説明

ポリエチレン系樹脂組成物、ポリエチレン押出発泡シート及びそれからなる容器

【課題】剛性に優れ、発泡倍率が高い高密度ポリエチレンの押出発泡シート、用樹が得られる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも密度が935〜970kg/m、分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中の長鎖分岐は主鎖1000炭素数あたり0.10個以下である高密度ポリエチレン(1)と密度が910〜970kg/m、MFRが0.1〜100g/10分、GPCによる分子量測定において2つのピークを示し、Mw/Mnが2.0〜7.0であり、かつ分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中の長鎖分岐数が主鎖1000炭素数あたり0.15個以上有するポリエチレン系樹脂(2)を含み、該高密度ポリエチレン(1)100重量部に対し、該ポリエチレン系樹脂(2)5重量部以上400重量部以下であるポリエチレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂組成物、並びに高密度ポリエチレン押出発泡シート及びそれからなる容器に関するものである。更に詳細には、既存の高密度ポリエチレンの発泡成形性を改良しえる特定の要件を満足するポリエチレン系樹脂を含んだ高密度ポリエチレン系樹脂組成物、並びに高密度ポリエチレン押出発泡シート及びそれからなる容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種工業分野において、プラスチック製のパイプ、フィルム、シート及び中空成形体が盛んに用いられるようになった。特に安価・軽量であり、成形加工性、低温衝撃性、耐薬品性、リサイクル性に優れる等の理由からポリエチレン系樹脂を用いたシート及びそれからなる容器が様々な用途に用いられている。特に、密度の高い直鎖状のポリエチレン(以下、高密度ポリエチレンという)は、剛性、耐熱性に優れていることから、建材、各種日用品、食品包装容器などの用途に用いられている。
【0003】
一方、軽量化、断熱性、遮音性等の観点から、ポリエチレン系樹脂と発泡剤を押出機にて溶融混練し、ダイスからシート状に押し出した、発泡シートが用いられている。しかしながら、高密度ポリエチレンは、結晶融点以上での溶融粘度が極めて低く、発泡した際には気泡が保持できず破泡しやすいため、これまで発泡倍率の高い発泡体や機械的特性に優れた発泡体を得ることは困難であった。
【0004】
上記問題点を解決し、高密度ポリエチレンを用いた発泡倍率の高い発泡体や品質の良好な発泡体を得るために、(1)溶融弾性特性の指標の一つであるダイスェルを特定値以上とした高密度ポリエチレンを用いる方法(例えば、特許文献1参照)、(2)高密度ポリエチレンに高圧ラジカル重合法により製造される低密度ポリエチレンを混合する方法(例えば、特許文献2、3参照)が提案されている。
【0005】
また、本発明者等は、先に(3)特定の要件を満足するポリエチレン系樹脂からなる未架橋ポリエチレン押出発泡体を提供することにより、上記問題を解決できることを見出した(例えば、特許文献4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−290329号公報
【特許文献2】特開2004−249680号公報
【特許文献3】特開2004−155454号公報
【特許文献4】特開2009−197046号公報
【特許文献5】特開2009−275153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1には、特定値以上のダイスェルを有する高密度ポリエチレンのみを用い、見掛け密度が0.11〜0.80g/cmの発泡体を提供する製造方法が提案されているが、特定の要件を満足する高密度ポリエチレンのみを使用せねばならず、このことがコストアップに繋がる。また、既存の高密度ポリエチレンの発泡性に対する改質効果に関しては何等記載又は示唆されていない。
【0008】
また、上記特許文献2、3には、特定の高密度ポリエチレンと特定の低密度ポリエチレンを特定の割合で配合した樹脂組成物からなる発泡成形体が提案されている。しかしながら、低密度ポリエチレンは高密度ポリエチレンと比較して、剛性、耐熱性に劣ることから、上記特許文献2、3に提案されている発泡成形体は高密度ポリエチレンが本来有している特徴を損なうものとなる。
【0009】
更に、本出願人が先に提案した上記未架橋ポリエチレン押出発泡体は、発泡状態が良好(不均一セルや粗大セルが少なく、均一なセルが多い)、かつ発泡倍率が高く、耐熱性にも優れていた。しかしながら、特定の要件を満足する高密度ポリエチレンの配合比率が高く、このことがコストアップに繋がる。また、引裂性等の発泡シートのシート物性や発泡シートの外観の更なる向上が望まれていた。
【0010】
本発明の目的は、上記欠点を克服し、特定のポリエチレン系樹脂組成物により、剛性、耐熱性、引裂性に優れた高密度ポリエチレン押出発泡シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、既存の高密度ポリエチレンの発泡成形性を改良しうる特定の要件を満足するポリエチレン系樹脂を含んだポリエチレン系樹脂組成物が、発泡性が高く、かつ剛性、耐熱性、引裂性に優れることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0012】
すなわち、本発明は、少なくとも密度が935〜970kg/m、分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中に長鎖分岐を主鎖1000炭素数あたり0.10個以下である高密度ポリエチレン(1)と密度が910〜970kg/m、MFRが0.1〜100g/10分、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる分子量測定において2つのピークを示し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.0〜7.0の範囲であり、かつと分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中の長鎖分岐数が主鎖1000炭素数あたり0.15個以上有するポリエチレン系樹脂(2)を含み、該高密度ポリエチレン(1)100重量部に対し、該ポリエチレン系樹脂(2)を5重量部以上400重量部以下を含むポリエチレン系樹脂組成物、並びに該ポリエチレン系樹脂組成物を用いた発泡倍率が1.5〜20倍であることを特徴とする高密度ポリエチレン押出発泡シート及びそれからなる容器に関するものである。
【0013】
以下に本発明に関し詳細に説明する。
【0014】
本発明の高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」と省略する場合もある)(1)は、HDPEの範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、その製造方法等については特に制限はなく、例えば触媒系としてチタン系の遷移金属を主体とするチーグラー触媒、クロム系触媒を主体とするフィリップス触媒、メタロセン等を主体とするカミンスキー型触媒などのいずれの触媒系を使用しても製造することができる。そして、該HDPEは、密度が935〜970kg/mであり、好ましくは密度が945〜970kg/mである。密度が935kg/m未満であると、剛性が低く、また、耐熱性が低い発泡体しか得られない。また、密度が970kg/mを超えると衝撃強度が低下する。
【0015】
また、本発明の高密度ポリエチレン(HDPE)(1)は、直鎖状の構造であるために、分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中の長鎖分岐は主鎖1000炭素数あたり0.10個以下である。
