説明

ポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法

【課題】生産性の高いポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法の提供。
【解決手段】下記(1)〜(3)の工程を有するポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。(1)原料となるポリオキシアルキレンエーテルを得る工程。(2)工程(1)で得たポリオキシアルキレンエーテル中に含まれる炭素数4〜22のアルコールを3.0質量%以下に低減する工程。(3)工程(2)で得たポリオキシアルキレンエーテルと水を含有する液相に酸素を供給して、プラチナ触媒の存在下で脱水素酸化してポリオキシアルキレンエーテル酢酸を得る工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレンエーテル酢酸は、ポリオキシアルキレンエーテルの末端をカルボン酸で置換した化合物であり、化粧品、乳化剤、可溶化剤、分散剤、ゲル化剤、洗浄基剤などに使用することができる界面活性剤として知られている。
ポリオキシアルキレンエーテル酢酸は、pHを変化させることによりその性質を調整することができる。耐硬水性に優れ、水溶液はカルシウム、アルミニウムなどの各種多価金属イオンに対して安定であり、皮膚に対する作用が穏和であるため、各種用途での応用が期待される。
【0003】
ポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法としては、水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下、ポリオキシアルキレンエーテルにモノクロロ酢酸を作用させて、有機化学的にポリオキシアルキレンエーテルの末端水酸基をカルボキシメチル化する方法〔以下、「カルボキシメチル化法」という〕が一般的に用いられている。
【0004】
また、特許文献1には、水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下、貴金属触媒を用いて、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを水溶液中で脱水素酸化しポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩を製造する方法〔以下、「アルカリ中和酸化法」という〕が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献2には、塩基の非存在下、貴金属触媒を用いて、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを脱水素酸化し、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸を製造する方法〔以下、「未中和酸化法」という〕が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−198641号公報
【特許文献2】特開平4−221339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記カルボキシメチル化法に関しては、
1)モノクロロ酢酸が水分に不安定であり反応中に分解が進行する、
2)反応生成物中に多量の無機塩が副生するため、水洗などの操作により無機塩を除去する必要がある、などの課題がある。
【0008】
また、前記アルカリ中和酸化法においても、
1)遊離酸としてポリオキシエチレンエーテル酢酸を得るためにはカルボン酸塩を酸分解する必要があり、塩基由来の無機塩が多量に副生する、
2)ポリオキシエチレンエーテル酢酸の濃縮工程を要する、などの問題がある。
【0009】
さらに、前記未中和酸化法においても、アルカリ中和酸化法に比較して反応性が劣るなどの課題がある。
【0010】
貴金属触媒の存在下でポリオキシアルキレンエーテルを脱水素酸化する方法において、塩基を用いて中和しながらポリオキシアルキレンエーテル酢酸塩を製造するアルカリ中和酸化法では、中和によりポリオキシアルキレンエーテル酢酸を得る際に多量の無機塩が副生する課題がある。また、酸化反応の進行に伴う増粘のため反応を行うこと自体困難となる場合がある。
一方、塩基を用いない未中和酸化法では、反応の進行に伴い触媒活性が低下するという課題がある。
特に、アルコールにアルキレンオキシドを付加させて製造したポリオキシアルキレンエーテルを原料に、アルキレンオキシ基の平均付加モル数が6モル以下のポリオキシアルキレンエーテル酢酸を製造する場合、反応率(転化率ともいう)が低下する(頭打ちになる)という課題を本発明者は見出した。
そこで本発明は、無機塩の副生がなく、触媒活性が反応の進行とともに触媒活性が低下しない、生産性の高いポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ポリオキシアルキレンエーテル中に含まれるアルキレンオキシドが付加していない原料アルコールを3.0質量%以下に低減する工程を経ることにより、目的生成物であるポリオキシアルキレンエーテル酢酸を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、下記(1)〜(3)の工程を有するポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法に関する。
(1)炭素数4〜22の炭化水素基を有するアルコールにアルキレンオキシドをアルカリ触媒存在下で付加させて下記一般式(I)または一般式(III)で表されるポリオキシアルキレンエーテルを得る工程。
R−(CH2−O−X)n−CH2OH (I)
〔式中、Rは炭素数3〜21の炭化水素基を示し、Xは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nはアルキレンオキシ基(CH2−O−X)の平均付加モル数で、1.0〜6.0の数を示す。〕
