体的な合成方法としては、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成・反応(2)、78〜95頁、共立出版(1996年)に記載の方法(例えば、エステル交換法、直接エステル化法、酸ハライド法等の溶融重合法、低音溶液重合法、高温溶液重縮合法、界面重縮合法など)などが挙げられ、本発明では特に酸クロリド法及び界面重縮合法が好ましく用いられる。
【0099】
エステル交換法は、ジオール化合物(B0)とジカルボン酸エステル誘導体とを溶融状態又は溶液状態で、必要により触媒の存在下に加熱することにより脱アルコール重縮合させポリエステル重合体を合成する方法である。
【0100】
直接エステル化法は、ジオール化合物(B0)とジカルボン酸化合物(A1−1又はA2−1)とを溶融状態又は溶液状態で触媒の存在下に、加熱下において脱水重縮合させることによりポリエステル重合体を合成する方法である。
【0101】
酸ハライド法は、ジオール化合物(B0)とジカルボン酸ハライド誘導体とを溶融状態又は溶液状態で、必要により触媒の存在下に加熱し脱ハロゲン化水素重縮合させることによりポリエステル重合体を合成する方法である。
【0102】
界面重合法は、ジオール化合物(B0)を水、前記ジカルボン酸化合物又はその誘導体を有機溶媒に溶解させ、相間移動触媒を使用して水/有機溶媒界面で重縮合させることによりポリエステル重合体を合成する方法である。
【0103】
以上説明した本発明のポリエステル重合体(デヒドロアビエチン酸系重合体)は、単独でポリマー材料として用いることができる。また本発明のポリエステル重合体と種々の材料とを混合することにより、樹脂組成物および複合材料とすることもできる。以下、本発明のポリエステル重合体を含有する樹脂組成物および複合材料について説明する。
【0104】
<樹脂組成物>
本発明のポリエステル重合体は、その物性を所望の範囲とすること等を目的として、種々の添加剤と混合して、樹脂組成物として用いることができる。樹脂組成物は、前記ポリエステル重合体の少なくとも1種と、難燃剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含むことが好ましく、必要に応じてその他の添加剤をさらに含んで構成される。
【0105】
(難燃剤)
前記樹脂組成物は、難燃剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。難燃剤は、ポリマーを含む材料を燃え難くし、或いは炎が広がらないようにする素材である。
難燃剤は、特に限定されず、常用のものを用いることができる。例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、窒素化合物系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。
【0106】
難燃剤としては、ハロゲンを含まないリン含有難燃剤およびケイ素含有難燃剤が好ましい。ハロゲンを含まないリン含有難燃剤およびケイ素含有難燃剤は、前記ポリエステル重合体との複合時や成形加工時に熱分解しハロゲン化水素が発生することがなく、したがって、加工機械や金型を腐食させたり、作業環境を悪化させたりすることがない。また、ハロゲンを含まないリン含有難燃剤およびケイ素含有難燃剤は、焼却廃棄時に、ハロゲンが揮散したり、分解してダイオキシン類等の有害物質を発生させたりすることがなく、したがって、環境に悪影響を与える可能性が少ない。
【0107】
−リン含有難燃剤−
リン含有難燃剤としては、特に限定されることはなく、常用のものを用いることができる。例えば、リン酸エステル、リン酸縮合エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物が挙げられる。
【0108】
リン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル等を挙げることができる。
【0109】
リン酸縮合エステルの具体例としては、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェート、並びにこれらの縮合物などの芳香族リン酸縮合エステル等を挙げることができる。
【0110】
ポリリン酸塩の具体例としては、ポリリン酸と、周期律表1族〜14族の金属、アンモニア、脂肪族アミンおよび芳香族アミンのいずれかとの塩を挙げることができる。ポリリン酸塩の代表的な塩として、金属塩としてリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、鉄(III)塩、アルミニウム塩など;脂肪族アミン塩としてメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ピペラジン塩など;芳香族アミン塩としてピリジン塩、トリアジン塩などが挙げられる。
【0111】
上記した以外にも、リン含有難燃剤としては、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル、また、リン原子と窒素原子が二重結合で結ばれた構造を有するホスファゼン化合物、リン酸エステルアミドを挙げることができる。
リン含有難燃剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
−ケイ素含有難燃剤−
ケイ素含有難燃剤としては、特に限定されることはなく、常用のものを用いることができる。
例えば、ケイ素含有難燃剤として、下記の式で表される構造単位を主構成単位とする、二次元または三次元構造の有機ケイ素化合物が挙げられる。
式:RSi(4−m)/2
上記式において、mは1以上3以下の整数であり、Rは、水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基である。
【0113】
ほかにケイ素含有難燃剤としては、ポリジメチルシロキサンや、ポリジメチルシロキサンの側鎖もしくは末端のメチル基が水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基で置換もしくは修飾されたものが挙げられる。
前記置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、またはトリフロロメチル基等が挙げられる。
【0114】
さらにケイ素含有難燃剤としては、いわゆるシリコーンオイルや、変性シリコーンオイルが挙げられる。
ケイ素含有難燃剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
−その他の難燃剤−
前述したリン含有難燃剤およびケイ素含有難燃剤以外の難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一スズ、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ジルコニウム系化合物、グアニジン系化合物、フッ素系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛等を用いることができる。
中でも、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムは、火災の際に人体に有害な物質を発生したり、環境有害物質を生成したりし難く、難燃効果と環境安全性の点で優れているので好ましい。
これらの難燃剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
前記樹脂組成物において、難燃剤の含有量は限定的でないが、樹脂組成物100質量部中、難燃剤を通常50質量部程度以下、好ましくは2〜30質量部程度、含むことが好ましい。この範囲とすることにより、透明性や弾性率等の力学物性を良好に維持したまま所望の難燃性が得られる。
【0117】
(光安定剤)
前記樹脂組成物は、光安定剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。光安定剤は、ポリマーを含む材料の光による劣化を防止あるいは遅らせる素材である。
光安定剤は、特に限定されず、常用のものを用いることができる。例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤および一重項酸素クエンチャー等が挙げられる。これらの光安定剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
−高分子量ヒンダードアミン系光安定剤−
