説明

ポリエチレン系樹脂組成物、発泡体及びその製造方法

【課題】 発泡倍率が高く、圧縮耐久性、二次加工性に優れる発泡体を提供し得るポリエチレン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ASTM 1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、160℃における溶融張力が40mN以上で、歪硬化性を有し、JIS K6760に準拠した密度が920kg/m以上950kg/m以下のエチレン・α−オレフィン共重合体(イ)95〜30重量%、と高圧法低密度ポリエチレン(ロ)5〜70重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂組成物に関するものである。更に詳細には、特定のエチレン・α−オレフィン共重合体と高圧法低密度ポリエチレンとからなるポリエチレン系樹脂組成物、圧縮耐久性及び二次加工性に優れた発泡体、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂の発泡体は、緩衝材、クッション材、衝撃吸収材などを中心に幅広く用いられており、非架橋発泡体と架橋発泡体に大別される。近年、環境負荷低減の観点から、プラスチック材料のリサイクル性向上への関心が高まっており、ポリエチレン系樹脂の発泡体においても架橋品の非架橋化への要求が高まっている。非架橋で高発泡倍率のポリエチレン系樹脂の発泡体を製造する場合には、溶融張力が高いポリエチレンが必要となるため、高圧法により製造される長鎖分岐を有する低密度ポリエチレン(以下、高圧法低密度ポリエチレン)が使用されることが公知である。高圧法低密度ポリエチレンからなる非架橋発泡体は、柔軟で圧縮耐久性に優れることから、繰り返し圧縮される用途(緩衝材など)に好適に利用される一方、熱成形などの二次加工時に急激な粘度変化が生じるため、成形の温度範囲が非常に狭いという欠点があった。このような問題を解決するために、高圧法低密度ポリエチレンと、直鎖状低密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンを混合して用いる(例えば、特許文献1、2参照)ことが提案されている。また、本発明者らは、特定の要件を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体が発泡性、及び押出発泡成形性に優れることを見出している(例えば、特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−222222号公報
【特許文献2】特開2006−274038号公報
【特許文献3】特開2006−096910号公報
【特許文献4】特開2006−199872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1、2で提案されている方法においては、溶融張力が低く、発泡性を示さない直鎖状のポリエチレンを使用する必要があり、繰り返し圧縮時の可撓性が損なわれるため、頻繁に圧縮を受ける緩衝材用途への応用が困難であった。本発明の目的は、上記従来技術の欠点を克服し、発泡倍率が高く、圧縮耐久性、二次加工性に優れる非架橋ポリエチレン発泡体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ASTM 1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、160℃における溶融張力が40mN以上で、歪硬化性を有し、JIS K6760に準拠した密度が920kg/m以上950kg/m以下のエチレン・α−オレフィン共重合体と高圧法低密度ポリエチレンからなるポリエチレン系樹脂組成物が発泡性に優れ、該ポリエチレン系樹脂組成物を発泡成形することにより、圧縮耐久性、二次加工性に優れた非架橋ポリエチレン発泡体が得られることを見出し、本発明を完成させるに到った。すなわち、本発明は、ASTM 1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、160℃における溶融張力が40mN以上で、歪硬化性を有し、JIS K6760に準拠した密度が920kg/m以上950kg/m以下のエチレン・α−オレフィン共重合体(イ)95〜30重量%、と高圧法低密度ポリエチレン(ロ)5〜70重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物、を要旨とする。
【0006】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体は、ASTM 1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、160℃における溶融張力が40mN以上で、歪硬化性を有し、JIS K6760に準拠した密度が920kg/m以上950kg/m以下のエチレン・α−オレフィン共重合体の範疇に属するものであれば如何なるエチレン・α−オレフィン共重合体であってもよい。また、市販品として入手したものであってもよく、例えば(商品名)TOSOH−HMS JK46(東ソー(株)製)、(商品名)TOSOH−HMS JK25(東ソー(株)製)等を市販品として挙げることができる。
