説明

ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法

【課題】無機塩の副生がなく、煩雑な濃縮操作も要しない、極めて生産性の高いポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法を提供する。
【解決手段】末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテル〔以下、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルという〕と水を含有する液相に酸素を供給して、プラチナ触媒の存在下、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを脱水素酸化しポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸を製造する方法であって、
液相中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の合計質量と、水の質量との質量比((ポリオキシアルキレンアルキルエーテル+ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸)/水)が、60/40〜95/5である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの末端をカルボン酸で置換した化合物であり、化粧品、乳化剤、可溶化剤、分散剤、ゲル化剤、洗浄基剤などに使用することができる界面活性剤として知られている。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸は、pHを変化させることによりその性質を調整することができる。耐硬水性に優れ、水溶液は、カルシウム、アルミニウムなどの各種多価金属イオンに対して安定であり、皮膚に対する作用が穏和であるため、各種用途での応用が期待される。
【0003】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法としては、水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにモノクロロ酢酸を作用させて、有機化学的にポリオキシアルキレンアルキルエーテルの末端水酸基をカルボキシメチル化する方法〔以下、「カルボキシメチル化法」という〕が一般的に用いられている。
【0004】
また、特許文献1には、水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下、貴金属触媒を用いて、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを水溶液中で脱水素酸化しポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩を製造する方法〔以下、「アルカリ中和酸化法」という〕が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献2には、塩基の非存在下、貴金属触媒を用いて、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを脱水素酸化し、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸を製造する方法〔以下、「未中和酸化法」という〕が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−198641号公報
【特許文献2】特開平4−221339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、カルボキシメチル化法に関しては、
1)モノクロロ酢酸が水分に不安定であり反応中に分解が進行する、
2)反応生成物中に多量の無機塩が副生するため、水洗などの操作により無機塩を除去する必要がある、などの課題がある。
【0008】
また、アルカリ中和酸化法においても、
1)遊離酸としてポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸を得るためにはカルボン酸塩を酸分解する必要があり、塩基由来の無機塩が多量に副生する、
2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸の濃縮工程を要する、などの問題がある。
【0009】
さらに、未中和酸化法においても、反応混合物が増粘するなど、工業的なレベルでは生産性に課題がある、
【0010】
そこで、本発明は、無機塩の副生がなく、煩雑な濃縮操作も要しない、極めて生産性の高いポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、液相中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸との合計質量と、水の質量との質量比を所定範囲とすることで、反応に伴う粘度の著しい増加を抑制し得ると共に、アルデヒド化合物の副生を抑えて目的生成物であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸を高い生産効率にて製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明は、課題の解決手段として、
末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテル〔以下、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルという〕と水を含有する液相に酸素を供給して、プラチナ触媒の存在下、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを脱水素酸化しポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸を製造する方法であって、
