説明

ポリエチレン多層フィルム

【課題】コシが強く、耐ブロッキング性に優れ、カールが小さく、低臭性、低味性、低粉性、低アウトガス性、良好な防汚性といったクリーン性を併せ持つ、食品・飲料、医療品・医薬品、光学フィルム、液晶部材、電子・電気部品、精密部品等の包装材料に適したポリエチレン多層フィルムの提供。
【解決手段】表面層、裏面層の線状ポリエチレンが、密度、メルトマスフローレイト、溶融張力、数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が特定の範囲にあり、該線状ポリエチレン中の重量平均分子量が10以上10以下の成分に含まれるメチル基量に対する重量平均分子量が10以上10以下の成分に含まれるメチル基量の比が1.0未満、充填剤、スリップ剤および酸化防止剤のいずれの添加剤も含有しないポリエチレン多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン多層フィルムに関するものである。さらに詳しくは、コシが強く、耐ブロッキング性に優れ、カールが小さく、低臭性、低味性、低粉性、低アウトガス性、良好な防汚性といったクリーン性を持ち、食品・飲料、医療品・医薬品、光学フィルム、液晶部材、電子・電気部品、精密部品などの包装材料に好適に用いられるポリエチレン多層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンフィルムは適度なコシをもち、強度、透明性、ヒートシール性、防湿性、耐薬品性、低温衝撃強度等に優れているため食品・飲料、医療品・医薬品、産業資材、生活資材等の各種包装材料として広く使用されている。近年、市場において食品・飲料、医療・医薬、光学フィルム、液晶部材、電子・電気部品、精密部品等を保管、輸送するために使用されるポリエチレンフィルムには上述のような物性以外にクリーン度も要求され、低臭性、低味性、低粉性、低アウトガス性、防汚性といったクリーン性を併せて発現することが求められるようになってきている。
【0003】
ポリエチレンフィルムのフィルム物性を維持しながらクリーン度を高める方法として、たとえば特許文献1に引裂強度、耐衝撃性、低温ヒートシール性、透明性等を損なうことなく乳等省令への適合を可能とする方法が、また、特許文献2に低温シール性や耐衝撃性の特性を有したまま被包装物への汚染性を抑制する方法が提案されている。特許文献3にはアウトガスを少なくする方法が開示されている。しかしながら、これらの方法では包装材料として必要なコシや耐ブロッキング性を有したまま、各種のクリーン性を併せて発現しているとは言えず、市場の要求レベルを満足するには至っていないというのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開2001−342306号公報
【特許文献2】特開2005−126682号公報
【特許文献3】特開2006−96851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような状況を鑑みてなされたものであって、コシが強く、耐ブロッキング性に優れ、カールが小さく、低臭性、低味性、低粉性、低アウトガス性、良好な防汚性といったクリーン性を持ち、食品・飲料、医療品・医薬品、光学フィルム、液晶部材、電子・電気部品、精密部品などの包装材料に好適に用いられるポリエチレン多層フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリエチレン多層フィルムにおいて、少なくともその表面層および裏面層に特定の線状ポリエチレンを用いることで、上記の目的に適合することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1] 少なくともその表面層および裏面層が線状ポリエチレンからなる3層以上のポリエチレンフィルムであって、該線状ポリエチレンが、密度が930kg/m以上、メルトマスフローレイトが0.1g/10min以上20g/10min以下、溶融張力が0.5g以上、数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が3以上10以下であり、該線状ポリエチレン中の重量平均分子量が10以上10以下の成分に含まれるメチル基量に対する重量平均分子量が10以上10以下の成分に含まれるメチル基量の比が1.0未満であって、充填剤、スリップ剤および酸化防止剤のいずれの添加剤も含有しない線状ポリエチレンであることを特徴とするポリエチレン多層フィルム、
【0008】
[2] 裏面層に対する表面層の厚さ比が0.20以上3.60以下であることを特徴とする上記[1]記載のポリエチレン多層フィルム、
[3] ブロッキングフォースが4g/cm以下であることを特徴とする上記[1]または[2]記載のポリエチレン多層フィルム、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コシが強く、耐ブロッキング性に優れ、カールが小さく、低臭性、低味性、低粉性、低アウトガス性、良好な防汚性といったクリーン性を持ち、食品・飲料、医療品・医薬品、光学フィルム、液晶部材、電子・電気部品、精密部品などの包装材料に好適に用いられるポリエチレン多層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエチレン多層フィルムは、少なくともその表面層および裏面層が線状ポリエチレンからなる3層以上のポリエチレンフィルムであって、該線状ポリエチレンが、密度が930kg/m以上、好ましくは932kg/m以上、メルトマスフローレイト(以下、MFRとも記す)が0.1g/10min以上20g/10min以下、好ましくは0.3g/10min以上15g/10min以下、溶融張力が0.5g以上、好ましくは0.7g以上、数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が3以上10以下、好ましくは3以上7以下であり、該線状ポリエチレン中の重量平均分子量が10以上10以下の成分に含まれるメチル基量に対する重量平均分子量が10以上10以下の成分に含まれるメチル基量の比が1.0未満、好ましくは0.9未満であって、充填剤、スリップ剤および酸化防止剤のいずれの添加剤も含有しない線状ポリエチレンである。本発明のポリエチレン多層フィルムにおける、表面層および裏面層の線状ポリエチレンの密度、MFR、溶融張力、分子量分布、メチル基量比が上記の範囲内で、充填剤、スリップ剤および酸化防止剤のいずれの添加剤も含有しないときには、コシが強く、耐ブロッキング性に優れ、カールが小さく、低臭性、低味性、低粉性、低アウトガス性、良好な防汚性といったクリーン性を持ち、食品・飲料、医療品・医薬品、光学フィルム、液晶部材、電子・電気部品、精密部品などの包装材料に好適に用いられるポリエチレン多層フィルムを提供するという目的を達成できる。なお、低臭性、低味性は食品、飲料などの香気性・風味、味の維持、低粉性はクリーンルーム内のクリーン度低下防止、包装工程でのロール等への粉の集積、製品への落下混入の防止、低アウトガス性はアウトガスによる被包装物の汚染防止等のために必要とされているクリーン特性である。
