説明

ポリエチレンと繊維片との分離方法、および、ポリエチレン成型品の再生方法

【課題】ポリエチレン貼着繊維片からポリエチレンと繊維片とを良好に分離することができるポリエチレンと繊維片との分離方法、および、そのポリエチレンと繊維片との分離方法を採用したポリエチレン成型品の再生方法を提供すること。
【解決手段】繊維片の表面にポリエチレンが貼着されたポリエチレン貼着繊維片を、高速水平回転羽根3を備える垂直軸回転式の撹拌装置1に投入し、高速水平回転羽根3を、70〜90℃の処理温度において、5分間以上回転させることにより、ポリエチレン貼着繊維片から、ポリエチレンと繊維片とを分離する。そして、この方法により分離されたポリエチレンと繊維片とを分別回収し、回収されたポリエチレンを、成型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンと繊維片との分離方法、および、ポリエチレン成型品の再生方法、詳しくは、ポリエチレン貼着繊維片からポリエチレンと繊維片とを分離するためのポリエチレンと繊維片との分離方法、および、そのポリエチレンと繊維片との分離方法を採用した、ポリエチレン成型品の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護および資源の有効活用の観点より、廃品となった、表面にポリエチレンが積層されたパルプ繊維(例えば、牛乳パックなど)から、ポリエチレンとパルプ繊維とを分別回収し、それらを再利用することが、望まれている。
パルプ繊維の再利用としては、例えば、牛乳パックを苛性ソーダ水溶液に投入し、加熱および撹拌することにより、牛乳パックに含まれるパルプ繊維を分離および回収し、回収されたパルプ繊維を、トイレットペーパーを製造するための資源などとして再利用することが、よく知られている。
【0003】
これに対して、パルプ繊維に積層しているポリエチレンは、単独で分離および回収することが困難であり、通常、パルプ繊維の繊維片に付着された状態、すなわち、パルプ繊維片の表面にポリエチレンが貼着されたポリエチレン貼着繊維片として、回収されている。このようなポリエチレン貼着繊維片は、ポリエチレンに対するパルプ繊維片の含有量が多いため、樹脂製品の原料としては再利用されず、例えば、焼却用の燃料などとして、再利用されている。
【0004】
一方、現在、このようなポリエチレン貼着繊維片を樹脂製品の原料として再利用する方法が、種々検討されており、例えば、牛乳パックに古紙を加えた紙原料を、再生紙処理技術によって、再生用紙原料と、ポリエチレンを含んだ紙廃棄物とに分離し、そのポリエチレン含有紙廃棄物を細かく粉砕したのち、これを原料としてモウルド成型することにより、包装用トレイを製造することが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−62746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のポリエチレンを含んだ紙廃棄物は、ポリエチレンに対する紙の含有量が多いため、やはり、樹脂製品の原料として十分な品質を備えておらず、さらには、紙の再利用率を低下させている。
そのため、表面にポリエチレンが貼着されたパルプ繊維(例えば牛乳パックなど)を有効に再利用する観点より、ポリエチレン貼着繊維片からポリエチレンとパルプ繊維片とを、それぞれ分離することが、求められている。
【0007】
本発明の目的は、ポリエチレン貼着繊維片からポリエチレンと繊維片とを良好に分離することができるポリエチレンと繊維片との分離方法、および、そのポリエチレンと繊維片との分離方法を採用したポリエチレン成型品の再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のポリエチレンと繊維片との分離方法は、繊維片の表面にポリエチレンが貼着されたポリエチレン貼着繊維片から、ポリエチレンと繊維片とを分離するための方法であって、前記ポリエチレン貼着繊維片を、高速水平回転羽根を備える垂直軸回転式の撹拌装置に投入し、前記高速水平回転羽根を、70〜90℃の処理温度において、5分間以上回転させることを特徴としている。