液相中における、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸との合計質量と、水の質量との質量比(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の合計質量/水の質量)が、60/40〜95/5である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法を提供する。
ここで「液相」とは、反応の開始時も含めた、全ての段階での液相を意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、無機塩の除去操作や、煩雑な濃縮操作を必要とせず、反応終了後、触媒を濾過する工程のみで、高い有効分濃度のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の製造方法で用いる末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテルの炭化水素基は、脂肪族炭化水素基の他に、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基などを含むことができる。
【0015】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、下記一般式(I)で表される化合物または下記一般式(III)で表される化合物が好ましく、収率及び反応性向上の観点から、下記一般式(I)で表される化合物がより好ましい。
R−(CH2−O−X)n−CH2OH (I)
〔式中、Rは炭素数3〜21の炭化水素基、Xは炭素数1〜3のアルキレン基、nはアルキレンオキシ基の平均付加モル数であり、0.1〜30の数である。〕
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m−OH (III)
〔一般式(III)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖アルキル基であり、R1とR2の炭素数の合計は3〜21であり、mはエチレンオキシ基(O−CH2−CH2)の平均付加モル数であり、1.1〜30の数である。〕
一般式(I)中のRなどは、上記定義の範囲内において、目的とする性能、用途などに応じて適宜決定できる。
【0016】
一般式(I)中のRは、炭素数が3〜21の炭化水素基であるが、好ましくは炭素数5〜15の炭化水素基、より好ましくは炭素数7〜13の炭化水素基、更に好ましくは炭素数9〜13の炭化水素基である。
Rの炭化水素基としては、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖若しくは環状構造を有する脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、またはアルケニル基がより好ましく、直鎖又は分岐鎖のアルキル基がさらに好ましく、直鎖のアルキル基が特に好ましい。
【0017】
一般式(I)中、Rで表される直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基としては、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基などが挙げられる。
【0018】
一般式(I)中、Rで表される直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基としては、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基などが挙げられ、各種のオクタデカジエニル基やオクタデカトリエニル基などの、直鎖若しくは分岐鎖のアルカジエニル基若しくはアルカトリエニル基も用いることができる。
【0019】
一般式(I)中、Rで表される環状構造を有する脂肪族炭化水素基としては、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロドデセニル基、2−(シクロヘキシル)エチル基、3−(シクロヘキシル)プロピル基、2−(シクロヘキセニル)エチル基、3−(シクロヘキセニル)プロピル基などが挙げられる。
【0020】
一般式(I)中、Xで表される炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基が挙げられるが、入手が容易であるという観点から、炭素数1〜2のアルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
酸化によりエーテル酢酸が生成するためには末端水酸基は1級である必要があるが、ポリオキシアルキレン中にエーテル酸素のアルキル基側の炭素が分岐しているアルキレンオキシ基が含まれていても問題はない。
【0021】
一般式(I)中、nは、アルキレンオキシ基(CH2−O−X)の平均付加モル数であり、身体洗浄剤として使用する場合の起泡性や使用感(例えば、すすぎ性やぬるつき感)を向上させる観点から、0.1〜20が好ましく、0.2〜10がより好ましく、1.0〜6.0がさらに好ましく、2.0〜5.5がさらにより好ましく、2.5〜5.0がさらにより好ましい。
【0022】
一般式(III)において、身体洗浄剤として使用する場合の起泡性や使用感(例えば、すすぎ性やぬるつき感)を向上させる観点から、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜16、さらに好ましくは1〜14、さらに好ましくは1〜12の直鎖アルキル基である。R1とR2の炭素数の合計は、身体洗浄剤として使用する場合の起泡性や使用感(例えば、すすぎ性やぬるつき感)を向上させる観点から、3〜21であり、好ましくは7〜17であり、より好ましくは9〜15、さらに好ましくは11〜13である。
【0023】
一般式(III)中、R1及びR2の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基などが挙げられる。
【0024】
一般式(III)中、mは、エチレンオキシ基(O−CH2−CH2)の平均付加モル数であり、身体洗浄剤として使用する場合の起泡性や使用感(例えば、すすぎ性やぬるつき感)を向上させる観点から、1.1〜30の数であり、好ましくは1.1〜20、より好ましくは1.2〜10、さらに好ましくは2.0〜6.0、さらに好ましくは3.0〜5.5、さらに好ましくは3.5〜5.0である。