【0011】
本発明のポリエチレン多層フィルムにおける、表面層および裏面層の線状ポリエチレンの密度、MFR、溶融張力、分子量分布、メチル基濃度比が上記範囲外であるときの問題点について以下に述べる。密度が930kg/m未満であるとフィルムのコシが不足する、耐ブロッキング性が低下するという問題が発生して包装材料としての適性が損なわれ、また、フィルムにシワができ易くなるという不具合を発生する。MFRが0.1g/10min未満であると高速製膜性の低下や共押出性の低下をもたらす。MFRが20g/10minを超えるとインフレーション製膜時のバブルの不安定化、Tダイ製膜時のネックイン増大、という成形加工上の問題を起こす。また、低臭性、低味性、低粉性、低アウトガス性も損なわれる。溶融張力が0.5g未満だとインフレーション製膜時のバブルの不安定化、Tダイ製膜時のネックイン増大、という成形加工上の問題を起こす。分子量分布が3未満だと成形時の押出負荷が大きくなり、10を超えると成形加工時の発煙量の増加や低臭性、低味性、低粉性、低アウトガス性の悪化という問題を招来する。さらに、メチル基量比が1.0以上だと低臭性、低味性、低粉性、低アウトガス性が悪化するということになる。なお、線状ポリエチレンのメチル基量比は、後述するGPCによる分子量分布測定において、試料濃度を変更した以外は同様の方法で分子量分布の測定を行い、同時に溶出成分の赤外分光分析をパーキンエルマー社製FT−IRスペクトラム2000で行ってメチレン基に帰属される吸光度I(メチレン)(吸収波数:2925cm−1)とメチル基に帰属される吸光度I(メチル)(吸収波数:2960cm−1)から両者の比、I(メチル)/I(メチレン)からメチル基濃度を求め、その溶出成分の重量%を乗じることで得ることができるが、詳細は後述する。
【0012】
本発明のポリエチレン多層フィルムにおける、表面層および裏面層の線状ポリエチレンは、充填剤、スリップ剤、酸化防止剤のいずれの添加剤も含有しない。充填剤としては、アルミノケイ酸塩、タルク、珪藻土、カオリン、クレー等が挙げられ、スリップ剤としては、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、アルコールの脂肪酸エステル、ワックス、高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン等が挙げられる。酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤があるが、フェノール酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ジブチルヒドロキシトルエン)、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート))メタン等、リン系酸化防止剤としてはテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスフォナイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−t−ブチルフェニルフォスファイト)等が挙げられる。ここでいう含有とは該線状ポリエチレンを改質あるいは改良することを目的として上記の充填剤、スリップ剤、酸化防止剤を該線状ポリエチレンに配合することであって、該線状ポリエチレンの製造中に不可避的に添加剤が微量混入するような場合、あるいは触媒や反応開始剤などが微量残存するような場合には含有しているとはいわない。充填剤、スリップ剤、酸化防止剤の添加剤を含有していると、被包装物への防汚性を損なう、被包装物表面を傷つけるという問題を招来するので好ましくない。なお、帯電防止剤、中和剤、顔料、着色剤等の上記以外の添加剤はフィルム表面に実質的にブリードアウトしない場合は含有していてもよい。帯電防止剤としては高分子型の帯電防止剤が好ましく、非イオン性やイオン性または両性の活性剤やその混合物が挙げられ、それぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても構わない。中和剤としては各種のステアリン酸金属塩、ハイドロタルサイト等が挙げられ、それぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても構わない。
【0013】
本発明のポリエチレン多層フィルムにおける、表面層および裏面層の線状ポリエチレンは、メタロセン触媒を用いるポリエチレンの重合法で得ることができる。重合法は公知の各種方法を使用でき、例えば、不活性ガス中での流動床式気相重合或いは攪拌式気相重合、不活性溶媒中でのスラリー重合、モノマーを溶媒とするバルク重合などがあげられるが、不活性溶媒中でのスラリー重合が好ましく、メタロセン触媒を水素と接触させて重合反応器に導入して重合するのが好ましい。
【0014】
本発明のポリエチレン多層フィルムにおける、表面層および裏面層の線状ポリエチレンはエチレン単独からなるホモポリマーであってもエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなる共重合ポリマーであってもよく、エチレンと共重合させる炭素数3〜20のα−オレフィンとしてはプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、6−メチル−ヘプテン−1などが挙げられる。また、これらを2種類以上、任意の比率でドライブレンド、あるいはメルトブレンドしたものであってもよい。
【0015】
