ポリエステル／綿布帛の加工方法及び加工品
【課題】 耐久性のある、吸水性及び帯電防止効果を有する布帛が得られるポリエステル／綿布帛の加工方法と加工品を提供すること。
【解決手段】 ポリエステル及び綿からなる布帛の加工方法であって、１）吸水性及び制電性モノマーを布帛に付与し、反応、固着させる工程及び２）耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物を布帛に付与する工程を順次行うことを特徴とするポリエステル／綿布帛の加工方法と加工品。上記吸水性及び制電性モノマーが、水溶性の、アクリレート，メタクリレート，ジアクリレート，ジメタクリレート及びそれらの変性体から選ばれた少なくとも１種であり、耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物が、ジメチルポリシロキサンまたはその変性体の乳化物あるいは水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物であるポリエステル／綿布帛の加工方法。
【解決手段】 ポリエステル及び綿からなる布帛の加工方法であって、１）吸水性及び制電性モノマーを布帛に付与し、反応、固着させる工程及び２）耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物を布帛に付与する工程を順次行うことを特徴とするポリエステル／綿布帛の加工方法と加工品。上記吸水性及び制電性モノマーが、水溶性の、アクリレート，メタクリレート，ジアクリレート，ジメタクリレート及びそれらの変性体から選ばれた少なくとも１種であり、耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物が、ジメチルポリシロキサンまたはその変性体の乳化物あるいは水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物であるポリエステル／綿布帛の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ポリエステル／綿布帛の加工方法に係り、吸水性及び帯電防止効果の耐久性に優れた加工方法及び加工品に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、ポリエステル／綿布帛に、吸水性及び帯電防止効果を付与する加工方法としては、
１）ポリエステル系の吸水ＳＲ（ｓｏｉｌ ｒｅｌｅａｓｅ）加工剤を吸塵法で処理する方法、
２）ポリエステル系の吸水ＳＲ加工剤を付与し、その後熱処理する方法、
３）熱反応性のポリウレタン系の帯電防止剤を付与し、その後熱処理する方法、
４）吸水性及び制電性モノマーを反応させる方法、
５）吸水性及び制電性モノマーを反応させた後、熱反応性のポリウレタン系の帯電防止剤を付与、その後熱処理する方法等（特許文献１参照）がある。
【０００３】
しかしながら、１）及び２）の方法では、吸水性及びその耐久性はよいが、制電性が不十分である、３）の方法では、初期の制電性はよいが、その耐久性が不十分、また、染色堅牢度の低下がある、４）の方法では、初期の吸水性と制電性はよいが、それらの耐久性が不十分である、５）の方法では、初期の吸水性と制電性はよいが、それらの耐久性が不十分、また、染色堅牢度の低下があるという問題があった。
【０００４】
【特許文献１】特開昭５８−２２０８７９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明の目的は、耐久性のある、吸水性及び帯電防止効果を有する布帛を得るポリエステル／綿布帛の加工方法及び加工品を提供することにある。
更に、本発明の目的は、耐久性のある、吸水性、帯電防止効果及びＳＲ性を有する布帛を得るポリエステル／綿布帛の加工方法及び加工品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明の目的は、ポリエステル及び綿からなる布帛の加工方法であって、下記工程を順次行うことを特徴とするポリエステル／綿布帛の加工方法によって達成される。
１）吸水性及び制電性モノマーを布帛に付与し、反応、固着させる工程。
２）耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物を布帛に付与する工程。
また、吸水性及び制電性モノマーが、水溶性の、アクリレート，メタクリレート，ジアクリレート，ジメタクリレート及びその変性体から選ばれた少なくとも１種であり、耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物がジメチルポリシロキサンまたはその変性体の乳化物あるいは水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物であることが好ましい。
