ポリオルトエステルおよびそれらの製剤の安定性を高めるための方法
活性薬剤およびポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法ならびに安定性の高いかかる医薬組成物を調製する方法が本明細書で開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、表題「ポリオルトエステルおよびそれらの製剤の安定性を高める方法」として2008年12月11日に提出した米国仮特許出願番号第61/121,894号の利益を請求するものであって、出典明示によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本願は、制御放出ポリマーおよびそれらの医薬組成物の安定性を高めるための新規な方法に関する。1の具体例において、医薬組成物は、ポリオルトエステルおよび活性成分を含む。別の具体例において、本願は、本願に記載の方法に従って調製された医薬組成物を開示する。
【背景技術】
【0003】
(当該技術分野の説明)
治療剤の全身送達に関する合成生体内分解性ポリマーへの関心は、1970年代初頭にポリ乳酸を用いた非特許文献1の研究で始まった。この時から、多くの他のポリマーが治療剤の制御放出のための生体内分解性マトリックスとして調製され、研究されてきた。
【0004】
特許文献1〜5は、生物分解性または生体内分解性ポリオルトエステルを開示する。これらのポリマーは、2,2−ジエトキシテトラヒドロフランのようなオルトエステル(またはオルトカルボン酸エステル)と1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなジオールとの反応によって形成される。この反応は、高温および減圧ならびに比較的長い時間を必要とする。薬物またはその他の活性薬剤は、ポリマーマトリックス中に保持される。薬剤は、不安定な結合の加水分解によりポリマー生物分解物として放出される。
【0005】
特許文献6は、ポリオールを多官能性ケテンアセタールと反応させることにより調製されるポリマーを開示する。これらのポリマーは、合成が室温と常圧で容易に進行し、得られたポリマーが優れた特性を有することが開示されていることから、特許文献1〜5のポリマーよりも顕著な改善を示す。
【0006】
さらなるポリマーは、特許文献7に開示される。これらのポリマーは、アセタール、カルボキシ−アセタールおよびカルボキシ−オルトエステル結合を含有し、多官能性ケテンアセタールとビニルエーテルを含む化合物との反応で開始し、続いてポリオールまたはポリ酸と反応させる二段階工程により調製される。同様のタイプのなおさらなるポリマーは、特許文献8に開示される。これらのポリマーは、多様なカルボキシル酸基を含む化合物と多官能性ケテンアセタールとの反応により形成される。得られたポリマーは、極めて急速な浸食時間を有する。
【0007】
オルトエステル結合の加水分解が容易であるにも関わらず、当該技術分野で知られているポリオルトエステルは、水性緩衝液中に置かれた場合、または体内に滞留する場合には、極めて安定な物質である。この安定性は、ポリマーに浸透することができる水の量を厳格に制限するポリオルトエステルの極度の疎水性によるものとされる。それゆえ、有用な浸食速度を達成するために、酸性賦形剤がポリマーに物理的に取り込まれなければならない。これは浸食速度を制御できる一方で、物理的に取り込まれた酸性賦形剤が様々な速度でポリマーマトリックスから拡散し、ポリマーが非常に長い存続期間を残しているにも関わらず、賦形剤を完全に奪われたマトリックスを放出しうる。
【0008】
特許文献9は、グリコール酸、乳酸またはグリコール酸−共−乳酸コポリマーのエステルのような短鎖α−ヒドロキシ酸エステルのポリオルトエステルポリマー鎖への取り込み、ならびに全体としてポリマーに対するこれらのエステル量の変動により、ゼクエストレーション(sequestration)のための整形外科用インプラントまたはビヒクルおよび薬の持続送達、化粧用薬剤、ならびにその他の有益な薬剤として有用なポリオルトエステルポリマーを開示する。
【0009】
水の存在下において、これらのエステルは、ポリマー鎖に取り込まれると、37℃の体温および生理的なpH、特にpH7.4で容易に加水分解されて、対応するα−ヒドロキシ酸を生成する。次いで、α−ヒドロキシ酸は、酸性賦形剤として作用して、ポリマーの加水分解速度を制御する。ポリマーが活性薬剤を封入するビヒクルまたはマトリックスとして用いられる場合、ポリマーの加水分解は活性薬剤の放出を引き起こす。
【0010】
特許文献10は、ポリオルトエステルおよび医薬的に許容される液体賦形剤を含む、有効な量の選択性5−ヒドロキシトリプタミン3(5−HT3)受容体アンタゴニストの持続放出および制御放出のための医薬組成物および方法を開示する。(5−HT3)受容体アンタゴニストは、催吐性化学療法の経過後の急性および遅延性化学療法誘発性悪心嘔吐(CINV)の予防、減少もしくは軽減に有用である。
【0011】
この項目および本出願全体のその他の項目に列挙される特許文献および参考文献は、出典明示によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,079,038号
【特許文献2】米国特許第4,093,709号
【特許文献3】米国特許第4,131,648号
【特許文献4】米国特許第4,138,344号
【特許文献5】米国特許第4,180,646号
【特許文献6】米国特許第4,304,767号
【特許文献7】米国特許第4,957,998号
【特許文献8】米国特許第4,946,931号
【特許文献9】米国特許第5,968,543号
【特許文献10】特許公開番号第2007/0265329号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Yolles et al., Polymer News 1:9-15 (1970)
【発明の概要】
【0014】
ある態様において、本出願は、活性薬剤およびポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、医薬組成物を高温で十分な時間加熱することで、室温で保存した場合に加熱されていない医薬組成物より安定な医薬組成物を提供することを特徴とする方法を提供する。別の態様において、本出願は、ポリマーの安定性を高める方法であって、該方法が、ポリマーを高温で十分な時間加熱することで、室温で保存した場合に、加熱されていない医薬組成物より安定な医薬組成物を提供することを特徴とする方法を開示する。
【0015】
別の態様において、本出願は、活性薬剤およびポリオルトエステルポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することを特徴とする方法を提供する。別の態様において、本出願は、活性薬剤を含まないポリオルトエステルポリマーから本質的になる除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することを特徴とする方法を提供する。
【0016】
別の態様において、本出願は、安定性の高い除放性医薬組成物を調製する方法であって、該方法が、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することを特徴とし、該医薬組成物が活性薬剤およびポリマーを含むものである方法を提供する。
【0017】
これらおよびその他の具体例は、さらに以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】シリンジ中に約5℃で長期間保存した医薬組成物(APF530、製剤F)の平均分子量(Mw)であって、該医薬組成物が、グラニセトロンおよび下記に規定のポリオルトエステルポリマーAを含むものであるものを示す。
【0019】
【図2】シリンジ中に40℃で長期間保存した上記医薬組成物の平均分子量(Mw)を示す。
【0020】
【図3】健常なヒトに対して臨床中に投与した上記組成物(APF530)の薬物動態学的プロファイルを示す。
【0021】
【図4】化学療法を受けている患者に対して臨床中に投与した上記組成物(APF530)の薬物動態学的プロファイルを示す。
【0022】
【図5】シリンジ中に25℃で24ヶ月間保存した上記組成物(APF530)からのグラニセトロンのインビトロ放出のプロファイルを示す。
【0023】
【図6】シリンジ中に5、25、30および40℃で24ヶ月間保存した上記組成物(APF530)の平均分子量を示す。
【0024】
【図7】シリンジ中に25℃で9ヶ月間保存した安定性の高い組成物(APF530R、製剤FR)からのグラニセトロンのインビトロ放出のプロファイルを示す。
【0025】
【図8】シリンジ中に5、25、30および40℃で9ヶ月間保存した安定性の高い上記組成物(APF530R、製剤FR)の平均分子量を示す。
【0026】
【図9】医薬組成物(APF580R)からのブプレノルフィンのインビトロ放出のプロファイルを示し、該医薬組成物は、シリンジ中に25℃で15.5ヶ月間保存した、ブプレノルフィンおよび下記に規定のポリオルトエステルポリマーAを含むものである。
【0027】
【図10】シリンジ中に5、25、30および40℃で15.5ヶ月間保存した上記組成物(APF580R)の平均分子量を示す。
【0028】
【図11】雄および雌のビーグル犬に投与した(高まった安定性を有し、および有さない)数種類のブプレノルフィン組成物の薬物動態学的プロファイルを示す。
【0029】
(発明の詳細な説明)
定義
本明細書中に特に断りのない限り、全ての技術および科学用語は、合成化学および薬学分野の当業者によって一般的に用いられ、理解されているような慣用的な定義に従って本明細書で用いられる。
【0030】
本明細書で用いられる「安定性」は、患者への投与のための準備された形態に調製される時間と、患者に投与される時間との間に、医薬組成物の特性が、特定の保存条件下のような特定の条件下で、実質的に変化しないまま定常状態を保持する、本明細書に記載のポリマー組成物または医薬組成物の能力を意味する。本発明の医薬組成物の特性には、組成物の粘度、ポリマー分子量および/または活性薬剤の放出速度などが含まれるが、これらだけに限定されない。医薬組成物は、例えば、組成物が特定の保存条件下で長期間分解されず、または加水分解されない場合、本明細書で提供されるような特定の条件下で実質的に安定である。医薬組成物は、その特性が、特定の保存条件下で、4週間、8週間、6ヶ月、12ヶ月またはそれ以上の期間にわたり、10%より大きく、5%より大きく、3%より大きく、または2%より大きく変化しない場合に定常状態(または安定)である。1の態様において、組成物は、少なくとも4週間で3%より大きく変化しない。したがって、1の態様において、本願の組成物の安定性を高める方法であって、該組成物の特性が、特定の保存条件下で、4週間、8週間、6ヶ月、12ヶ月またはそれ以上の期間にわたり、10%より大きく、5%より大きく、3%より大きく、または2%より大きく変化しない方法が提供される。
【0031】
「加水分解されやすいポリマー」は、水分子との反応により分解(degradation)、分解(disassembly)または消化できるポリマーを意味する。かかるポリマーは、ポリマー中にエステル基のような加水分解性基を含有する。加水分解されやすいポリマーの例には、ポリオルトエステル、例えば、本明細書に記載されるもの、ならびに出典明示により本明細書に取り込まれる米国特許第4,079,038号、第4,093,709号、第4,131,648号、第4,138,344号、第4,180,646号、第4,304,767号、第4,957,998号、第4,946,931号および第5,968,543号、ならびに米国特許公開番号第2007/0265329号に記載されるものが含まれてもよい。
【0032】
「生体内分解性」および「生物分解性」は、生物学的環境の作用によるポリマーの分解(degradation)、分解(disassembly)または消化を意味し、生きている生物の作用、特に、生理学的pHおよび温度が含まれる。一例として、ポリオルトエステルの生体内分解のための原理メカニズムは、ポリオルトエステルの単位間および内での結合の加水分解である。
【0033】
「含む」は、この用語の後に続いて列挙される構成要素を含有し、包括し、包含し、または含み、その他の列挙されていない構成要素を除かないことを意味すると解釈される総称である。
【0034】
「除放」、「持続放出」および類似する用語は、活性薬剤が、適用または注入直後に分散されるというより、長期間にわたり確認可能かつ調節可能な割合で送達ビヒクルから放出される場合に生じる活性薬剤送達の様式を意味することに用いられる。持続もしくは除放放出は、本発明で示される方法を用いて制御されてもよく、何時間、何日もしくは何ヶ月持続されてもよく、ならびに多くの因子に応じて変動してもよい。本願の医薬組成物について、放出速度は、選択される賦形剤のタイプおよび組成物中の賦形剤の濃度に依存する。放出速度の別の決定因子は、組成物中で用いられるポリマーの生体内分解速度である。生体内分解速度は、主に、ポリマーの加水分解により制御され、そして、ポリオルトエステルの組成物およびポリオルトエステル中の加水分解性結合数によって制御され得る。本願の医薬組成物からの活性成分の放出速度を決定するその他の因子には、粒径、活性薬剤の溶解度、媒体の酸性度(マトリックスに対して内部もしくは外部のいずれか)、およびマトリックス中の活性薬剤の物理的と化学的特性、ならびにpHおよび温度のような生物学的環境が含まれる。本明細書で用いられるように、医薬組成物の「持続放出」と組み合わせて用いられる「制御放出」はまた、除放もしくは持続放出期間に加えて、グラニセトロンもしくはブプレノルフィンのような活性薬剤の放出の特定プロファイルが制御されて、所望される治療効果を伴う最適な効果を提供し得ることを意味する。
【0035】
「送達ビヒクル」は、活性薬剤を目的の部位に運び、ゼクエストレーション(sequestration)もしくはその他の手法により、活性薬剤への到達速度もしくは放出を制御し、薬剤のその活性が必要とされる部位への適用を容易にすることを含む機能を有する組成物を意味する。本明細書に記載される医薬組成物において、送達ビヒクルは、ポリオルトエステルのような加水分解されやすいポリマーを含む。一定の医薬組成物の送達ビヒクルは、ポリマーに適合する賦形剤をさらに含む。
【0036】
「ポリオルトエステル−適合」は、ポリオルトエステルの特性のある特定の態様において、ポリオルトエステルと混合した場合に、単相を形成し、ポリオルトエステルへの物理的もしくは化学的変化のいずれをも生じない賦形剤の特性を意味する。
【0037】
「半固形」は、適度なストレス下で流動性を有する物質の機械−物理的状態を意味する。より詳細には、半固形物質は、約10,000から3,000,000cpsの間、特に、約30,000から500,000cpsの間の粘度を有するべきである。好ましくは、製剤もしくは組成物は、容易に注射でき(syringable)、もしくは注入でき(injectable)、このことは、局所もしくは眼科用製剤についてよく知られている種類の従来のチューブ、ニードルなしのシリンジ、または16〜25ゲージのような16ゲージもしくはそれ以下のニードルを有するシリンジから容易に分散できることを意味する。
【0038】
「ゼクエストレーション(sequestration)」は、活性薬剤のポリマーマトリックス内部空間内での閉じ込めもしくは滞留である。活性薬剤のマトリックス内でのゼクエストレーションは、薬剤の毒性効果を限定し、薬剤の作用時間を調節された方法で延長し、生物内の正確に定められた局所で薬剤の放出を可能にし、または不安定な薬剤を環境の作用から保護し得る。
【0039】
