説明

ポリオキシメチレン樹脂組成物

【課題】高い熱安定性を有するポリオキシメチレン樹脂組成物の提供。
【解決手段】ポリオキシメチレン共重合体(A)100重量部に対して、プロピオン酸を0.001〜1重量部配合する、好ましくはこれに更に、アミン置換トリアジン化合物0.01〜7重量部、平均分子量10,000以上のポリエチレングリコール0.01〜5重量部、及びヒンダードフェノール化合物0.01〜5重量部を配合してなるポリオキシメチレン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシメチレン共重合体の熱安定性を改善したポリオキシメチレン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシメチレン樹脂組成物は、物理的性質、例えば、耐摩擦磨耗性、耐疲労性、耐熱性、電気的性質など、および、化学的性質、例えば、耐薬品性や耐水性などに優れているため、電気・電子分野や建築分野、ならびに、自動車産業や雑貨分野などの部品等として幅広く用いられている。
【0003】
従来、ポリオキシメチレン樹脂組成物の素材であるポリオキシメチレン樹脂は、熱安定性に劣り、その成形加工時に実施される溶融混練操作において熱分解反応をおこすことが知られている。すなわち、高温かつ、酸性またはアルカリ性条件下において、容易に分解し、ホルムアルデヒドを発生する。ホルムアルデヒドは化学活性が高く、変色や熱安定性の低下の原因となり、更にホルムアルデヒドそのものが有害であり、ポリオキシメチレン樹脂組成物を用いた製品の周囲を汚染する。
【0004】
ポリオキシメチレン樹脂そのものを安定化する方法として、まずホモポリマーにおいては、分解し易い末端を安定化するために鎖末端をアセチル化する手法が一般に知られている。
また、コポリマーにおいては、炭素結合を有するコモノマーを選択し、かつ不安定な末端部分を重合後に熱分解除去することで、ポリオキシメチレン樹脂を安定化している。
しかしながら、高温条件下では末端以外の高分子鎖部分においても熱分解反応が起こり、その防止には、上記の手法では不十分である。従って、熱分解反応を更に抑制するために、一般的なポリオキシメチレン樹脂組成物には、ヒンダードフェノール化合物やヒンダードアミン化合物等の酸化防止剤や、金属水酸化物、アミノ置換トリアジン化合物、脂肪酸金属塩が安定剤として添加される(特許文献1〜5参照)。しかしこれらの安定剤を用いても、高い熱安定性をポリオキシメチレン樹脂組成物に付与することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−239484号公報
【特許文献2】特開昭60−104151号公報
【特許文献3】特開平11−323046号公報
【特許文献4】特開平11−29692号公報
【特許文献5】特開昭63−260949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような課題を解決し、耐熱性に優れたポリオキシメチレン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、プロピオン酸を配合することでポリオキシメチレン樹脂組成物が、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対して、プロピオン酸を0.001〜1重量部配合したポリオキシメチレン樹脂組成物並びに、
(2)ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対し、プロピオン酸を0.001〜1重量部、アミン置換トリアジン化合物0.01〜7重量部、平均分子量10,000以上のポリエチレングリコール0.01〜5重量部、及びヒンダードフェノール化合物0.01〜5重量部を配合したポリオキシメチレン樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、耐熱性に優れたポリオキシメチレン樹脂組成物を得る事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対して、プロピオン酸を0.001〜1重量部加えたポリオキシメチレン樹脂組成物である。
【0011】
本発明の樹脂組成物において、ポリオキシメチレン共重合体は、オキシメチレンユニットを基本単位とし、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを共重合単位とするポリオキシメチレン重合体であることが望ましい。
【0012】
ポリオキシメチレン共重合体の炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを構成するコモノマー成分は環状エーテル、グリシジルエーテル化合物、環状ホルマールであれば特に限定されないが、好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマールのいずれか1種又は2種以上が用いられ、好ましくはエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマールが用いられ、特に好ましくは1,3−ジオキソランが用いられる。かかるポリオキシメチレン共重合体は上記の炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを構成するコモノマー成分と、ホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンとを、カチオン重合触媒の存在下に共重合させることによって得られる。