【0007】
また、以下の方法により製造することができる。例えば、特開平7−252311号、特開2004−346304号公報、特開2005−248013号公報、特開2006−2057号公報、特開2006−321991号公報、特開2007−169341号公報、特開2010−43152号公報、特開2011−89019号公報、特開2011−89020号公報に記載の重合触媒の存在下に、エチレンを重合する、またはエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンを共重合する方法を用いることができる。
【0008】
より具体的には、例えばメタロセン化合物として、2つの置換または非置換シクロペンタジエニル基が架橋基で架橋されている架橋型ビス(置換または非置換シクロペンタジエニル)ジルコニウム錯体および/または架橋型(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウム錯体(以下、成分(a)と記す。)と、架橋型(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体および/または架橋型(インデニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体(以下、成分(b)と記す。)を用いたメタロセン触媒の存在下に、エチレンを重合する、またはエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンを共重合する方法を用いることができる。
【0009】
成分(a)の具体例としては、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1−ジメチル−1−シラエタン−1,2−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、プロパン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ブタン−1,4−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、シス−2−ブテン−1,4−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1,2,2−テトラメチルジシラン−1,2−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができる。また上記遷移金属化合物のシクロペンタジエニル誘導体の水素が炭化水素基で置換されたもの、中心金属のジルコニウム原子をチタン原子またはハフニウム原子に置換した化合物も例示することもできる。
【0010】
成分(b)の具体例としては、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−トリメチルシリル−1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができる。また上記遷移金属化合物のシクロペンタジエニル誘導体の水素が炭化水素基で置換されたもの、中心金属のジルコニウム原子をチタン原子またはハフニウム原子に置換した化合物も例示することもできる。
【0011】
また、成分(a)に対する成分(b)の量は、特に制限はなく、0.0001〜100倍モルであることが好ましく、特に好ましくは0.001〜10倍モルである。
【0012】
そして、成分(a)と成分(b)を用いたメタロセン触媒としては、例えば成分(a)と成分(b)と有機アルミニウム化合物(以下、成分(c)と記す。)からなる触媒;成分(a)と成分(b)とアルミノオキサン(以下、成分(d)と記す。)からなる触媒;さらに成分(c)を含んでなる触媒;成分(a)と成分(b)とプロトン酸塩(以下、成分(e)と記す。)、ルイス酸塩(以下、成分(f)と記す。)または金属塩(以下、成分(g)と記す。)から選ばれる少なくとも1種類の塩からなる触媒;さらに成分(c)を含んでなる触媒;、成分(a)と成分(b)と成分(d)と無機酸化物(以下、成分(h)と記す。)からなる触媒;成分(a)と成分(b)と成分(h)と成分(e)、成分(f)、成分(g)から選ばれる少なくとも1種類の塩からなる触媒;さらに成分(c)を含んでなる触媒;成分(a)と成分(b)と粘土鉱物(以下、成分(i)と記す。)と成分(c)からなる触媒;成分(a)と成分(b)と有機化合物で処理された粘土鉱物(以下、成分(j)と記す。)からなる触媒を例示することができ、好ましくは成分(a)と成分(b)と成分(j)からなる触媒を用いることができる。
【0013】
ここで、成分(i)および成分(j)として用いることが可能な粘土鉱物としては、微結晶状のケイ酸塩を主成分とする微粒子を挙げることができ、粘土鉱物の大部分は、その構造上の特色として層状構造を成しており、層の中に種々の大きさの負電荷を有することが挙げられる。この点で、シリカやアルミナのような三次元構造を持つ金属酸化物と大きく異なる。これらの粘土鉱物は、一般に層電荷の大きさで、パイロフィライト、カオリナイト、ディッカイトおよびタルク群(化学式当たりの負電荷がおよそ0)、スメクタイト群(化学式当たりの負電荷がおよそ0.25から0.6)、バーミキュライト群(化学式当たりの負電荷がおよそ0.6から0.9)、雲母群(化学式当たりの負電荷がおよそ1)、脆雲母群(化学式当たりの負電荷がおよそ2)に分類されている。ここで示した各群には、それぞれ種々の粘土鉱物が含まれるが、スメクタイト群に属する粘土鉱物としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト等が挙げられる。また、上記粘土鉱物は複数混合して用いることもできる。