【0009】
ポリエチレン貼着繊維片を撹拌装置に投入して、高速水平回転羽根を回転させれば、ポリエチレン貼着繊維片が撹拌され、剪断力が発生し、その剪断力によって、処理温度が上昇する。
処理温度を上昇させると、温度の上昇とともにポリエチレンが収縮する一方、繊維片は収縮しないため、この処理によってポリエチレンを繊維片から剥離することができる。
【0010】
しかし、処理温度が過度に上昇すると、繊維片から剥離されたポリエチレンが、軟化する。そして、ポリエチレンが軟化した状態で、高速水平回転羽根の回転を継続すると、ポリエチレンが、繊維片を巻き込みながら、捩じれるように変形するため、ポリエチレンと繊維片との分離が阻害される。
これに対して、処理温度を70〜90℃の範囲に制御すれば、ポリエチレンを収縮させることができるとともに、ポリエチレンの軟化を抑制することができ、ポリエチレンが繊維片を巻き込むことを防止することができる。
【0011】
そのため、本発明のポリエチレンと繊維片との分離方法によれば、ポリエチレン貼着繊維片から、ポリエチレンと繊維片とを、それらが貼着していた形状のままで(ポリエチレンの捩じれを抑制して)、良好に分離することができる。
また、本発明のポリエチレンと繊維片との分離方法では、前記ポリエチレン貼着繊維片が、前記ポリエチレン貼着繊維片の総量に対して、60質量%以上のポリエチレンと、40質量%以下の繊維片とを含有することが好適である。
【0012】
このようなポリエチレンと繊維片との分離方法は、表面にポリエチレンが積層された繊維から、公知の方法により粗分離されたポリエチレン貼着繊維片を、処理することができる。そのため、産業上要求されるポリエチレンと繊維片との分離方法として、有効に採用することができる。
また、本発明のポリエチレンと繊維片との分離方法では、前記処理温度を、80℃±5℃の範囲に維持することが好適である。
【0013】
処理温度を、80℃±5℃の範囲に維持すれば、処理温度の上昇によるポリエチレンの軟化を、より一層抑制しつつ、ポリエチレンと繊維片とを、より効果的に分離することができる。
また、本発明のポリエチレン成型品の再生方法は、表面にポリエチレンが積層された繊維を、繊維と、ポリエチレンの貼着が残存するポリエチレン貼着繊維片とに粗分離する第1分離工程と、前記第1分離工程の後、繊維と、ポリエチレン貼着繊維片とを分別回収する第1回収工程と、前記第1回収工程の後、回収されたポリエチレン貼着繊維片から、ポリエチレンと繊維片とを分離する第2分離工程と、前記第2分離工程の後、ポリエチレンと繊維片とを分別回収する第2回収工程と、前記第2回収工程の後、回収されたポリエチレンを成型する成型工程とを備えるポリエチレン成型品の再生方法であって、前記第2分離工程において、上記のポリエチレンと繊維片との分離方法を採用することを特徴としている。
【0014】
このポリエチレン成型品の再生方法では、表面にポリエチレンが積層された繊維を、繊維と、ポリエチレンの貼着が残存するポリエチレン貼着繊維片とに粗分離した後、そのポリエチレン貼着繊維片を、上記したポリエチレンと繊維片との分離方法を採用して、ポリエチレンと繊維片とに分離している。
つまり、このようなポリエチレン成型品の再生方法によれば、公知の方法により粗分離されたポリエチレン貼着繊維片を、ポリエチレンと繊維片とに分離し、そのポリエチレンを成型することにより、再生することができる。
【0015】
そのため、このポリエチレン成型品の再生方法は、産業上要求されるポリエチレン成型品の再生方法、すなわち、公知の方法により粗分離されたポリエチレン貼着繊維片から、ポリエチレンを回収および成型し、ポリエチレンを樹脂として再生する方法として、有効に採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリエチレンと繊維片との分離方法によれば、ポリエチレンと繊維片とを、良好に分離することができる。