【0013】
ポリオキシメチレン重合体中の炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量は、オキシメチレンユニット100mol当り、0.1〜30molであり、好ましくは0.3〜20molであり、より好ましくは0.5〜10molである。
【0014】
重合触媒としては、一般のカチオン活性触媒が用いられる。このようなカチオン活性触媒としては、ルイス酸、殊にホウ素、スズ、チタン、リン、ヒ素およびアンチモン等のハロゲン化物、例えば三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五塩化リン、五フッ化リン、五フッ化ヒ素および五フッ化アンチモン、並びにその錯化合物または塩の如き化合物、プロトン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸、プロトン酸のエステル、殊にパークロル酸と低級脂肪族アルコールとのエステル、プロトン酸の無水物、特にパークロル酸と低級脂肪族カルボン酸との混合無水物、あるいは、トリエチルオキソニウムヘキサフルオロホスファート、トリフェニルメチルヘキサフルオロアルゼナート、アセチルヘキサフルオロボラート、ヘテロポリ酸またはその酸性塩、イソポリ酸またはその酸性塩などが挙げられる。特に三フッ化ホウ素を含む化合物、あるいは三フッ化ホウ素水和物および配位錯体化合物が好適であり、エ−テル類との配位錯体である三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート及び三フッ化ホウ素ジブチルエーテラートが特に好ましい。
【0015】
重合触媒の使用量は、トリオキサンとコモノマーの合計の全モノマー1モルに対して、一般的には1.0×10−7〜2.0×10−3モルであり、好ましくは1.0×10−7〜8.0×10−4モル、より好ましくは1.0×10−7〜1.0×10−4モルの範囲で使用される。本発明では、通常、重合収率が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上に達した時点で触媒を失活させ重合を停止する。これらの触媒は反応系に均一に分散させるために重合反応に悪影響の無い有機溶媒で希釈して使用することが好ましい。
【0016】
上記有機溶媒としては、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、n−ブチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、メチレンジクロライド、エチレンジクロライドなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0017】
ポリオキシメチレン重合体を得るための重合法は、従来公知のトリオキサンの共重合と同様の設備と方法で行うことが出来る。即ち、バッチ式、連続式のいずれでも可能であり、塊状重合やシクロヘキサンのような有機溶媒の存在下で行う重合法にも適用される。バッチ式では攪拌機付きの反応槽が使用でき、連続式塊状重合においては、重合時の急激な固化、発熱に対処可能な強力な攪拌能力、緻密な温度制御、さらにはスケ−ルの付着を防止するセルフクリーニング機能を備えたニーダー、二軸スクリュー式連続押出混練機、二軸のパドル型連続混合機などの装置が好適に使用される。
【0018】
重合反応によって得られたポリオキシメチレン重合体は、三価の有機リン化合物、アミン化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物などの失活剤を、単独あるいは水溶液または有機溶液の形態で使用する公知の方法によって、触媒及び重合生長末端の失活処理を行う。これらの失活剤の中で、特に三価の有機リン化合物、三級アミン、ヒンダードアミンが好ましい。その使用量は、触媒を失活させるのに十分な量であれば特に制限はないが、触媒に対するモル比として、1.0×10−1〜1.0×10の範囲で使用される。
【0019】
重合の失活処理においてはポリオキシメチレン重合体が微細な粉粒体であることが好ましく、重合反応機は塊状重合物を十分粉砕する機能を有するものが好ましい。重合後のポリオキシメチレン重合体が微細粉粒体でない場合は、重合体中に含まれる触媒が十分に失活されず、残存した活性を有する触媒によって徐々に解重合が進行し分子量低下を生じる。それ故、重合後のポリオキシメチレン重合体を別に粉砕機を用いて粉砕した後に失活剤を加えてもよく、あるいは、失活剤の存在下で粉砕と攪拌を同時に行ってもよい。
【0020】
重合の失活処理を行ったポリオキシメチレン重合体を安定剤と混合した後、2軸押出機で溶融させ、溶融状態のまま2軸の表面更新型横型混練機に連続的に導入し、融点以上の温度で減圧脱揮を行うことで安定化処理を行うことができるが、一層の精製が必要であるならば、洗浄、未反応モノマーの分離回収、乾燥等を経ることができる。
【0021】