HALSとしては、分子量が1000を超える高分子量のものが好ましく用いられる。このようなものとしては、例えば、オリゴマー型のHALSであるポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]や、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物などが挙げられる。より具体的には、CHIMASSORB944LD、Tinuvin622LD(以上、BASFジャパン社製)などの商品名で市販されているものを使用することができる。
【0119】
前記樹脂組成物において、高分子量HALSの含有量は、樹脂組成物100質量部中、0.2〜10質量部であることが好ましい。高分子量HALSの含有量は、0.2質量部以上であると、目的とする充分な耐候性を得ることができる。また10質量部以下であると、増量による耐候性向上効果が期待でき、機械的強度の低下やブルーミングの発生を抑制できる。
【0120】
−低分子量ヒンダードアミン系光安定剤−
HALSとしては、分子量が1000以下の低分子量のものも好ましく用いられる。低分子量のHALSとしては、その分子量が900以下であることがより好ましく、分子量が600以上900以下であることが更に好ましい。
低分子量のHALSとしては、例えば、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−アセトキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)トリアジン−2,4,6−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3−トリカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロパン−1,1,2,3−テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などが挙げられる。より具体的には、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−52(以上、アデカ社製)、Tinuvin144(BASFジャパン社製)などの商品名で市販されているものを使用することができる。
【0121】
前記樹脂組成物において、低分子量HALSの含有量は、樹脂組成物100質量部中、0.2〜10質量部であることが好ましい。低分子量HALSの含有量は、0.2質量部以上であると、目的とする充分な耐候性を得ることができる。また10質量部以下であると、増量による耐候性向上効果が期待でき、機械的強度の低下やブルーミングの発生を抑制できる。
【0122】
−紫外線吸収剤−
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロ−フタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノールなどのベンゾトリアゾール系;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル安息香酸n−ヘクサデシルエステル、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタン、1,6−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ヘキサンなどのベンゾフェノン系;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートに代表されるシアノアクリレート系などが挙げられる。より具体的には、Tinuvin320、Tinuvin328、Tinuvin234、Tinuvin1577、Tinuvin622(以上、BASFジャパン社製)、アデカスタブLA−31(アデカ社製)、SEESORB102、SEESORB103、SEESORB501(シプロ化成(株)製)などの商品名で市販されているものを使用することができる。
【0123】
前記樹脂組成物において、紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物100質量部中、0.2〜10質量部であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量は、0.2質量部以上であると、目的とする充分な耐候性を得ることができる。また10質量部以下であると、増量による耐候性向上効果が期待でき、機械的強度の低下やブルーミングの発生を抑制できる。
【0124】
−一重項酸素クエンチャー−
一重項酸素クエンチャーとしては、例えば、ベンゼンスルホン酸ニッケル塩、p−トルエンスルホン酸ニッケル塩、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル塩、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ニッケル塩、テトラブチルホスホニウムビス(1,2−ベンゼンジチオレート)ニコレート(III)、テトラブチルホスホニウムビス(4−メチル−1,2−ベンゼンジチオレート)ニコレート(III)などが挙げられる。
【0125】
前記樹脂組成物において、一重項酸素クエンチャーの含有量は、樹脂組成物100質量部中、0.2〜10質量部であることが好ましい。一重項酸素クエンチャーの含有量は、0.2質量部以上であると、目的とする充分な耐候性を得ることができる。また10質量部以下であると、増量による耐候性向上効果が期待でき、機械的強度の低下やブルーミングの発生を抑制できる。
【0126】
前記樹脂組成物は、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、通常使用される添加剤から目的に応じて適宜選択することができる。その他の添加剤としては例えば、可塑剤、安定剤、耐衝撃性向上剤、結晶核剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、染料、充填剤、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物)、吸湿抑制剤、加工助剤、ドリップ防止剤、離型剤(脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーン)、防曇剤、防菌剤、防黴剤等を挙げることができる。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
<複合材料>
本発明のポリエステル重合体は、その物性を所望の範囲とすること等を目的として、種々の材料と混合して、複合材料として用いることができる。
【0128】
ポリエステル重合体を複合材料とする場合に、特に重要なのは、ポリマーアロイ化(異種ポリマーの混合)とフィラーの混合であり、これにより、耐衝撃性、耐熱性、耐久性、成形性等を改良することができる。
【0129】
ポリマーアロイ化に使用されるポリマーとしては、異なるポリマー特性を有するポリエステル重合体を2種以上使用してもよいし、ポリエステル重合体とそれ以外のポリマーとを併用してもよい。
【0130】
ポリマーアロイ化に使用される本発明のポリエステル重合体以外のポリマーとしては、以下の1)〜4)が挙げられる。
1)オレフィン系樹脂(エチレン又はプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン、又はシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等のシクロオレフィンの単独重合体、上記α−オレフィン同士の共重合体、及びα−オレフィンと共重合可能な他の単量体、酢酸ビニル、マレイン酸、ビニルアルコール、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等との共重合体等)。
【0131】
2)ポリエステル系樹脂(テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸単量体とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノール化合物又はその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のジオール又は多価アルコール単量体との共重合体、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸や、2,6−ヒドロキシナフトエ酸、等のヒドロキシカルボン酸等の重縮合体等)。