また、本発明のポリエチレン成型品の再生方法は、公知の方法により粗分離されたポリエチレン貼着繊維片から、ポリエチレンを回収および成型し、ポリエチレンを樹脂として再生する方法として、有効に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のポリエチレンと繊維片との分離方法に用いられる撹拌装置の一実施形態を示す要部側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下において、本発明のポリエチレンと繊維片との分離方法の一実施形態を採用する、本発明のポリエチレン成型品の再生方法の一実施形態について、詳述する。
このポリエチレン成形品の再生方法は、表面にポリエチレンが積層された繊維(以下、ラミネート繊維と称する場合がある。)から、ポリエチレン成型品を得るための方法であって、第1分離工程と、第1回収工程と、第2分離工程と、第2回収工程と、成型工程とを備えている。
【0019】
第1分離工程では、ラミネート繊維を、繊維と、ポリエチレンの貼着が残存するポリエチレン貼着繊維片とに粗分離する。
ラミネート繊維は、繊維の表面にポリエチレンが積層されることにより製造されている。
繊維としては、特に制限されず、例えば、木質シート、非木質シートなどが挙げられる。木質シートは、繊維の長短を有し、木材を主体とするパルプであって、例えば、針葉樹や広葉樹の繊維を有するパルプなどが挙げられる。非木質シートは、繊維の長短を有し、木材を主体としないパルプであって、例えば、バカスパルプ(サトウキビの搾りかす)、ワラパルプ(米や麦の藁から得られるパルプ)などが挙げられる。
【0020】
ポリエチレンは、繊維の表面に、例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法など、公知のラミネート方法によって貼着(積層)されている。ポリエチレンは、繊維の表面の全体に積層されていてもよく、また、繊維の表面の一部に積層されていてもよい。
ラミネート繊維として、より具体的には、例えば、牛乳パック、紙コップなどが挙げられる。このようなラミネート繊維は、通常、ラミネート繊維の廃品(例えば、使用後に回収された回収物、未使用の廃棄物、製造工程で発生した不良品など)である。
【0021】
ラミネート繊維の廃品を再生すれば、資源を有効活用し、地球環境を保護することができる。
第1分離工程において、ラミネート繊維から繊維とポリエチレン貼着繊維片とを粗分離する方法としては、公知の方法を採用することができる。
より具体的には、この工程では、繊維の種類などにもよるが、例えば、まず、ラミネート繊維を、適宜のサイズに破砕する。次いで、破砕されたラミネート繊維、および、苛性ソーダ水溶液を、パルパー(ミキサー)内に投入し、例えば、50〜90℃において、例えば、1〜3時間撹拌する。
【0022】
これにより、ラミネート繊維に含まれる繊維の大部分を、苛性ソーダ水溶液中において離解させることができる。
そのため、ラミネート繊維に含まれる繊維の大部分が、繊維の懸濁液(以下、離解液と称する場合がある。)として得られる。
一方、ラミネート繊維に含まれる繊維の一部は、離解液中において、離解せずに残存しており、その表面にポリエチレンの貼着が残存した状態の繊維片として得られる。とりわけ、ラミネート繊維がヒートシールされている場合などには、ヒートシールされた箇所の繊維を離解することが困難であるため、繊維とポリエチレンとの貼着状態が、強固に維持される。
【0023】
そのため、ラミネート繊維に含まれる繊維の一部は、ポリエチレンの貼着が残存するポリエチレン貼着繊維片として得られる。
このようにして、第1分離工程では、ラミネート繊維が、繊維とポリエチレン貼着繊維片とに粗分離され、繊維(離解液)とポリエチレン貼着繊維片との混合物が得られる。
第1回収工程では、上記した第1分離工程の後、粗分離された繊維とポリエチレン貼着繊維片とを、それぞれ分別回収する。