上記の2軸の表面更新型横型混練機での減圧脱揮は1.01×10〜1.33×10−2kPaの圧力下において溶融混練しながら行われる。圧力がこの範囲より高いと十分な脱揮効果が得られず、またこの範囲より低いと減圧設備が大型化してしまい装置設置時のコストアップ要因となる。減圧脱揮の時間は15〜60分とすることが好ましい。減圧脱揮の時間が15分より短いと該処理後のポリオキシメチレン重合体が溶融時に発生させるホルムアルデヒドガスを十分に脱揮することができない。またせん断応力が押出機に比べはるかに弱い2軸の表面更新型横型混練機内でも滞留時間が60分を超えるとポリオキシメチレン重合体が黄変あるいは主鎖分解による熱安定性低下してしまう結果となり好ましくない。減圧脱揮時に窒素ガス等の不活性ガスあるいは脱揮減圧条件で気化するアルコールや水等を減圧処理設備に導入し外部からの空気の混入を避けることや、あるいは減圧度を制御することも好適である。
【0022】
減圧脱揮処理時の2軸の表面更新型横型混練機の内部樹脂温度は190〜240℃が好ましく、温度が低いと溶融ポリオキシメチレン共重合体が結晶化(固体化)してしまう場合があり、また温度が高いと、黄変あるいは熱によるポリマーの主鎖分解による熱安定性低下を招く結果となり好ましくない。
【0023】
2軸の表面更新型横型混練機は、攪拌翼と混練機内径のクリアランスが十分広く、混練機内における空間体積(溶融ポリオキシメチレン共重合体の占有する体積を除いた空間部分)が全体積の20%以上とることができるタイプの表面更新に優れる混練機が好適であり、例えば、日立製作所株式会社製メガネ翼、格子翼型リアクター、三菱重工業株式会社製SCR、NSCR型反応機、株式会社栗本鉄鋼所製KRCニーダー、SCプロセッサー等が例示される。
【0024】
本発明の樹脂組成物に配合されるプロピオン酸は、ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対し、0.001〜1重量部であることが好ましく、0.01〜0.2重量部であることが更に好ましい。1重量部より添加量が多いと物性の低下や外観不良を招き、0.001重量部より少ないと、熱安定性の効果が不十分である。
【0025】
ポリオキシメチレン共重合体に加えるアミン置換トリアジン化合物の具体例としては、例えばグアナミン、メラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N”−トリフェニルメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、アメリン(N,N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン)、または、それらとホルムアルデヒドとの初期重縮合物等が挙げられる。
【0026】
これらのアミン置換トリアジン化合物の中、メラミン、メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が特に好ましい。
【0027】
本発明において添加配合されるアミン置換トリアジン化合物の量は、ポリオキシメチレン重合体100重量部に対し、0.01〜7重量部が好ましく、0.01〜1重量部が更に好ましく、0.015〜0.075重量部がより好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物において、酸化防止剤としてヒンダードフェノール化合物が配合される。ヒンダードフェノール化合物は特に限定されないが、好ましくは1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−チオジエチル−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等を挙げることができる。
【0029】
本発明において添加配合されるヒンダードフェノール化合物は単独で用いても、或いは2種以上混合して用いても良い。その配合量は、ポリオキシメチレン重合体100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましく、0.01〜2重量部がより好ましい。
【0030】
本発明において添加配合されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または無機酸塩、あるいはアルコキシドからなる群で示される金属含有化合物の例を挙げると、無機酸塩としては、リン酸塩、ケイ酸塩、ほう酸塩などが挙げられ、アルコキシドとしてはメトキシド、エトキシドなどが挙げられる。これらの中で好ましいものは、アルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、アルコキシドであり、より好ましいものは、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムである。
【0031】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または無機酸塩、あるいはアルコキシドからなる群で示される金属含有化合物の少なくとも一種の添加量は、ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、0.01〜3重量部が更に好ましい。
【0032】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物に対して、離型剤として、炭素数10以上の長鎖を有する高級脂肪酸アミドを配合することが好ましい。炭素数10以上の長鎖を有する高級脂肪酸アミドは特に限定されないが、好ましくはステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、メチレンビスラウロアミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド等の1種又は2種以上を挙げることができる。中でもエチレンビスステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、メチレンビスラウロアミドの1種又は2種以上がより好ましい。
