説明

ポリエステル重合触媒、これを用いたポリエステルの製造方法、およびポリエステル

【課題】触媒活性に優れ、熱安定性に優れるポリエステルを与え、固相重合活性に優れるポリエステル重合触媒およびこれを用いて製造されたポリエステル並びにポリエステルの製造方法を提供すること。
【解決手段】ゲルマニウム化合物およびリン化合物を含むポリエステル重合触媒において、前記リン化合物として、特定の2種のリン化合物を用い、それらを特定のモル比で用いるポリエステル重合触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル重合触媒、これを用いたポリエステルの製造方法、およびポリエステル並びに用途に関し、さらに詳しくは、触媒活性、熱酸化安定性に優れるポリエステル重合触媒、これを用いたポリエステルの製造方法、およびこの重合触媒を用いて製造されたポリエステル、並びにこのポリエステルから製造された中空成形体、繊維、フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステルは、機械的特性、及び化学的特性に優れており、それぞれのポリエステルの特性に応じて、例えば衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用などのフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等の広範な分野において使用されている。特に、ポリエチレンテレフタレートなどの飽和ポリエステルからなるボトルは、機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤー性に優れるため、ジュース、炭酸飲料、清涼飲料などの飲料充填用容器および目薬、化粧品などの容器として広く使用されている。
【0003】
代表的なポリエステルである芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールを主構成成分とするポリエステルは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の場合には、テレフタル酸もしくはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル化反応もしくはエステル交換反応によってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのオリゴマー混合物を製造し、これを高温、真空下で触媒を用いて溶融重縮合させ、粒状化後、固相重縮合し成形用ペレットが製造される。こうして製造されたポリエステルペレットは射出成形してプリフォームを製造し、次いでこのプリフォームをブロー成形するなどして二軸延伸し、ボトル状に成形されることで製造されている。
【0004】
従来から、このようなポリエステルの重縮合時に用いられるポリエステル重縮合触媒としては、アンチモンあるいはゲルマニウム化合物が広く用いられている。三酸化アンチモンは、安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるが、これを主成分、即ち、実用的な重合速度が発揮される程度の添加量にて使用すると、重縮合時に金属アンチモンが析出するため、ポリエステルに黒ずみや異物が発生し、フィルムの表面欠点の原因にもなる。また、中空の成形品等の原料とした場合には、透明性の優れた中空成形品を得ることが困難である。このような経緯で、アンチモンを全く含まないか或いはアンチモンを触媒主成分として含まないポリエステルが望まれている。
【0005】
アンチモン化合物以外で優れた触媒活性を有し、かつ上記の問題を有しないポリエステルを与える触媒としては、ゲルマニウム化合物がすでに実用化されている(例えば、特許文献1参照。)が、生産性を向上させるため、より活性の高い触媒系が求められている。また高価なゲルマニウム化合物添加量を少なくする観点からも活性の高い触媒系を構築することが求められている。
またゲルマニウム触媒を用いて重合したポリエステルは、熱酸化安定性が悪いという課題を有している。
【0006】
アンチモン系あるいはゲルマニウム系触媒に代わる重縮合触媒の検討も行われており、テトラアルコキシチタネートに代表されるチタン化合物がすでに提案されているが、これらを用いて製造されたポリエステルは溶融成形時に熱劣化を受けやすく、またポリエステルが著しく着色するという問題点を有する。
【0007】
アルミニウム化合物は一般に触媒活性に劣ることが知られているが、アルミニウム化合物にリン化合物を併用することでアルミニウム化合物の触媒活性が向上することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−233952号公報
【0009】
一般にPETボトルなどのポリエステル製ボトルは、機械物性、水分およびガスの遮断性、耐薬品性、保香性、透明性、衛生性などに優れていることから、食品、医薬品、化粧品などの容器として、近年広く使用されている。果汁飲料などの高温にて充填される飲料の容器として使用されるポリエステル製ボトルは、二軸延伸ブロー成形方法で成形される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ゲルマニウムを触媒として用い、触媒活性に優れ、熱安定性に優れるポリエステル重合触媒およびこれを用いて製造されたポリエステル並びにポリエステルの製造方法を提供することにある。特に、ポリエステルの生産性を向上させるために、固相重合活性に優れるポリエステル重合触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決へ向けて鋭意検討を重ねた結果、ゲルマニウム化合物およびリン化合物を含むポリエステル重合触媒において、リン化合物として特定の二種のリン化合物を特定のモル比で用いることで、驚くべきことにこれらリン化合物を単独で用いた場合に比べ、固相重合触媒活性に優れていることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)ゲルマニウム化合物およびリン化合物を含むポリエステル重合触媒において、前記リン化合物として下記式(化式1)ならびに下記式(化式2)で表される化合物を用い、(化式1)/(化式2)のモル比が0.1〜10であることを特徴とするポリエステル重合触媒。
