説明

ポリオキシエチレン誘導体のナノ粒子

本発明は、医薬または化粧活性成分の投与用の、1μm未満のサイズを有する、ポリオキシエチレン誘導体のナノ粒子に関する。本発明によるナノ粒子は、生物分解性ポリマー、ポリオキシエチレン誘導ブロックコポリマーおよび少くとも1種の医薬または化粧活性成分を含んでなる。本発明はまた、上記ナノ粒子を得る方法、およびそれを含有する組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、活性分子の投与に適した、新規組成を有するナノ粒子(1μm未満のサイズ)に関する。該新規組成は、2種のポリマー:生物分解性ポリマーおよびポリオキシエチレン誘導ブロックコポリマー(polyoxyethylene-derived block copolymer)を含んでなる。
【0002】
背景技術
薬物の安定性を改善して、生物のある部分へのその輸送および放出制御を促すという効果のために、ポリマーナノ粒子には特別な関心が払われている。それらの形成に最も用いられている生物分解性ポリマーは、生物分解性、生体適合性および無害性のために、ポリ乳酸(PLA)およびそれらとグリコール酸とのコポリマー(PLGA)である(Johansen et al.,Eur.J.Pharm.Biopharm.,2000,50,129-146)。こうした趣旨で将来有望な他の生物分解性ポリマーは、ポリ(ε‐カプロラクトン)(Losa et al.,Pharm.Res.,1993,10,1,80-87)およびポリ酸無水物(Mathiowitz et al.,Nature,1997,386,410-414)のようなポリエステルである。
【0003】
多数の治療用分子の封入および放出に関して、PLAおよびPLGAマイクロ‐およびナノ粒子が詳細に研究されてきた(Quintanar-Guerrero et al.,Drug Dev.Ind.Pharm.,1998.24(12),1113-1128;Sanchez et al.,Int.J.Pharm.,1993,99,263-273;Sturesson et al.,J.Control.Rel.,1999,59,377-389;Hsu et al.,J.Drug Targ.,7(4),313-323)。これら粒子の顕著な特徴は、活性分子の放出を制御する能力がそれらの分解特性に依存している、という事実にある。このように、ポリマー分解速度の制御が、それに伴う活性分子の放出の制御に直接的影響を有している。ポリエステル分解で酸オリゴマーの形成に至り、これが粒子内部に蓄積することで、ポリマー格子の酸性化と、それに伴う粒子内部pHの大きな低下とを招くことが知られている(Belbella et al.,Int.J.Pharm.,1996,129,95-102)。粒子内でポリマー分解産物の蓄積により起こるこの酸細部環境は、そこに封入された活性分子の安定性に対して非常にネガティブな影響を与えるため、タンパク質およびDNAプラスミドのような高分子の放出制御用途において、これらポリマー系の使用に制限を加えてしまう(Zhu et al.,Nature Biotech.,18,52-57)。
【0004】
ポロキサマーとは、PEO:PPO比に応じて分子量、疎水性などの特徴が変わる、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレン‐ポリオキシエチレンタイプトリブロックコポリマー(PEO‐PPO‐PEO)である。ポロキサミンとは、エチレンジアミン架橋で結ばれた4鎖のPEO‐PPOから形成されるコポリマーである。ポロキサマーのように、PEO:PPO比が変わると、それらの特徴も変わることがある。
【0005】
このポリオキシエチレン誘導コポリマー群として最近提案された用途の1つは、血液脳関門(BBB)を通る薬物の輸送を促すことである(Kabanov et al.,Adv.Drug.Deliv.Rev.,2003,55,151-164)。同様に、最近の研究はDNAプラスミドトランスフェクション研究でもその効果を明らかにした(Lemieux et al.,Gene Ther.,2000,7,986-991)。
【0006】