【０００７】
また、本発明の目的は、上記加工方法により得られるポリエステル及び綿からなる加工布帛であって、下記条件を満たすことを特徴とするポリエステル／綿加工品によって達成される。
１）吸水速度（秒）：３０秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１０９７ 滴下法）
２）帯電圧（Ｋｖ）：±７．５０以下 半減期（秒）：3秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１９０４ 摩擦帯電減衰測定法）
【０００８】
更に、本発明の他の目的は、吸水性及び制電性モノマーが、水溶性の、アクリレート，メタクリレート，ジアクリレート，ジメタクリレート及びそれらの変性体から選ばれた少なくとも１種であり、耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物が、（A）ジメチルポリシロキサンまたはその変性体の乳化物と、（B）水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物とを含むポリエステル／綿布帛の加工方法によって達成される。
その配合比率は（Ａ）／（B）＝５／１〜１／５であることが好ましい。
【０００９】
また、本発明の他の目的は、上記加工方法により得られるポリエステル及び綿からなる加工布帛であって、下記条件を満たすことを特徴とするポリエステル／綿加工品によって達成される。
１）吸水速度（秒）：３０秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１０９７ 滴下法）
２）帯電圧（Ｋｖ）：±７．５０以下 半減期（秒）：3秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１９０４ 摩擦帯電減衰測定法）
３）SR性（級）：４以上
【発明の効果】
【００１０】
本発明により、耐久性のある、吸水性及び帯電防止効果を有する布帛を提供できるものである。
また、得られる布帛は、風合いがソフトで、強力の低下がない。また、染色堅牢度の低下がない。
更に、本発明により、耐久性のある、吸水性、帯電防止効果及びＳＲ性を有する布帛を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
本発明のポリエステルと綿からなる布帛としては、ポリエステルと綿を混紡した糸を用いた布帛、それぞれの糸を用いて交織、交編してなる布帛等が挙げられ、目的に応じて選択すればよい。
また、ポリエステルと綿との比率は特に限定されるものではなく、９５／５〜５／９５であればよい。
また、以下の本発明の加工方法を行う前に、常法により、布帛の精錬、ヒートセットを行ってもよい。
【００１２】
本発明の加工方法は、
１）吸水性及び制電性モノマーを布帛に付与し、反応、固着させる工程、
２）耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物を布帛に付与する工程を順次行うものである。
【００１３】
第１段目の工程で用いられる吸水性及び制電性モノマーとしては、水溶性の、アクリレート，メタクリレート，ジアクリレート，ジメタクリレート及びその変性体等が挙げられ、これらを単独または組合わせて用いる。
具体的には、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
中でも、PEG400〜PEG600のジメタクリレートが吸水性及び制電性効果の点で好ましい。
【００１４】
第１段目の工程は、例えば、上記吸水性及び制電性モノマーを含む水溶液を用い、連続法にて、布帛中のポリエステルに反応させた後、未反応物を洗浄除去することにより行う。すなわち、吸水性及び制電性モノマーを含む水溶液を用いて、連続法にて付与した後、90〜130℃で、0.5〜30分間蒸熱処理し、未着の吸水性及び制電性モノマーを除去するために、流水等により水洗を行い、乾燥する。
このとき、上記吸水性及び制電性モノマーが2.0〜25.0質量％の水溶液を用いることが好ましい。
【００１５】
この後、常法により、染色、蛍光染色等を行ってもよい。
【００１６】
第２段目の工程で用いられる耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物としては、ジメチルポリシロキサンの乳化物、変性シリコンの乳化物、水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物等が挙げられる。中でも、ジメチルポリシロキサンの乳化物が吸水性及び制電性効果の点で好ましい。
【００１７】
水溶性ポリエステル樹脂は、テレフタル酸またはイソフタル酸と、ポリアルキレングリコールとの共重合体等が挙げられる。
