説明

ポリエチレンテレフタレートコポリエステルを製造する方法、それによって得られたコポリエステルとその使用、および本発明の方法に適した触媒組成物

本発明は、テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールから、ポリエチレンテレフタレートコポリエステルを製造する方法であって、a)亜鉛元素の含有量が、コポリエステルに基づいて、約50から約500ppm、好ましくは約200から約500ppm、最も好ましくは約180から約260ppmの範囲にあるように存在する亜鉛化合物を含む触媒組成物を調製し、b)この触媒組成物、テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールを容器内に入れ、c)エステル化工程および重縮合工程においてテレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールを反応させて、ポリエチレンテレフタレートコポリエステルを得る、各工程を有してなる方法、それによって得られたコポリエステルとその使用、並びに本発明の方法に適した触媒組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレートコポリエステルを製造する方法、それによって得られたコポリエステルとその使用、および本発明の方法に適した触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
PETは、それぞれ、DMTプロセスおよびPTAプロセス、またはエステル交換経路および直接エステル化経路と呼ばれる2つの様式の内の1つによって、二段階で製造される。PETの用途としては、繊維とフィラメント、フイルム、およびボトルグレードのチップが挙げられる。最新のプラントは、PTAプロセスに基づいており、さらに、それらのプラントは、最後の重縮合反応器からの溶融物を押し出すことによって、直接、製品(繊維とフィラメント、フイルム)を形成する。
【0003】
最初に、DMTプロセスとPTAプロセスを対比する。主な差は出発材料である。古いプロセスでは、出発材料としてジメチルテレフタレート(DMT)およびエチレングリコール(EG)が使用された。これは、ポリエステル製造の初期の時代には、十分な純度のテレフタル酸が得られなかったためである。DMTプロセスにおいて、第1の段階で、DMTはエチレングリコール(EG)によりエステル交換されて、ジエチレングリコールテレフタレート(DGT)と呼ばれる中間体と少量の低分子量オリゴマーが生成される。反応副生成物はメタノールであり、これは蒸留により除去される。DGTは、他には、文献において、ビスヒドロキシエチルテレフタレートまたはBHETとも呼ばれる。一般に、酢酸マンガン(II)または酢酸亜鉛(II)がこのエステル交換工程に用いられる。これらはこの反応にとって最良の触媒である。第2の工程において、DGTは、溶融相重縮合を行うために、高真空下で約280℃に加熱される。除去される主要な揮発性物質はEGである。DMT経路の第2の工程について、第1の工程からの触媒(亜鉛またはマンガン)は、リン酸により封鎖または失活され(特許文献1参照)、重縮合のための別の触媒、最も一般的には、三酢酸アンチモンまたは三酸化二アンチモンが加えられる。これは、亜鉛とマンガンは、不十分な重縮合触媒と考えられるからである。文献には、重縮合反応(第2の工程)に関する金属の反応性は、以下の傾向Ti>Sn>Sb>Ge>Mn>Zn(非特許文献1参照)に従うと示されている。さらに、非特許文献1には、第1の工程、すなわち、DMTのEGとのエステル交換について、触媒活性の傾向が逆の順序に従い、中でも亜鉛が最も活性があることが示されている。重縮合反応について、Sb化合物は、得られるポリマーの性質が最も好ましいバランスにあるので、工業的に確立されている(SnおよびTiと比較して)。通常の操作において、DGTを単離せずに、工程1から工程2に進行できることに留意されたい。しかしながら、所望であれば、工程1で形成されたオリゴマーとDGTを単離し、後に、溶融重縮合(工程2)に使用しても差し支えない。
【0004】
新しい工業法では、DMTの代わりに、精製されたテレフタル酸(PTA)が用いられ、この方法はPTAプロセスと呼ばれる。工程1において、PTAは、EGによりエステル化されて、DGTとオリゴマーが形成される。蒸留により除去される主な副生成物は、メタノールの代わりに、水である。この工程は、自己触媒作用できる。すなわち、触媒は必要ない。しかしながら、重縮合触媒(工程2において後に役割を果たす)が、この段階で含まれていてもよい。第2の工程はDMTプロセスと同じである。重縮合触媒、再度、最も一般的な三酢酸アンチモンまたは三酸化二アンチモンは、200〜300ppm(PETに関する金属アンチモンの質量/質量)のレベルで加えられる。再度、溶融DGTは、重縮合を行うために真空下で約280℃で加熱される。溶融物が適切な固有粘度に到達した後、ポリマーは反応器から排出される。このポリマーは、繊維またはフイルムに直接延伸しても、チップを形成するのに用いてもよい。固有粘度は、分子量に関連する。PTAポリマーの金属含有量は、工程2のためにたった1つの触媒(重縮合のための)しか用いられていないので、DMTポリマーよりも少なく、したがって、ポリマーの熱安定性がより高い。
【0005】
上述したように、アンチモンは、PTAプロセスにおいても、確立された重縮合触媒となってきた。亜鉛がエステル交換工程に用いられ、次いで重縮合の前に封鎖されるDMTプロセスとは異なり、PTAプロセスでは亜鉛を使用することがない。亜鉛の重縮合活性は、単に、非特許文献1に開示されているほど十分に良好ではない。それゆえ、PTAプロセスにおいて確立された重縮合触媒はアンチモンである。アンチモン系の触媒は、現在の工業製造の90%超を占める。アンチモンは、重縮合速度、ポリマーの性質および劣化に対する熱安定性の中で良好なバランスを示す。しかしながら、アンチモン化合物により製造されたPETに関する1つの欠点は、金属アンチモンの析出により生じるグレーの色合いである。さらに、アンチモンは比較的高価であり、環境的に有害であるかもしれない懸念がある。
【0006】