さらに、PEO‐PPOブロックコポリマーは、薬物トランスポーターとして用いられるナノ粒子の生体分布を変更させるコーティング剤として、広く研究されてきた。こうして、ポロキサマーおよびポロキサミンでナノ粒子を被覆すると、それらの生体分布、ひいては生体の異なる部分へ薬物を輸送する能力に影響を与えることを明らかにした、数多くの研究がある(Moghimi et al.,FEBS Letters,1994,344,25-30;Hawley et al.,FEBS Letters,1997,400,319-323)。
【0007】
PEO‐PPO誘導体の使用がナノ粒子コーティング剤として特許請求されている、様々な文献がある(WO96/20698およびUS4904479)。その目的は、それらの静脈注射後における循環時間を延ばして、それらの生体分布特性を変更させることであった。上記組成物において、ポロキサマー/ポロキサミンは粒子を構成するポリマーマトリックスの一部を形成しているわけではないが、それは表面レベルで吸収されている。したがって、吸収されたポロキサマー/ポロキサミンの量は限られており、その存在は粒子に封入された活性分子の封入または放出制御に影響を及ぼさず、その役割は粒子生体分布特性の変更に限定されている。
【0008】
加えて、他の文献US5578325では、上記コポリマーをポリエステルへ化学的に結合させてマルチブロックコポリマーを形成させる、という考え方が提案された。これらの場合には、ポリオキシエチレン誘導体がポリエステルへ共有結合されることで、新コポリマーの形成に至っている。これらのコポリマーは、それらが静脈内投与後も長時間にわたり循環流中に留まることを意味する、PEO‐PPO被覆ナノ粒子の入手も可能にしている。
【0009】
PEO‐PPOブロックコポリマーが用いられた他の文献において、その目的はPLGA粒子に封入されたタンパク質の安定化と、そこからのそれら放出性の改変であった。そこで、我々の研究所で以前に行われた研究から、ポリ乳酸/グリコール酸(PLGA)のマイクロおよびナノ粒子への、PEO‐PPOブロックコポリマー、さらに詳しくはポロキサマーの配合が、上記粒子にナノ封入されたタンパク質の安定性を改善しうることを、我々は確かめることができた。この初期研究では、粒子中ポロキサマーの配合のために、我々は二重エマルジョン法(水/有機溶媒/水)を選択したが、そのため親水性ポロキサマーはエマルジョンの水性内相に溶解される(Blanco et al.,Eur.J.Pharm.Biopharm.,1997,43,287-294;Blanco et al.,Eur.J.Pharm.Biopharm.,1998,45,285-294)。この方法では、PLGAの量と比較して、ポロキサマーの配合量を非常に少なくさせてしまう(通常、その比率はPLGA:ポロキサマー 10:1である)。これは2つの主な理由による:一つは、ポロキサマーが溶解される内部水相の容量が、疎水性ポリマー(PLGA)が溶解される有機溶媒の容量よりかなり少ないこと;もう一つは、乳化プロセスに際して、ポロキサマーが水性内相から水性外相の方へ拡散して、粒子形成を妨げる傾向があることである。この難問は、界面活性剤が溶解された外部油相に(PLGAおよびポロキサマーが溶解されねばならない)有機溶媒エマルジョンを形成させる、無水マイクロカプセル化法を用いることにより、解決された。この方法のおかげで、多量のポロキサマーがPLGAマイクロ粒子に(50%まで)配合されるようになり、混合PLGA:ポロキサマーマトリックスを形成できたのである。ポロキサマーおよびPLGAの完全混合物により形成されるこの混合マイクロ微粒子系では、タンパク質の放出制御が可能となった(Tobio et al.,Pharm.Res.,1999,16,5,682-688)。それにもかかわらず、この方法で最も顕著な欠点はナノメートル粒子の入手の難しさにあり、それら粒子群の中間サイズは1μm(1000ナノメートル)より大きい。さらに、エマルジョンの外相として油を用いる必要性があるため、微小球を単離することが非常に難しくなり、油を除去するために多量の有機溶媒を用いられねばならない。したがって、混合ポロキサマー:PLGAナノ粒子に多量のポロキサマーを配合させられる方法は、これまで開示されていないのである。