中でも、テレフタル酸とポリアルキレングリコールとの共重合体が、より吸水性に優れる点で好ましい。
【００１８】
第２段目の処理は、例えば、上記耐久性のある吸水性及び制電性ポリマーの乳化物を、連続法または浸漬法にて、付与することにより行う。すなわち、上記耐久性のある吸水性及び制電性ポリマーの乳化物を含む水溶液を、連続法または浸漬法により処理した後、90〜150℃で、0.5〜20分間乾熱処理する。
このとき、上記耐久性のある吸水性及び制電性ポリマーの乳化物が2.0〜15.0質量％の水溶液を用いることが好ましい。
【００１９】
上記のようにして、２段階工程により処理された加工処理布は、耐久性よく、吸水性及び帯電防止効果を有するものとなる。
本発明の加工方法においては、１段目の加工にてポリエステルの改質を行い、吸水性及び制電性を付与し、２段目の加工にて吸水性と制電性の更なる向上と風合のソフト化を行う。
上記加工を一度に実施すると、２段目の耐久性のある吸水性及び制電性ポリマーの乳化物が分解、変質等され、吸水性及び制電性の効果が低くなる。
【００２０】
上記加工方法により得られた加工品は、下記性能を有し、その耐久性（洗濯３０回後）にも優れる。
１）吸水速度（秒）：３０秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１０９７ 滴下法）
２）帯電圧（Ｋｖ）：±７．５０以下 半減期（秒）：3秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１９０４ 摩擦帯電減衰測定法）
【００２１】
本発明の加工品としては、上記加工を行った布帛、この加工布帛を製品化したもの、すなわち、シャツ、ブラウス、パンツ等の一般衣料及びユニホーム衣料、シーツ、カバー、布団側地等が挙げられる。
【００２２】
また、上記第２段目の工程で用いられる耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物として、（Ａ）ジメチルポリシロキサンの乳化物またはその変性体と、（B）水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体とを含む乳化物を用いることで、更に、ＳＲ性にも優れた加工品が得られる。
配合比率は、（A）／（B）＝５／１〜１／５とすることが好ましい。
【００２３】
上記加工方法により得られた加工品は、下記性能を有し、その耐久性（洗濯３０回後）にも優れる。
１）吸水速度（秒）：３０秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１０９７ 滴下法）
２）帯電圧（Ｋｖ）：±７．５０以下 半減期（秒）：3秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１９０４ 摩擦帯電減衰測定法）
３）SR性（級）：４以上
【実施例】
【００２４】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
各評価は下記のようにして行った。
吸水速度（秒）
ＪＩＳ Ｌ−１９０７ 滴下法
摩擦帯電減衰測定法
ＪＩＳ Ｌ―１９０４ 帯電圧（ＫＶ）半減期（秒）
家庭洗濯法
ＪＩＳ Ｌ−０２１７ １０３法
ＳＲ性
日本化学繊維協会規格（織編物の防汚加工性試験方法：ＪＣＦＡ ＴＭ−１０４）
【００２５】
〔実施例１〕
経がポリエステル（１５０ｄ／４８ｆ）、織密度９４本／２．５４ｃｍ、緯がポリエステル／綿＝６５／３５の混紡糸（４５番手）、織密度８４本／２．５４ｃｍの平織物を、常法により、精錬、ヒートセットを行った。
尚、全体の混紡率は、ポリエステル／綿＝８０／２０である。
【００２６】
まず、第１段目の処理として、以下を行った。
上記織物を、ジメタクリレート（ＰＥＧ４００）「ライトエステル９ＥＧ」（共栄社化学株式会社製）１０質量％、過硫酸アンモニウム０．１質量％を含む水溶液に浸漬し、ピックアップ率６５％にて水溶液を付与した後、直ちに１２０℃で５分間蒸熱処理し、その後未固着のモノマーと開始剤を除去するために、流水にて１０分間処理する水洗を２回実施した。
その後、マングルにて搾液後、テンターにて１３０℃で２分間乾燥した。
【００２７】
次に、第２段目の処理として以下を行った。
上記処理を行なった織物を、ジメチルポリシロキサン含有乳化物「ライトシリコンＰＭ−５０」（共栄社化学株式会社製）を１０質量％含む水溶液に浸漬し、ピックアップ率６５％にて水溶液を付与した後、１２０℃で３分間乾熱処理を行い、加工処理布を得た。
得られた加工処理布の耐久吸水性及び耐久制電性に関する測定結果を表１に示す。
【００２８】
〔比較例１〕
実施例１の第１段目の処理のみを行った加工処理布を比較例１の加工処理布とした。
得られた加工処理布の耐久吸水性及び耐久制電性に関する測定結果を表１に示す。
【００２９】
〔比較例２〕
実施例１の第２段目の処理のみを行った加工処理布を比較例２の加工処理布とした。