上記の重合法において用いられるメタロセン触媒とは、(ア)担体物質、(イ)有機アルミニウム、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物、及び(エ)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤から調製することができる。(ウ)の環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物中の遷移金属原子としてチタニウムを用いることが特開平11−166009号公報に記載されている。
【0016】
担体物質(ア)としては、有機担体、無機担体のいずれでもよい。有機担体としては、好ましくは(1)炭素数2〜20のα−オレフィンの重合体、例えばポリエチレンや、ポリプロピレン、ポリブテン−1、エチレン・プロピレン共重合ポリマー、エチレン・ヘキセン−1共重合ポリマー、プロピレン・ブテン−1共重合ポリマー、エチレン・ヘキセン−1共重合ポリマー等、(2)芳香族不飽和炭化水素共重合ポリマー、例えばポリスチレン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合ポリマー等、および(3)極性基含有重合体ポリマー、例えばポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート等である。無機担体としては(4)無機酸化物、例えば、SiO2、Al、MgO,TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO,SiO−MgO、SiO−Al、SiO−MgO、SiO−Vなど、(5)無機ハロゲン化合物、例えばMgCl、AlCl,MnCl等、(6)無機の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、例えば、NaCO,KCO、CaCO、MgCO、Al(SO、BaSO、KNO、Mg(NO等、(7)水酸化物、例えばMg(OH)、Al(OH)、Ca(OH)等が例示される。最も好ましい担体はSiO2である。
【0017】
担体の粒子径は任意であるが、一般的には1μm〜3000μm、粒子の分散性の見地から、粒子形分布は好ましくは10〜1000μmの範囲内である。
上記担体物質は必要に応じて(イ)有機アルミニウム化合物で処理される。好ましい有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(1)で示される直鎖状、あるいは環状重合体(式(1)中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/またはRO基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である。)等が挙げられ、具体例としてRがメチル基、エチル基、イソブチルエチル基である、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、イソブチルエチルアルモキサン等があげられる。
【0018】
【化1】

【0019】
更にその他の有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲノアルミニウム、セスキアルキルハロゲノアルミニウム、アルメニルアルミニウム、ジアルキルハイドロアルミニウム、セスキアルキルハイドロアルミニウムなどがあげられる。
その他の有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルハロゲノアルミニウム、セスキメチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライドなどのセスキアルキルハロゲノアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドなどをあげることができる。これらの中で最も好ましくはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドである。
【0020】
メタロセン触媒は例えば下記式(2)で示される(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物を含む。
【化2】

【0021】
式(2)中Mは1つ以上の配位子Lとη結合をしている酸化数+2、+3、+4の長周期型周期律表第4族遷移金属であり、特に遷移金属としてはチタニウムが好ましい。
又Lは環状η結合性アニオン配位子であり、各々独立にシクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、またはオクタヒドロフルオレニル基であり、これらの基は20個までの非水素原子を含む炭化水素基、ハロゲン、ハロゲン置換炭化水素基、アミノヒドロカルビ基、ヒドロカルビオルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基から各々独立に選ばれる1〜8の置換基を任意に有していてもよく、さらには2つのLが20個までの非水素原子を含むヒドロカルバジイル、ハロヒドロカルバジイル、ヒドロカルビレンオキシ、ヒドロカルビレンアミノ、ジラジイル、ハロシラジイル、アミノシランなどの2価の置換基により結合されていてもよい。
Xは各々独立に、60までの非水素原子を有する、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、またはM及びLに各々1個ずつの価数で結合する2価のアニオンσ結合型配位子である。
X'は各々独立に炭素数4乃至40からなるフォスフィン、エーテル、アミン、オレフィン、及び/又は共役ジエンから選ばれる中性ルイス塩基配位性化合物である。
又、lは1または2の整数である。pは0、1又は2の整数であり、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子又はM及びLに各々1個ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子であるときpはMの形式酸化数よりもl以上少なく、またはXがMと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子であるときpはMの形式酸化数よりもl+1以上少ない。又qは0、1または2である。遷移金属化合物としては上記式(2)でl=1の場合が好ましい。
【0022】
例えば、遷移金属化合物の好適な例は、下記式(3)で表される。