【0025】
本発明の製造方法で用いるプラチナ触媒は、触媒活性の観点から、活性種としてプラチナ(Pt)を含有する触媒であり、触媒の耐久性向上の観点から、担体担持プラチナ触媒が好適である。
担体は、触媒の耐久性向上、取り扱い性向上の観点から、無機担体が好ましく、例えば、活性炭、アルミナ、シリカゲル、活性白土、珪藻土などが挙げられる。なかでも活性炭が好ましい。
担体担持プラチナ触媒におけるプラチナの担持量は、反応時の液相の粘度増加を抑制する観点、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の生産性を向上する観点から、好ましくは触媒固形分中0.1〜15質量%、より好ましくは1.0〜10質量%である。
【0026】
プラチナ触媒は、アルデヒドの生成を抑制する観点、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の生産性を向上させる観点から、助触媒成分を含有することが好ましい。
助触媒成分としては、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)などが挙げられ、アルデヒドの生成を抑制する観点、生産性をさらに向上させる観点から、ビスマス、鉛を含有することが好ましく、ビスマスを含有することがより好ましい。
助触媒成分を含有する場合、担体担持プラチナ触媒における前記助触媒成分の担持量は、アルデヒドの生成を抑制する観点、生産性を向上させる観点から、好ましくは触媒固形分中0.01〜10質量%、より好ましくは0.5〜3.5質量%である。
プラチナと助触媒成分の含有量比は、アルデヒドの生成を抑制する観点、生産性を向上させる観点から、助触媒成分/プラチナ(原子比)で、好ましくは0.05〜1.0、より好ましくは0.1〜0.6である。
【0027】
本発明の製造方法で用いるプラチナ触媒は公知の方法で調製される。例えば、プラチナ(及び必要に応じてビスマスなどの助触媒成分)を所定量含有する水溶液中に、活性炭などの担体成分を含浸させ、担体成分上にプラチナ(及び助触媒成分)を吸着させる方法を適用することができる。
吸着後は、ホルマリン、ソジウムボロンハイドライド、水素などの還元剤によって還元処理を行う。還元後、濾別、水洗することでプラチナ触媒が得られるが、含水していても、乾燥させても反応に使用することができる。
【0028】
プラチナ触媒は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の生産性を向上する観点から、触媒中のプラチナの量がポリオキシアルキレンアルキルエーテル100質量部に対して0.001〜2.0質量部となるように用いることが好ましく、更に好ましくは0.01〜1.5質量部、更により好ましくは0.02〜1.3質量部となるように用いることが好適である。
【0029】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの脱水素酸化反応は、上記プラチナ触媒の存在下、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと水を含有する液相に酸素を供給して実施する。
前記脱水素酸化反応はバッチ式でも実施することができるほか、例えば、特開2008−94800号公報の図1に示されているような構造の固定床触媒を使用した循環固定床型反応装置を使用することもできる。
【0030】
反応に際し、無機塩の副生を抑制する観点から、塩基を添加しないことが好ましい。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの脱水素酸化反応は、生産性の向上、アルデヒドの生成を抑制する観点から、pH7以下の条件にて反応を行うことが好ましく、より好ましくはpH1〜7、更に好ましくはpH2〜7である。反応開始時の液相のpHはおよそ7程度であるが、反応が進行するにつれてポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸が生成してくるため、液相は徐々に酸性となり、pHが7以下の状態で反応が進行する。
本発明の製造方法において反応に際し塩基を使用しない場合には、従来技術であるカルボキシメチル化法やアルカリ中和酸化法の場合に問題となる無機塩の副生は起こらない。
【0031】
本発明の製造方法において、液相中における、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の合計質量と、水の質量との質量比(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の合計質量/水の質量)は、液相の粘度の増加抑制、アルデヒドの生成抑制、並びに生産性の向上の観点から、60/40〜95/5であり、好ましくは65/35〜93/7、より好ましくは70/30〜90/10、更に好ましくは75/25〜85/15である。ここで、液相中の水の含有量は、反応に際して添加する水のほか、プラチナ触媒などの他の成分に含まれている水も含めた合計質量をいう。
【0032】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の合計質量と、水との質量比を前記範囲内に調整することで、反応に伴う粘度の著しい増加を抑制できると共に、アルデヒド化合物の副生を抑えて目的生成物であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸を高い収率で得ることができる。
前記効果が得られる詳細な理由は明らかではないが、液相中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の合計質量と水の質量比を前記範囲内とすることで、水分含有量が低く水が連続相となっている粘度の高い状態から油分が連続相となる低粘度の相に変化するためであると推定される。
【0033】