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m−OH (III)
〔一般式(III)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖アルキル基であり、R1とR2の炭素数の合計は3〜21であり、mはエチレンオキシ基(O−CH2−CH2)の平均付加モル数であり、2.0〜6.0の数である。〕
(2)工程(1)で得られたポリオキシアルキレンエーテル中に含まれる前記炭素数4〜22の炭化水素基を有するアルコールを3.0質量%以下に低減する工程。
(3)工程(2)で得られたポリオキシアルキレンエーテルと水を含有する液相に酸素を供給して、プラチナ触媒の存在下、前記ポリオキシアルキレンエーテルを脱水素酸化して、一般式(II)または一般式(IV)で表されるポリオキシアルキレンエーテル酢酸を得る工程。
R−(CH2−O−X)n−COOH (II)
〔式(I)中、R、X、nは、一般式(I)と同じ意味を表す。〕
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m-1−OCH2COOH (IV)
〔式中、R1、R2、及びmは、前記一般式(III)と同じ意味を表す。〕
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、反応の進行に伴う触媒活性の低下がなく、効率的にポリオキシアルキレンエーテル酢酸を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<工程(1)>
工程(1)で用いる炭素数4〜22の炭化水素基を有するアルコールとしては、一般式(I)で表されるポリオキシアルキレンエーテル酢酸の界面活性剤としての性能発現の観点から、炭素数6〜16の炭化水素基を有するアルコールが好ましい。
炭素数4〜22の炭化水素基を有するアルコールの具体例としては、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、ドコサノール等が挙げられる。前記エーテル酢酸の界面活性剤としての性能発現の観点から、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノールが好ましい。
【0014】
前記炭化水素基としては、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖若しくは環状構造を有する脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、またはアルケニル基がより好ましく、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基がさらに好ましく、直鎖のアルキル基が特に好ましい。
【0015】
工程(1)は、反応性、生産性向上の観点から、アルカリ触媒の存在下で反応を行う。
前記アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。反応性、入手容易性の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。
【0016】
工程(1)で用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシドが挙げられる。身体洗浄剤として使用する場合の起泡性や使用感(例えば、すすぎ性やぬるつき感)を向上させる観点、入手容易性の観点から、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。なお、一般式(III)で表されるポリオキシアルキレンエーテルを得る場合は、エチレンオキシドが用いられる。
【0017】
工程(1)における付加反応は、例えば実施例2の工程(2)のように行うことができ、下記一般式(I)または一般式(III)で表されるポリオキシアルキレンエーテルを得ることができる。収率及び反応性向上の観点から、下記一般式(I)で表されるポリオキシアルキレンエーテルが好ましい。
R−(CH2−O−X)n−CH2OH (I)
〔式中、Rは炭素数3〜21の炭化水素基を示し、Xは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nはアルキレンオキシ基(CH2−O−X)の平均付加モル数で、1.0〜6.0の数を示す。〕
【0018】
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m−OH (III)
〔一般式(III)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖アルキル基であり、R1とR2の炭素数の合計は3〜21であり、mはエチレンオキシ基(O−CH2−CH2)の平均付加モル数であり、2.0〜6.0の数である。〕
【0019】
一般式(I)中のRは、炭素数が3〜21の炭化水素基であり、好ましくは炭素数5〜15の炭化水素基、より好ましくは炭素数7〜13の炭化水素基、更に好ましくは炭素数9〜13の炭化水素基である。
Rの炭化水素基としては、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖若しくは環状構造を有する脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、またはアルケニル基がより好ましく、直鎖又は分岐鎖のアルキル基がさらに好ましく、直鎖のアルキル基が特に好ましい。
【0020】
一般式(I)中、Rで表される直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基としては、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基などが挙げられる。
【0021】