【化3】

【0023】
式(3)中Mは形式酸化数+2、+3又は+4のチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムであり、特にチタニウムが好ましい。
また、Rは各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合機であり、各々20までの非水素原子を有することができる。又近接するR同士がヒドロカルバジイル、ジラジイル、またはゲルマジイル等の2価の誘導体を形成して環状となっていてもよい。
X"は各々独立にハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルアミノ基、またはシリル基であり、各々20までの非水素原子を有しており、また2つのX"が炭素数5乃至30の中性共役ジエン、もしくは2価の誘導体を形成してもよい。
Yは−O−、−S−、−NR−、−PR−であり、ZはSiR、CR、SiRSiR、CRCR、CR=CR、CRSiRまたはGeRであり、ここでRは各々独立に炭素数1乃至12のアルキル基又はアリール基である。又、nは1乃至3の整数である。
【0024】
さらに、遷移金属化合物として、より好適な例は、下記式(4)および下記式(5)で表される。
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
式(4)及び(5)中Rは各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合機であり、各々20までの非水素原子を有することができる。また、遷移金属Mはチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、チタニウムが好ましい。
Z、Y、X及びX'の定義は前出のとおりである。pは0,1又は2であり、qは0又は1である。但し、pが2でqが0のとき、Mの酸化数は+4であり、且つXはハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルフォスフィド基、ヒドロカルビルスルフィド基、シリル基またはこれらの複合基であり、20までの非水素原子を有している。
またpが1でqが0のとき、Mの酸化数は+3であり、且つXはアリル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基または2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基から選ばれる安定化アニオン配位子であるか、もしくはMの酸化数が+4であり、かつXが2価の共役ジエンの誘導体であるか、あるいはMとXがともにメタロシクロペンテン基を形成している。
またpが0でqが1のとき、Mの酸化数は+2であり、且つX'は中性の共役或いは非共役ジエンであって任意に1つ以上の炭化水素で置換されていてもよく、又該X'は40までの炭素原子を含み得るものであり、Mとπ型錯体を形成している。
【0027】
さらに、本発明において、遷移金属化合物として最も好適な例は、下記式(6)及び下記式(7)で表される。
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
式(6)及び(7)中Rは各々独立に、水素または炭素数1乃至6のアルキル基である。又Mはチタニウムであり、Yは−O−、−S−、−NR−、−PR−であり、ZはSiR、CR、SiRSiR、CRCR、CR=CR、CRSiRまたはGeRであり、ここでRは各々独立に水素、或いは炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基またはこれらの複合基である。該Rは20までの非水素原子を有することができ、又必要に応じてZ中の2つのR同士またはZ中のRとY中のRが環状となっていてもよい。
pは0,1又は2であり、qは0又は1である。但し、pが2でqが0のとき、Mの酸化数は+4であり、且つXは各々独立にメチル基またはヒドロベンジル基である。
またpが1でqが0のとき、Mの酸化数は+3であり、且つXが2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基であるか、或いはMの酸化数が+4でありかつXが2−ブテンー1,4−ジイルである。
またpが0でqが1のとき、Mの酸化数は+2であり、且つX'は1,4−ジフェニル−1、3−ブタジエンまたは1,3−ペンタジエンである。前記ジエン類は金属錯体を形成する非対称ジエン類を例示したものであり、実際には各幾何異性体の混合物である。
また、メタロセン触媒は(エ)遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤を含む。通常メタロセン触媒においては、遷移金属化合物と上記活性化剤により形成される錯体が、触媒活性種として高いオレフィン重合活性を示す。
【0030】
活性化剤としては例えば、下記式(8)で表される化合物があげられる。
【化8】

【0031】
但し式(8)中[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また[Mtd−は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属またはメタロイドであり、Qは各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、炭素数20までの置換炭化水素基であり、またハライドであるQは1個以下である。又mは1乃至7の整数であり、pは2乃至14の整数であり、dは1乃至7の整数であり、t−m=dである。
【0032】
活性化剤のより好ましい例は下記式(9)で表される化合物である。
【化9】

【0033】
但し式(9)中[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また[Mw(Gu(T−H)d−は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属またはメタロイドであり、Qは各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、炭素数20までの置換炭化水素基であり、またハライドであるQは1個以下である。又GはM及びTと結合するr+1の価数を持多価炭化水素基であり、TはO、S、NRまたはPRであり、ここでRはヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基、もしくは水素である。