得られた加工処理布の耐久吸水性及び耐久制電性に関する測定結果を表１に示す。
【００３０】
【表１】
【００３１】
〔実施例２〕
経がポリエステル（１５０ｄ／４８ｆ）、織密度９４本／２．５４ｃｍ、緯がポリエステル／綿＝６５／３５の混紡糸（４５番手）、織密度８４本／２．５４ｃｍの平織物を、常法により、精錬、ヒートセットを行った。
尚、全体の混紡率は、ポリエステル／綿＝８０／２０である。
【００３２】
まず、第１段目の処理として、以下を行った。
上記織物を、ジメタクリレート（ＰＥＧ４００）「ライトエステル９ＥＧ」（共栄社化学株式会社製）１０質量％、過硫酸アンモニウム０．１質量％を含む水溶液に浸漬し、ピックアップ率６５％にて水溶液を付与した後、直ちに１２０℃で５分間蒸熱処理し、その後未固着のモノマーと開始剤を除去するために、流水にて１０分間処理する水洗を２回実施した。
その後、マングルにて搾液後、テンターにて１３０℃で２分間乾燥した。
【００３３】
次に、第２段目の処理として以下を行った。
上記処理を行なった織物を、ジメチルポリシロキサン含有乳化物「ライトシリコンＰＭ−５０」（共栄社化学株式会社製）５質量％、水溶性ポリエステル樹脂 含有乳化物「ＳＲ−１０００」（高松油脂株式会社製）２質量％を含む水溶液に浸漬し、ピックアップ率６５％にて水溶液を付与した後、１２０℃で３分間乾熱処理を行い、加工処理布を得た。
得られた加工処理布の耐久吸水性、耐久制電性及び耐久ＳＲ性に関する測定結果を表２に示す。
【００３４】
〔比較例３〕
実施例２の第１段目の処理のみを行った加工処理布を比較例３の加工処理布とした。
得られた加工処理布の耐久吸水性、耐久制電性及び耐久ＳＲ性に関する測定結果を表２に示す。
【００３５】
〔比較例４〕
実施例２の第２段目の処理のみを行った加工処理布を比較例４の加工処理布とした。
得られた加工処理布の耐久吸水性、耐久制電性及び耐久ＳＲ性に関する測定結果を表２に示す。
【００３６】
【表２】
【産業上の利用可能性】
【００３７】
本発明は、耐久性のある、吸水性及び帯電防止効果を有する加工品を提供できるものである。更に、本発明は、吸水性、帯電防止効果及びＳＲ性を有する加工品を提供できるものである。
本発明の加工品としては、シャツ、ブラウス、パンツ等の一般衣料及びユニホーム衣料、シーツ、カバー、布団側地等が挙げられる。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ポリエステル／綿布帛の加工方法に係り、吸水性及び帯電防止効果の耐久性に優れた加工方法及び加工品に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、ポリエステル／綿布帛に、吸水性及び帯電防止効果を付与する加工方法としては、
１）ポリエステル系の吸水ＳＲ（ｓｏｉｌ ｒｅｌｅａｓｅ）加工剤を吸塵法で処理する方法、
２）ポリエステル系の吸水ＳＲ加工剤を付与し、その後熱処理する方法、
３）熱反応性のポリウレタン系の帯電防止剤を付与し、その後熱処理する方法、
４）吸水性及び制電性モノマーを反応させる方法、
５）吸水性及び制電性モノマーを反応させた後、熱反応性のポリウレタン系の帯電防止剤を付与、その後熱処理する方法等（特許文献１参照）がある。
【０００３】
しかしながら、１）及び２）の方法では、吸水性及びその耐久性はよいが、制電性が不十分である、３）の方法では、初期の制電性はよいが、その耐久性が不十分、また、染色堅牢度の低下がある、４）の方法では、初期の吸水性と制電性はよいが、それらの耐久性が不十分である、５）の方法では、初期の吸水性と制電性はよいが、それらの耐久性が不十分、また、染色堅牢度の低下があるという問題があった。
【０００４】
【特許文献１】特開昭５８−２２０８７９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明の目的は、耐久性のある、吸水性及び帯電防止効果を有する布帛を得るポリエステル／綿布帛の加工方法及び加工品を提供することにある。
更に、本発明の目的は、耐久性のある、吸水性、帯電防止効果及びＳＲ性を有する布帛を得るポリエステル／綿布帛の加工方法及び加工品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明の目的は、ポリエステル及び綿からなる布帛の加工方法であって、下記工程を順次行うことを特徴とするポリエステル／綿布帛の加工方法によって達成される。
１）吸水性及び制電性モノマーを布帛に付与し、反応、固着させる工程。
２）耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物を布帛に付与する工程。