一般式(I)中、Rで表される直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基としては、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基などが挙げられ、各種のオクタデカジエニル基やオクタデカトリエニル基などの、直鎖若しくは分岐鎖のアルカジエニル基若しくはアルカトリエニル基も用いることができる。
【0022】
一般式(I)中、Rで表される環状構造を有する脂肪族炭化水素基としては、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロドデセニル基、2−(シクロヘキシル)エチル基、3−(シクロヘキシル)プロピル基、2−(シクロヘキセニル)エチル基、3−(シクロヘキセニル)プロピル基などが挙げられる。
前記脂肪族炭化水素基としては、界面活性剤としての性能発現の観点からは、
好ましくはプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、 より好ましくはペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、 更に好ましくはノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基である。
【0023】
一般式(I)中、Xで表される炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基が挙げられる。入手が容易であるという観点から、炭素数1〜2のアルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0024】
一般式(III)中、身体洗浄剤として使用する場合の起泡性や使用感(例えば、すすぎ性やぬるつき感)を向上させる観点から、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜16、さらに好ましくは1〜14、さらに好ましくは1〜12の直鎖アルキル基である。R1とR2の炭素数の合計は、身体洗浄剤として使用する場合の起泡性や使用感(例えば、すすぎ性やぬるつき感)を向上させる観点から、3〜21であり、好ましくは7〜17であり、より好ましくは9〜15、さらに好ましくは11〜13である。
【0025】
一般式(III)中、R1及びR2の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基などが挙げられる。
【0026】
工程(3)における脱水素酸化反応によりエーテル酢酸を生成させるためには、一般式(I)中の末端水酸基は1級である必要があるが、ポリオキシアルキレン中にエーテル酸素のアルキル基側の炭素が分岐しているアルキレンオキシ基が含まれていても問題はない。
【0027】
一般式(I)の中、nは、アルキレンオキシ基(CH2−O−X)の平均付加モル数であり、身体洗浄剤として使用する場合の起泡性や使用感(例えば、すすぎ性やぬるつき感)を向上させる観点から、1.0〜6.0の数であり、2.0〜5.5がより好ましく、2.5〜5.0がさらに好ましい。
【0028】
一般式(III)中、mは、エチレンオキシ基(O−CH2−CH2)の平均付加モル数であり、身体洗浄剤として使用する場合の起泡性や使用感(例えば、すすぎ性やぬるつき感)を向上させる観点から、2.0〜6.0の数であり、好ましくは3.0〜5.5、より好ましくは3.5〜5.0である。
【0029】
なお、本発明の製造方法では、工程(1)の実施に代えて、一般式(I)のポリオキシアルキレンエーテルとして市販品、例えば、花王株式会社製エマルゲン103、エマルゲン106、エマルゲン108などを用いることができる。
【0030】
<工程(2)>
工程(2)では、転化率向上の観点、アルデヒドの生成抑制の観点から、工程(1)で得られたポリオキシアルキレンエーテル中に含まれる前記炭素数4〜22の炭化水素基を有するアルコールを3.0質量%以下、好ましくは0.01〜2.8質量%、より好ましくは0.05〜2.5質量%、更に好ましくは0.07〜2.0質量%、更に好ましくは0.09〜1.5質量%、更に好ましくは0.1〜1.0質量%に低減する。
ポリオキシアルキレンエーテル中に含まれる前記炭素数4〜22の炭化水素基を有するアルコールを前記範囲に低減することで転化率が向上する理由の詳細は明らかではないが、アルキレンオキシド鎖が付加していないアルコールに由来する化学種が触媒活性を阻害するためであると推測される。
【0031】
工程(2)において、前記炭素数4〜22の炭化水素基を有するアルコールを低減する方法としては、蒸留、カラム分離、抽出などが挙げられる。操作の容易性、除去効率の観点から、蒸留、カラム分離が好ましく、蒸留がより好ましい。
【0032】
アルコールの除去方法としては、蒸留操作による除去方法を適用することが好ましい。
蒸留操作は数kPa程度〜1kPa程度までの減圧度で、150℃〜250℃に加熱することで、もっとも沸点が低いアルキレンオキシド鎖の付加していないアルコールを留出させることにより実施される。アルキレンオキシド鎖が付加していないアルコールが低減されたポリオキシアルキレンエーテルは蒸留残渣として得られる。
【0033】
<工程(3)>
工程(3)における、ポリオキシアルキレンエーテルの脱水素酸化反応は、プラチナ触媒の存在下、ポリオキシアルキレンエーテルと水を含有する液相に酸素を供給して実施する。
ここで「液相」とは、工程(3)の反応の開始時も含めた、工程(3)の全ての段階での液相を意味する。
【0034】
工程(3)で用いるプラチナ触媒は、触媒活性の観点から、活性種としてプラチナ(Pt)を含有する触媒であり、触媒の耐久性向上の観点から、担体担持プラチナ触媒が好適である。
【0035】
担体は、触媒の耐久性向上、取り扱い性向上の観点から、無機担体が好ましく、例えば、活性炭、アルミナ、シリカゲル、活性白土、珪藻土などが挙げられる。なかでも活性炭が好ましい。
【0036】