【化1】

[(化式1)中、Rは、アルキル基または水素原子を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
【化2】

[(化式2)中、[(化式2)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
(2)上記(化式1)が、(化式1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である、リン化合物である(1)に記載のポリエステル重合触媒。
(3)上記(化式2)が、下記式(化式3)で表されるリン化合物であることを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載のポリエステル重合触媒。
【化3】

(4)(化式1)/(化式2)のモル比が、0.5〜5であることを特徴とする(1)に記載のポリエステル重合触媒。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル重合触媒を用いたポリエステルの製造方法。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル重合触媒を用いて製造されたポリエステル。
(7)(6)に記載のポリエステルからなる中空成形体。
(8)(6)に記載のポリエステルからなる繊維。
(9)(6)に記載のポリエステルからなるフィルム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溶融重合活性、固相重合活性に優れる重合触媒およびこれを用いて製造されたポリエステル並びにポリエステルの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の重合触媒を構成するゲルマニウム化合物としては、特に限定はされないが、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、特に二酸化ゲルマニウムが好ましい。二酸化ゲルマニウムとしては結晶性のものと非晶性のものの両方が使用できる。
【0015】
本発明の重合触媒を構成するリン化合物としては、上記(化式1)ならびに上記(化式2)に示す化合物を用い、(化式1)/(化式2)のモル比が0.1〜10である必要がある。
【0016】
(化式1)のみを用いた時、及び(化式1)/(化式2)のモル比が10超の時に比べ、本発明の(化式1)と(化式2)の二種のリン化合物を(化式1)/(化式2)=0.1〜10(モル比)で用いると、固相重合触媒活性を改善するだけではなく、異物低減効果、熱酸化安定性を有するポリエステルを与える事が出来る。特に(化式1)/(化式2)=0.1〜10(モル比)で用いることで、(化式1)を単独で使用した時、および(化式2)を単独で使用した時に比べ固相重合活性が優れるという驚くべき効果が得られる。これら効果の観点から、(化式1)/(化式2)=0.5〜5(モル比)であることが好ましい。(化式1)の化合物が、ベンジルホスホン酸、ベンジル基のベンゼン環のオルト位に置換基があるベンジルホスホン酸、またはこれらのホスホン酸エステル化合物である事が重要である。
【0017】
(化式2)のみを用いた時、及び(化式1)/(化式2)のモル比が0.1未満の時に比べ、本発明の(化式1)と(化式2)の二種のリン化合物を(化式1)/(化式2)=0.1〜10(モル比)で用いると、固相重合速度が速いポリエステル重合触媒を与える事が出来る。これら効果の観点から、(化式1)/(化式2)=0.5〜5(モル比)であることが好ましい。弱い電子求引性かつ強い電子供与性を示すヒドロキシ基を有する(化式2)は、ヒドロキシ基がラジカルとなるため熱酸化安定性を向上させる。
【0018】
(化式1)と(化式2)の二種のリン化合物を(化式1)/(化式2)=0.1〜10(モル比)で用いることにより、固相重合活性が向上する理由については、明確に解明できていないが、ゲルマニウム化合物を含めた相互作用が固相重合速度に影響しているものと推察している。
また、(化式1)と(化式2)の二種のリン化合物を(化式1)/(化式2)=0.1〜10(モル比)で用いることを満足しておれば、例えば、第三成分のリン化合物を本発明の効果を損なわない範囲で、併用しても構わない。
【0019】
前記一般式(化式1)のRのアルキル基は炭素数1〜15が好ましく、より好ましくは炭素数1〜8、さらに好ましくは炭素数1〜4である。Rとしては、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましい。炭素数15を超えると、重合中に発泡することがあり好ましくない。炭素数が多いと、重合条件下で切断され発泡の原因になっている。
【0020】
前記一般式(化式1)中のRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。炭素数1〜20の炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数20を超えると、上記と同じ理由で好ましくない。RおよびRとしては、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
【0021】
前記一般式(化式2)のR、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R、Rの炭化水素基は、炭素数1〜15のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらに好ましい。炭素数20を超えると重合中に発泡し、炭素数15〜20でも置換基によって発泡することがあり、R、Rが水素原子であると得られたポリエステルの熱酸化安定性が低下する。R、Rの位置は、ヒドロキシ基のラジカルを安定させ、熱酸化安定性を向上させるため、ヒドロキシの両隣に位置することが必須である。前記一般式(化式2)のR、Rとしては、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
【0022】
