説明

ポリエーテル重合体及びその製造方法

【構成】アリルアルコールにプロピレンオキシドを付加して得られたポリオキシプロピレンモノオールとジメトキシメチルシランを反応させて得られる反応生成物(A)とポリイソシアネート化合物(B)を反応させて、シリル基及びイソシアネート基を有するポリエーテル重合体を得た。
【効果】シーリング材等のベースポリマーに有用な新規のポリエーテル重合体を簡便で安価に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は加水分解性シリル基とイソシアネート基を1分子中に有する新規なポリエーテル重合体及びその製造方法に関する。
【0002】本発明の重合体はそれ自身室温硬化性組成物として、あるいはシーリング材、接着剤、コーティング材等のベースポリマーとして有用であり、さらにはイソシアネート残基を介して活性水素を有する化合物に付加反応させることにより、該化合物を加水分解性シリル基を有する化合物に変換することに利用できる。また新規なシランカップリング剤としてプライマー等の原料として有用である。
【0003】
【従来の技術】1分子中に加水分解性シリル基とイソシアネート基を有する化合物としては従来いくつかの例が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこれらの化合物は、本質的に分子量200以下の低分子化合物であり、製造コストや毒性の問題が十分に解決されておらず使用上の大きな制限になっていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、末端に水酸基と炭素−炭素二重結合を有するポリエーテル化合物と加水分解性シリル基含有の有機珪素化合物を、アルコール交換反応等の副反応をほとんど伴うことない条件で反応させることができること、得られる反応生成物を多官能イソシアネート化合物と反応させることにより、分子中に加水分解性シリル基とイソシアネート基を同時に有する新規なポリエーテル重合体が得られることを見いだし、本発明に到達した。
【0006】すなわち、本発明は、主鎖が分子量500以上のポリオキシアルキレンからなり、少なくとも1の加水分解性シリル基及び少なくとも1のイソシアネート基を有するポリエーテル重合体である。
【0007】本発明はまた、加水分解性シリル基及び水酸基を有するポリオキシアルキレン(A)とポリイソシアネート化合物(B)を反応させることを特徴とする、ポリエーテル重合体の製造方法である。
【0008】本発明におけるポリオキシアルキレン(A)は公知の製造法を用いて製造できる。例えば公知の製造法によって製造した炭素−炭素二重結合及び水酸基を有するポリオキシアルキレン(C)に、下記一般式(1)で示される有機珪素化合物を反応させて製造する。
【0009】R3-a-SiXa(OSiXbQ2-b)mH・・(1)
(式中、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アルケノキシ基、アシルオキシ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基及びケトキシメート基から選択される基、R,Qは炭素数1〜20の置換もしくは1価の有機基、aは1,2または3、bは0,1または2、mは0〜18の整数。)
【0010】炭素−炭素二重結合及び水酸基を有するポリオキシアルキレン(C)の製造方法としてはたとえば触媒存在下で末端炭素−炭素二重結合含有活性水素含有化合物に炭素数2以上のモノエポキシドを開環重合反応させることによって製造することができる、末端炭素−炭素二重結合含有活性水素含有化合物を開始剤としたポリオキシアルキレンが挙げられる。
【0011】この際使用される触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性触媒、トリフルオロボラン・エーテラート等の酸性触媒、アルミノポルフィリン金属錯体やUSP.34278457、同3278458、同3278459明細書などに記載されている複合金属シアン化物錯体などの金属錯体触媒がある。
【0012】特に分子量6000以上のポリオキシアルキレンを製造する際には副反応生成物が少ない複合金属シアン化物錯体が好ましい。この触媒を用いると、不飽和モノオールの含量の少ない極めて高分子量のポリオキシアルキレン類を製造することが可能である。
【0013】炭素−炭素二重結合及び水酸基を有するポリオキシアルキレン(C)の分子量は500以上が好ましく、特に1000〜50000が好ましい。500以下であるとヒドロシリル化の際に末端水酸基と有機シリル基中のアルコキシ基とのアルコール交換反応等の副反応を生じやすい。
【0014】開始剤として用いられる末端炭素−炭素二重結合含有活性水素含有化合物としては不飽和アルコール、不飽和フェノール、不飽和カルボン酸などが挙げられる。
【0015】具体的な化合物を示すと、アリルアルコール、メタリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、3−ブテニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ビニルフェノール、アリロキシフェノール、アクリル酸、メタクリル酸等である。
【0016】アリルアルコール、メタリルアルコールは特に好ましい化合物である。また、上記化合物に炭素数2以上のモノエポキシドを付加して得られる化合物も開始剤として用いることができる。
【0017】炭素数2以上のモノエポキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、エピクロルヒドリンなどの脂肪族アルキレンオキシド、スチレンオキシドのような芳香族アルキレンオキシドなどを挙げることができるが、脂肪族アルキレンオキシドが好ましく、特にプロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシドが好ましい。