主に日本において、環境に関する法律のために、ゲルマニウム触媒が、アンチモンの代替物として工業的に用いられている。これらの触媒により、グレーの傾向がなく、非常に鮮やかなポリマーが得られる。
【0007】
近年、非アンチモン触媒を見つけるために、多大な労力が払われてきた。チタン化合物に再び関心が向けられてきた。チタン触媒は、金属イオンのモル基準で、重縮合速度に関して最も活性があるが(非特許文献1参照)、その触媒により、後に色補正を行うのが難しい黄色の色合いがポリマーに与えられてしまう。さらに、PET触媒に用いられるチタン触媒は、その目的のために特別に合成しなければらなず、このために費用が増す。チタン触媒について、非常に速い重縮合速度は、強力な黄変度のために実際に十分に利用することができない。約200ppmのレベルでアンチモンを使用したときに得られた程度と同様の重縮合速度で甘んじるように、Ti触媒の濃度を減少させなければならず、またはその活性を様々な手段によって調節しなければならない。チタン触媒は、最近、ある程度工業化されている。しかし、それらの触媒は、現行のPETプロセスの生産性レベルを上昇させるために使用できず、せいぜい、約200ppmのアンチモンに相当する触媒活性を再現するための代替にすぎない。
【0008】
PTAプロセスを用いてPET製造の生産性を増大させることが望ましい。このことは、原理的には、単にアンチモンの濃度を増加させることによって可能である。アンチモンレベルが200ppmを超えて増加すると、約500ppmまで、重縮合時間が減少する。その後は、反応時間に減少は見られない。他の問題は、アンチモン濃度が増加するにつれ、ポリマーが累進的に暗くなることである。織物において、染色された布地の色は、ベースのポリマーが固有に明るく、光沢のないグレーの傾向を持たなければ、高輝度である。約300ppmのアンチモンは、色が許容される場合には、実際的な上限である。それゆえ、現行の工業的な実施において、200〜300ppmのアンチモンが用いられている。
【0009】
アンチモンベースのPETに見られるグレーの色の原因は、その触媒の金属形態への還元によるものである。エチレングリコール雰囲気において、エチレングリコールの熱分解のために、エステル化反応器内で少量のCOと他の気体が形成される(非特許文献2参照)。COは還元剤であり、それにより、アンチモン化合物が微粉金属アンチモンに還元される。非特許文献2には、アンチモン系触媒について、最初に加えられた触媒の10〜15%が、最後には微粉アンチモン金属になる。それゆえ、約200〜300ppmの標準を超えてアンチモンレベルを増加させると、ポリマー中に析出する金属アンチモンの量も自動的に増加し、これにより、ポリマーが暗くなる。金属アンチモンへの化学的還元のために、反応器内に黒色のスラッジが付着し、洗浄操作中に中断時間が生じる。EGの分解は停止できず、それゆえ、必然的にCOも存在するので、このことは避けられない。それゆえ、現行のポリエステルの生産性は、アンチモンだけでは増加させることができない。
【0010】
アンチモン化合物は、溶融重縮合中に、PET触媒の中でも最良の万能な性質を有し、高い生産性と良好な熱安定性のポリマーが得られる。産業上、PTAプロセスにおいて、アンチモン触媒は、3.19×10-4から4.73×10-4モルSb金属/モルPTA(PETに関して、200〜300ppmのアンチモン金属)の範囲で用いられる。溶融重縮合時間は、アンチモンを、4.73×10-4モルSb金属/モルPTA(300ppmのアンチモン金属)を超えて約7.89×10-4モルSb金属/モルPTA(500ppmのアンチモン金属)の濃度まで増加させることによって、減少させることができる。その後、濃度を増加させると、反応時間は限界値に到達する。しかしながら、4.73×10-4モルSb金属/モルPTA(PETに関して、200〜300ppmのアンチモン金属)を超えるアンチモンレベルを用いて重縮合速度を増加させることは、ポリマーが金属アンチモンの析出によって暗すぎるようになるために、実際的ではない。それゆえ、現行の技術では、暗い色が障害であるために、アンチモンを触媒として使用することによって、PETの重合生産性を増加させることができない。さらに、アンチモンは環境的に有害な材料であるという疑いがある。それゆえ、アンチモンを置き換えることが望ましい。
【0011】
生産性を増加させるために、いくつかの特許に、アンチモンと、亜鉛、コバルト、マンガンおよび他の元素との組合せが開示された(特許文献2から7参照)。これにより、ポリマーを暗くせずに、1/3まで重縮合時間が減少する。しかしながら、それでも、相当な量のアンチモンを含む組成物が生じる。
【0012】
PETは、主に、織物の繊維、フィラメント、フイルムおよびボトルグレードのチップに用いられる。ほとんどのPET(約80%)が、繊維とフィラメントの製造に用いられる。フィラメントは、連続した糸であり、3500〜4000m/分の速度で紡がれる。これは、ポリエステル半延伸糸(POY)と呼ばれる。ポリエステル繊維は、低速(約900m/分)で紡がれたフィラメントから製造される。次いで、フィラメントは、延伸され、切断されて、ステープルファイバ(38mmの平均切断繊維長)が製造される。PET繊維およびフィラメントの一般的な仕様は、約0.63dl/gの固有粘度を含む。PETステープルファイバについて、通常ホモポリエステルが用いられる。POYおよび連続フィラメントの高速紡糸について、結晶化阻害剤が含まれる。一般に、これは、ペンタエリトリトールなどのコモノマーである。イソフタル酸(IPA)が、結晶化を遅らせるためにボトルグレードのPETを製造するためにコモノマーとして用いられるが、繊維およびフィラメントグレードのPETには一般に用いられない。しかしながら、IPA改質PETは、繊維とフィラメントにうまく紡ぐことができる。これは、IPAと共重合した、リサイクルしたボトルグレードのPETを使用することによって、工業的に行われている。
【特許文献1】米国特許第5898059号明細書
【特許文献2】米国特許出願第07/355534号明細書
【特許文献3】米国特許第5008230号明細書
【特許文献4】米国特許第5166311号明細書
【特許文献5】米国特許第5153164号明細書
【特許文献6】米国特許第5162488号明細書
【特許文献7】欧州特許第399742号明細書