前記一般式(化式2)中のRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。炭素数1〜20の炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数20を超えると、上記と同じ理由で好ましくない。RおよびRとしては、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
【0023】
本発明における前記一般式(化式1)のリン化合物としては、次のようなものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
ベンジルホスホン酸、ベンジルホスホン酸モノメチルエステル、ベンジルホスホン酸ジメチルエステル、ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−メチルベンジルホスホン酸、2−メチルベンジルホスホン酸モノメチルエステル、2−メチルベンジルホスホン酸ジメチルエステル、2−メチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−メチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−エチルベンジルホスホン酸、2−エチルベンジルホスホン酸モノメチルエステル、2−エチルベンジルホスホン酸ジメチルエステル、2−エチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−エチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−n−プロピルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−n−プロピルベンジルホスホン酸、2−イソプロピルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−イソプロピルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−イソプロピルベンジルホスホン酸、2−n−ブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−n−ブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−n−ブチルベンジルホスホン酸、2−sec−ブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−sec−ブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−sec−ブチルベンジルホスホン酸、2−tert−ブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−tert−ブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−tert−ブチルベンジルホスホン酸などが挙げられる。
【0024】
本発明における前記一般式(化式2)としては、次のようなものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
3,5−ジ−メチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジ−メチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジ−メチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸、3,5−ジ−エチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジ−エチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸、3,5−ジ−プロピル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジ−プロピル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジ−プロピル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸、3,5−ジ−iso−プロピル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジ−iso−プロピル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジ−iso−プロピル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸オクタデシルなどが挙げられる。好ましくは、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステルである。
【0025】
また、本発明のリン化合物は重合触媒としてゲルマニウム化合物以外の金属含有成分と組み合わせて用いることも可能である。
【0026】
本発明のポリエステル重合触媒を構成するリン化合物をアルキレングリコール等の溶媒で溶解して使用してもよい。(化式1)、(化式2)を同時もしくは別々に溶解してもよい。
本発明のポリエステル重合触媒を構成するリン化合物を予め加熱処理して使用してもよい。その時に使用する溶媒としては、アルキレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、リン化合物を溶解する溶媒を用いることが好ましい。アルキレングリコールとしては、エチレングリコール等の目的とするポリエステルの構成成分であるグリコールを用いることが好ましい。溶媒中での加熱処理は、リン化合物を溶解してから行うのが好ましいが、完全に溶解していなくてもよい。また、加熱処理の後に、化合物がもとの構造を保持している必要はない。(化式1)、(化式2)を同時もしくは別々に加熱処理してもよい。
【0027】