【0024】
第1回収工程において、繊維とポリエチレン貼着繊維片とを分別回収する方法としては、公知の方法を採用することができる。
より具体的には、この工程では、例えば、上記の第1分離工程により得られた繊維(離解液)とポリエチレン貼着繊維片との混合物を、例えば、フィルターにより分別(濾別)し、フィルターを通過する離解液から繊維を回収する。
【0025】
回収される繊維は、繊維の種類などにもよるが、公知の方法で再利用することができる。より具体的には、例えば、ラミネート繊維として牛乳パックを用いる場合などには、回収された繊維は、例えば、トイレットペーパー、和紙などの紙製品を製造するための原料などとして、再利用することができる。
また、この方法では、フィルターを通過せずに残存する残渣から、異物を分離し、必要により、脱水および圧縮して、ポリエチレン貼着繊維片を回収する。
【0026】
このようにして、第1回収工程では、繊維とポリエチレン貼着繊維片とが、それぞれ分別回収される。
第1回収工程において回収されるポリエチレン貼着繊維片は、通常、その総量(固形分総量)に対して、ポリエチレンを、例えば、60質量%以上、好ましくは、80質量%以上の割合で含有し、また、繊維片を、例えば、40質量%以下、好ましくは、20質量%以下の割合で含有している。
【0027】
第2分離工程では、上記した第1回収工程の後、回収されたポリエチレン貼着繊維片から、ポリエチレンと繊維片とを分離する。
このポリエチレン成形品の再生方法では、第2分離工程において、本発明のポリエチレンと繊維片との分離方法を、採用する。
以下において、本発明のポリエチレンと繊維片との分離方法の一実施形態について詳述する。
【0028】
図1は、本発明のポリエチレンと繊維片との分離方法に用いられる撹拌装置の一実施形態を示す要部側断面図である。
図1において、撹拌装置1は、垂直軸回転式の撹拌装置であって、処理槽としてのタンク2、高速水平回転羽根3、モータ4および支持フレーム5を備えている。
タンク2は、上方が開放される有底円筒形状をなし、支持フレーム5上に設置されている。このタンク2は、略水平方向に配置される略円板形状の底壁6と、その底壁6の周端部から湾曲して立ち上がる湾曲部7と、湾曲部7の上端部から略鉛直方向上方に延びる円筒形状の周側壁8とが連続して一体的に形成されている。また、周側壁8の上端部で囲まれる円形状の開口部分が、ポリエチレン貼着繊維片を投入するための投入口9とされている。
【0029】
このタンク2には、周側壁8を略水平方向に貫通して、タンク2内に臨む給水管21やタンク2内の温度を測定するための温度センサ18が設けられている。
また、このタンク2には、ポリエチレンおよび繊維片を排出するための排出部10が設けられている。排出部10は、タンク2における周側壁8の下方から底壁6にかけて設けられており、タンク2に略楕円形状に開口している排出口11と、排出口11を開閉するための開閉ゲート12とを備えている。開閉ゲート12には、圧力シリンダ13が連結されており、開閉ゲート12は、その圧力シリンダ13の進退駆動により開閉される。
【0030】
高速水平回転羽根3は、図1に示すように、タンク2の中央部に設けられる回転軸(垂直軸)31と、その回転軸31に設けられる下羽根32と、上羽根33とを備えている。
下羽根32と上羽根33とは、タンク2内において、下羽根32が下、上羽根33が上となるように、上下方向に互いに所定間隔を隔てて回転軸31に支持されている。また、これらは、平面視において、互いに直交するように配置されている。
【0031】
なお、図示しないが、高速水平回転羽根3における下羽根32および上羽根33は、ポリエチレンおよび繊維片を切断可能とする刃を備えることもできる。
下羽根32および上羽根33が刃を備える場合には、高速水平回転羽根3の回転により、ポリエチレン貼着繊維片を破砕、剪断することができ、ポリエチレンと繊維片とを、より良好に分離することができる。
【0032】