【非特許文献1】T.H.Shah, J.I.Bgatty, G.A.Gamlen and D.Dollimore, Polymer, 25, 1333(1984)
【非特許文献2】Aharoni, Journal of Polymers Sci. & Engineering, 38, 1039(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的の1つは、従来技術の欠点を克服することにあり、具体的には、重縮合の生産性を増加させると同時にそれぞれの費用を減少させながら、織物繊維、フィラメント、フイルムまたはボトルグレードのチップの製造に都合よく用いられるポリエチレンテレフタレートコポリエステルが得られる、環境に優しい触媒を使用したポリエチレンテレフタレートコポリエステルを製造する方法を提供することにある。
【0014】
さらに、本発明の目的は、従来技術に開示されたものと比較して、ポリエステルの生産性を著しく増加させ、本発明の方法に適した触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
最初の目的は、テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールからポリエチレンテレフタレートコポリエステルを製造する方法であって、a)亜鉛元素の含有量が、コポリエステルに基づいて、約50から約500ppm、好ましくは約200から約500ppm、最も好ましくは約180から約260ppmの範囲にあるように存在する亜鉛化合物を含む触媒組成物を調製し、b)この触媒組成物、テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールを容器内に入れ、c)エステル化工程および重縮合工程においてテレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールを反応させて、ポリエチレンテレフタレートコポリエステルを得る、各工程を有してなる方法により達成される。
【0016】
イソフタル酸は、コポリエステルの質量に基づいて、好ましくは約0.5から5質量%、より好ましくは0.1から2質量%、最も好ましくは0.1から0.8質量%の量で存在する。
【0017】
本発明の方法は、重縮合後、コポリエステルを容器から繊維、フィラメント、フイルムまたはチップのストランドに直接押し出す工程をさらに含んでもよい。
【0018】
ある実施の形態において、エステル化工程は、好ましくは窒素圧力下で、約230から約260℃の温度で行われ、このとき、重縮合工程は、約270から約290℃の温度で行われる。
【0019】
重縮合工程は、コポリエステルの固有粘度が、約0.55から約0.66dl/g、好ましくは0.60から0.65dl/gになるまで、高真空下で、溶融相におけるバッチプロセスで行ってもよい。
【0020】
さらなる最も好ましい実施の形態において、エステル化工程および重縮合工程は、一連の連続した反応器を用いて連続プロセスで行われる。
【0021】
繊維、フィラメントおよびフイルムに押し出す前に、重合の終わりに、溶融物の固有粘度安定剤、一般に、リン化合物を加えることが好ましい。
【0022】
溶融物の固有粘度安定剤は、一般に、リン酸、ポリリン酸;有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、および有機ホスホン酸塩などの有機リン化合物;および第4ホスホニウム化合物であることがより好ましい。
【0023】
ある実施の形態において、溶融物の固有粘度安定剤は、約15から約150ppmのリン含有量で重縮合の終わりに加えられる。
【0024】
重縮合工程は、最初に、高真空下での溶融相重縮合工程を、続いて、真空下または不活性ガス流下での固体状態重縮合工程を使用した分割操作で行ってもよい。
【0025】
固体状態重縮合工程は、バッチ操作または連続操作で行ってもよい。
【0026】
さらに、コポリエステルの質量に基づいて、約10から約30ppmの量でリン酸を容器に加えることが好ましい。
【0027】
酢酸コバルトおよび/または青色トナーなどの色補正剤を少なくとも一種類、容器に加えることがより好ましい。
【0028】
ある実施の形態において、触媒組成物は、エステル化工程の前、最終または後に容器に入れられる。
【0029】
本発明の方法において得られるコポリエステルは、織物繊維、フィラメント、フイルムおよびボトルグレードのチップの製造に用いられることが好ましい。
【0030】
前記コポリエステルを、織物繊維、フィラメントおよびフイルムの調製に使用することが最も好ましい。
【0031】
前記コポリエステルを、直接溶融紡糸プロセスに使用することがさらに好ましい。
【0032】
第2の目的は、テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールからポリエチレンテレフタレートコポリエステルを製造するための触媒組成物であって、亜鉛元素の含有量が、コポリエステルの質量に基づいて、約50から約500ppm、好ましくは約200から約500ppm、最も好ましくは約180から約250ppmの範囲にあるように存在する亜鉛化合物を含む触媒組成物により達成される。
【0033】
亜鉛化合物は、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、ハロゲン化亜鉛、亜鉛金属およびそれらの混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0034】
意外なことに、本発明の方法により、工業的に用いられているアンチモン触媒と比較して約半分、重縮合時間が減少すると同時に、アンチモン触媒により製造されたポリエチレンテレフタレートコポリエステルと比較して同等の明るいポリマーが得られることが分かった。さらに、得られるコポリエステルは、約0.63dl/gの固有粘度で、織物グレードの繊維およびフィラメントの直接紡糸の要件を満たす。
【0035】
本発明の方法に必須の特徴は、開示された特別な触媒の使用と、少量のイソフタル酸コモノマーの含有の組合せである。
【0036】
亜鉛化合物は、その価格がそれぞれのアンチモン化合物の価格の約1/3であるので、さらに都合よい。
