説明

ポリエチレンテレフタレートを製造するプロセス

本発明は、アンチモン−(Sb)、亜鉛−(Zn)およびリン−(P)化合物から実質的になる触媒系を使用して、エチレングリコール(EG)、精製テレフタル酸(PTA)および必要に応じて30モル%までのコモノマーから、ポリエチレンテレフタレート(PET)を製造するプロセスであって、a)EGおよびPTAをエステル化して、ジエチレングリコールテレフタレートおよびオリゴマー(DGT)を形成する工程、およびb)DGTを溶融相重縮合して、ポリエステルおよびEGを形成する工程を有してなり、Sb−およびP−化合物が工程a)において添加され、Zn−化合物が工程a)後に添加されるプロセスに関する。このプロセスにより、EGの再利用がこのプロセスにおいて適用される場合にも、好ましい色および光学的透明度を示し、溶融処理中のアセトアルデヒドの再生速度が比較的遅いPETを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチモン−(Sb)、亜鉛−(Zn)およびリン−(P)化合物から実質的になる触媒系を使用して、エチレングリコール(EG)、精製テレフタル酸(PTA)および必要に応じて30モル%までのコモノマーから、ポリエチレンテレフタレート(PET)を製造するプロセスであって、a)EGおよびPTAをエステル化して、ジエチレングリコールテレフタレートおよびオリゴマー(DGT)を形成する工程、およびb)DGTを溶融相重縮合して、ポリエステルおよびEGを形成する工程を有してなるプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなプロセスが、例えば、特許文献1から公知である。この文献には、PTAおよびEGが、活性触媒成分としての15〜150ppmのSb−化合物および40〜160ppmのZn−化合物と、安定化成分としての10〜30ppmのリン酸とからなる触媒系の存在下で反応せしめられるプロセスが記載されている。報告された実験において、触媒成分は、エステル化工程a)の始めに、PTA、EG、および必要に応じて他の成分と共に添加され、一方でリン酸は、エステル化の終わりに添加された。標準的なSb−触媒と比べると、この触媒系は、溶融相重縮合工程およびその後の固相重縮合(SSP)工程の両方における生産性を増加させるだけでなく、PETの光学的性質を向上させること;すなわち、改善された透明性および一般にSb−触媒残留物を原因とする灰色がかった色の低減を示すことが判明している。
【0003】
PETなどのポリエステルは、当該技術分野においてよく知られており、織物および工業繊維、フイルムおよびシート、並びに容器、特にボトルなどの用途に広く適用されている。初期のPET生産では、前駆体として、テレフタル酸ジメチル(DMT)およびエチレングリコール(モノエチレンとも呼ばれる)を使用していたが、ほとんどの生産工場では、現在、プロセスの経済上の理由のために、原材料として精製テレフタル酸(PTA)およびEGを使用している。この場合、最初に、PTAの過剰のモル濃度のEGによるエステル化によりジエチレングリコールテレフタレート(テレフタル酸ビスヒドロキシエチルとも呼ばれる)およびそのオリゴマー(DGT)を形成することによって、オリゴマーまたは低分子量プレポリマーが形成され、主な副生成物である水が蒸留により除去される(工程a)。この工程は、一般に、自己触媒反応であるが、触媒を添加することによって、促進してもよい。DGTには、エステル交換反応による重縮合がさらに施されて、より高分子量のポリエステルが形成される(工程b)。この工程において、DGTは高真空下で約280℃に加熱されて、溶融相重縮合反応が行われ、重縮合反応において遊離したEGは除去される。エステル交換は遅い反応であるので、重縮合工程は一般に触媒される。この触媒は、工程b)において添加して差し支えないが、工程a)において既に含まれても差し支えない。その溶融物は、固有粘度(IV)値により反映される所望の分子量に到達した後に、排出され、ペレットに製造される。工業規模のPET生産は、一般に、例えば、非特許文献1および2により記載されているような、直列に接続されたいくつかの反応装置を利用した連続PTAシステムに基づく。一般に、そのようなシステムでは、EG、PTA、触媒および添加剤がその中で混合されてペーストを形成する容器、1つ以上のエステル化反応装置、1つ以上の予備重縮合反応装置、それに続く重縮合の最終段階のための高真空仕上反応装置が使用される。形成されたポリエステルは、ストランドに押し出され、水により急冷され、切断されてペレットまたはチップを形成してもよい。フイルムおよび繊維用途に使用されるPETは、一般に、0.55から0.65dL/gの範囲にあるIVを有する。PETフイルムおよび繊維は、重縮合反応装置から溶融物を押し出すことによって直接製造することもできる。PETボトルグレードの樹脂について、0.75から0.85dL/gの範囲にあるIVを有し、残留アセトアルデヒドが少ないポリマーが一般に要求される。この場合、少量のアセトアルデヒドを達成しながら、このIV値を達成するために、分割(split)プロセスが使用される。一般の実施法は、溶融相重縮合により約0.63dL/gの中間IVを有するポリマーチップを製造し、次いで、その後の固相重縮合(SSP)によりそのIVを増加させることである。この分割手法により、PETボトルに入れられる飲料の風味に影響を与える分解副生成物であるアセトアルデヒドの量が最少である高IV樹脂を生産することができる。ジエチレングリコール(DEG)は、副反応によりエチレングリコールから生成されるジオールであり、これもPET鎖に含まれる。コモノマーとしてのDEGの存在により、PETのガラス転移温度と溶融温度が低下するが、あまりに高レベルであると望ましくない。溶融相およびSSP技術が、例えば、非特許文献3および2に記載されている。