回転軸31は、タンク2の中央部において、底壁6を上下方向(鉛直方向)に貫通し、その下部が、支持フレーム5に軸受14を介して回転自在に支持されるとともに、その上部が、タンク2内に突出されている。また、支持フレーム5内において、回転軸31の下部には、モータ4からの動力が伝達される従動プーリ15が、相対回転不能に設けられている。
【0033】
モータ4は、図1に示すように、支持フレーム5上において、タンク2の側方に設置されており、そのピニオンシャフト16が支持フレーム5内に挿入されている。また、ピニオンシャフト16には、伝動プーリ17が相対回転不能に設けられている。
そして、ピニオンシャフト16に設けられた伝動プーリ17と、回転軸31に設けられている従動プーリ15とには、エンドレスベルト20が巻回されている。
【0034】
そのため、モータ4の駆動によって、ピニオンシャフト16が回転されると、伝動プーリ17、エンドレスベルト20および従動プーリ15を介して、その動力が回転軸31に伝達され、これによって、高速水平回転羽根3(下羽根32および上羽根33)が水平方向において高速回転される。
そして、この方法では、このような撹拌装置1に、ポリエチレン貼着繊維片を投入する。
【0035】
このようなポリエチレン貼着繊維片は、上記したように、その総量(固形分総量)に対して、ポリエチレンを、例えば、60質量%以上、好ましくは、80質量%以上の割合で含有し、また、繊維片を、例えば、40質量%以下、好ましくは、20質量%以下の割合で含有している。
つまり、このようなポリエチレンと繊維片との分離方法は、表面にポリエチレンが積層された繊維から、公知の方法により粗分離されたポリエチレン貼着繊維片を、処理することができる。そのため、産業上要求されるポリエチレンと繊維片との分離方法として、有効に採用することができる。
【0036】
ポリエチレン貼着繊維片の投入量は、特に制限されないが、例えば、タンク2の容量に対して、通常、70〜90体積%、好ましくは、75〜80体積%である。
そして、投入されたポリエチレン貼着繊維片は、次のようにして処理される。
すなわち、この方法では、撹拌装置1を、ポリエチレン貼着繊維片が投入される前から起動させて、モータ4の駆動によって高速水平回転羽根3(下羽根32および上羽根33)を、周速30〜50m/s、好ましくは、35〜45m/sで高速回転させておく。
【0037】
その後、ポリエチレン貼着繊維片がタンク2内に投入され、撹拌処理が開始されると、高速水平回転羽根3の高速回転によって、ポリエチレン貼着繊維片が撹拌され、その剪断力によって、処理温度(タンク2内の温度)が上昇する。
そして、この処理では、処理温度を、70〜90℃の範囲に制御する。
処理温度を制御する方法としては、例えば、定量注水する方法などが挙げられる。
【0038】
この方法では、例えば、タンク2内に設けられた温度センサ18により、タンク2内の温度を検知し、その温度が、目的とする処理温度を超過するとき(例えば、タンク2内の温度が、目的とする処理温度+1℃となったとき)に、高速水平回転羽根3の高速回転を継続しながら、予め設定した量の水を給水管21よりタンク2内に投入する(定量注水)。
【0039】
投入される水の量は、タンク2の容量などにもよるが、例えば、1回あたり、1〜2kgである。
その後、所定時間(タンク2の容量などにもよるが、例えば、5〜10秒)経過した後、再び、温度センサ18によりタンク2内の温度を検知する。
このとき、温度センサ18により検知される温度が、目的とする処理温度以下に低下している場合には、水を投入せずに、そのまま処理を継続する。
【0040】
一方、温度センサ18により検知される温度が、未だ目的とする処理温度を超過している場合には、再び、予め設定した量の水を、タンク2内に投入する。なお、水がタンク2から溢れ出ないよう、必要により、タンク2内から水を除去する。
上記した水の投入操作(定量注水)を繰り返すことにより、タンク2内の温度を制御し、処理温度を設定温度に維持することができる。
【0041】
