説明

ポリエポキシド及びポリイソシアネートから合成されたポリオキサゾリドン接着樹脂組成物

【課題】銅クラッドラミネートの剥離強さの改善に有用なポリオキサゾリドン接着樹脂組成物を提供する。
【解決手段】以下の反応生成物である、分子量が少なくとも5000である熱可塑性環含有化合物を1ないし100重量%含む樹脂組成体:a)1.8ないし2.2のイソシアネート官能価を有する、ポリオキサイド及びポリイソシアネート反応体に基づき20ないし43重量%であるポリイソシアネート、及びb)1.8ないし2.2のエポキシド官能価を有する、ポリエポキシド及びポリイソシアネート反応体に基づく80ないし57重量%であるポリオキサイドから、そして所望によりc)連鎖延長剤。樹脂組成体は、改良された剥離強度とTgを持つ、プリプレグ又はラミネートへの銅製ホイルを接着する接着剤として利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤として有用な樹脂配合に関し、詳細には銅箔などの金属表面を樹脂ラミネートに接着するのに有用な樹脂配合物に関する。本発明はより具体的にはプレプレグ、樹脂被覆銅箔、剛性または可撓性プリント配線板(PWB)用フィルム及び絶縁ラミネートの作成に有用な樹脂配合物に関する。プレプレグは樹脂含浸または樹脂被覆布またはシートで、通常は数枚のプレプレグを積層して最終ラミネートにする前に、事前に架橋段階(B段階として知られる)に置かれたものである。
【背景技術】
【0002】
電子業界では集積回路の小型化の方向が増加する傾向にある。この業界ではデバイスを最大限に小型化するために、一時は高密度実装が許容される回路板の製作を模索してきた。さらなる高密度を達成するためには、導電金属軌道と誘電材との間の接着を改良すること、誘電材のガラス転移温度(Tg)を上げることが望ましく、誘電材の誘電率がより小さいことが必要である。
【0003】
回路板の小型化には、比較的最近の設計技術の利用が要求され、論理デバイス間の相互接続は所謂重ね合せ多重層(BUM)を使用することに決まっている。重ね合せ多重層の実現には多くの異なるアプローチがある。
【0004】
そのアプローチの一つは米国特許第5,387,495号にプロセスの記述があり、そのプロセスは基板上に固着誘電層を配置することから始まり、導電金属層および誘電層を交互に逐次デポジットすることを包含する。それぞれの導電金属層はホトレジストおよびホトリソグラフ方法を用いて画定される。軌道をデポジットした後に、ホトレジストを除去し、ホトレジスとの第二層を用いて異なる層間のスルーホールとして作用する導電ポストを画定する。導電軌道及びポストのそれぞれの層を形成し、ホトレジストを除去した後に、誘電材をその場所に流し込み固化させて隣接する軌道及びポストを絶縁する。必要に応じプロセスを数回繰り返して、導電金属層及び誘電層を重ね合せて多重層配線板を完成させることができる。
【0005】
別のアプローチは日本特許61118546A2及び6118247A2に記述があり、このプロセスは銅箔を熱硬化性樹脂で被覆し、次に被覆側を熱と圧力でプレプレグまたはコアラミネートに積層することによって付着させることを含む。導電金属軌道はホトレジストおよびホトリソグラフ方法を用いて画定される。軌道をデポジットした後に、ホトレジストを除去し、レーザーまたはプラズマ窄孔でホールを作る。軌道は標準無電解銅メッキまたは電解メッキとエッチングでさらに金属化される。外層パターンを形成し、必要に応じプロセスを数回繰り返して導電金属層および誘電層を積み重ねて多重層配線板を完成させる。
【0006】
使用されるラミネートは一般的に積層時に熱および圧力を使用して誘電キャリア層上にデポジットされたガラス繊維強化臭素化エポキシ(Tgが130℃から135℃の難燃性ラミネートFR-4グレードとして知られる)である。
銅箔の表面または銅系合金材料はラミネートまたは、誘電キャリア層上の銅及び銅系合金材料の剥離強さを改善するために、例えば米国特許公報第5,071,520が記述するように、種々の物理的または化学的プロセスで処理されることが多い。処理された銅箔は充分な剥離強さを実現するために高いガラス転移ラミネートを特に必要とする。
【0007】
銅箔の剥離強さを改良する一方法には、銅箔の表面を臭素化エポキシ樹脂グレード、架橋剤、ジシアンジアミドなどの架橋剤または多官能価フェノール系硬膜剤と触媒で被覆することが含まれる。B段階の樹脂相は低分子量であるために、被覆面は脆く、B段階の後で容易に壊れることが多い。また、B段階材料の溶融粘度は極めて低いので、ラミネートプロセス時にB段階樹脂層の肉厚制御が難しい。溶融粘度を高くするためにB段階の程度を上げると、最終ラミネート時の加工窓が余りにも小さくなり、その結果として樹脂流が金属軌道間の隙間を埋める時間が不十分になる。
【0008】
一貫した誘電肉厚制御を実現するために、銅箔を比較的高い程度に予め架橋した材料層(所謂C段階樹脂層)で最初に被覆してから、得られる樹脂流が回路軌道を適切に満たすように程度の低い予め架橋した第二の材料層(B段階樹脂層)を被覆するのが普通である。C段階樹脂層を使用することは導電金属軌道の二隣接層間の肉厚制御に有効である。しかしながら、二層被覆プロセスは時間がかかり費用が高くつく。
【0009】
したがって、以下に記す事項の一つ以上を実現するために銅箔の二層被覆、或いは可能であれば接着被膜の一層被覆を可能にする被覆システムを提供することは極めて望ましい。
(a)接着後の回路板における剥離強さの改良、
(b)被覆銅箔の二次成形適性及び可撓性の改良、
(c)被覆接着剤が回路軌道に充分に流入し充満するのに充分な時間を有し、同時に被膜肉厚について良好な制御を与えるような加工窓の改良、
(d)標準FR−4ラミネートのTgに少なくとも同じ135℃を超える硬化した接着剤のTg、
(e)高密度導電軌道を許容するために3より低い硬化した接着剤の誘電率。
【0010】
被覆フィルムの可撓性/二次成形適性を増加し、流失樹脂の損失を減らすために銅箔に塗布する樹脂中に熱硬化性樹脂を加えることが知られ、それにより被覆フィルムから生成したB段階材料の溶融粘度を増加することによって良好なフィルム肉厚がもたらされる。この目的に使用される高分子量ポリマーがPhenoxy Associates(USA)から登録商品名PKHHで市販されている。この材料はゲル時間を短縮しないでB段階材料の溶融粘度を増加することで流出樹脂を減らすために使用されることが多い。しかしながら、PKHHを使用すると、PKHHのTgが約90〜95℃であるために、得られるラミネートのTgに悪影響を与える。また、PKHHは高レベルの極性ヒドロキシル基を含み、これが樹脂系の誘電率を増加させる。
【0011】
ポリイソシアネートの多官能価ポリエポキシドとの縮合反応で得られる三種類の最終生成物(便宜上ポリオキサゾリドンと呼称する)、すなわちイソシアネート終端ポリオキサゾリドン、線形ポリオキサゾリドン及びエポキシ終端ポリオキサゾリドンがある。これらの三種類の可能な最終生成物及びそれらの種々の製造方法が米国特許公報第5,112,932に記述されている。エポキシ終端ポリオキサゾリドンは、化学量論的に過剰のエポキシ樹脂を用いて、エポキシ樹脂とポリイソシアネート化合物との縮合反応によって合成される(イソシアネート/エポキシドの比は1より小さい)。
【0012】
米国特許第4,070,416号は触媒として第三級アミン、モルフォリン誘導体またはイミダゾールの存在下における多官能価エポキシ当量当たり一当量またはそれ以上の多官能価イソシアネートを混合することによる熱硬化性樹脂の合成方法を記述する。触媒は反応物の合計重量基準で0.1から2重量%の範囲で用いられる。反応温度130℃またはそれ以下でイソシアネート環が主に生成し、一方130℃を超える温度でオキサゾリドン環が主に生成するはずであると言う。生成した樹脂は優れた電気的及び機械的特性及び高い熱安定性を示すと記されている。米国特許第4,070,416号が記述する熱硬化性樹脂は耐熱絶縁ワニス、注型用樹脂、含浸用樹脂、電気部品の成形用樹脂、接着剤、積層板用樹脂、プリント回路板用樹脂など種々の樹脂の用途に有用であると記述されている。
