説明

ポリエステル重縮合触媒およびそれを用いるポリエステルの製造方法

【課題】触媒に起因した異物の発生濾圧上昇がなく、成形時における金型汚れが低減し製糸性が良好であり、かつ従来品に比べてポリマーの熱安定性、色調が優れたポリエステルを得ることが出来る重縮合触媒およびそれを用いるポリエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】チタン化合物とトリペンタエリスリトールとを、チタン原子とトリペンタエリスリトールのモル比1:1〜1:2で反応させることにより得られるポリエステル重縮合触媒ならびに該触媒を用いるポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル重縮合触媒に関するものである。更に詳しくは、ポリエステルの製造時において、重合時に使用した触媒起因の異物による濾圧上昇がなく、製糸性が良好であり、かつ、従来品に比べてポリマーの熱安定性及び色調に優れたポリエステルを得ることが出来るとともに、反応中に失活しにくいポリエステル重縮合触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルはその機能性の有用さから多目的に用いられており、例えば、衣料用、資材用、医療用に用いられている。その中でも、汎用性、実用性の点でポリエチレンテレフタレートが優れ、好適に使用されている。
【0003】
一般にポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールから製造されるが、高分子量のポリマーを製造する商業的なプロセスでは、重縮合触媒としてアンチモン化合物が広く用いられている。しかしながら、アンチモン化合物を含有するポリマーは以下に述べるような幾つかの好ましくない特性を有している。
【0004】
例えば、アンチモン触媒を使用して得られたポリマーを溶融紡糸して繊維とするときに、アンチモン触媒の残渣が口金孔周りに堆積することが知られている。アンチモン触媒残渣の堆積が生じるのは、ポリマー中のアンチモン化合物が口金近傍で変成し、一部が気化、散逸した後、アンチモンを主体とする成分が口金に残るためであると考えられている。この堆積が進行するとフィラメントに欠点が生じる原因となるため、適時除去する必要が生じる。また、ポリマー中のアンチモン触媒残渣は比較的大きな粒子状となりやすく、異物となって成形加工時のフィルターの濾圧上昇、紡糸の際の糸切れあるいは製膜時のフイルム破れの原因になるなどの好ましくない欠点を有しており、操業性を低下させる一因となっている。
【0005】
上記のような背景からアンチモンを含有しないポリエステルが求められている。そこで、重縮合触媒の役割をアンチモン系化合物以外の化合物に求める場合、ゲルマニウム化合物が知られているが、ゲルマニウム化合物は埋蔵量も少なく希少価値であることから汎用的に用いることは難しい。
【0006】
一方、この問題に対して重縮合触媒としてチタン化合物を用いる検討が盛んに行われている。チタン化合物はアンチモン化合物に比べて触媒活性が高いため、少量の添加で所望の触媒活性を得ることができるため、異物粒子の発生や口金汚れを抑制することができる。しかし、チタン化合物を重縮合触媒として用いると、その活性の高さゆえに熱分解反応や酸化分解反応などの副反応も促進するため、熱安定性が悪くなりポリマーが黄色く着色するという課題が生じる。ポリマーが黄色味を帯びるということは、例えばポリエステルを繊維として用いる場合、特に衣料用繊維では商品価値を損なうので、好ましくない。上記の通り、触媒に起因した異物の発生や成形時における金型汚れを低減させ、従来品に比べてポリマーの熱安定性、色調が飛躍的に優れたポリエステルを得るには、アンチモン触媒を使用せず、チタン化合物を重縮合触媒とし、重縮合反応活性を損なうことなく、副反応を抑制するという矛盾した課題を解決する必要があった。
【0007】
これに対し重縮合触媒としてチタン化合物とリン化合物とアミンとからなる組成物(特許文献1)、チタン化合物とリン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応生成物(特許文献2〜4)が提案されている。これらの方法によれば触媒に起因した異物を少なくすることが出来るものの、得られるポリマーの色調は十分なものではない。従って、チタン化合物のさらなる改善が求められている。
【0008】
そもそも、ポリエステルの着色や耐熱性の悪化は、飽和ポリエステル樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社、初版、P.178〜198)に明示されているように、ポリエステル重合の副反応によって起こる。このポリエステルの副反応は、ルイス酸性を有した金属触媒によってカルボニル酸素が活性化され、β水素が引き抜かれることにより、ビニル末端基成分およびアルデヒド成分が発生する。このような副反応を契機としてポリマーが黄色に着色し、また、主鎖エステル結合が切断されるため、耐熱性が劣ったポリマーとなる。特にチタン化合物を重縮合触媒として用いると、熱による副反応の活性化が強いために、ビニル末端基成分やアルデヒド成分が多く発生し、黄色に着色した耐熱性が劣ったポリマーとなる。この着色のメカニズムは現在のところ完全には明らかになっていないが、チタン化合物と不純物が特異的に配位することにより着色しているものと推定される。