「活性薬剤」または「活性成分」は、利益的もしくは有用な結果を生じるいずれかの化合物または化合物の混合物を意味する。活性薬剤は、ビヒクル、担体、希釈剤、滑沢剤、結合剤およびその他の製剤化補助剤のような成分、ならびに封入成分もしくは別の保護成分から区別できる。活性成分の例は、医薬用、農業用もしくは化粧用薬剤である。適当な医薬用薬剤には、局所もしくは全身に作用する医薬的な活性薬剤が含まれ、前記薬剤は、局所もしくは病巣内適用(例えば、擦過皮膚、裂傷、刺創など、ならびに外科手術時の切開部位への適用を含む)または注入(例えば、皮下、皮内、筋肉内、眼球内もしくは関節内注入)により対象に投与されてもよい。適当な医薬用薬剤には、多糖類、 DNAおよびその他のポリヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗原、抗体、ワクチン、ビタミン、酵素、タンパク質、天然に存在するか、もしくは生物工学で作出した物質、およびこれらの類似物、抗感染薬(抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗疥癬薬もしくはシラミ駆除剤を含む)、消毒薬(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸マフェナイド、塩化メチルベンゼトニウム、ニトロフラゾン、ニトロメルソールなど)、ステロイド類(例えば、エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン、アドレノコルチコイドなど)、オピオイド類(例えば、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、メプタジノール、ナルブフィン、オキシモルホンおよびペンタゾシン)、治療用ポリペプチド(例えば、インスリン、エリスロポイエチン、骨形態形成タンパク質のような形態形成タンパク質など)、鎮痛剤および抗炎症薬(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトロラック、COX−1阻害剤、COX−2阻害剤など)、抗精神病薬(例えば、クロルプロマジン、トリフルプロマジン、メソリダジン、ピペルアセタジンおよびチオリダジンを含むフェノチアジン;クロルプロチキセンなどを含むチオキサンテン)、抗血管新生薬(例えば、コンブレシアチン(combresiatin)、コントルトロスタチン(contortrostatin)、抗VEGFなど)、抗不安薬(例えば、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパム、オキサゼパムを含むベンゾジアゼピン:およびバルビツレート)、抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチリン、ドキセピン、ノルトリプチリン、アモキサピン、トラニルシプロミン、フェネルジンなどを含む三環系抗うつ薬およびモノアミンオキシダーゼ阻害剤を含む)、刺激薬(例えば、メチルフェニデート、ドキサプラム、ニケトアミドなど)、麻薬(例えば、ブプレノルフィン、モルヒネ、メペリジン、コデインなど)、鎮痛剤−解熱剤および抗炎症薬(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンなど)、局所麻酔薬(例えば、ブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインなどのようなアミド−もしくはアニリド−型局所麻酔薬)、避妊薬、化学療法薬および抗悪性腫瘍薬(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、チオグアニン、カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、クロランブシル、ストレプトゾシン、メトトレキセート、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンデシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモキシフェンなど)、心血管作動薬および抗高血圧薬(例えば、プロカインアミド、亜硝酸アミル、ニトログリセリン、プロプラノロール、メトプロロール、プラゾシン、フェントラミン、トリメタファン、カプトプリル、エナラプリルなど)、肺疾患の治療薬、抗てんかん薬(例えば、フェニトイン、エトトインなど)、抗発汗剤(anti-hidrotics)、角質形成剤(keratoplastic agent)、色素沈着剤(pigmentation agent)もしくは軟化薬、制吐薬(例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、メトクロプラミド、ドンペリドン、スコポラミンなど)が含まれる。本願の組成物はまた、収斂薬、制汗剤、刺激薬、発赤剤、発疱剤、硬化剤、腐食剤(caustics)、腐食剤(escharotics)、角質溶解剤、焼け防止剤ならびに色素沈着低下剤および鎮痒薬を含む様々な皮膚病薬のようなその他の局所的に作用する活性薬剤に適用され得る。用語「活性薬剤」には、さらに、抗真菌薬、殺虫薬および除草剤のような殺生物剤、植物成長促進剤もしくは阻害剤、保存剤、殺菌薬、空気清浄剤および栄養剤が含まれる。活性薬剤のプロドラッグおよび医薬的に許容される塩は、本願の範囲内に含まれる。
【0040】
「治療上の有効量」は、疾患を治療するために動物に投与されると、疾患に対して治療の効果をもたらすのに十分な量を意味する。
【0041】
疾患の「治療する」もしくは「治療」には、疾患にかかりやすいが、いまだ疾患の症状を経ていないか、もしくは示していない動物において疾患を予防すること(予防的治療)、疾患を抑えること(その進行を遅くするか、もしくは阻むこと)、疾患の症状もしくは副作用を緩和すること(緩和療法を含む)、および疾患を軽減すること(疾患の退行を生じること)が含まれる。
【0042】
方法
活性な医薬用薬剤の制御および/または持続放出を患者に提供する送達ビヒクルとして特定のポリマーを含む除放性医薬組成物は、周囲温度で保存されると不安定性を示す。かかる不安定性は、活性薬剤の分子量の減少、粘度の減少、および/または放出の増加の形であり得る。例えば、下記の実施例における製剤中の医薬組成物は、40℃で2〜4週間保存した場合に、活性薬剤の分子量および粘度の減少ならびにインビトロ放出の増加を示した。しかしながら、同一の製剤が2〜8℃で少なくとも1年間保存される場合、その分子量および粘度は実質的に変化しない。それゆえ、保存および輸送の間の医薬組成物の分解を避けるために、かかる医薬組成物は、冷却条件下で保たれなければならず、保存および輸送コストの増加を生じていた。さらに、厳格な保存条件が合わなければ、組成物は、分解されて、望まれるような同一の活性薬剤放出速度を供せず、その結果、患者への活性薬剤の適切でないか、もしくは望ましくない量の投与となり得る。
【0043】
1の具体例において、活性薬剤および生体適合性ポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法が提供される。ある具体例において、ポリマーは、加水分解されやすいポリマーである。ある具体例において、前記方法は、医薬組成物中の含水量を減少させること、またはポリマー中の含水量を減少させることを含む。ある具体例において、含水量は、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および/または減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することによって減少される。ある具体例において、条件は、高温および十分な時間を含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および不活性ガスを含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および減圧を含む。
【0044】
ある具体例において、前記方法は、医薬組成物を高温で十分な時間加熱することで、室温で保存した場合に、加熱していない医薬組成物より安定な医薬組成物を提供することを特徴とする。すなわち、上記加熱処理した方法から得られた医薬組成物は、2つの医薬組成物を同じ条件下において室温で同じ時間保存する場合、加熱処理されていない同じ医薬組成物より安定な組成物を生成する。
【0045】
別の態様において、本願は、活性薬剤およびポリオルトエステルポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することを特徴とする方法を提供する。ある具体例において、条件は、高温および十分な時間を含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および不活性ガスを含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および減圧を含む。別の具体例において、本願は、ポリオルトエステルポリマーを含む医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、以下:高温、十分な時間、不活性ガスおよび減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することを特徴とする方法を提供する。ある具体例において、条件は、高温および十分な時間を含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および不活性ガスを含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および減圧を含む。
【0046】
なお別の態様において、本願は、安定性の高い除放性医薬組成物を調製する方法であって、該方法が、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することを特徴とするものであり、該医薬組成物が、活性薬剤およびポリオルトエステルポリマーを含むものである方法を提供する。ある具体例において、条件は、高温および十分な時間を含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および不活性ガスを含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および減圧を含む。
【0047】
上記方法のある具体例において、高温は、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、少なくとも約70℃または少なくとも約80℃である。ある具体例において、高温は、約80℃から約120℃である。ある具体例において、高温は、約85℃から約100℃である。ある具体例において、高温は、約90℃から約95℃である。
【0048】
上記方法のある具体例において、前記時間は、少なくとも12時間である。ある場合において、前記時間は、上記の列挙されている高温で、少なくとも12時間である。上記のある具体例において、前記時間は、少なくとも24時間である。上記方法のある具体例において、不活性ガスはアルゴンであるか、または不活性ガスは窒素である。
【0049】
上記方法のある具体例において、減圧は、常圧の約50%またはそれより低いものである。ある具体例において、減圧は、常圧の約25%またはそれより低いものである。ある具体例において、常圧の約10%またはそれより低いものである。ある具体例において、常圧の約1%またはそれより低いものである。
【0050】
上記方法のある具体例において、ポリマーの分子量は減少する。ある具体例において、分子量は、処理前の分子量と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%まで減少する。
【0051】
上記方法のある具体例において、医薬組成物の粘度が減少する。ある具体例において、粘度は、上記に記載されるように加熱処理されていない医薬組成物の粘度と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%まで減少する。
【0052】
上記方法のある具体例において、医薬組成物中の活性薬剤の放出速度は増加する。ある具体例において、放出速度は、処理前の放出速度と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%まで増加する。
【0053】
ある場合において、本明細書に記載の医薬組成物は、シリンジに詰め込まれ、密封され、保存される。それゆえ、本願のある具体例において、前記方法は、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理し、処理した医薬組成物をシリンジに詰め込み、シリンジを密封することを特徴とする。ある具体例において、前記方法は、さらに、処理した医薬組成物を詰め込んだシリンジを周囲温度下で長期間保存することを特徴とし、該医薬組成物はその目的とする用途に関して安定である。かかる長期間は、少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、または少なくとも2年であり得る。
【0054】
ポリマー
本願の方法は、ポリマーを含む医薬組成物の安定性を高めるのに有用であるものとされる。本願の方法のある態様において、医薬組成物は、活性薬剤を含まないポリマーを含む。本願の方法で安定化され得るポリマーには、水分子との反応により分解(degradation)、分解(disassembly)または消化(digestion)できるポリマー、例えば、ポリマー鎖構造中にエステル基のような加水分解性基を有するポリマーが含まれる。加水分解されやすいポリマーの例には、本明細書に記載されるもの、および出典明示により全体が本願明細書に取り込まれる米国特許第4,079,038号、第4,093,709号、第4,131,648号、第4,138,344号、第4,180,646号、第4,304,767号、第4,957,998号、第4,946,931号および第5,968,543号、ならびに米国特許公開第2007/0265329号に記載されるもののようなポリオルトエステルが含まれ得るが、これらだけに限られない。
【0055】
上記方法のある具体例において、ポリマーは、式I、式II、式IIIまたは式IV
【化1】
[式中、
Rは、結合、−(CH2)a−、または−(CH2)b−O−(CH2)c−であって;ここで、aは、1から10の整数であり、bおよびcは、独立して1から5の整数であり;
R*は、C1〜4アルキルであり;
R0、R''および'''は、各々独立して、HまたはC1〜4アルキルであり;
nは、少なくとも5の整数であり;ならびに
Aは、R1、R2、R3、またはR4であり、ここで、
R1は、
【化2】
であって、
pは、1から20の整数であり;
R5は、水素またはC1〜4アルキルであり;ならびに
R6は、
【化3】
であって、
ここで:
sは、0から30の整数であり;
tは、2から200の整数であり;ならびに
R7は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R2は、
【化4】
であり、
R3は、
【化5】
であって、
ここで:
xは、0から100の整数であり;
yは、2から200の整数であり;
R8は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R9およびR10は、独立して、C1〜12アルキレンであり;
R11は、水素またはC1〜6アルキルであり、R12は、C1〜6アルキルであるか;またはR11およびR12は、一緒になってC3〜10アルキレンであり;ならびに
R4は、アミド基、イミド基、ウレア基、およびウレタン基から独立して選択される少なくとも1つの官能基を含有するジオール残基であって;
A単位の少なくとも0.01モルパーセントが式R1である]
のポリオルトエステルである。
【0056】
ある具体例において、Aは、R1、R3、またはR4であって、
R1は、
【化6】
であり、
ここで、
pは、1から20の整数であり;
R3およびR6は、各々独立して、
【化7】
であって、
ここで、
xは、0から30の整数であり;
yは、2から200の整数であり;
R8は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R9およびR10は、独立してC1〜12アルキレンであり;
R11は、水素またはC1〜6アルキルであり、R12は、C1〜6アルキルであるか;またはR11およびR12は、一緒になってC3〜10アルキレンであり;
R4は、アミド基、イミド基、ウレア基、およびウレタン基から独立して選択される少なくとも1つの官能基を含有するジオール残基であって;
A単位の少なくとも0.01モルパーセントが式R1である。
【0057】
別の具体例において、ポリオルトエステルの濃度は、1重量%から99重量%の範囲である。なお別の具体例において、ポリオルトエステルは、3,000から10,000の間の分子量を有する。別の具体例において、式R1であるA単位の割合は、5から15モルパーセントである。
【0058】
上記方法の別の具体例において、ポリオルトエステルは、式Iのものであって、その単位のいずれもがR2と同一のAを有しておらず;
R3は、
【化8】
であって、
ここで、
xは、0から10の整数であり;
yは、2から30の整数であり;ならびに
R6は、
【化9】
であり、
ここで、
sは、0から10の整数であり;
tは、2から30であり;ならびに
R5、R7、およびR8は、独立して、水素またはメチルである。
【0059】
上記方法の別の具体例において、R3およびR6は、両方とも−(CH2−CH2−O)2−(CH2−CH2)−であり;R5は、メチルであり;ならびにpは、1または2である。別の具体例において、R3およびR6は、両方とも−(CH2−CH2−O)9−(CH2−CH2)−であり;R5は、メチルであり;ならびにpは、1または2である。別の場合において、ポリオルトエステルは、式Iであり、Rは、−(CH2)b−O−(CH2)c−であって;ここで、bおよびcは、両方とも2であり;R*は、C2アルキルであり;賦形剤は、メトキシ−ポリエチレングリコール(Mn550)であり、活性薬剤は、組成物の2wt%を含む。1の具体例において、活性薬剤は、グラニセトロンである。
【0060】
本願の方法のある具体例において、本発明の医薬組成物で用いられるポリオルトエステルは、式I、式II、式IIIおよび式IVで示されるように、ジケテンアセタール残基の各隣接ペアが1つのポリオール、好ましくはジオール残基により分けられているジケテンアセタールおよびジオールの交互残基のうちの1つである。
【化10】
【0061】
「α−ヒドロキシ酸を含有する」単位のより高いモルパーセンテージを有するポリオルトエステルは、より高い速度の生体内分解性を有する。ある場合において、ポリオルトエステルは、「α−ヒドロキシ酸を含有する」単位のモルパーセンテージが、少なくとも0.01モルパーセント、約0.01から約50モルパーセントの範囲、より好ましくは、約0.05から約30モルパーセント、例えば、約0.1から約25モルパーセント、特に、約1から約20モルパーセントであるものである。所望の組成物を得るのに適当な「α−ヒドロキシ酸を含有する」単位のモルパーセントは、製剤ごとに変動する。
【0062】
別の場合において、ポリオルトエステルは、nが5から1000の整数であり;ポリオルトエステルが、1000から20,000、好ましくは1000から10,000、より好ましくは1000から8000の分子量を有し;R5が水素もしくはメチルであり;R6が、
【化11】
であって、
ここで、sは、0から10、特に、1から4の整数であり;tは、2から30、特に、2から10の整数であり;R7は、水素またはメチルであり;
R3が、
【化12】
であって、xは、0から10、特に、1から4の整数であり;yは、2から30、または2から10の整数であり;およびR8は水素もしくはメチルであり;
R4が、1または2個のアミド基、イミド基、ウレア基またはウレタン基により遮られた2から20個の炭素原子、または2から10個の炭素原子の脂肪族ジオール残基から選択され;
AがR1である単位の割合が、約0.01〜50モル%であり、または0.05〜30モル%であり、または0.1〜25モル%であり;
AがR2である単位の割合が、20%より低く、または10%より低く、特に、5%より低く;