【0004】
工業PET生産の90%超に現在使用されている触媒は、アンチモン(Sb)系であり、ほとんどが、三酢酸アンチモンまたは三酸化アンチモン系である。一般に、十分に速い反応を提供するために、約200〜300ppmのSb(PETに対して)が使用される。アンチモン系触媒化合物を使用することの欠点は、アンチモン金属粒子の析出から生じると報告されているPETの灰色がかった色である。さらに、アンチモンは、相当高価であり、いくつかの環境問題を生じる。様々な公報が、Sbを第2または第3の金属化合物と組み合わせてある程度の相乗効果をもたらす、PET用の触媒系に取り組んできた。例えば、特許文献2および3には、アンチモン、5〜60ppmのコバルトおよび/または亜鉛、および10〜150ppmの亜鉛、マグネシウム、マンガンまたはカルシウムに基づく三成分触媒が記載されている。亜鉛は第2および第3成分として存在し得るので、150〜650ppmのアンチモンおよび5〜210ppmの亜鉛を有するバイメタル組成物が含まれる。触媒成分は、重縮合前または最中のいつ添加しても差し支えなく、従来のアンチモン触媒と比べて、少なくとも三分の一、溶融相重縮合時間を減少させることができるであろう。Sb−Zn触媒組成物を対象とする他の特許公報には、特許文献4および5がある。特許文献6は、アンチモンの他の第3成分としてのアルカリ金属酢酸塩と、コバルト、マグネシウム、亜鉛、マンガンおよび鉛の内の少なくとも1つとを導入することによって、PTAプロセスから製造されたPETの光学的外観を改善できると主張している。特許文献7には、10〜1000ppmのSb、10〜500ppmの、Co,Mg,Zn,Mn,CaおよびPbの内の少なくとも1つ、および10〜500ppmのP−化合物を含有する触媒系が開示されており、それら全ての成分がエステル化工程で添加される。
【0005】
上述したPET生産プロセスにおいて、形成されるEGは、重縮合工程中に反応混合物から除去され、よって平衡反応が進行する。使用済みグリコールとも称される、除去されたEGは、効率および経費節減の理由のために、プロセスにおいて再利用または再使用されることが好ましい。特許文献8において、PETなどのポリエステルを製造するための連続プロセスが記載されており、ここでは、蒸留により除去されたEGは、水および他の低沸点成分の除去後に、新たなすなわちバージンのEGおよびリン酸(またはそのグリコールエステル)と組み合わせて、初期のペースト製造工程に使用される。このプロセスにおいて、Sb,Ti,Ge,Sn,Zn,Mnまたはそれらの混合物に基づく金属触媒は、PETの光学的性質を制御するために、総エステル化時間の65〜80%が経過した後に添加されることになっている。特許文献9は、PETに関する連続直接エステル化プロセスに関し、ここでは、除去されるEGは、精留塔を適用することによって、スラリー製造プロセスにおいて再利用するために回収される。特許文献10において、使用済みスラリーを精製し、これをペースト製造への再利用に適したものにするために、蒸留工程の代替として、クロスフロー膜濾過の使用が提案されている。これらの文献は、一般に、PET重合プロセスまたはポリマーの性質へのEG再利用の影響には言及していない。特許文献11において、使用済みEGが、プロセスにおいて再使用される前にグリコール中の不純物を水素化することによって精製される場合、PETの色と透明性が改善されることが教示されている。
【0006】
特許文献12に記載されたような、Sb−、Zn−およびP−化合物から実質的になる触媒系を使用して、EG、PTAおよび必要に応じて30モル%までのコモノマーから、PETを製造する公知のプロセスであって、a)EGおよびPTAをエステル化して、ジエチレングリコールテレフタレートおよびオリゴマー(DGT)を形成する工程、およびb)DGTを溶融相重縮合して、ポリエステルおよびEGを形成する工程を有してなるプロセスの欠点の1つは、バージンEGのみを使用する代わりに、使用済みEGがエステル化工程a)に再循環される場合、得られるPETが、ボトルなどの成形品において著しいヘイズ(曇り度)を示すことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1574539A1号明細書
【特許文献2】米国特許第5008230号明細書
【特許文献3】米国特許第5166311号明細書
【特許文献4】米国特許第5162488号明細書
【特許文献5】欧州特許第0399742号明細書
【特許文献6】米国特許第5623047号明細書
【特許文献7】米国特許第5608032号明細書
【特許文献8】独国特許発明第19537930号明細書
【特許文献9】米国特許第4146729号明細書
【特許文献10】国際公開第99/16537号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2004/076513号パンフレット
【特許文献12】欧州特許第1574539号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】S.M. Aharoni in ”Handbook of Thermoplastic Polyesters”, vol. 1, chapter 2, Editor S. Fakirov, Wiley-VCH, 2002
【非特許文献2】V.B. Gupta and Z. Bashir in ”Handbook of Thermoplastic Polyesters”, vol. 1, chapter 7, Editor S. Fakirov, Wiley-VCH, 2002