【0010】
ポリエステルとの混合マトリックスの形成におけるポロキサマーの使用に関する最初の報告は、文献US5330768で開示された両ポリマーの物理的結合に基づくものであった。上記文献では、上記混合物の使用を、これらの系に入れられた活性分子の放出性について改変するために提案している。そこでは、普通有機溶媒への両ポリマーの同時溶解に続く溶媒の蒸発または両ポリマーのジョイント接合によるフィルムの形成と、さらには二重エマルジョン法(水/有機溶媒/水)によるマイクロ粒子の形成とに言及しているが、それでもナノ粒子の形成には触れていない。外部水相で粒子形成する上記方法では、外部水相へ拡散するそれらの論理的傾向のために、限定量の親水性ポロキサマーを配合しうるにすぎないことを、我々は強調しなければならない。我々は我々の以前の研究でこの事実を証明できていた(Blanco et al.,Eur.J.Pharm.Biopharm.,1997,43,287-294;Blanco et al.,Eur.J.Pharm.Biopharm.,1998,45,285-294)。同様に、文献US5330768は、上記混合物の形成に際して、親油性ポロキサマーまたはポロキサミンの使用を述べていない。
【0011】
マイクロカプセル化タンパク質の安定性を改善し、さらにはそれらの放出制御を可能にさせるように考えられた、ポロキサマーおよびPLGAの完全混合物により形成される混合マイクロ微粒子系の形成に言及している最初の文献は、Tobioらにより発表された文献(Pharm.Res.,1999,16,5,682-688)である。さらに最近では、文献US6465425も同目的でポロキサマーを含有した生物分解性マイクロ粒子の形成について開示している。同様に、該組成物へは、同目的で、酸タイプ賦形剤および少くとも1種の多糖を配合している。上記文献によれば、該組成物に含有させうるポロキサマーの量は、組成物の総重量に対して1〜40%である。この組成物の製品は、溶媒の単純蒸発により得られるフィルム、または噴霧により得られるマイクロ粒子である。それにもかかわらずナノ粒子の形成には言及されていなかったが、このことは、該噴霧技術ではナノ粒子のように小さな粒子を得ることができないことを留意しておけば理解しうることである。
【0012】
同様の趣旨で、タンパク質安定性を改善する目的から、我々はSchwendemanらにより出願された文献(US2002/0009493)を強調しなければならず、そこではポリエステルから製造された系における孔形成剤としての分子量500〜30,000Daの親水性ポロキサマーの使用について開示している。上記文献では、サイズ10〜100μmの円柱体またはマイクロ粒子の形で、これら組成物の製品を特許請求している。これらの粒子は、以前の研究で指摘されたように少量の親水性ポロキサマーを配合しうるすぎない、外部水相における二重エマルジョン技術を用いるか(Blanco et al.,Eur.J.Pharm.Biopharm.,1997,43,287-294;Blanco et al.,Eur.J.Pharm.Biopharm.,1998,45,285-294)、以前指摘されたように(Tobio et al.,Pharm.Res.,1999,16,5,682-688)ナノ粒子を得られない、有機溶媒/油乳化技術を用いて得ている。
【0013】
ポロキサマーを含有したナノ粒子の形成について明確に言及した文献として、我々は文献US5962566を挙げねばならない。しかしながら、この文献ではナノ粒子形成の必須成分としてのコレステロールの配合を示している。該形成方法では、各物質を溶融させてから、それらを水相に分散させる必要性をさらに示している。
【0014】
同様に、我々は、安定化脂質剤に加えて、構造中にポロキサマーおよびポロキサミンを配合した、ナノ粒子の形成について開示した文献を挙げられる(US2003/0059465)。これらのナノ粒子はカンプトテシン静細胞剤の放出用であり、それらは既に凍結乾燥された脂質を水和させるプロセスにより得られる。上記文献はPLGAのようなポリエステルを配合しうることについて特許請求しているが、該技術はこのタイプのポリマーに適用できない。いずれにしても、構造中で脂質の配合がナノ微粒子組成物の必須要素として示されている。