【0132】
3)ポリアミド系樹脂(3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、二塩基酸とジアミンなどの重縮合によって得られる鎖中に酸アミド結合を有する重合体で、具体的には、ε−カプロラクタム、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、α−ピロリドン、α−ピペリドンなどの重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどのジアミンと、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二塩基酸、グルタール酸などのジカルボン酸と重縮合せしめて得られる重合体又はこれらの共重合体であり、たとえば、ナイロン−4、ナイロン−6、ナイロン−7、ナイロン−8、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン−6、6、ナイロン−6、10、ナイロン−6、11、ナイロン−6、12、ナイロン−6T、ナイロン−6/ナイロン−6、6共重合体、ナイロン−6/ナイロン−12共重合体、ナイロン−6/ナイロン−6T共重合体、ナイロン−6I/ナイロン−6T共重合体等)。
【0133】
4)ゴムやエラストマー(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、二トリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等)。
【0134】
その他、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリアセタール、ポリスルホン、ABS、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂を挙げることもできる。
【0135】
上記したポリマーアロイ化に使用されるポリマーのうち、植物度を下げない観点で、ポリ乳酸やポリβ−ヒドロキシ酪酸、ポリブチレンサクシナート等が好ましく用いられる。
【0136】
ポリマーアロイ化は、通常、溶融混練により行われるが、単純な混練では相分離してしまう場合は、相溶化剤を用いたり、二次的にブロック重合やグラフト重合させたり、一方のポリマーをクラスター状に分散させたりして均一相を形成させることもできる。
【0137】
また、本発明のポリエステル重合体が示す特性を損なうことなく、ポリマーアロイ化をする観点からは、ポリマーアロイ中における本発明のポリエステル重合体の含有比率(質量基準)は、20〜100%が好ましく、50〜100%がより好ましい。
【0138】
また、本発明のポリエステル重合体は、種々のフィラーを混合して所望のポリマー物性を達成することができる。特に、耐熱性、耐久性、及び耐衝撃性改良には、フィラーの混合は有効である。
【0139】
フィラーとしては、無機フィラー、有機フィラーのいずれを用いてもよい。
無機フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等の繊維状の無機フィラー;ガラスフレーク、非膨潤性雲母、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土等の板状や粒状の無機フィラーが有用である。
【0140】
また、有機フィラーとしては、セルロースナノファイバーやポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、アラミド繊維等の合成繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、マニラ麻、亜麻、リネン、絹、ウール等の天然繊維、微結晶セルロース、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙等から得られる繊維状の有機フィラーや、有機顔料等の粒状の有機フィラーが有用である。
【0141】
本発明のポリエステル重合体は、実際の製品として適用される多くの場合、難燃剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を含み複合材料とすることが好ましい。本発明のポリエステル重合体を含む複合材料に含まれる難燃剤及び光安定剤としては、樹脂組成物の項において既述したものと同じでよく、好ましい態様も同様である。
また、難燃剤と併用して難燃性を高めたり、樹脂表面に炭化皮膜を形成したりして火災の広がりを抑える素材(難燃助剤)も、本発明のポリエステル重合体を含む複合材料に有用である。具体的には、無機系ではアンチモン化合物、有機系芳香族化合物(フェノール誘導体等)が好ましく用いられる。
【0142】
本発明のポリエステル重合体は、上記の他に、必要に応じてその他の添加剤を含んで複合材料としてもよい。その他の添加剤としては、通常使用される添加剤から目的に応じて適宜選択することができる。その他の添加剤としては例えば、可塑剤、安定剤、耐衝撃性向上剤、結晶核剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、染料、充填剤、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物)、吸湿抑制剤、加工助剤、ドリップ防止剤、離型剤(脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーン)、防曇剤、防菌剤、防黴剤等を挙げることができる。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
上記記載の素材を混合して得られる本発明の複合材料は、種々の方法で賦形(成形)することができる。成形方法しては、例えば、押出成形、射出成形等が用いられる。そのようにして得られた成形体の用途は、特に限定されるものではないが、例えば、自動車、家電、電気・電子機器(OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)の構成部品、機械部品、住宅・建築用材料、コンテナ・ボトルなどの各種容器、等が挙げられる。
【0144】
<成形体>
本発明の成形体は、前記ポリエステル重合体の少なくとも1種を含み、必要に応じてその他の添加剤を含んで構成される。その他の添加剤としては例えば、上述の複合材料で添加する添加剤を用途に応じて適宜配合すればよい。中でも、難燃剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含むことが好ましい。
前記成形体は、前記ポリエステル重合体を含むことで耐熱性に優れ、更に密度が低いため軽量化が可能である。
前記成形体の形状は特に制限されず、目的に応じて適宜選択される。例えば、シート、フィルム、繊維、電子筐体、センサーレンズ、LEDランプ、ヒューズカバー、ICカード等を挙げることができる。
また前記成形体は既述の複合材料を含んで構成されてもよい。
【0145】
<フィルム>
本発明のフィルムは前記ポリエステル重合体の少なくとも1種を含み、必要に応じてその他の添加剤を含んで構成される樹脂層を有する。その他の添加剤としては例えば、上述の複合材料で添加する添加剤を用途に応じて適宜配合すればよい。中でも、難燃剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含むことが好ましい。
前記フィルムは、樹脂層に前記ポリエステル重合体を含むことで、耐熱性に優れ、透明性が高く、また軽量化が可能である。
【0146】
前記フィルムの厚さは用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば4μm〜1000μm、好ましくは25μm〜500μm程度とすればよい。
前記フィルムの製造方法は特に制限されず、通常用いられるフィルム形成方法から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエステル重合体を有機溶媒に溶解させて塗布するキャスト成膜等を挙げることができる。
【実施例】
【0147】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0148】
[合成例1]
まず、本発明のポリエステル重合体の製造に用いる12−カルボキシデヒドロアビエチン酸(a−1)を、下記合成経路に従って合成した。
【0149】
【化21】