AがR4である単位の割合が、20%より低く、10%より低く、または5%より低いものである。
【0063】
賦形剤
上記方法のある具体例において、医薬組成物の送達ビヒクルは、賦形剤をさらに含む。送達ビヒクル中のポリオルトエステルおよび賦形剤の濃度は、変動してもよい。例えば、ビヒクル中の賦形剤の濃度は、ビヒクルの1〜99重量%、好ましくは、5〜80重量%、特に、20〜60重量%の範囲内であり得る。
【0064】
単数形を用いて本願のポリオルトエステルおよび賦形剤が記載されるが、上記の群から選択される1つより多いポリオルトエステルおよび賦形剤が送達ビヒクル中で用いられ得ることが理解される。また、必要ではないが、着色剤または保存剤のようなその他の医薬的に許容される不活性な薬剤エステルもまた本組成物に含まれてもよいことが理解される。
【0065】
ある具体例において、ポリオルトエステルが医薬組成物中に存在している場合、賦形剤は、医薬的に許容され、ポリオルトエステル−適合性物質である。ある具体例において、賦形剤は、室温で液体であり、ポリオルトエステルと容易に混合できる。
【0066】
適当な賦形剤には、200から4,000の間の分子量を有するポリ(エチレングリコール)エーテル誘導体、例えば、ポリ(エチレングリコール)モノ−もしくはジ−アルキルエーテル、好ましくはポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル550またはポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル250;400から4,000の間の分子量を有するポリ(エチレングリコール)コポリマー、例えば、ポリ(エチレングリコール−コ−ポリプロピレングルコール);C2〜19脂肪族カルボン酸もしくはかかる酸の混合物のプロピレングリコールモノ−もしくはジ−エステル、例えば、プロピレングリコールジカプリル酸エステルもしくはジカプリン酸エステル;C2〜19脂肪族カルボン酸もしくはかかる酸の混合物のモノ−、ジ−もしくはトリグリセリド、例えば、カプリル酸グリセリル、カプリン酸グリセリル、カプリル酸/カプリン酸グリセリル、カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸グリセリル、グリコフロールおよび類似のエトキシル化テトラヒドロフルフリルアルコールおよびそれらのC1〜4アルキルエーテルならびにC2〜19脂肪族カルボン酸エステル;ならびに生体適合性油、例えば、ひまわり油、ゴマ油およびその他の非−もしくは部分的−水素化植物油が含まれる。
【0067】
本明細書に記載の一定の製剤は、容易に注射でき、もしくは注入できる半固形医薬組成物であり、これらは、局所もしくは眼科用製剤について周知な種類の従来のチューブ、ニードルなしのシリンジ、または(16〜25ゲージのような)16ゲージもしくはそれ以下のニードルを有するシリンジから容易に分散し、皮下、皮内もしくは筋肉内に注入することができることを意味する。製剤は、シリンジ、注射用ディスペンサーもしくはチューブディスペンサーによるものを含む様々な当技術分野で周知の方法を用いて適用し得る。
【0068】
活性薬剤
本明細書に記載の医薬組成物は、1つまたはそれ以上の活性薬剤が含まれて、利益的もしくは有用な結果を供する。活性薬剤の例は、本明細書に記載される。
【0069】
本願の方法または組成物のある具体例において、活性薬剤は、局所麻酔剤である。局所麻酔剤の非限定的な例には、アミド−もしくはアニリド−型局所麻酔剤、例えば、ブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインなどが含まれる。ある具体例において、活性薬剤は、メピバカインもしくはブプレノルフィンである。
【0070】
本願の方法もしくは組成物のある具体例において、活性薬剤は、抗CINV(化学療法誘発性悪心嘔吐)剤、例えば、選択性5−ヒドロキシトリプタミン3(5−HT3)受容体アンタゴニスト(例えば、グラニセトロン(Kytril(登録商標))、オンダンセトロン(Zofran(登録商標))、ドラセトロン(Anzemet(登録商標))およびパロノセトロン(アロキシ(登録商標)、MGI Pharma))である。(5−HT3)受容体アンタゴニストを有する組成物は、催吐性化学療法経過後の急性および遅延性化学療法誘発性悪心嘔吐(CINV)の予防、減少もしくは軽減に有用である。ある具体例において、組成物は皮下注射により投与される。
【0071】
ある具体例において、APF530医薬組成物は、5−HT3受容体アンタゴニスト、加水分解されやすいポリマーおよび医薬的に許容される液体賦形剤を含み;前記組成物は、単回用量で投与される場合、嘔吐症状の頻度のプロファイルを追随する5−HT3受容体アンタゴニストの放出プロファイルをもたらし;前記組成物は、5−HT3受容体アンタゴニストのレベルを24時間にわたりもたらして、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの20%以内である%Cmaxプロファイルを供し、96時間にわたりレベルを持続して、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの10%以内である%Cmaxプロファイルを供し、血漿中の5−HT3受容体アンタゴニスト濃度を約144時間で実質的にもたらさないものである。ある具体例において、5−HT3受容体アンタゴニストの24時間にわたるレベルは、大きく、本明細書で提供されるように実験で測定されて、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの20%以内である%Cmaxプロファイルを供し、96時間にわたりレベルを持続して、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの10%以内である%Cmaxプロファイルを供して、血漿中の検出可能な5−HT3受容体アンタゴニスト濃度を約144時間で実質的にもたらさないものである。
【0072】
ある具体例において、5−HT3受容体アンタゴニストはグラニセトロンである。ある具体例において、5−HT3受容体アンタゴニストの有効量は、約5mgから約10mgの単回用量である。ある具体例において、皮下注射による投与は、化学療法の約3時間、2時間、1時間もしくは30分前に行われる。上記の場合において、皮下注射による投与は、化学療法の約30分前に行われる。別の場合において、皮下注射は、約30秒かけて行われる。さらに別の場合において、5−HT3受容体アンタゴニストは、グラニセトロンであり、グラニセトロンの有効量は、約5mgである。
【0073】
本願の方法のその他の具体例において、APF530医薬組成物は、5−HT3受容体アンタゴニストを24時間にわたり実質的なレベルをもたらして、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの10%以内である%Cmaxプロファイルを供する。ある具体例において、組成物は、96時間にわたりレベルを持続して、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの5%以内である%Cmaxプロファイルを供する。ある具体例において、組成物は、有効量の5−HT3受容体アンタゴニストを24時間にわたり実質的なレベルをもたらして、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの10%以内である%Cmaxプロファイルを供し、96時間にわたりレベルを持続して、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの5%以内である%Cmaxプロファイルを供し、血漿中の5−HT3受容体アンタゴニスト濃度を約144時間で実質的に供しないものである。ある具体例において、有効量の5−HT3受容体アンタゴニストの患者への投与は、化学療法を受ける患者において、報告されている頭痛の頻度を、さらに約40%、30%、20%または約10%より低く減少させる。ある具体例において、報告されている頭痛の頻度は、化学療法を受けている患者において約20%より低い。
【0074】
別の具体例において、上記の方法であって、APF530医薬組成物は、患者に投与されると、実質的なレベルの5−HT3受容体アンタゴニストを24時間にわたり放出して、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの10%以内である%Cmaxプロファイルを供し、96時間にわたりレベルを持続して、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの5%以内である%Cmaxプロファイルを供し、次いで血漿中の5−HT3受容体アンタゴニスト濃度を約144時間で実質的に供しないものである。ある場合において、有効量の5−HT3受容体アンタゴニストの患者への投与は、化学療法を受ける患者において、報告されている頭痛の頻度を、さらに、約40%、30%、20%もしくは約10%より低く減少させる。別の場合において、報告されている頭痛の頻度は、化学療法を受けている患者において約20%より低い。なお別の場合において、有効量の5−HT3受容体アンタゴニストの患者への投与は、催吐性化学療法後の嘔吐頻度において、静脈注射によるパロノセトロンの投与より統計学的に顕著な減少を生じる。
【0075】
上記の場合において、5−HT3受容体アンタゴニストは、グラニセトロンである。特定の場合において、グラニセトロンの割合は、組成物の0.1重量%から80重量%である。なお別の場合において、グラニセトロンの割合は、組成物の約1重量%から5重量%である。
【0076】
本願の方法のある具体例において、医薬組成物は、2%のグラニセトロン、および
(i)78.4重量%の式I:
【化13】
[式中、
R*は、C2アルキルであり;
nは、少なくとも5の整数であり;および
Aは、R1またはR3であって、ここで、R1は、
【化14】
であって、
pは、2であり;R5は、水素であり;ならびに
R6は、
【化15】
であって、
sは、3であり;およびR3は、
【化16】
であって、xは、3であり;
ポリオルトエステルは、47.4モル%のDETOSU、42.1モル%のTEG、および10.5モル%のA単位が式R1である]
のポリオルトエステル;および
(ii)医薬的に許容される、19.6重量%のMPEG550(メトキシ−ポリエチレングリコール、Mn550)であるポリオルトエステル−適合性液体賦形剤
を含む半固形送達ビヒクルを含む。
【0077】
放出制御グラニセトロンの送達:
本願は、さらに、5−HT3アンタゴニストを含む医薬組成物を投与することを特徴とする患者の嘔吐治療または予防方法であって、該5−HT3アンタゴニストが、他の薬理作用に付随する吐き気および/または嘔吐の副作用を最小にするものであり、前記組成物の安定性が本発明の方法により高められるものである方法に関する。特に好ましい態様において、5−HT3アンタゴニストは、グラニセトロンである。
【0078】
本明細書で用いるように、用語「嘔吐」には、吐き気および嘔吐が含まれる。本発明の半固形注射形態中の5−HT3アンタゴニストは、化学療法、放射線、毒素、ウイルスもしくは細菌の感染、妊娠、前庭障害(例えば、乗り物酔い、目まい、目まい(dizziness)およびメニエール病)、外科手術、片頭痛、および脳圧の変動により誘発される嘔吐を含む急性、遅延性もしくは先行性嘔吐の治療に利益的である。上記の各々のある態様において、5−HT3アンタゴニストは、グラニセトロンである。
【0079】
本発明のグラニセトロンの半固形注射形態は、上記の方法により、制吐薬を送達ビヒクルに混合させることにより調製される。グラニセトロンの濃度は、約0.1〜80重量%、好ましくは、約0.2〜60重量%、より好ましくは、約0.5〜40重量%、最も好ましくは、約1〜5重量%、例えば、約2〜3重量%で変動し得る。次いで、半固形組成物は、16〜25ゲージのニードルでシリンジに充填され、最も有効であると決定された部位に注入される。本発明の半固形注射用組成物は、弱可溶性および可溶性の両制吐薬の制御送達に用いることができる。
【0080】
ある特定の態様において、グラニセトロンは、グラニセトロンの塩形態で、またはグラニセトロンとグラニセトロンの塩の混合物の形態で用いられ得る。本発明に使用されるグラニセトロンの適当な医薬的に許容される塩には、例えば、グラニセトロン溶液を、塩酸、ヨウ素酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、カルボン酸、リン酸、硫酸などのような医薬的に許容される非毒性酸溶液と混合することにより形成され得る酸付加塩が含まれる。
【0081】
実験:
製剤の調製:
活性薬剤を含む様々なポリマーは、本明細書に記載されるような方法を用いて調製され得る。1の例において、活性薬剤は、グラニセトロンである。1の例において、ポリマー(ポリマーA)は、47.4モル%のDETOSU、42.1モル%のTEG、および10.5モル%の潜在の酸(latent acid)を含む。Mwは、5,900〜8,100ダルトンであり、およびMnは、2,900〜4,000ダルトンである。調製される別の種類のポリマー組成物において、ポリマーは、約40〜60モル%のDETOSU、40〜60モル%のTEG、および5〜20モル%の潜在の酸を含み得る。
【0082】
ある例において、製剤Fは、78.4重量%のポリマーA、19.6重量%のMPEG550(メトキシ−ポリエチレングリコール、Mn550)および2%のグラニセトロンを含む。
【0083】
製剤Fは、粘度を減少させる賦形剤としての専有しているトリエチレングリコール−ポリオルトエステル(「TEG−POE」)ポリマーとメトキシポリエチレングリコール(「MPEG」)中に2%(W/W)のグラニセトロンを含む。生成物は、前もって充填したシリンジ中に清澄な滅菌した粘稠性の液体として提供される。製剤Fは、結晶性グラニセトロンをMPEGおよびTEG−POEポリマーの混合物中に溶解させることにより、GMP条件下で製造される。現在、大量生成物(bulk product)は、ガンマ照射により滅菌され、無菌的にシリンジに充填される。
【0084】
安定性の高い製剤F(製剤FR)は、結晶性グラニセトロンをMPEGおよびTEG−POEポリマーの混合物中に溶解させ、続いて加熱処理により製造される。典型的な加熱処理は、製剤を、動的な(dynamic)不活性ガス環境下において24時間かけて90〜95℃のような温度に加熱することからなる。組成物または製剤の熱曝露の制御は、管の内容物全体にわたり温度制御を可能にするように覆う円筒型リアクター中で達成される。製剤は、窒素もしくはアルゴンの不活性雰囲気下においてオーバーヘッド攪拌機で継続的に撹拌される。短時間での高温または長時間での低温が製剤を低い分子量かつ粘度にし、室温で安定な状態を維持させる。
【0085】
代替的なプロセスは、活性薬剤(例えば、グラニセトロン)の添加前にポリオルトエステル(例えば、TEG−POE)またはポリオルトエステルおよび賦形剤(例えば、MPEG)において同様の加熱処理を行い、その結果、本明細書に記載されるような安定性の高まった組成物が得られ得る。
【0086】
上記のような別の代替的な組成物は、グラニセトロンのような活性成分の懸濁液を含む。
【0087】
本願の方法は、下記の表のとおり、ポリマーA、グラニセトロン遊離塩基およびMPEG550を含む医薬組成物の安定性を高めるのに特に有用である。
【表1】
【0088】
APF112A(メピバカインを含有するポリマーA)およびAPF530は、APF135(ポリマーA)およびMPEG−550を基にした粘稠性液体ポリオルトエステル製剤であり、活性な医薬成分、3%のメピバカインおよび2%のグラニセトロンをそれぞれ含有する。これらの製剤の安定性実験からの結果は、これらの物質を含有する密封したシリンジを2〜8℃で保存した場合、ポリオルトエステルの分子量が少なくとも2年間変化しないことを示した。
【0089】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、溶質分子がカラム充填中に溶媒で充填したマトリックスへのそれらの浸透の結果として分離される液体クロマトグラフィーの一形態である。大きな分子は、すぐにカラムを通過するが、小さな分子は、孔の内外に拡散し、より遅れて出てくる。分子の大きさはその分子量に関係するため、所定ピークの溶出時間は、ある分子の分子量の測定を可能にする。保持時間または保持体積から、一連の分子量標準ならびに試料について得られる。一般的なGPCは、1,000,000から500ダルトンの範囲の分子量のポリスチレン標準を用いる。中間GPCは、15,000から100ダルトンの範囲の分子量を有するポリ(エチレン)グリコール標準を用いる。試料は、THF移動相および示差屈折率検出器を用いて2つのカラムセットから溶出する。転正曲線は、保持時間もしくは保持体積に対して対数で表した分子量をプロットすることにより得る。標準の転正曲線に基づいて、製剤の分子量を決定する。製剤の粘稠性および活性成分のインビトロ放出はまた、これらの保存条件下で安定である。粘度は、流動する性質に抵抗する分子引力により生じる流体の内部摩擦の基準である。粘度は、37℃に設定したプログラム可能な水浴からなるブルックフィールド粘度計により測定する。特定のスピンドルを用いて、最初のスピンドル速度(rpm)を、異なる速度で試料を一時的に回転して、最大トルクの約10%の所望のトルクを得ることにより決定する。次いで、せん断応力を、10〜100%のトルク範囲により測定して少なくとも10回の測定値を得る。粘度を個々の測定についてせん断応力およびずり速度から算出し、データをスピンドル速度(rpm)に対する粘度としてプロットする。このプロットに対する適合度から、10rpmでの粘度を算出し、記載する。インビトロ放出(IVR)を、一定の時間間隔ごとに製剤から放出された薬物量として測定する。リン酸緩衝液を一定量の製剤に加え、37℃でインキュベートする。一定の時間間隔において、レセプター液(receptor fluid)を取り除き、次いで補充する。レセプター液の除去と補充を製剤が見えなくなるまで続ける。取り除いたレセプター液を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析して薬剤含量を調べた。次いで、プロファイルを時間に応じて作成し、パーセント放出をインキュベーション時間にわたって算出する。しかしながら、シリンジを40℃で保存すると、製剤の分子量は、2〜4週間かけてより低いレベルに減少し、その後、さらなる減少が見られる。製剤の対応する粘度の最初の減少および活性成分のインビトロ放出の増加、続いて新たなレベルでの停滞期もまた、観察される。図1および2は、APF530についての分子量安定性データを示す。