【0015】
以前の文献を検討した結果として、PLGAおよびポロキサマー粒子の形成に言及した文献は多数あるにもかかわらず、上記いずれの文献も、多量のポロキサマーおよびポロキサミンを含有して、様々な親水性/親油性特徴を有し、しかもナノ微粒子形で供与される、混合マトリックスの形成については開示していないことを、我々は強調しなければならない。マイクロ粒子の形成向けのマイクロカプセル化技術は、ナノ粒子の形成に適用されるナノ技術と通常異なることから、この最後の側面は極めて重要である。ナノ粒子を得ることに関して公表された文献では、非常に少ない割合で配合した親水性ポロキサマーをナノ微粒子系に用いているにすぎないことも、我々は強調しなければならない。
【発明の具体的説明】
【0016】
本発明は、生物分解性ポリマー、好ましくはポリエステルと、ポリオキシエチレン誘導ブロックコポリマー、好ましくはポロキサマーおよびポロキサミンとを含んでなるナノ粒子に関する。本発明はまた、ナノ粒子へ高率でのポロキサマーおよびポロキサミンの配合を可能にする製造方法であって、生物分解性ポリマー:ポリエチレン誘導体の比率が1:0.1〜1:3である、製造方法に関する。
【0017】
したがって、第一の態様によれば、本発明は活性成分の投与用の1μm未満のサイズを有するナノ粒子の製造方法であって、
a)生物分解性ポリマーをポリオキシエチレン誘導ブロックコポリマーと一緒に有機溶媒に溶解し、生物分解性ポリマー:ブロックコポリマー重量比が1:0.1〜1:3であり、
b)得られた溶液を、生物分解性ポリマーが低溶解性を有する極性相へ攪拌しながら加え、該ポリマーを沈降させて、ナノ粒子を形成させ、
c)有機溶媒を除去し、
d)上記粒子を単離すること
を含んでなる方法に関する。活性成分は無極性有機溶媒へ直接溶解させるか(親油性分子の場合)、またはそれは少量の水相へ先に溶解させ(水溶性分子の場合)、次いで工程a)の前または後に、有機溶媒へ分散させる。
好ましくは、a)の有機溶媒は無極性溶媒である。
【0018】
好ましい態様によれば、完全混合物のナノ粒子処方物の製造には、さらに凍結乾燥工程を含めてもよい。凍結乾燥形では、ナノ粒子は長期間にわたり保存でき、最適量の水を単に加えることで容易に再生しうる。ナノ粒子凍結乾燥は、処方物懸濁媒体に凍結保護賦形剤(グルコースまたはトレハロース)を配合することにより、最適化された。
【0019】
他の好ましい態様によれば、以前の方法のように、生物分解性ポリマーはポリエステルであり、該ポリエステルはポリ乳酸、ポリ乳酸コグリコール酸およびそれらのコポリマーのようなポリエステルの群、ポリカプロラクトン、またはポリ酸無水物の群から選択される。完全混合物のナノ粒子を製造するためには、ポリ乳酸コグリコール酸ポリマー50:50 Resomer(登録商標)RG503 Mw:35000(Boehringer Ingelheim)が用いられる。
【0020】
他の好ましい態様によれば、ブロックコポリマーはポロキサマーおよびポロキサミンから選択される。
【0021】
ポロキサマーとは、PEO:PPO比に応じて分子量、疎水性などの特徴が異なる、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレン‐ポリオキシエチレンタイプトリブロックコポリマー(PEO‐PPO‐PEO)である。好ましくは、用いられるポロキサマーは1000〜25,000ダルトンの分子量を有する。これらのポリマーは商品名Pluronic(登録商標)でBASF社から得られる。完全混合物のナノ粒子の製造のために、我々は下記ポロキサマーを用いた:分子量8350およびHLB=29のPluronic(登録商標)F68、分子量4400およびHLB=1のPluronic(登録商標)。
【0022】
ポロキサミンとは、エチレンジアミン架橋で結ばれた4鎖のPEO‐PPOから形成されるコポリマーである。ポロキサマーのように、PEO:PPO比が変わると、それらの特徴も変わることがある。好ましくは、用いられるポロキサミンは1000〜25,000ダルトンの分子量を有する。これらのポリマーは商品名Tetronic(登録商標)でBASF社から得られる。完全混合物のナノ粒子の製造のために、我々は下記ポロキサミンを用いた:分子量25000およびHLB=30.5のTetronic(登録商標)908、分子量6700およびHLB=14.5のTetronic(登録商標)904、および分子量4700およびHLB=2.5のTetronic(登録商標)901。