【非特許文献3】Encyclopaedia of Polymer Science and Engineering, 2nd ed, volume 12, John Wiley and Sons, New York (1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、EG、PTAおよび必要に応じてコモノマーからPETを製造するプロセスであって、前述したヘイズの問題を生じないプロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明にしたがって、Sb−およびP−化合物が工程a)において添加され、Zn−化合物が工程a)後に添加される、そのようなプロセスにより達成される。
【0011】
本発明によるプロセスにより、EGの再利用がこのプロセスにおいて適用される場合にも、中間色および高い光学的透明度を示すPETを得ることができる。このプロセスは、高生産性で工業規模で動作できる。本発明によるプロセスのさらに別の利点は、得られるPETが良好な熱安定性を示し、比較的少ない含有量のカルボン酸末端基を有し、溶融処理中のアセトアルデヒド(AA)の再生速度が比較的遅いことである。それゆえ、本発明によるプロセスにより得られるPETは、優れた機械的、光学的および官能的性質を有するボトルなどの物品のパッケージ、特に食品の包装を製造するのに非常に適している。
【0012】
EGおよびPTAからPETを製造するための本発明によるプロセスにおいて、必要に応じて30モル%までのコモノマーを使用して差し支えない。PETは、成形品に溶融加工できる、必要に応じてある程度の分岐を有する、実質的に直線の高分子鎖を有する熱可塑性ポリエステルであると考えられる。コモノマーの存在は、当業者には公知のように、ポリマーの結晶化挙動および融点に影響する。コモノマーの含有量が多いと、実質的に非晶質のコポリエステルが生成されるであろう。一般に、コモノマーの量は、ホモポリマーPETよりも低い硬化温度で、光学的透明度の高い製品に溶融加工できるが、それでも機械的性質が良好な(配向を誘起する結晶化のために)成形品、例えば、延伸ブロー成形品を形成する、結晶化可能なポリエステルが生成されるように選択される。この理由のために、本発明によるプロセスに使用されるコモノマーの量は、少なくとも0.5、1.0、1.5または2.0モル%であるが、多くとも10、8、6または4モル%であることが好ましい。
【0013】
EGおよびPTAからPETを製造するための本発明によるプロセスにおいて、少なくとも1種類のコモノマーを使用してよく、適切なコモノマーは、ジ−またはポリカルボン酸またはそれらのエステル形成誘導体から、ジ−またはポリヒドロキシ化合物またはそれらのエステル形成誘導体から、ヒドロキシカルボン酸またはそれらのエステル形成誘導体から、およびそれらの組合せから選択することができる。二官能性化合物をコモノマーとして使用することが好ましい。
【0014】
適切なカルボン酸としては、式HOOC−R−COOHのジカルボン酸が挙げられ、ここで、Rは、直鎖または分岐鎖アルケン基、アリーレン基、アルケニレン基、またはそれらの組合せである。Rが約2から30、好ましくは約4から15の炭素原子を有することが好ましい。カルボン酸化合物の適切な例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、およびダイマー酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、およびイタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;およびオルトフタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、パモ酸、およびアントラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。コモノマーが、イソフタル酸、ナフタレン二酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、グルタル酸、シュウ酸、およびマレイン酸からなる群より選択される少なくとも1種類の化合物であることがより好ましい。カルボン酸化合物がイソフタル酸であることが最も好ましい。
【0015】
適切なヒドロキシ官能性化合物としては、式HO−R’−OHのアルキレングリコール、式HO−[R”−O−]n−OHを有するポリアルキレングリコール、またはそれらの組合せが挙げられ、ここで、R’は、3から約10、好ましくは3から4の炭素原子を有する、直鎖または分岐鎖のアルケン基であり、R”は、同じでも異なってもよい、1から約10、好ましくは1から5の炭素原子を有するアルキレン基である。アルコール系化合物の適切な例としては、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールなどの脂肪族グリコール;およびヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、およびこれらのグリコールにエチレンオキシドを添加することにより得られるグリコールなどの芳香族グリコールが挙げられる。ヒドロキシ官能性コモノマーが、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、および1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選択される少なくとも1種類の化合物であることが好ましい。本発明によるプロセスにおいて、ジエチレングリコールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノールが使用されることがより好ましい。