【0090】
本明細書で付与される理論もしくは具体的なメカニズムに拘束されることなく、この作用についての可能性のある仮説は、これらの組成物におけるポリオルトエステルの水に対する反応特性である。水は、低いレベル(0.1%またはそれ以下)で製剤中に存在し、場合により、製造プロセス間に伴う露出により、および/または粘稠性改質剤、MPEG550中に存在する本質的に低いレベルから取り込まれることが示されている。一定の条件下において、この水は、ポリオルトエステルと反応し、その分子量の減少に寄与し得る。かかる反応は、低い温度での拡散および反応速度の減少により、2〜8℃で十分に遅延することが予想され、これらの条件下における製剤の安定性を説明することができるであろう(図1)。一方、40℃における反応の拡散および反応速度が好ましく、製剤において、2〜4週間で分子量の減少を引き起こしうる(図2)。水の大半が、密封シリンジに入っている最小限の水とともに、または外部の水を伴わずに使い果たされると、さらなる反応は期待されず、それゆえ、さらに分子量が大きく減少することはないであろう。25℃で保存したシリンジ中の製剤は、より長い時間をわたり分子量のこの減少を示すが;それらは、最終的に、40℃で保存した物質について見られたものと同じようにより低い分子量の停滞期に達する。これらの製剤を、使用準備を行うまで、2〜8℃で輸送し、保存する。
【0091】
本願ポリオルトエステルのこの特徴は、適当な時間および温度で混合され、加熱される様々な製剤の調製に活用することができる。本明細書で供される理論のいずれにも拘束されることなく、加熱処理の方法は、存在する水を減少させ、または消費し、新規で安定な製剤を生成すると考えられる。24時間にわたる高温、例えば、90〜95℃、ならびに加工補助の使用、例えば、動的(流動性)不活性ガス環境または真空の適用は、安定性実験で見られたものと同様に、製剤をすぐに安定な分子量の停滞期に到達させると考えられる。本明細書に記載の方法により加熱される本願の組成物もまた、加熱処理されるものとされ得る。
【0092】
組成物もしくは製剤の熱曝露の制御を、管の内容物全体にわたり温度制御を可能にするように覆う円筒型リアクターで行う。この製剤を、窒素もしくはアルゴンの不活性雰囲気下においてオーバーハング攪拌機で継続的に撹拌する。短時間での高温または長時間での低温は、製剤の分子量および粘度を減少させ、室温で安定に保つ。
【0093】
水の大半がこのプロセスの結果として消費されると、かかる製剤は、もはや2〜8℃で保存する必要がなくなり、室温で維持されてもよく、それらを保存および輸送することを容易にする。さらに、分子量の減少は、対応する粘度の減少を引き起こし、製剤をより小さなニードルにより容易に投与することを可能にする。活性成分のインビトロ放出の増加も予想されるが;分子量および粘度は、なお十分に維持され、結果として放出の制御も維持されるであろう。用いる活性成分に応じて、より短い放出期間が実際に望ましく、有益であり得る。さらに、分子量の停滞期、粘度、およびインビトロ放出を、ポリマーの開始分子量の適当な選択により調整し得る。
【0094】
ある態様において、本願方法により調製された安定化した医薬組成物は、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも8ヶ月および少なくとも12ヶ月間の室温での保存に対して安定性を維持する組成物を提供する。安定化した医薬組成物は、GPCにより測定されるように、ポリマーの分子量において15%、10%、5%、3%または2%減少することなく上記期間にわたり安定性を維持する。本明細書で調製されるような安定化した医薬組成物は、ブルックフィールド粘度計を用いることによるなどの動的な粘度により測定されるように、粘度において15%、10%、5%、3%または2%変化することなく上記期間にわたり安定性を維持する。一定の具体例において、本明細書で調製されるような安定化した医薬組成物は、活性薬剤の放出について、加熱処理されていない対応する医薬組成物より30%、20%、10%もしくは5%短い時間を供する。
【0095】
我々は、ブプレノルフィンを0.25%、0.50%、0.75%、1.00%および2.00%含有し、それぞれAPF636R、APF626R、APF637R、APF579RおよびAPF580Rに対応する同様の製剤を調製し、アルゴン下において90℃で24時間加熱した。得られた加熱処理した組成物は、加熱処理していない同一の組成物と比較して、分子量および粘度においてより低く、加熱処理した組成物は、15ヶ月の安定性データに基づいて、シリンジ中に25℃で保存した場合に変化しないか、または安定であることが示された(図9および10)。これらの製剤もまた、加熱処理プロセスなしで調製した対応する製剤より、より望ましい短い期間の活性薬剤の放出を示す。
【0096】
2〜8℃で保存したAPF530に関する第III相データは、ヒト血漿中で5日間の活性成分グラニセトロンの存在、ならびに化学療法を受けている患者についての当該期間の嘔吐の対応するコントロールを示した。上記プロセスを用いて調製した新規で安定なグラニセトロン含有製剤は、室温で保存することができ(25℃、図7および8においてAPF530Rについて示した9ヶ月の安定性データから見られる)、粘度の減少により小さいゲージのニードルにより投与することが容易となり、少なくも5日間嘔気嘔吐からの開放をもたらし得る。グラニセトロンのクリアランスが個体間で変動するが、恐らく、疾患、年齢、および併用化学療法の結果として化学療法を受けている患者におけるクリアランスの異常が存在することは、ヒト臨床データより明らかである。(図3および4参照)。このクリアランスの異常は、薬剤放出速度の増加の効果を緩和し、それにより治療上の効果が5日間にわたり可能であることが予想され得る。
【0097】
前記は、主に例示のために示されている。分子構造、送達ビヒクルもしくは医薬組成物中の様々な成分の割合、製造方法および本明細書に記載の本発明のその他のパラメーターが本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な方法でさらに修飾もしくは置換されてもよいことは、当業者にとって明らかである。例えば、温度、圧力および時間は、製剤中の特定のポリマーおよび活性化合物のような因子に従って、および応じて変動してもよく、かかる予想される変動または差異は、本発明の対象および実施に応じて考慮される。それゆえ、本発明は、下記の特許請求の範囲により規定され、かかる特許請求の範囲は、合理的である限り広く解釈されるものとする。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、表題「ポリオルトエステルおよびそれらの製剤の安定性を高める方法」として2008年12月11日に提出した米国仮特許出願番号第61/121,894号の利益を請求するものであって、出典明示によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本願は、制御放出ポリマーおよびそれらの医薬組成物の安定性を高めるための新規な方法に関する。1の具体例において、医薬組成物は、ポリオルトエステルおよび活性成分を含む。別の具体例において、本願は、本願に記載の方法に従って調製された医薬組成物を開示する。
【背景技術】
【0003】
(当該技術分野の説明)
治療剤の全身送達に関する合成生体内分解性ポリマーへの関心は、1970年代初頭にポリ乳酸を用いた非特許文献1の研究で始まった。この時から、多くの他のポリマーが治療剤の制御放出のための生体内分解性マトリックスとして調製され、研究されてきた。
【0004】
特許文献1〜5は、生物分解性または生体内分解性ポリオルトエステルを開示する。これらのポリマーは、2,2−ジエトキシテトラヒドロフランのようなオルトエステル(またはオルトカルボン酸エステル)と1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなジオールとの反応によって形成される。この反応は、高温および減圧ならびに比較的長い時間を必要とする。薬物またはその他の活性薬剤は、ポリマーマトリックス中に保持される。薬剤は、不安定な結合の加水分解によりポリマー生物分解物として放出される。
【0005】
特許文献6は、ポリオールを多官能性ケテンアセタールと反応させることにより調製されるポリマーを開示する。これらのポリマーは、合成が室温と常圧で容易に進行し、得られたポリマーが優れた特性を有することが開示されていることから、特許文献1〜5のポリマーよりも顕著な改善を示す。
【0006】
さらなるポリマーは、特許文献7に開示される。これらのポリマーは、アセタール、カルボキシ−アセタールおよびカルボキシ−オルトエステル結合を含有し、多官能性ケテンアセタールとビニルエーテルを含む化合物との反応で開始し、続いてポリオールまたはポリ酸と反応させる二段階工程により調製される。同様のタイプのなおさらなるポリマーは、特許文献8に開示される。これらのポリマーは、多様なカルボキシル酸基を含む化合物と多官能性ケテンアセタールとの反応により形成される。得られたポリマーは、極めて急速な浸食時間を有する。
【0007】
オルトエステル結合の加水分解が容易であるにも関わらず、当該技術分野で知られているポリオルトエステルは、水性緩衝液中に置かれた場合、または体内に滞留する場合には、極めて安定な物質である。この安定性は、ポリマーに浸透することができる水の量を厳格に制限するポリオルトエステルの極度の疎水性によるものとされる。それゆえ、有用な浸食速度を達成するために、酸性賦形剤がポリマーに物理的に取り込まれなければならない。これは浸食速度を制御できる一方で、物理的に取り込まれた酸性賦形剤が様々な速度でポリマーマトリックスから拡散し、ポリマーが非常に長い存続期間を残しているにも関わらず、賦形剤を完全に奪われたマトリックスを放出しうる。
【0008】
特許文献9は、グリコール酸、乳酸またはグリコール酸−共−乳酸コポリマーのエステルのような短鎖α−ヒドロキシ酸エステルのポリオルトエステルポリマー鎖への取り込み、ならびに全体としてポリマーに対するこれらのエステル量の変動により、ゼクエストレーション(sequestration)のための整形外科用インプラントまたはビヒクルおよび薬の持続送達、化粧用薬剤、ならびにその他の有益な薬剤として有用なポリオルトエステルポリマーを開示する。
【0009】
水の存在下において、これらのエステルは、ポリマー鎖に取り込まれると、37℃の体温および生理的なpH、特にpH7.4で容易に加水分解されて、対応するα−ヒドロキシ酸を生成する。次いで、α−ヒドロキシ酸は、酸性賦形剤として作用して、ポリマーの加水分解速度を制御する。ポリマーが活性薬剤を封入するビヒクルまたはマトリックスとして用いられる場合、ポリマーの加水分解は活性薬剤の放出を引き起こす。
【0010】
特許文献10は、ポリオルトエステルおよび医薬的に許容される液体賦形剤を含む、有効な量の選択性5−ヒドロキシトリプタミン3(5−HT3)受容体アンタゴニストの持続放出および制御放出のための医薬組成物および方法を開示する。(5−HT3)受容体アンタゴニストは、催吐性化学療法の経過後の急性および遅延性化学療法誘発性悪心嘔吐(CINV)の予防、減少もしくは軽減に有用である。
【0011】
この項目および本出願全体のその他の項目に列挙される特許文献および参考文献は、出典明示によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,079,038号
【特許文献2】米国特許第4,093,709号
【特許文献3】米国特許第4,131,648号
【特許文献4】米国特許第4,138,344号
【特許文献5】米国特許第4,180,646号
【特許文献6】米国特許第4,304,767号
【特許文献7】米国特許第4,957,998号
【特許文献8】米国特許第4,946,931号
【特許文献9】米国特許第5,968,543号
【特許文献10】特許公開番号第2007/0265329号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Yolles et al., Polymer News 1:9-15 (1970)
【発明の概要】
【0014】
ある態様において、本出願は、活性薬剤およびポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、医薬組成物を高温で十分な時間加熱することで、室温で保存した場合に加熱されていない医薬組成物より安定な医薬組成物を提供することを特徴とする方法を提供する。別の態様において、本出願は、ポリマーの安定性を高める方法であって、該方法が、ポリマーを高温で十分な時間加熱することで、室温で保存した場合に、加熱されていない医薬組成物より安定な医薬組成物を提供することを特徴とする方法を開示する。
【0015】
別の態様において、本出願は、活性薬剤およびポリオルトエステルポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することを特徴とする方法を提供する。別の態様において、本出願は、活性薬剤を含まないポリオルトエステルポリマーから本質的になる除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することを特徴とする方法を提供する。
【0016】
別の態様において、本出願は、安定性の高い除放性医薬組成物を調製する方法であって、該方法が、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することを特徴とし、該医薬組成物が活性薬剤およびポリマーを含むものである方法を提供する。
【0017】
これらおよびその他の具体例は、さらに以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】シリンジ中に約5℃で長期間保存した医薬組成物(APF530、製剤F)の平均分子量(Mw)であって、該医薬組成物が、グラニセトロンおよび下記に規定のポリオルトエステルポリマーAを含むものであるものを示す。
【0019】
【図2】シリンジ中に40℃で長期間保存した上記医薬組成物の平均分子量(Mw)を示す。
【0020】
【図3】健常なヒトに対して臨床中に投与した上記組成物(APF530)の薬物動態学的プロファイルを示す。
【0021】
【図4】化学療法を受けている患者に対して臨床中に投与した上記組成物(APF530)の薬物動態学的プロファイルを示す。
【0022】
【図5】シリンジ中に25℃で24ヶ月間保存した上記組成物(APF530)からのグラニセトロンのインビトロ放出のプロファイルを示す。
【0023】
【図6】シリンジ中に5、25、30および40℃で24ヶ月間保存した上記組成物(APF530)の平均分子量を示す。
【0024】
【図7】シリンジ中に25℃で9ヶ月間保存した安定性の高い組成物(APF530R、製剤FR)からのグラニセトロンのインビトロ放出のプロファイルを示す。
【0025】
【図8】シリンジ中に5、25、30および40℃で9ヶ月間保存した安定性の高い上記組成物(APF530R、製剤FR)の平均分子量を示す。
【0026】
【図9】医薬組成物(APF580R)からのブプレノルフィンのインビトロ放出のプロファイルを示し、該医薬組成物は、シリンジ中に25℃で15.5ヶ月間保存した、ブプレノルフィンおよび下記に規定のポリオルトエステルポリマーAを含むものである。
【0027】
【図10】シリンジ中に5、25、30および40℃で15.5ヶ月間保存した上記組成物(APF580R)の平均分子量を示す。
【0028】
【図11】雄および雌のビーグル犬に投与した(高まった安定性を有し、および有さない)数種類のブプレノルフィン組成物の薬物動態学的プロファイルを示す。
【0029】
(発明の詳細な説明)
定義
本明細書中に特に断りのない限り、全ての技術および科学用語は、合成化学および薬学分野の当業者によって一般的に用いられ、理解されているような慣用的な定義に従って本明細書で用いられる。
【0030】
本明細書で用いられる「安定性」は、患者への投与のための準備された形態に調製される時間と、患者に投与される時間との間に、医薬組成物の特性が、特定の保存条件下のような特定の条件下で、実質的に変化しないまま定常状態を保持する、本明細書に記載のポリマー組成物または医薬組成物の能力を意味する。本発明の医薬組成物の特性には、組成物の粘度、ポリマー分子量および/または活性薬剤の放出速度などが含まれるが、これらだけに限定されない。医薬組成物は、例えば、組成物が特定の保存条件下で長期間分解されず、または加水分解されない場合、本明細書で提供されるような特定の条件下で実質的に安定である。医薬組成物は、その特性が、特定の保存条件下で、4週間、8週間、6ヶ月、12ヶ月またはそれ以上の期間にわたり、10%より大きく、5%より大きく、3%より大きく、または2%より大きく変化しない場合に定常状態(または安定)である。1の態様において、組成物は、少なくとも4週間で3%より大きく変化しない。したがって、1の態様において、本願の組成物の安定性を高める方法であって、該組成物の特性が、特定の保存条件下で、4週間、8週間、6ヶ月、12ヶ月またはそれ以上の期間にわたり、10%より大きく、5%より大きく、3%より大きく、または2%より大きく変化しない方法が提供される。
【0031】