本発明の方法に従ってポリエステルを製造する際のリン化合物の使用量((化式1)、(化式2)のリン化合物の合計量)としては、得られるポリエステルのポリカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.0001〜0.1モル%が好ましく、0.005〜0.05モル%であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明のリン化合物を用いることにより、ポリエステル重合触媒中のゲルマニウムとしての添加量が少量でも十分な触媒効果を発揮する触媒が得られる。リン化合物の添加量が0.0001モル%未満の場合には添加効果が発揮されない場合があり、また0.1モル%を超えて添加すると逆にポリエステル重合触媒としての触媒活性が低下する場合があり、その低下の傾向は、ゲルマニウムの使用量等により変化する。
【0029】
本発明のポリエステル重合触媒の一方を構成する前記ゲルマニウム化合物は、水やアルキレングリコールなどの溶媒に可溶化したものが好ましい態様である。また、本発明のポリエステル重合触媒を構成するもう一方のリン化合物は、アルキレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である溶媒に溶解して使用することが触媒活性の点で好ましい。上記ゲルマニウム化合物の水溶液もしくはアルキレングリコール溶液および上記リン化合物のアルキレングリコール溶液は、それぞれ別々に添加し使用することが可能である。しかしながら、ゲルマニウム化合物およびリン化合物のアルキレングリコール溶液を混合した重合触媒系を用いる方が、触媒活性向上、異物低減の点で好ましく、さらに上記両アルキレングリコール触媒混合溶液を適度に事前加熱処理しておくことは、触媒活性向上、異物低減の点でより好ましい態様である。
【0030】
本発明の重合触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、もしくはこれらの化合物を含有していないものであることが好ましい。
【0031】
また一方で、本発明においてゲルマニウムもしくはその化合物に加えて少量のアルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物から選択される少なくとも1種を第2金属含有成分として共存させることが好ましい態様である。かかる第2金属含有成分を触媒系に共存させることは、ジエチレングリコールの生成を抑制する効果に加えて触媒活性を高め、従って反応速度をより高めた触媒成分が得られ、生産性向上に有効である。
【0032】
本発明の重縮合触媒は、アンチモン化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物などの他の重縮合触媒を、これらの成分の添加が前述のようなポリエステルの特性、加工性、色調等製品に問題を生じない添加量の範囲内において共存させて用いることは、重合時間の短縮による生産性を向上させる際に有効である。
【0033】
その場合、アンチモン化合物は、重合して得られるポリエステルに対してアンチモン原子として50ppm以下の量で添加することが好ましい。より好ましい添加量は、30ppm以下である。アンチモンの添加量を50ppm超にすると、金属アンチモンの析出が起こり、ポリエステルに黒ずみや異物が発生するため好ましくない。
【0034】
その場合、アルミニウム化合物は、重合して得られるポリエステルに対してアルミニウム原子として40ppm以下の量で添加することが好ましい。より好ましい添加量は30ppm以下である。アルミニウムの添加量を40ppm超にすると、ポリエステルの耐熱性を悪化させるため好ましくない。
【0035】
その場合、チタン化合物は、重合して得られるポリエステルに対してチタン原子として5ppm以下の量で添加することが好ましい。より好ましい添加量は3ppm以下であり、さらに好ましくは1ppm以下である。チタンの添加量を5ppm超にすると、得られるポリエステルの着色が顕著になり、さらに熱安定性が顕著に低下するため好ましくない。
【0036】
本発明のポリエステルには、色調改善等の目的でコバルト化合物をコバルト原子としてポリエステルに対して10ppm未満の量で添加することが好ましい態様である。より好ましくは5ppm以下であり、さらに好ましくは3ppm以下である。コバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には例えば、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルトおよびそれらの水和物等が挙げられる。その中でも特に酢酸コバルト四水和物が好ましい。
【0037】
本発明によるポリエステルの製造は、触媒として本発明のポリエステル重合触媒を用いる点以外は従来公知の工程を備えた方法で行うことができる。例えば、PETを製造する場合は、テレフタル酸とエチレングリコ−ル及び必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ル及び必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。さらに必要に応じて極限粘度を増大させる為に固相重合を行ってもよい。固相重合前の結晶化促進のため、溶融重合ポリエステルを吸湿させたあと加熱結晶化させたり、また水蒸気を直接ポリエステルチップに吹きつけて加熱結晶化させたりしてもよい。
【0038】
前記溶融重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、エステル化反応、あるいはエステル交換反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。溶融重縮合反応も1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0039】
上記エステル化反応は原料としてテレフタル酸を用いる場合は、テレフタル酸の酸としての触媒作用により無触媒でも反応させることができるが重縮合触媒の共存下に実施してもよい。
【0040】
また、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの水酸化第4級アンモニウムおよび炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性化合物を少量添加して実施すると、ポリエチレンテレフタレ−トの主鎖中のジオキシエチレンテレフタレ−ト成分単位の割合を比較的低水準(全ジオ−ル成分に対して5モル%以下)に保持できるので好ましい。