【0016】
コモノマーとして、少量の多価アルコールを使用してもよい。多価アルコールの適切な例は、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、グリセロール、およびヘキサントリオールである。組成物にヒドロキシカルボン酸も使用してもよい。適切なヒドロキシカルボン酸の例としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸およびそれらのエステル形成誘導体が挙げられる。また、本発明において組成物に環状エステルを使用してもよい。環状エステルの例としては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、およびラクチドが挙げられる。
【0017】
本発明によるプロセスを行う好ましい様式において、イソフタル酸、ジエチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選択される少なくとも1種類のコモノマーを0.5〜6モル%含有するPETが製造される。
【0018】
本発明によるプロセスは、当該技術分野に公知なように、バッチ式でまたは連続プロセスで行ってもよい。
【0019】
本発明によるプロセスは、a)EGおよびPTA並びに必要に応じてコモノマーをエステル化して、ジエチレングリコールテレフタレートおよびオリゴマー(DGT)を形成する工程を含む。この工程は、様々な様式で、当該技術分野で公知の条件下で行って差し支えない。一般に、この工程は、最初に、EG、PTA、コモノマー、触媒成分、およびコバルト化合物や他の可溶性着色剤のような色補正剤などの他の添加剤の混合物を最初に製造することを含む。EGは、一般に、PTAに対して過剰なモル濃度で適用され、例えば、EG/PTAの比率は、1.1から3、好ましくは1.5〜2であろう。この過剰なEGは後に、重縮合中に再び除去される。混合物は、一般に、溶液ではなく、ペーストまたはスラリーである。別個のスラリータンク内で混合物を調製することに加え、エステル化工程は、1つ以上のエステル化タンクまたは反応装置内で行ってよく、この中で、混合物は、約0.1〜10MPaの圧力で、200〜300℃、好ましくは230〜270℃の範囲に温度に加熱される。酸化を防ぐために窒素を使用することが好ましい。反応において形成された水はその系から除去される。エステル化により、ジエチレングリコールテレフタレートおよび様々なオリゴマーの混合物が得られ、これらは一緒にDGTと称される。
【0020】
本発明によるプロセスの工程b)において、得られたDGT混合物は、形成されたEG、水、アルコール、アルデヒドまたは他の反応生成物の除去を促進するために不活性ガス流を流しながらまたは減圧下で、高温、例えば、240〜300℃、好ましくは270〜290℃の範囲の温度で動作された1つ以上の反応装置内でさらに反応させられる。この溶融相重縮合または重合工程は、一般に、約0.5から約0.7dL/g、好ましくは0.60から0.65dL/gの固有粘度を有する前駆体ポリエステルを形成するために、50〜500Pa、好ましくは約100Paの圧力で動作される。
【0021】
重縮合工程後、形成されたポリエステルは、溶融紡糸などの当該技術分野に公知の任意の方法を用いることによって、繊維、単繊維、フイルムまたはストランドに直接押し出してもよい。そのようなポリエステル繊維は、毛糸、織物、編み物、網織物などの形態で、衣服、タイヤコード、ロープ、土木工事および建設用途のための工業繊維または織物繊維として使用されるであろう。PETシートは、写真フイルムまたは熱成形用包装に適用することができる。
【0022】
あるいは、本発明によるプロセスは、その後、c)ポリエステルをペレットに形成する工程、d)ペレットを結晶化させる工程、およびe)ポリエステルを固相重縮合させる工程をさらに含む。そのような一連の工程により、容易に取り扱え、さらに加工でき、少なくとも約0.7dL/g、好ましくは約0.7〜1.5dL/g、より好ましくは約0.75〜0.85dL/gの固有粘度を有するペレット形態のPETが得られる。そのような高い固有粘度、すなわち、より高い分子量により、性質のより良好な組合せ、特に、ボトルの厳しい要件を満たすことのできる向上した機械的性質を有するポリエステル製品が得られる。
【0023】
工程c)におけるPETの粒状化またはペレット化は、どのような公知の方法を適用して行っても差し支えなく、様々なサイズと形状のペレットが得られるであろう。工程d)において、一般に非晶質であるペレットは、最初に、固相重縮合(SSP)のその後の行程e)の最中にペレットが凝集するのを防ぐために、ポリエステルの結晶化温度と結晶融点との間の温度までゆっくりと加熱することによって、結晶化される。このSSP工程は、ペレットまたは顆粒の床の上に不活性ガス流、好ましくは窒素流を通過させることにより、または減圧下で、ポリエステルのガラス転移温度と融点との間の温度、好ましくは約180から220℃の範囲の温度で行われるであろう。様々な固相プロセスが当該技術分野で公知であり、そのようなプロセスは、例えば、米国特許第4064112号および同第4161578号の各明細書に記載されている。固相重縮合工程を適用することによって得られたポリエステルは、例えば、押出成形または射出成形装置を使用した、管、パイプ、および容器などの中空成形品を製造するのに特に適している。
【0024】