【0150】
92%デヒドロアビエチン酸(上記化学式(A)、荒川化学工業製)60.0gと塩化メチレン120mlの混合物に、塩化オキサリル26.8gを室温で滴下した。3時間撹拌した後、溶媒を減圧留去し、そこにメタノール32.0gを滴下した。室温で3時間撹拌後、過剰のメタノールを減圧留去し、化合物(B)の白色結晶62.8gを得た。
【0151】
化合物(B)62.8g、塩化アセチル18.8g及び塩化メチレン160mlの混合物に無水塩化アルミニウム58.6gを少量ずつ3〜5℃で加えた。5〜8℃で2時間撹拌した後、反応液を1000gの氷水に注いだ。酢酸エチル400mlを加えて有機層を抽出した。食塩水で洗浄、無水塩化マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、残渣に冷メタノール100mlを加えて析出した化合物(C)の白色結晶をろ取した。(収量65.6g)
【0152】
水酸化ナトリウム64.0gを水200mlに溶かし、そこに臭素51.2gを8〜10℃で滴下した。さらに、化合物(C)35.6gをジメトキシエタン200mlに溶かした液を10〜12℃で滴下した。室温で2時間攪拌した後、反応液を6N冷希塩酸に注いで酸性とし、析出した白色結晶を濾取した。結晶をメタノールから再結晶して化合物(D)の結晶29.8gを得た。
【0153】
化合物(D)20.4gに対して10%水酸化ナトリウム水100gを加えて攪拌した。その後、反応系を外設130℃にて昇温し、緩やかに還流させた。そのまま3時間攪拌し、反応を薄層クロマトグラフィーにてチェックした後、反応系の温度を室温まで冷却した。冷却した1M塩酸250mLに反応系の内容物をゆっくりと添加し、酸析させた。そのものをヌッチェにてろ取し、水をかけ洗いすることでろ液を中性にした。固体を取り出し、乾燥させることで12−カルボキシデヒドロアビエチン酸(a−1)19.2gを得た。
得られた12−カルボキシデヒドロアビエチン酸(a−1)のH−NMRを測定した。H−NMRチャート(溶媒:CDCl)を図1に示す。
【0154】
[合成例2]
本発明のポリエステル重合体の製造に用いるジカルボン酸(a−2)を、下記合成経路に従って合成した。
【0155】
【化22】