「加水分解されやすいポリマー」は、水分子との反応により分解(degradation)、分解(disassembly)または消化できるポリマーを意味する。かかるポリマーは、ポリマー中にエステル基のような加水分解性基を含有する。加水分解されやすいポリマーの例には、ポリオルトエステル、例えば、本明細書に記載されるもの、ならびに出典明示により本明細書に取り込まれる米国特許第4,079,038号、第4,093,709号、第4,131,648号、第4,138,344号、第4,180,646号、第4,304,767号、第4,957,998号、第4,946,931号および第5,968,543号、ならびに米国特許公開番号第2007/0265329号に記載されるものが含まれてもよい。
【0032】
「生体内分解性」および「生物分解性」は、生物学的環境の作用によるポリマーの分解(degradation)、分解(disassembly)または消化を意味し、生きている生物の作用、特に、生理学的pHおよび温度が含まれる。一例として、ポリオルトエステルの生体内分解のための原理メカニズムは、ポリオルトエステルの単位間および内での結合の加水分解である。
【0033】
「含む」は、この用語の後に続いて列挙される構成要素を含有し、包括し、包含し、または含み、その他の列挙されていない構成要素を除かないことを意味すると解釈される総称である。
【0034】
「除放」、「持続放出」および類似する用語は、活性薬剤が、適用または注入直後に分散されるというより、長期間にわたり確認可能かつ調節可能な割合で送達ビヒクルから放出される場合に生じる活性薬剤送達の様式を意味することに用いられる。持続もしくは除放放出は、本発明で示される方法を用いて制御されてもよく、何時間、何日もしくは何ヶ月持続されてもよく、ならびに多くの因子に応じて変動してもよい。本願の医薬組成物について、放出速度は、選択される賦形剤のタイプおよび組成物中の賦形剤の濃度に依存する。放出速度の別の決定因子は、組成物中で用いられるポリマーの生体内分解速度である。生体内分解速度は、主に、ポリマーの加水分解により制御され、そして、ポリオルトエステルの組成物およびポリオルトエステル中の加水分解性結合数によって制御され得る。本願の医薬組成物からの活性成分の放出速度を決定するその他の因子には、粒径、活性薬剤の溶解度、媒体の酸性度(マトリックスに対して内部もしくは外部のいずれか)、およびマトリックス中の活性薬剤の物理的と化学的特性、ならびにpHおよび温度のような生物学的環境が含まれる。本明細書で用いられるように、医薬組成物の「持続放出」と組み合わせて用いられる「制御放出」はまた、除放もしくは持続放出期間に加えて、グラニセトロンもしくはブプレノルフィンのような活性薬剤の放出の特定プロファイルが制御されて、所望される治療効果を伴う最適な効果を提供し得ることを意味する。
【0035】
「送達ビヒクル」は、活性薬剤を目的の部位に運び、ゼクエストレーション(sequestration)もしくはその他の手法により、活性薬剤への到達速度もしくは放出を制御し、薬剤のその活性が必要とされる部位への適用を容易にすることを含む機能を有する組成物を意味する。本明細書に記載される医薬組成物において、送達ビヒクルは、ポリオルトエステルのような加水分解されやすいポリマーを含む。一定の医薬組成物の送達ビヒクルは、ポリマーに適合する賦形剤をさらに含む。
【0036】
「ポリオルトエステル−適合」は、ポリオルトエステルの特性のある特定の態様において、ポリオルトエステルと混合した場合に、単相を形成し、ポリオルトエステルへの物理的もしくは化学的変化のいずれをも生じない賦形剤の特性を意味する。
【0037】
「半固形」は、適度なストレス下で流動性を有する物質の機械−物理的状態を意味する。より詳細には、半固形物質は、約10,000から3,000,000cpsの間、特に、約30,000から500,000cpsの間の粘度を有するべきである。好ましくは、製剤もしくは組成物は、容易に注射でき(syringable)、もしくは注入でき(injectable)、このことは、局所もしくは眼科用製剤についてよく知られている種類の従来のチューブ、ニードルなしのシリンジ、または16〜25ゲージのような16ゲージもしくはそれ以下のニードルを有するシリンジから容易に分散できることを意味する。
【0038】
「ゼクエストレーション(sequestration)」は、活性薬剤のポリマーマトリックス内部空間内での閉じ込めもしくは滞留である。活性薬剤のマトリックス内でのゼクエストレーションは、薬剤の毒性効果を限定し、薬剤の作用時間を調節された方法で延長し、生物内の正確に定められた局所で薬剤の放出を可能にし、または不安定な薬剤を環境の作用から保護し得る。
【0039】
「活性薬剤」または「活性成分」は、利益的もしくは有用な結果を生じるいずれかの化合物または化合物の混合物を意味する。活性薬剤は、ビヒクル、担体、希釈剤、滑沢剤、結合剤およびその他の製剤化補助剤のような成分、ならびに封入成分もしくは別の保護成分から区別できる。活性成分の例は、医薬用、農業用もしくは化粧用薬剤である。適当な医薬用薬剤には、局所もしくは全身に作用する医薬的な活性薬剤が含まれ、前記薬剤は、局所もしくは病巣内適用(例えば、擦過皮膚、裂傷、刺創など、ならびに外科手術時の切開部位への適用を含む)または注入(例えば、皮下、皮内、筋肉内、眼球内もしくは関節内注入)により対象に投与されてもよい。適当な医薬用薬剤には、多糖類、 DNAおよびその他のポリヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗原、抗体、ワクチン、ビタミン、酵素、タンパク質、天然に存在するか、もしくは生物工学で作出した物質、およびこれらの類似物、抗感染薬(抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗疥癬薬もしくはシラミ駆除剤を含む)、消毒薬(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸マフェナイド、塩化メチルベンゼトニウム、ニトロフラゾン、ニトロメルソールなど)、ステロイド類(例えば、エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン、アドレノコルチコイドなど)、オピオイド類(例えば、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、メプタジノール、ナルブフィン、オキシモルホンおよびペンタゾシン)、治療用ポリペプチド(例えば、インスリン、エリスロポイエチン、骨形態形成タンパク質のような形態形成タンパク質など)、鎮痛剤および抗炎症薬(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトロラック、COX−1阻害剤、COX−2阻害剤など)、抗精神病薬(例えば、クロルプロマジン、トリフルプロマジン、メソリダジン、ピペルアセタジンおよびチオリダジンを含むフェノチアジン;クロルプロチキセンなどを含むチオキサンテン)、抗血管新生薬(例えば、コンブレシアチン(combresiatin)、コントルトロスタチン(contortrostatin)、抗VEGFなど)、抗不安薬(例えば、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパム、オキサゼパムを含むベンゾジアゼピン:およびバルビツレート)、抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチリン、ドキセピン、ノルトリプチリン、アモキサピン、トラニルシプロミン、フェネルジンなどを含む三環系抗うつ薬およびモノアミンオキシダーゼ阻害剤を含む)、刺激薬(例えば、メチルフェニデート、ドキサプラム、ニケトアミドなど)、麻薬(例えば、ブプレノルフィン、モルヒネ、メペリジン、コデインなど)、鎮痛剤−解熱剤および抗炎症薬(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンなど)、局所麻酔薬(例えば、ブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインなどのようなアミド−もしくはアニリド−型局所麻酔薬)、避妊薬、化学療法薬および抗悪性腫瘍薬(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、チオグアニン、カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、クロランブシル、ストレプトゾシン、メトトレキセート、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンデシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモキシフェンなど)、心血管作動薬および抗高血圧薬(例えば、プロカインアミド、亜硝酸アミル、ニトログリセリン、プロプラノロール、メトプロロール、プラゾシン、フェントラミン、トリメタファン、カプトプリル、エナラプリルなど)、肺疾患の治療薬、抗てんかん薬(例えば、フェニトイン、エトトインなど)、抗発汗剤(anti-hidrotics)、角質形成剤(keratoplastic agent)、色素沈着剤(pigmentation agent)もしくは軟化薬、制吐薬(例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、メトクロプラミド、ドンペリドン、スコポラミンなど)が含まれる。本願の組成物はまた、収斂薬、制汗剤、刺激薬、発赤剤、発疱剤、硬化剤、腐食剤(caustics)、腐食剤(escharotics)、角質溶解剤、焼け防止剤ならびに色素沈着低下剤および鎮痒薬を含む様々な皮膚病薬のようなその他の局所的に作用する活性薬剤に適用され得る。用語「活性薬剤」には、さらに、抗真菌薬、殺虫薬および除草剤のような殺生物剤、植物成長促進剤もしくは阻害剤、保存剤、殺菌薬、空気清浄剤および栄養剤が含まれる。活性薬剤のプロドラッグおよび医薬的に許容される塩は、本願の範囲内に含まれる。
【0040】
「治療上の有効量」は、疾患を治療するために動物に投与されると、疾患に対して治療の効果をもたらすのに十分な量を意味する。
【0041】
疾患の「治療する」もしくは「治療」には、疾患にかかりやすいが、いまだ疾患の症状を経ていないか、もしくは示していない動物において疾患を予防すること(予防的治療)、疾患を抑えること(その進行を遅くするか、もしくは阻むこと)、疾患の症状もしくは副作用を緩和すること(緩和療法を含む)、および疾患を軽減すること(疾患の退行を生じること)が含まれる。
【0042】
方法
活性な医薬用薬剤の制御および/または持続放出を患者に提供する送達ビヒクルとして特定のポリマーを含む除放性医薬組成物は、周囲温度で保存されると不安定性を示す。かかる不安定性は、活性薬剤の分子量の減少、粘度の減少、および/または放出の増加の形であり得る。例えば、下記の実施例における製剤中の医薬組成物は、40℃で2〜4週間保存した場合に、活性薬剤の分子量および粘度の減少ならびにインビトロ放出の増加を示した。しかしながら、同一の製剤が2〜8℃で少なくとも1年間保存される場合、その分子量および粘度は実質的に変化しない。それゆえ、保存および輸送の間の医薬組成物の分解を避けるために、かかる医薬組成物は、冷却条件下で保たれなければならず、保存および輸送コストの増加を生じていた。さらに、厳格な保存条件が合わなければ、組成物は、分解されて、望まれるような同一の活性薬剤放出速度を供せず、その結果、患者への活性薬剤の適切でないか、もしくは望ましくない量の投与となり得る。
【0043】
1の具体例において、活性薬剤および生体適合性ポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法が提供される。ある具体例において、ポリマーは、加水分解されやすいポリマーである。ある具体例において、前記方法は、医薬組成物中の含水量を減少させること、またはポリマー中の含水量を減少させることを含む。ある具体例において、含水量は、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および/または減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することによって減少される。ある具体例において、条件は、高温および十分な時間を含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および不活性ガスを含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および減圧を含む。
【0044】
ある具体例において、前記方法は、医薬組成物を高温で十分な時間加熱することで、室温で保存した場合に、加熱していない医薬組成物より安定な医薬組成物を提供することを特徴とする。すなわち、上記加熱処理した方法から得られた医薬組成物は、2つの医薬組成物を同じ条件下において室温で同じ時間保存する場合、加熱処理されていない同じ医薬組成物より安定な組成物を生成する。
【0045】
別の態様において、本願は、活性薬剤およびポリオルトエステルポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することを特徴とする方法を提供する。ある具体例において、条件は、高温および十分な時間を含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および不活性ガスを含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および減圧を含む。別の具体例において、本願は、ポリオルトエステルポリマーを含む医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、以下:高温、十分な時間、不活性ガスおよび減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することを特徴とする方法を提供する。ある具体例において、条件は、高温および十分な時間を含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および不活性ガスを含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および減圧を含む。
【0046】
なお別の態様において、本願は、安定性の高い除放性医薬組成物を調製する方法であって、該方法が、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理することを特徴とするものであり、該医薬組成物が、活性薬剤およびポリオルトエステルポリマーを含むものである方法を提供する。ある具体例において、条件は、高温および十分な時間を含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および不活性ガスを含む。ある具体例において、条件は、高温、十分な時間および減圧を含む。
【0047】
上記方法のある具体例において、高温は、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、少なくとも約70℃または少なくとも約80℃である。ある具体例において、高温は、約80℃から約120℃である。ある具体例において、高温は、約85℃から約100℃である。ある具体例において、高温は、約90℃から約95℃である。
【0048】
上記方法のある具体例において、前記時間は、少なくとも12時間である。ある場合において、前記時間は、上記の列挙されている高温で、少なくとも12時間である。上記のある具体例において、前記時間は、少なくとも24時間である。上記方法のある具体例において、不活性ガスはアルゴンであるか、または不活性ガスは窒素である。
【0049】
上記方法のある具体例において、減圧は、常圧の約50%またはそれより低いものである。ある具体例において、減圧は、常圧の約25%またはそれより低いものである。ある具体例において、常圧の約10%またはそれより低いものである。ある具体例において、常圧の約1%またはそれより低いものである。
【0050】
上記方法のある具体例において、ポリマーの分子量は減少する。ある具体例において、分子量は、処理前の分子量と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%まで減少する。
【0051】
上記方法のある具体例において、医薬組成物の粘度が減少する。ある具体例において、粘度は、上記に記載されるように加熱処理されていない医薬組成物の粘度と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%まで減少する。
【0052】
上記方法のある具体例において、医薬組成物中の活性薬剤の放出速度は増加する。ある具体例において、放出速度は、処理前の放出速度と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%まで増加する。
【0053】
ある場合において、本明細書に記載の医薬組成物は、シリンジに詰め込まれ、密封され、保存される。それゆえ、本願のある具体例において、前記方法は、以下:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上を含む条件下で医薬組成物を処理し、処理した医薬組成物をシリンジに詰め込み、シリンジを密封することを特徴とする。ある具体例において、前記方法は、さらに、処理した医薬組成物を詰め込んだシリンジを周囲温度下で長期間保存することを特徴とし、該医薬組成物はその目的とする用途に関して安定である。かかる長期間は、少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、または少なくとも2年であり得る。
【0054】
ポリマー