【0016】
高密度ポリエチレン(HDPE)(1)は、190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が、0.05〜20g/10分であることが好ましく、さらに0.1〜10g/10分であることが好ましい。MFRが0.05g/分以上であると、成形加工時に押出機の負荷が小さくなる他、フィッシュアイの発生が抑制できる。また、MFRが20g/10分以下であると、成形時のドローダウンが小さく、機械的強度の高い発泡シートが得られる。
【0017】
高密度ポリエチレン(HDPE)(1)は市販品として、例えば商品名ニポロンハード#4000、#4010,#8300A、#5010(以上、東ソー(株)製)、ノバテックHD HJ360、HB420R、HB439R、ハイゼックス 5600B、232J等を入手することができる。
【0018】
次に、本発明のポリエチレン系樹脂(2)について説明する。該ポリエチレン系樹脂は、一般にポリエチレン系樹脂と称される範疇に属するものであり、特にエチレンから導かれる繰り返し単位からなるエチレン単独重合体、またはエチレンから導かれる繰り返し単位と炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位からなるエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0019】
本発明のポリエチレン系樹脂(2)は、JIS K7676を準拠し測定したその密度が910〜970kg/mの範囲であり、特に好ましくは925〜965kg/mの範囲である。ここで、密度が970kg/mを超える場合、得られる発泡シートは、耐熱性には優れるものの、衝撃強度が劣るものとなる。密度が925kg/m未満の場合、得られる発泡シートは、剛性が低く、耐熱性に劣り、使用上問題となる。
【0020】
本発明のポリエチレン系樹脂(2)は、GPCによる分子量測定において2つのピークを示す。ピークトップ分子量(Mp)はGPC測定によって得られた分子量分布曲線を後述の方法で2個のピークに分割し、高分子量側のピークと低分子量側のピークのトップ分子量を評価し、その差が100,000以上である場合を2つのMpを有するとした。100,000未満である場合は、実測された分子量分布曲線のトップ分子量を1つのMpとした。
【0021】
GPCによる分子量測定においてピークが1つのものは、加工時の押出負荷が高くなり、成形加工性が低下する他、発泡性も十分ではないため、良好な発泡シートを得られず、好ましくない。
【0022】
分子量分布曲線の分割方法は以下のとおりに行った。GPC測定によって得られた、分子量の対数であるLogMに対して重量割合がプロットされた分子量分布曲線のLogMに対して、標準偏差が0.30であり、任意の平均値(ピークトップ位置の分子量)を有する2つの対数分布曲線を任意の割合で足し合わせることによって、合成曲線を作成する。さらに、実測された分子量分布曲線と合成曲線との同一分子量(M)値に対する重量割合の偏差平方和が最小値になるように、平均値と割合を求める。偏差平方和の最小値は、各ピークの割合がすべて0の場合の偏差平方和に対して0.5%以下にした。偏差平方和の最小値を与える平均値と割合が得られた時に、2つの対数正規分布曲線に分割して得られるそれぞれの対数分布曲線のピークトップの分子量をMpとした。
【0023】
ポリエチレン系樹脂(2)の重量平均分子量(Mw)とMnの比(Mw/Mn)は2.0〜7.0、好ましくは2.5〜7.0、さらに好ましくは3.0〜6.0である。Mw/Mnが2.0未満である場合、加工時の押出負荷が高くなり、成形加工性が低下する。また、Mw/Mnが7.0を超える場合、成形温度範囲が狭くなる。Mw/Mnは、後述の有機変性粘土(B)合成時の有機化合物添加量の低減、重合時の温度低下、エチレン以外のオレフィン添加量の増加により増加することができる。
【0024】
ポリエチレン系樹脂(2)のGPCにより測定した数平均分子量(Mn)は15,000以上であることが好ましく、さらに好ましくは15,000〜100,000、特に15,000〜50,000が好ましい。Mnが15,000以上である場合、得られる発泡中空成形体の強度が高くなる。Mnは、重合時の水素添加量の減少により増加する。また、Mnは後述の遷移金属化合物(A)の配位子の種類により制御が可能である。例えば一般式(5)のみの配位子を用いるよりも、一般式(6)、さらには一般式(8)の配位子を用いた方が、Mnは高くなる。
【0025】
ポリエチレン系樹脂(2)の分子量分別で得られたMnが10万以上のフラクションの長鎖分岐数は主鎖1000炭素数あたり0.15個以上である。Mnが10万以上のフラクションの長鎖分岐数が主鎖1000炭素数あたり0.15個未満である場合、発泡成形に問題が生じる。分子量分別で得られたMnが10万以上のフラクションの長鎖分岐数は、後述の有機変性粘土(B)合成時の有機化合物添加量の低減、重合時のエチレン以外のオレフィン添加量の増加により増加することができる。また、遷移金属化合物(A)の配位子の種類によっても制御が可能である。例えば一般式(5)のみの配位子を用いるよりも、一般式(6)、さらには一般式(8)の配位子を用いた方が、分子量分別で得られたMnが10万以上のフラクションの長鎖分岐数は高くなる。
【0026】
ポリエチレン系樹脂(2)全体における好ましい長鎖分岐数は主鎖1000炭素数あたり0.02個以上である。長鎖分岐数が主鎖1000炭素数あたり0.02個以上である場合、良好な発泡成形を示し、発泡倍率が高く、均一に気泡成長した発泡体が得られる。
【0027】
また、分子量分別で得られたMnが10万以上のフラクションの割合が、ポリマー全体の40%未満であることが望ましい。分子量分別で得られたMnが10万以上のフラクションの割合が、ポリマー全体の40%未満にすることにより、発泡成形性が向上する。
【0028】
分子量分別で得られたMnが10万以上のフラクションの割合については、後述の有機変性粘土(B)合成時の有機化合物添加量の低減、重合時の水素添加量の減少、重合時のエチレン以外のオレフィン添加量の増加により増加することができる。また、遷移金属化合物(A)の配位子の種類によっても制御が可能である。例えば一般式(5)のみの配位子を用いるよりも、一般式(6)、さらには一般式(8)の配位子を用いた方が、分子量分別で得られたMnが10万以上のフラクションの割合は高くなる。
【0029】
ポリエチレン系樹脂(2)の160℃で測定した溶融張力は好ましくは20mN以上、さらに好ましくは30mN以上である。溶融張力が上記の条件を満たす場合、発泡シートとする際に発泡倍率が高く、均一に気泡成長し、軽量で、剛性、断熱性に優れる発泡シートが得られる。
【0030】
以上、本発明に特定の分子量分布と長鎖分岐構造を有するポリエチレン系樹脂(2)を用いることにより、発泡倍率が高く、強度および耐熱性に優れた発泡シートとなる。
【0031】
また、発泡シートの製造時の製造効率に優れることから、190℃、2.16kg荷重におけるポリエチレン系樹脂(2)のメルトフローレートが0.1〜100g/10分であり、1〜20g/10分であることが好ましい。
【0032】
本発明のポリエチレン系樹脂(2)は、
下記一般式(1)
(1)
(式中、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Q、Q、QおよびQは、シクロアルカジエニル基、置換シクロアルカジエニル基、キレート性の配位子、ルイス塩基、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、これらは互いに同一のものであってもよく、異なるものであってもよく、Q、Q、QおよびQは、他の原子または、原子団を介して結合していてもよく、a、b、c及びdはそれぞれ0〜4の整数を示す。)
で表される遷移金属化合物(A)、スメクタイト族ヘクトライトに属する粘土化合物を一般式(2)
【0033】
【化1】