【0041】
低フレーバー飲料やミネラルウォーター用耐熱中空成形体のように低アセトアルデヒド含有量や低環状3量体含有量を要求される場合などにおいては、このようにして得られた溶融重縮合されたポリエステルは固相重合される。前記のポリエステルを従来公知の方法によって固相重合する。まず固相重合に供される前記のポリエステルは、不活性ガス下または減圧下あるいは水蒸気または水蒸気含有不活性ガス雰囲気下において、100〜210℃の温度で1〜5時間加熱して予備結晶化される。次いで不活性ガス雰囲気下または減圧下に190〜230℃の温度で1〜30時間の固相重合を行う。
【0042】
本発明の触媒は、重縮合反応のみならずエステル化反応およびエステル交換反応にも触媒活性を有する。例えば、テレフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸のアルキルエステルとエチレングリコールなどのグリコールとのエステル交換反応の際に本発明の触媒を用いることもできる。また、本発明の触媒は、溶融重合のみならず固相重合や溶液重合においても触媒活性を有しており、いずれの方法によってもポリエステルを製造することが可能である。
【0043】
本発明の重合触媒は、重合反応の任意の段階で反応系に添加することができる。例えばエステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中の任意の段階あるいは重縮合反応の開始直前あるいは重縮合反応途中の任意の段階で反応系への添加することができる。
【0044】
本発明に言うポリエステルとは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種または二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種または二種以上とから成るもの、またはヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から成るもの、または環状エステルから成るものをいう。
【0045】
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3-シクロブタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5-(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4、4’-ビフェニルジカルボン酸、4、4’-ビフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’-ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0046】
これらのジカルボン酸のうちテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸とくに2,6−ナフタレンジカルボン酸が、得られるポリエステルの物性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を構成成分とする。
【0047】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3、4、3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0048】
グリコールとしてはエチレングリコール、1、2-プロピレングリコール、1、3-プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2-ブチレングリコール、1、3-ブチレングリコール、2、3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1、5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオー ル、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジエタノール、1,10-デカメチレングリコール、1、12-ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビスフェノール、1,4-ビス(βーヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(βーヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1、2-ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5-ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0049】
これらのグリコールのうちエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0050】
これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
【0051】
ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0052】
環状エステルとしては、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、β-メチル-β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0053】
多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが挙げられる。
【0054】
本発明のポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートおよびこれらの共重合体が好ましく、これらのうちポリエチレンテレフタレートおよびこの共重合体が特に好ましい。
【0055】
本発明の方法に従ってポリエステル重合をした後に、このポリエステルから触媒を除去するか、またはリン系化合物などの添加によって触媒を失活させることによって、ポリエステルの熱安定性をさらに高めることができる。