また、吸水性及び制電性モノマーが、水溶性の、アクリレート，メタクリレート，ジアクリレート，ジメタクリレート及びその変性体から選ばれた少なくとも１種であり、耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物がジメチルポリシロキサンまたはその変性体の乳化物あるいは水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物であることが好ましい。
【０００７】
また、本発明の目的は、上記加工方法により得られるポリエステル及び綿からなる加工布帛であって、下記条件を満たすことを特徴とするポリエステル／綿加工品によって達成される。
１）吸水速度（秒）：３０秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１０９７ 滴下法）
２）帯電圧（Ｋｖ）：±７．５０以下 半減期（秒）：3秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１９０４ 摩擦帯電減衰測定法）
【０００８】
更に、本発明の他の目的は、吸水性及び制電性モノマーが、水溶性の、アクリレート，メタクリレート，ジアクリレート，ジメタクリレート及びそれらの変性体から選ばれた少なくとも１種であり、耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物が、（A）ジメチルポリシロキサンまたはその変性体の乳化物と、（B）水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物とを含むポリエステル／綿布帛の加工方法によって達成される。
その配合比率は（Ａ）／（B）＝５／１〜１／５であることが好ましい。
【０００９】
また、本発明の他の目的は、上記加工方法により得られるポリエステル及び綿からなる加工布帛であって、下記条件を満たすことを特徴とするポリエステル／綿加工品によって達成される。
１）吸水速度（秒）：３０秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１０９７ 滴下法）
２）帯電圧（Ｋｖ）：±７．５０以下 半減期（秒）：3秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１９０４ 摩擦帯電減衰測定法）
３）SR性（級）：４以上
【発明の効果】
【００１０】
本発明により、耐久性のある、吸水性及び帯電防止効果を有する布帛を提供できるものである。
また、得られる布帛は、風合いがソフトで、強力の低下がない。また、染色堅牢度の低下がない。
更に、本発明により、耐久性のある、吸水性、帯電防止効果及びＳＲ性を有する布帛を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
本発明のポリエステルと綿からなる布帛としては、ポリエステルと綿を混紡した糸を用いた布帛、それぞれの糸を用いて交織、交編してなる布帛等が挙げられ、目的に応じて選択すればよい。
また、ポリエステルと綿との比率は特に限定されるものではなく、９５／５〜５／９５であればよい。
また、以下の本発明の加工方法を行う前に、常法により、布帛の精錬、ヒートセットを行ってもよい。
【００１２】
本発明の加工方法は、
１）吸水性及び制電性モノマーを布帛に付与し、反応、固着させる工程、
２）耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物を布帛に付与する工程を順次行うものである。
【００１３】
第１段目の工程で用いられる吸水性及び制電性モノマーとしては、水溶性の、アクリレート，メタクリレート，ジアクリレート，ジメタクリレート及びその変性体等が挙げられ、これらを単独または組合わせて用いる。
具体的には、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
中でも、PEG400〜PEG600のジメタクリレートが吸水性及び制電性効果の点で好ましい。
【００１４】
第１段目の工程は、例えば、上記吸水性及び制電性モノマーを含む水溶液を用い、連続法にて、布帛中のポリエステルに反応させた後、未反応物を洗浄除去することにより行う。すなわち、吸水性及び制電性モノマーを含む水溶液を用いて、連続法にて付与した後、90〜130℃で、0.5〜30分間蒸熱処理し、未着の吸水性及び制電性モノマーを除去するために、流水等により水洗を行い、乾燥する。
このとき、上記吸水性及び制電性モノマーが2.0〜25.0質量％の水溶液を用いることが好ましい。
【００１５】
この後、常法により、染色、蛍光染色等を行ってもよい。
【００１６】
第２段目の工程で用いられる耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物としては、ジメチルポリシロキサンの乳化物、変性シリコンの乳化物、水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物等が挙げられる。中でも、ジメチルポリシロキサンの乳化物が吸水性及び制電性効果の点で好ましい。