本発明によるプロセスには、重縮合工程b)において形成されたEGが分離され、このプロセスに再度適用される場合でさえも、中間色および高い光学的透明度を示すPETが得られるという特別な利点がある。形成されたEGは、適用された反応装置から蒸留により除去されることが好ましく、そのEGは、工程a)に、好ましくは工程a)の一部を構成するペースト製造工程に戻される。このプロセスは、必要に応じて、当該技術分野に公知のように蒸留により除去されたEGをさらに精製する工程を含んでよいが、蒸留されたEGが、追加の精製または反応後工程を行わずに、工程a)に供給されることが好ましい。それゆえ、本発明は、特に、重縮合工程b)から除去されたEGがエステル化工程a)に再循環されて戻される上述したプロセスに関する。
【0025】
本発明によるプロセスに使用される触媒系は、Sb−、Zn−、およびP−化合物から実質的になり、これは、本出願において、これらの化合物が、生じている反応の速度に影響を与える主成分であることを意味すると理解される。SbおよびZn成分は、エステル化反応および特に重縮合反応を促進させる実際に触媒成分である。しかしながら、これらの成分は、いくつかの分解反応などの他の反応に影響を与えることも知られている。特に、この理由のために、P−化合物がこの触媒系に含まれ、この化合物は、特にポリマーの変色をもたらす分解反応を減少させるための熱安定剤として働く。このことは、ポリエステル生産に使用される他の触媒系においても常識である。一般に、そのようなP−化合物は、従来技術において、工程a)の後に、すなわち、エステル化の終わりに添加される。Sb−、Zn−、およびP−化合物に加え、触媒として作用し得る他の金属成分がこのプロセスに存在してもよいが、その影響がほとんど目立たないような低濃度である。そのような成分の例としてはCo−化合物が挙げられ、これらは、反応速度を増加させるためというよりむしろ、ポリエステルの黄色がかった色を補正するために低濃度(一般に、ポリエステルに対して15ppm未満のCo)で添加される。
【0026】
本発明によるプロセスに使用される触媒系は、Sb−化合物を含有する。適切なアンチモン化合物としては、重縮合触媒としいて当該技術分野で認識されているSb(III)およびSb(V)化合物、特に、EGと反応する化合物、より好ましくはEG中に可溶性である化合物が挙げられる。適切な化合物の例としては、三酢酸アンチモン、三酸化アンチモン、三炭酸アンチモン、グリコール酸アンチモンおよびそれらの混合物が挙げられる。Sb−化合物は、一般に、PETの質量に対して、15〜220ppm、好ましくは50〜200ppm、より好ましくは75〜175ppm、100〜160ppmまたは125〜150ppmのSbとなる量で添加される。
【0027】
本発明によるプロセスに使用される触媒系はZn−化合物をさらに含有する。適切な亜鉛化合物としては、重縮合触媒としいて当該技術分野で認識されている化合物、特に、EGと反応する化合物、より好ましくはEG中に可溶性である化合物が挙げられる。適切な化合物の例としては、二酢酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、過酸化亜鉛、水酸化亜鉛、ハロゲン化亜鉛、硫化亜鉛、グリコール酸亜鉛、亜鉛金属およびそれらの混合物が挙げられる。Zn−化合物は、一般に、PETの質量に対して、50〜200ppm、好ましくは75〜175ppm、より好ましくは100〜150ppmまたは120〜140ppmのZnとなる量で添加される。
【0028】
本発明によるプロセスに適用される触媒系中の金属成分の総量は、好ましくは150〜400ppm、より好ましくは200〜300ppmである。
【0029】
本発明によるプロセスに使用される触媒系はP−化合物をさらに含有する。適切なリン化合物としては、ポリエステル中の安定化化合物と当該技術分野で認識されている化合物が挙げられる。適切な化合物の例としては、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、リン酸トリエチルやリン酸トリブチルなどのリン酸エステルおよびそれらの混合物が挙げられる。食品と接触する用途にも使用可能な都合の良い安価な添加剤であることに加え、PETの良好な重縮合反応性および良好な熱安定性をもたらすリン酸を使用することが好ましい。P−化合物は、一般に、PETの質量に対して、10〜100ppm、好ましくは20〜100ppm、より好ましくは30〜70ppmまたは40〜60ppmのPとなる量で添加される。そのような濃度の利点は、固相における速い重縮合速度を維持することであるが、PET中のアセトアルデヒドの形成、特に溶融物における加工中の再生の速度を低下させることでもある。
【0030】
本発明によるプロセスにおいて、Sb−、Zn−、およびP−化合物から実質的になる触媒系の成分は、一緒に添加されず、上述したヘイズの問題を解決するために、Sb−およびP−化合物は工程a)において添加され、Zn−化合物は工程a)後に添加される。Sb−およびP−化合物は、原材料PTAおよびEG並びに必要に応じて他の添加剤と一緒に工程a)の一部を形成するペースト製造工程に添加されることが好ましいが、後のエステル化中に添加されてもよい。Zn−化合物は、エステル化工程a)の終わりに、例えば、重縮合工程b)を行うためのその後の反応容器にDGT混合物を移す直前または最中に、もしくは重縮合工程b)の始めに添加されるべきである。Zn−化合物はエチレングリコール中の溶液の形態で添加されることが好ましい。
【0031】
本発明によるプロセスの好ましい実施の形態において、触媒系は、100〜160ppmのSb、100〜150ppmのZn、および30〜70ppmのP(PETに対する元素の含有量)、より好ましくは125〜150ppmのSb、120〜140ppmのZn、および40〜60ppmのPから実質的になる。