【0156】
92%デヒドロアビエチン酸(上記化学式(A)、荒川化学工業製)120g、36%ホルマリン20ml及び塩化メチレン200mlの混合物に、10〜15℃でトリフルオロ酢酸200mlを滴下した。15〜20℃で8時間攪拌した後、塩化メチレンとトリフルオロ酢酸を減圧留去した。残渣に水2lを加え、灰白色結晶を濾過、十分に水洗した。乾燥後、1lの熱n−ヘキサンを加えて1時間攪拌し、放冷後、(a−2)の白色結晶を濾取した。収量は118gであった。
【0157】
<実施例1>
(ポリエステル重合体(PE−1)の合成)
以下のスキームに従ってポリエステル重合体(PE−1)を合成した。
【0158】
【化23】

【0159】
ジカルボン酸化合物(a−1)の結晶100gを酢酸エチル300mlに分散し、塩化チオニル52.9ml及びジメチルホルムアミド0.1mlを加えて2時間加熱還流した。この間に結晶は完全に溶解した。放冷後、溶媒を減圧留去し、残渣に酢酸エチル200mlを加えて、析出した針状結晶をろ取した。ヘキサンかけ洗いを行った後減圧乾燥し、ジカルボン酸化合物(a−1)の酸クロリド誘導体(G)を得た。収量は60.9gであった。
【0160】
ハイドロキノン6.06g、N,N’−ジメチルアミノピリジン14.1gをN,N’−ジメチルアセトアミド200mlに溶解させた。系内の温度を10℃まで冷却し、そこに上記で得られた酸クロリド誘導体(G)21.0gを少量ずつ加えた。反応液は徐々に粘稠となった。室温で8時間撹拌した後、反応液にメタノール1Lを加え、生成したPE−1を濾別、メタノールで洗浄した。得られたものを乾燥後、ジメチルホルムアミド200mlに加熱溶解し、メタノール3Lに少量ずつ注いで再沈殿させた。再沈殿物を回収し、乾燥後、PE−1の白色固体21.5gを得た。得られたポリエステル重合体(デヒドロアビエチン酸重合体、PE−1)のGPC測定(溶媒:NMP)による重量平均分子量は74000であった。
【0161】
PE−1のH−NMRを測定し、PE−1にデヒドロアビエチン酸に由来する骨格とハイドキノンに由来する構造とが含まれることを確認した。PE−1のH−NMRチャート(溶媒:CDCl)を図2に示す。
【0162】
<実施例2〜14>
(ポリエステル重合体(PE−2)〜(PE−14)の合成)
実施例1において、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物を下記表1に記載した化合物にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1に記載の方法と同様にして、ポリエステル重合体(PE−2)〜(PE−14)を得た。
【0163】
【表1】