又mは1乃至7の整数であり、wは0乃至7の整数でありuは0または1の整数であり、rは1乃至3の整数であり、zは1乃至8の整数であり、w+z−m=dである。
【0034】
活性化剤のさらに好ましい例は下記式(10)で表される化合物である。
【化10】

【0035】
但し式(10)中[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また[BQは相溶性の非配位性アニオンであり、Bはホウ素原子、Qはペンタフルオロフェニル基であり、Qは置換基としてOH基を1つ有する炭素数6乃至20の置換アリール基である。
【0036】
非配位性アニオンの具体例としては、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)フェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−(4‘−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレート等があげられ、最も好ましいのは、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレートである。
他の好ましい相溶性の非配位性アニオンの具体例としては、上記例示のボレートのヒドロキシ基がNHRで置き換えられたボレートがあげられる。ここでRは好ましくはメチル基、エチル基またはtert−ブチル基である。
【0037】
また、プロトン付与性のブレンステッド酸の具体例としては、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、およびトリ(n−オクチル)アンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム、ジブチルエチルアンモニウム、ジヘキシルメチルアンモニウム、ジオクチルメチルアンモニウム、ジデシルメチルアンモニウム、ジドデシルメチルアンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ジヘキサデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジイコシルメチルアンモニウム、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム等のような、トリアルキル基置換型アンモニウムカチオンがあげられ、又N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルベンジルアニリニウムなどのようなN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンも好適である。
【0038】
本発明のポリエチレン多層フィルムにおける、表面層および裏面層の線状ポリエチレンは当該線状ポリエチレンを単独で使用してもよいし、複数の異なる当該線状ポリエチレン同士をブレンドして使用してもよい。単独またはブレンドされた当該線状ポリエチレンに高圧法低密度ポリエチレン、密度が930kg/m未満の線状ポリエチレン、メタロセン触媒と異なる触媒を用いて重合して得られる密度が930kg/m以上の線状ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合ポリマー、エチレン・アクリル酸共重合ポリマー、エチレン・メタクリル酸共重合ポリマー、エチレン・メチルアクリレート共重合ポリマー、エチレン・メチルアクリレート共重合ポリマー、エチレン・エチルアクリレート共重合ポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を1種類または2種類以上ドライブレンド、あるいはメルトブレンドしてもよい。
【0039】
本発明のポリエチレン多層フィルムは、裏面層に対する表面層の厚さ比が0.20以上3.60以下であり、好ましくは、0.40以上3.10以下、さらに好ましくは0.50以上2.00以下である。裏面層に対する表面層の厚さ比がこの範囲外であるとフィルムのカールが大きくなり、包装材料としての適性が損なわれる。該厚さ比は、製膜の際に表面層、裏面層の押出量によって各層の厚さをそれぞれ変えることで制御することができる。各層の厚さは製膜時の押出量とフィルム幅、引取速度、使用樹脂の密度から算出する。
【0040】
本発明のポリエチレン多層フィルムは、ブロッキングフォースが4g/cm以下、好ましくは、3.5g/cm以下である。表面層、裏面層の線状ポリエチレンが、本発明(1)のように密度、メルトマスフローレイト、溶融張力、数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が特定の範囲にあり、該線状ポリエチレン中の重量平均分子量が10以上10以下の成分に含まれるメチル基量に対する重量平均分子量が10以上10以下の成分に含まれるメチル基量の比が1.0未満、充填剤、スリップ剤および酸化防止剤のいずれの添加剤も含有しない線状ポリエチレンは高いクリーン性を有するが、製膜方法や製膜条件によっては得られるフィルムのブロッキングフォースが4g/cmを超えることがあり、その場合にはフィルム同士の剥離性や包装袋にしたときの口開き性が低下することがあるのでブロッキングフォースを4g/cm以下とすることが好ましい。
【0041】