(式中、R〜Rは各々独立して炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキルアミノ基、炭素数1〜30のアルキルシリル基、上記炭素数1〜30の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部を炭素数1〜30のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したもの、であり、かつR〜Rのうち少なくともひとつが炭素数21以上であり、Mは周期表第15族の原子であり、[A]はアニオンである。)
で表される有機化合物にて変性した有機変性粘土(B)及び有機アルミニウム化合物(C)からなるポリエチレン系樹脂製造用触媒を用いて、エチレン重合を行うことにより製造することができる。
【0034】
遷移金属化合物(A)は、下記一般式(1)
(1)
(式中、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Q、Q、QおよびQは、シクロアルカジエニル基、置換シクロアルカジエニル基、キレート性の配位子、ルイス塩基、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、これらは互いに同一のものであってもよく、異なるものであってもよく、Q、Q、QおよびQは、他の原子または、原子団を介して結合していてもよく、a、b、c及びdはそれぞれ0〜4の整数を示す。)
で表され、好ましくは下記一般式(3)、一般式(4)
【0035】
【化2】

【0036】
【化3】

[式中、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Xは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、R,Rは各々独立して一般式(5)、(6)、(7)または(8)
【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

(式中、Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものである。)
で表されるMに配位する配位子であり、RとRはMと一緒にサンドイッチ構造を形成し、Rは一般式(9)または(10)
【0041】
【化8】

【0042】
【化9】

(式中、Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、Mはケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子である。)
で表され、RとRを架橋するように作用しており、nは1〜5の整数である。]
で表される化合物が用いられる。
【0043】
また、下記一般式(12)または一般式(13)
【0044】
【化10】

[式中、Mは、周期表第4〜5族の遷移金属原子を示し、mは、1〜2の整数を示し、R11〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、R11〜R16のうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。pは、Mの価数を満たす数であり、Yは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものを示し、pが2以上の場合は、Yで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またYで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。]
【0045】
【化11】

[式中、R17は各々の場合に水素、ヒドロカルビル、シリル、ゲルミル、ハロ、シアノおよびこれらの組み合わせから独立して選択され、かつ任意に2個のR17(ここでR17は水素、ハロまたはシアノではない)は一緒になってシクロペンタジエニル環の隣接位置に連結して結合環構造を形成するその2価誘導体を形成してもよく、Jは、MとΠ−錯体を形成する30個以下の非水素原子を有する中性のη−結合ジエン基であり、Qは−O−、−S−、−NR18−、−PR18−であり、Mは+2形式酸化状態のチタンまたはジルコニウムであり、ZはSiR18、CR18、SiR18SiR18、CR18CR18、CR18=CR18、CR18SiR18またはGeR18であり、ここでR18は各々の場合独立して水素あるいはヒドロカルビル、シリル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリールおよびこれらの組み合わせから選択される一員であり、かつ任意にZからの2個のR18あるいはZからのR18およびQからのR18(ここでR18は水素ではない)が環系を形成してもよい]
で表される化合物を用いることもできる。
【0046】
、Q、QおよびQのシクロアルカジエニル基としては、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基等を例示することできる。置換シクロアルカジエニル基としては2−メチルシクロペンタジエニル基、2−エチルシクロペンタジエニル基、2,4−ジメチルシクロペンタジエニル基、2−フェニルインデニル基、2,4−ジエチルシクロペンタジエニル基、2−メトキシシクロペンタジエニル基、2−ジメチルアミノシクロペンタジエニル基、2−トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、7−メチルインデニル基、7−エチルインデニル基、7−フェニルインデニル基、2,7−ジメチルインデニル基、2−メトキシ−7−メチルインデニル基、2−ジメチルアミノ−7−メチルインデニル基、2−トリメチルシリル−7−メチルインデニル基、4,7−ジメチルインデニル基、4−メトキシ−7−メチルインデニル基、テトラヒドロインデニル基、7−メチルテトラヒドロインデニル基、7−エチルテトラヒドロインデニル基、7−フェニルテトラヒドロインデニル基、2,7−ジメチルテトラヒドロインデニル基、2−ジメチルアミノ−7−メチルテトラヒドロインデニル基、2−トリメチルシリル−7−テトラヒドロインデニル基、4,5,6,7−テトラメチルテトラヒドロインデニル基等を例示することができる。キレート性の配位子としては、エチレンジアミン基、ビピリジン基、フェナントロリン基、アセチルアセトナート基等を例示することができる。ルイス塩基としては、N,N−ジメチルアニリン,トリメチルアミン,トリエチルアミン,トリ−n−ブチルアミン,メチルジフェニルアミン,ピリジンなどのアミン類、トリエチルホスフィン,トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、テトラヒドロチオフェンなどのチオエーテル類、安息香酸エチルなどのエステル類、アセトニトリル,ベンゾニトリルなどのニトリル類等を例示することができる。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を例示することができる。炭素数1〜20の炭化水素基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−オクチル基、n−エイコシル基、フェニル基、ベンジル基、o−トルイル基、m−トルイル基、p−トルイル基等を例示することができる。炭素数1〜20のアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−オクトキシ基、n−エイコキシ基、n−フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−エチルフェノキシ基等を例示することができる。炭素数1〜20のアルキルアミノ基としてはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基等を例示することができる。炭素数1〜20のアルキルシリル基としてはメチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、n−プロピルシリル基、iso−プロピルシリル基、ジ(n−プロピルシリル基)、ジ(iso−プロピルシリル基)、トリ(n−プロピルシリル基)、トリ(iso−プロピルシリル基)、n−ブチルシリル基、iso−ブチルシリル基、t−ブチルシリル基、ジ(n−ブチルシリル基)等を例示することができる。上記炭素数1〜20の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したものとしては、メトキシメチレン基、エトキシメチレン基等を例示することができる。上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部を炭素数1〜20のアルキルアミノ基に置換したものとしては、ジメチルアミノメチレン基、ジエチルアミノメチレン基等を例示することができる。上記炭素数1〜20の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものとしては、トリメチルシリルメチレン基、tert−ブチルジメチルシリルメチレン基等を例示することができる。
【0047】
遷移金属化合物(A)の具体的な例として、次に挙げる化合物を例示することができる。遷移金属化合物(A)の具体例として、一般式(3)に該当するものとしてはビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、一般式(4)に該当するものとしては、メチレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチレンビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチレンビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、一般式(12)に該当するものとしては、ビス(2−tert−ブチル−5−フェニルイミノ)ジルコニウムジクロリド、一般式(13)に該当するものとしては、(tert−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシランジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物、ジルコニウム原子をチタン原子、ハフニウム原子に変えた化合物や上記遷移金属化合物のジクロロ体をジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体に変えた化合物などを例示することができ、好ましい遷移金属化合物(A)としては、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4,7−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドおよびイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0048】
有機変性粘土(B)は、以下の一般式(2)
【0049】
【化12】