そこで、チタンを包接するような配位子を用いれば、チタン化合物と不純物の特異的な配位を抑制することができるため着色を抑制できるうえ、チタン化合物のルイス酸性を弱めることができるため、カルボニル酸素の活性化を抑制し、その結果主鎖エステル結合の切断ならびにビニル末端基成分およびアルデヒド成分の発生を抑制するため、ポリマーの熱安定性が良好となるのではないかとの仮説を得た。そこで本発明では、この仮説に基づき上記課題を改善することについて鋭意検討した結果、多価アルコールであるトリペンタエリスリトールを配位子として用いてチタンと反応させれば、本発明の目的を達成できるという知見を得た。なお、本発明は多価アルコールでもトリペンタエリスリトールを用いた場合に特異的であり、トリペンタエリスリトールとチタン化合物を反応させて得られた触媒に際だった色調改善効果があることを見出した。具体的には、トリペンタエリスリトールの代わりにエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、またはペンタエリスリトールなどの二価、三価または四価アルコールでは得られるポリマーの色調改善効果や熱安定性の向上はなく、トリペンタエリスリトールが際だってそれらの効果があることを見出した。さらにこの触媒は、触媒の保存安定性に優れるだけでなく、重合系中でも失活しにくいため触媒量を減らすことが出来るため、触媒に起因した異物を少なくすることが出来る。これらの現象はチタンを包接するように配位子が配位しているため、チタン化合物のPET中への相溶性が高まること、また、チタン化合物が重合系中で微量に生成する水と反応し、酸化チタンが副生するのを抑制していることが原因と考えている。
【0009】
重合触媒として多価アルコールを含むチタン触媒としては、チタン化合物と少なくとも2つのヒドロキシル基を有するアルコールとリン化合物と塩基の反応生成物(特許文献5)があるが、ここでいう2つのヒドロキシル基を有するアルコールとは主に二価アルコールを表しており、水酸基を5個以上含む多価アルコールの開示はない。また、チタン化合物と脂肪族ジオールおよび3価以上の多価アルコールを含むチタン含有溶液(特許文献6)が開示されているが、ここで言う3価以上の多価アルコールは触媒の溶解度を高め、沈殿を生じさせないよう触媒溶液の安定性を高め、高濃度のチタン含有溶液を得ること、および回収再使用する脂肪族ジオールの品質に悪影響を及ぼさないことを目的とした溶解助剤として用いられており、本発明とは本質的に異なる発明であるうえ、得られるポリマーの色調改善効果や耐熱性向上に関する開示はなく、トリペンタエリスリトールについても具体的な開示はなされていない。その他、主たる成分が酸化チタンであり多価アルコールを含有しているポリエステル製造用触媒(特許文献7)が開示されているが、一般に酸化チタンは反応性に乏しく配位子と反応しないうえ重合活性も極めて低いため、本特許の発明とは異なる。また、トリペンタエリスリトールについての具体的な開示もない。
【特許文献1】特表2002−512267号公報
【特許文献2】WO2001−000706号公報
【特許文献3】特開2002−293909号公報
【特許文献4】WO2003−008479号公報
【特許文献5】特表2001−524536号公報
【特許文献6】WO2004−111105号公報
【特許文献7】特開2001−200045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は上記従来の問題を解消し、すなわち、触媒に起因した異物の発生や成形時における金型汚れが低減し、従来品に比べてポリマーの熱安定性、色調が飛躍的に優れたポリエステルが得られる重縮合触媒およびそれを用いるポリエステルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記本発明の課題は、チタン化合物とトリペンタエリスリトールとを、チタン原子とトリペンタエリスリトールのモル比1:1〜1:2で反応させることにより得られるポリエステル重縮合触媒ならびに該触媒を用いるポリエステルの製造方法により達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のチタン系重縮合触媒は、触媒の保存安定性に優れるだけでなく重合系中でも失活しにくいため、触媒量を減らすことが出来るため経済的にも有利である。また、触媒に起因した異物の発生を抑制することも出来る。また、該触媒の存在下で重縮合させて得られるポリエステルは、従来品に比べて飛躍的にポリマーの熱安定性、色調が向上するうえ、繊維用、フイルム用、ボトル用等の成形体の製造において、色調悪化、口金汚れ、濾圧上昇、糸切れ等の問題を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びアルキレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーであって、繊維、フィルム、ボトル等の成形品として用いることが可能であれば特に限定はない。
【0014】
このようなポリエステルとして具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。本発明は、なかでも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体において好適である。
【0015】