【0056】
本発明のポリエステル中には、有機系、無機系、及び有機金属系のトナー、ならびに蛍光増白剤などを含むことができ、これらを一種もしくは二種以上含有することによって、ポリエステルの黄み等の着色をさらに優れたレベルにまで抑えることができる。また他の任意の重合体や制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
【0057】
これらの添加剤は、ポリエステルの重合時もしくは重合後、あるいはポリエステルの成形時の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは化合物の特性やポリエステル成形体の要求性能に応じてそれぞれ異なる。
【0058】
本発明のポリエステル重合触媒を用いて重合したポリエステルは常法の溶融紡糸法により繊維を製造することが可能であり、紡糸・延伸を2ステップで行う方法及び1ステップで行う方法が採用できる。さらに、捲縮付与、熱セットやカット工程を備えたステープルの製造方法やモノフィラメントなど公知の繊維製造方法がすべて適用できるものである。
【0059】
本発明のポリエステルは、中空成形体として好適に用いられる。
中空成形体としては、ミネラルウォーター、ジュース、ワインやウイスキー等の飲料容器、ほ乳瓶、瓶詰め食品容器、整髪料や化粧品等の容器、住居および食器用洗剤容器等が挙げられる。
【0060】
これらの中でも、ポリエステルの持つ衛生性及び強度、耐溶剤性を活かした耐圧容器、耐熱耐圧容器、耐アルコール容器として各種飲料用に特に好適である。中空成形体の製造は、溶融重合や固相重合によって得られたポリエステルチップを真空乾燥法等によって乾燥後、押し出し成型機や射出成形機等の成形機によって成形する方法や、溶融重合後の溶融体を溶融状態のまま成形機に導入して成形する直接成形方法により、有底の予備成形体を得る。さらに、この予備成形体を延伸ブロー成形、ダイレクトブロー成形、押出ブロー成形などのブロー成型法により最終的な中空成形体が得られる。もちろん、上記の押し出し成型機や射出成形機等の成形機によって得られた成形体を最終的な中空容器とすることもできる。
【0061】
このような中空成形体の製造の際には、製造工程で発生した廃棄樹脂や市場から回収されたポリエステル樹脂を混合することもできる。このようなリサイクル樹脂であっても、本発明のポリエステル樹脂は劣化が少なく、高品質の中空成型品を得ることができる。
【0062】
また、本発明のポリエステルは押し出し機からシ−ト状物に押し出し、シートとすることもできる。このようなシートは、真空成形や圧空成形、型押し等により加工し、食品や雑貨用のトレイや容器、カップ、ブリスタ−パック、電子部品のキャリアテープ、電子部品配送用トレイとして用いる。また、シートは各種カードとして利用することもできる。
【0063】
本発明のポリエステル重合触媒を用いて重合したポリエステルは、フィルムに用いることができる。その方法は、ポリエステルを溶融押出しし、T−ダイスより冷却回転ロール上にシート状に成型し、未延伸シートを作成する。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、評価法は以下の方法で実施した。
【0065】
(1)固有粘度(IV:dl/g)
溶融重縮合および固相重縮合で得られたそれぞれのポリエステルペレット(長さ約3mm、直径約2mm、シリンダー状)を、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンの6/4(重量比)混合溶媒に80〜100℃で数時間かけ溶解し、ウベローデ粘度計を用いて、温度30℃で測定した。濃度は、4g/lを中心にして何点か測定し、常法に従ってIVを決定した。
【0066】
(2)カルボキシ末端量の測定方法
A.試料の調整
ポリエステルを粉砕し、70℃で24時間真空乾燥を行った後、天秤を用いて0.20±0.0005gの範囲に秤量する。そのときの重量をW(g)とする。試験管にベンジルアルコール10mlと秤量した試料を加え、試験管を205℃に加熱したベンジルアルコール浴に浸し、ガラス棒で攪拌しながら試料を溶解する。溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれA、B、Cとする。次いで、新たに試験管を用意し、ベンジルアルコールのみ入れ、同様の手順で処理し、溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれa、b、cとする。
B.滴定
予めファクターの分かっている0.04mol/l水酸化カリウム溶液(エタノール溶液)を用いて滴定する。指示薬はフェノールレッドを用い、黄緑色から淡紅色に変化したところを終点とし、水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)を求める。サンプルA、B、Cの滴定量をXA、XB、XC(ml)とする。サンプルa、b、cの滴定量をXa、Xb、Xc(ml)とする。
C.カルボキシ末端量の算出
各溶解時間に対しての滴定量XA、XB、XCを用いて、最小2乗法により、溶解時間0分での滴定量V(ml)を求める。同様にXa,Xb,Xcを用いて、滴定量V0(ml)を求める。次いで、次式に従いカルボキシ末端量を求めた。
カルボキシ末端量(eq/ton)=[(V−V0)×0.04×NF×1000]/W
NF:0.04mol/l水酸化カリウム溶液のファクター
W:試料重量(g)
【0067】
(3)熱酸化安定性パラメータ(TOS)
固相重合したIVが0.73dl/gのPETレジンチップを冷凍粉砕して20メッシュ以下の粉末にし、それを130℃で12時間真空乾燥したもの300mgを内径約8mm、長さ約140mmのガラス試験管に入れ70℃で12時間真空乾燥した後、シリカゲルを入れた乾燥管を試験管上部につけて乾燥した空気下で、230℃の塩バスに浸漬して15分間加熱した後のIVを測定し、下記計算式を用いて求めた。ただし、[IV]i および[IV]f1はそれぞれ加熱試験前と加熱試験後のIV(dl/g)を指す。冷凍粉砕は、フリーザーミル(米国スペックス社製6750型)を用いて行った。専用セルに約2gのレジンチップと専用のインパクターを入れた後、セルを装置にセットし液体窒素を装置に充填して約10分間保持し、その後、RATE10(インパクターが1秒間に約20回前後する)で5分間粉砕を行った。