(式中、R〜Rは各々独立して炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキルアミノ基、炭素数1〜30のアルキルシリル基、上記炭素数1〜30の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したもの、上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部を炭素数1〜30のアルキルアミノ基に置換したもの、上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものであり、かつR〜Rのうち少なくともひとつが炭素数21以上であり、Mは周期表第15族の原子であり、[A]はアニオンである。)
で表される有機化合物にて変性したものであり、有機化合物の具体的な例としては、次に例示することができる。
【0050】
一般式(2)において、R、RおよびRの炭素数1〜30の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基等を例示することができる。
【0051】
炭素数1〜30のアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、フェノキシ基等を例示することができる。
【0052】
炭素数1〜30のアルキルアミノ基は、前記炭素数1〜30の炭化水素基を置換基として有するアミノ基であり、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基等を例示することができる。
【0053】
炭素数1〜30のアルキルシリル基は、前記炭素数1〜30の炭化水素基を置換基として有するシリル基であり、トリメチルシリル基、トリtert−ブチルシリル基、ジtert−ブチルメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等を例示することができる。
【0054】
上記炭素数1〜30の炭化水素基の炭素と炭素の結合間に酸素を導入したものとしては、メトキシメチレン基、エトキシメチレン基等を例示することができる。
【0055】
上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部を炭素数1〜30のアルキルアミノ基に置換したものとしては、ジメチルアミノメチレン基、ジエチルアミノメチレン基等を例示することができる。
【0056】
上記炭素数1〜30の炭化水素基の一部の炭素をケイ素に置換したものとしては、トリメチルシリルメチレン基、tert−ブチルジメチルシリルメチレン基等を例示することができる。
【0057】
そして、R、RおよびRの少なくとも一つは、ベヘニル基で代表される炭素数21以上の炭化水素基である。
【0058】
は、周期律表第15族の原子であり窒素原子またはリン原子を例示することができる。Mが窒素原子である場合の一般式(2)で表される有機化合物の具体例としては、N,N−ジメチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−エチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン塩酸塩等の化合物および上記化合物の塩酸塩をフッ化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩または硫酸塩に置き換えた化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
がリン原子であるものとしては、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン塩酸塩等の化合物および上記化合物の塩酸塩をフッ化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩または硫酸塩に置き換えた化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
[A]はアニオンであり、例えばフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオンまたはヘキサフルオロリン酸イオンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
また、有機変性粘土(B)に用いる粘土化合物は、スメクタイト族ヘクトライトに属するものである。
【0062】
有機化合物にて変性された有機変性粘土は、粘土化合物層間に有機イオンを導入し、イオン複合体を形成する。
【0063】
有機化合物変性処理においては、粘土化合物の濃度は0.1〜30重量%、処理温度は0〜150℃の条件を選択して処理を行うことが好ましい。また、有機化合物は固体として調製して溶媒に溶解させて使用しても良いし、溶媒中での化学反応により有機化合物の溶液を調製してそのまま使用しても良い。粘土化合物と有機化合物の反応量比については、粘土化合物の交換可能なカチオンに対して当量以上の有機化合物を用いることが好ましい。処理溶媒としては、ペンタン、ヘキサンもしくはヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼンもしくはトルエン等の芳香族炭化水素類、エチルアルコールもしくはメチルアルコール等のアルコール類、エチルエーテルもしくはn−ブチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレンもしくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランまたは水等を用いることができるが、好ましくは、アルコール類または水を単独もしくは溶媒の一成分として用いることである。
【0064】
また、本発明に使用するポリエチレン系樹脂(2)の重合で用いる有機変性粘土(B)の粒径は特に制限されるものではないが、小さすぎると沈降しづらく触媒調製を効率よく行えなくなり、大きすぎると触媒をスラリーで移送する際に途中の配管に詰まったりするため、1〜100μmであることが好ましい。粒径を調節する方法も特に制限されず、大きな粒子を粉砕して適切な粒径にしても、小さな粒子を造粒して適切な粒径にしても良く、あるいは粉砕と造粒を組み合わせても良い。また、粒径の調節は未変性の粘土に行っても、変性後の有機変性粘土に行っても良い。
【0065】
粉砕や造粒の方法も特に制限されず、粉砕ならばインパクトミル、回転ミル、カスケードミル、カッターミル、ケージミル、衝撃式粉砕機、コニカルミル、コロイドミル、コンパウンドミル、ジェットミル、振動ミル、スタンプミル、チューブミル、ディスクミル、タワーミル、媒体攪拌ミル、ハンマーミル、ピンミル、フレットミル、ペブルミル、ボールミル、摩砕機、遊星ミル、リングボールミル、リングロールミル、ロッドミル、ローラーミル、ロールクラッシャー等を、造粒としては転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒、破砕造粒、溶融造粒、噴霧造粒等いずれの方法を用いてもよい。
【0066】
有機アルミニウム化合物(C)は、本発明に使用されるポリエチレン系樹脂(2)の製造用触媒の構成成分であり、遷移金属化合物(A)、および有機変性粘土(B)と共に用いられる。
【0067】
有機アルミニウム化合物(C)は、下記一般式(11)
【0068】
【化13】