他の好ましい態様によれば、生物分解性ポリマーの重量割合は1:1〜1:3である。
【0023】
本発明の第二の態様によれば、それは前記方法に従い得られる凍結乾燥および非凍結乾燥双方のナノ粒子に関する。
【0024】
これらのナノ粒子は、タンパク質およびDNAプラスミドのような非常にデリケートな活性分子の封入および放出制御に関するそれらの能力から鑑みて、斬新で独特な特徴を呈する。さらに、それら組成における顕著な量のポロキサマーおよびポロキサミンの存在のおかげで、上記ナノ粒子は、ポリエステルから形成される古典的粒子と比較して、差別化された生体分布特性を発揮しうる。
【0025】
それらのナノ微粒子サイズのため、これらの新規系は静脈経路を含めていかなる投与経路でも人体へ投与できるが、一方マイクロ粒子は、それらが毛細血管で起こす閉塞のせいで、この経路では投与しえない。ナノ粒子は生体バリア(粘膜、上皮)を乗り越えられるが、マイクロ粒子はできないことを示す文献も、多数ある。
【0026】
異なる組成および異なるポリマー比の処方物の物理化学的性質は、光子相関分光法(PCS)およびレーザードップラー流速測定技術を用いて特徴付けられた。ナノ粒子の形態は、透過型電子顕微鏡(TEM)および1H NMRを用いて研究された。これらの研究から、前記の完全混合物系の形成を確認した。
【0027】
完全混合物のこれらナノ粒子の、関連高分子の放出への適用可能性を調べるために、我々は異なる処方でpEGFP‐C1プラスミド(緑色蛍光タンパク質のコーダー)を封入した。これらインビトロ放出試験の結果から、長期間にわたる放出制御手段として、該処方物の可能性を明らかにした。
【0028】
異なる組成のナノ粒子の細胞毒性が、異なる濃度で、10%牛胎児血清(FBS)で補充されたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で増殖されたMCF‐7細胞系において、MTS比色試験((3‐(4,5‐ジメチルチアゾール‐2‐イル)‐5‐(3‐カルボキシメトキシフェニル)‐2‐(4‐スルホフェニル)‐2H‐テトラゾリウム)により、細胞培養物で試験された。いずれの処方物も細胞で毒性作用を示さない、と結論付けられる。
【0029】
第三の態様によれば、本発明は、本発明によるナノ粒子を配合した組成物、特に医薬品および化粧品に関する。
【0030】
以下では、本発明の範囲に制限を加えることなく、一連の実施例に基づき、本発明がさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0031】
例1
完全混合物のナノ粒子を上記の改変された溶媒拡散技術で製造した。さらに詳しくは、50mgのポリ乳酸コグリコール酸および25、50または75mgのPluronic.(登録商標)F68(HLB=29)ポロキサマーをジクロロメタン2mLに溶解し、この有機溶液を少量の水相と回ボルテックス(2400min−1、Heidolph)により30秒間混合した。こうして得られたエマルジョンを適度な磁気攪拌下でエタノール25mLへ加えた。処方物を水25mLで希釈し、それをさらに10分間攪拌した。30℃真空下(Rotavapor,Buchi R-114)で溶媒蒸発後、ナノ粒子を集め、水性媒体中で濃縮した。所望により、後の分析のため、ナノ粒子を遠心(1h、8000×g、15℃、Avanti 30、Beckman)し、それらを凍結乾燥(−34℃で48時間、Labconco Corp)した。
【0032】
ナノ粒子のサイズおよび多分散度を光子相関分光法(PCS)を用いて測定し、表面電荷をレーザードップラー流速測定(Zetasizer 3000 HS、Malvern Instruments)により調べた(表1)。
【0033】