また、これらのポリエステルには共重合成分として、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、 4,4’−ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオール化合物及びそのエステル形成性誘導体等が共重合されていてもよい。
【0016】
一般にジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びアルキレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体からポリエステルを合成する一連の反応は次の(1)〜(3)の反応からなる。
(1)ジカルボン酸成分とアルキレングリコール成分との反応であるエステル化反応
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とアルキレングリコール成分との反応であるエステル交換反応
(3)実質的にエステル化反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリエチレンテレフタレート低重合体を脱アルキレングリコール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応
本発明の重縮合触媒とは、上記(1)〜(3)のうち(3)の反応促進に寄与する効果を持っているものを指す。従って、繊維の艶消し剤等に無機粒子として一般的に用いられている酸化チタン粒子は上記の反応に対して実質的に触媒作用を有しておらず、本発明の重縮合触媒として用いることができるチタン化合物とは異なる。
【0017】
本発明のポリエステルの重縮合触媒は、チタン化合物とトリペンタエリスリトールとを、チタン原子とトリペンタエリスリトールのモル比1:1〜1:2で反応させることが必須である。なお、この時のチタン原子に艶消しの目的で添加する酸化チタン粒子は含まれない。
【0018】
本発明のチタン化合物とは、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルであり、具体的にはチタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシドなどを挙げることが出来るが、なかでも反応性が良好でありながら比較的安定で取扱いやすいチタンテトラブトキシドまたはチタンテトライソプロポキシドが好ましい。
【0019】
チタン化合物とトリペンタエリスリトールとを反応させる際、塩基存在下で反応させると得られる触媒の水に対する安定性が高まり好ましい。
【0020】
本発明で用いる塩基とは、アミン化合物またはアルカリ金属化合物であり、具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、アンモニア、N−メチルイミダゾール、トリエチルアミンが挙げられるが、なかでも水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、アンモニア、またはN−メチルイミダゾールが、得られるポリマーの色調が良好になり好ましい。
【0021】
反応させる塩基の量は、過剰に用いると得られるポリマーの色調を悪化させるだけでなく、重縮合活性も失活してしまう。塩基のモル数とチタン化合物のチタン原子のモル数との比は、1:1〜0.01:1が好ましく、0.2:1〜0.01:1が重縮合活性の面からより好ましい。なお、この時のチタン原子に艶消しの目的で添加する酸化チタン粒子は含まれない。
【0022】
チタン化合物とトリペンタエリスリトールとを反応させる際は、溶媒中で反応させるのが好ましいが、その際用いる溶媒としては、チタン化合物とトリペンタエリスリトールが溶解する溶媒が好ましく、特に水、エチレングリコールまたはそれらの混合物がより好ましい。
【0023】
チタン化合物とトリペンタエリスリトールを反応させる際の反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜1時間がより好ましい。
【0024】
本発明の触媒の調製法としては、まずトリペンタエリスリトールを水またはエチレングリコールまたはそれらの混合物に溶解しておき、そこへチタン化合物を添加するのが好ましい。その際チタン化合物は原液またはエチレングリコール溶液として添加するのが好ましい。チタン化合物をエチレングリコール溶液として添加する場合、チタン化合物のエチレングリコール溶液にさらに塩基を加えてからトリペンタエリスリトールに添加すると、得られる触媒の水に対する安定性が高まるためにより好ましく、その際塩基は水またはエチレングリコール溶液として加えるのが好ましい。
【0025】
このようにして得られたチタン系重縮合触媒の存在下に重縮合させてポリエステルを製造すると、得られるポリマーの色調と耐熱性が大幅に改善される。
【0026】
本発明のポリエステルの製造方法は、艶消しの目的で添加する酸化チタン粒子を除くチタン化合物を、得られるポリマーに対してチタン原子換算で1〜20ppmとなるように添加するとポリマーの熱安定性や色調がより良好となり好ましく、更に好ましくは2〜10ppmである。また、前述の通りチタン原子のモル数とトリペンタエリスリトールのモル数の比が1:1〜1:2で反応させることが好ましく、結果として、トリペンタエリスリトールとしては得られるポリマーに対して1〜200ppmとなるように添加することが好ましく、30〜160ppmとなるように添加するのがより好ましい。
【0027】