本発明の製造方法において、反応開始時における、液相中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと水との質量比(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの質量/水の質量)は、液相の粘度の増加抑制、アルデヒドの生成抑制、並びに生産性の向上の観点から、好ましくは60/40〜95/5であり、より好ましくは65/35〜93/7、更に好ましくは70/30〜90/10、特に好ましくは75/25〜85/15である。ここで、反応開始時とは、プラチナ触媒の存在下、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと水を含有する液相に酸素を供給した時点をいう。
【0034】
本発明の製造方法において、液相中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の合計質量は、液相の粘度の増加抑制、アルデヒドの生成抑制、並びに生産性の向上の観点から、60〜95質量%であることが好ましく、65〜93質量%であることがより好ましく、70〜90質量%であることが更に好ましく、75〜85質量%であることが特に好ましい。
【0035】
本発明の製造方法において、液相中の水の質量は、粘度の増加抑制、アルデヒドの生成抑制、並びに生産性の向上の観点から、5〜40質量%であることが好ましく、7〜35質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが更に好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。
【0036】
本発明の製造方法において、反応開始時における液相中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと水の合計質量は、粘度の増加抑制、アルデヒドの生成抑制、並びに生産性の向上の観点から、好ましくは65質量%以上、より好ましくは72質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。
【0037】
本発明の製造方法においては、液相中の水の含有量が上記範囲内であれば、必要に応じて水に加えて有機溶媒を用いることもできる。使用しうる有機溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールエーテル等のグリコールエーテル、アセトニトリル、tert-ブタノールが挙げられる。有機溶媒除去工程による生産性の低下を抑制する観点から、前記液相中における有機溶媒の含有量は50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは0質量%である。また、前記液相中の水及び有機溶媒の合計質量は、有機溶媒除去工程による生産性の低下を抑制する観点から、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは7〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%、更により好ましくは15〜25質量%である。
【0038】
液相への酸素の供給は、酸素ガスもしくは酸素含有混合ガス(空気など)を液相に吹き込むことによって行うことができる。あるいは、酸素ガスもしくは酸素含有混合ガスを気相流通させ、これらのガスの雰囲気下で反応を実施することによっても行うことができる。
酸素含有混合ガスを用いる場合、酸素と併用するガスの具体例としては、ヘリウム、アルゴン、窒素などの所謂不活性ガスが好ましい。ガス中の酸素濃度は、10体積%以上が好ましく、20体積%以上がより好ましく、50体積%以上が更に好ましく、70体積%以上が更に好ましく、100体積%が特に好ましい。
【0039】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの脱水素酸化を行う際の反応温度は、反応性の向上、選択性の低下抑制の観点から、50〜100℃が好ましく、より好ましくは50〜80℃、更に好ましくは60〜80℃である。反応圧力は常圧下、加圧下の何れとすることもできる。
【0040】
本発明の製造方法によれば、従来技術であるカルボキシメチル化法、アルカリ中和酸化法、未中和酸化法などを適用した場合と比べると、無機塩の除去操作や、煩雑な濃縮操作を必要とせず、反応終了後、触媒を濾過する工程のみで、高い有効分濃度のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸を得ることができる。
本発明の製造方法において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、上記した一般式(I)で表される化合物を用いた場合、下記一般式(II)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸を得ることができる。
R−(CH2−O−X)n−COOH (II)
〔式中、R、X、nは、一般式(I)と同じ意味を表す。〕
【0041】
また、本発明の製造方法において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、上記した一般式(III)で表される化合物を用いた場合、下記一般式(IV)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸を得ることができる。
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m-1−OCH2COOH (IV)
〔式中、R1、R2、及びmは、前記一般式(III)と同じ意味を表す。〕
【0042】
本発明の例示的実施形態として、以下の製造方法、あるいは用途をさらに本明細書に開示する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0043】
<1>末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル〔以下、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルという〕と水を含有する液相に酸素を供給して、プラチナ触媒の存在下、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを脱水素酸化しポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸を製造する方法であって、