重水素クロロホルムに溶解された凍結乾燥サンプルから、1H NMR分光法(Bruker AMX-300)を用いて、マトリックス組成を分析した。これらの試験で、ナノ微粒子マトリックス中にポロキサマー/ポロキサミンの存在を確認した。対応ピークの強度から、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンブロックコポリマーの量が調製パラメーターを調整することにより変えうることも、我々は結論付けられる(図1)。
【0034】
透過型電子顕微鏡(CM12 Philips)を用い、2%リンタングステン酸溶液で染色されたサンプルを用いて、ナノ構造の形態学的分析を行った(図2)。
【0035】
【表1】

【0036】
例2
完全混合物のナノ粒子を上記の改変された溶媒拡散技術で製造したが、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンコポリマーのタイプを変えた。PLGAと異なる量のPluronic(登録商標)L121(HLB=1)ポロキサマーをジクロロメタンに溶解し、この有機溶液を少量の水相とボルテックスにより混合した。こうして得られたエマルジョンを攪拌下でエタノールへ加えた。処方物を水で希釈し、それをさらに10分間攪拌した。溶媒蒸発後、ナノ粒子を水性媒体中で濃縮した。所望により、後の分析のため、ナノ粒子を遠心および凍結乾燥した。ナノ粒子のサイズおよび多分散度をPCSを用いて測定し、表面電荷をレーザードップラー流速測定により調べた(表2)。1H NMR分光法およびTEM顕微鏡を用いてマトリックスの組成を調べた。
【0037】
【表2】

【0038】
例3
完全混合物のナノ粒子を上記の改変された溶媒拡散技術で製造したが、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンコポリマーのタイプを変えた。PLGAと、異なる量のTetronic(登録商標)908(HLB=30.5)ポロキサミンとをジクロロメタンに溶解し、この有機溶液を少量の水相と回転により混合した。こうして得られたエマルジョンを攪拌下でエタノールへ加えた。処方物を水で希釈し、それをさらに10分間攪拌した。溶媒蒸発後、ナノ粒子を水性媒体中で濃縮した。
【0039】
所望により、後の分析のため、ナノ粒子を遠心および凍結乾燥した。ナノ粒子のサイズおよび多分散度をPCSを用いて測定し、表面電荷をレーザードップラー流速測定により調べた(表3)。1H NMR分光法およびTEM顕微鏡を用いてマトリックスの形態および組成を調べた(図3および4)。
【0040】
【表3】

【0041】
例4
完全混合物のナノ粒子を上記の改変された溶媒拡散技術で製造したが、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンコポリマーのタイプを変えた。PLGAと、異なる量のTetronic(登録商標)904(HLB=14.5)ポロキサミンとをジクロロメタンに溶解し、この有機溶液を少量の水相とボルテックスにより混合した。こうして得られたエマルジョンを攪拌下でエタノールへ加えた。処方物を水で希釈し、それをさらに10分間攪拌した。溶媒蒸発後、ナノ粒子を水性媒体中で濃縮した。
【0042】
所望により、後の分析のため、ナノ粒子を遠心および凍結乾燥した。ナノ粒子のサイズおよび多分散度をPCSを用いて測定し、表面電荷をレーザードップラー流速測定により調べた(表4)。1H NMR分光法およびTEM顕微鏡を用いてマトリックスの形態および組成を調べた(図3および4)。
【0043】
【表4】

【0044】
例5
完全混合物のナノ粒子を前記の改変された溶媒拡散技術で製造したが、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンコポリマーのタイプを変えた。PLGAと、異なる量のTetronic(登録商標)904(HLB=14.5)ポロキサミンとをジクロロメタンに溶解し、この有機溶液を少量の水相と回転により混合した。こうして得られたエマルジョンを攪拌下でエタノールへ加えた。処方物を水で希釈し、それを更に10分間攪拌した。溶媒蒸発後、ナノ粒子を水性媒体中で濃縮した。
【0045】
所望により、後の分析のため、ナノ粒子を遠心および凍結乾燥した。ナノ粒子のサイズおよび多分散度をPCSを用いて測定し、表面電荷をレーザードップラー流速測定により調べた(表5)。1H NMR分光法およびTEM顕微鏡を用いてマトリックスの形態および組成を調べた。