【0014】
成分(j)における有機化合物処理とは、粘土鉱物層間に有機イオンを導入し、イオン複合体を形成することをいう。有機化合物処理で用いられる有機化合物としては、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−エイコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−ドコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルオレイルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−オクタデシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−エイコシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ジオレイルアミン塩酸塩、N−メチル−ジベヘニルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルアニリン塩酸塩を例示することができる。
【0015】
成分(a)と成分(b)と成分(j)からなる触媒は、有機溶媒中、成分(a)と成分(b)と成分(j)を接触させることによって得ることが可能であり、成分(a)と成分(j)の接触生成物に成分(b)を添加する方法;成分(b)と成分(j)の接触生成物に成分(a)を添加する方法;成分(a)と成分(b)の接触生成物に成分(j)を添加する方法;成分(j)に成分(a)と成分(b)の接触生成物を添加する方法を例示することができる。
【0016】
接触溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタンもしくはシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテルもしくはn−ブチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレンもしくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、1,4−ジオキサン、アセトニトリルまたはテトラヒドロフランを例示することができる。
【0017】
接触温度については、0〜200℃の間で選択して処理を行うことが好ましい。
【0018】
各成分の使用量は、成分(j)1gあたり成分(a)が、0.0001〜100mmol、好ましくは0.001〜10mmolである。
【0019】
このようにして調製された成分(a)と成分(b)と成分(j)の接触生成物は、洗浄せずに用いても良く、また洗浄した後に用いても良い。また、成分(a)または成分(b)がジハロゲン体の時、さらに成分(c)を添加することが好ましい。また、成分(j)、重合溶媒およびオレフィン中の不純物を除去することを目的に成分(c)を添加することができる。
【0020】
該エチレン・α−オレフィン共重合体を製造する際には、重合温度−100〜120℃で行うことが好ましく、特に生産性を考慮すると20〜120℃が好ましく、さらには60〜120℃の範囲で行うことが好ましい。また、重合時間は10秒〜20時間の範囲が好ましく、重合圧力は常圧〜300MPaの範囲で行うことが好ましい。重合性単量体としては、エチレン単独又はエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンであり、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンである場合、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンの供給割合として、エチレン/炭素数3〜8のα−オレフィン(モル比)が、1〜200、好ましくは3〜100、さらに好ましくは5〜50の供給割合を用いることができる。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段階以上に分けて行うことも可能である。また、エチレン・α−オレフィン共重合体は、重合終了後に従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0021】
重合はスラリー状態、溶液状態または気相状態で実施することができ、特に、重合をスラリー状態で行う場合にはパウダー粒子形状の整ったエチレン・α−オレフィン共重合体を効率よく、安定的に生産することができる。また、重合に用いる溶媒は一般に用いられる有機溶媒であればいずれでもよく、具体的には例えばベンゼン、トルエン、キシレン、プロパン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ガソリン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0022】
ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRが0.1g/10分未満である場合、ポリエチレン系樹脂組成物として成形する際の押出機の負荷が大きくなり、生産性が低下する。一方、50g/10分以上の場合、発泡性、機械強度に劣るポリエチレン系樹脂組成物しか得られない。また、溶融張力が40mN未満のエチレン・α−オレフィン共重合体である場合、発泡成形時のガス抜けが大きくなり、発泡倍率が低下し、製品形状の制御が困難となり、安定して発泡成形体を得ることができなくなる。さらに、歪硬化性を示さないエチレン・α−オレフィン共重合体である場合、押出発泡成形体とした際に、気泡が合一したものとなり、均一で微細な気泡を有する押出成形発泡体とはならない。密度が950kg/mを超える場合、高圧法低密度ポリエチレンとブレンドして得られるポリエチレン系樹脂組成物の柔軟性が乏しく、発泡体とした際の圧縮耐久性に劣るものとなる。密度が920kg/m未満の場合、得られるポリエチレン系樹脂組成物の柔軟性は優れるものの剛性に劣り、薄肉の発泡体とした際に、発泡体のたわみが大きく二次加工する際に問題となる。以上、本発明に使用するエチレン・α−オレフィン共重合体(イ)は特定の構造を有し、高圧法低密度ポリエチレンとブレンドして得られるポリエチレン系樹脂組成物を発泡成形することにより、圧縮耐久性および二次加工性に優れた発泡体となる。
【0023】
尚、本発明におけるMFRは、ASTM 1238に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定することがきる。また、溶融張力は、(商品名)キャピログラフ(東洋精機製作所製)を用い。190℃で長さ(L)が8mm,直径(D)が2.095mmのダイから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを10m/分で引き取り、引き取り荷重を溶融張力として測定することができる。歪硬化性は、マイスナー型一軸伸長粘度計を用いて、160℃で、ひずみ速度0.07〜0.1s−1の条件で測定した伸長粘度の最大値を、その時間の線形領域の伸長粘度で除した値を非線形パラメーターλと定義し、λが1を超えること歪硬化性があると確認できる。なお、M. Yamaguchi et al.Polymer Journal 32,164(2000).に記載のように、線形領域の伸長粘度は動的粘弾性より計算できる。λが1の場合、歪硬化性がないと判断できる。
【0024】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(イ)の重量平均分子量(Mw)とMnの比(Mw/Mn)は3.0〜6.0が好ましく、更に好ましくは3.5〜5.5である。Mw/Mnがこの範囲であると、良好な発泡性と発泡成形性が得られるため、好ましい。GPCにより測定した数平均分子量(Mn)は15,000以上であることが好ましく、さらに好ましくは15,000〜100,000、特に15,000〜50,000が好ましい。Mnが15,000以上である場合、得られる発泡成形体の機械強度が高くなる。
【0025】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(イ)には、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、抗ブロッキング剤、スリップ剤、滑剤、核剤、顔料、カーボンブラック、タルク、ガラス粉、ガラス繊維等の無機充填剤または補強剤、有機充填剤または補強剤、難燃剤、中性子遮蔽剤等の公知の添加剤を配合することができる。
【0026】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成する高圧法低密度ポリエチレン(ロ)は、JIS K7676を準拠し測定した密度が919kg/m以上が好ましく、特に好ましくは925kg/m以上の高圧法低密度ポリエチレンであり、そのような高圧法低密度ポリエチレンとして市販品を用いることが可能であり、例えばエチレンを高圧ラジカル重合法により重合することにより製造することが可能である。ここで、密度が919kg/m以上の場合、本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体とした際の二次加工性が良好となる。
【0027】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成する高圧法低密度ポリエチレン(ロ)は、190℃、2160g荷重におけるMFRが、0.1〜100g/10分が好ましく、特に1〜50g/10分が好ましい。ここで、MFRが0.1〜100g/10分である場合、発泡性と加工性の両立が可能となる。
【0028】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(イ)と高圧法低密度ポリエチレン(ロ)の混合比率は、95/5〜30/70(重量%)、好ましくは90/10〜40/60(重量%)、更に好ましくは85/15〜50/50(重量%)である。エチレン・α−オレフィン共重合体(イ)の比率が95重量%を超えると、得られるポリエチレン系樹脂組成物を発泡体とした際の圧縮耐久性が劣るものとなる。また、エチレン・α−オレフィン共重合体の比率が30重量%より少ないと熱成形などの二次加工性に問題が生じる。