【0037】
亜鉛が、DMTすなわちエステル交換経路により製造されるPETのエステル交換触媒として用いられるが、重縮合工程について、亜鉛は、リン化合物によって失活され、重縮合触媒としてのアンチモンと置き換えられることが述べられた。上述した従来技術によれば、亜鉛化合物は、その重縮合の効果がほとんどの他の触媒のものより低いと考えられていたので、直接エステル化プロセスにおいて単独で用いられていなかった。トミタによれば、触媒活性および達成された固有粘度は、解重合反応に対する生長反応の比により左右される。亜鉛は、アンチモン、スズおよびチタンと比較して、高い解重合活性を有する(K.Tomita(トミタ), Polymer, 17, 211 (1976)参照)。
【0038】
触媒として亜鉛のみを用いたホモポリエステルPETに関する我々の実験により、文献の予測が確認された。アンチモンに与えられた重縮合時間(2時間より長い)ほどの長さの重縮合時間では、要求される約0.63dl/gの固有粘度には到達できなかった。しかしながら、非常に意外なことに、コモノマーとして少量のイソフタル酸(PTAの異性体)を加えると、非常に特定の範囲で亜鉛触媒が効果的になり、200ppmのアンチモン触媒と比較して約半分の時間で、要求される0.63dl/gの固有粘度に到達できることが分かった。アンチモン触媒では、IPAの存在下で、触媒活性の同様の挙動は見られない。特定の範囲外の亜鉛では、目的の固有粘度は達成されなかった。同様に、IPAを含まないと、目的の固有粘度には到達しなかった。別のプラスの特徴は、アンチモンにより製造されたPETと比較して、亜鉛によるポリマーは、より明るい外観を有することである。
【0039】
本発明の方法において得られたコポリエステルは、直接紡糸プロセスに都合よく利用されるであろう。すなわち、最後の重縮合反応器からのポリマー溶融物が、それらを織物チップに転化させずに、直接、繊維に紡糸される。ほとんどの最新のプラントでは現在、直接紡糸が行われる。直接紡糸では、高カルボキシル基含有量の影響が最小になり、したがって、加水分解が減少する。溶融物の排出地点(最後の反応器からの)から押出/紡糸ヘッドまでの距離の減少などの連続プラント配置における設計特徴も、高カルボキシル基のために生じるかもしれない固有粘度低下を最小にするのに役立つであろう。さらに、溶融物の固有粘度安定性は、亜鉛の活性を、よく知られた容易に入手できる、リン酸またはポリリン酸などのリン化合物;有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、および有機ホスホン酸塩などの有機リン化合物;および第4ホスホニウム化合物により抑えることによって、増加させることができる。通常は、PTAプロセスによるアンチモン触媒作用PET製造において、少量のリン化合物(15〜25ppmのP)が最初に直ちに(エステル化前に)加えられる。また、前者のDMTプロセスにおいて、アンチモン触媒が加えられる重縮合の開始前に、亜鉛(エステル交換工程に用いられた)をリン化合物で封鎖するまたは失活させることが慣行であった(特許文献1参照)。リン化合物は、金属イオンと錯体を形成し、それらを失活させると考えられている。ここでのPTAプロセスにより製造される亜鉛触媒作用PETコポリエステルの場合には、それによって、リン化合物(約25から約150ppmのP)が溶融重合の終わりに導入され、次いで、安定化された溶融物が繊維、フィラメントおよびフイルムに押し出されるような適合を行うことが可能である。
【0040】
カルボキシル末端基の濃度は別にして、PET中のジエチレングリコール(DEG)含有量が別の重要な関心事である。DEGは、ほとんどはエステル化中に、エチレングリコールから派生する副生成物である。DEGは、ジオールであり、ポリマー鎖中に含められるコモノマーとして作用する。DEGは、融点を低下させるが、繊維の可染性を増加させる。過剰なDEGは避けるべきであるが、最も重要な要因は、生成されるDEGレベルが一定であることである。DEG含有量が変動すると、染色における色合いが変動することになる。本発明の方法に用いられる亜鉛触媒では、アンチモン触媒により見られるものよりも、ポリエチレンテレフタレート中のDEG含有量がわずかに高くなるが、そのレベルは、所定の触媒濃度で一定である。しかしながら、DEGおよびIPAの両方が、可染性のたやすさに役立つ。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明を説明することのみを目的としている。それらの実施例は、もちろん、本発明の範囲を制限するものとしていかようにも解釈されるものではない。本発明に関して、様々な変更および改変を行うことができる。
【0042】
PTAプロセスを用いて、ベンチスケールの反応器内で様々なPETを製造した。全ての結果が表1〜5に要約されている。最初に、ホモポリエステルに関するアンチモン触媒(200ppmのSb)の結果(表1)が示される。次に、ホモポリエステルに関する亜鉛触媒の効果(表1)が示される。これに続いて、触媒として、アンチモンのみと、次いで、亜鉛(表2)を用いたIPAを含むPETコポリエステルを調べた。また、亜鉛触媒と色補正成分により製造されたIPAを含むPETコポリマーも調べた(表3)。亜鉛により製造されたIPAコPET(IPAを含むPETコポリエステル)のSSP挙動が表4に示されている。表5は、色補正剤により製造されたIPAコPETのいくつかの追加のポリマー特性を示している。
【0043】
全てのポリマーは、10リットルの容量を持つ円錐形バッチ式反応器内で製造した。全ての成分(PTA、EG、IPA、三酢酸アンチモン、亜鉛化合物、酢酸コバルト、青色トナー、およびリン酸)を、始めに一緒に加えた。エステル化反応を、窒素圧下、253℃で行った。これにより、溶融DGTが形成された。予測した量の水を採取した後、反応器を278℃に加熱し、約1ミリバール(100Pa)の真空を施して、重縮合を開始した。溶融物を撹拌機で撹拌した。重縮合が開始したときに、分子量の増加により溶融物の粘度が増大するために、撹拌機のトルクが上昇する。固有粘度(I.V.)は、ポリマーの分子量の尺度であり、希釈溶液粘度計により測定される。事前の校正によって、実施例2(以下参照)の標準的なポリマー配合法について、13.5Nmの撹拌機のトルクが、約0.63〜0.66dl/gの固有粘度に相当することが判明した。撹拌機のトルクが13.5Nmに到達したときに、反応器から全てのポリマーを排出した。真空を絶ち、窒素圧を印加することによって、急冷水槽中に単独の溶融ストランドの形態で溶融物を排出した。このストランドをチップ・カッターに供給して、透明な非晶質チップを形成した。反応器の排出時間は約20分間であった。