【0018】また、炭素−炭素二重結合を有しない、少なくとも1の活性水素を有する活性水素化合物を開始剤として使用し、上記の方法により炭素−炭素二重結合含有モノエポキシド及び/または上記のモノエポキシドを重合させることによっても炭素−炭素二重結合及び水酸基を有するポリオキシアルキレン(C)は製造できる。
【0019】少なくとも1の活性水素を有する活性水素化合物として多価アルコール、多価、フェノール、ポリアミンアルカノールアミンなどがある。
【0020】炭素−炭素二重結合含有モノエポキシドとしてはアリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどがある。
【0021】本発明の加水分解性シリル基及び水酸基を有するポリオキシアルキレン(A)は線状のポリエーテル重合体に限らず、グラフト状にポリオキシアルキレン鎖が共重合した分岐点を有するポリオキシアルキレン重合体も使用できる。したがってポリオキシアルキレン(A)の原料の一つである炭素−炭素二重結合及び水酸基を有するポリオキシアルキレン(C)は線状であっても、分岐点を有するものであってもよい。
【0022】炭素−炭素二重結合及び水酸基を有するポリオキシアルキレン(C)への加水分解性シリル基の導入法としては、VIII族遷移金属化合物の存在下で、前記一般式(1)で示される有機珪素化合物を反応させて、片末端に加水分解性シリル基を有し別の末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン(A)とする方法がある。
【0023】この場合溶媒の使用が好ましい。使用される溶媒としては炭素数1〜6の低級1官能アルコールが好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0024】溶媒の添加量は通常ポリオキシアルキレンの水酸基1当量に対し0.1当量以上、好ましくは2〜4当量が好ましい。
【0025】反応終了後、溶媒を除去することは好ましく、たとえば、溶媒として低級アルコールを使用する場合、アルコールの留去条件は60℃以下30Torr以下で行うとアルコール交換反応等の副反応が少ないため好ましい。反応温度は30℃〜120℃、特に50℃〜80℃が好ましい。
【0026】VIII族遷移金属化合物としては公知の白金化合物が好ましく、例えば白金担持活性炭や塩化白金酸がある。
【0027】(1)で表される加水分解性基を有する有機珪素化合物としてはたとえばメチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシランのようなアルキルジアルコキシシラン類、トリメトキシシラン、トリエトキシシランのようなトリアルコキシシラン類、ジメチルエトキシシランのようなジアルキルアルコキシシラン類が使用できる。
【0028】炭素−炭素二重結合及び水酸基を有するポリオキシアルキレン(C)に対する有機珪素化合物の使用割合は目的とする製品の物性に応じて決定されるが、炭素−炭素二重結合1当量に対して通常1.5当量以下、特に0.5〜1当量が好ましい。1.5当量以上加えると副反応による増粘が起こりやすい。
【0029】前述のように本発明におけるポリオキシアルキレン(A)は線状であっても分岐点を有するものであってもよい。
【0030】本発明においては加水分解性シリル基及び水酸基を有するポリオキシアルキレン(A)とポリイソシアネート化合物(B)と反応させる。
【0031】ポリイソシアネートとしてはイソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族あるいは脂肪族系のポリイソシアネート、それら2種類以上の混合物、及びそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートがある。
【0032】具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(通称:クルードMDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族イソシアネートがある。
【0033】トリイソシアネートとしてはトリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニール)チオホスフェート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどが挙げられる。
【0034】これらポリイソシアネートのプレポリマー変性体、ウレチジオン変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体などがある。
【0035】これらポリイソシアネート化合物は主鎖のポリオキシアルキレン鎖よりも低分子量の化合物が好ましく、その1/3以下、特に1/5以下が好ましい。また、その分子量は500以下が特に好ましい。
【0036】ポリイソシアネートを反応させる際には必要に応じて公知の触媒を用いてもよい。このような触媒としてはスタナスオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウリレート、ジオクチル酸錫、オクテン酸鉛等の金属触媒、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等のアミン系触媒、およびこれらを組み合わせた触媒がある。
【0037】ポリオキシアルキレン(A)中の水酸基とポリイソシアネート化合物(B)中のイソシアネート基をイソシアネート基/水酸基が、1より大きく5以下であるように、反応させることが好ましい。更に、イソシアネート基/水酸基が1.5〜4、特に2〜3.5であることが好ましく、場合によっては、反応後未反応のジイソシアネート化合物を除去することが好ましい。