液相中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の合計質量と、水の質量の質量比(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の合計質量/水の質量)が、60/40〜95/5、好ましくは65/35〜93/7、より好ましくは70/30〜90/10、更に好ましくは75/25〜85/15である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0044】
<2>液相中の有機溶媒の含有量が50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは0質量%である、前記<1>記載の製造方法。
【0045】
<3>液相中の水及び有機溶媒の合計含有量が5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは7〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%、更により好ましくは15〜25質量%である、前記<1>記載の製造方法。
【0046】
<4>反応開始時における、液相中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと水の質量比(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの質量/水の質量)が、60/40〜95/5、好ましくは65/35〜93/7、より好ましくは70/30〜90/10、更に好ましくは75/25〜85/15である、前記<1>〜<3>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0047】
<5>pH7以下、好ましくはpH1〜7、より好ましくはpH2〜7の条件にて反応を行う、前記<1>〜<4>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0048】
<6>ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、下記一般式(I)で表される化合物であり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸が一般式(II)で表される化合物である、前記<1>〜<5>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
R−(CH2−O−X)n−CH2OH (I)
R−(CH2−O−X)n−COOH (II)
〔一般式(I)及び一般式(II)中、Rは炭素数3〜21、好ましくは炭素数7〜13、より好ましくは炭素数9〜13の炭化水素基、Xは炭素数1〜3のアルキレン基、好ましくは炭素数1〜2のアルキレン基、より好ましくはメチレン基であり、nはアルキレンオキシ基(CH2−O−X)の平均付加モル数であり、0.1〜30、好ましくは0.1〜20、より好ましくは0.2〜10、更に好ましくは1.0〜6.0、更に好ましくは2.0〜5.5、さらにより好ましくは2.5〜5.0の数である。〕
【0049】
<7>前記一般式(I)及び前記一般式(II)においてXがメチレン基である、前記<6>記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0050】
<8>ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、下記一般式(III)で表される化合物であり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸が一般式(IV)で表される化合物である、前記<1>〜<5>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m−OH (III)
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m-1−OCH2COOH (IV)
〔一般式(III)及び一般式(IV)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜16、さらに好ましくは1〜14、さらに好ましくは1〜12の直鎖アルキル基であり、R1とR2の炭素数の合計は3〜21、好ましくは7〜17であり、より好ましくは9〜15、さらに好ましくは11〜13であり、mはエチレンオキシ基(O−CH2−CH2)の平均付加モル数であり、1.1〜30、好ましくは1.1〜20、より好ましくは1.2〜10、さらに好ましくは2.0〜6.0、さらに好ましくは3.0〜5.5、さらに好ましくは3.5〜5.0の数である。〕
【0051】
<9>プラチナ触媒が担体担持プラチナ触媒である、前記<1>〜<8>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0052】
<10>前記担体が活性炭、アルミナ、シリカゲル、活性白土、または珪藻土から選ばれる、前記<9>に記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0053】
<11>前記担体が活性炭である、前記<9>または<10>に記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0054】
<12>担体担持プラチナ触媒におけるプラチナの担持量が、触媒固形分中0.1〜15質量%、好ましくは1.0〜10質量%である、前記<9>〜<11>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0055】
<13>プラチナ触媒が助触媒成分を含有する、前記<1>〜<12>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0056】
<14>前記助触媒成分が、ビスマス、鉛、スズ、金、ルテニウム、およびパラジウムから選ばれる1種又は2種以上である、前記<13>に記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0057】