【0044】
13.5Nmの撹拌機のトルクが、0.63〜0.66dl/gの固有粘度に相当すると確立されたが、これは、アンチモンベースのポリマーについて厳密である。このポリマーは、反応器からの20分間の排出時間中に固有粘度低下にそれほど敏感ではない。亜鉛ポリマーについて、高カルボキシル含有量のために、最終ペレットの固有粘度は、排出期間中の分解のために、0.63dl/gよりも実質的に低くなり得ると感じられた。いくつかの他の触媒について、反応が13.5Nmのトルクで停止されたにもかかわらず、ペレットにおいて測定された固有粘度は、0.55〜0.58dl/gほど低くなり得ることが分かった。それゆえ、各反応からのペレットの固有粘度を測定した。
【0045】
選択した試料に固体状態重合(SSP)を行った。これにおいて、溶融相重合により製造された、約0.64dl/gの固有粘度を有する非晶質チップを、210℃で(すなわち、固体状態において)、さらに重合させた。最初に、チップを結晶化させ、210℃でのSSP中の後に生じる粘着を防ぐために、透明な非晶質チップを1時間に亘り170℃で加熱した。次いで、結晶化チップを、210℃でベンチスケールのSSP反応器内に入れた。チップ床に乾燥窒素を通過させ、これにより、重縮合による揮発性物質(EGおよび水)を運び出させた。SSPを6時間に亘り210℃で行い、アンチモンのみと亜鉛触媒による標準IPAコPETの固有粘度を比較した。
【0046】
前述したように、固有粘度は、ポリマーの分子量の尺度であり、希釈溶液粘度計により測定される。固有粘度は、主に、ポリマーの分子量の影響を受けるが、溶媒のタイプおよび溶液温度もその数値に影響を与える。同じポリマーの固有粘度値は、異なる溶媒および温度を用いた場合には、異なるであろう。全ての固有粘度は、25℃で、フェノールと1,2ジクロロベンゼン溶液の3:2の混合物中で測定した。この方法は、単一濃度での単一測定値に基づく。一般に、約0.5%の濃度の溶液を調製するために、約8〜10個のチップを溶解させる。以下に示すビルメイヤー(Billmeyer)の式[F.W.Billmeyer, J.of Polymer Sci. IV, 83 (1949)参照]を使用することによって、単一のポリマー濃度(0.5%)について、相対粘度ηrの測定値から固有粘度を得た:
固有粘度=[η]=0.25(ηr-1+3lnηr)/c
(c=0.5〜0.65g/dlの範囲について有効)
色パラメータは、HunterLab ColorFlexモデル番号45/0、シリアル番号CX0969により測定した。非晶質チップは、研削も結晶化もせずに、透明な状態で用いた。一般に、測定された変化は、目にも見えた。SSP後のL*値は、ポリマーの球状結晶化により生じた白化のために高い。
【0047】
最初に、アンチモンを用いて「標準ホモポリマー」を製造した。このポリマーには、3.19×10-4モルSb/モルPTA(200ppmのSb)の標準アンチモン濃度を用いた。200ppmのSbは、工業生産に用いられる範囲にある。配合は、2287gのPTA(PTAのモル)、1100gのEG、1.3gの三酢酸アンチモン触媒(ポリマーに関して200ppmのアンチモン金属)、および0.195gのリン酸(19.8ppmのP)からなった。この配合により、2645.4gのPETが理論的に生成される。全ての材料を、バッチ式反応器中に始めに直ちに加えた。さらに、溶融物の熱分解に対する安定性を増加させるために、リン酸を溶融物安定剤として加えた。撹拌機のトルクが13.5Nmに到達したときに、全ての重合を停止させた。校正によって、13.5Nmのトルクが、約0.63〜0.66dl/gの固有粘度に相当することが確立されている(表1、比較例1参照)。主要なパラメータは重縮合時間、総反応時間および固有粘度である(表1)。重縮合時間は、表1の比較例1について114分であり、総時間は293分であった。固有粘度は0.648dl/gであった。
【0048】
表1の比較例2〜6は、PETホモポリエステルを製造するための、アンチモンの代わりの亜鉛触媒を使用する効果を示している。亜鉛の最低値(表1の比較例2における217ppm)でさえ、200ppmのアンチモンのモル濃度の2倍より多くに相当する。けれども、表1の比較例2〜6から、13.5Nmの所望のトルク(すなわち、約0.63〜0.64dl/gの固有粘度)は、どの濃度の亜鉛化合物によっても達成されなかったことが分かる。
【0049】
文献により、亜鉛は、アンチモンと比較して、不十分な重縮合触媒であると見なされたのが示されている。トミタにより、亜鉛は、アンチモンと比較して、進行する生長反応に関して定数が低く、鎖分解反応に関して定数が高いことが示されている[K.Tomita(トミタ), Polymer, 17, 221 (1976)参照]。トミタにより、固有粘度を、多数の触媒活性金属について時間に対してプロットした場合(同じモル濃度で)、全ての曲線は、特徴的な時間後に最大固有粘度に到達し、その後、固有粘度は低下し始めることが示されている。Tiに関する曲線が最高の上昇と最大ピーク固有粘度を示し、それに、スズとアンチモンが続いた。Tiについて、約1.5時間後、約1.2dl/gのピーク固有粘度に到達した。アンチモンについて、ピーク固有粘度は約1.0dl/gであり、それには約4時間後に到達した。亜鉛は中でも最低の曲線である。ピーク固有粘度は約0.8dl/gであり、それには5時間後に到達した(トミタ参照)。同様に、Shahにより、一定のモル濃度で金属を調べる同様の実験が行われ、固有粘度は1時間の決められた重縮合時間で到達した。Tiについては、0.662dl/gの固有粘度に1時間で到達し;スズについて、0.567dl/gの固有粘度に1時間で到達し;Sbについて、0.522dl/gの固有粘度に1時間で到達し;亜鉛について、たった0.440dl/gの固有粘度に1時間で到達した[非特許文献2参照]。それゆえ、Shahによれば、重縮合活性は、Ti>Sn>Sb>Mn>Zn>Pbの傾向に従う。Ti、SnおよびSbは最高の固有粘度を与え、亜鉛は中でも最低であった。それゆえ、アンチモンを置換する触媒を見つける全ての労力は、ほとんどTiに焦点を当てている(例えば、米国特許第6255441号明細書参照)。