【0046】
【表5】

【0047】
例6
1:1ポリマー比を有するPLGA/Pluronic(登録商標)F68、PLGA/Pluronic(登録商標)L121、PLGA/Tetronic(登録商標)908およびPLGA/Tetronic(登録商標)904の完全混合物のナノ粒子を例1、2、3および4で記載されたように製造した。2種の凍結保護剤(グルコースおよびトレハロース)をナノ微粒子懸濁媒体に配合した。処方物を、異なる濃度(1、2.5、5mg/mL)で、5または10%凍結保護剤の存在下で凍結乾燥させた。ナノ粒子のサイズおよび多分散度を凍結乾燥/再懸濁プロセス後に測定し、それらを初期値と比較した。ナノ粒子濃度、凍結保護剤のタイプおよび濃度の効果を評価した。5%凍結保護剤の存在下では、すべての処方物がさほどの凝集なしに比較的高濃度(2.5mg/mL)で凍結乾燥しうる、と結論付けられる(図7および8)。
【0048】
【表6】

【0049】
例7
1:1ポリマー比を有するPLGA/Pluronic(登録商標)F68、PLGA/Pluronic(登録商標)L121、PLGA/Tetronic(登録商標)908およびPLGA/Tetronic(登録商標)904の完全混合物のナノ粒子を例1、2、3および4で記載されたように製造した。pEGFP‐C1プラスミドモデル(緑色蛍光タンパク質のコーダー)を0.4%の理論量で処方物の内部水相中に配合した。DNA含有処方物のサイズ、多分散度および表面電荷を、光子相関分光法およびレーザードップラー流速測定法を用いて測定した(表7)。pH=7.5のTE緩衝液中、PicoGreen Quantification Kit(Molecular Probes)を用いて、蛍光測定アッセイで異なる時間の上澄のサンプルから封入効率およびインビトロ放出特性を調べた(図9)。
【0050】
【表7】

【0051】
例8
1:1ポリマー比を有するPLGA/Pluronic(登録商標)F68、PLGA/Pluronic(登録商標)L121、PLGA/Tetronic(登録商標)908およびPLGA/Tetronic(登録商標)904の完全混合物のナノ粒子を例1、2、3および4で記載されたように製造した。処方物の細胞毒性を、10%FBSで補充されたDMEM中において、MCF‐7細胞培養物で試験した。異なるナノ粒子濃度(1〜5mg/mL)で細胞を24時間インキュベートした。細胞生存度を24時間リカバリー期後にMTS試薬で測定した。その結果は、高濃度および長インキュベート時間にもかかわらず、いずれの処方物も細胞に毒性作用を表わさないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】異なるポリマー比を有するPLGA/Pluronic(登録商標)F68ナノ粒子処方物の1H NMRスペクトル。
【図2】ポリマー1:1比を有するPLGA/Pluronic(登録商標)F68ナノ粒子処方物のTEM像。
【図3】異なるポリマー比を有するPLGA/Tetronic(登録商標)908ナノ粒子の処方物の1H NMRスペクトル。
【図4】1:1ポリマー比を有するPLGA/Tetronic(登録商標)908ナノ粒子処方物のTEM像。
【図5】PLGA/ポリマー比およびポロキサマーまたはポロキサミンのタイプによるPLGA/ポロキサマーおよびPLGA/ポロキサミンのナノ粒子サイズ。
【図6】PLGA/ポリマー比およびポロキサマーまたはポロキサミンのタイプによるPLGA/ポロキサマーおよびPLGA/ポロキサミンのナノ粒子の表面電荷。
【図7】凍結乾燥されたPLGA/ポロキサマーのナノ粒子サイズに及ぼす凍結保護剤の効果。
【図8】凍結乾燥PLGA/ポロキサマーナノ粒子サイズに及ぼす凍結保護剤の効果。
【図9】1:1ポリマー比を有するPLGA/F68、PLGA/L121、PLGA/T908およびPLGA/T904ナノの粒子に封入されたプラスミドDNAのインビトロ放出特性。