【0013】
EPA0113575はエポキシド当量とイソシアネート当量の比が1.1:1から10:1の量でジエポキシドとジイソシアネートを反応させて生成したエポキシ終端ポリオキサゾリドン樹脂を含む粉末塗料を開示する。このポリオキサゾリドンは比較的高いガラス転移温度を有し、耐陰極解体が改善された被膜を与えると記述する。塗料は流動床焼結または静電吹付け法で塗布されると記述する。
【0014】
ポリイソシアネート及びポリエポキシドの自己熱硬化性組成物が米国特許第4,564,651号及び第4,631,306号に記述があり、それぞれ反応樹脂成形材料及び絶縁部材用成形材料の製作方法を開示する。自己熱硬化性組成物はオキサゾリドン及びイソシアネート環を含み、ポリエポキシドとポリイソシアネートを混合して25℃での粘性が7000m2Pa-s、エポキシとイソシアネートのモル比が1:1から5:1の樹脂混合物を生成することによって合成される。この材料はイミダゾールまたは第三級アミン触媒の存在下、80〜130℃の温度範囲で樹脂混合物を反応させて架橋ポリマーを生成させることによって合成され、架橋ポリマーを130〜200℃に加熱して後硬化を起こさせて成形材料を生成させる。成形材料は機械的特性が改良されていると報告されている。
【0015】
米国特許第3,334,110号はアルコールと第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩とからなる触媒の存在下でポリイソシアネートをポリエポキシドと反応させるエポキシ終端ポリオキサゾリドンの合成方法を開示する。エポキシ終端ポリオキサゾリドンはエポキシ硬化触媒で硬化することができ、或いはエポキシ硬膜剤と反応して塗膜、ラミネート、接着、成形及び発泡などの分野に有用な種々の生成物を与える。
【0016】
米国特許第4,066,628号は触媒としてジアルキル亜鉛、カルボン酸亜鉛、有機亜鉛キレート化合物またはトリアルキルアルミニウムの存在下で有機イソシアネートをエポキシドと反応させるポリオキサゾリドン合成プロセスを開示する。このプロセスで合成されたポリオキサゾリドンは発泡体、塗料、接着剤及びエラストマーを含む広範囲な生成物の製造に有用な出発材料である。
【0017】
EPB0695316及び米国特許第5,449,737号はオキサゾリドン含有ベースの樹脂の合成を開示する。
1998年9月14日に提出された英国特許出願番号GB9817799.1は高分子量エポキシ終端ポリオキサゾリドン含有化合物を粘度修飾添加剤として利用することを記述し、この添加剤は最終硬化樹脂のTgを適切に維持しながら熱硬化性樹脂の粘度特性を改良するために他の樹脂組成物、特にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に比較的小量添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5,387,495号
【特許文献2】特許61118546号
【特許文献3】特許6118247号
【特許文献4】米国特許公報第5,112,932
【特許文献5】米国特許第4,070,416号
【特許文献6】EPA−0113575
【特許文献7】米国特許第4,564,651号
【特許文献8】米国特許第4,631,306号
【特許文献9】米国特許第3,334,110号
【特許文献10】米国特許第4,066,628号
【特許文献11】EPB−0695316
【特許文献12】米国特許第5,449,737号
【特許文献13】英国特許出願GB9817799.1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ポリオキサゾリドンの合成プロセスの幾つかを説明したが、エポキシ終端ポリオキサゾリドン(特に高分子量エポキシ終端オキサゾリドン)が単独または他の樹脂との複合体で銅箔などの金属箔の接着剤として用いられ銅クラッドラミネートの剥離強さの改善に有用であることを開示または示唆した従来技術はない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第一の態様では、分子量が少なくとも8000の熱可塑性オキサゾリドン環含有化合物の1〜100重量%を含む樹脂組成物の金属箔接着剤としての利用が提供され、その組成物は
(a)ポリエポキシド及びポリイソシアネート反応物を基準としてイソシアネート官能価数が1.8〜2.2のポリイソシアネートの20〜43重量%、
(b)ポリエポキシド及びポリイソシアネート反応物を基準としてエポキシド官能価数が1.8〜2.2のポリエポキシドの80〜57重量%及び任意的に、
(c)連鎖延長剤
との反応生成物である。
【0021】
本発明の第二の態様では金属箔をラミネートに接着する方法が提供され、その方法は上記に規定した樹脂組成物を接着剤として用いることを含む。
【0022】
樹脂組成物はそれを金属箔、例えば銅箔に塗布することにより熱及び圧力で箔をコアラミネートに接着させる場合の接着剤として使用することもできる。したがって、本発明のさらなる態様では、上記に規定した樹脂組成物の接着被膜を持つ金属箔が提供される。
【0023】
別の選択肢として、この樹脂組成物はそれを接着シートの中に加え、或いはそれを薄い接着フィルムに成形することによって、金属箔をコアラミネートに接着するために使用する接着剤として用いることができる。したがって、本発明のさらなる態様は、
(i)金属箔をラミネートに接着するために使用する上記規定の樹脂組成物含浸補強ウェブ、例えばガラスウェブを含む接着シート及び、
(ii)金属箔をラミネートに接着するために用いる上記規定の樹脂組成物を含む接着フィルムを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
箔を被覆するための本発明になる樹脂は、一般的に樹脂が従来技術で提案された材料に比べて高いガラス転移温度、低誘電率、高い剥離強さ、優れた二次成形適性及び優れた加工窓特性の一つ以上を示すために、「重ね合せ多重層」法に特に有用である。高分子量エポキシ終端ポリオキサゾリドン含有化合物はフィルムに押し出すことができ、銅箔とコアラミネートの間の接着層として機能する。
【0025】
本発明になる樹脂被覆箔、フィルム及びプレプレグ接着しーとの製作に有用な樹脂組成物はオキサゾリドン環を含む上記の高分子量エポキシ樹脂と0〜99重量%の熱硬化性樹脂、0〜99重量%の熱可塑性樹脂、或いは0〜99重量%の熱硬化性と熱可視性樹脂の混合物とのブレンドであってもよい。
【0026】
熱硬化性樹脂は、例えばダウケミカル社(The Dow Chemical Company)が登録商品名DER542、DER592A80、DER560またはDER538A80として市販する臭素化エポキシ樹脂であってもよい。
【0027】
熱可塑性樹脂は、例えばPKHHなどのフェノキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイド、或いはポリエステルであってもよい。
【0028】
その他の無機増量剤も所望の性質を得るために組成物に含めることができる。
【0029】
被覆樹脂の合成に有用なポリエポキシド化合物は分子当たり平均1.8〜2.2の1,2-エポキシ基をもつ化合物であることが好ましい。一般的に、ポリエポキシド化合物は1,2-エポキシ基を一個以上持つ飽和または不飽和脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式化合物である。ポリエポキシド化合物は低級アルキルまたはハロゲンなどイソシアネート基に対し非反応性な一つ以上の置換基で置換されてもよい。かかるポリエポキシド化合物は従来技術において周知である。本発明の実施に有用なポリエポキシド化合物の例はH.E.Lee及びK.Nevilleの「エポキシ樹脂ハンドブック(Handbook of Epoxy Resin)」(McGraw Hill、New York、1967)及び米国特許第4,066,628号に記述がある。
【0030】