【0033】
本発明において添加配合される高級脂肪酸アミドの量は、ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましく、0.01〜3重量部がより好ましい。
【0034】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物に対して、別の離型剤として、ポリアルキレングリコール、パラフィンワックス、多価アルコールの脂肪酸エステル等を添加しても良い。ポリアルキレングリコール、パラフィンワックス、多価アルコールの脂肪酸エステルは特に限定されないが、ポリエチレングリコールや、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン等の多価アルコールとベヘン酸、セロチン酸、モンタン酸、ラクセル酸等の脂肪酸エステルが好ましい。
【0035】
本発明において添加配合されるポリアルキレングリコール、パラフィンワックス、多価アルコールの脂肪酸エステルの量は、ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましく、0.01〜3重量部がより好ましい。
【0036】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物に対して、成形性の向上や成形サイクルの短縮を目的として、核化剤を添加しても良い。核化剤は特に限定されないが、窒化ホウ素、含水ケイ酸マグネシウム、3次元架橋ポリオキシメチレン等がより好ましい。
【0037】
本発明において添加配合される核化剤の量はポリオキシメチレン共重合体100重量部に対し、0.0001〜10重量部が好ましく、0.001〜5重量部がより好ましい。
【0038】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物に対して、蛍光増白剤としてクマリン系蛍光増白剤、ベンズオキサゾール系蛍光増白剤を添加しても良い。クマリン系蛍光増白剤およびベンズオキサゾール系蛍光増白剤としては、3−(4’−アセチルアミノフェニル)−7−アセチルアミノクマリン、3−(4’−カルボキシフェニル)−4−メチル−7−ジエチルアミノクマリン、2,5−ビス(5’−t−ブチルベンズオキサゾル−2’−イル)チオフェン、2,5−ビス〔5’−t−ブチルベンゾオキザゾリル(2)〕チオフェンが好ましい。
【0039】
本発明において添加配合されるクマリン系蛍光増白剤およびベンズオキサゾール系蛍光増白剤の量はポリオキシメチレン共重合体に対し、0.001〜500重量ppmが好ましく、0.01〜100重量ppmがより好ましい。
【0040】
本発明の樹脂組成物においてホルムアルデヒド捕捉剤としてヒドラジド化合物を配合添加することが可能であり、脂肪族或いは芳香族の何れのヒドラジド化合物でも使用することができる。
【0041】
脂肪族ヒドラジド化合物としては、プロピオン酸ヒドラジド、チオカルボヒドラジド、ジヒドラジド化合物として、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、1,18−オクタデカンジカルボヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、7,11−オクタデカンジエン−1,18−ジカルボヒドラジド等が挙げられ、芳香族ヒドラジド化合物としては、サリチル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、アミノベンズヒドラジド、4−ピリジンカルボン酸ヒドラジド、1,5−ナフタレンジカルボヒドラジド、1,8−ナフタレンジカルボヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボヒドラジド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、1,5−ジフェニルカルボノヒドラジド等が挙げられる。また、アミノポリアクリルアミド、1,3,5−トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等のポリヒドラジド類も使用することができる。
【0042】
上記ヒドラジド化合物は単独で用いても、或いは2種以上混合して用いても良い。ヒドラジド化合物の配合量は、ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対し、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.02〜0.4重量部、更に好ましくは0.03〜0.3重量部である。
【0043】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物は、以上の成分の他に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、有機酸塩および無機酸塩以外で、且つ本発明の目的を損なわない範囲内で、公知の帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤や充填剤を添加することが可能である。