【0029】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(イ)と高圧法低密度ポリエチレン(ロ)を配合する際には、通常樹脂組成物とする際の方法を用いることができ、例えば溶融・混合方法として、押出混練、ロール混練など公知の方法を挙げることができ、該方法で溶融混練することにより得ることができる。
【0030】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物には、さらに本発明の要旨を逸脱しない範囲において、必要に応じて、安定剤、滑剤、難燃剤、分散剤、充填剤、発泡剤、発泡核剤、架橋剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、着色剤などを含有させることができる。また、他の熱可塑性樹脂と混合して用いることもできる。これらの例として、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、これらの無水マレイン酸グラフト物等を例示することができる。
【0031】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体は、発泡倍率が3倍以上である。ここで、発泡倍率が3倍未満の場合、発泡体の圧縮耐久性に問題が生じる。
【0032】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体の製造方法としては、発泡体が得られる限りいかなる方法を用いてもよく、例えば、本発明のポリエチレン系樹脂組成物と、必要に応じて添加するタルク等の気泡調整剤、収縮防止剤等とを押出機に供給し加熱溶融、混練し、更に発泡剤を供給して発泡性溶融樹脂混合物とした後、押出樹脂温度、押出ダイ内部圧力、吐出量等を調整して、押出機先端に取り付けたダイから低圧域に押出して発泡させる方法が挙げられる。また、目的とする発泡体の形状に応じて、押出機先端に取り付けるダイを選択することにより、丸棒状発泡体、シート状発泡体、板状発泡体、などの各種形状の押出発泡体を製造することができる。例えば、ストランドダイを取り付ければ丸棒状の発泡体を得ることができ、環状ダイを取り付ければシート状の発泡体を得ることができ、スリットダイを取り付ければ板状の発泡体を製造することができる。
【0033】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体は、本発明のポリエチレン系樹脂組成物、添加剤、発泡剤等を押出機に供給し、加熱溶融混練して発泡性溶融樹脂混合物とした後、押出樹脂温度を適正範囲内に調節して押出機から低圧域に押出すことによって形成することができる。具体的な押出樹脂温度は、本発明のポリエチレン系樹脂組成物の融点を基準として、発泡性溶融樹脂の押出樹脂温度を(ポリエチレン系樹脂組成物の融点−10℃)〜(ポリエチレン系樹脂組成物の融点+10℃)の範囲内に調節することが好ましく、(ポリエチレン系樹脂組成物の融点−5℃)〜(ポリエチレン系樹脂組成物の融点+5℃)の範囲内に調節することがより好ましい。本発明のポリエチレン系樹脂組成物の融点は、JIS K7121(1987)に基づいて熱流束DSC曲線により一定の熱処理を行なった試験片から求められるピークの頂点温度とする。尚、二つ以上のピークが現れる場合は、ピーク面積の最も大きな主ピークの頂点温度を融点とする。また、押出発泡成形の際の発泡剤としては、例えば二酸化炭素、窒素、アルゴン、空気等の無機ガス発泡剤;プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン等の揮発性発泡剤;常温で液体または固体であって、加熱により気体を発生するアゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、ビウレア、炭酸亜鉛等の化学発泡剤等を挙げることができ、該発泡剤の添加量としては、本発明ポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対し1〜20重量部であることが好ましく、特に5〜15重量部の範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体の用途は、特に制限されず、緩衝用容器、建材、暖房機器などの断熱成形体として好適に使用できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、発泡倍率が高く、圧縮耐久性、二次加工性に優れる発泡体を提供し得るポリエチレン樹脂組成物を得ることができる。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
【0037】
以下に、実施例および比較例で用いた測定方法を示す。
【0038】
〜MFRの測定〜
ASTM 1238に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定した。
【0039】
〜溶融張力の測定〜
キャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用した。190℃で、長さ(L)が8mm,直径(D)が2.095mmのダイから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを10m/分で引き取り、引き取り荷重を溶融張力とした。
【0040】
〜歪硬化性の測定〜
温度160℃に設定したマイスナー型一軸伸長粘度計(東洋精機製作所製、商品名:メルテンレオメーター)を用いて測定した。非線型パラメータ(λ)は、ひずみ速度0.07〜0.1s−1の条件で測定した伸長粘度の最大値を、その時間の線形領域の伸長粘度で除した値として求めた。なお、線形領域における伸長粘度の値は、福田猛著,新高分子実験学1,高分子実験の基礎,分子特性解析,“3−4.分子形状および形態”,295(1994).に記載の方法に従い、動的粘弾性より近似式を用いて計算した。得られたλが1を越える場合は歪硬化性ありと判断した。
【0041】
〜密度〜
JIS K6760(1995)に準拠して密度勾配管法で測定した。
【0042】
〜重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)〜
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、GPCによって測定した。GPC装置(東ソー(株)製(商品名)HLC−8121GPC/HT)およびカラム(東ソー(株)製(商品名)TSKgel GMHhr−H(20)HT)を用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正した。なお、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
【0043】
〜押出発泡シートの物性及び成形性評価〜
〜発泡倍率〜
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を成形して得られた押出発泡シートから、幅5cm×長さ5cm×厚さ1.5cmの発泡体を切り出し、重量Wgを測定し、JIS K 6767に準拠して、次式で見掛密度を算出した。
【0044】
見掛密度(g/cm)=W/(5×5×1.5)
発泡倍率は、この見掛密度より、次式で求めた。
【0045】
発泡倍率=1/見掛密度
〜発泡シート性状〜
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を成形して得られた押出発泡シートの外観、および断面における気泡の状態を目視にて評価した。
○:円滑な表面の発泡体形状、均一な気泡状態
△:円滑な表面の発泡体形状、不均一な気泡状態
×:凸凹の発泡体形状、不均一な気泡状態…×
〜発泡シート圧縮耐久性〜
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を成形して得られた押出発泡シートから、幅5cm×長さ5cm×厚さ1.5cmの発泡体を切り出し、引張り試験機(エー・アンド・デイ社製、商品名テンシロン)の圧縮サイクルモードにて、試験片の元厚の80%圧縮を10回繰り返し、戻り方向にて荷重が0(N)となる変位を残留変位とした。残留変位と元厚を用いて、次式で残留ひずみを算出した。
【0046】
残留ひずみ(%)= 100 × 残留変位(mm) /15(mm)
○:10回圧縮後の残留ひずみが20%未満
△:10回圧縮後の残留ひずみが20%以上30%未満
×:10回圧縮後の残留ひずみが30%以上
〜二次加工性(熱成形性)〜
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を成形して得られた押出発泡シートをそれぞれ長径100mm、深さ50mmの金型を設置した真空成形機にて成形サイクル10秒、成形ヒーター温度140℃にて成形を行ない、10ショットにて容器の破れや亀裂の発生を調べた。
○:10ショット全てで形状不良、破れや亀裂が発生していない。
△:10ショット中1つ以上で形状不良、破れや亀裂が発生していない。
×:10ショット全てで形状不良、破れや亀裂が発生する。
【0047】
〜二次加工性(折り曲げ加工性)〜
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を成形して得られた押出発泡シートから幅10mm、長さ100mmの試験片を切り出し、手で折り曲げを行い、10個の試験片について割れや亀裂の発生有無を目視にて確認した。
○:10個全てで割れや亀裂が発生していない。
△:10個中1つ以上で割れや亀裂が発生していない。
×:10個全てで割れや亀裂が発生する。
【0048】
〜エチレン・α−オレフィン共重合体〜
以下に、実施例、比較例で使用したエチレン・α−オレフィン共重合体を以下に示す。
【0049】
PE−1:東ソー社製、(商品名)東ソーHMS CK27(MFR2.5g/10分、密度927kg/m、溶融張力67mN、Mn17,000、Mw/Mn5.3)
PE−2:東ソー社製、(商品名)東ソーHMS CK37(MFR3.3g/10分、密度935kg/m、溶融張力57mN、Mn17,000、Mw/Mn5.6)
PE−3:東ソー社製、(商品名)東ソーHMS CK38(MFR0.8g/10分、密度938kg/m、溶融張力100mN、Mn25,000、Mw/Mn4.4)
PE−4:東ソー社製、(商品名)東ソーHMS CK47(MFR4.0g/10分、密度940kg/m、溶融張力72mN、Mn23,000、Mw/Mn3.7)