(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、R10は各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子または塩素原子である。)
で表され、遷移金属化合物をアルキル化することが可能な化合物が好ましく、具体的にはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0069】
本発明に使用するポリエチレン系樹脂(2)の重合で用いる遷移金属化合物(A)((A)成分)と有機変性粘土(B)((B)成分)、および有機アルミニウム化合物(C)((C)成分)の比に制限はないが、次に示す比であることが望ましい。
【0070】
(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比は(A成分):(C成分)=100:1〜1:100000の範囲にあり、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましく、(A)成分と(B)成分の重量比が(A成分):(B成分)=10:1〜1:10000にあり、特に3:1〜1:1000の範囲であることが好ましい。特に、1種類の(A)成分、(B)成分および(C)成分を組み合わせることにより、GPCによる分子量測定において2ピークが観測されるポリエチレン系樹脂(2)を製造することが可能であり、このポリエチレン系樹脂(2)を使用することにより、本発明の耐熱性、強度に優れた発泡シートおよび容器が得られる。また、1種類の(A)成分、(B)成分および(C)成分を組み合わせることにより、GPCによる分子量測定において2ピークが観測され、特定範囲の数平均分子量および分子量分布を有し、分子量分別により得られたMnが10万以上の成分が特定の割合でありかつ分子量分別により得られたMnが10万以上の成分中に特定以上の長鎖分岐を有することにより、耐熱性、強度に優れた発泡シートおよび容器が製造可能なエチレン系共重合体が得られる。
【0071】
本発明に使用するポリエチレン系樹脂(2)の重合で用いる(A)成分、(B)成分および(C)成分からなるポリエチレン系樹脂製造用触媒を調製する方法に関して制限はなく、調製の方法として、各成分に関して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法などを挙げることができる。また、これらの成分を反応させる順番に関しても制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も制限はない。また、(B)成分、(C)成分を2種類以上用いてポリエチレン系樹脂製造用触媒を調製することも可能である。
【0072】
本発明に使用するポリエチレン系樹脂(2)の重合で用いる触媒は、通常の重合プロセス、すなわちスラリー重合、気相重合、高圧重合、溶液重合、塊状重合のいずれのプロセスにも使用できる。
【0073】
本発明において重合とはエチレンの単独重合のみならず他のオレフィンとの共重合も意味し、これら重合により得られるポリエチレン系樹脂(2)は、単独重合体のみならず共重合体も含む意味で用いられる。
本発明に使用されるポリエチレン系樹脂(2)におけるエチレンの重合は、気相でも液相でも行うことができ、特に気相で重合を行う場合には、粒子形状の整ったポリエチレン系樹脂(2)を効率よく安定的に生産することができる。また、重合を液相で行う場合、用いる溶媒は、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、1−ヘキセンなどのオレフィンを溶媒として用いることもできる。
【0074】
本発明に使用するポリエチレン系樹脂(2)の重合で用いるポリエチレン系樹脂(2)のエチレンとの共重合に用いる他のオレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン、スチレンおよびスチレン誘導体、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の共役および非共役ジエン、シクロブテン等の環状オレフィン等が挙げられる。さらに、エチレンとプロピレンとスチレン、エチレンと1−ヘキセンとスチレン、エチレンとプロピレンとエチリデンノルボルネンのように、3種以上の成分を混合して重合することもできる。
【0075】
本発明に使用されるポリエチレン系樹脂(2)を製造する上で、重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件について特に制限はないが、重合温度は−100〜300℃、重合時間は10秒〜20時間、重合圧力は常圧〜3000kg/cmGの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて、2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られるポリエチレン系樹脂(2)は、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0076】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するHDPE(1)とポリエチレン系樹脂(2)の混合比率は、HDPE(1)100重量部に対して、ポリエチレン系樹脂(2)5重量部以上400重量部以下であり、好ましくは5重量部以上200重量部以下である。ポリエチレン系樹脂(2)が5重量部未満であると、溶融張力が小さくなるため、発泡成形が困難になる。また、ポリエチレン系樹脂(2)が400重量部を超えると、コストアップに繋がる上、機械的強度、耐熱性が低下する。
【0077】
HDPE(1)とポリエチレン系樹脂(2)を配合し、本発明のポリエチレン系樹脂組成物を製造する方法は、通常樹脂組成物とする際の方法を用いることができ、例えば溶融・混合方法として、押出混練、ロール混練など公知の方法を挙げることができ、該方法で溶融混練することにより得ることができる。
【0078】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、160℃における溶融張力が5mN以上300mN以下が好ましく、さらに好ましくは10mN以上300mN以下である。溶融張力が5mN以上であると、泡倍率が高い発泡シートが得られる。また、溶融張力が300mN以下であると、発泡成形における成形温度範囲が広く、外観の良好な発泡シートが得られる。
【0079】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するHDPE(1)、及びポリエチレン系樹脂(2)には、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、必要に応じて、さらに安定剤、滑剤、難燃剤、分散剤、充填剤、架橋剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、着色剤などを含有させることができる。
また、他の熱可塑性樹脂と混合して用いることもできる。これらの例として、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、これらの無水マレイン酸グラフト物等を例示することができる。
【0080】
本発明の高密度ポリエチレン押出発泡シートの発泡倍率は、1.5〜20倍である。発泡倍率が1.5倍未満であると、軽量、断熱性等の発泡化するメリットが少なく、また、20倍を超えるとこと、剛性、機械的強度が低下し、いずれも好ましくない。
【0081】
本発明の高密度ポリエチレン押出発泡シートの製造方法としては、高密度ポリエチレン押出発泡シートが得られる限りいかなる方法を用いてもよく、例えば、上記ポリエチレン系樹脂組成物と、必要に応じて添加するタルク等の気泡調整剤、収縮防止剤等とを押出機に供給し加熱溶融、混練し、更に発泡剤を供給して発泡性溶融樹脂混合物とした後、押出樹脂温度、押出ダイ内部圧力、吐出量等を調整して、押出機先端に取り付けたダイから低圧域に押出して発泡させる方法が挙げられる。
【0082】
また、押出発泡成形の際の発泡剤としては、例えば二酸化炭素、窒素、アルゴン、空気等の無機ガス発泡剤;プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン等の揮発性発泡剤;常温で液体または固体であって、加熱により気体を発生するアゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、ビウレア、炭酸亜鉛等の化学発泡剤等を挙げることができ、該発泡剤の添加量としては、本発明の高密度ポリエチレン押出発泡体を構成するポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対し0.1〜10重量部であることが好ましく、特に0.2〜5重量部の範囲であることが好ましい。
【0083】
本発明の高密度ポリエチレン押出発泡シートからなる容器を製造するための熱成形法としては、例えば真空成形や圧空成形、あるいはこれらの応用としてマッチド・モールド成形、プラグアシスト成形などの従来公知の成形法を採用することができる。
【発明の効果】
【0084】
本発明によれば、剛性に優れ、発泡倍率が高い高密度ポリエチレンの押出発泡シートが得られる。この発泡シートは従来使用されている高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンの樹脂組成物からなる押出発泡シートよりも、同発泡倍率における弾性率が高くなる。すなわち、同等の硬さの発泡体を得る場合に、発泡倍率を向上させることが可能となり、ひいては樹脂の使用量を低減することができる。本発明の高密度ポリエチレン系樹脂組成物を用いてなる発泡シート及びそれからなる容器の用途は、特に制限されず、建材、日用品等の発泡シート、および食品、各種機器の包装容器として好適に使用できる。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
【0086】
以下に、実施例および比較例で用いた測定方法を示す。
【0087】
〜エチレン系重合体の製造と評価〜
以下に、製造例を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、断りのない限り、用いた試薬等は市販品、あるいは既知の方法に従って合成したものを用いた。
【0088】
有機変性粘土の粉砕にはジェットミル(セイシン企業社製(商品名)CO−JET SYSTEM α MARK III)を用い、粉砕後の粒径はマイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製(商品名)MT3000)を用いてエタノールを分散剤として測定した。
【0089】
エチレン系重合体製造用触媒の調製、エチレン系重合体の製造および溶媒精製は全て不活性ガス雰囲気下で行った。トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(20wt%)は東ソーファインケム(株)製を用いた。
【0090】
さらに、実施例におけるエチレン系重合体の諸物性は、以下に示す方法により測定した。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)およびピークトップ分子量(Mp)は、GPCによって測定した。GPC装置(東ソー(株)製(商品名)HLC−8121GPC/HT)およびカラム(東ソー(株)製(商品名)TSKgel GMHhr−H(20)HT)を用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正した。なお、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
【0091】
密度は、JIS K6760(1995)に準拠して密度勾配管法で測定した。
【0092】
MFR(メルトフローレート)は、ASTM D1238条件Eに準ずる方法にて測定を行った。融点は、DSC(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 DSC6200)を用いて、200℃で5分保持したサンプルを−20℃まで冷却させた後、10℃/分で昇温させたときの結晶融解ピークを測定することで算出した。
【0093】
分子量分別は、カラムとしてガラスビーズ充填カラム(直径:21mm、長さ:60cm)を用い、カラム温度を130℃に設定して、サンプル1gをキシレン30mLに溶解させたものを注入する。次に、キシレン/2−エトキシエタノールの比率が5/5のものを展開溶媒として用い、留出物を除去する。その後、キシレンを展開溶媒として用い、カラム中に残った成分を留出させ、ポリマー溶液を得る。得られたポリマー溶液に5倍量のメタノールを添加しポリマー分を沈殿させ、ろ過および乾燥することにより、Mnが10万以上である成分を回収した。
【0094】
長鎖分岐数は、日本電子(株)製JNM−GSX400型核磁気共鳴装置を用いて、13C−NMRによってヘキシル基以上の分岐数を測定した。溶媒はベンゼン−d6/オルトジクロロベンゼン(体積比30/70)である。主鎖メチレン炭素(化学シフト:30ppm)1,000個当たりの個数として、α−炭素(34.6ppm)およびβ−炭素(27.3ppm)のピークの平均値から求めた。
【0095】
溶融張力の測定用試料は、サンプルに耐熱安定剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガノックス1010TM;1,500ppm、イルガフォス168TM;1,500ppm)を添加したものを、インターナルミキサー(東洋精機製作所製、商品名ラボプラストミル)を用いて、窒素気流下、190℃、回転数30rpmで30分間混練したものを用いた。
【0096】