担体担持プラチナ触媒におけるプラチナの担持量は、反応時の液相の粘度増加を抑制する観点、ポリオキシアルキレンエーテル酢酸の生産性を向上する観点から、好ましくは触媒固形分中0.1〜15質量%、より好ましくは1.0〜10質量%である。
【0037】
プラチナ触媒は、アルデヒドの生成を抑制する観点、ポリオキシアルキレンエーテル酢酸の生産性をより向上させる観点から、助触媒成分を含有することが好ましい。
【0038】
助触媒成分としては、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)などが挙げられ、アルデヒドの生成を抑制する観点、生産性をさらに向上させる観点から、ビスマス、鉛を含有することが好ましく、ビスマスを含有することがより好ましい。
【0039】
助触媒成分を含有する場合、担体担持プラチナ触媒における前記助触媒成分の担持量は、アルデヒドの生成を抑制する観点、生産性を向上させる観点から、好ましくは触媒固形分中0.01〜10質量%、より好ましくは0.5〜3.5質量%である。
【0040】
プラチナと助触媒成分の含有量比は、アルデヒドの生成を抑制する観点、生産性を向上させる観点から、助触媒成分/プラチナ(原子比)で、好ましくは0.05〜1.0、より好ましくは0.1〜0.6である。
【0041】
工程(3)で用いるプラチナ触媒は公知の方法で調製される。例えば、プラチナ(及び必要に応じてビスマスなどの助触媒成分)を所定量含有する水溶液中に、活性炭などの担体成分を含浸させ、担体成分上にプラチナ(及び助触媒成分)を吸着させる方法を適用することができる。
【0042】
吸着後は、ホルマリン、ソジウムボロンハイドライド、水素などの還元剤によって還元処理を行う。還元後、濾別、水洗することでプラチナ触媒が得られるが、含水していても、乾燥させても反応に使用することができる。
【0043】
プラチナ触媒は、ポリオキシアルキレンエーテル酢酸の生産性を向上する観点から、触媒中のプラチナの量がポリオキシアルキレンエーテル100質量部に対して0.001〜2.0質量部となるように用いることが好ましく、更に好ましくは0.01〜1.5質量部、更により好ましくは0.02〜1.3質量部となるように用いることが好適である。
【0044】
工程(3)の脱水素酸化反応はバッチ式でも実施することができるほか、例えば、特開2008−94800号公報の図1に示されているような構造の固定床触媒を使用した循環固定床型反応装置を使用することもできる。
【0045】
また、ポリオキシアルキレンエーテルの脱水素酸化反応は、生産性の向上、アルデヒドの生成を抑制する観点から、pH7以下の条件にて反応を行うことが好ましく、より好ましくはpH1〜7、更に好ましくはpH2〜7である。
反応開始時の液相のpHはおよそ7程度であるが、反応が進行するにつれてポリオキシアルキレンエーテル酢酸が生成してくるため、液相は徐々に酸性となり、pHが7以下の状態で反応が進行する。
【0046】
工程(3)においては、反応に際して無機塩の副生を抑制する観点から、塩基を添加しないことが好ましい。
反応に際して塩基を使用しない場合には、従来技術であるカルボキシメチル化法やアルカリ中和酸化法の場合に問題となる無機塩の副生は起こらない。
【0047】
工程(3)の液相中における、ポリオキシアルキレンエーテルとポリオキシアルキレンエーテル酢酸の合計質量と、水の質量との質量比(ポリオキシアルキレンエーテルとポリオキシアルキレンエーテル酢酸の合計質量/水の質量)は、液相の粘度の増加抑制、アルデヒドの生成抑制、並びに生産性の向上の観点から、好ましくは60/40〜95/5であり、より好ましくは65/35〜93/7、更に好ましくは70/30〜90/10である。
ここで、液相中の水の含有量は、反応に際して添加する水のほか、プラチナ触媒などの他の成分に含まれている水も含めた合計質量をいう。
【0048】
ポリオキシアルキレンエーテルとポリオキシアルキレンエーテル酢酸の合計質量と、水との質量比を前記範囲内に調整することで、反応に伴う粘度の著しい増加を抑制できると共に、アルデヒド化合物の副生を抑えて目的生成物であるポリオキシアルキレンエーテル酢酸を高い収率で得ることができる。
前記効果が得られる詳細な理由は明らかではないが、液相中のポリオキシアルキレンエーテルとポリオキシアルキレンエーテル酢酸の合計質量と水の質量比を前記範囲内とすることで、水分含有量が低く水が連続相となっている粘度の高い状態から油分が連続相となる低粘度の相に変化するためであると推定される。
【0049】
工程(3)において、反応開始時における液相中のポリオキシアルキレンエーテルと水との質量比(ポリオキシアルキレンエーテルの質量/水の質量)は、液相の粘度の増加抑制、アルデヒドの生成抑制、並びに生産性の向上の観点から、好ましくは60/40〜95/5であり、より好ましくは65/35〜93/7、更に好ましくは70/30〜90/10、特に好ましくは75/25〜85/15である。
ここで、反応開始時とは、プラチナ触媒の存在下、ポリオキシアルキレンエーテルと水を含有する液相に酸素を供給した時点をいう。
【0050】
工程(3)において、液相中のポリオキシアルキレンエーテルとポリオキシアルキレンエーテル酢酸の合計質量は、液相の粘度の増加抑制、アルデヒドの生成抑制、並びに生産性の向上の観点から、60〜95質量%であることが好ましく、65〜93質量%であることがより好ましく、70〜90質量%であることが更に好ましく、75〜85質量%であることが特に好ましい。
【0051】
工程(3)において、液相中の水の質量は、粘度の増加抑制、アルデヒドの生成抑制、並びに生産性の向上の観点から、5〜40質量%であることが好ましく、7〜35質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが更に好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。
【0052】