実施例1
(1)ポリエチレン系樹脂組成物の製造
エチレン・α−オレフィン共重合体(イ)として、CK27を使用し、市販の高圧法低密度ポリエチレン(ロ)(商品名:ペトロセン339、東ソー製、MFR=3g/10分、密度=924kg/m)と70:30(重量%)の比率でドライブレンドを行い、これをプラコー社製50mm径単軸押出機にて溶融混合した。バレルの温度はC1;180℃、C2;200℃、C3;220℃、ダイヘッド;220℃とした。
(2)ポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡体の製造
上記ポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対し、発泡核剤としてタルク(商品名:MS、日本タルク製、平均粒径8μm)を0.1重量部の割合で含有する発泡成形用ポリエチレン系樹脂組成物をドライブレンドにより調製した。そして、バレルの途中に揮発性液体注入用のバレル孔を有する単軸押出機(スクリュー径50mmφ、L/D=36、共伸機械製)の発泡成形用押出設備を用い、発泡成形用ポリエチレン系樹脂組成物を15kg/時で供給し、溶融混練を行った後、圧縮された液状ブタンを120g/時でバレル孔から圧入して、分散させ、130℃に設定したスリットダイ(幅500mm)によりシート状の発泡成形体を押出した。
【0050】
得られたポリエチレン押出発泡体シートは、表面の平滑性が高く均一な微細セルを有しており、発泡倍率は35倍であった。得られた発泡体シートの二次加工性は一般的な高圧法低密度ポリエチレン発泡体よりも良好であり、圧縮耐久性は同等である事を確認した。結果を表1に示す。
【0051】
実施例2〜3
エチレン・α−オレフィン共重合体(イ)と高圧法低密度ポリエチレン(ロ)のブレンド比率を表1のように変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0052】
実施例4〜5
高圧法低密度ポリエチレン(ロ)を表1のように変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0053】
実施例6〜8
エチレン・α−オレフィン共重合体(イ)を表1のように変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0054】
実施例9
発泡成形時の液状ブタン量を100g/時に変えた以外は、実施例1と同様に行った。
【0055】
比較例1
高圧法低密度ポリエチレン(ロ)を使用しないこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0056】
比較例2
エチレン・α−オレフィン共重合体(イ)と高圧法低密度ポリエチレン(ロ)のブレンド比率を表2のように変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0057】
比較例3
高圧法低密度ポリエチレン(ロ)を使用しないこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0058】
比較例4
エチレン・α−オレフィン共重合体(イ)を市販の直鎖状低密度ポリエチレン(商品名:ニポロン−LF13、東ソー製、MFR=0.5g/10分、密度=920kg/m、Mn23,000、Mw/Mn3.7)に変えたこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0059】
比較例5
発泡成形時の液状ブタン量を60g/時に変えた以外は、実施例1と同様に行った。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM 1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、160℃における溶融張力が40mN以上で、歪硬化性を有し、JIS K6760に準拠した密度が920kg/m以上950kg/m以下のエチレン・α−オレフィン共重合体(イ)95〜30重量%、と高圧法低密度ポリエチレン(ロ)5〜70重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
エチレン・α−オレフィン共重合体(イ)のMw/Mnが3.0〜6.0の範囲であり、Mnが15,000以上であることを特徴とする請求項1のポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡倍率3倍以上の発泡体。
【請求項4】
請求項1に記載のポリエチレン系樹脂組成物を押出機に供給し、加熱溶融、混練し、更に発泡剤を供給して発泡性溶融樹脂混合物とした後、低圧域に押し出して発泡させることを特徴とする請求項3に記載の発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2013−112725(P2013−112725A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258941(P2011−258941)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】