また、本発明のポリエステルの製造方法は、チタン化合物と共にリン化合物をポリエステルに対してリン原子換算で1〜50ppmとなるように添加してもよい。なおその場合には、製糸や製膜時におけるポリエステルの熱安定性や色調の観点からリン添加量は10〜20ppmとしてもよい。また、リン化合物中のリン原子はチタン化合物のチタン原子に対してモル比率でP/Ti=0〜7.00であるとポリエステルの熱安定性や色調が良好となる。P/Ti=1.50〜3.50であると、熱安定性と色調が良好でかつ重合時間が短くてすむ。
【0028】
リン化合物は3価のリン化合物であるホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、ホスフィナイト系化合物、ホスフィン系化合物でもよく、5価のリン化合物であるホスフェート系化合物、ホスホネート系化合物、ホスフィネート系化合物、ホスフィンオキシド系化合物でもよい。具体的には3価のリン化合物としては、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、式(1)で表される、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(PEP−36:旭電化社製)やジエチルフェニルホスホナイト、ジオクチルフェニルホスホナイト、式(2)で表されるテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(IRGAFOS P−EPQ:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製またはSandostab P−EPQ:クラリアント・ジャパン社製)、式(3)で表される、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(GSY−P101:大崎工業社製)が挙げられる。
【0029】
【化1】

【0030】
【化2】

【0031】
【化3】

【0032】
5価のリン化合物としては、リン酸、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジエチルフェニルホスホネート、ジブチルフェニルホスホネート、ジオクチルフェニルホスホネート、ジエチルホスホノ酢酸エチル、式(4)で表される、テトラエチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネート、トリフェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0033】
【化4】

【0034】
本発明のポリエステルの製造方法においては、助触媒としてマグネシウム化合物を、また助触媒と色調調整の目的でコバルト化合物を併用してもよい。この場合に用いるマグネシウム化合物としては、具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。コバルト化合物としては、具体的には、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト四水塩等が挙げられる。
【0035】
また、本発明のポリエステルの製造方法では、コバルトの代わりに色調調整剤として青系調整剤および/または赤系調整剤を添加してもよい。
【0036】
本発明の色調調整剤とは樹脂に用いられる原着(原液着色)用染料および/または顔料のことであり、油溶染料(SOLVENT DYES)、建染染料(VAT DYES)、分散染料(DESPERSE DYES)や有機顔料(ORGANIC PIGMENT)があげられる。COLOR INDEX GENERIC NAMEで具体的にあげると、青系調整剤としては、SOLVENT BLUE 104,SOLVENT BLUE 122,SOLVENT BLUE 45等があげられ、赤系調整剤としては、SOLVENT RED 111,SOLVENT RED 179,SOLVENT RED 195,SOLVENT RED 135,PIGMENT RED 263,VAT RED 41等があげられ,紫系調整剤としては、DESPERSE VIOLET 26,SOLVENT VIOLET 13,SOLVENT VIOLET 36,SOLVENT VIOLET 49等があげられる。なかでも装置腐食の要因となりやすいハロゲンを含有せず、高温での耐熱性が比較的良好で発色性に優れた、SOLVENT BLUE 104,SOLVENT BLUE 45,SOLVENT RED 179,SOLVENT RED 195,SOLVENT RED 135,SOLVENT VIOLET 36が好ましく用いられる。
【0037】
また、これらの色調調整剤を目的に応じて、1種類または複数種類用いてもよい。特に青系調整剤と赤系調整剤をそれぞれ1種類以上用いると色調を細かく制御できるため好ましい。さらにこの場合には、添加する色調調整剤の総量に対して青系調整剤の比率が50重量%以上であると得られるポリエステルの色調が特に良好となる。
【0038】
最終的にポリエステルに対する色調調整剤の含有量は総量で0〜10ppmであることが好ましい。30ppmを越えるとポリエステルの透明性が低下したり、くすんだ発色となることがある。
【0039】