【0032】
本発明によるプロセスのさらに好ましい実施の形態において、触媒系は、三酢酸Sbとして添加される125〜150ppmのSb、二酢酸Znとして添加される120〜140ppmのZn、およびリン酸として添加される40〜60ppmのPから実質的になる。
【0033】
本発明によるプロセスにおいて、所望であれば、他の一般的な添加剤も添加してよい。そのような添加剤は、PETの中間色をより淡い色合いに調節するかまたは補正するため、もしくは淡青色などの所望の色にするために、着色剤、好ましくはPET中に可溶性の着色剤を含んで差し支えない。色補正剤としては、米国特許第5372864号または同第5384377号の各明細書に記載されているような、コバルト化合物、青色または赤色トナーなどの有機顔料が挙げられる。他の適切な添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、再加熱助剤(reheating aids)、ブロッキング防止剤、滑剤、アセトアルデヒド除去剤などが挙げられる。そのような添加剤の量は、数質量パーセントまで様々であってよいが、一般にできるだけ少なく、例えば、多くとも5、4、3または2質量%に維持される。
【0034】
本発明によるプロセスは、当業者に公知であり、先に引用した文献に記載されたような、内の反応装置内で行うことができる。
【0035】
本発明は、本発明によるプロセスで得られ、好ましい性質を有するPETに関し、このPETは、繊維、管、異形材、シート、および熱成形トレイなどの包装物品、並びに射出成形されたプリフォームからの延伸ブロー成形ボトルを含む、多くの様々な用途のための幅広い物品を形成するのに使用できる。
【実施例】
【0036】
ここで、本発明を、以下の実験によりさらに説明する。
【0037】
試験方法
固有粘度
固有粘度またはIVは、ポリマーの分子量の尺度であり、希釈溶液粘度測定法により測定される。全てのIVは、25℃で、フェノールと1,2−ジクロロベンゼンの3:2の混合溶液中で測定した。概して、約8〜10個のチップを溶解して、約0.5%の濃度の溶液を調製した。IVは、以下に示されるビルメイヤー(Billmeyer)の式(F.W. Billmeyer, J. of Polymer Sci. 1949 IV, 83参照)を使用することによって、1つのポリマー濃度についての相対粘度ηrの測定値から得た。この式は、c=0.5〜0.65g/dLの範囲で有効である。
IV=[η]=0.25(ηr−1+3Inηr)/c
【0038】

色パラメータを、HunderLab ColorFlexモデル番号45/0、製造番号CX0969により測定した。非晶質チップを、透明状態で、研磨も結晶化も行わずに使用した。概して、測定した変化は目にも見えた。透明な非晶質チップの色は、CIE三刺激L*、a*およびb*値を使用して分類した。L*はサンプルの輝度を表し、高い値が高い輝度を表す。L*=100は完全な白色を意味し、L*=0は完全に黒色である。a*値は緑−赤のコントラストを示し(−値は緑を表し、+値は赤を表す)、b*値は青−黄のコントラストを示す(−値は青を表し、+値は黄を表す)。
【0039】
SSPチップの色の測定は研磨を行わずに行った。SSP後のL*値は、ポリマーの球顆状結晶により生じた白化のために、高くなっている。
【0040】
ヘイズ
ブロー成形ボトル上のヘイズを、Haze Gard Plus(BYK Gardner社)を使用して、32gのプリフォームから製造された1.5Lのボトルの平らな部分から切断された約3cmの直径および約0.238mmの厚さのパネルで測定した。ヘイズは、サンプルを透過した後、2.5°超散乱される透過光の割合である(ASTM D−1003−97)。値は、サンプルの厚さに正規化された%ヘイズとして報告されている(%/mm、すなわちサンプルの厚さmm当たりの%ヘイズ)。
【0041】
より小さい規模で行った実験の場合、試験プレートは、射出成形(常温金型)により製造し、ヘイズを目視で評価した。
【0042】
DEG
DEG含有量を決定するために、PETを、220℃のオートクレーブ内において、メタノールとエステル交換した。この最中に、PETは解重合し、DEGがジオールとして遊離する。形成された液体を、ガスクロマトグラフィー(GC)により分析して、適切な校正後に、ポリマーのDEG含有量を決定した。
【0043】
COOH末端基
PETを、還流条件下で、o−クレゾールおよびクロロホルムの混合物中に溶解させた。室温まで冷却した後、窒素雰囲気下で、KOHのエタノール溶液による電位差滴定を使用して、COOH末端基を決定した。結果は、COOHのmVal/PETのkg(PET1kg当たりのCOOHのミリ当量)で表されている。
【0044】
SSPチップ中の残留アセトアルデヒド(AA)
ポリマーチップを粉末に低温粉砕した後、AAをヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC)により測定した。1gの粉末をGCガラス瓶内に入れた。標準的なヘッドスペース法が、樹脂中のAAについて使用され、GCカラム中への注入前に、90分間に亘り150℃でのガラス瓶の加熱を含んだ。GCを、公知の濃度のアセトアルデヒド水溶液で校正した。
【0045】
SSPポリマーの溶融の際のアセトアルデヒドの再生