【0164】
表1中、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物における括弧内の数字は、ポリエステル重合体製造時の仕込み量(モル%)を示す。尚、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物の総量を100モル%とした。また以下にジカルボン酸化合物及びジオール化合物の構造を示す。
【0165】
【化24】

【0166】
[ガラス転移温度(Tg)の評価]
得られたポリエステル重合体について、示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー社製、DSC6200)を用いて、30〜400℃の温度範囲について、窒素気流下に昇温速度10℃/min.の条件でガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表1に併せて示す。
【0167】
<比較例>
特開2008−274150号公報の実施例1に準じて、精製ロジンと揮発性塩基触媒を用いたレゾール型フェノール樹脂を原料としたロジン変性フェノール樹脂(RE−1)を得た。
得られたロジン変性フェノール樹脂に対して、ガラス転移温度を測定したところ、150℃未満であり、十分な耐熱性が得られなかった。
【0168】
以上から、本発明のポリエステル重合体は、いずれもガラス転移温度が150℃以上で優れた耐熱性を示した。このことはこのポリマーから得られる材料は耐熱性が高いことを示している。
【0169】
<フィルム作製>
上記で得られたポリエステル重合体PE−1をメチレンクロライドに10%の濃度で溶解させ、これを対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で加圧ろ過してドープを作製した。作製したドープをドクターブレードを用いて、ガラス基板上に流延した。流延後、室温で6時間静置し、次いで40℃で30分、100℃で30分加熱乾燥させた。その後140℃、1Torrで1時間真空乾燥させて、ポリエステル重合体を含むフィルムFE−1を作製した。
ポリエステル重合体PE−2、PE−3、PE−4、PE−5、PE−6及びPE−7を用いて、同様にしてフィルムFE−2、FE−3、FE−4、FE−5、FE−6及びFE−7を作製した。
【0170】
[フィルム評価]
上記で得られたフィルムに関して、以下の評価方法でガラス転移温度、吸水率、密度、弾性率、破断強度、全光線透過率、膜厚及び植物由来度をそれぞれ評価した。評価結果を表2に示す。
尚、ポリエステル重合体の比較フィルムとして、下記化学式で表されるU−ポリマー(ユニチカ製 U100)を用いて評価を行った。尚、下記化学式中、nは繰り返し数を示す。
【0171】
【化25】