本発明のポリエステルの製造方法においては、重縮合触媒や添加物はポリエステルの反応系にそのまま添加してもよいが、予め該化合物をエチレングリコール等のポリエステルを形成するアルキレングリコール成分を含む溶媒と混合し、溶液またはスラリーとし、必要に応じて該化合物合成時に用いた水等の低沸点成分を除去した後、反応系に添加すると、ポリマー中での異物生成がより抑制される。添加時期は、エステル化反応やエステル交換反応終了後、重縮合反応が開始される前に添加するのが好ましい。
【0040】
本発明の重縮合触媒、リン化合物、マグネシウム化合物、コバルト化合物および色調調整剤の反応系への添加順序は特に限ったものではないが、本発明の重縮合触媒と他の添加剤、すなわちリン化合物、マグネシウム化合物、コバルト化合物および色調添加剤は別々に反応系に添加することが好ましい。
【0041】
本発明のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルは、オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定したときの固有粘度(IV)が、0.4〜1.0dlg−1であるのが好ましい。0.5〜0.8dlg−1であるのがさらに好ましく、0.6〜0.7dlg−1であるのが特に好ましい。
【0042】
また、本発明の目的である熱安定性を向上させるためには、ポリエステルの末端カルボキシル基濃度が1〜40当量/トンの範囲であることが好ましい。末端カルボキシル基濃度が低いほど熱安定性が向上し、成形時において金型等に付着する汚れや製糸時において口金に付着する汚れが著しく低減する。末端カルボキシル基濃度が40当量/トンを超える場合には、金型や口金に付着する汚れを低減させる効果が小さくなることがある。末端カルボキシル基濃度は好ましくは35当量/トン以下である。
【0043】
本発明のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルは、ジエチレングリコールの含有量が0.1〜1.5重量%以下であると成形時における金型汚れが少なく好ましい。より好ましくは1.3重量%以下である。
【0044】
また、本発明のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルは、アセトアルデヒドの含有量が1〜15ppm以下であると、成形体における風味、香りへの悪影響を抑えるため好ましい。より好ましくは13ppm以下で、特に好ましくは11ppm以下である。
【0045】
チップ形状での色調がハンター値でそれぞれL値が60〜80、a値が−7〜2、b値が−5〜5の範囲にあることが、繊維やフィルムなどの成型品の色調の点から好ましい。
【0046】
本発明のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルは、150℃で12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下290℃で60分間溶融させた後の色調b値の変化Δb値290が−5〜5の範囲であることが、ポリマの耐熱性の点から好ましい。この値が小さいほど、熱劣化による分解・着色が少なく熱安定性に優れている。この値が5を超える場合には、紡糸時や成形加工時にポリマーが変色してしまい品質に重大な影響を与えてしまう。好ましくは3以下である。
【0047】
本発明のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルは、例えば溶融押出成形等によってフィラメント状に成形した後、延伸等を施すことにより繊維として有用なものとなる。
【0048】
本発明のポリエステルの製造方法を説明する。具体例としてポリエチレンテレフタレートの例を記載するがこれに限定されるものではない。
【0049】
ポリエチレンテレフタレートは通常、次のいずれかのプロセスで製造される。
(A)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス。
(B)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス。
【0050】
ここでエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、マグネシウム、カルシウム、リチウム等の化合物を触媒として用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加することが行われる。
【0051】
本発明のポリエステルは、(A)または(B)の一連の反応の前半で得られた低重合体に、本発明の重縮合触媒、また必要に応じてリン化合物、マグネシウム化合物、コバルト化合物、色調調整剤、酸化チタン粒子を添加した後、重縮合反応を行い、高分子量のポリエチレンテレフタレートを得るというものである。
【0052】
また、上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式に適応し得る。
【実施例】
【0053】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)ポリマーの固有粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(2)ポリマーのカルボキシル末端基量
オルソクレゾールを溶媒として、25℃で0.02規定のNaOH水溶液を用いて、自動滴定装置(平沼産業社製、COM−550)にて滴定して測定した。
(3)ポリマーの色調
色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いて、ハンター値(L、a、b値)として測定した。