また、処理温度は、例えば、タンク2の外側表面を図示しないジャケットで被覆することにより、制御することもできる。
上記したように、ポリエチレン貼着繊維片を撹拌装置に投入して、高速水平回転羽根を回転させれば、ポリエチレン貼着繊維片が撹拌され、剪断力が発生し、その剪断力によって、処理温度が上昇する。
【0042】
処理温度を上昇させると、温度の上昇とともにポリエチレンが収縮する一方、繊維片は収縮しないため、この処理によってポリエチレンを繊維から剥離することができる。
しかし、処理温度が過度に上昇すると、繊維片から剥離されたポリエチレンが、軟化する。そして、ポリエチレンが軟化した状態で、高速水平回転羽根3の回転を継続すると、ポリエチレンが、繊維片を巻き込みながら、捩じれるように変形するため、ポリエチレンと繊維片との分離が阻害される。
【0043】
これに対して、処理温度を70〜90℃の範囲に制御すれば、ポリエチレンを収縮させることができるとともに、ポリエチレンの軟化を抑制することができ、ポリエチレンが繊維片を巻き込むことを防止することができる。
そのため、このポリエチレンと繊維片との分離方法によれば、ポリエチレン貼着繊維片から、ポリエチレンと繊維片とを、それらが貼着していた形状のままで(ポリエチレンの捩じれを抑制して)、良好に分離することができる。
【0044】
また、このポリエチレンと繊維片との分離方法によれば、ラミネート繊維がヒートシールされている場合など、ポリエチレン貼着繊維片において、繊維とポリエチレンとの貼着状態が強固に維持される場合などにも、そのポリエチレン貼着繊維片から、ポリエチレンと繊維片とを、良好に分離することができる。
また、このポリエチレンと繊維片との分離方法では、処理温度を、好ましくは、80℃±5℃の範囲に維持する。処理温度を、80℃±5℃の範囲に維持すれば、処理温度の上昇によるポリエチレンの軟化を、より一層抑制しつつ、ポリエチレンと繊維片とを、より効果的に分離することができる。
【0045】
そして、このポリエチレンと繊維片との分離方法では、ポリエチレン貼着繊維片の投入開始から5分間以上、好ましくは、5〜8分間処理した後、処理を終了する。
処理時間が5分に満たない場合には、ポリエチレンと繊維片とを十分に分離することができない。また、処理時間が上記の範囲を超過する場合には、分離される繊維片が過度に細かくなるため、回収される繊維片の用途が限定されるという不具合を生じる場合がある。
【0046】
これによって、タンク2内において、ポリエチレン貼着繊維片は、ポリエチレンと繊維片とに、ほぼ完全に分離される。
そして、処理が完了すると、圧力シリンダ13を作動させて、開閉ゲート12を開動作させることにより、ポリエチレンおよび繊維片(ポリエチレンと繊維片とを含む混合物)を、排出口11を介してタンク2の外へ排出する。
【0047】
第2回収工程では、上記した第2分離工程の後、ポリエチレンと繊維片とを分別回収する。
第2回収工程において、ポリエチレンと繊維片とを分別回収する方法としては、公知の方法を採用することができる。
好ましくは、ポリエチレンと繊維片とを遠心分離により分別回収する。
【0048】
この方法では、例えば、まず、上記の第2分離工程により得られたポリエチレンと繊維片とを含む混合物を、水中に投入し、分離されたポリエチレンと繊維片とを含むスラリーを得る。
スラリー中においては、ポリエチレンが浮上し、一方で、繊維片が沈降するため、ポリエチレンと繊維片とが分別される。
【0049】
次いで、この方法では、得られたスラリーを、例えば、デカンター式の遠心分離機などで遠心分離する。
これにより、繊維片を脱水しながら押出し、回収する一方で、ポリエチレンを水とともに回収することができる。
このように回収される繊維片は、繊維片の種類などにもよるが、公知の方法で再利用することができる。より具体的には、例えば、ラミネート繊維として牛乳パックを用いた場合などには、回収された繊維片は、例えば、トイレットペーパー、和紙などの紙製品を製造するための原料などとして、再利用することができる。