【００１７】
水溶性ポリエステル樹脂は、テレフタル酸またはイソフタル酸と、ポリアルキレングリコールとの共重合体等が挙げられる。
中でも、テレフタル酸とポリアルキレングリコールとの共重合体が、より吸水性に優れる点で好ましい。
【００１８】
第２段目の処理は、例えば、上記耐久性のある吸水性及び制電性ポリマーの乳化物を、連続法または浸漬法にて、付与することにより行う。すなわち、上記耐久性のある吸水性及び制電性ポリマーの乳化物を含む水溶液を、連続法または浸漬法により処理した後、90〜150℃で、0.5〜20分間乾熱処理する。
このとき、上記耐久性のある吸水性及び制電性ポリマーの乳化物が2.0〜15.0質量％の水溶液を用いることが好ましい。
【００１９】
上記のようにして、２段階工程により処理された加工処理布は、耐久性よく、吸水性及び帯電防止効果を有するものとなる。
本発明の加工方法においては、１段目の加工にてポリエステルの改質を行い、吸水性及び制電性を付与し、２段目の加工にて吸水性と制電性の更なる向上と風合のソフト化を行う。
上記加工を一度に実施すると、２段目の耐久性のある吸水性及び制電性ポリマーの乳化物が分解、変質等され、吸水性及び制電性の効果が低くなる。
【００２０】
上記加工方法により得られた加工品は、下記性能を有し、その耐久性（洗濯３０回後）にも優れる。
１）吸水速度（秒）：３０秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１０９７ 滴下法）
２）帯電圧（Ｋｖ）：±７．５０以下 半減期（秒）：3秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１９０４ 摩擦帯電減衰測定法）
【００２１】
本発明の加工品としては、上記加工を行った布帛、この加工布帛を製品化したもの、すなわち、シャツ、ブラウス、パンツ等の一般衣料及びユニホーム衣料、シーツ、カバー、布団側地等が挙げられる。
【００２２】
また、上記第２段目の工程で用いられる耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物として、（Ａ）ジメチルポリシロキサンの乳化物またはその変性体と、（B）水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体とを含む乳化物を用いることで、更に、ＳＲ性にも優れた加工品が得られる。
配合比率は、（A）／（B）＝５／１〜１／５とすることが好ましい。
【００２３】
上記加工方法により得られた加工品は、下記性能を有し、その耐久性（洗濯３０回後）にも優れる。
１）吸水速度（秒）：３０秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１０９７ 滴下法）
２）帯電圧（Ｋｖ）：±７．５０以下 半減期（秒）：3秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１９０４ 摩擦帯電減衰測定法）
３）SR性（級）：４以上
【実施例】
【００２４】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
各評価は下記のようにして行った。
吸水速度（秒）
ＪＩＳ Ｌ−１９０７ 滴下法
摩擦帯電減衰測定法
ＪＩＳ Ｌ―１９０４ 帯電圧（ＫＶ）半減期（秒）
家庭洗濯法
ＪＩＳ Ｌ−０２１７ １０３法
ＳＲ性
日本化学繊維協会規格（織編物の防汚加工性試験方法：ＪＣＦＡ ＴＭ−１０４）
【００２５】
〔実施例１〕
経がポリエステル（１５０ｄ／４８ｆ）、織密度９４本／２．５４ｃｍ、緯がポリエステル／綿＝６５／３５の混紡糸（４５番手）、織密度８４本／２．５４ｃｍの平織物を、常法により、精錬、ヒートセットを行った。
尚、全体の混紡率は、ポリエステル／綿＝８０／２０である。
【００２６】
まず、第１段目の処理として、以下を行った。
上記織物を、ジメタクリレート（ＰＥＧ４００）「ライトエステル９ＥＧ」（共栄社化学株式会社製）１０質量％、過硫酸アンモニウム０．１質量％を含む水溶液に浸漬し、ピックアップ率６５％にて水溶液を付与した後、直ちに１２０℃で５分間蒸熱処理し、その後未固着のモノマーと開始剤を除去するために、流水にて１０分間処理する水洗を２回実施した。
その後、マングルにて搾液後、テンターにて１３０℃で２分間乾燥した。
【００２７】
次に、第２段目の処理として以下を行った。
上記処理を行なった織物を、ジメチルポリシロキサン含有乳化物「ライトシリコンＰＭ−５０」（共栄社化学株式会社製）を１０質量％含む水溶液に浸漬し、ピックアップ率６５％にて水溶液を付与した後、１２０℃で３分間乾熱処理を行い、加工処理布を得た。