本願の方法は、ポリマーを含む医薬組成物の安定性を高めるのに有用であるものとされる。本願の方法のある態様において、医薬組成物は、活性薬剤を含まないポリマーを含む。本願の方法で安定化され得るポリマーには、水分子との反応により分解(degradation)、分解(disassembly)または消化(digestion)できるポリマー、例えば、ポリマー鎖構造中にエステル基のような加水分解性基を有するポリマーが含まれる。加水分解されやすいポリマーの例には、本明細書に記載されるもの、および出典明示により全体が本願明細書に取り込まれる米国特許第4,079,038号、第4,093,709号、第4,131,648号、第4,138,344号、第4,180,646号、第4,304,767号、第4,957,998号、第4,946,931号および第5,968,543号、ならびに米国特許公開第2007/0265329号に記載されるもののようなポリオルトエステルが含まれ得るが、これらだけに限られない。
【0055】
上記方法のある具体例において、ポリマーは、式I、式II、式IIIまたは式IV
【化1】
[式中、
Rは、結合、−(CH2)a−、または−(CH2)b−O−(CH2)c−であって;ここで、aは、1から10の整数であり、bおよびcは、独立して1から5の整数であり;
R*は、C1〜4アルキルであり;
R0、R''および'''は、各々独立して、HまたはC1〜4アルキルであり;
nは、少なくとも5の整数であり;ならびに
Aは、R1、R2、R3、またはR4であり、ここで、
R1は、
【化2】
であって、
pは、1から20の整数であり;
R5は、水素またはC1〜4アルキルであり;ならびに
R6は、
【化3】
であって、
ここで:
sは、0から30の整数であり;
tは、2から200の整数であり;ならびに
R7は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R2は、
【化4】
であり、
R3は、
【化5】
であって、
ここで:
xは、0から100の整数であり;
yは、2から200の整数であり;
R8は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R9およびR10は、独立して、C1〜12アルキレンであり;
R11は、水素またはC1〜6アルキルであり、R12は、C1〜6アルキルであるか;またはR11およびR12は、一緒になってC3〜10アルキレンであり;ならびに
R4は、アミド基、イミド基、ウレア基、およびウレタン基から独立して選択される少なくとも1つの官能基を含有するジオール残基であって;
A単位の少なくとも0.01モルパーセントが式R1である]
のポリオルトエステルである。
【0056】
ある具体例において、Aは、R1、R3、またはR4であって、
R1は、
【化6】
であり、
ここで、
pは、1から20の整数であり;
R3およびR6は、各々独立して、
【化7】
であって、
ここで、
xは、0から30の整数であり;
yは、2から200の整数であり;
R8は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R9およびR10は、独立してC1〜12アルキレンであり;
R11は、水素またはC1〜6アルキルであり、R12は、C1〜6アルキルであるか;またはR11およびR12は、一緒になってC3〜10アルキレンであり;
R4は、アミド基、イミド基、ウレア基、およびウレタン基から独立して選択される少なくとも1つの官能基を含有するジオール残基であって;
A単位の少なくとも0.01モルパーセントが式R1である。
【0057】
別の具体例において、ポリオルトエステルの濃度は、1重量%から99重量%の範囲である。なお別の具体例において、ポリオルトエステルは、3,000から10,000の間の分子量を有する。別の具体例において、式R1であるA単位の割合は、5から15モルパーセントである。
【0058】
上記方法の別の具体例において、ポリオルトエステルは、式Iのものであって、その単位のいずれもがR2と同一のAを有しておらず;
R3は、
【化8】
であって、
ここで、
xは、0から10の整数であり;
yは、2から30の整数であり;ならびに
R6は、
【化9】
であり、
ここで、
sは、0から10の整数であり;
tは、2から30であり;ならびに
R5、R7、およびR8は、独立して、水素またはメチルである。
【0059】
上記方法の別の具体例において、R3およびR6は、両方とも−(CH2−CH2−O)2−(CH2−CH2)−であり;R5は、メチルであり;ならびにpは、1または2である。別の具体例において、R3およびR6は、両方とも−(CH2−CH2−O)9−(CH2−CH2)−であり;R5は、メチルであり;ならびにpは、1または2である。別の場合において、ポリオルトエステルは、式Iであり、Rは、−(CH2)b−O−(CH2)c−であって;ここで、bおよびcは、両方とも2であり;R*は、C2アルキルであり;賦形剤は、メトキシ−ポリエチレングリコール(Mn550)であり、活性薬剤は、組成物の2wt%を含む。1の具体例において、活性薬剤は、グラニセトロンである。
【0060】
本願の方法のある具体例において、本発明の医薬組成物で用いられるポリオルトエステルは、式I、式II、式IIIおよび式IVで示されるように、ジケテンアセタール残基の各隣接ペアが1つのポリオール、好ましくはジオール残基により分けられているジケテンアセタールおよびジオールの交互残基のうちの1つである。
【化10】
【0061】
「α−ヒドロキシ酸を含有する」単位のより高いモルパーセンテージを有するポリオルトエステルは、より高い速度の生体内分解性を有する。ある場合において、ポリオルトエステルは、「α−ヒドロキシ酸を含有する」単位のモルパーセンテージが、少なくとも0.01モルパーセント、約0.01から約50モルパーセントの範囲、より好ましくは、約0.05から約30モルパーセント、例えば、約0.1から約25モルパーセント、特に、約1から約20モルパーセントであるものである。所望の組成物を得るのに適当な「α−ヒドロキシ酸を含有する」単位のモルパーセントは、製剤ごとに変動する。
【0062】
別の場合において、ポリオルトエステルは、nが5から1000の整数であり;ポリオルトエステルが、1000から20,000、好ましくは1000から10,000、より好ましくは1000から8000の分子量を有し;R5が水素もしくはメチルであり;R6が、
【化11】
であって、
ここで、sは、0から10、特に、1から4の整数であり;tは、2から30、特に、2から10の整数であり;R7は、水素またはメチルであり;
R3が、
【化12】
であって、xは、0から10、特に、1から4の整数であり;yは、2から30、または2から10の整数であり;およびR8は水素もしくはメチルであり;
R4が、1または2個のアミド基、イミド基、ウレア基またはウレタン基により遮られた2から20個の炭素原子、または2から10個の炭素原子の脂肪族ジオール残基から選択され;
AがR1である単位の割合が、約0.01〜50モル%であり、または0.05〜30モル%であり、または0.1〜25モル%であり;
AがR2である単位の割合が、20%より低く、または10%より低く、特に、5%より低く;
AがR4である単位の割合が、20%より低く、10%より低く、または5%より低いものである。
【0063】
賦形剤
上記方法のある具体例において、医薬組成物の送達ビヒクルは、賦形剤をさらに含む。送達ビヒクル中のポリオルトエステルおよび賦形剤の濃度は、変動してもよい。例えば、ビヒクル中の賦形剤の濃度は、ビヒクルの1〜99重量%、好ましくは、5〜80重量%、特に、20〜60重量%の範囲内であり得る。
【0064】
単数形を用いて本願のポリオルトエステルおよび賦形剤が記載されるが、上記の群から選択される1つより多いポリオルトエステルおよび賦形剤が送達ビヒクル中で用いられ得ることが理解される。また、必要ではないが、着色剤または保存剤のようなその他の医薬的に許容される不活性な薬剤エステルもまた本組成物に含まれてもよいことが理解される。
【0065】
ある具体例において、ポリオルトエステルが医薬組成物中に存在している場合、賦形剤は、医薬的に許容され、ポリオルトエステル−適合性物質である。ある具体例において、賦形剤は、室温で液体であり、ポリオルトエステルと容易に混合できる。
【0066】
適当な賦形剤には、200から4,000の間の分子量を有するポリ(エチレングリコール)エーテル誘導体、例えば、ポリ(エチレングリコール)モノ−もしくはジ−アルキルエーテル、好ましくはポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル550またはポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル250;400から4,000の間の分子量を有するポリ(エチレングリコール)コポリマー、例えば、ポリ(エチレングリコール−コ−ポリプロピレングルコール);C2〜19脂肪族カルボン酸もしくはかかる酸の混合物のプロピレングリコールモノ−もしくはジ−エステル、例えば、プロピレングリコールジカプリル酸エステルもしくはジカプリン酸エステル;C2〜19脂肪族カルボン酸もしくはかかる酸の混合物のモノ−、ジ−もしくはトリグリセリド、例えば、カプリル酸グリセリル、カプリン酸グリセリル、カプリル酸/カプリン酸グリセリル、カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸グリセリル、グリコフロールおよび類似のエトキシル化テトラヒドロフルフリルアルコールおよびそれらのC1〜4アルキルエーテルならびにC2〜19脂肪族カルボン酸エステル;ならびに生体適合性油、例えば、ひまわり油、ゴマ油およびその他の非−もしくは部分的−水素化植物油が含まれる。
【0067】
本明細書に記載の一定の製剤は、容易に注射でき、もしくは注入できる半固形医薬組成物であり、これらは、局所もしくは眼科用製剤について周知な種類の従来のチューブ、ニードルなしのシリンジ、または(16〜25ゲージのような)16ゲージもしくはそれ以下のニードルを有するシリンジから容易に分散し、皮下、皮内もしくは筋肉内に注入することができることを意味する。製剤は、シリンジ、注射用ディスペンサーもしくはチューブディスペンサーによるものを含む様々な当技術分野で周知の方法を用いて適用し得る。
【0068】
活性薬剤
本明細書に記載の医薬組成物は、1つまたはそれ以上の活性薬剤が含まれて、利益的もしくは有用な結果を供する。活性薬剤の例は、本明細書に記載される。
【0069】
本願の方法または組成物のある具体例において、活性薬剤は、局所麻酔剤である。局所麻酔剤の非限定的な例には、アミド−もしくはアニリド−型局所麻酔剤、例えば、ブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインなどが含まれる。ある具体例において、活性薬剤は、メピバカインもしくはブプレノルフィンである。
【0070】
本願の方法もしくは組成物のある具体例において、活性薬剤は、抗CINV(化学療法誘発性悪心嘔吐)剤、例えば、選択性5−ヒドロキシトリプタミン3(5−HT3)受容体アンタゴニスト(例えば、グラニセトロン(Kytril(登録商標))、オンダンセトロン(Zofran(登録商標))、ドラセトロン(Anzemet(登録商標))およびパロノセトロン(アロキシ(登録商標)、MGI Pharma))である。(5−HT3)受容体アンタゴニストを有する組成物は、催吐性化学療法経過後の急性および遅延性化学療法誘発性悪心嘔吐(CINV)の予防、減少もしくは軽減に有用である。ある具体例において、組成物は皮下注射により投与される。
【0071】
ある具体例において、APF530医薬組成物は、5−HT3受容体アンタゴニスト、加水分解されやすいポリマーおよび医薬的に許容される液体賦形剤を含み;前記組成物は、単回用量で投与される場合、嘔吐症状の頻度のプロファイルを追随する5−HT3受容体アンタゴニストの放出プロファイルをもたらし;前記組成物は、5−HT3受容体アンタゴニストのレベルを24時間にわたりもたらして、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの20%以内である%Cmaxプロファイルを供し、96時間にわたりレベルを持続して、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの10%以内である%Cmaxプロファイルを供し、血漿中の5−HT3受容体アンタゴニスト濃度を約144時間で実質的にもたらさないものである。ある具体例において、5−HT3受容体アンタゴニストの24時間にわたるレベルは、大きく、本明細書で提供されるように実験で測定されて、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの20%以内である%Cmaxプロファイルを供し、96時間にわたりレベルを持続して、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの10%以内である%Cmaxプロファイルを供して、血漿中の検出可能な5−HT3受容体アンタゴニスト濃度を約144時間で実質的にもたらさないものである。
【0072】
ある具体例において、5−HT3受容体アンタゴニストはグラニセトロンである。ある具体例において、5−HT3受容体アンタゴニストの有効量は、約5mgから約10mgの単回用量である。ある具体例において、皮下注射による投与は、化学療法の約3時間、2時間、1時間もしくは30分前に行われる。上記の場合において、皮下注射による投与は、化学療法の約30分前に行われる。別の場合において、皮下注射は、約30秒かけて行われる。さらに別の場合において、5−HT3受容体アンタゴニストは、グラニセトロンであり、グラニセトロンの有効量は、約5mgである。
【0073】
本願の方法のその他の具体例において、APF530医薬組成物は、5−HT3受容体アンタゴニストを24時間にわたり実質的なレベルをもたらして、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの10%以内である%Cmaxプロファイルを供する。ある具体例において、組成物は、96時間にわたりレベルを持続して、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの5%以内である%Cmaxプロファイルを供する。ある具体例において、組成物は、有効量の5−HT3受容体アンタゴニストを24時間にわたり実質的なレベルをもたらして、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの10%以内である%Cmaxプロファイルを供し、96時間にわたりレベルを持続して、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの5%以内である%Cmaxプロファイルを供し、血漿中の5−HT3受容体アンタゴニスト濃度を約144時間で実質的に供しないものである。ある具体例において、有効量の5−HT3受容体アンタゴニストの患者への投与は、化学療法を受ける患者において、報告されている頭痛の頻度を、さらに約40%、30%、20%または約10%より低く減少させる。ある具体例において、報告されている頭痛の頻度は、化学療法を受けている患者において約20%より低い。
【0074】
別の具体例において、上記の方法であって、APF530医薬組成物は、患者に投与されると、実質的なレベルの5−HT3受容体アンタゴニストを24時間にわたり放出して、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの10%以内である%Cmaxプロファイルを供し、96時間にわたりレベルを持続して、嘔吐症状の頻度におけるプロファイルの5%以内である%Cmaxプロファイルを供し、次いで血漿中の5−HT3受容体アンタゴニスト濃度を約144時間で実質的に供しないものである。ある場合において、有効量の5−HT3受容体アンタゴニストの患者への投与は、化学療法を受ける患者において、報告されている頭痛の頻度を、さらに、約40%、30%、20%もしくは約10%より低く減少させる。別の場合において、報告されている頭痛の頻度は、化学療法を受けている患者において約20%より低い。なお別の場合において、有効量の5−HT3受容体アンタゴニストの患者への投与は、催吐性化学療法後の嘔吐頻度において、静脈注射によるパロノセトロンの投与より統計学的に顕著な減少を生じる。
【0075】
上記の場合において、5−HT3受容体アンタゴニストは、グラニセトロンである。特定の場合において、グラニセトロンの割合は、組成物の0.1重量%から80重量%である。なお別の場合において、グラニセトロンの割合は、組成物の約1重量%から5重量%である。
【0076】
本願の方法のある具体例において、医薬組成物は、2%のグラニセトロン、および
(i)78.4重量%の式I:
【化13】
[式中、
R*は、C2アルキルであり;
nは、少なくとも5の整数であり;および
Aは、R1またはR3であって、ここで、R1は、
【化14】
であって、
pは、2であり;R5は、水素であり;ならびに
R6は、
【化15】
であって、
sは、3であり;およびR3は、
【化16】
であって、xは、3であり;
ポリオルトエステルは、47.4モル%のDETOSU、42.1モル%のTEG、および10.5モル%のA単位が式R1である]
のポリオルトエステル;および
(ii)医薬的に許容される、19.6重量%のMPEG550(メトキシ−ポリエチレングリコール、Mn550)であるポリオルトエステル−適合性液体賦形剤
を含む半固形送達ビヒクルを含む。
【0077】
放出制御グラニセトロンの送達:
本願は、さらに、5−HT3アンタゴニストを含む医薬組成物を投与することを特徴とする患者の嘔吐治療または予防方法であって、該5−HT3アンタゴニストが、他の薬理作用に付随する吐き気および/または嘔吐の副作用を最小にするものであり、前記組成物の安定性が本発明の方法により高められるものである方法に関する。特に好ましい態様において、5−HT3アンタゴニストは、グラニセトロンである。
【0078】
本明細書で用いるように、用語「嘔吐」には、吐き気および嘔吐が含まれる。本発明の半固形注射形態中の5−HT3アンタゴニストは、化学療法、放射線、毒素、ウイルスもしくは細菌の感染、妊娠、前庭障害(例えば、乗り物酔い、目まい、目まい(dizziness)およびメニエール病)、外科手術、片頭痛、および脳圧の変動により誘発される嘔吐を含む急性、遅延性もしくは先行性嘔吐の治療に利益的である。上記の各々のある態様において、5−HT3アンタゴニストは、グラニセトロンである。