本発明のポリエチレン多層フィルムは共押出法による空冷インフレーション製膜、Tダイ製膜で得ることができ、表面層と裏面層の物性、あるいは両層とその中間層の物性をそれぞれ独立に制御することが可能である。中間層において、該層に要求される物性や表面層、裏面層だけでは得ることが困難な物性を発現させるために、表面層または裏面層に用いた線状ポリエチレン、あるいは高圧法低密度ポリエチレン、密度が930kg/m未満の線状ポリエチレン、メタロセン触媒と異なる触媒を用いて重合して得られる密度が930kg/m以上の線状ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合ポリマー、エチレン・アクリル酸共重合ポリマー、エチレン・メタクリル酸共重合ポリマー、エチレン・メチルアクリレート共重合ポリマー、エチレン・メチルアクリレート共重合ポリマー、エチレン・エチルアクリレート共重合ポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を1種類または2種類以上ドライブレンド、あるいはメルトブレンドして用いることができる。中間層には充填剤、スリップ剤、酸化防止剤が含有されていてもよく、充填剤としてアルミノケイ酸塩、タルク、珪藻土、カオリン、クレー等が、スリップ剤として脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、アルコールの脂肪酸エステル、ワックス、高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン等が、また、酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ジブチルヒドロキシトルエン)、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート))メタン等、リン系酸化防止剤としてはテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスフォナイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−t−ブチルフェニルフォスファイト)等が挙げられ、それぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても構わない。上記の添加剤以外に、帯電防止剤、中和剤、耐候剤、難燃剤、難燃助剤、分散剤、有機あるいは無機顔料などを必要に応じて添加することができる。
【0042】
本発明のポリエチレン多層フィルムは、食品・飲料、医療品・医薬品、光学フィルム、液晶部材、電子・電気部品、精密部品などの包装材料に好適に用いられるが、中でも光学フィルム、液晶部材、電子・電気部品、精密部品の包装材料として極めて好適に用いられる。なお、本発明のポリエチレン多層フィルムをシート状で包装材料として用いても良いし、製袋して包装袋として用いてもよい。さらには本発明のポリエチレン多層フィルムを、セロハン、エチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、PP樹脂、CPP樹脂、PET樹脂、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ビニルアルコール樹脂、エバール樹脂、スチレン樹脂、アクリロニトリル樹脂、カーボネート樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン・メチルアクリレート共重合体樹脂、エチレン・メチルアクリレート共重合体樹脂、エチレン・エチルアクリレート樹脂等からなるフィルム、発泡シート、不織布、さらには上質紙、クラフト紙、グラシン紙、パーチメント紙等の各種紙類、アルミ箔等の基材の片面あるいは両面に積層し、シート状または包装袋として用いてもよい。なお、それぞれの基材は単独で用いてもよいし、2種以上の基材を併用して積層しても構わない。本発明のポリエチレン多層フィルムを基材に積層する方法はドライラミネーション法、押出しラミネーション法、ウェットラミネーション法、ホットメルトラミネーション法などの公知の方法を採用することができる
【実施例】
【0043】
本発明について、以下具体的に説明する。尚、物性測定方法、評価方法は以下の通りである。
(1)密度
JIS K7112:1999に準拠して測定する。
(2)メルトマスフローレイト(MFR)
JIS K7210:1999(温度=190℃、荷重=2.16kg)に準拠して測定する。
(3)溶融張力
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Dを用い、温度190℃、プランジャー速度0.6cm/minで径が2.095mmφのキャピラリ−から試料をストランド状に押出し、引取速度3.0m/minでストランドを引取ったときの張力を溶融張力とする。
【0044】
(4)分子量分布
GPCから求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を分子量分布とする。GPC測定は、ウォーターズ社製GPCV2000を用い、カラムは昭和電工(株)製UT−807(1本)と東ソー(株)製GMHHR−H(S)HT(2本)を直列に接続して使用し、移動相トリクロロベンゼン(TCB)、カラム温度140℃、流量1.0ミリリットル/min、試料濃度20mg/15ミリリットル(TCB)、試料溶解温度140℃、試料溶解時間2時間の条件で行う。分子量の校正は、東ソー(株)製標準ポリスチレンのMwが1050〜206万の範囲の12点で行い、それぞれの標準ポリスチレンのMwに係数0.43を乗じてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量のプロットから一次校正直線を作成し、分子量を決定する。
【0045】
(5)メチル基量比
上記の分子量分布測定において試料濃度を20mg/10ミリリットル(TCB)に変更した以外は同様の方法で分子量分布の測定を行い、同時に溶出成分の赤外分光分析をパーキンエルマー社製FT−IRスペクトラム2000で行ってメチレン基に帰属される吸光度I(メチレン)(吸収波数:2925cm−1)とメチル基に帰属される吸光度I(メチル)(吸収波数:2960cm−1)から両者の比、I(メチル)/I(メチレン)を得て、溶出成分のメチル基濃度を算出する(単位は個/1000(C)で表す。)。該線状ポリエチレン中の重量平均分子量が10以上10以下のエチレン系重合体のメチル基量は、同分子量を対数値で表し、すなわち同分子量が10であれば5.0になるが、それから6.0に達するまで0.03〜0.04ずつ増やした分子量で区分される溶出成分のメチル基濃度を測定し、それに同溶出成分の重量分率を乗じ、それらを合計することによって得ることができる。重量平均分子量が10以上10以下のエチレン系重合体のメチル基量は同分子量を対数値で表し、すなわち同分子量が10であれば3.0になるが、それから4.0に達するまで0.03から0.04ずつ増やした分子量で区分される溶出成分のメチル基濃度を測定し、それに同溶出成分の重量分率を乗じ、それらを合計することによって得ることができる。メチル基量比は換算分子量が10以上10以下のエチレン系重合体のメチル基量を同分子量が10以上10以下のエチレン系重合体のメチル基量で除して算出される。