溶融張力の測定は、バレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所、商品名キャピログラフ)に、長さが8mm,直径が2.095mmのダイスを流入角が90°になるように装着し測定した。測定温度を160℃とし、ピストン降下速度を10mm/分、延伸比を47に設定し、引き取りに必要な荷重(mN)を溶融張力とした。最大延伸比が47未満の場合、破断しない最高の延伸比での引き取りに必要な荷重(mN)を溶融張力とした。
〜発泡シートとその評価〜
50mmφの押出スクリューを有する発泡成形用押出設備(共伸機械製)を用いて、発泡シートを成形し、シート外観の観察、発泡倍率、曲げ弾性率、引裂強度、加熱寸法変化率を測定した。
【0097】
〜発泡シート性状〜
ポリエチレン系樹脂組成物を使用して成形された押出発泡シートの外観、および断面における気泡の状態を目視にて評価した。
円滑な表面の発泡体形状、均一な気泡状態…○、表面粗れが若干見られる、やや不均一な気泡状態…△、凸凹の発泡体形状、不均一な気泡状態…×
〜発泡倍率の測定〜
発泡成形体の見かけ比重を比重計(新光電子(株)製、商品名: DME−220H)で測定し、組成物の密度との比から発泡倍率を求めた。
〜曲げ弾性率の測定〜
発泡成形体の曲げ弾性率はJIS K7171に準拠して、万能試験機((株)島津製作所製、商品名:オートグラフ AGS−H 50N)を用いて測定した。
【0098】
〜引裂強度の測定〜
発泡成形体の引裂強度はJIS K6767に準拠して、万能試験機((株)エー・アンド・ディー、商品名:テンシロン万能試験機 RTG−1210)を用いて測定した。
【0099】
〜加熱寸法変化率の測定〜
発泡成形体の加熱寸法変化率はJIS K6767に準拠して、測定した。
【0100】
〜発泡容器とその評価〜
発泡シートをそれぞれ長径100mm、深さ50mmの金型を設置した真空成形機にて成形サイクル15秒、成形ヒーター温度400℃にて成形を行ない、10ショットにて容器の破れや亀裂の発生を調べた。
○:10ショット全てで破れや亀裂が発生していない。
×:10ショット中1つ以上で破れや亀裂が発生している。
【0101】
製造例1
(1)粘土の変性
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより122gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを0.2923g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:9.74wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を146mg(固形分14.2mg相当)加え、65℃に昇温後、1−ブテンを17.5g加え、分圧が0.75MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:540ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで13.5gのポリマーを得た(活性:950g/g触媒)。このポリマーのMFRは0.60g/10分、密度は935.8kg/mであり、融点は121.9℃であった。また、数平均分子量は15,700、重量平均分子量は104,000であり、分子量30,300および205,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.03個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.16個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの16.7wt%であった。また、溶融張力は90mNであった。
【0102】
製造例2
(1)粘土の変性
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸18.8g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)53.0g(150mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより135gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを0.3485g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:10.7wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を75mg(固形分8.0mg相当)加え、85℃に昇温後、分圧が1.20MPaになるようにエチレンガスを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで63.2gのポリマーを得た(活性:7,900g/g触媒)。このポリマーのMFRは0.25g/10分、密度は954.2kg/mであり、融点は131.5℃であった。また、数平均分子量は11,400、重量平均分子量は43,000であり、分子量18,100および189,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.05個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.17個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの9.2wt%であった。また、溶融張力は 95mNであった。
【0103】
製造例3
(1)粘土の変性
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸12.5g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)35.3g(100mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより118gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(4,7−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドを0.4266g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.5wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を105mg(固形分13.1mg相当)加え、85℃に昇温後、分圧が0.90MPaになるようにエチレンガスを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで50.2gのポリマーを得た(活性:3,800g/g触媒)。このポリマーのMFRは9.9g/10分、密度は955.5kg/mであり、融点は134.5℃であった。また、数平均分子量は17、900、重量平均分子量は65、800であり、分子量36,500および297,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.10個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.20個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの7.7wt%であった。また、溶融張力は30mNであった。
【0104】
製造例4
(1)粘土の変性
実施例1と同様に行った。
(2)触媒懸濁液の調製
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド/0.2923gの代わりに、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド/0.4406gを用いた以外は、実施例1と同様に実施した(固形重量分:11.5wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を90mg(固形分10.4mg相当)加え、65℃に昇温後、1−ブテンを17.5g加え、分圧が0.75MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:550ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで61.4gのポリマーを得た(活性:5,900g/g触媒)。このポリマーのMFRは0.078g/10分、密度は926.1kg/mであり、融点は112.8℃であった。また、数平均分子量は21,900、重量平均分子量は127,000であり、分子量31,300および248,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.17個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.32個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの36.9wt%であった。また、溶融張力は140mNであった。
【0105】
製造例5
(1)粘土の変性
実施例1と同様に行った。
(2)触媒懸濁液の調製
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド/0.2923gの代わりに、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド/0.5447gを用いた以外は、実施例1と同様に実施した(固形重量分:10.9wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を86mg(固形分9.4mg相当)加え、65℃に昇温後、1−ブテンを17.5g加え、分圧が0.75MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:610ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで17.9gのポリマーを得た(活性:1,900g/g触媒)。このポリマーのMFRは5.0g/10分、密度は910.3kg/mであり、融点は79.7℃および99.3℃であった。また、数平均分子量は28,000、重量平均分子量は82,300であり、分子量42,500および261,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.25個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.40個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの39.8wt%であった。また、溶融張力は45mNであった。
【0106】
製造例6
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
実施例4と同様に行った。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を64mg(固形分7.3mg相当)加え、70℃に昇温後、1−ブテンを17.6g加え、分圧が0.80MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:570ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで61.7gのポリマーを得た(活性:8,500g/g触媒)。このポリマーのMFRは1.4g/10分、密度は929.0kg/mであり、融点は116.8℃であった。また、数平均分子量は19,500、重量平均分子量は92,700であり、分子量31,200および183,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.16個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.31個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの21.8wt%であった。また、溶融張力は78mNであった。
【0107】
製造例7
(1)粘土の変性
実施例2と同様に行った。
(2)触媒懸濁液の調製
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド/0.3485gの代わりに、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド/0.4406gを用いた以外は、実施例2と同様に実施した(固形重量分:11.9wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を54mg(固形分6.4mg相当)加え、70℃に昇温後、1−ブテンを17.6g加え、分圧が0.80MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:580ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで37.6gのポリマーを得た(活性:5,900g/g触媒)。このポリマーのMFRは0.068g/10分、密度は925.3kg/mであり、融点は114.4℃であった。また、数平均分子量は26,300、重量平均分子量は146,000であり、分子量42,800および261,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.20個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.37個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの32.7wt%であった。また、溶融張力は150mNであった。