【0172】
(ガラス転移点温度(Tg))
得られたフィルムから5mm×22mmの短冊状試験片を切り出し、これを動的粘弾性測定装置Rheogel−E4000(UBM製)にて、引っ張りモードで温度範囲25℃〜350℃の正接損失(tanδ)を測定した。正接損失(tanδ)が極大値を示す温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0173】
(吸水率)
得られたフィルムを23℃の水に24時間浸し、その後、表面の水滴をよく拭き取り、素早く質量を測定した。吸水率を下記式から算出した。
吸水率(%)=(浸水後のフィルムの質量−浸水前のフィルムの質量)/浸水前のフィルムの質量
【0174】
(密度)
得られたフィルムについて、精密比重計AUW120D(SHIMADZU製)を用いて密度を測定した。
【0175】
(フィルムの弾性率及び破断強度)
得られたフィルムから10mm×50mmの短冊状試験片を切り出し、これを試験片とした。25℃60%RHで2時間以上調湿した後、テンシロン万能試験機(オリエンテック製)を用いてチャック間距離30mm、温度25℃、延伸速度3mm/分の条件で引っ張り試験を行い、弾性率及び破断強度を求めた。測定は3サンプル行い、その算術平均値を求めた。
【0176】
(全光線透過率)
得られたフィルムの全光線透過率を、ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)社製)を用いて測定した。測定は3箇所行い、その算術平均値を求めた。
【0177】
(膜厚)
得られたフィルムの膜厚を、デジタルリニアゲージDG−525H(小野測器製)にて測定した。測定は3箇所行い、その算術平均値を求めた。
【0178】
(植物由来度)
植物由来度を、以下の式に従って算出した。
植物由来度(%)=(重合体の構成成分中の植物由来質量)/(重合体の構成成分総質量)
【0179】
【表2】

【0180】
表2から、本発明のフィルムは、植物由来度が高いことが分かる。またガラス転移温度が高く、耐熱性に優れることが分かる。さらに密度が低いことが分かる。
【0181】
<添加剤含有フィルムの作製>
前記のポリエステル重合体PE−1(79.5部)、PX−200(20部、難燃剤)、Irganox1010(0.4部、酸化防止剤)及びアデカスタブPEP36(0.1部、酸化防止剤)をメチレンクロライドに10%の濃度で溶解させ、これを対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で加圧ろ過してドープを作製した。次いで、作製したドープを、ドクターブレードを用いてガラス基板上に流延した。流延後、室温で6時間静置し、その後40℃で30分、次いで100℃で30分、加熱し乾燥させた。その後、140℃、1Torrで1時間、真空乾燥させて、ポリエステル重合体と添加剤とを含むフィルムFE−8を得た。
【0182】
ポリエステル重合体および添加剤の種類および組成比を表3に記載のとおりに変更した以外はFE−8の作製と同様にして、ポリエステル重合体と添加剤とを含むフィルムFE−9〜FE−12を作製した。
なお、表3中の略号は以下の通りである。TPP、PX−200及びPX−202は難燃剤であり、Tinuvin328、Tinuvin1577、CHIMASSORB944、及びTinuvin622は光安定剤であり、Irganox1010及びアデカスタブPEP36は酸化防止剤であり、それぞれ以下の構造を有する。
【0183】
【化26】