工程(3)において、反応開始時における液相中のポリオキシアルキレンエーテルと水の合計質量は、粘度の増加抑制、アルデヒドの生成抑制、並びに生産性の向上の観点から、好ましくは65質量%以上、より好ましくは72質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。
【0053】
工程(3)においては、必要に応じて水に加えて有機溶媒を用いることもできる。使用しうる有機溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールエーテル等のグリコールエーテル、アセトニトリル、tert-ブタノールが挙げられる。有機溶媒除去工程による生産性の低下を抑制する観点から、前記液相中における有機溶媒の含有量は50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは0質量%である。また、前記液相中の水及び有機溶媒の合計質量は、有機溶媒除去工程による生産性の低下を抑制する観点から、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは7〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%、更により好ましくは15〜25質量%である。
【0054】
液相への酸素の供給は、酸素ガスもしくは酸素含有混合ガス(空気など)を液相に吹き込むことによって行うことができる。あるいは、酸素ガスもしくは酸素含有混合ガスを気相流通させ、これらのガスの雰囲気下で反応を実施することによっても行うことができる。
酸素含有混合ガスを用いる場合、酸素と併用するガスの具体例としては、ヘリウム、アルゴン、窒素などの所謂不活性ガスが好ましい。ガス中の酸素濃度は、10体積%以上が好ましく、20体積%以上がより好ましく、50体積%以上が更に好ましく、70体積%以上が更に好ましく、100体積%が特に好ましい。
【0055】
ポリオキシアルキレンエーテルの脱水素酸化を行う際の反応温度は、反応性の向上、選択性の低下抑制の観点から、50〜100℃が好ましく、より好ましくは50〜80℃、更に好ましくは60〜80℃である。反応圧力は常圧下、加圧下の何れとすることもできる。
【0056】
本発明の製造方法によれば、従来技術であるカルボキシメチル化法、アルカリ中和酸化法、未中和酸化法などを適用した場合と比べると、無機塩の除去操作や、煩雑な濃縮操作を必要とせず、反応終了後、触媒を濾過する工程のみで、高い有効分濃度のポリオキシアルキレンエーテル酢酸を得ることができる。
本発明の製造方法において、上記一般式(I)で表される化合物を用いることで、下記一般式(II)で表されるポリオキシアルキレンエーテル酢酸を得ることができる。
R−(CH2−O−X)n−COOH (II)
〔式中、R、X、nは、一般式(I)と同じ意味を表す。〕
【0057】
また、本発明の製造方法において、ポリオキシアルキレンエーテルとして、上記した一般式(III)で表される化合物を用いた場合、下記一般式(IV)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸を得ることができる。
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m-1−OCH2COOH (IV)
〔式中、R1、R2、及びmは、前記一般式(III)と同じ意味を表す。〕
【0058】
一般式(II)または一般式(IV)で表されるポリオキシアルキレンエーテル酢酸を、例えば、身体洗浄用洗浄剤組成物に用いた場合、使用感、泡立ち、皮膚へのマイルドな刺激性などの優れた効果が得られる。
【0059】
本発明の例示的実施形態として、以下の製造方法、あるいは用途をさらに本明細書に開示する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0060】
<1>下記(1)〜(3)の工程を有するポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
(1)炭素数4〜22、好ましくは炭素数6〜16、より好ましくは炭素数8〜14の炭化水素基を有するアルコールにアルキレンオキシドをアルカリ触媒存在下で付加させて下記一般式(I)または下記一般式(III)で表されるポリオキシアルキレンエーテルを得る工程。
R−(CH2−O−X)n−CH2OH (I)
〔式中、Rは炭素数3〜21の炭化水素基、好ましくは炭素数5〜15の炭化水素基、より好ましくは炭素数7〜13の炭化水素基、更に好ましくは炭素数9〜13の炭化水素基を示し、Xは炭素数1〜3のアルキレン基、好ましくはメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基及びイソプロピレン基から選ばれる基、より好ましくはメチレン基及びエチレン基から選ばれる基、更に好ましくはメチレン基を示し、nはアルキレンオキシ基(CH2−O−X)の平均付加モル数で、1.0〜6.0、好ましくは2.0〜5.5、より好ましくは2.5〜5.0の数を示す。〕
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m−OH (III)
〔一般式(III)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜16、さらに好ましくは1〜14、さらに好ましくは1〜12の直鎖アルキル基であり、R1とR2の炭素数の合計は3〜21、好ましくは7〜17であり、より好ましくは9〜15、さらに好ましくは11〜13であり、mはエチレンオキシ基(O−CH2−CH2)の平均付加モル数であり、2.0〜6.0、好ましくは3.0〜5.5、より好ましくは3.5〜5.0の数である。〕
(2)工程(1)で得られたポリオキシアルキレンエーテル中に含まれる前記炭素数4〜22、好ましくは炭素数6〜16、より好ましくは炭素数8〜14の炭化水素基を有するアルコールを3.0質量%以下、好ましくは0.01〜2.8質量%、より好ましくは0.05〜2.5質量%、更に好ましくは0.07〜2.0質量%、更に好ましくは0.09〜1.5質量%、更に好ましくは0.1〜1.0質量%に低減する工程。