【0050】
表1の比較例2〜6は、PETホモポリエステルについてのものであったトミタ並びにShah等の文献の報告を支持している。どの濃度の亜鉛を用いても、どのような有用な重縮合時間内にも13.5Nmのトルクには到達できなかった(200ppmのアンチモンに相当する、約130分未満)。トルク対時間は、重縮合が進行するにつれて、実時間でプロットした。トルク対時間の曲線において早く水平域に到達し、したがって、溶融物を高温に維持するのが効果がないことが分かったときに、表1における亜鉛触媒重縮合を停止した。376ppmのZnに関する比較例4などのいくつかの場合において、固有粘度水平域は、70分の重縮合後に到達し、それゆえ、反応を停止した。これは、比較例1と比較して比較例4において(1.0ミリバールに対して1.52ミリバール)、真空がそれほど良好ではなかったからであろうと考えられた。したがって、比較例5は、真空が高く、時間が長いが、376ppmのZnに関する繰り返しであった。0.98ミリバールの真空が達成され、重縮合は135分に亘り続けられ、それでも、たった7.2Nmのトルクしか達成できなかった。水平域で12.1および12.0Nmのトルクに到達した2つの場合でさえも、13.5Nmのトルクに到達するのに、アンチモンの例と比較して、酷く長い時間がかかる(130分よりずっと長い)であろうということが分かる。130分より長い重縮合時間を使用することは、ポリマーがはっきりと黄変し、分解してしまうために、亜鉛触媒については、価値があると考えられなかった。
【0051】
しかしながら、文献および比較例2から6とは対照的に、意外なことに、低レベルのコモノマーIPAの存在下で亜鉛触媒を使用したときに、200ppmの標準アンチモンレベルと比較して、速い時間で、要求される0.63〜0.64dl/gの固有粘度に到達することが分かった。これらの結果が表2に示されている。比較例7(表2)から、1.55%のIPAおよび200ppmのアンチモンにより、0.666dl/gの固有粘度に133分の重縮合時間で到達するのが分かる。表2の実施例8から13および比較例14から16では、64ppmから782ppmの範囲のZnおよび1.55%のIPAを使用している。実施例8(表2)から、64ppmの亜鉛でさえ、10.0Nmのトルクに到達することが分かる。実施例9(表2)から、128ppmの亜鉛により、11.0Nmのトルクに95分で到達したのが分かる。実施例10(表2)から、189ppmのZnにより、1.55%IPAコPETについて、93分で13.0Nmのトルクに到達し、固有粘度は0.636dl/gであり、したがって、これは、目的が達成されたと考えられる。
【0052】
実施例11から13(表2)は、それぞれ、241、376および439ppmの亜鉛により製造された1.55%IPAコPETである。13.5Nmのトルクが、それぞれ、0.619、0.629および0.634dl/gの固有粘度によりうまく達成されたのが分かる。重縮合時間は、200ppmのアンチモン(133分)と比較して、大幅に減少した(72、67および75分)。総反応時間も、200ppmのアンチモンと比較して、短かった。
【0053】
表2の比較例14から16は、亜鉛の濃度が500ppmを超えて増加すると、13.5Nmのトルクが達成されないことを示している。それゆえ、Zn濃度をより高くすることには利益がない。亜鉛濃度対重縮合時間は、最小を経由することが明らかである。最も活性の高い濃度は、1.55%IPAコPETについて、180および260ppmの亜鉛の間にある。
【0054】
表2の実施例17は、IPAを0.775%に半分にした後、亜鉛触媒まだ活性であることを示している。376ppmのZnおよび0.775%のIPAについて、13.5Nmのトルクが54分の重縮合時間で達成される。実際に、376ppmのZnおよび1.55%IPAである表2の実施例12を、376ppmのZnおよび0.775%のIPAである実施例17と比較すると、後者の組合せが、実際に、短い重縮合時間と反応時間となるのが分かる。
【0055】
表3は、亜鉛触媒および色補正剤により製造された1.55%IPAコPETの結果を示している。黄変度を補正するために、青色トナーおよび酢酸コバルト(II)がしばしば用いられる。表3の比較例18は、200ppmのSbにより、13.5Nmのトルクが、128分の重縮合時間および306分の総反応時間で達成されることを示している。固有粘度は0.644dl/gであった。L*=57.2、a*=−3.5、b*=−5.1。色補正されたアンチモンポリマーは、青の色合い(負のb*値)を有するが、わずかに暗い(低いL*)。実施例19および20は、それぞれ、酸化亜鉛および酢酸亜鉛により製造された1.55%IPAコPETを示しており、ここで、各重合における亜鉛濃度は同じ(171ppm)であった。13.5Nmのトルクに到達するまでの重縮合時間は、200ppmのアンチモンの場合よりずっと短く(128分に対して、85および82分)、同様に、総反応時間は、200ppmのアンチモンの306分に対して、それぞれ、235および237分である。達成された固有粘度は、それぞれ、0.636および0.637dl/gであり、アンチモンポリマーと同様である(表3の実施例19および20)。表3の実施例19および20の明度は、表3のアンチモンポリマーに関する57.2に対して、高いL*値(63.6および63.2)を示す。すなわち、亜鉛ポリマーのほうが明白に明るい。b*値は、亜鉛ポリマーとアンチモンポリマーは匹敵する。色補正された亜鉛ポリマーのa*値は、所望なよりもわずに負が強く、緑の色合いになる。しかしながら、これは微調整できる。2つの他のポリマー特性、すなわち、カルボキシル含有量およびジエチレングリコール(DEG)含有量が、表5に示されている。表5の実施例19および20から、カルボキシル含有量(71ミリバル(mVal)/kg)はアンチモンから得られるもののほぼ2倍(表5の比較例18の38.8ミリバル/kg)であるのが分かる。これは、亜鉛触媒から製造されたPETが、再溶融されたときに、加水分解と固有粘度の低下をより受け易く、それゆえ、溶融物における滞留時間を短くして、反応器から直接、フイルムや繊維に押し出すべきであることを意味している。表5の実施例19および20における亜鉛ポリマーのDEG含有量は、表5の比較例18のアンチモンポリマーのものよりも多い。このために、繊維とフィラメントの染色が容易になる。表3および5の実施例19と20も、亜鉛の供給源は関係ない(酸化物または酢酸塩)ことを示している。酸化物と酢酸塩の両方について、同じppmのZn(またはZn++イオンのモル濃度)に関して実質的に等しい結果が得られる。