【0046】
(6)コシ(2%引張弾性率)
後述するフィルムの製法にしたがって得られる総厚さが0.06mmのインフレーション製膜フィルムを用いて、JIS K2127に準拠して縦方向、横方向の2%引張弾性率を測定し、それを平均する。平均値が190MPa以上であればコシが強いと評価する。一方でそれ未満であれば不良と評価する。
(7)ブロッキングフォース
上記のインフレーション製膜フィルムを用いて、ASTM D1893に準拠してフィルムの裏面層同士のブロッキングフォースを測定する。ブロッキングフォースが4g/cm以下であれば耐ブロッキング性が優れていると評価し、それを超える場合は不良と評価する。
【0047】
(8)カール
30cm角の大きさに裁断した上記のインフレーション製膜フィルムを23℃、50%RHの条件下に10min放置し、フィルムの角4点のカールした高さを測定する。4点の平均値をカール高さとして、5cm以下の場合はカールが小さい(良好)とし、それを超えた場合、またはフィルムが円筒状にカールした場合はカールが大きい(劣る)と評価する。
(9)低臭性
上記のインフレーション製膜フィルム500cmを2cm角の大きさに裁断して密閉ビンに入れ、50℃で30分間加熱後、室温まで冷却し、ビン内の臭気を10人のパネラーによって官能で評価する。異臭がしないという判定が8人以上のパネラーから得られれば、低臭性に優れると評価するし、一方でそれ未満なら不良と評価する。
【0048】
(10)低味性
上記のインフレーション製膜フィルム500cmを2cm角の大きさに裁断して密閉ビンに入れ、95℃に加温した市販の天然水500ミリリットルをビンに注いだ後、室温まで放置する。室温まで冷却された天然水の味を10人のパネラーによって官能で評価する。元の天然水の味とほとんど変わらないという判定が8人以上のパネラーから得られれば、低味性に優れると評価するし、一方でそれ未満なら不良と評価する。
(11)低粉性
上記のインフレーション製膜フィルムを50℃で72時間加熱し、23℃で24時間冷却した後に固定ロールに貼りつけた黒色のフェルト布に接触させながら100m長走行させ、フェルト布上に粉を集積させる。集積した粉の量や集積状態を目視観察し、粉の発生がない、またはわずかに発生しているが集積が部分的である場合には低粉性が優れると評価する。一方、粉が多く発生しており、フィルムとフェルト布が接触し始める部分に帯状に連続的に集積している場合には低粉性が劣ると評価する。粉の量や集積状態が両者の中間であれば、低粉性はやや優れると評価する。
【0049】
(12)低アウトガス性
20ミリリットルの密閉バイアル瓶の中に上記インフレーション製膜フィルム400cmを入れサンプルとする。パーキンエルマー社製ヘッドスペースサンプラーHS−40およびカラムとしてメチルシリコンの膜厚が0.5μmで内径が0.32mmである25mのキャピラリーカラムを備えた島津製作所製ガスクロマトグラフGC−9Aを用いて分析する。分析において、サンプルは100℃で60分間加熱し、カラム温度は最終200℃まで昇温する。カラムのキャリアーガスにはヘリウムを使用し、30ミリリットル/minの流量に調整する。検出成分のリテンションタイムをn−ヘキサン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−テトラデカンのリテンションタイムと比較し、各検出成分を相当する炭素数の成分に区分してピークエリアを算出する。ピークエリアは、検出されたピークの高さ方向の電圧(μV)と横方向の検出時間(秒)の積によって求め、炭素数10以下に区分された成分のピークエリアの合計値をアウトガス量とする。アウトガス量が30,000未満のものを低アウトガス性に優れると評価し、それ以上であれば低アウトガス性が劣ると評価する。
【0050】
(13)防汚性
20cm×25cmの大きさに裁断したコシ評価用のインフレーション製膜フィルムを厚さ3mmのポリカーボネート板2枚で挟み、さらにそれを厚さ2mmのSUS板に挟んで25kgの荷重を載せて60℃で24時間加熱する。次いで、荷重を載せたまま23℃で24時間放置したのちに、荷重、SUS板をはずし、ポリカーボネート板の間のフィルムも剥がす。ポリカーボネート板のフィルムとの接触面を目視観察し、汚れがなければ防汚性が優れると評価する。汚れがあれば防汚性が劣ると評価する。
【0051】
[メタロセン触媒を用いた線状ポリエチレンの製法]
6.2g(8.8ミリモル)のトリエチルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニール)(4−ヒドロキシフェニール)ボレートを4リットルのトルエンに加え90℃、30分攪拌した。次にこの溶液に1モル/リットルのトリヘキシルアルミニウムのトルエン溶液40ミリリットルを加え90℃で分間攪拌した。一方シリカP−10(日本、富士シリシア社製:商品名)を500℃で3時間窒素気流内で処理し、その処理後のシリカを1.7lのトルエン中に入れ攪拌した。このシリカスラリー溶液に、上記トリエチルアンモニウムトリエチルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニール)(4−ヒドロキシフェニール)ボレートとトリヘキシルアルミニウムのトルエン溶液を加え3時間90℃で攪拌した。次に、1モル/リットルのトリヘキシルアルミニウムのトルエン溶液206ミリリットルを加え、さらに90℃で1時間攪拌した。その後、上澄み液を90℃のトルエンを用いて、デカンテーションを5回行い過剰のトリヘキシルアルミニウムを取り除いた。0.218モル/リットルの濃い紫色のチタニウム(N−1,1−ジメチルエチル)ジメチル(1−(1,2,3,4,5−eta)−2,3,4,5−テトラメチル−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)シラナミナート)((2−)N−(η−1,3−ペンタジエン)のISOPARTME(米国 Exxon化学社製)溶液20ミリリットルを上記混合物に加え、3時間攪拌し緑色のメタロセン触媒を得た。
得られたメタロセン触媒は触媒移送ラインに連鎖移動剤として必要量の水素を供給することで水素を接触させて重合反応器に導入し、溶媒としてヘキサン、モノマーとしてエチレン、必要に応じてブテン−1を用いて、所定のガス組成になるように各モノマーを供給し、反応温度75℃、全圧が0.8MPaで線状ポリエチレンを重合した。得られた線状ポリエチレンは日本製鋼(株)社製押出機(スクリュー径 65mm、L/D=28)を用い、200℃にて押出して造粒した。得られたメタロセン触媒による線状ポリエチレンを表1に記載した。