適切な芳香族ポリエポキシドの例には、ビスフェノール-A、ビスフェノール-F、ビスフェノール-AD、ビスフェノール-S、テトラメチルビスフェノール-A、テトラメチルビスフェノール-F、テトラメチルビスフェノール-AD、テトラメチルビスフェノール-S、テトラブロモビスフェノール-A、テトラクロロビスフェノール-A、4,4’-ビフェノールまたは3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノールなどのビフェノール及びジヒドロキシナフタレンがある。
【0031】
適切な脂肪族ポリエポキシドの例には、ヘキサヒドロフタール酸のジグリシジルエステル及びジカルボン酸のジグリシジルエステル、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、ダウケミカル社が市販するDER736及びDER732などのエポキシ化ジオールがある。
【0032】
脂環式エポキシドの例には、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボン酸エステル及び3,4-エポキシシクロヘキシルカルボン酸エステルがある。
【0033】
好適なポリエポキシドはビスフェノール-A、ビスフェノール-F、テトラブロモビスフェノール-A及び3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノールのグリシジル化合物である。任意の二種類またはそれ以上のポリエポキシド混合物も本発明の実施に用いられる。
【0034】
本発明の実施に有用なポリイソシアネート化合物は次の構造式に代表されるものであり、
(O=C=N)m−R
構造式中、Rは置換または非置換脂肪族、芳香族または複素環式多価基を表わし、mは1.8〜2.2の平均値である。好適なポリイソシアネートの例はWOA9521879に開示された二官能価数イソシアネートである。2,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)及び4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)及びその異性体、MDIの多官能価数同族体(通常「高分子量MDI」と呼称される)、2,4-トルエンジイソシアネートおよび2,6-トルエンジイソシアネートなどのトルエンジイソシアネート(TDI)、m-キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)及びイソホロンジイソシアネートは好適な例である。特に好適なポリイソシアネートは2,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)及び4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)である。任意の二種類またはそれ以上のポリイソシアネート混合物も用いられる。
【0035】
ポリエポキシド化合物のポリイソシアネート化合物との反応促進に適当な触媒が使用されることもある。適切な触媒の例には、カルボン酸亜鉛、有機亜鉛キレート化合物、トリアルキルアルミニウム、第四級ホスホニウム塩及びアンモニウム塩、第三級アミン及びイミダゾール化合物が含まれる。好適な触媒はイミダゾール化合物およびアゾ化合物である。特に好適な触媒は2-フェニルイミダゾール2-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4,4’-メチレンメチルイミダゾール、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノン-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン及び1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデ-7-エンである。
【0036】
一般的に触媒はポリエポキシド化合物とポリイソシアネート化合物の使用合計量を基準にして0.01〜2、好ましくは0.02〜1、最も好ましくは0.02〜0.5の量で用いられる。
【0037】
ポリイソシアネート化合物は一般的にポリエポキシドとポリイソシアネートの反応物基準で15〜43、好ましくは20〜43、最も好ましくは25〜35重量%で用いられる。
【0038】
ポリエポキシド化合物は一般的にポリエポキシドとびポリイソシアネートの反応物基準で85〜57、好ましくは80〜57、最も好ましくは75〜65重量%で用いられる。
【0039】
ポリエポキシドとポリイソシアネートとの反応は通常100〜240℃、好ましくは120〜230℃、さらに好ましくは130〜220℃、最も好ましくは140〜210℃の温度で行なわれる。
【0040】
ポリオキサゾリドン含有樹脂はバッチ式反応器または押出し機のいずれかで生産される。押出品はバッチ反応器の製品に比べ低い多分散性及び高い分子量を示す。特に、フィルムの作成には押出し機の方法が好ましい。押出し機の滞留時間は押出し温度、押出し機の大きさ及び触媒レベルに依存する。
【0041】
バッチ式反応器によるオキサゾリドン環含有樹脂の生産では、触媒は通常ポリエポキシドを含む反応器にポリイソシアネート化合物を添加し始める前に加えられる。均質化を改善することが望まれるのであれば、触媒をポリペプチドに添加する前に、触媒を適切な溶媒に溶解することができる。触媒が加えられる温度は重要でない。一般的に、触媒は反応温度より低い温度で加えられる。次に温度を上げて反応温度を維持しながらポリイソシアネートを触媒とポリエポキシドの混合物に調節しながら添加し始める。ポリイソシアネートの添加時間は反応容器の物理的特性、例えば撹拌機の大きさ、熱伝達特性に依存するが、通常はポリイソシアネートを反応容器に3〜300分、好ましくは5〜240分、より好ましくは10〜180分、最も好ましくは20〜150分以内に反応温度を維持しながら添加する。反応温度はポリイソシアネートを完全に添加した後5〜180分、好ましくは15〜120分、最も好ましくは30〜90分維持される。
【0042】
一般的に、ポリエポキシド化合物とポリイソシアネート化合物の反応は混ぜ物の無い、すなわち溶媒またはその他の液体反応稀釈剤が存在しない状態で行なわれるのが好ましいが、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性溶媒の存在下で反応を行なうこともできる。
【0043】
ポリオキサゾリドン化合物の合成に使用される任意的な連鎖延長剤はポリオキサゾリドン化合物の分子量を増加できるものである。好ましい連鎖延長剤は二価フェノール、ハロゲン化二価フェノール、ジカルボン酸、ジアミン、ジアミノアミド及びアルカノールアミンである。
【0044】
適切なジカルボン酸連鎖延長剤は次の構造式で表わされる化合物であり、
R-(COOH)u
上式中、Rは主鎖周りに酸素を任意的に含むC1〜C40ヒドロカルビル部を表わし、uは1.8〜2.2である。その例には、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、フタール酸、ヘキサヒドロフタール酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、ドデシニル琥珀酸、アルキル化エンドアルキレンテトラヒドロフタール酸、ポリオールと酸無水物との反応から得られる半エステルがある。
【0045】
本明細書で用いる用語「ヒドロカルビル」は任意の脂肪族、脂環式、芳香族、アリル基置換脂肪族または脂環式グループ、或いは脂肪族または脂環式置換芳香族グループを意味する。
【0046】
本発明の実施に有用なその他の適切な連鎖延長剤はジアミン及びアミノアミド、すなわちエポキシ基と反応することができるN-H結合を二個含むアミンまたはアミノアミド含有化合物である。本発明に有用なかかる化合物には、例えば一般構造式R-NH-R”-NH-R”のジ-第二級アミン(R,R’,R”はアルキル、シクロアルキルまたはアリル部を表わす)及び、片方または両方の窒素原子が以下に示すような窒素含有複素環式化合物の部分であるジ-第二級アミンが含まれる。
【0047】
【化1】