【0056】
表3の実施例21および22は、色補正剤および205ppmの亜鉛(それぞれ、酸化亜鉛および酢酸亜鉛)による1.55%IPAコPETを示している。両方の場合、重縮合時間(66分)および総反応時間(216分)は等しく減少した。これらは、重縮合時間が128分で総反応時間が306分の200ppmのアンチモン(表3の比較例18)と比較されるべきである。亜鉛を所定のレベルで使用することによって、劇的な減少が見られる。実施例21および22(表5)で得られた固有粘度は、織物に許容される0.630dl/gであった。表3の実施例21および22の明度は、表3のアンチモンポリマーに関する57.2に対して高いL*値(62.6および63.4)を示す。ここでも、亜鉛ポリマーは明白に明るい。実施例21および22のb*値は、亜鉛およびアンチモンポリマーについて類似である。表3の実施例21および22における色補正された亜鉛ポリマーのa*値は、所望なよりも負が強く、緑の色合いとなる。しかしながら、これは微調整できる。表5の実施例21および22から、カルボキシル含有量(約66ミリバル/kg)が、アンチモンにより得られたもの(38.8ミリバル/kg)よりもずっと多いのが分かる。再度、これは、亜鉛触媒から製造されたPETが、再溶融されたときに、加水分解と固有粘度の低下をより受け易く、それゆえ、溶融物における滞留時間を短くして、反応器から直接、フイルムや繊維に押し出すべきであることを意味している。表5の実施例21および22における亜鉛ポリマーのDEG含有量は、表5の比較例18のアンチモンポリマーのものよりも多い。このために、繊維とフィラメントの染色が容易になる。実施例21および22も、亜鉛の供給源は関係なく、時間がZn++のppmまたはモルのみに依存することを実証している。
【0057】
表3の実施例23および24は、色補正剤(酢酸コバルトおよび青色トナー)により1.55%IPAコPETを製造するための256ppmの亜鉛(それぞれ、酸化物および酢酸塩から)の使用を示している。13.5Nmのトルクに到達するまでの重縮合時間は、200ppmのアンチモン触媒に関する128分と比較して、さらに57分まで減少する。達成された固有粘度は、それぞれ、0.621および0.613dl/gである。反応を停止させたときに、トルクは13.5Nmの到達していたが、これらの値はわずかに低い。反応器からの排出時間中に固有粘度の低下があった。亜鉛ポリマー中の高カルボキシル含有量のために、ポリマーの固有粘度保持は低いであろうことを言及しておく。このことが、最高の亜鉛濃度(表3の実施例23および24における256ppm)について、それ以上に観察される。それゆえ、固有粘度保持に関して、固有粘度を十分に保持しながら重縮合時間が減少される適切な組合せが得られる、より低レベルのZn(表3の実施例19〜22における170〜205ppm)を研究することがより好ましい。表3の実施例23および24に関する明度は、表3のアンチモンポリマーに関する57.2に対して、より高いL*値(63.7および62.9)を示している。ここでも、亜鉛ポリマーは明白に明るい。b*値は、亜鉛およびアンチモンポリマーは匹敵する。色補正亜鉛ポリマーのa*値は、所望なよりも負が強く、緑の色合いを与える。しかしながら、これは微調整できる。表5の実施例23および24から、カルボキシル含有量(69および66ミリバル/kg)が、アンチモンから得られたもの(38.8ミリバル/kg)よりもずっと多いことが分かる。このことは、亜鉛触媒から製造されたPETが、再溶融されたときに、加水分解と固有粘度の低下をより受け易く、それゆえ、溶融物における滞留時間を短くして、反応器から直接、フイルムや繊維に押し出すべきであることを意味している。再度、表5の実施例23および24における亜鉛ポリマーのDEG含有量は、表5の比較例18のアンチモンポリマーのものよりも多い。このために、繊維とフィラメントの染色が容易になる。表3および5の比較例23および実施例24も、亜鉛の供給源は関係なく、時間はZn++イオンのppmまたはモルのみに依存することを実証している。
【0058】
表3の実施例19から24は、触媒としての亜鉛が、織物用途に一般に必要とされる0.63〜0.64dl/gの固有粘度を達成するのにIPA改質PETに効果的であることを示す表2の結果を支持している。このことは、従来技術により確立され、表1の比較例2〜6によっても示されたような、亜鉛が重縮合触媒として低い活性を示しているホモポリエステルPET合成と対照的である。
【0059】
ボトルグレードのPETは、それによって、約0.63dl/gの固有粘度を持つ中間体ポリマーが溶融重合により製造され、次いで、固有粘度を約0.70〜0.85dl/gまで上昇させるために固体状態重合に施される分割プロセスにより製造される。この範囲の高い固有粘度限度は、ボトルが加圧される炭酸飲料に用いられ、一方で、低い固有粘度限度は、非炭酸飲料に適している。SSP後の固有粘度上昇は、SSP温度、SSP時間、触媒の性質およびその濃度に依存する。
【0060】