【0052】
[チーグラー触媒による線状ポリエチレンの製法]
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロルシランを2モル/リットルのn−ヘプタン溶液として3リットル仕込み、攪拌しながら65℃に保ち、組成式AlMg(C(n−C6.4(On−C5.6で示される有機マグネシウム成分のn−ヘプタン溶液7リットル(マグネシウム換算で5モル)を1時間かけて加え、更に65℃にて1時間攪拌下反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、n−ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体を分離・乾燥して分析した結果、固体1グラム当たり、Mg 7.45ミリモルを含有していた。
【0053】
このうち固体500gを含有するスラリーを、n−ブチルアルコール1モル/リットルのn−ヘキサン溶液0.93リットルとともに、攪拌下50℃で1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで1回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのn−ヘキサン溶液1.3リットルを攪拌下加えて1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで2回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルおよび四塩化チタン1モル/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルを加えて、2時間反応した。反応終了後上澄みを除去し、固体触媒を単離し、遊離のハロゲンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。この固体触媒は2.3重量%のチタンを有していた。
【0054】
上記で得られた触媒を用い、下記の要領で線状ポリエチレンを製造した。
単段重合プロセスにおいて、容積230リットルの重合器で重合した。重合温度は86℃、重合圧力は0.98MPaである。この重合器に合成したチーグラー触媒を0.3g/hrの速度で、トリイソブチルアルミニウムを15ミリモル/hr、ヘキサンは60リットル/hrの速度で導入した。これに、エチレン、水素、必要に応じてブテン−1を所定のガス組成になるように導入して重合を行い、得られた線状ポリエチレンは日本製鋼(株)社製押出機(スクリュー径 65mm、L/D=28)を用いて、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、ステアリン酸カルシウムを添加し200℃にて押出して造粒した。得られたチーグラー触媒による線状ポリエチレンを表2に記載した。
【0055】
[多層フィルムの製法]
スクリュー径50mmφの押出機3台、120mmφ、ギャップ2.5mmのダイスを備えた3層インフレーション製膜機で、外層を表面層、内層を裏面層として当該線状ポリエチレン用い、中間層に当該線状ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、チーグラー触媒による線状ポリエチレンの内一つを用、温度180℃で押出し、ブロー比2の条件で多層フィルムを製膜した。
【0056】
[実施例1〜10]
表3および表4に層構成、およびコシ、耐ブロッキング性、カール、低臭性、低味性、低粉性、低アウトガス性、防汚性の評価結果を併せて示した。なお、中間層に用いLDと表記した熱可塑性樹脂は、密度が920kg/m、MFRが2.0g/10minの添加剤無添加の高圧法低密度ポリエチレンである。
【0057】
[比較例1〜6]
表2記載のチーグラー触媒による線状ポリエチレンを用いて実施例1と同様にしてインフレーション製膜をした。層構成、およびコシ、耐ブロッキング性、カール、低臭性、低味性、低粉性、低アウトガス性、防汚性の評価結果を併せて表5に示した。なお、表5記載の使用樹脂LDは、上記実施例で用いた高圧法低密度ポリエチレンである。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のポリエチレン多層フィルムは、コシが強く、耐ブロッキング性に優れ、カールが小さく、低臭性、低味性、低粉性、低アウトガス性、良好な防汚性といったクリーン性を併せ持ち、食品・飲料、医療品・医薬品、光学フィルム、液晶部材、電子・電気部品、精密部品などの包装材料に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともその表面層および裏面層が線状ポリエチレンからなる3層以上のポリエチレンフィルムであって、該線状ポリエチレンが、密度が930kg/m以上、メルトマスフローレイトが0.1g/10min以上20g/10min以下、溶融張力が0.5g以上、数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が3以上10以下であり、該線状ポリエチレン中の重量平均分子量が10以上10以下の成分に含まれるメチル基量に対する重量平均分子量が10以上10以下の成分に含まれるメチル基量の比が1.0未満であって、充填剤、スリップ剤および酸化防止剤のいずれの添加剤も含有しない線状ポリエチレンであることを特徴とするポリエチレン多層フィルム。
【請求項2】
裏面層に対する表面層の厚さ比が0.20以上3.60以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエチレン多層フィルム。
【請求項3】
ブロッキングフォースが4g/cm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のポリエチレン多層フィルム。

【公開番号】特開2008−73854(P2008−73854A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252162(P2006−252162)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】