【0048】
反応性及び二官能価数アミンとエポキシ促進反応との制御をさらに効率的にするためには、2,6-ジメチルシクロヘキシルアミンまたは2,6-キシリデン(1-アミノ-2,6-ジメチルベンゼン)などの立体障害アミングループを持つ第一級アミンまたはジ-第二級アミンが好適である。
【0049】
本発明の連鎖延長剤として有用なアミノアミド含有化合物には、例えばカルボン酸およびカルボン酸アミドの誘導体がスルホン酸アミドの誘導体同様に含まれ、それは付加的な一個の第一級または二個の第二級アミノ基を持つ。かかる化合物の好ましい例はアミノ-アリルカルボン酸アミド及びアミノ-アリルスルホンアミドである。このグループの好ましい化合物は、例えばスルファニルアミド(4-アミノベンジルスルホン酸アミド)である。
【0050】
その他の適切な例はピペラジン及び2-メチルピペラジンなどの置換ピペラジン、モノエタン-ルアミン及びピペラジン-4-カルボン酸である。
特に好適な連鎖延長剤はフェノール系化合物であり、分子当たり平均1以上3未満、好ましくは1.8〜2.2、さらに好ましくは約2個の活性水素(例えば、フェノール系ヒドロキシル)を含む。
【0051】
最も好適な連鎖延長剤はジヒドロキシフェノールである。フェノール化合物の非限定的な例には、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1’-ビス(2,5-ジブロモ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、レゾルシノール、ヒドロキノン、テトラメチルビスフェノール-A、テトラメチルビスフェノール-AD及びテトラメチルビスフェノール-Sがある。好適なジヒドロキシフェノール系化合物は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェノール)プロパン(ビスフェノールA)及び2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェノール)プロパンである。
【0052】
フェノール系連鎖延長剤が非ハロゲン化物である場合、その分子量は少なくとも110、より好ましくは少なくとも185であることが好ましい。分子量は800、好ましくは500、最も好ましくは250にすぎないことが好ましい。ハロゲン化フェノール系連鎖延長剤では、連鎖延長剤中の非ハロゲン原子の式量は上記の好ましい制約を満たし、合計分子量が好ましい実施態様とハロゲンの式量の和であるのが好ましい。
【0053】
接着樹脂材料の合成に使用される連鎖延長剤の量はエポキシ化合物と連鎖延長剤の当量比が1.5〜0.85、好ましくは1.3〜0.9、さらに好ましくは1.2〜0.95であることが好ましい。
【0054】
ポリオキサゾリドン化合物はコアラミネート上、例えば熱及び圧力の使用によるガラス繊維強化エポキシまたは誘電キャリア層などのラミネート上の金属層、特に銅及び銅系合金材料の剥離強さを改善するために、またエポキシ樹脂など硬化性熱硬化性樹脂配合物の粘度特性を改善するために、特にプレプレグ及びラミネート、特に絶縁ラミネートの製造に接着剤として本発明に従がって使用される。この組成物はカプセル化、被覆及び構造用複合材料に利用することができる。
【0055】
オキサゾリドン含有樹脂に加えられる熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテルまたはハロゲン化ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテルがより好適である。その他の有用な低粘度エポキシ樹脂は1,1,1-トリス-(ヒドロキシフェニル)-アルカンの及びそのハロゲン化誘導体のグリシジルエーテル誘導体がさらに好適である。適切なエポキシ樹脂の例及びその生成プロセスはH.Lee及びK.Nevilleの「エポキシ樹脂ハンドブック」(McGraw Hill Book Co、1967)、2-1〜3-20に記述がある。
【0056】
エポキシ樹脂は一般的に分子量が200〜3000のエポキシ終端樹脂であり、ハロゲン(臭素または塩素など)または燐などの難燃基を樹脂中に含むこともある。
【0057】
具体的には、エポキシ樹脂は例えばポリエポキシドのポリイソシアネートとの反応から導かれた樹脂であり、分子量は200〜3000である(米国特許公報第5,112,932が記述するように)。
【0058】
配合はWOA9612751に記述がある低粘度樹脂及び低溶媒含有量を含むことがある。
【0059】
配合はPCT/US98/01041に記述されるように低誘電率特性を与えるために硬膜剤としてスチレン無水マレイン酸コポリマーをさらに含むこともある。
【0060】
配合はGBA0458502が記述するホウ素含有化合物、例えばホウ酸または酸化ホウ素を硬化抑制剤として含むこともある。
熱硬化性樹脂は硬膜剤(「硬化剤」としても知られる)をさらに含むことが好ましい。適切な硬膜剤は多官能価数架橋剤である。かかる多官能価数架橋剤は種々の文献、例えばEncyclopedia of Poly.Sci.&Eng.Vol.6、「Epoxy Resins」、348〜56(J.Willey & Sons 1986)に記述がある。
【0061】
多官能価数架橋剤は(触媒及び連鎖延長剤とは反対に)平均して分子あたり二個以上の活性水素部を含むのが好ましい。例として、架橋剤は複数の第二級アミン基、一個以上の第一級アミン基、二個以上のフェノール系ヒドロキシル基、複数の第一級アミド基または二個以上のカルボン酸基を含む。
【0062】
エポキシ樹脂の硬膜剤として有用であると知られる適切な多官能価数架橋剤には、ポリアミン、ポリアミド、ポリ無水物、ポリフェノール及び平均して分子あたり二個以上の反応部位を含むポリ酸が含まれる。多官能価数架橋剤の好適な例には、ジシアンジアミド及びノボラックなどのポリフェノールが含まれる。使用可能なその他の多官能価数架橋剤の例には、例えばWOA9411415(1994年5月26日公告)に開示されたようなポリ無水物が含まれる。
【0063】
多官能価数架橋剤の量は樹脂組成物の100重量部当たり0.1〜200重量部であるのが好ましい。多官能価数架橋剤がジシアンジアミドである場合、配合は樹脂組成物の100重量部当たり0.5〜8重量部のジシアンジアミドを含むのが好ましい。ポリ無水物は樹脂組成物の100部当たり2〜200部であるのが好ましい。
【0064】
本発明になるエポキシ樹脂組成物は一般的に通常の種類のその他の添加物、例えば難燃剤、有機または無機増量剤、顔料、湿潤剤及びポリブタジエン及びポリスチレン−ブタジエンコポリマーなどの柔軟材を任意的に含むことがある。適切な添加物の例は米国特許第5,066,735号及びC.A.Epoxy Resins-Second Ed.506-512(Mercel Dekker、Inc.1988)に記述がある。添加物の特殊な例はメチル-トルエン-4-スルホン酸エステル、酸化アルミニウム、燐酸エステル(英国のAlbright and Wilson Ltd.から市販されているAmgard p45など)及びタルクである。
【0065】
本発明になる代表的なエポキシ樹脂は次表の通りである。
【0066】
【表1】