(4)ポリマーのジエチレングリコール含有量
モノエタノールアミンを溶媒として、1,6−ヘキサンジオール/メタノール混合溶液を加えて冷却し、中和した後遠心分離した後に、上澄み液をガスクロマトグラフィ(島津製作所社製、GC−14A)にて測定した。
(5)ポリマーのアセトアルデヒド含有量
ポリエステルと純水を窒素シール下で160℃2時間の加熱抽出を行い、その抽出液中のアセトアルデヒド量を、イソブチルアルコールを内部標準としてガスクロマトグラフィー(島津製作所製「GC−14A」)を用いて定量した。
(6)Δb値290
ポリエステルチップを、150℃で12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下290℃で60分間加熱溶融させた後、(3)の方法にて色調を測定し、加熱溶融前後の差をΔb値290として測定した。
(7)口金の堆積物の観察
繊維の紡出から72時間後の口金孔周辺の堆積物量を、長焦点顕微鏡を用いて観察した。堆積物がほとんど認められない状態を○(合格)、堆積物が認められ頻繁に糸切れが発生する状態を×(失格)として判定した。
【0054】
実施例1
3Lの三口フラスコを窒素置換しておき、そこへ反応溶媒として脱水エチレングリコールを1000mL、トリペンタエリスリトールを5.8g(15.7mmol)加え、オイルバスで内温が80℃になるように加熱して攪拌した。1時間後、オイルバスをはずし、内温が25℃になるまで冷却してから、チタン化合物としてチタンテトラメトキシド2.69g(15.7mmol)を添加し、その後25℃で1時間攪拌した。こうして無色透明の触媒溶液TT−1(チタン含有量:0.75g/L)を得た。
【0055】
実施例2〜6
チタン化合物、トリペンタエリスリトール/Tiのモル比、反応温度、反応時間、反応溶媒を表1に記載した通り変更した以外は実施例1と同様にして、触媒溶液TT−2〜4,6(チタン含有量:0.75g/L)を得た。なお、実施例5のみ白色沈殿が生じたので、一度凍結乾燥をして水分を除去したのち、回収された白色固体をエチレングリコールに分散し、触媒懸濁液TT−5(チタン含有量:0.75g/L)を得た。
【0056】
実施例7
2Lの三口フラスコを窒素置換しておき、そこへ反応溶媒として蒸留水を500mL、トリペンタエリスリトールを5.8g(15.7mmol)加え、オイルバスで内温が80℃になるように加熱して攪拌した。1時間後、オイルバスをはずし、内温が25℃になるまで冷却した。一方、別の2L三口フラスコを窒素置換しておき、そこへ反応溶媒として脱水エチレングリコールを500mL入れておき、そこへチタン化合物としてチタンテトライソプロポキシド4.46g(15.7mmol)を添加し、続いて塩基として1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を1.57mL(1.57mmol)添加し、10分間室温で攪拌した。このチタン化合物のエチレングリコール溶液を、先に調製したトリペンタエリスリトール水溶液に添加し、反応温度25℃で1時間攪拌した。こうして無色透明の触媒溶液TT−7(チタン含有量:0.75g/L)を得た。
【0057】
実施例8〜14
チタン化合物、塩基、塩基/Tiのモル比、反応温度および反応時間を表1に記載した通り変更した以外は実施例7と同様にして、触媒TT−8〜14(チタン含有量:0.75g/L)を得た。ただし、実施例13では、塩基としてN-メチルイミダゾールを添加する際、水溶液でなく、エチレングリコール溶液を用いた。
【0058】
比較例1
3Lの三口フラスコを窒素置換しておき、そこへ反応溶媒として脱水エチレングリコールを1000mL加え、反応温度である25℃になるように恒温槽で調節した。そこへ、チタン化合物としてチタンテトライソプロポキシド4.46g(15.7mmol)を添加し、その後反応時間1時間をかけ、反応温度25℃で攪拌した。こうして無色透明の触媒溶液C−1(チタン含有量:0.75g/L)を得た。
【0059】
比較例2
2Lの三口フラスコを窒素置換しておき、そこへ反応溶媒として蒸留水を500mL入れた。一方、別の2L三口フラスコを窒素置換しておき、そこへ反応溶媒として脱水エチレングリコールを500mL入れておき、そこへチタン化合物としてチタンテトライソプロポキシド4.46g(15.7mmol)を添加し、続いて塩基として1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を31.4mL(31.4mmol)添加し、10分間室温で攪拌した。このチタン化合物のエチレングリコール溶液を、先の蒸留水500mLに添加し、反応温度25℃で1時間攪拌した。その結果、白濁した触媒懸濁液C−2(チタン含有量:0.75g/L)を得た。
【0060】
比較例3
チタン化合物およびトリペンタエリスリトール/Tiのモル比を表1に記載した通り変更した以外は実施例1と同様にして、無色透明の触媒溶液C−3(チタン含有量:0.75g/L)を得た。
【0061】
比較例4、5
トリペンタエリスリトール/Tiのモル比、塩基および塩基/Tiのモル比を表1に記載した通り変更した以外は実施例7と同様にして、触媒溶液C−4,5(チタン含有量:0.75g/L)を得た。ただし、比較例5では、塩基としてN-メチルイミダゾールを添加する際、水溶液でなく、エチレングリコール溶液を用いた。
【0062】
比較例6、7、9〜11