得られた加工処理布の耐久吸水性及び耐久制電性に関する測定結果を表１に示す。
【００２８】
〔比較例１〕
実施例１の第１段目の処理のみを行った加工処理布を比較例１の加工処理布とした。
得られた加工処理布の耐久吸水性及び耐久制電性に関する測定結果を表１に示す。
【００２９】
〔比較例２〕
実施例１の第２段目の処理のみを行った加工処理布を比較例２の加工処理布とした。
得られた加工処理布の耐久吸水性及び耐久制電性に関する測定結果を表１に示す。
【００３０】
【表１】
【００３１】
〔実施例２〕
経がポリエステル（１５０ｄ／４８ｆ）、織密度９４本／２．５４ｃｍ、緯がポリエステル／綿＝６５／３５の混紡糸（４５番手）、織密度８４本／２．５４ｃｍの平織物を、常法により、精錬、ヒートセットを行った。
尚、全体の混紡率は、ポリエステル／綿＝８０／２０である。
【００３２】
まず、第１段目の処理として、以下を行った。
上記織物を、ジメタクリレート（ＰＥＧ４００）「ライトエステル９ＥＧ」（共栄社化学株式会社製）１０質量％、過硫酸アンモニウム０．１質量％を含む水溶液に浸漬し、ピックアップ率６５％にて水溶液を付与した後、直ちに１２０℃で５分間蒸熱処理し、その後未固着のモノマーと開始剤を除去するために、流水にて１０分間処理する水洗を２回実施した。
その後、マングルにて搾液後、テンターにて１３０℃で２分間乾燥した。
【００３３】
次に、第２段目の処理として以下を行った。
上記処理を行なった織物を、ジメチルポリシロキサン含有乳化物「ライトシリコンＰＭ−５０」（共栄社化学株式会社製）５質量％、水溶性ポリエステル樹脂 含有乳化物「ＳＲ−１０００」（高松油脂株式会社製）２質量％を含む水溶液に浸漬し、ピックアップ率６５％にて水溶液を付与した後、１２０℃で３分間乾熱処理を行い、加工処理布を得た。
得られた加工処理布の耐久吸水性、耐久制電性及び耐久ＳＲ性に関する測定結果を表２に示す。
【００３４】
〔比較例３〕
実施例２の第１段目の処理のみを行った加工処理布を比較例３の加工処理布とした。
得られた加工処理布の耐久吸水性、耐久制電性及び耐久ＳＲ性に関する測定結果を表２に示す。
【００３５】
〔比較例４〕
実施例２の第２段目の処理のみを行った加工処理布を比較例４の加工処理布とした。
得られた加工処理布の耐久吸水性、耐久制電性及び耐久ＳＲ性に関する測定結果を表２に示す。
【００３６】
【表２】
【産業上の利用可能性】
【００３７】
本発明は、耐久性のある、吸水性及び帯電防止効果を有する加工品を提供できるものである。更に、本発明は、吸水性、帯電防止効果及びＳＲ性を有する加工品を提供できるものである。
本発明の加工品としては、シャツ、ブラウス、パンツ等の一般衣料及びユニホーム衣料、シーツ、カバー、布団側地等が挙げられる。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ポリエステル及び綿からなる布帛の加工方法であって、下記工程を順次行うことを特徴とするポリエステル／綿布帛の加工方法。
１） ）吸水性及び制電性モノマーを布帛に付与し、反応、固着させる工程。
２） ）耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物を布帛に付与する工程。
【請求項２】
吸水性及び制電性モノマーが、水溶性の、アクリレート，メタクリレート，ジアクリレート，ジメタクリレート及びそれらの変性体から選ばれた少なくとも１種であり、耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物が、ジメチルポリシロキサンまたはその変性体の乳化物あるいは水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物であることを特徴とする請求項１記載のポリエステル／綿布帛の加工方法。
【請求項３】
吸水性及び制電性モノマーが、水溶性の、アクリレート，メタクリレート，ジアクリレート，ジメタクリレート及びそれらの変性体から選ばれた少なくとも１種であり、耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物が、（A）ジメチルポリシロキサンまたはその変性体の乳化物と、（B）水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物とを含むことを特徴とする請求項１記載のポリエステル／綿布帛の加工方法。
【請求項４】
（A）ジメチルポリシロキサンまたはその変性体の乳化物と、（B）水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物との配合比率が（Ａ）／（B）＝５／１〜１／５であることを特徴とする請求項３記載のポリエステル／綿布帛の加工方法。
【請求項５】
請求項１または２記載の加工方法により得られるポリエステル及び綿からなる加工品であって、下記条件を満たすことを特徴とするポリエステル／綿加工品。