【0067】
前に説明した配合は銅箔の被覆、フィルム、接着シート及び絶縁ラミネートの作成に使用することができる。
【実施例】
【0068】
本発明の好適な実施態様を以下の特定の例に示す。例中、「DER」樹脂への参照はそれぞれの名称のもとでダウケミカル社が生産した樹脂を云う。
[合成1:オキサゾリドン環含有ポリエポキシ/ポリイソシアネートコポリマーの一般製法手順]
電動の機械的撹拌機、空気及び窒素注入口、サンプルポット、凝縮器及び熱電対を装着したフランジトップ1リットルガラス反応器中でエポキシ樹脂(DER330)を窒素パージの下で100℃に加熱した。
【0069】
「全固形物」(エポキシとイソシアネートの合計)基準で1500ppmの反応触媒(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデ-7セン、登録商品名AMICURE DBU-EでAnchorから入手できる市販品)を加え、混合物を150℃(MDIの場合)または180℃(TDIの場合)に加熱した。
【0070】
イソシアネート(表I記載)を付加漏斗部経由でエポキシ樹脂中に5分から240分以内に注入した。
【0071】
反応熱のために反応温度は少なくとも190℃〜210℃まで上昇した。反応温度を200℃と205℃の間に全てのイソシアネートを添加し終えるまで維持した。添加完了後に、反応混合物を200℃に5分から50分間、エポキシ理論当量(EEW)に達するまで維持した。固形樹脂を50〜55重量%固景物溶液までDMFで稀釈し、室温に冷却した。
【0072】
[合成2:オキサゾリドン環含有樹脂に連鎖延長剤を混合するための一般製法手順]
合成1に拠り作成したエポキシ/シアネートコポリマーを電動の機械的撹拌機、空気及び窒素注入口、サンプルポット、凝縮器及び熱電対を装着したフランジトップ1リットルガラス反応器中に装填した。
【0073】
連鎖延長剤(テトラブロモビスフェノール-A、ビスフェノール-Aまたはモノエタノールアミン)をエポキシ/シアネートコポリマー溶液に加え、溶媒を追加して35重量%の固形物溶液とした。
ビスフェノール連鎖延長剤を使用した場合、追加の促進触媒(トリフェニルエチル酢酸ホスホニウムエステル)を溶液に加えた。反応混合物を120〜135℃に加熱した。反応混合物の温度をこの範囲に2時間から24時間、生成物のエポキシ含有量が1%に下がるまで維持した。
【0074】
アミン連鎖延長剤を使用した場合、反応温度を60℃と100℃の間に維持し、追加の触媒の添加は必要としなかった。
反応混合物を室温に冷却し、追加の溶媒を加えて固形物の含有量を30または40重量%に調節した。
【0075】