<15>前記助触媒成分がビスマスである、前記<13>または<14>に記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0058】
<16>プラチナと助触媒成分の含有量比が、助触媒成分/プラチナ(原子比)で、0.05〜1.0、好ましくは0.1〜0.6である、前記<13>〜<15>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0059】
<17>プラチナ触媒を、触媒中のプラチナの量がポリオキシエチレンアルキルエーテル100質量部に対して0.001〜2.0質量部、好ましくは0.01〜1.5質量部、より好ましくは0.02〜1.3質量部となるように用いる、前記<1>〜<16>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0060】
<18>反応温度が50〜100℃、好ましくは50〜80℃、より好ましくは60〜80℃である、前記<1>〜<17>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0061】
<19>液相中のポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸の合計質量が、60〜95質量%、好ましくは65〜93質量%、より好ましくは70〜90質量%、更に好ましくは75〜85質量%である、前記<1>〜<18>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0062】
<20>液相中の水の質量が、5〜40質量%、好ましくは7〜35質量%、より好ましくは10〜30質量%、更に好ましくは15〜25質量%である、前記<1>〜<19>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【0063】
<21>反応開始時における液相中のポリオキシエチレンアルキルエーテルと水の合計質量は、65質量%以上、好ましくは72質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上である、前記<1>〜<20>の何れかに記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【実施例】
【0064】
<ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルアルデヒドの含有量および転化率の測定>
反応により生成した反応混合物中のポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルアルデヒドの含有量は、メチルエステル化したのちガスクロマトグラフィ(GC)により下記条件にて測定し、EO付加モル数10モルまでのGC面積%で示した。
転化率は、反応混合物中に残存しているポリオキシエチレンラウリルエーテル、生成したポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸のGC分析値に基づいて算出した。
【0065】
(GC条件)
GC機器;アジレントテクノロジー社製 6850シリーズII
カラム;アジレントテクノロジー社製 HP−ULTRA1(25m)
検出器;FID
キャリア;ヘリウムガス、1mL/min
昇温;100℃から300℃まで5℃/minで昇温。その後45分間300℃を保持
【0066】
<pH測定>
Fine製pHコントローラ FD−02seriesBを用いて反応混合物中にpH電極を挿入し、温度補正電極で温度補正を行い、pHを測定した。
【0067】
実施例1
ガス導入口、ガス出口、温度計、pH電極及びテフロン(登録商標)製三日月型攪拌翼(翼面積12.8cm2)を装着した攪拌機を装備したガラス製丸底フラスコ(内容積0.5L)に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(一般式(I)において、R−CH2=ラウリル基、X=CH2、n=4.6の化合物)265g、水50g及び活性炭担持含水プラチナ−ビスマス触媒(Evonik Degussa製,触媒固形分中プラチナ5質量%-ビスマス1質量%、触媒有り姿中の水分53質量%)28gをそれぞれ仕込んだ。70℃における液相pHは6.0、液相中の水の含有量は20質量%であった。
常圧下で窒素置換した後、液相の温度を70℃に昇温し、窒素雰囲気下で15分攪拌した。
その後、窒素ガス導入を停止し、酸素ガスを90mL/minの速度にて導入、気相流通し、液相を400rpmにて攪拌し7時間反応させた。この間、反応系は低粘度を維持し増粘は見られなかった。また、7時間反応後の液相pHは3.0であった。
7時間反応後、窒素置換を行い、反応を停止させた。反応液から触媒を濾別し、得られた反応混合物についてガスクロマトグラフィ分析を行った。その結果、ポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は70%であり、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は64%であった。また、アルデヒドの生成量は、1.9%であった。反応条件並びに反応結果を表1に示す。
【0068】
実施例2
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(一般式(I)において、R−CH2=ラウリル基、X=CH2、n=2.9の化合物)232g、水82g及び活性炭担持含水プラチナ−ビスマス触媒(Evonik Degussa製,触媒固形分中プラチナ5質量%−ビスマス1質量%、触媒有り姿中の水分59質量%)28gを仕込んだ以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応開始時の液相のpHは5.8、液相中の水の含有量は30質量%であった。
反応系は低粘度を維持し増粘は見られなかった。
7時間反応後の液相pHは2.9であった。ポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は64%であり、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は55%であった。また、アルデヒドの生成量は、3.7%であった。反応条件並びに反応結果を表1に示す。