１）吸水速度（秒）：３０秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１０９７ 滴下法）
２）帯電圧（Ｋｖ）：±７．５０以下 半減期（秒）：3秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１９０４ 摩擦帯電減衰測定法）
【請求項６】
請求項３または４記載の加工方法により得られるポリエステル及び綿からなる加工品であって、下記条件を満たすことを特徴とするポリエステル／綿加工品。
１）吸水速度（秒）：３０秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１０９７ 滴下法）
２）帯電圧（Ｋｖ）：±７．５０以下 半減期（秒）：3秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１９０４ 摩擦帯電減衰測定法）
３）SR性（級）：４以上
【請求項１】
ポリエステル及び綿からなる布帛の加工方法であって、下記工程を順次行うことを特徴とするポリエステル／綿布帛の加工方法。
１） ）吸水性及び制電性モノマーを布帛に付与し、反応、固着させる工程。
２） ）耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物を布帛に付与する工程。
【請求項２】
吸水性及び制電性モノマーが、水溶性の、アクリレート，メタクリレート，ジアクリレート，ジメタクリレート及びそれらの変性体から選ばれた少なくとも１種であり、耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物が、ジメチルポリシロキサンまたはその変性体の乳化物あるいは水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物であることを特徴とする請求項１記載のポリエステル／綿布帛の加工方法。
【請求項３】
吸水性及び制電性モノマーが、水溶性の、アクリレート，メタクリレート，ジアクリレート，ジメタクリレート及びそれらの変性体から選ばれた少なくとも１種であり、耐久性のある吸水性及び制電性ポリマー乳化物が、（A）ジメチルポリシロキサンまたはその変性体の乳化物と、（B）水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物とを含むことを特徴とする請求項１記載のポリエステル／綿布帛の加工方法。
【請求項４】
（A）ジメチルポリシロキサンまたはその変性体の乳化物と、（B）水溶性ポリエステル樹脂またはその変性体の乳化物との配合比率が（Ａ）／（B）＝５／１〜１／５であることを特徴とする請求項３記載のポリエステル／綿布帛の加工方法。
【請求項５】
請求項１または２記載の加工方法により得られるポリエステル及び綿からなる加工品であって、下記条件を満たすことを特徴とするポリエステル／綿加工品。
１）吸水速度（秒）：３０秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１０９７ 滴下法）
２）帯電圧（Ｋｖ）：±７．５０以下 半減期（秒）：3秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１９０４ 摩擦帯電減衰測定法）
【請求項６】
請求項３または４記載の加工方法により得られるポリエステル及び綿からなる加工品であって、下記条件を満たすことを特徴とするポリエステル／綿加工品。
１）吸水速度（秒）：３０秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１０９７ 滴下法）
２）帯電圧（Ｋｖ）：±７．５０以下 半減期（秒）：3秒以下 （ＪＩＳ Ｌ−１９０４ 摩擦帯電減衰測定法）
３）SR性（級）：４以上
【公開番号】特開２００６−２９９４３４（Ｐ２００６−２９９４３４Ａ）
【公開日】平成１８年１１月２日（２００６．１１．２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−１１９２９３（Ｐ２００５−１１９２９３）
【出願日】平成１７年４月１８日（２００５．４．１８）
【出願人】（３０５０３７１２３）ＫＢセーレン株式会社 (97)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年１１月２日（２００６．１１．２）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年４月１８日（２００５．４．１８）
【出願人】（３０５０３７１２３）ＫＢセーレン株式会社 (97)
【Ｆターム（参考）】
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