(3)工程(2)で得られたポリオキシアルキレンエーテルと水を含有する液相に酸素を供給して、プラチナ触媒の存在下、前記ポリオキシアルキレンエーテルを脱水素酸化して、下記一般式(II)または下記一般式(IV)で表されるポリオキシアルキレンエーテル酢酸を得る工程。
R−(CH2−O−X)n−COOH (II)
〔式(I)中、R、X、nは、一般式(I)と同じ意味を表す。〕
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m-1−OCH2COOH (IV)
〔式中、R1、R2、及びmは、前記一般式(III)と同じ意味を表す。〕
【0061】
<2>前記一般式(I)及び前記一般式(II)においてXがメチレン基である、前記<1>記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0062】
<3>工程(3)においてpH7以下、好ましくはpH1〜7、より好ましくはpH2〜7の条件にて反応を行う、請求項1又は2記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0063】
<4>工程(3)で使用するプラチナ触媒が担体担持プラチナ触媒である、前記<1>〜<3>の何れかに記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0064】
<5>前記担体が活性炭、アルミナ、シリカゲル、活性白土、または珪藻土から選ばれる、前記<4>に記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0065】
<6>前記担体が活性炭である、前記<4>または<5>に記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0066】
<7>前記担体担持プラチナ触媒におけるプラチナの担持量が、触媒固形分中0.1〜15質量%、好ましくは1.0〜10質量%である、前記<4>〜<6>の何れかに記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0067】
<8>工程(3)で使用するプラチナ触媒が助触媒成分を含有する、前記<1>〜<7>の何れかに記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0068】
<9>前記助触媒成分が、ビスマス、鉛、スズ、金、ルテニウム、およびパラジウムから選ばれる1種又は2種以上である、前記<8>に記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0069】
<10>工程(3)で使用するプラチナ触媒が助触媒成分としてビスマスを含有する、前記<1>〜<9>の何れかに記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0070】
<11>プラチナと助触媒成分の含有量比が、助触媒成分/プラチナ(原子比)で、0.05〜1.0、好ましくは0.1〜0.6である、前記<8>〜<10>の何れかに記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0071】
<12>工程(3)で、プラチナ触媒を、触媒中のプラチナの量がポリオキシエチレンアルキルエーテル100質量部に対して0.001〜2.0質量部、好ましくは0.01〜1.5質量部、より好ましくは0.02〜1.3質量部となるように用いる、前記<1>〜<11>の何れかに記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0072】
<13>工程(3)において、液相中のポリオキシアルキレンエーテルとポリオキシアルキレンエーテル酢酸の合計質量と、水の質量の質量比(ポリオキシアルキレンエーテルとポリオキシアルキレンエーテル酢酸の合計質量/水の質量)が、60/40〜95/5、好ましくは65/35〜93/7、更に好ましくは70/30〜90/10である、前記<1>〜<12>の何れかに記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0073】
<14>工程(3)において、反応開始時における液相中のポリオキシアルキレンエーテルと水の質量比(ポリオキシアルキレンエーテルの質量/水の質量)が、60/40〜95/5、好ましくは65/35〜93/7、より好ましくは70/30〜90/10、更に好ましくは75/25〜85/15である、前記<1>〜<13>の何れかに記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0074】
<15>工程(1)における反応温度が50℃〜100℃、好ましくは50〜80℃、より好ましくは60〜80℃である、前記<1>〜<14>の何れかに記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0075】
<16>工程(1)において使用するアルカリ触媒が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、前記<1>〜<15>の何れかに記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【0076】
<17>工程(2)において、減圧下で蒸留することで前記炭素数4〜22、好ましくは炭素数6〜16、より好ましくは炭素数8〜14の炭化水素基を有するアルコールを3.0質量%以下、好ましくは0.01〜2.8質量%、より好ましくは0.05〜2.5質量%、更に好ましくは0.07〜2.0質量%、更に好ましくは0.09〜1.5質量%、更に好ましくは0.1〜1.0質量%に低減する、前記<1>〜<16>の何れかに記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【実施例】
【0077】
<ポリオキシエチレンラウリルエーテル中のラウリルアルコールの定量>