【0050】
また、回収されたポリエチレンは、必要により、脱水され、乾燥された後、後述する成型工程に供される。
成型工程では、上記した第2回収工程の後、回収されたポリエチレンを成型する。
ポリエチレンを成型する方法としては、公知の方法を採用することができる。
より具体的には、この工程では、例えば、回収されたポリエチレンを、押出成型機、射出成型機など、公知の成型装置を用いて、任意の形状に成型する。
【0051】
また、例えば、回収されたポリエチレンを、樹脂ペレット成型機により成型(造粒)し、樹脂製品の原料となるポリエチレンの樹脂ペレットを、製造することもできる。
このポリエチレン成型品の再生方法では、表面にポリエチレンが積層された繊維(例えば、牛乳パックなど)を、繊維と、ポリエチレンの貼着が残存するポリエチレン貼着繊維片とに粗分離した後、そのポリエチレン貼着繊維片を、上記したポリエチレンと繊維片との分離方法を採用して、ポリエチレンと繊維片とに分離している。
【0052】
つまり、このようなポリエチレン成型品の再生方法によれば、公知の方法により粗分離されたポリエチレン貼着繊維片を、ポリエチレンと繊維片とに分離し、そのポリエチレンを成型することにより、再生することができる。
そのため、このポリエチレン成型品の再生方法は、産業上要求されるポリエチレン成型品の再生方法、すなわち、公知の方法により粗分離されたポリエチレン貼着繊維片から、ポリエチレンを回収および成型し、ポリエチレンを樹脂として再生する方法として、有効に採用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 撹拌装置
2 タンク
3 高速水平回転羽根
6 底壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維片の表面にポリエチレンが貼着されたポリエチレン貼着繊維片から、ポリエチレンと繊維片とを分離するための方法であって、
前記ポリエチレン貼着繊維片を、高速水平回転羽根を備える垂直軸回転式の撹拌装置に投入し、
前記高速水平回転羽根を、70〜90℃の処理温度において、5分間以上回転させることを特徴とする、ポリエチレンと繊維片との分離方法。
【請求項2】
前記ポリエチレン貼着繊維片が、前記ポリエチレン貼着繊維片の総量に対して、60質量%以上のポリエチレンと、40質量%以下の繊維片とを含有することを特徴とする、請求項1に記載のポリエチレンと繊維片との分離方法。
【請求項3】
前記処理温度を、80℃±5℃の範囲に維持することを特徴とする、請求項1または2に記載のポリエチレンと繊維片との分離方法。
【請求項4】
表面にポリエチレンが積層された繊維を、繊維と、ポリエチレンの貼着が残存するポリエチレン貼着繊維片とに粗分離する第1分離工程と、
前記第1分離工程の後、繊維と、ポリエチレン貼着繊維片とを分別回収する第1回収工程と、
前記第1回収工程の後、回収されたポリエチレン貼着繊維片から、ポリエチレンと繊維片とを分離する第2分離工程と、
前記第2分離工程の後、ポリエチレンと繊維片とを分別回収する第2回収工程と、
前記第2回収工程の後、回収されたポリエチレンを成型する成型工程と
を備えるポリエチレン成型品の再生方法であって、
前記第2分離工程において、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレンと繊維片との分離方法を採用することを特徴とする、ポリエチレン成型品の再生方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−269544(P2010−269544A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124524(P2009−124524)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000129183)株式会社カワタ (120)
【Fターム(参考)】