【0069】
実施例3
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(一般式(I)において、R−CH2=ラウリル基、X=CH2、n=4.6の化合物)296g、水12g及び活性炭担持含水プラチナ−ビスマス触媒(Evonik Degussa製,触媒固形分中プラチナ5質量%−ビスマス1質量%、触媒有り姿中の水分59質量%)36gを仕込んだ以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応開始時の液相のpHは6.1、液相中の水の含有量は10質量%であった。
反応系は低粘度を維持し増粘は見られなかった。
7時間反応後の液相pHは3.2であった。ポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は57%であり、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は49%であった。また、アルデヒドの生成量は、3.4%であった。反応条件並びに反応結果を表1に示す。
【0070】
実施例4
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(一般式(I)において、R−CH2=ラウリル基、X=CH2、n=4.6の化合物)296g、水34g及び活性炭担持含水プラチナ−ビスマス触媒(Evonik Degussa製,触媒固形分中プラチナ5質量%−ビスマス1質量%、触媒有り姿中の水分59質量%)36gを仕込んだ以外は実施例1と同様して反応を行った。反応開始時の液相のpHは6.1、液相中の水の含有量は16質量%であった。反応系は低粘度を維持し増粘は見られなかった。
7時間反応後の液相pHは3.0であった。ポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は66%であり、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は59%であった。また、アルデヒドの生成量は、2.8%であった。反応条件並びに反応結果を表1に示す。
【0071】
実施例5
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(一般式(I)において、R−CH2=ラウリル基とミリスチル基の混合(ラウリル基/ミリスチル基=75/25(質量比))、X=CH2、n=2.0の化合物)290g、水15g及び活性炭担持含水プラチナ−ビスマス触媒(Evonik Degussa製,触媒固形分中プラチナ5質量%−ビスマス1質量%、触媒有り姿中の水分59質量%)36gを仕込んだ以外は実施例1と同様して反応を行った。反応開始時の液相のpHは7.0、液相中の水の含有量は11質量%であった。反応系は低粘度を維持し増粘は見られなかった。
7時間反応後の液相pHは3.5であった。ポリオキシエチレンアルキルエーテル転化率は49%であり、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸の含有量は38%であった。また、アルデヒドの生成量は、6.9%であった。反応条件並びに反応結果を表1に示す。
【0072】
実施例6
ガス導入口、ガス出口、温度計、pH電極及びテフロン(登録商標)製三日月型攪拌翼(翼面積12.8cm2)を装着した攪拌機を装備したガラス製丸底フラスコ(内容積0.5L)に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(一般式(III)において、R1とR2の合計炭素数が10〜14であり、m=5.0の化合物、製品名:エマルゲン705)265g、水47g及び活性炭担持含水プラチナ−ビスマス触媒(Evonik Degussa製,触媒固形分中プラチナ5質量%-ビスマス1質量%、触媒有り姿中の水分60質量%)33gをそれぞれ仕込んだ。70℃における液相pHは6.6、液相中の水の含有量は20質量%であった。
常圧下で窒素置換した後、液相の温度を70℃に昇温し、窒素雰囲気下で15分攪拌した。
その後、窒素ガス導入を停止し、酸素ガスを90mL/minの速度にて導入、気相流通し、液相を400rpmにて攪拌し7時間反応させた。この間、反応系は低粘度を維持し増粘は見られなかった。また、7時間反応後の液相pHは3.0であった。
7時間反応後、窒素置換を行い、反応を停止させた。反応液から触媒を濾別し、得られた反応混合物について酸価の測定を行ったところ酸価は58となった。原料のポリオキシエチレンアルキルエーテルの水酸基価(131)から予想される酸価をもとにするとポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸の含有量は58%であった。
【0073】
比較例1
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(平均付加モル数4.6)70g、水275g及び活性炭担持含水プラチナ−ビスマス触媒(Evonik Degussa製,触媒固形分中プラチナ5質量%−ビスマス1質量%、触媒有り姿中の水分59質量%)8.6gをそれぞれ仕込んだ以外は、実施例1と同様にして反応させた。液相中の水の含有量は80質量%であった。反応系は増粘した。
7時間後の反応液から触媒を濾別し、得られた反応混合物についてガスクロマトグラフィ分析を行った。その結果、ポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は8%であり、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は6%であった。また、アルデヒドの生成量は、1.4%であった。反応条件並びに反応結果を表1に示す。
【0074】
比較例2
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(平均付加モル数4.6)170g、水157g及び活性炭担持含水プラチナ−ビスマス触媒(Evonik Degussa製,触媒固形分中プラチナ5質量%−ビスマス1質量%、触媒有り姿中の水分59質量%)21gをそれぞれ仕込んだ以外は、実施例1と同様にして反応させた。液相中の水の含有量50質量%であった。