【0076】
[例1〜6]
既に概説した「合成1」の一般製法及び表Iに挙げた成分の種類と量を用いてポリオキサゾリドン組成物を合成した。
【0077】
以下の分析方法を種々の例の測定に用いる。
標準湿式滴定法を用いてエポキシ当量(EEW)を決定した。
次の方法を用いて樹脂の反応性を測定した。すなわち、樹脂溶液を触媒とブレンドし、表III及び表IXに示す量に硬化する。次に混合物を熱板の表面で反応させてゲルに要した経過時間として反応性を測定する。
【0078】
走査型示差熱量計(DSC)を用いて0℃から100℃まで10℃/minで樹脂のガラス転移温度(Tg)を測定した。
溶融粘度はICI円錐及び平板粘度計を用いてASTMD445の方法に拠って測定した。
【0079】
DMFを溶媒として使用しガスクロマトグラフ(GPC)で重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0080】
組成物の物性を表Iに示す。
【0081】
【表2】

【0082】
(1)エポキシ樹脂Aはダウケミカル社から市販されている登録商品名DER330でエポキシ当量177〜189のビスフェノール−Aである。
(2)イソシアネートAはダウケミカル社が試験販売する製品XZ95263.00、2,4’−及び4,4’‐メチレンビス(フェニルイソシアネート)の50/50重量%の混合物である。
【0083】
(3)イソシアネートBはダウケミカル社から市販されている登録商品名ISONATE M125、4,4’‐メチレンビス(フェニルイソシアネート)である。
【0084】
(4)イソシアネートCはFlukaから名称89871で市販されている工業グレードのTDI(95%2,4‐及び5%2,6‐異性体)である。
【0085】
(5)DBUはエポキシ/MDI反応の触媒(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデ‐7‐セン)である。
【0086】
例1〜5はそれぞれ少なくとも86℃のTgを有し、一般的にPKHHのTgと対比される。
【0087】
例1〜5のそれぞれはヒドロキシルを実用上含有しない。比較例1はEPB0695316の例6に開示された方法に従がって得られた種類の生成物を例示するためであり、この方法はTDI/エポキシの合計量を基準にして18.7%のTDI(これは参照中に示唆された最大量である)を使用している。得られる生成物の分子量は5,000未満であるとみられ、生成物の溶融粘度及びTgの値は低い。比較により、例5はイソシアネート(TDI)をより大きな量で用いていて、これが高分子量、その結果としてTgの高い物質を生む結果となっている。
【0088】
[例6〜8]
既に概説した一般製法「合成2」及び表IIに示した成分の種類及び量を用いて、例1,3及び4で合成したポリオキサゾリドン組成物と種々の連鎖延長剤、すなわちビスフェノール-AまたはTBBA(テトラブロモビスフェノール-A)との反応によって高度ポリオキサゾリドン組成物を合成した。組成物の物性を表IIに示す。
【0089】
得られる材料のTgは全てPKHHのそれよりも高い。
【0090】
【表3】

【0091】
[例9〜14及び比較例3〜6]
[銅剥離強さの測定値を示す配合例]
例7の樹脂配合(以後、塗料Dまたは例9と呼称する)、PKHH溶液(DMF中30重量%、以後、塗料参照1または比較例3と呼称する)、例7の樹脂配合物とPKHH溶液の混合物(固形物基準で50/50重量%、以後、塗料Eまたは例13と言う)、例2の生成材料を含むその他の4種類の樹脂配合物(表IIIに示す)を肉厚35μmの標準銅箔上に塗布した。銅箔は登録商品名NT-TWとして市販されていて、Circuit Foils(ルクセンブルグ)から入手した。
【0092】
【表4】

【0093】
上記の樹脂配合物のそれぞれからコーターを使用して金属平板上に置いた標準銅箔上に薄膜を形成させた。銅箔を180℃の熱風中で3分間部分乾燥し、次に35℃で60分間真空下に放置して残留溶媒を完全に乾かした。フィルムの肉厚変動は30μmから70μまでであった。
【0094】
標準状態で熱及び圧力を架けて樹脂被覆銅箔をプレプレグにラミネートした。異なる塗料配合物の銅剥離強さを評価してその結果を表IVに示した(dicyはジシアンジアミドを表わす)。
【0095】
比較例として、Circuit Foilsから入手した35μm肉厚グレードの標準非被覆銅箔「NT-TW」(参照4)及び市販の処理銅箔「NTTWS」(参照3)の剥離強さを測定した。箔の剥離強さはIPC法のTM-650No.2.4.8Cで測定した。
【0096】
【表5】