チタン化合物として表1に記載の通りチタンテトライソプロポキシドを用い、トリペンタエリスリトールの代わりに表1に記載の他の多価アルコールを用い、多価アルコール/Tiのモル比を表1に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして、無色透明の触媒溶液C−6、7、9〜11(チタン含有量:0.75g/L)を得た。
【0063】
比較例8
トリペンタエリスリトールの代わりにジペンタエリスリトールを用い、塩基を表1に記載した通り変更した以外は実施例7と同様にして、触媒C−8(チタン含有量:0.75g/L)を得た。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例15
予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約100kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に高純度テレフタル酸(三井化学社製)82.5kgとエチレングリコール(日本触媒社製)35.4kgのスラリーを4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、得られたエステル化反応生成物101.5kgを重縮合槽に移送した。
【0066】
エステル化反応生成物に、得られるポリマーに対してマグネシウム原子換算で5ppm相当の酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液、得られるポリマーに対してコバルト原子換算で20ppm相当の酢酸コバルトのエチレングリコール溶液および得られるポリマーに対してリン原子換算で10ppm相当のテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(大崎工業社製、GSY−P101)を添加する30分前に別の混合槽にて事前混合し、常温にて30分攪拌した後、その混合物を添加した。5分後に、得られるポリマーに対してチタン原子換算で5ppm相当の触媒溶液TT−1を添加し、さらに5分後に酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを、得られるポリマーに対して酸化チタン粒子換算で0.3重量%添加した。そしてさらに5分後に、反応系を減圧して反応を開始した。反応器内を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は2時間39分であった。得られたポリマーは、色調、耐熱性に優れたものであった。
【0067】
また、このポリエステルを150℃12時間真空乾燥した後、紡糸機に供しメルターにて溶融した後、紡糸パック部から吐出し、1000m/分の速度で引取った。溶融紡糸工程においては、紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
【0068】
実施例16〜28
触媒を表2に記載の通り変更した以外は実施例15と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。得られたポリマーは色調・耐熱性ともに優れていた。また、紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
実施例29〜37
触媒および触媒の添加量、リン化合物の種類と添加量を表4に記載の通りそれぞれ変更した以外は、実施例15と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例29,33,34では、やや色調が劣り、また実施例29、34,35ではやや耐熱性が劣ったが、製品上問題ないレベルであった。それ以外の実施例では色調、耐熱性ともに良好であった。また、紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
【0072】
実施例38〜42
コバルトの添加量を表4に記載の通り変更したほか、エステル化反応生成物に、マグネシウム、コバルト、リンを添加する際、続いて色調調整剤として染料を表4に記載の通り添加した。それ以外は実施例15と同様にしてポリエステルを重合、溶融紡糸した。いずれも色調はL値が低くなり、さらに実施例40〜42では色調a値、b値が低めになったが、製品上問題ないレベルであった。またいずれの場合も耐熱性は良好であった。また、紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
比較例12〜22
触媒を表6に記載の通り変更した以外は実施例15と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。比較例13は、所定の撹拌トルクにまで到達しなかった。比較例15、16では、所定の撹拌トルクに到達するまでの時間が大幅に長くなった。いずれもポリマーの色調は黄色味が強く(色調b値が高く)、アセトアルデヒドを多く含有しており、またΔb値290の値が大きく、耐熱性の劣ったポリマーであった。
【0076】
比較例23、27〜29
表6に記載の通り、重縮合触媒を変更し、酢酸マグネシウムの添加量を変更し、酢酸コバルトを添加する代わりに色調調整剤(SOLVENT BLUE 104)を添加した以外は実施例15と同様にしてポリエステルを重合、溶融紡糸した。ポリマーの色調b値は良好であったが、L値が低く、アセトアルデヒドを多く含有しており、Δb値290の値が大きく、耐熱性の劣ったポリマーであった。