【0038】本願発明の方法で得られる、主鎖が分子量500以上のポリオキシアルキレンからなり少なくとも1の加水分解性シリル基及び少なくとも1のイソシアネート基を有するポリエーテル重合体にはたとえば下記一般式(2)で表される重合体がある。
【0039】
R3-a-SiXa(OSiXbQ2-b)mZ(OA)nOCONH-M-NCO・・(2)
(式中、Xは炭素数1〜6のアルコキシ基、Z,Mは2価の結合残基、R,Qは炭素数1〜20の置換もしくは1価の有機基、Aは炭素数2〜5である2価のアルキレン基、aは1、2または3、bは0、1または2、mは0〜18までの整数、nは1以上の整数を表す。)
【0040】本発明の製造方法で得られる、主鎖が分子量500以上のポリオキシアルキレンからなり、少なくとも1の加水分解性シリル基及び少なくとも1のイソシアネート基を有するポリエーテル重合体は500以上であり、特に1000〜50000が好ましい。
【0041】前記一般式に(2)においてnの値は特に10以上が好ましく、最も好ましくは、20以上である。
【0042】本発明はそれ自身、室温硬化性組成物としてシーリング材、接着剤、コーティング材、プライマー等に有用な加水分解性シリル基とイソシアネート基を有するポリエーテル重合体を新規に提供するものである。さらに本発明は上記ポリエーテル重合体の簡便で安価な製造法を提供するものである。
【0043】
【実施例】以下本発明を実施例により説明する。片末端に炭素−炭素二重結合を有し別の末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン(C)の製造法を製造例によって示す。
【0044】[製造例1]アリルアルコール1モルあたり平均4個のプロピレンオキシド付加体100重量部(以下、部と略す)と亜鉛ヘキサシアノコバルテート・ジグライム錯体0.3部を導入管と撹拌装置つきの加圧式反応器に仕込み、撹拌しながら窒素で置換した後、120℃に昇温した。
【0045】これにプロピレンオキシド500部を90分かけて加え反応させた。得られたものの水酸基価は39.8mgKOH/g、JIS K1557に基づく不飽和度は0.69meq/gであった。
【0046】[製造例2]アリルアルコール1モルあたり平均4個のプロピレンオキシド付加体100部と亜鉛ヘキサシアノコバルテート・ジグライム錯体0.6部を導入管と撹拌装置つきの加圧式反応器に仕込み、撹拌しながら窒素で置換した後、120℃に昇温した。
【0047】これにプロピレンオキシド1000部を3時間かけて加え反応させたのちイソブチレンオキシド25部を加え2時間この温度に保って反応を完結させた。得られたものの水酸基価は18.9mgKOH/g、JIS K1557に基づく不飽和度は0.36meq/gであった。
【0048】[実施例1]製造例1で得られたポリエーテル100部を加圧式反応器に仕込み、窒素置換した後、メタノール4.5部、塩化白金酸のイソプロパノール溶液(濃度10重量%)0.02部とジメトキシメチルシラン7.3部を加え、6時間反応せしめた。これを40℃、1Torrで1時間かけて脱気して加水分解性シリル基を有するポリエーテルを得た。得られたものの不飽和度は0.12meq/gでありアリル基の83%がシリル化されていた。
【0049】この生成物100部に対し12.9部のコロネートT−80(日本ポリウレタン製、トリレンジイソシアネート)を加え80℃で6時間反応させた。このもののイソシアネート含有率は2.61%であった。
【0050】[実施例2]製造例2で得られたポリエーテル100部を加圧式反応器に仕込み、窒素置換した後、メタノール2.1部、塩化白金酸のイソプロパノール溶液(濃度10重量%)0.02部とジメトキシメチルシラン3.8部を加え、6時間反応せしめた。
【0051】これを40℃、1Torrで1時間かけて脱気して加水分解性シリル基を有するポリエーテルを得た。得られたものの不飽和度は0.09meq/gでありアリル基の75%がシリル化されていた。
【0052】この生成物100部に対し5.8部のヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成品)と0.001部のジブチルチンオキシドを加え80℃で6時間反応させた。これのイソシアネート含有率は1.22%であった。
【0053】
【発明の効果】本発明により室温硬化性組成物、シーリング材、接着剤、コーティング材、プライマー等のベースポリマーに有用な新規のポリエーテル重合体を簡便で安価に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】主鎖が分子量500以上のポリオキシアルキレンからなり、少なくとも1の加水分解性シリル基及び少なくとも1のイソシアネート基を有するポリエーテル重合体。
【請求項2】加水分解性シリル基及び水酸基を有するポリオキシアルキレン(A)とポリイソシアネート化合物(B)を反応させることを特徴とする、請求項1のポリエーテル重合体の製造方法。
【請求項3】ポリイソシアネート化合物(B)がジイソシアネート、トリイソシアネート及びそれらの変性体から選ばれる少なくとも1の化合物である、請求項2のポリエーテル重合体の製造方法。
【請求項4】ポリオキシアルキレン(A)中の水酸基とポリイソシアネート化合物(B)中のイソシアネート基をイソシアネート基/水酸基が1より大きく5以下である割合で反応させることを特徴とする、末端にイソシアネート基を有する請求項2のポリエーテル重合体の製造方法。
【請求項5】ポリオキシアルキレン(A)中の水酸基とポリイソシアネート化合物(B)中のイソシアネート基をイソシアネート基/水酸基が1.5〜4である割合で反応させることを特徴とする、末端にイソシアネート基を有する、請求項4のポリエーテル重合体の製造方法。