【0097】
表IVは銅箔を指定の高Mw樹脂でプレコートすることによって銅箔の接着を増加させることができることを示す。Tgの高いラミネートは通常低い剥離強さを示す。これは銅箔のコアラミネートへの接着を弱めるラミネート/銅箔界面での架橋密度が高いことによる。銅箔のプレコートは高Tgラミネート系の接着をかなり増加する(例えば、相当するまたは改良されたTgにつき、Tg=175/185℃の系IIとTg=149/147℃の系Iとを比較されたい)。
【0098】
塗料参照1(PKHH)で測定された銅剥離強さは他の塗料系の剥離強さよりも高いが、PKHHのTgはたかだか95℃であり、化学的骨格上のヒドロキシル基のレベルは高い(略0.33当量/100mg固形樹脂)。したがって、その極性は高く誘電率が高い。
【0099】
配合I(ジシアンジアミド硬化系)及び配合II(スチレン-無水マレイン酸硬化系)のワニス組成物を用いて以下に記す銅剥離強さ測定用のプレプレグを作成した。
【0100】
[配合I(ジシアンジアミド硬化系)]
例2に拠り合成した粘度調整剤及び表Vに記した成分の種類及び量を用いてエポキシ樹脂ワニス組成物を作成した。機械的撹拌機を用いて種々の組成物を室温で混合した。組成物の物性を表IIIに示した。
【0101】
「エポキシ樹脂B」はEEW180の市販の液体エポキシ樹脂(DER383)、テトラブロモビスフェノール-A(TBBA)、EEW441の市販の臭素化エポキシ樹脂(DER560)及び触媒(トリフェニルエチル酢酸ホスホニウムエステル)を以下の割合で混合、反応させた生成物である。
【0102】
DER(登録商品名)383:51.60、
TBBA:22.00、
DER(登録商品名)560:6.40、
触媒(固形物基準):500ppm、
EEW=363グリコールエーテル(ダウケミカル社の登録商品名DOWANOL PM):10.00、
アセトン:8.80、
ホウ酸液(メタノール中20重量%):1.20
合計:100.00
【0103】
配合物を170℃の熱板上でストロークして組成物がゲルになる時間を測定することによって170℃でのストロークキュアー反応性を測定した。
【0104】
【表6】

【0105】
[配合II、硬化剤(硬膜剤):スチレン-無水マレイン酸コポリマー]
エポキシ硬膜剤としてスチレン/無水マレイン酸コポリマーを用いて組成物を調合した。種々の組成物を次の表VIに纏めた。
【0106】
「エポキシ樹脂C」は次の組成を有す(重量部)。
DER(登録商品名)330:19.452、
DER(登録商品名)560:25.352、
TBBA:11.196、
合計:56.000
エポキシ樹脂Cを調合するために、上記の3成分を130℃でブレンドし、固形物をDOWANOL(登録商品名)PMA3000に溶解させて固形物を85%含む溶液を得た。
【0107】
スチレン/無水マレイン酸コポリマーはELF ATOCHEMから市販のSMA3000を使用した。
【0108】
触媒/抑制剤は2-エチル、4-メチルイミダゾールとホウ酸の5:4混合物(メタノール中20%固形物)を使用した。
【0109】
【表7】

【0110】
[プレプレグの作成]
ガラス布基板(Porcher Textile、Badinieres、Fr-38300 Bourgoin-Jallieu、フランス、或いはIntegras Textil GmbH、Ulm/Donau、ドイツ製のタイプ7628)を使用して浸漬によって配合I及びIIからプレプレグを作成した。含浸した基板を温度約179℃(配合I)及び約163℃(配合II)、巻き取り速度1.3m/min(配合I)及び1.05m/min(配合II)で3メートルの水平オーブンを有するCARATSCH(要録商品名)パイロット処理装置(Caratsch AG、Bremgarten、スイス)を通過させた。
【0111】
プレプレグ作成前後のガラス布10cmx10cmシートを用い、IPC-L-109B及びIPC-TM-650;2.3.16の方法(Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circits、Lincolnwood、Illinoi、USAから入手できる)に従がってそれぞれのプレプレグの樹脂含有量を測定した。結果を表VII及びVIIIに示す。
【0112】
【表8】

【0113】
【表9】

【0114】
[ラミネートの製作]
プレプレグそれぞれのシート8枚を銅箔シートと交互に以下に記すプレスサイクルに従がって重ね合わせた。重ね合わせたプレプレグを以下の温度及びプロフィールに従がって硬化した。
【0115】
[配合Iプレスサイクル]
開始温度:40℃
プラトー温度:180℃
昇温ランプ期間:70分
プラトー時間:40分
室温への冷却時間:50分
真空期間:30分
低圧:40℃〜110℃(25KN/900cm2
高圧:110℃〜サイクルの終わりまで(40KN/900cm2)
【0116】
[配合IIプレスサイクル]
開始温度:40℃
プラトー温度:200℃
昇温ランプ速度:3℃/分
プラトー時間:90分
室温への冷却時間:50分
真空期間:30分
圧力:120KN/900cm2
【0117】
それぞれのラミネートにつき次の試験を行なった。
(a)ラミネートの5cmx5cmシートを秤量し、それを23℃で30分間N−メチルピロリドン(NMP)に浸漬し、再秤量してNMP捕捉を測定した。
(b)走査型示差熱量計(DSC)を用い1分当たり10℃で50℃から220℃まで走査してラミネートガラス転移温度を測定した。結果は℃で示す。同じラミネート試料を用いて測定を2度行ない、TgI及びTgIIを得た。
(c)IPC−A−600、IPC−MI−600及びIPC−TM−650:2.6.16に従がってラミネートを120分加圧釜に入れて耐水性を測定した。全てのラミネートが加圧釜試験をパスした。捕集水分を測定した。
【0118】
【表10】