【0079】
本発明のグラニセトロンの半固形注射形態は、上記の方法により、制吐薬を送達ビヒクルに混合させることにより調製される。グラニセトロンの濃度は、約0.1〜80重量%、好ましくは、約0.2〜60重量%、より好ましくは、約0.5〜40重量%、最も好ましくは、約1〜5重量%、例えば、約2〜3重量%で変動し得る。次いで、半固形組成物は、16〜25ゲージのニードルでシリンジに充填され、最も有効であると決定された部位に注入される。本発明の半固形注射用組成物は、弱可溶性および可溶性の両制吐薬の制御送達に用いることができる。
【0080】
ある特定の態様において、グラニセトロンは、グラニセトロンの塩形態で、またはグラニセトロンとグラニセトロンの塩の混合物の形態で用いられ得る。本発明に使用されるグラニセトロンの適当な医薬的に許容される塩には、例えば、グラニセトロン溶液を、塩酸、ヨウ素酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、カルボン酸、リン酸、硫酸などのような医薬的に許容される非毒性酸溶液と混合することにより形成され得る酸付加塩が含まれる。
【0081】
実験:
製剤の調製:
活性薬剤を含む様々なポリマーは、本明細書に記載されるような方法を用いて調製され得る。1の例において、活性薬剤は、グラニセトロンである。1の例において、ポリマー(ポリマーA)は、47.4モル%のDETOSU、42.1モル%のTEG、および10.5モル%の潜在の酸(latent acid)を含む。Mwは、5,900〜8,100ダルトンであり、およびMnは、2,900〜4,000ダルトンである。調製される別の種類のポリマー組成物において、ポリマーは、約40〜60モル%のDETOSU、40〜60モル%のTEG、および5〜20モル%の潜在の酸を含み得る。
【0082】
ある例において、製剤Fは、78.4重量%のポリマーA、19.6重量%のMPEG550(メトキシ−ポリエチレングリコール、Mn550)および2%のグラニセトロンを含む。
【0083】
製剤Fは、粘度を減少させる賦形剤としての専有しているトリエチレングリコール−ポリオルトエステル(「TEG−POE」)ポリマーとメトキシポリエチレングリコール(「MPEG」)中に2%(W/W)のグラニセトロンを含む。生成物は、前もって充填したシリンジ中に清澄な滅菌した粘稠性の液体として提供される。製剤Fは、結晶性グラニセトロンをMPEGおよびTEG−POEポリマーの混合物中に溶解させることにより、GMP条件下で製造される。現在、大量生成物(bulk product)は、ガンマ照射により滅菌され、無菌的にシリンジに充填される。
【0084】
安定性の高い製剤F(製剤FR)は、結晶性グラニセトロンをMPEGおよびTEG−POEポリマーの混合物中に溶解させ、続いて加熱処理により製造される。典型的な加熱処理は、製剤を、動的な(dynamic)不活性ガス環境下において24時間かけて90〜95℃のような温度に加熱することからなる。組成物または製剤の熱曝露の制御は、管の内容物全体にわたり温度制御を可能にするように覆う円筒型リアクター中で達成される。製剤は、窒素もしくはアルゴンの不活性雰囲気下においてオーバーヘッド攪拌機で継続的に撹拌される。短時間での高温または長時間での低温が製剤を低い分子量かつ粘度にし、室温で安定な状態を維持させる。
【0085】
代替的なプロセスは、活性薬剤(例えば、グラニセトロン)の添加前にポリオルトエステル(例えば、TEG−POE)またはポリオルトエステルおよび賦形剤(例えば、MPEG)において同様の加熱処理を行い、その結果、本明細書に記載されるような安定性の高まった組成物が得られ得る。
【0086】
上記のような別の代替的な組成物は、グラニセトロンのような活性成分の懸濁液を含む。
【0087】
本願の方法は、下記の表のとおり、ポリマーA、グラニセトロン遊離塩基およびMPEG550を含む医薬組成物の安定性を高めるのに特に有用である。
【表1】
【0088】
APF112A(メピバカインを含有するポリマーA)およびAPF530は、APF135(ポリマーA)およびMPEG−550を基にした粘稠性液体ポリオルトエステル製剤であり、活性な医薬成分、3%のメピバカインおよび2%のグラニセトロンをそれぞれ含有する。これらの製剤の安定性実験からの結果は、これらの物質を含有する密封したシリンジを2〜8℃で保存した場合、ポリオルトエステルの分子量が少なくとも2年間変化しないことを示した。
【0089】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、溶質分子がカラム充填中に溶媒で充填したマトリックスへのそれらの浸透の結果として分離される液体クロマトグラフィーの一形態である。大きな分子は、すぐにカラムを通過するが、小さな分子は、孔の内外に拡散し、より遅れて出てくる。分子の大きさはその分子量に関係するため、所定ピークの溶出時間は、ある分子の分子量の測定を可能にする。保持時間または保持体積から、一連の分子量標準ならびに試料について得られる。一般的なGPCは、1,000,000から500ダルトンの範囲の分子量のポリスチレン標準を用いる。中間GPCは、15,000から100ダルトンの範囲の分子量を有するポリ(エチレン)グリコール標準を用いる。試料は、THF移動相および示差屈折率検出器を用いて2つのカラムセットから溶出する。転正曲線は、保持時間もしくは保持体積に対して対数で表した分子量をプロットすることにより得る。標準の転正曲線に基づいて、製剤の分子量を決定する。製剤の粘稠性および活性成分のインビトロ放出はまた、これらの保存条件下で安定である。粘度は、流動する性質に抵抗する分子引力により生じる流体の内部摩擦の基準である。粘度は、37℃に設定したプログラム可能な水浴からなるブルックフィールド粘度計により測定する。特定のスピンドルを用いて、最初のスピンドル速度(rpm)を、異なる速度で試料を一時的に回転して、最大トルクの約10%の所望のトルクを得ることにより決定する。次いで、せん断応力を、10〜100%のトルク範囲により測定して少なくとも10回の測定値を得る。粘度を個々の測定についてせん断応力およびずり速度から算出し、データをスピンドル速度(rpm)に対する粘度としてプロットする。このプロットに対する適合度から、10rpmでの粘度を算出し、記載する。インビトロ放出(IVR)を、一定の時間間隔ごとに製剤から放出された薬物量として測定する。リン酸緩衝液を一定量の製剤に加え、37℃でインキュベートする。一定の時間間隔において、レセプター液(receptor fluid)を取り除き、次いで補充する。レセプター液の除去と補充を製剤が見えなくなるまで続ける。取り除いたレセプター液を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析して薬剤含量を調べた。次いで、プロファイルを時間に応じて作成し、パーセント放出をインキュベーション時間にわたって算出する。しかしながら、シリンジを40℃で保存すると、製剤の分子量は、2〜4週間かけてより低いレベルに減少し、その後、さらなる減少が見られる。製剤の対応する粘度の最初の減少および活性成分のインビトロ放出の増加、続いて新たなレベルでの停滞期もまた、観察される。図1および2は、APF530についての分子量安定性データを示す。
【0090】
本明細書で付与される理論もしくは具体的なメカニズムに拘束されることなく、この作用についての可能性のある仮説は、これらの組成物におけるポリオルトエステルの水に対する反応特性である。水は、低いレベル(0.1%またはそれ以下)で製剤中に存在し、場合により、製造プロセス間に伴う露出により、および/または粘稠性改質剤、MPEG550中に存在する本質的に低いレベルから取り込まれることが示されている。一定の条件下において、この水は、ポリオルトエステルと反応し、その分子量の減少に寄与し得る。かかる反応は、低い温度での拡散および反応速度の減少により、2〜8℃で十分に遅延することが予想され、これらの条件下における製剤の安定性を説明することができるであろう(図1)。一方、40℃における反応の拡散および反応速度が好ましく、製剤において、2〜4週間で分子量の減少を引き起こしうる(図2)。水の大半が、密封シリンジに入っている最小限の水とともに、または外部の水を伴わずに使い果たされると、さらなる反応は期待されず、それゆえ、さらに分子量が大きく減少することはないであろう。25℃で保存したシリンジ中の製剤は、より長い時間をわたり分子量のこの減少を示すが;それらは、最終的に、40℃で保存した物質について見られたものと同じようにより低い分子量の停滞期に達する。これらの製剤を、使用準備を行うまで、2〜8℃で輸送し、保存する。
【0091】
本願ポリオルトエステルのこの特徴は、適当な時間および温度で混合され、加熱される様々な製剤の調製に活用することができる。本明細書で供される理論のいずれにも拘束されることなく、加熱処理の方法は、存在する水を減少させ、または消費し、新規で安定な製剤を生成すると考えられる。24時間にわたる高温、例えば、90〜95℃、ならびに加工補助の使用、例えば、動的(流動性)不活性ガス環境または真空の適用は、安定性実験で見られたものと同様に、製剤をすぐに安定な分子量の停滞期に到達させると考えられる。本明細書に記載の方法により加熱される本願の組成物もまた、加熱処理されるものとされ得る。
【0092】
組成物もしくは製剤の熱曝露の制御を、管の内容物全体にわたり温度制御を可能にするように覆う円筒型リアクターで行う。この製剤を、窒素もしくはアルゴンの不活性雰囲気下においてオーバーハング攪拌機で継続的に撹拌する。短時間での高温または長時間での低温は、製剤の分子量および粘度を減少させ、室温で安定に保つ。
【0093】
水の大半がこのプロセスの結果として消費されると、かかる製剤は、もはや2〜8℃で保存する必要がなくなり、室温で維持されてもよく、それらを保存および輸送することを容易にする。さらに、分子量の減少は、対応する粘度の減少を引き起こし、製剤をより小さなニードルにより容易に投与することを可能にする。活性成分のインビトロ放出の増加も予想されるが;分子量および粘度は、なお十分に維持され、結果として放出の制御も維持されるであろう。用いる活性成分に応じて、より短い放出期間が実際に望ましく、有益であり得る。さらに、分子量の停滞期、粘度、およびインビトロ放出を、ポリマーの開始分子量の適当な選択により調整し得る。
【0094】
ある態様において、本願方法により調製された安定化した医薬組成物は、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも8ヶ月および少なくとも12ヶ月間の室温での保存に対して安定性を維持する組成物を提供する。安定化した医薬組成物は、GPCにより測定されるように、ポリマーの分子量において15%、10%、5%、3%または2%減少することなく上記期間にわたり安定性を維持する。本明細書で調製されるような安定化した医薬組成物は、ブルックフィールド粘度計を用いることによるなどの動的な粘度により測定されるように、粘度において15%、10%、5%、3%または2%変化することなく上記期間にわたり安定性を維持する。一定の具体例において、本明細書で調製されるような安定化した医薬組成物は、活性薬剤の放出について、加熱処理されていない対応する医薬組成物より30%、20%、10%もしくは5%短い時間を供する。
【0095】
我々は、ブプレノルフィンを0.25%、0.50%、0.75%、1.00%および2.00%含有し、それぞれAPF636R、APF626R、APF637R、APF579RおよびAPF580Rに対応する同様の製剤を調製し、アルゴン下において90℃で24時間加熱した。得られた加熱処理した組成物は、加熱処理していない同一の組成物と比較して、分子量および粘度においてより低く、加熱処理した組成物は、15ヶ月の安定性データに基づいて、シリンジ中に25℃で保存した場合に変化しないか、または安定であることが示された(図9および10)。これらの製剤もまた、加熱処理プロセスなしで調製した対応する製剤より、より望ましい短い期間の活性薬剤の放出を示す。
【0096】
2〜8℃で保存したAPF530に関する第III相データは、ヒト血漿中で5日間の活性成分グラニセトロンの存在、ならびに化学療法を受けている患者についての当該期間の嘔吐の対応するコントロールを示した。上記プロセスを用いて調製した新規で安定なグラニセトロン含有製剤は、室温で保存することができ(25℃、図7および8においてAPF530Rについて示した9ヶ月の安定性データから見られる)、粘度の減少により小さいゲージのニードルにより投与することが容易となり、少なくも5日間嘔気嘔吐からの開放をもたらし得る。グラニセトロンのクリアランスが個体間で変動するが、恐らく、疾患、年齢、および併用化学療法の結果として化学療法を受けている患者におけるクリアランスの異常が存在することは、ヒト臨床データより明らかである。(図3および4参照)。このクリアランスの異常は、薬剤放出速度の増加の効果を緩和し、それにより治療上の効果が5日間にわたり可能であることが予想され得る。
【0097】
前記は、主に例示のために示されている。分子構造、送達ビヒクルもしくは医薬組成物中の様々な成分の割合、製造方法および本明細書に記載の本発明のその他のパラメーターが本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な方法でさらに修飾もしくは置換されてもよいことは、当業者にとって明らかである。例えば、温度、圧力および時間は、製剤中の特定のポリマーおよび活性化合物のような因子に従って、および応じて変動してもよく、かかる予想される変動または差異は、本発明の対象および実施に応じて考慮される。それゆえ、本発明は、下記の特許請求の範囲により規定され、かかる特許請求の範囲は、合理的である限り広く解釈されるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性薬剤およびポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、医薬組成物を高温で十分な時間加熱することで、室温で保存した場合に加熱していない医薬組成物より安定な医薬組成物を提供することを特徴とする方法。
【請求項2】
医薬組成物の加熱が、不活性ガス下で行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
医薬組成物の加熱が、組成物からの含水量の減少を生じるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
医薬組成物の加熱が、50℃より高い温度で少なくとも1時間行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
医薬組成物の加熱が、50℃より高い温度で少なくとも3時間行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
医薬組成物の加熱が、約90℃で少なくとも3時間行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
医薬組成物の加熱が、90℃で24時間行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーが、生体内分解性ポリマーまたは加水分解されやすいポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーが、ポリオルトエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、医薬組成物を高温で十分な時間加熱することで、室温で保存した場合に加熱していない医薬組成物より安定な医薬組成物を提供することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、ポリオルトエステルポリマーであり、医薬組成物の加熱が、50℃より高い温度で少なくとも3時間行われるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
活性薬剤およびポリオルトエステルポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、以下の条件:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上の下で医薬組成物を処理することを特徴とする方法。
【請求項13】
安定性の高い除放性医薬組成物を調製する方法であって、該方法が、以下の条件:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上の下で医薬組成物を処理することを特徴とするものであって、該医薬組成物が、活性薬剤およびポリオルトエステルポリマーを含むものである、方法。
【請求項14】
温度が少なくとも約80℃である、請求項1、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
温度が約80℃から約120℃である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
高温が少なくとも24時間保たれるものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
処理後、ポリマーの平均分子量が減少するものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
処理後、医薬組成物の粘度が減少するものである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
処理後、医薬組成物の活性薬剤の放出速度が増加するものである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーが、
【化1】
[式中、
Rは、結合、−(CH2)a−、または−(CH2)b−O−(CH2)c−であり;ここで、aは、1から10の整数であり、bおよびcは、独立して、1から5の整数であり;