【図10】MCF‐7細胞培養物における、1:1ポリマー比を有するPLGA/F68、PLGA/L121、PLGA/T908およびPLGA/T904のナノ粒子の細胞毒性試験の結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分の投与用の1μm未満のサイズを有するナノ粒子の製造方法であって、
a)生物分解性ポリマーをポリオキシエチレン誘導ブロックコポリマーと一緒に有機溶媒に溶解し、両ポリマーの重量比が1:0.1〜1:3であり、
b)得られた溶液を、生物分解性ポリマーが低溶解性を有する極性相へ攪拌しながら加え、前記ポリマーを沈降させて、ナノ粒子を形成させ、
c)有機溶媒を除去し、
d)粒子を単離すること
を含んでなり、
前記活性成分を、a)の前または後に、a)で用いられる有機溶媒へ溶解させるか、あるいは少量の水相へ溶解させ、a)の前または後に、a)で用いられる有機溶媒へ分散させることを特徴とする。
【請求項2】
e)の後に得られたナノ粒子を凍結乾燥させることをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物分解性ポリマーがポリエステルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物分解性ポリマーがポリ酸無水物(polyanhydride)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリエステルが、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ乳酸コグリコール酸およびそれらの混合物から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ブロックコポリマーがポロキサマーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポロキサマーが1000〜25,000ダルトンの分子量を有している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブロックコポリマーがポロキサミンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポロキサミンが1000〜25,000ダルトンの分子量を有している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記活性成分が、治療性を有する分子、予防接種および化粧成分から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記両ポリマーの重量比が1:1〜1:3である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1および3〜10のいずれか一項に記載された方法を用いて得られる、1μm未満のサイズを有する医薬または化粧活性成分の投与用のナノ粒子。
【請求項13】
請求項2に記載された方法を用いて得られる、1μm未満のサイズを有する医薬または化粧活性成分の投与用の、凍結乾燥されたナノ粒子。
【請求項14】
請求項12または13に記載されたナノ粒子を含んでなることを特徴とする、組成物。
【請求項15】
請求項12または13に記載されたナノ粒子を含んでなることを特徴とする、医薬または化粧品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−525474(P2007−525474A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518241(P2006−518241)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/ES2004/000282
【国際公開番号】WO2005/002550
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(504355789)アドバンスド、イン、ビートロウ、セル、テクノロジーズ、ソシエダッド、リミターダ (9)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED IN VITRO CELL TECHNOLOGIES, S.L.
【Fターム(参考)】