【0119】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下よりなる反応生成物である、少なくとも5000の分子量を有する熱可塑性オキサゾリドン環含有化合物を1ないし100重量%含む、金属ホイルに適した接着樹脂組成体:
a)1.8ないし2.2のイソシアネート官能価を有する、ポリオキサイド及びポリイソシアネート反応体に基づき20ないし43重量%であるポリイソシアネート、及び
b)1.8ないし2.2のエポキシド官能価を有する、ポリエポキシド及びポリイソシアネート反応体に基づく80ないし57重量%であるポリオキサイドから、そして所望により、
c)連鎖延長剤。
【請求項2】
接着剤樹脂の調製に利用されるポリエポキシドが以下である、請求項1記載の組成体:
i)ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、ビスフェノール−AD、ビスフェノール−S、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノール−F、テトラメチルビスフェノール−AD、テトラメチルビスフェノール−S、テトラブロモビスフェノール−A、テトラクロロビスフェノール−A、4,4’−ビスフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール及びジヒドロキシナフタレンより選択される芳香族ポリエポキシド、
ii)ヘキサヒドロフタレイン酸のジグリシジルエステル、ジカルボン酸のジグリシジルエステル、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油及びエポキシ化ジオールより選択される脂肪族ポリエポキシド;
iii)3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボン酸及び3,4−エポキシシクロヘキシルカルボン酸より選択された脂環式カルボン酸より選択された脂環式エポキシド;又は
iv)その2またはそれ以上の混合体。
【請求項3】
接着剤樹脂の調製に利用されるポリエポキシドがビスフェノール−Aのグリシジル化合物、ビスフェノール−Fのグリシジル化合物、テトラブロモフィスフェノール−Aのグリシジル化合物、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4−ビスフェノールのグリシジル化合物、又はその2又それ以上の混合体である、請求項2記載の組成体。
【請求項4】
接着剤樹脂の調製に利用されるポリイソシアネート化合物が次の一般式であり、
(O=C=N)m−R
式中のRが脂肪族、芳香族又は複素環式多価基により置換され、又は置換されておらず、そしてmが1.8ないし2.2の平均数を有する、前記請求項何れかに記載の組成体。
【請求項5】
接着剤樹脂の調製に利用されるポリイソシアネート化合物が2,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)又はそのイソマー、MDIの高官能価相同体、トルエンジイソシアネート(TDI)、m−キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート、又はその2またはそれ以上の混合体である、前記請求項何れかに記載の組成体。
【請求項6】
接着剤樹脂の調製に利用されるポリイソシアネート化合物が、2,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、トルエンジイソシアネート(TDI)又はその混合体である、請求項5記載の組成体。
【請求項7】
ポリエポキシド化合物とポリイソシアネート化合物との反応が、亜鉛カルボキシレート、有機亜鉛キレート化合物、トリアルキルアルミニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第4級アンモニウム塩、第3級アミン又はイミダゾール、又はその2またはそれ以上の混合体である触媒存在下に実施される、前記請求項いずれかに記載の組成体。
【請求項8】
触媒が2−フェニルイミダゾール2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、4,4’−メチレンメチルイミダゾール)、1,5−ジアザバイシクロ[4,3,0]ノン−5−エン、1,4−ジアザバイシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザバイシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン、又はその2またはそれ以上の混合体である、請求項7記載の組成体。
【請求項9】
ポリオキサゾールイデン化合物の製造に利用する連鎖延長剤が2価フェノール、ハロゲン化2価フェノール、ジカルボン酸、ジアミン、アミノアミド、アルカノールアミン、またはその2またはそれ以上の混合体である、前記請求項のいずれかに記載の組成体。
【請求項10】
連鎖延長剤がスクシン酸、グルタール酸、アジピン酸、シュウ酸、フタール酸、ヘキサヒドロフタール酸、マレイン酸、シトラコン酸、ドデセニルスクシン酸、アルキル化エンドアルキレンテトラヒドロフタール酸、ポリオールと酸無水体との反応より得られる半エステル、式中のR、R‘及びR’’がそれぞれC1−C10アルキル、C1−C20シクロアルキル、又はC5−C20アリール成分である一般式R−NH−R‘−NH−R’’のジ第2アミン、N原子の一方または両方が次の一般式で表される窒素含有複素環の一部である複素環式ジ第2アミン、
【化1】

アミノアリールカルボン酸アミド、アミノ−アリールスルホンアミド、ピペラジン2−メチルピペラジン、モノエタノールアミン、ピペリジン−4−カルボン酸、4−アミノベンジルスルホン酸アミド、又は分子当たりフェノール性ヒドロキシル基を1より大きく3より少なく含むフェノール性化合物である、請求項9記載の組成体。
【請求項11】
連鎖延長剤が2,2−ビス(3.5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:2,2−ビス(3.5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン:ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン:1,1−ビス(2.6−ジブロモ−3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン:ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルフィド:レソリシノール、ヒドロキノン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノール−AD、又はテトラメチルビスフェノール−Sである、請求項10の組成体。
【請求項12】
ポリオキサゾリドン化合物の製造に利用される連鎖延長剤が110ないし800の分子量(存在するいずれのハロゲンも除く)を持つ、前記請求項いずれかに記載の組成体。
【請求項13】
ポリオキサゾリドン化合物の製造に利用される連鎖延長剤が185ないし500の分子量(存在するいずれのハロゲンも除く)を持つ、請求項12記載の組成体。
【請求項14】
ポリエポキシドとポリイソシアネート化合物との反応が、分子当たり平均2以上の活性部位を含む、ポリアミン、ポリアミド、多価無水物、ポリフェノール、又は多価酸である架橋剤存在下に実施される、前記請求項いずれかに記載の組成体。
【請求項15】
架橋剤がジシアンジアミド、多価無水体又は多価フェノールである、請求項14記載の組成体。
【請求項16】
樹脂組成体がポリオキサゾリドン化合物に加え、以下を含む前記請求項いずれかに記載の組成体、
a)0−99重量%の熱硬化性樹脂;
b)0−99重量%の熱可塑性樹脂;又は
c)0−99重量%の、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合体。
【請求項17】
接着剤として前記請求項いずれかに規定の樹脂組成体を使用する、金属ホイルをプリプレグ又はラミネートに接着させる方法。
【請求項18】
請求項1ないし16のいずれかに規定の樹脂組成体の接着コーティングを有する金属ホイル。
【請求項19】
請求項1ないし15のいずれかに規定の樹脂組成体が含浸させられた補強ウエブを含む、プリプレグ又はラミネートへの金属ホイル結合に適した結合シート。
【請求項20】
請求項1ないし15のいずれかに規定の樹脂組成体より構成されるフィルムである、プリプレグ又はラミネートへの金属ホイル結合に適した接着フィルム。
【請求項21】
請求項1ないし16何れかに規定の接着剤によりその表面に結合させられた金属ホイルを持つ、プリプレグ又はラミネート。
【請求項22】
請求項21に記載のプリプレグ又はラミネートより形成されるプリント配線基盤。
【請求項23】
以下の反応生成物である、少なくとも5000の分子量を有する熱可塑性オキサゾリドン環含有化合物を1ないし100重量%含む樹脂組成体の、金属ホイルに適した接着剤としての利用:
a)1.8ないし2.2のイソシアネート官能価を有する、ポリオキサイド及びポリイソシアネート反応体に基づき20ないし43重量%であるポリイソシアネート、及び
b)1.8ないし2.2のエポキシド官能価を有する、ポリエポキシド及びポリイソシアネート反応体に基づく80ないし57重量%であるポリオキサイドから、そして所望により、
c)連鎖延長剤。

【公開番号】特開2012−251161(P2012−251161A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−185696(P2012−185696)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2000−586792(P2000−586792)の分割
【原出願日】平成11年12月10日(1999.12.10)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】