R*は、C1〜4アルキルであり;
R0、R''およびR'''は、各々独立して、HまたはC1〜4アルキルであり;
nは、少なくとも5の整数であり;ならびに
Aは、R1、R2、R3、またはR4であって、
R1は、
【化2】
であって;
pは、1から20の整数であり;
R5は、水素またはC1〜4アルキルであり;ならびに
R6は、
【化3】
であり:
sは、0から30の整数であり;
tは、2から200の整数であり;および
R7は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R2は、
【化4】
であり、
R3は、
【化5】
であって、
xは、0から100の整数であり;
yは、2から200の整数であり;
qは、2から20の整数であり;
rは、1から20の整数であり;
R8は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R9およびR10は、独立して、C1〜12アルキレンであり;
R11は、水素またはC1〜6アルキルであり、R12は、C1〜6アルキルであるか;またはR11およびR12は、一緒になってC3〜10アルキレンであり;ならびに
R4は、アミド基、イミド基、ウレア基、およびウレタン基から独立して選択される少なくとも1つの官能基を含有するジオール残基であって;
A単位の少なくとも0.01モルパーセントが式R1である]
からなる群から選択されるものである、請求項1、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項21】
Aが、R1、R3またはR4であって、
R1は、
【化6】
であり、ここで、
pは、1から20の整数であり、
R3およびR6は、各々独立して、
【化7】
であって、
xは、0から30の整数であり;
yは、2から200の整数であり;
R8は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R9およびR10は、独立して、C1〜12アルキレンであり;
R11は、水素またはC1〜6アルキルであり、R12は、C1〜6アルキルであるか;またはR11およびR12は、一緒になってC3〜10アルキレンであり、
R4は、アミド基、イミド基、ウレア基、およびウレタン基から独立して選択される少なくとも1つの官能基を含有するジオール残基であり;R5は、水素またはC1〜4アルキルであり;A単位の少なくとも0.01モルパーセントが式R1である]
である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
活性薬剤が、メピバカインまたはブプレノルフィンである、請求項1、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項23】
活性薬剤が、選択性5−ヒドロキシトリプタミン3(5−HT3)受容体アンタゴニストである、請求項1、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項24】
5−HT3受容体アンタゴニストが、グラニセトロンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、グラニセトロン、半固形送達ビヒクルおよび医薬的に許容される液体賦形剤であって;
(A)該半固形送達ビヒクルが、
(i)式I
【化8】
[式中、
R*は、C1〜4アルキルであり;
nは、少なくとも5の整数であり;ならびに
Aは、R1、R2、R3、またはR4であって、
R1は、
【化9】
であり、ここで、
pは、1から20の整数であり;
R5は、水素またはC1〜4アルキルであり;ならびに
R6は、
【化10】
であって、
sは、0から30の整数であり;
tは、2から200の整数であり;ならびに
R7は、水素またはC1〜4アルキルであり、
R2は、
【化11】
であり;
R3は、
【化12】
であり、ここで、
xは、0から30の整数であり;
yは、2から200の整数であり;
R8は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R9およびR10は、独立して、C1〜12アルキレンであり;
R11は、水素またはC1〜6アルキルであり、R12は、C1〜6アルキルであるか;またはR11およびR12は、一緒になってC3〜10アルキレンであり;ならびに
R4は、アミド基、イミド基、ウレア基、およびウレタン基から独立して選択される少なくとも1つの官能基を含有するジオール残基であり;
A単位の少なくとも0.01モルパーセントが式R1である]
のポリオルトエステル;ならびに
(ii)200から4000の間の分子量を有するポリエチレングリコールエーテル誘導体、400から4000の間の分子量を有するポリエチレングリコールコポリマー、C2〜19脂肪族カルボン酸のモノ−、ジ−、もしくはトリ−グリセリドまたはかかる酸の混合物、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアルコールおよびそれらのC1〜4アルキルエーテルおよびC2〜19脂肪族カルボン酸エステル、ならびに生体適合性油から選択される医薬的に許容されるポリオルトエステル適合液体賦形剤
を含むものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記医薬組成物が、
(i)2%のグラニセトロン;
(ii)78.4重量%の式I:
【化13】
[式中、
R*は、C2アルキルであり;
nは、少なくとも5の整数であり;ならびに
Aは、R1またはR3であって、
R1は、
【化14】
であり、ここで、
pは、2であり;
R5は、水素であり;ならびに
R6は、
【化15】
(式中、sは3である)
であり、ならびに
R3は、
【化16】
(式中、xは、3である)
である]
のポリオルトエステルであって、
ポリオルトエステルが、47.4モル%のDETOSU、42.1モル%のTEG、および10.5モル%の式R1のA単位を含むものであり、ならびに
(iii)19.6重量%のMPEG550(メトキシ−ポリエチレングリコール、Mn550)である医薬的に許容されるポリオルトエステル適合性液体賦形剤
を含むものである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
請求項1、請求項12または請求項13に記載の方法により調製された、安定化した医薬組成物。
【請求項1】
活性薬剤およびポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、医薬組成物を高温で十分な時間加熱することで、室温で保存した場合に加熱していない医薬組成物より安定な医薬組成物を提供することを特徴とする方法。
【請求項2】
医薬組成物の加熱が、不活性ガス下で行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
医薬組成物の加熱が、組成物からの含水量の減少を生じるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
医薬組成物の加熱が、50℃より高い温度で少なくとも1時間行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
医薬組成物の加熱が、50℃より高い温度で少なくとも3時間行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
医薬組成物の加熱が、約90℃で少なくとも3時間行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
医薬組成物の加熱が、90℃で24時間行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーが、生体内分解性ポリマーまたは加水分解されやすいポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーが、ポリオルトエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、医薬組成物を高温で十分な時間加熱することで、室温で保存した場合に加熱していない医薬組成物より安定な医薬組成物を提供することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、ポリオルトエステルポリマーであり、医薬組成物の加熱が、50℃より高い温度で少なくとも3時間行われるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
活性薬剤およびポリオルトエステルポリマーを含む除放性医薬組成物の安定性を高める方法であって、該方法が、以下の条件:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上の下で医薬組成物を処理することを特徴とする方法。
【請求項13】
安定性の高い除放性医薬組成物を調製する方法であって、該方法が、以下の条件:高温、十分な時間、不活性ガス、および減圧のうちの1つまたはそれ以上の下で医薬組成物を処理することを特徴とするものであって、該医薬組成物が、活性薬剤およびポリオルトエステルポリマーを含むものである、方法。
【請求項14】
温度が少なくとも約80℃である、請求項1、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
温度が約80℃から約120℃である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
高温が少なくとも24時間保たれるものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
処理後、ポリマーの平均分子量が減少するものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
処理後、医薬組成物の粘度が減少するものである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
処理後、医薬組成物の活性薬剤の放出速度が増加するものである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーが、
【化1】
[式中、
Rは、結合、−(CH2)a−、または−(CH2)b−O−(CH2)c−であり;ここで、aは、1から10の整数であり、bおよびcは、独立して、1から5の整数であり;
R*は、C1〜4アルキルであり;
R0、R''およびR'''は、各々独立して、HまたはC1〜4アルキルであり;
nは、少なくとも5の整数であり;ならびに
Aは、R1、R2、R3、またはR4であって、
R1は、
【化2】
であって;
pは、1から20の整数であり;
R5は、水素またはC1〜4アルキルであり;ならびに
R6は、
【化3】
であり:
sは、0から30の整数であり;
tは、2から200の整数であり;および
R7は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R2は、
【化4】
であり、
R3は、
【化5】
であって、
xは、0から100の整数であり;
yは、2から200の整数であり;
qは、2から20の整数であり;
rは、1から20の整数であり;
R8は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R9およびR10は、独立して、C1〜12アルキレンであり;
R11は、水素またはC1〜6アルキルであり、R12は、C1〜6アルキルであるか;またはR11およびR12は、一緒になってC3〜10アルキレンであり;ならびに
R4は、アミド基、イミド基、ウレア基、およびウレタン基から独立して選択される少なくとも1つの官能基を含有するジオール残基であって;
A単位の少なくとも0.01モルパーセントが式R1である]
からなる群から選択されるものである、請求項1、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項21】
Aが、R1、R3またはR4であって、
R1は、
【化6】
であり、ここで、
pは、1から20の整数であり、
R3およびR6は、各々独立して、
【化7】
であって、
xは、0から30の整数であり;
yは、2から200の整数であり;
R8は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R9およびR10は、独立して、C1〜12アルキレンであり;
R11は、水素またはC1〜6アルキルであり、R12は、C1〜6アルキルであるか;またはR11およびR12は、一緒になってC3〜10アルキレンであり、
R4は、アミド基、イミド基、ウレア基、およびウレタン基から独立して選択される少なくとも1つの官能基を含有するジオール残基であり;R5は、水素またはC1〜4アルキルであり;A単位の少なくとも0.01モルパーセントが式R1である]
である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
活性薬剤が、メピバカインまたはブプレノルフィンである、請求項1、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項23】
活性薬剤が、選択性5−ヒドロキシトリプタミン3(5−HT3)受容体アンタゴニストである、請求項1、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項24】
5−HT3受容体アンタゴニストが、グラニセトロンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、グラニセトロン、半固形送達ビヒクルおよび医薬的に許容される液体賦形剤であって;
(A)該半固形送達ビヒクルが、
(i)式I
【化8】
[式中、
R*は、C1〜4アルキルであり;
nは、少なくとも5の整数であり;ならびに
Aは、R1、R2、R3、またはR4であって、
R1は、
【化9】
であり、ここで、
pは、1から20の整数であり;
R5は、水素またはC1〜4アルキルであり;ならびに
R6は、
【化10】
であって、
sは、0から30の整数であり;
tは、2から200の整数であり;ならびに
R7は、水素またはC1〜4アルキルであり、
R2は、
【化11】
であり;
R3は、
【化12】
であり、ここで、
xは、0から30の整数であり;
yは、2から200の整数であり;
R8は、水素またはC1〜4アルキルであり;
R9およびR10は、独立して、C1〜12アルキレンであり;
R11は、水素またはC1〜6アルキルであり、R12は、C1〜6アルキルであるか;またはR11およびR12は、一緒になってC3〜10アルキレンであり;ならびに
R4は、アミド基、イミド基、ウレア基、およびウレタン基から独立して選択される少なくとも1つの官能基を含有するジオール残基であり;
A単位の少なくとも0.01モルパーセントが式R1である]
のポリオルトエステル;ならびに
(ii)200から4000の間の分子量を有するポリエチレングリコールエーテル誘導体、400から4000の間の分子量を有するポリエチレングリコールコポリマー、C2〜19脂肪族カルボン酸のモノ−、ジ−、もしくはトリ−グリセリドまたはかかる酸の混合物、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアルコールおよびそれらのC1〜4アルキルエーテルおよびC2〜19脂肪族カルボン酸エステル、ならびに生体適合性油から選択される医薬的に許容されるポリオルトエステル適合液体賦形剤
を含むものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記医薬組成物が、
(i)2%のグラニセトロン;
(ii)78.4重量%の式I:
【化13】
[式中、
R*は、C2アルキルであり;
nは、少なくとも5の整数であり;ならびに
Aは、R1またはR3であって、
R1は、
【化14】
であり、ここで、
pは、2であり;
R5は、水素であり;ならびに
R6は、
【化15】
(式中、sは3である)
であり、ならびに
R3は、
【化16】
(式中、xは、3である)
である]
のポリオルトエステルであって、
ポリオルトエステルが、47.4モル%のDETOSU、42.1モル%のTEG、および10.5モル%の式R1のA単位を含むものであり、ならびに
(iii)19.6重量%のMPEG550(メトキシ−ポリエチレングリコール、Mn550)である医薬的に許容されるポリオルトエステル適合性液体賦形剤
を含むものである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
請求項1、請求項12または請求項13に記載の方法により調製された、安定化した医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−512163(P2012−512163A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540914(P2011−540914)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/067597
【国際公開番号】WO2010/068827
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(501315821)エーピー ファーマ, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/067597
【国際公開番号】WO2010/068827
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(501315821)エーピー ファーマ, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
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