反応系は増粘した。
7時間後の反応液から触媒を濾別し、得られた反応混合物についてガスクロマトグラフィ分析を行った。その結果、ポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は4%であり、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は5%であった。また、アルデヒドの生成量は、0.8%であった。反応条件並びに反応結果を表1に示す。
【0075】
比較例3
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(平均付加モル数4.6)339g及び活性炭担持含水プラチナ−ビスマス触媒(Evonik Degussa製,触媒固形分中プラチナ5質量%−ビスマス1質量%、触媒有り姿中の水分30質量%)24gをそれぞれ仕込んだ以外は、実施例1と同様にして反応させた。液相中の水の含有量は2質量%であった。反応系は低粘度を維持し増粘は見られなかった。
反応後、反応液から触媒を濾別し、得られた反応混合物についてガスクロマトグラフィ分析を行った。その結果、ポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は36%であり、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は28%であった。また、アルデヒドの生成量は、5.3%であった。反応条件並びに反応結果を表1に示す。
【0076】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテル〔以下、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルという〕と水を含有する液相に酸素を供給して、プラチナ触媒の存在下、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを脱水素酸化しポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸を製造する方法であって、
液相中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の合計質量と、水の質量の質量比(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の合計質量/水の質量)が、60/40〜95/5である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【請求項2】
反応開始時における、液相中のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと水の質量比(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの質量/水の質量)が、60/40〜95/5である、請求項1記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【請求項3】
pH7以下の条件にて反応を行う、請求項1又は2記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【請求項4】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、下記一般式(I)で表される化合物であり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸が一般式(II)で表される化合物である、請求項1〜3の何れか1項記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
R−(CH2−O−X)n−CH2OH (I)
R−(CH2−O−X)n−COOH (II)
〔一般式(I)及び一般式(II)中、Rは炭素数3〜21の炭化水素基、Xは炭素数1〜3のアルキレン基を表し、nはアルキレンオキシ基(CH2−O−X)の平均付加モル数であり、0.1〜30の数である。〕
【請求項5】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、下記一般式(III)で表される化合物であり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸が一般式(IV)で表される化合物である、請求項1〜3の何れか1項記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
1(R2)CH−(O−CH2−CH2)m−OH (III)
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m-1−OCH2COOH (IV)
〔一般式(III)及び一般式(IV)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖アルキル基であり、R1とR2の炭素数の合計は3〜21であり、mはエチレンオキシ基(O−CH2−CH2)の平均付加モル数であり、1.1〜30の数である。〕
【請求項6】
前記一般式(I)及び前記一般式(II)においてXがメチレン基である、請求項4記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【請求項7】
プラチナ触媒が助触媒成分としてビスマスを含有する、請求項1〜6の何れか1項記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。
【請求項8】
反応温度が50℃〜100℃である、請求項1〜7の何れか1項記載のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸の製造方法。

【公開番号】特開2013−14581(P2013−14581A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129950(P2012−129950)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】