ラウリルアルコールの規定濃度のエタノール溶液を調製し、GCを測定しその面積より検量線を作成した。この検量線をもとに絶対検量線法によりポリオキシエチレンラウリルエーテル中のラウリルアルコールの含有量を求めた。
【0078】
<ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルアルデヒドの含有量および転化率の測定>
反応により生成した反応混合物中のポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は、メチルエステル化したのちガスクロマトグラフィ(GC)により下記条件にて測定し、EO付加モル数10モルまでのGC面積%で示した。
転化率は、反応混合物中に残存しているポリオキシエチレンラウリルエーテル、生成したポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸のGC分析値に基づいて算出した。
【0079】
(GC条件)
GC機器;アジレントテクノロジー社製 6850シリーズII
カラム;アジレントテクノロジー社製 HP−ULTRA1(25m)
検出器;FID
キャリア;ヘリウムガス、1mL/min
昇温;100℃から300℃まで5℃/minで昇温。その後45分間300℃を保持
【0080】
実施例1
<工程(1)及び(2)>
工程(1)の実施に代えて、一般式(I)で表されるポリオキシアルキレンエーテルとして、花王株式会社製エマルゲン106(エチレンオキシド付加触媒:水酸化カリウム、ラウリルアルコール/エチレンオキシド4.6モル付加品、GC定量分析からラウリルアルコールは5.7質量%)を使用した。
前記ポリオキシアルキレンエーテルを原料に用いて減圧下蒸留操作を行い、残存しているラウリルアルコールを留去した。蒸留ボトムのGC定量分析よりラウリルアルコールは0.4質量%であった。
【0081】
<工程(3)>
ガス導入口、ガス出口、温度計、pH電極及びテフロン(登録商標)製三日月型攪拌翼(翼面積12.8cm2)を装着した攪拌機を装備したガラス製丸底フラスコ(内容積0.5L)に、上記ポリオキシエチレンラウリルエーテル(残存ラウリルアルコール0.4質量%)265g、水50g及び活性炭担持含水プラチナ−ビスマス触媒(Evonik Degussa製,触媒固形分中プラチナ5質量%-ビスマス1質量%、触媒有り姿中の水分59質量%)32gをそれぞれ仕込んだ。液相中の水の含有量は20質量%であった。
【0082】
常圧下で窒素置換した後、液相の温度を70℃に昇温し、窒素雰囲気下で15分攪拌した。その後、窒素ガス導入を停止し、酸素ガスを90mL/minの速度にて導入、気相流通し、液相を400rpmにて攪拌し7時間反応させた。7時間反応後、窒素置換を行い、反応を停止させた。
反応液から触媒を濾別し、得られた反応混合物についてガスクロマトグラフィ分析を行った。その結果、ポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は91%、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は87%であった。
【0083】
実施例2
<工程(1)>
6Lオートクレーブにラウリルアルコール2770g、水酸化カリウム5.12gを仕込み窒素置換を行った後、減圧下110℃で脱水操作を行った。その後、155℃に昇温し、エチレンオキシド1930gを徐々に圧入した。圧入終了後1時間反応を行い、冷却した。
得られた生成物の水酸基価よりエチレンオキシドの付加モル数は3.6モル、GC定量分析からラウリルアルコールは8.7質量%であった。
【0084】
<工程(2)>
工程(1)で得たポリオキシアルキレンエーテルを原料に用いて減圧下蒸留操作を行い、残存しているラウリルアルコールを留去した。蒸留ボトムのGC分析よりラウリルアルコールは0.2質量%であった。
【0085】
<工程(3)>
工程(2)で得たポリオキシアルキレンエーテル(残存ラウリルアルコール0.2質量%)を原料として用いた以外は実施例1と同様に脱水素酸化を行った。
その結果、9時間後のポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は90%、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は86%であった。
【0086】
実施例3
<工程(1)、(2)>
実施例1と同様にしてエマルゲン106を原料としてラウリルアルコール含有量が1.3質量%のポリオキシアルキレンエーテルを調製した。
<工程(3)>
さらに実施例1と同様にして脱水素酸化反応を7時間行った。その結果、ポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は85%、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は83%であった。
【0087】
実施例4
<工程(1)、(2)>
実施例1と同様にしてエマルゲン106を原料としてラウリルアルコール含有量が2.3質量%のポリオキシアルキレンエーテルを調製した。
<工程(3)>
さらに実施例1と同様にして脱水素酸化反応を7時間行った。その結果、ポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は80%、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は77%であった。
【0088】
比較例1
ガス導入口、ガス出口、温度計、pH電極及びテフロン(登録商標)製三日月型攪拌翼(翼面積12.8cm2)を装着した攪拌機を装備したガラス製丸底フラスコ(内容積0.5L)に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(一般式(I)において、n=4.6の化合物:花王株式会社製エマルゲン106;GC定量分析からラウリルアルコールは5.7質量%)265g、水50g及び活性炭担持含水プラチナ−ビスマス触媒(Evonik Degussa製,触媒固形分中プラチナ5質量%-ビスマス1質量%、触媒有り姿中の水分59質量%)32gをそれぞれ仕込んだ。液相中の水の含有量は20質量%であった。
