説明

ポリオレフィン−グラフト−ポリ(メタ)アクリラートコポリマーを基礎とするポリオレフィン−表面のコーティングのための付着促進剤

本発明は、(メタ)アクリラートでグラフトした、無定形ポリオレフィンを含有する、ポリオレフィンのための、新規の、ハロゲン−及び酸不含の、良好に溶解性の付着促進剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、EPDM又はポリ−α−オレフィンは、原料として例えば包装産業、自動車産業において、又は成形部品、例えばモバイル無線機のハウジングの製造のために大きな役割を果たす。この容易に加工でき、安価な材料の唯一の欠点は、表面特性である。ポリオレフィンは、直接的に塗装又は接着されない。このために、この材料の下塗り又はその他の前処理が必要である。本発明は、(メタ)アクリラートでグラフトした、無定形ポリオレフィンを含有する、ポリオレフィン表面のための、ハロゲン−及び酸不含の新種の付着促進剤に関する。付着促進剤はプライマーに対して、処方後、ポリオレフィン表面のコーティングのために1つの方法工程のみが必要な利点を有する。
【0002】
背景技術
極めて非極性の原料、例えばポリオレフィンの表面変性は、既に長い間、普遍的かつ産業的な研究の焦点にある。ポリプロピレン又はポリエチレンは、極性バインダー(例えばこれは大抵の接着剤又は塗料の下地を形成する)を用いて直接的にコーティングすることはできない。ポリオレフィンに対するポリマー、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリアクリラート、ポリメタクリラート又はポリウレタンの付着はこのためには通常少なすぎる。したがって、ポリオレフィンシートは、この表面の極性化のために、大抵はコーティングの前に高エネルギー性コロナ処理に供される。
【0003】
しかし、このような方法は、角を有する成形部品及び不規則に成形された表面では適用できない。ここでは、手間をかけて実施しなくてはならず、特に不規則に成形された物品に対してしばしば角の領域で劣悪な結果を生じる、火炎処理の手段しか存在しない。したがって、より良好な結果は、下塗り剤として使用される、良好に設けられるポリマー溶液を用いて達成することができる。
【0004】
このような下塗り剤は、しばしばハロゲン含有パラフィン又はポリマーを基礎とする。この点について例えばDE 100 11 384を参照されたく、ここにはポリジクロロブタジエンが記載されている。しかし、このような系の付着は十分に良好でなく、前処理、例えば火炎処理を完全に断念することはできない。
【0005】
WO 2006 124 232には、適用後にUV硬化されなくてはならないコーティング系が記載される。このようなコーティング系は更なる作業工程を必要とするのみでなく、それどころか更なる欠点、例えば減少した貯蔵安定性も示す。
【0006】
WO 2008 031 677には、ポリオレフィンに、ケトン及び/又はアルデヒド樹脂を基礎とする樹脂を付着促進剤として組み合わせる。しかし、この系は、一成分系に対して、場合によっては発生する相分離及び制限された適用スペクトルの欠点を有する。
【0007】
WO 2008 039 595には、アニオン性基の高い割合を有するポリオレフィン−ポリエーテルブロックコポリマーから構築されている、水性コーティング系が記載される。このような系が極めて少ない固形物質含有量でしか使用できず、かつ、難溶性ポリオレフィンブロックの高い割合を有する水溶液からの良好なフィルム形成は困難であることが、当業者には容易に明白である。
【0008】
US 2004 0072 960には、カルボキシル化ポリオレフィンと多官能性アルコールとのエステル化により得られる下塗り剤が記載されている。アルコールとは、3個以上のOH基を有する低分子量化合物である。高すぎるカルボキシル化度がポリオレフィンに対する減少した付着を、他方では低すぎるカルボキシル化度が再度この表面の低すぎる極性官能化を生じることは、当業者には容易に明白である。
【0009】
大抵は無定形のポリオレフィンとアクリラート及び/又はメタクリラートとのグラフトの方法は既に長い間知られており、かつ、多岐にわたって実施可能である。フリーラジカルによる溶液重合の形にある方法は、例えばDE 101 50 898に記載されている。反応性押出を介した反応は、Badel et al. (J. of Pol. Sc; Part A: Pol. Chem.; 45, 22, 5215頁, 2007)に見出される。選択的な開始を有するこの方法の一変形は、WO 2004 113 399に見出すことができる。制御されたグラフト反応は、ポリオレフィンのハロゲン変性及び引き続く原子移動ラジカル重合を介して、Kaneko et al. (Macromol. Symp., 290, 9〜14頁, 2007)で見出される。この刊行物のどこにも、ポリオレフィン表面のコーティング又は下塗りは記載されない。