チップが溶融されるときに再生されるAAは、ボトルグレードのチップの最も重要な性質であり、射出成形中のプリフォームに起きるであろうこと(例えば、十分な材料がプリフォーム製造に利用できない場合)を反映している。AA精製試験は、(1)SSPポリマーペレットを低温粉末化する工程、(2)真空中で55分間に亘り粉末を乾燥させる工程、(3)窒素封入して、孔のないダイ挿入物を使用して、4分間に亘り280℃で乾燥粉末を溶融粘度計内で溶融させる工程、(4)ダイ挿入物を取り除き、ロッドで溶融塊を冷水の入ったビーカーに押し出す工程、(5)その塊を切断し、低温粉砕する工程、(6)ガスクロマトグラフィー(GC)ガラス瓶内で粉砕した押出粉末1gを使用し、標準的なヘッドスペースGC(150℃で90分間)によりAAを測定する工程を含んだ。
【0046】
ポリエステルの合成
比較実験A〜C
比較実験Aにおいて、触媒としての三酢酸Sb(Sb含有量256ppm)、安定剤としてのリン酸(15ppmのP)、および色補正剤としての酢酸Co(15ppmのCo)と青色トナーを使用して、原材料としてのPTA、EGおよび2質量%のIPAから、スラリー製造、エステル化、溶融相重縮合、粒状化、および固相重縮合の各工程を含む連続重合設備内でアンチモン触媒により、標準的なPETを製造した。エステル化後であるが、重縮合の開始前に添加したP−安定剤を除いて、全ての成分をスラリータンクに、すなわち、エステル化に先行するペースト製造工程において、投入した。溶融相重縮合から蒸留により除去されたEGを縮合させ、ペースト製造工程に再循環させた。得られた固相PETから、273〜275℃で二重キャビティHusky装置で32gのプリフォームを射出成形した。続いて、そのプリフォームを1.5リットルのボトルに延伸ブロー成形した。比較実験Aの実験データが表1に要約されている。
【0047】
比較実験Bにおいて、EG再循環を適用しなかったことを除いて、比較実験Aと同じ様式でPETを製造した。結果として得られたPETポリマーは、実験誤差内で、比較実験Aについて報告したものと同じ性質を示した(結果は、表1に示されていない)。それゆえ、アンチモン触媒について、使用済みグリコールを使用した場合、ポリマーの性質に差は観察されない。
【0048】
比較実験Aと同じ手法にしたがって、比較実験CにSb−Zn−P触媒/安定剤を適用し、酢酸Znもスラリータンクに添加した。この実験は、特許文献12に記載された手法の拡大版と考えられ、連続重合システムにおいて再循環EGを使用することがここでの重要な違いである。生産能力は、比較実験AおよびBよりも高かったが、表1の結果は、このようにして得られたPETが、著しく高いAA再生濃度を示し、比較実験Aと比べてブロー成形ボトルにおけるヘイズが高かった。比較実験Cの射出成形プリフォームにおいて均一なヘイズが見られた。このプリフォームをボトルに引き延ばした際に、不透明性が実際に驚くほど増加したことが観察された。
【0049】
それにより、1回のバッチ中で蒸留されたEGが次のバッチにおいて出発EG(の一部)として使用された、このSb−Zn−P触媒+安定剤を適用したいくつかの追加の対照実験を25Lのバッチ式反応装置内で行った。これらのバッチ実験により、特許文献12に報告された実験におけるようにバージンEGのみの代わりに、バージンEGと再循環EGの混合物を使用すると、成形品に著しいヘイズが生じたことが確認された。また、アンチモン触媒とリン酸安定剤により同様の様式で製造したバッチと比べて、全ての場合において、高いAA再生濃度が観察された。
【0050】
比較実験D〜H
25リットルの反応容器に、6756gのPTA、160gのIPA、3327gのEG、5.0gの三酢酸Sb(254ppmのSb)、0.33gのリン酸(13ppmのP)、および0.39gの酢酸Coと0.016gのEstofil Brueトナーを充填し、ペーストを製造した。このバッチにより7992gのPETが生成された。比較実験AおよびBと異なり、リン酸はスラリーに添加したことに留意されたい。エステル化は、窒素雰囲気下で255℃に加熱することによって行い、形成された水を収集した。形成された水の量が所望の程度のエステル化を示したときに、容器を275℃に加熱し、圧力を約100Paまで減少させた。重縮合は、機械式撹拌機のトルクが増加したのが観察されたときに、開始したと考え、そのトルクが19Nmの値(先の実験に基づいて約0.58dL/gのIVのPETに相当するであろう)に到達するまで続けられた。重縮合中に遊離したエチレングリコールを凝縮させ、収集した。次いで、ポリエステル溶融物を、ストランドとして吐出し(反応装置に窒素圧力を印加することにより)、これを水浴中で急冷し、透明なペレットに切り刻んだ。
【0051】
次いで、第2のPETバッチを同様に製造し、こここでは、400gのバージンEGを、最初のバッチから収集したEGと置き換えた、すなわち、再循環EGを使用した。ここで得られた非晶質PETチップを、1時間に亘り170℃で加熱することによって結晶化させ、次いで、6時間に亘り連続して窒素を流しながら、210℃で固相で重縮合させた。このようにして得られた白色ペレットを上述したように分析し、その結果が、表1に収集されている(比較実験D)。再循環グリコールにより製造したこの標準的なアンチモンPETの射出成形サンプルは透明であり、再循環グリコールの使用と、リン酸の添加時点は、アンチモン触媒による望ましくない影響は持たないようである。
【0052】
上述した手法にしたがって、触媒として三酢酸Sbおよび二酢酸Zn(酢酸Znとも呼ばれる)の組合せおよび様々な量のP−化合物を適用して、実験E〜Hを行った。全ての実験で、グリコール供給物の一部として再循環グリコールを使用し、ペーストを製造するための他の全ての化合物にZn−化合物を添加した。結果が表1に示されている。留意すべき重要な点としては、高いAA再生濃度および小板の射出成形後に透明でないことが挙げられる。それゆえ、アンチモン化合物と共に酢酸亜鉛を導入すると、溶融相重縮合時間が減少するが、SSP後に、亜鉛を含有するPETは、一般に、AA再生濃度の高い傾向があり、再循環グリコールが使用された場合、ヘイズを示す。