【0089】
常圧下で窒素置換した後、液相の温度を70℃に昇温し、窒素雰囲気下で15分攪拌した。その後、窒素ガス導入を停止し、酸素ガスを90mL/minの速度にて導入、気相流通し、液相を400rpmにて攪拌し7時間反応させた。7時間反応後、窒素置換を行い、反応を停止させた。
反応液から触媒を濾別し、得られた反応混合物についてガスクロマトグラフィ分析を行った。その結果、ポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は72%、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は66%であった。
【0090】
比較例2
ラウリルアルコールを蒸留により留去する工程(2)を行わない以外は実施例2と同様に脱水素酸化を行った。
その結果、反応9時間後のポリオキシエチレンラウリルエーテル転化率は68%、目的とするポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の含有量は59%であった。
【0091】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)の工程を有するポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
(1)炭素数4〜22の炭化水素基を有するアルコールにアルキレンオキシドをアルカリ触媒存在下で付加させて下記一般式(I)または下記一般式(III)で表されるポリオキシアルキレンエーテルを得る工程。
R−(CH2−O−X)n−CH2OH (I)
〔式中、Rは炭素数3〜21の炭化水素基を示し、Xは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nはアルキレンオキシ基(CH2−O−X)の平均付加モル数で、1.0〜6.0の数を示す。〕
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m−OH (III)
〔一般式(III)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖アルキル基であり、R1とR2の炭素数の合計は3〜21であり、mはエチレンオキシ基(O−CH2−CH2)の平均付加モル数であり、2.0〜6.0の数である。〕
(2)工程(1)で得られたポリオキシアルキレンエーテル中に含まれる前記炭素数4〜22の炭化水素基を有するアルコールを3.0質量%以下に低減する工程。
(3)工程(2)で得られたポリオキシアルキレンエーテルと水を含有する液相に酸素を供給して、プラチナ触媒の存在下、前記ポリオキシアルキレンエーテルを脱水素酸化して、下記一般式(II)または下記一般式(IV)で表されるポリオキシアルキレンエーテル酢酸を得る工程。
R−(CH2−O−X)n−COOH (II)
〔式(I)中、R、X、nは、一般式(I)と同じ意味を表す。〕
1(R2)CH−(O−CH2−CH2m-1−OCH2COOH (IV)
〔式中、R1、R2、及びmは、前記一般式(III)と同じ意味を表す。〕
【請求項2】
前記一般式(I)及び前記一般式(II)においてXがメチレン基である、請求項1記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【請求項3】
工程(3)においてpH7以下の条件にて反応を行う、請求項1又は2記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【請求項4】
工程(3)で使用するプラチナ触媒が助触媒成分としてビスマスを含有する、請求項1〜3の何れか1項記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【請求項5】
工程(3)において、液相中のポリオキシアルキレンエーテルとポリオキシアルキレンエーテル酢酸の合計質量と、水の質量の質量比(ポリオキシアルキレンエーテルとポリオキシアルキレンエーテル酢酸の合計質量/水の質量)が、60/40〜95/5である、請求項1〜4の何れか1項記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【請求項6】
工程(3)において、反応開始時における液相中のポリオキシアルキレンエーテルと水の質量比(ポリオキシアルキレンエーテルの質量/水の質量)が、60/40〜95/5である、請求項1〜5の何れか1項記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【請求項7】
工程(1)における反応温度が50℃〜100℃である、請求項1〜6の何れか1項記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【請求項8】
工程(1)において使用するアルカリ触媒が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである請求項1〜7の何れか1項記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。
【請求項9】
工程(2)において、減圧下で蒸留することで前記炭素数4〜22の炭化水素基を有するアルコールを3.0質量%以下に低減する、請求項1〜8の何れか1項記載のポリオキシアルキレンエーテル酢酸の製造方法。

【公開番号】特開2013−107868(P2013−107868A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129951(P2012−129951)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】