【0077】
比較例24
重縮合触媒としてC−1を用い、触媒とは別にトリペンタエリスリトールをトリペンタエリスリトール/Tiモル比で1となるよう重合系に添加した以外は実施例15と同様にしてポリエステルを重合、溶融紡糸した。ポリマーの色調は黄色味が強く(色調b値が高く)、アセトアルデヒドを多く含有しており、またΔb値290の値が大きく、耐熱性の劣ったポリマーであった。
【0078】
比較例25、26
重縮合触媒、リン化合物を表6に記載の通り変更した以外は実施例15と同様にしてポリエステルを重合したが、いずれの場合も所定の撹拌トルクにまで到達しなかった。
【0079】
比較例30
チタン化合物の代わりにアンチモン化合物の酸化アンチモンを重縮合触媒として添加し、リン化合物の添加量を増やしたこと以外は実施例15と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。ポリマー色調および耐熱性は良好なポリマーであったが、溶融紡糸時の口金孔周辺に堆積物が見られ濾圧上昇および糸切れが発生した。
【0080】
【表6】

【0081】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン化合物とトリペンタエリスリトールとを、チタン原子とトリペンタエリスリトールのモル比1:1〜1:2で反応させることにより得られるポリエステル重縮合触媒。
【請求項2】
チタン化合物とトリペンタエリスリトールとを塩基存在下で反応させることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル重縮合触媒。
【請求項3】
チタン化合物がチタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラエトキシド、またはチタンテトラメトキシドから選ばれた少なくとも一種である請求項1または2に記載のポリエステル重縮合触媒。
【請求項4】
塩基が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、アンモニア、またはN−メチルイミダゾールから選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項2または3に記載のポリエステル重縮合触媒。
【請求項5】
塩基と、チタン化合物のチタン原子とのモル比が1:1〜0.01:1であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリエステル重縮合触媒。
【請求項6】
チタン化合物とトリペンタエリスリトールとの反応を、水および/またはエチレングリコール中で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステル重縮合触媒。
【請求項7】
トリペンタエリスリトールの水および/またはエチレングリコール溶液に、チタン化合物を添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル重縮合触媒。
【請求項8】
トリペンタエリスリトールの水および/またはエチレングリコール溶液に、チタン化合物のエチレングリコール溶液と塩基の混合溶液を添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル重縮合触媒。
【請求項9】
芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールとのエステル化物および/またはその低重合体からなる重合出発原料を重縮合してポリエステルを製造する際に、重縮合触媒として請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリエステル重縮合触媒を用いることを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項10】
芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸を主たる成分であることを特徴とする請求項9項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項11】
アルキレングリコールがエチレングリコールを主たる成分であることを特徴とする請求項9または10に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項12】
得られるポリエステル中のチタン元素量が1〜20ppmとなるようにチタン化合物を添加することを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項13】
トリペンタエリスリトールのポリエステルに対する含有量が1〜200ppmであることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法で得られたポリエステル組成物。
【請求項14】
請求項13のポリエステル組成物を溶融成形して得られるポリエステル繊維。

【公開番号】特開2010−126614(P2010−126614A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301984(P2008−301984)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】