しばしば、ボトルグレードのPETは、IPAコPETである。それゆえ、亜鉛触媒による溶融重縮合により製造された1.55%IPAポリマー(色補正有り)は、SSP(6時間に亘り210℃)に施され、200ppmのアンチモンによる分割プロセスにより製造された同等物に匹敵した。これらの結果が表4に示されている。亜鉛ポリマーは一般に、それらは約0.72dl/g(表4の実施例19〜24)に到達し、一方でアンチモンポリマーは約0.77dl/g(表4の比較例18)に到達するので、200ppmのアンチモンポリマーよりも遅いSSP速度を示すことが分かる。171〜256ppmの亜鉛濃度(表4)は、達成される最終固有粘度(約0.72dl/g)に対する差はそれほどないように思えた。それゆえ、亜鉛触媒は、分割プロセス(すなわち、溶融重縮合と、それに続くSSP)に用いることができるが、固有粘度の要求が比較的低い(約0.70〜0.75dl/g)ボトルグレードのポリマーを製造するのにより適している。亜鉛触媒は、織物繊維、フィラメントおよびフイルムに必要とされる固有粘度(約0.55〜0.63dl/g)に到達するために、コモノマーとしてのIPAと共に、溶融重合に用いられたときに最も効果的である。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0061】
先の説明または特許請求の範囲に開示された特徴は、別々とその任意の組合せの両方で、本発明を様々な形態で実現するための素材である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールからポリエチレンテレフタレートコポリエステルを製造する方法であって、
a)亜鉛元素の含有量が、前記コポリエステルに基づいて、約50から約500ppmの範囲にあるように存在する亜鉛化合物を含む触媒組成物を調製し、
b)前記触媒組成物、前記テレフタル酸、前記イソフタル酸および前記エチレングリコールを容器内に入れ、
c)エステル化工程および重縮合工程において前記テレフタル酸、前記イソフタル酸および前記エチレングリコールを反応させて、ポリエチレンテレフタレートコポリエステルを得る、
各工程を有してなる方法。
【請求項2】
前記イソフタル酸が、前記コポリエステルの質量に基づいて、約0.5から5質量パーセントの量で存在することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記重縮合工程後に、前記容器から前記コポリエステルを、繊維、フィラメント、フイルムまたはチップのためのストランドに直接押し出す工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記エステル化工程を約230から約260℃の温度で行い、前記重縮合工程を約270から約290℃の温度で行うことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記コポリエステルの固有粘度が約0.55から約0.66dl/gに到達するまで、前記重縮合工程を、高真空下において溶融相中のバッチプロセスで行うことを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記エステル化工程および前記重縮合工程を、連続した一連の反応器を用いて連続プロセスで行うことを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
重合の終わりであって、繊維、フィラメントおよびフイルムへの押出しの前に、溶融物の固有粘度安定剤を加えることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記溶融物の固有粘度安定剤が、リン酸、ポリリン酸、有機リン化合物、または第4ホスホニウム化合物、もしくはそれらの混合物であることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記溶融物の固有粘度安定剤を、約15から約150ppmのリン含有量で、前記重縮合工程の終わりに加えることを特徴とする請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記重縮合工程を、高真空下での溶融相重縮合工程を用い、続いて、真空下または不活性ガス流下での固体状態重縮合工程を用いて、分割操作で行うことを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記固体状態重縮合工程をバッチ操作または連続操作で行うことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一種類の色補正剤を前記容器に加えることを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記触媒組成物を、前記エステル化工程の前、最終または後に前記容器に入れることを特徴とする請求項1から12いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13いずれか1項記載の方法により製造されたコポリエステル。
【請求項15】
織物繊維、フィラメント、フイルムおよびボトルグレードのチップを製造するために請求項14記載のコポリエステルを使用する方法。
【請求項16】
織物繊維およびフィラメントのための請求項15記載の方法。
【請求項17】
直接溶融紡糸プロセスに請求項14記載のコポリエステルを使用する方法。
【請求項18】
テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールからポリエチレンテレフタレートコポリエステルを製造するための触媒組成物であって、亜鉛元素の含有量が、前記コポリエステルに基づいて、約50から約500ppmの範囲にあるように存在する亜鉛化合物を含む触媒組成物。
【請求項19】
前記亜鉛化合物が、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、ハロゲン化亜鉛、亜鉛金属およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項18記載の触媒組成物。

【公表番号】特表2008−507593(P2008−507593A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512591(P2007−512591)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001577
【国際公開番号】WO2005/105888
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】