【0108】
製造例8
(1)粘土の変性
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸17.5g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)49.4g(140mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより132gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドを0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.4wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を52mg(固形分6.4mg相当)加え、70℃に昇温後、1−ブテンを17.6g加え、分圧が0.80MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:590ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで61.8gのポリマーを得た(活性:9,700g/g触媒)。このポリマーのMFRは1.6g/10分、密度は929.5kg/mであり、融点は118.3℃であった。また、数平均分子量は17,600、重量平均分子量は86,700であり、分子量30,500および155,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.14個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.27個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの20.1wt%であった。また、溶融張力は75mNであった。
【0109】
製造例9
(1)粘土の変性
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸20.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)56.5g(160mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより145gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドを0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:11.2wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を74mg(固形分8.3mg相当)加え、65℃に昇温後、1−ブテンを17.5g加え、分圧が0.75MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:570ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで51.5gのポリマーを得た(活性:6,200g/g触媒)。このポリマーのMFRは0.79g/10分、密度は928.2kg/mであり、融点は115.0℃であった。また、数平均分子量は17,900、重量平均分子量は99,300であり、分子量28,100および229,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.14個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.26個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの25.4wt%であった。また、溶融張力は90mNでった。
【0110】
製造例10
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
製造例4と同様に行った。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を125mg(固形分15.0 mg相当)加え、65℃に昇温後、1−ブテンを17.5g加え、分圧が0.75MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:1,000ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで75.0gのポリマーを得た(活性:5,000g/g触媒)。このポリマーのMFRは1.0g/10分、密度は920.0kg/mであり、融点は107.9℃であった。また、数平均分子量は20,700、重量平均分子量は106,000であり、分子量32,400および250,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.19個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.34個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの24.6wt%であった。また、溶融張力は81mNであった。
【0111】
製造例11
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
製造例4と同様に行った。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を58mg(固形分7.0mg相当)加え、80℃に昇温後、1−ブテンを8.3g加え、分圧が0.85MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:850ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで49.0gのポリマーを得た(活性:7,000g/g触媒)。このポリマーのMFRは3.7g/10分、密度は939.4kg/mであり、融点は125.4℃であった。また、数平均分子量は20,300、重量平均分子量は75,200であり、分子量40,700および216,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.06個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.17個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの14.3wt%であった。また、溶融張力は50mNであった。
【0112】
製造例12
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
製造例4と同様に行った。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を60mg(固形分7.2mg相当)加え、80℃に昇温後、1−ブテンを8.3g加え、分圧が0.85MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:350ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで54.0gのポリマーを得た(活性:7,500g/g触媒)。このポリマーのMFRは0.35g/10分、密度は935.2kg/mであり、融点は124.7℃であった。また、数平均分子量は35,500、重量平均分子量は124,000であり、分子量71,200および338,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.10個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.20個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの17.0wt%であった。また、溶融張力は95mNであった。
【0113】
製造例13
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
製造例4と同様に行った。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を70mg(固形分8.4mg相当)加え、80℃に昇温後、1−ブテンを2.4g加え、分圧が0.90MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:750ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで63.0gのポリマーを得た(活性:7,500g/g触媒)。このポリマーのMFRは16g/10分、密度は953.5kg/mであり、融点は135.2℃であった。また、数平均分子量は15,500、重量平均分子量は52,700であり、分子量27,900および179,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.05個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.16個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの6.5wt%であった。また、溶融張力は35mNであった。
【0114】
製造例14
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
製造例4と同様に行った。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を70mg(固形分8.4mg相当)加え、80℃に昇温後、分圧が0.90MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:550ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで58.8gのポリマーを得た(活性:7,000g/g触媒)。このポリマーのMFRは5.9g/10分、密度は958.7kg/mであり、融点は136.7℃であった。また、数平均分子量は16,700、重量平均分子量は58,500であり、分子量30,100および177,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.04個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.15個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの5.7wt%であった。また、溶融張力は40mNであった。
【0115】
製造例15
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
製造例4と同様に行った。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を60mg(固形分6.9mg相当)加え、80℃に昇温後、1−ブテンを2.3g加え、分圧が0.85MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:800ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで58.7gのポリマーを得た(活性:8,500g/g触媒)。このポリマーのMFRは5.5g/10分、密度は950.1kg/mであり、融点は126.0℃であった。また、数平均分子量は17,300、重量平均分子量は60,100であり、分子量30,500および187,000の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.05個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.15個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの6.3wt%であった。また、溶融張力は45mNであった。
【0116】
製造例16
粘土の変性
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF−3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸18.8g及びメチルジオレイルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンM2O)53.1g(100mmol)を添加し、45℃に加熱して(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRD)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。
このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより138gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を12μmとした。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(4,7−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドを0.4266g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.0wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を66mg(固形分7.9mg相当)加え、70℃に昇温後、1−ブテンを23.8g加え、分圧が1.20MPaになるようにエチレンガスを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで43.6gのポリマーを得た(活性:5,500g/g触媒)。このポリマーのMFRは72g/10分、密度は953.5kg/mであり、融点は113.7℃であった。また、数平均分子量は15,600、重量平均分子量は37,300であり、分子量30,300の位置にのみピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.01個未満であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.01個未満であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの5.0wt%であった。また、溶融張力は5mN未満であった。
【0117】
製造例17
(1)粘土の変性
製造例16と同様に行った。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを0.3485g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.0wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を93mg(固形分11.2mg相当)加え、85℃に昇温後、1−ブテンを15.8g加え、分圧が1.20MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで67.0gのポリマーを得た(活性:6,000g/g触媒)。このポリマーのMFRは200g/10分以上であり、密度は954.7kg/mであり、融点は135.6℃であった。数平均分子量は8,930、重量平均分子量は18,000であり、分子量12,900の位置にのみピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.01個未満であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションは得られなかった。また、溶融張力は5mN未満であった。
【0118】
製造例18
(1)粘土の変性
(2)触媒懸濁液の調製
製造例16と同様に行った。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を105mg(固形分12.6mg相当)加え、85℃に昇温後、分圧が0.90MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで78.1gのポリマーを得た(活性:6,200g/g触媒)。このポリマーのMFRは200g/10分以上であり、密度は948.9、融点は135.0℃であった。数平均分子量は8,700、重量平均分子量は20,000であり、分子量13,100の位置にのみピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.01個未満であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションは得られなかった。また、溶融張力は5mN未満であった。
【0119】
製造例19
(1)粘土の変性
製造例16と同様に行った
(2)触媒懸濁液の調製
製造例17と同様に行った。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を110mg(固形分13.2mg相当)加え、85℃に昇温後、分圧が1.20MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで72.6gのポリマーを得た(活性:5,500g/g触媒)。このポリマーのMFRは200g/10分以上であり、密度は943.5kg/mであり、融点は132.0℃であった。数平均分子量は9,050、重量平均分子量は 19,900であり、分子量13,600の位置にのみピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.01個未満であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションは得られなかった。また、溶融張力は5mN未満であった。
【0120】
製造例20
(1)粘土の変性
製造例16と同様に行った。
(2)触媒懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gをヘキサン165mLに懸濁させ、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドを0.4406gおよびトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.18M)85mLを添加して60℃で3時間撹拌した。静置して室温まで冷却後に上澄み液を抜き取り、1%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液200mLにて2回洗浄した。洗浄後の上澄み液を抜き出し、5%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液にて全体を250mLとした。次いで、別途ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド0.062gのヘキサン10mL懸濁液に20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.71M)5mlを加えることにより調製した溶液を添加して、室温で6時間撹拌した。静置して上澄み液を除去、ヘキサン200mLにて2回洗浄後、ヘキサンを200mL加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.0wt%)。
(3)重合
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、(2)で得られた触媒懸濁液を92mg(固形分11.0mg相当)加え、85℃に昇温後、1−ブテンを16.6g加え、分圧が0.80MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで59.7gのポリマーを得た(活性:5,430g/g触媒)。このポリマーのMFRは12g/10分であり、密度は 932.3kg/mであり、融点は119.8℃であった。数平均分子量は19,600、重量平均分子量は74,300であり、分子量35,500の位置にピークが観測された。また、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.04個であり、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.07個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの12.5wt%であった。また、溶融張力は15mNであった。
【0121】
実施例1
[ポリエチレン系樹脂組成物の製造]
HDPE(東ソー社製、商品名 ニポロンハード 4000)(1) 100重量部に対してと製造例1で製造したポリエチレン系樹脂(2) 25重量部をドライブレンドし、これをプラコー社製50mm径単軸押出機にて溶融混合した。バレルの温度はC1;180℃、C2;200℃、C3;200℃、ダイヘッド;200℃とした。このポリエチレン系樹脂組成物ペレットを押出発泡に用いた。用いたHDPE(1)、およびポリエチレン系樹脂(2)の物性を表1、得られたポリエチレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
[発泡シートの成形]
[ポリエチレン系樹脂組成物の製造]で製造した樹脂組成物に、さらに発泡核剤として重曹系発泡剤マスターバッチ(商品名:EE275F、永和化成製)を0.3重量部の割合で加え、ドライブレンドし、発泡成形用樹脂組成物を調製した。そして、バレルの途中に揮発性液体注入用のバレル孔を有する単軸押出機(スクリュー径50mmφ、L/D=36、共伸機械製)の発泡成形用押出設備を用い、発泡成形用樹脂組成物を15kg/時で供給し、溶融混練を行った後、圧縮された液状二酸化炭素を70g/時でバレル孔から圧入して、該液状二酸化炭素を分散させ、175℃に設定したスリットダイ(幅500mm)によりシート状の発泡成形体を押出した。ロールで冷却し発泡シートを得た。
【0122】
この発泡シートの発泡倍率、曲げ弾性率、引裂強度、加熱寸法変化率を測定した。また、シートの外観を観察した。これらの結果を表3に示す。
[容器の成形]
発泡シートをそれぞれ長径100mm、深さ50mmの金型を設置した真空成形機にて成形サイクル15秒、成形ヒーター温度400℃にて成形を行ない、10ショットにて容器の破れや亀裂の発生を調べた。これらの結果を表3に示す。
【0123】
実施例2〜11
HDPE(1)、ポリエチレン系樹脂(2)を表1,2の樹脂に変え、ブレンド比率を表3,4の比率に変えた以外は実施例1と同様に行った。HDPE(1)、ポリエチレン系樹脂(2)の物性を表1,2に、得られたポリエチレン系樹脂組成物の物性、および発泡シート、容器の評価結果を表3,4に示す。
【0124】
実施例12
[ポリエチレン系樹脂組成物の製造]
HDPE(1)、ポリエチレン系樹脂(2)を表2の樹脂に変え、ブレンド比率を表4の比率に変えた以外は実施例1と同様に溶融混合した。用いたHDPE(1)、およびポリエチレン系樹脂(2)の物性を表2、得られたポリエチレン系樹脂組成物の物性を表4に示す。
[発泡シートの成形]
[ポリエチレン系樹脂組成物の製造]で製造した樹脂組成物に、さらに発泡核剤として重曹系発泡剤マスターバッチ(商品名:EE275F、永和化成製)を3重量部の割合で加え、ドライブレンドし、発泡成形用樹脂組成物を調製した。そして、単軸押出機(スクリュー径50mmφ、L/D=36、共伸機械製)の発泡成形用押出設備を用い、発泡成形用樹脂組成物を15kg/時で供給し、溶融混練を行った後、180℃に設定したスリットダイ(幅500mm)によりシート状の発泡成形体を押出した。ロールで冷却し発泡シートを得た。
【0125】
この発泡シートの見掛け比重、曲げ弾性率、加熱寸法変化率を測定した。また、シートの外観を観察した。これらの結果を表4に示す。
[容器の成形]
[発泡シートの成形]で成形した発泡シートを用いた以外、以外は実施例1と同様に成形を行い、10ショットにて容器の破れや亀裂の発生を調べた。これらの結果を表4に示す。
【0126】
比較例1
ポリエチレン系樹脂(2)を用いず、HDPE(1)のみからなるポリエチレン系樹脂組成物を用いたこと以外、実施例1と同様に行った。HDPE(1)の物性を表5に、得られたポリエチレン系樹脂組成物の物性、および発泡シート、容器の評価結果を表7に示す。
【0127】
比較例2〜13
HDPE(1)、ポリエチレン系樹脂(2)を表5,6の樹脂に変え、ブレンド比率を表7,8の比率に変えた以外は実施例1と同様に行った。HDPE(1)、ポリエチレン系樹脂(2)の物性を表5,6に、得られたポリエチレン系樹脂組成物の物性、および発泡シート、容器の評価結果を表7,8に示す。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

【0131】
【表4】

【0132】
【表5】

【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【0135】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも密度が935〜970kg/m、分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中の長鎖分岐は主鎖1000炭素数あたり0.10個以下である高密度ポリエチレン(1)と密度が910〜970kg/m、メルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる分子量測定において2つのピークを示し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.0〜7.0の範囲であり、かつ分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中の長鎖分岐数が主鎖1000炭素数あたり0.15個以上有するポリエチレン系樹脂(2)を含み、該高密度ポリエチレン(1)100重量部に対し、該ポリエチレン系樹脂(2)を5重量部以上400重量部以下含むことを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエチレン系樹脂(2)のMw/Mnが3.0〜6.0の範囲であり、Mnが15,000以上であることを特徴とする請求項1のポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂組成物からなり、発泡倍率が1.5〜20倍であることを特徴とする高密度ポリエチレン押出発泡シート。
【請求項4】
請求項3に記載の高密度ポリエチレン押出発泡シートを熱成形して得られる容器。

【公開番号】特開2013−100418(P2013−100418A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245428(P2011−245428)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】