【0184】
【化27】

【0185】
【化28】

【0186】
【化29】

【0187】
【化30】

【0188】
【化31】

【0189】
【化32】

【0190】
【化33】

【0191】
【化34】

【0192】
[添加剤含有フィルムの評価]
上記で得たフィルムFE−8〜FE−12について、以下の試験方法にて難燃性、光安定性及び膜厚を評価した。また、比較対照として、前記のフィルムFE−1及びFE−2についても同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0193】
(難燃性)
ASTM D4804に従い、薄手材料垂直燃焼試験を行った。即ち、フィルム試験片((200±5)×(50±1)×t[mm])を円筒状に巻き、クランプに垂直に取り付け、20mm炎による3秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動によりVTM−0,VTM−1,VTM−2,Notの判定を行った。
【0194】
(光安定性)
フィルムから切り出した試験片(10mm×50mm)に、室温下でキセノンランプを1000時間照射し、照射前後での破断強度保持率を算出した。破断強度は、25℃60%RHで2時間以上調湿した後、テンシロン万能試験機(オリエンテック製)を用いて、チャック間距離30mm、温度25℃、延伸速度3mm/分の条件で引っ張り試験を行い、測定した。測定はフィルム毎に3試験片について行い、測定された破断強度の算術平均値を求めた。そして、破断強度保持率を下記の式から算出した。
破断強度保持率(%)=(キセノンランプ照射後の破断強度)/(キセノンランプ照射前の破断強度)
また、キセノンランプを1000時間照射した後の着色を目視にて評価した。
【0195】
(膜厚)
フィルムの膜厚を、デジタルリニアゲージDG−525H(小野測器製)にて測定した。測定は3箇所行い、その算術平均値を求めた。
【0196】
【表3】

【0197】
表3から分かるように、本発明のポリエステル重合体は、難燃剤を添加することで難燃性が向上する。また、本発明のポリエステル重合体は、光安定剤を添加することで、光照射による破断強度の低下が抑えられ、着色も抑えられる。したがって、本発明のポリエステル重合体は、添加剤を添加することで物性の調整が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(C)で表される部分構造を含むジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位と、
環構造を含むジオール化合物由来の繰り返し単位と、を含み、
前記式(C)で表される部分構造が主鎖の一部を構成するポリエステル重合体。
【化1】


(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。n、mはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表す。Cyはヘテロ原子を含んでもよい不飽和の6員環又は7員環を表す。*、**は結合手を表す。*はRから延びる結合手であってもよい。)
【請求項2】
前記ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位は、下記一般式(A10)で表される繰り返し単位及び下記一般式(A20)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のポリエステル重合体。
【化2】


(式中、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。Lは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。R、R、n、m、およびCyは、式(C)におけるR、R、n、m、およびCyとそれぞれ同義である。)
【請求項3】
前記ジオール化合物由来の繰り返し単位は芳香環基を含む、請求項1又は請求項2に記載のポリエステル重合体。
【請求項4】
前記ジオール化合物由来の繰り返し単位が下記一般式(B2)で表される繰り返し単位である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリエステル重合体。
【化3】


(式中、Lは、酸素原子、カルボニル基、スルホニル基、及びアルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表し、Lが複数存在する場合、それぞれのLは同じでも異なっていてもよい。R及びRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。またR及びRが複数存在する場合、それぞれのR及びRは同じでも異なっていてもよい。n1及びn2はそれぞれ独立して0〜4の整数を表し、n3は0〜2の整数を表す)
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリエステル重合体と、難燃剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含む樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリエステル重合体を含む成形体。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリエステル重合体を含む樹脂層を有するフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−255126(P2012−255126A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163312(P2011−163312)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】