【0044】
プロピオン酸の添加方法としては、安定化処理して熱重量減少率を0.6%以下としたプロピオン酸を含有しない予備樹脂組成物と混合し、上記方法で加熱溶融混練することで得ることが好ましく、より好ましくは加熱重量減少率が0.5%以下とした予備樹脂組成物と、更に好ましくは加熱重量減少率が0.4%以下とした予備樹脂組成物と加熱溶融混練する。
【0045】
上記以外の添加方法としては、重合の失活処理を施したポリオキシメチレン共重合体とアミン置換トリアジン化合物及びヒンダードフェノール化合物など各種安定剤とプロピオン酸とをヘンシェルミキサーで一括混合した後に2軸押出機で溶融させ、溶融状態のまま2軸の表面更新型横型混練機に連続的に導入し、融点以上の温度で減圧脱揮を行う安定化処理を行うことで達成される。
【0046】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物は、公知のポリオキシメチレン樹脂の成形加工法に従って、成形品を得ることができる。本発明樹脂組成物から得られる成形品としては、ペレット、丸棒、厚板等の素材、シート、チューブ、各種容器、機械、電気、自動車、建材、その他の各種部品などが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0047】
本発明にて得られるポリオキシメチレン樹脂組成物は、熱安定性に優れるため、自動車内装部品、家屋などの内装部品(熱水混合栓など)、衣料部品(ファスナー、ベルトバックルなど)や建材用途(配管・ポンプ部品など)、電気部品(歯車など)、燃料部品などに好適に使用することが出来る。
【実施例】
【0048】
以下に本発明を具体的に示すため、実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
<実施例1、比較例1〜3>
ポリオキシメチレン樹脂組成物にプロピオン酸を、樹脂1gあたり1000ppm加え、10分間振盪し、二軸押出機(池貝鉄工製、PCM−30)を用いて、スクリュー回転数120rpm、シリンダー温度200℃の条件下で溶融混練した後、ペレット化し、実施例1のポリオキシメチレン樹脂組成物を得た。比較例1〜3として、表1に示した添加剤を配合した樹脂組成物を同様の方法で調整した。
得られたペレットを用いて、試験評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(試験方法)
(1)滞留熱安定性
熱風乾燥機を用いて、ペレットを80℃で3時間乾燥した後、射出成形機(東芝製、I 75E)を用いて、短冊型試験片(3.5×49×88.5mm)を作成した。このとき、シリンダー温度を240℃として樹脂を滞留させ、12分ごとに射出成形を行い、成形した試験片の表面の外観にシルバーストリークが発生するまでの量を観察した。また、0分と36分の試験片の色差(E)を色差計日本電色、SE−2000)にて測定した。
(2)熱重量減少率測定(M値)
ペレットをあらかじめ乾燥しておき、それぞれを2gずつ精量し試験管に入れ、220℃の塩浴中で2時間、10torrの減圧下で放置し、熱重量減少率(M値)を測定した。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対して、プロピオン酸0.001〜1重量部配合してなるポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項2】
ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対し、プロピオン酸0.001〜1重量部、アミン置換トリアジン化合物0.01〜7重量部、平均分子量10,000以上のポリエチレングリコール0.01〜5重量部、及びヒンダードフェノール化合物0.01〜5重量部を配合してなるポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項3】
更に、ポリオキシメチレン共重合体100重量部に対して、0.001〜5重量部のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩又はアルコキシドからなる群で示される金属含有化合物の少なくとも一種を配合してなる請求項1または2に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項4】
ポリオキシメチレン共重合体が、トリオキサンと環状エーテルの少なくとも1種とを、三フッ化ホウ素あるいはその配位化合物を触媒として共重合してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項5】
ポリオキシメチレン共重合体で使用される環状エーテルが1,3−ジオキソランである請求項4記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物から形成された成形品。
































【公開番号】特開2012−233121(P2012−233121A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103917(P2011−103917)
【出願日】平成23年5月8日(2011.5.8)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】