TOS=0.245{[IV]f1-1.47−[IV]i-1.47
上記で表されるTOSが、0.05以下であれば熱酸化安定性が良好であると判断した。
【0068】
(ゲルマニウム化合物の調製例)
二酸化ゲルマニウムにエチレングリコールを添加し、120℃で溶解し、1時間攪拌後、更に室温で6時間攪拌した後、80〜110℃で数時間攪拌しながら80g/lのゲルマニウム化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
【0069】
(リン化合物の調製例)
リン化合物として、ベンジルホスホン酸ジエチルエステルをエチレングリコールと共にフラスコに仕込み、窒素置換下攪拌しながら液温180℃で25時間還流し、50g/lの該リン化合物のエチレングリコール溶液aを調製した。別途、リン化合物として、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステルをエチレングリコールと共にフラスコに仕込み、窒素置換下攪拌しながら液温180℃で25時間還流し、50g/lの該リン化合物のエチレングリコール溶液bを調製した。調整した二種をモル比a/b=2/1になるように調整した。
【0070】
(ゲルマニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例)
上記ゲルマニウム化合物の調製例および上記リン化合物の調製例で得られたそれぞれのエチレングリコール溶液をアンチモン原子とリン原子がモル比で1:0.85となるように室温で混合し、1日間攪拌して触媒溶液を調製した。
【0071】
(実施例1)
攪拌機付き2リッターステンレス製オートクレーブに高純度テレフタル酸とエチレングリコールを仕込み、常法に従ってエステル化反応を行いオリゴマー混合物を得た。このオリゴマー混合物に重縮合触媒として、上記(ゲルマニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例)の重合触媒を用い、ポリエステル中の酸成分に対してゲルマニウム原子およびリン原子としてそれぞれ0.0265モル%および0.0225モル%になるように加え、次いで、窒素雰囲気下、常圧にて250℃で10分間攪拌した。その後、60分間かけて280℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに280℃、13.3PaでIVが約0.60dl/gになるまで重縮合反応を実施した。放圧に続き、微加圧下のレジンを冷水にストランド状に吐出して急冷し、その後20秒間冷水中で保持した後、カティングして長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得た。重縮合反応に要した時間(重合時間)と得られたポリエステルのIVを表1に示す。このようにして得られた溶融重合レジンを真空状態で180℃、1時間放置しレジンの結晶化を実施した。その後、80℃で8時間真空乾燥させ、80℃から220℃までを2時間かけ昇温し、0.5Torrの条件でIVが約0.73dl/gになるまで固相重合を実施した。各種評価の結果を表1に記す。
【0072】
(比較例1)
実施例1において、上記(ゲルマニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例)に替えて(ゲルマニウム化合物の調製例)を用い、ポリエステル中の酸成分に対してゲルマニウム原子として0.0265モル%になるように加えた以外は、実施例1と同様に実施した。各種評価の結果を表1に記す。
【0073】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明により、触媒活性に優れ、熱安定性に優れるポリエステル重合触媒およびこれを用いて製造されたポリエステル並びにポリエステルの製造方法を提供できる。特に、固相重合活性に優れることで、ポリエステルの生産性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマニウム化合物およびリン化合物を含むポリエステル重合触媒において、前記リン化合物として下記式(化式1)ならびに下記式(化式2)で表される化合物を用い、(化式1)/(化式2)のモル比が0.1〜10であることを特徴とするポリエステル重合触媒。
【化1】

[(化式1)中、Rは、アルキル基または水素原子を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
【化2】

[(化式2)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
【請求項2】
上記(化式1)が、(化式1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であるリン化合物である請求項1に記載のポリエステル重合触媒。
【請求項3】
上記(化式2)が、下記式(化式3)で表されるリン化合物であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリエステル重合触媒。
【化3】

【請求項4】
(化式1)/(化式2)のモル比が、0.5〜5であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル重合触媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル重合触媒を用いたポリエステルの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル重合触媒を用いて製造されたポリエステル。
【請求項7】
請求項6に記載のポリエステルからなる中空成形体。
【請求項8】
請求項6に記載のポリエステルからなる繊維。
【請求項9】
請求項6に記載のポリエステルからなるフィルム。

【公開番号】特開2011−63754(P2011−63754A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217046(P2009−217046)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】