【0053】
実施例1〜2(Ex.1〜2)
比較実験FおよびHの上述した手法にしたがって、触媒として2.65gの三酢酸Sb(140ppmのSb)および3.44gの二酢酸Zn(128ppmのZn)の組合せを適用して、実施例1および2の実験を行ったが、亜鉛化合物は、EG中に溶解させ、エステル化の終わりのみに反応装置に添加した(工程b)、表1)。
【0054】
表1に収集された結果は、始めにSb−およびP−化合物を添加するが、特に増加した濃度のリン酸と組み合わせて、エステル化後にZn−化合物を添加するこの手法により、PETを比較的短い重縮合時間で生成でき、得られたPETは、再循環EGが使用された場合でさえ、良好な光学的性質(色と透明度の両方)を有する。その上、そのPETは、良好な熱安定性および少ないアセトアルデヒドの生成を示す。リン酸を増加させ、エステル化後に亜鉛を添加すると、再循環グリコールを使用した場合のSb−Zn触媒に生じるAA再生およびヘイズの両方の問題が解決されるのが分かる。
【0055】
比較実験Iおよび実施例3(Ex.3)
比較実験Dおよび実施例2を繰り返したが、ここでは、プリフォームとボトルの製造を可能にし、工業規模での適用性を確認するために異なる反応装置システムで50kg規模で行った。スラリー調製タンク、エステル化反応装置、および溶融相重縮合反応装置を有し、それに冷却浴およびストランド造粒機が続く、3容器システムを適用した。重合は、実験D〜Hおよび実施例2について示したのと同様の条件下で行った。バッチ1から収集したEGをバッチ2に使用し、バッチ2と3についても同様に、中断無く、3つの連続バッチを製造した。バッチ3をさらに試験した。最初に、ペレットを結晶化させ、固相にし(それぞれ、170/210℃で、真空機の回転式ドラム反応装置内で)、次いで、プリフォームを成形し、素晴らしく透明なボトルを形成した。
【0056】
表1に収集されたデータは先の実験の発見を支持している:実施例3のPETの光学的性質(ヘイズ)およびAA再生挙動は、比較実験A(標準的なアンチモン触媒により製造された市販のPETグレートを反映する)に関するよりもさらに良好である。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチモン−(Sb)、亜鉛−(Zn)およびリン−(P)化合物から実質的になる触媒系を使用して、エチレングリコール(EG)、精製テレフタル酸(PTA)および必要に応じて30モル%までのコモノマーから、ポリエチレンテレフタレート(PET)を製造するプロセスであって、
a) EGおよびPTAをエステル化して、ジエチレングリコールテレフタレートおよびオリゴマー(DGT)を形成する工程、および
b) DGTを溶融相重縮合して、ポリエステルおよびEGを形成する工程、
を有してなり、前記Sb−およびP−化合物が工程a)において添加され、前記Zn−化合物が工程a)後に添加されることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
イソフタル酸、ジエチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選択される少なくとも1種類のコモノマー0.5〜6モル%が適用されることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
c) 前記ポリエステルをペレットに形成する工程、
d) 前記ペレットを結晶化させる工程、および
e) 前記ポリエステルを固相重縮合させる工程、
をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載のプロセス。
【請求項4】
前記重縮合工程b)から除去されたEGが、前記エステル化工程a)に再循環されて戻されることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のプロセス。
【請求項5】
前記EGが、蒸留により除去され、工程a)の一部を形成するペースト製造工程に再循環されることを特徴とする請求項4記載のプロセス。
【請求項6】
前記Zn−化合物が、前記DGTを、重縮合工程b)を行うためのその後の反応容器に移相する直前または最中に添加されることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒系が、PETに基づく元素の含有量で、100〜160ppmのSb、100〜150ppmのZn、および30〜70ppmのPから実質的になることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒系が、三酢酸Sbとして125〜150ppmのSb、二酢酸Znとして120〜140ppmのZn、およびリン酸としての40〜70ppmのPから実質的になることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−520357(P2012−520357A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553348(P2011−553348)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001480
【国際公開番号】WO2010/102795
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】