【0010】
US 6,310,134では、無定形ポリオレフィンは酸又は無水物、例えばアクリル酸又はメタクリル酸とグラフトされる。このようなポリマーの欠点は、有機性及び水性媒体中での劣悪な溶解性である。この刊行物においては、この劣悪な溶解性の問題が、15質量%を下回る極めて少ない固形物含有量により解決される。したがって、均一なコーティングのためには極めて多量の溶媒が必要となるか、又は極めて一様でない表面が得られる。US 5,523,358では、ポリプロピレンを同様に酸でグラフトする。ここでは、このグラフトコポリマーはこの反応の間及び後に固形であり、かつ、基板に対しては不均一(heterogen)に又は押出コーティングを介してのみ設けられることができる。しかし、両者の方法は、一様でないか又は極めて厚い下塗りを生じる。
【0011】
US 6,262,182では、酸変性された無定形ポリオレフィンの劣悪な溶解性の問題を、溶媒としての高沸性芳香族化合物の使用により解決する。しかし、設ける場合に、このような溶媒は、放出、毒性及び乾燥温度−又は時間に関しても大きな欠点を有する。
【0012】
ポリオレフィン、大抵は無定形ポリ−α−オレフィンは、シラン試薬でも変性されることができる。このような系は、例えばWO 2007 008 765又はEP 1 900 773に記載される。このようなコポリマーの欠点は、高いオレフィン割合及び官能性極性基のわずかのみの割合であり、この極性基とはその上、溶解性の改善への寄与が極めてわずかだけであるアルコキシリル基である。したがって、このポリマーもまた極めて劣悪な溶解性であり、このため、適用するのが困難かつ不正確である。
【0013】
EP 1 900 773には、わずかなシリル基でグラフトしたポリ−α−オレフィンが記載されている。この生成物は極めて良好な付着を示すにもかかわらず、このポリマーも極めて高いオレフィン割合を示し、かつ、有機溶媒中に極めて難溶性、すなわち、極めてわずかな濃度でしか溶解しない。
【0014】
E P 1 601 470及びEP 1 508 579には、同様にシリル基で官能化したポリオレフィンが下塗り剤として記載されている。このような系の欠点は、さらに、コーティングに対する付着がもっぱらシリル基のみを介して媒介されることにある。しかし、このことは、知られているとおり、減少した貯蔵安定性を示し、このため、この官能基の割合は少なく維持されなくてはならない。
【0015】
DE 195 16 457には、このような変性したポリオレフィンと酸変性したポリオレフィンとの混合物が接着剤として記載されている。このような系が極めて劣悪な貯蔵特性のみを提供することが、当業者には容易に明白である。このような接着剤は、官能基の少ない数に基づき、極性ポリマーに対して減少した付着−又は初期付着値も示す。
【0016】
WO 2007/001694には、官能化ポリマー(例えば、シラングラフトしたか又は無水マレイン酸でグラフトしたプロピレンポリマー)を付着剤として含有する接着剤組成物が記載される。この基礎ポリマーは、メタロセン触媒を用いて製造され、かつ、必要とされる材料−及び加工特性を有しない。
【0017】
WO 2007/002177には、少なくとも50質量%のプロピレン割合を有するランダムポリ(プロピレン)−コポリマー及び官能化ポリオレフィンコポリマー及び非官能化接着樹脂を基礎とする接着剤組成物が記載されており、その際、このポリ(プロピレン)−コポリマーは溶融エンタルピー0.5〜70J/g及びイソタクチックプロピレントリアド(Propylentriad)の割合少なくとも75%を有し、かつ、この使用される官能化シンジオタクチックポリマーは官能性モノマー単位の含有量少なくとも0.1%を有する。この記載のポリ(プロピレン)−コポリマーは好ましくはメタロセン触媒作用により製造される。この官能化ポリオレフィンコポリマーは、官能化ポリ(プロピレン)−コポリマー、シンジオタクチックポリプロピレンコポリマー及びいわゆるイソタクチック−アタクチックポリプロピレン−グラフトポリマーを含む。高級な1−オレフィン、例えば1−ブテン含分の高い割合を有する基礎ポリマーは記載されない。この部分的に極めて高い割合のイソタクチックポリプロピレン単位(強力なラジカル性ポリマー構造を有する)に基づき、グラフト/官能化の劣悪な割合は鎖開裂(Kettenspaltung)を生じる。しかし、官能性モノマー単位として特に無水マレイン酸及びグリシジルメタクリラートは、多様な他の官能基、例えばビニルシランも挙げられる。このポリオレフィンは、少量のこの官能性構造単位だけで変性され、かつ、(メタ)アクリラート混合物でグラフトされない。
【0018】
課題
本発明の課題は、ポリオレフィンに対する直接的な付着を有しない、塗料−又は接着処方物によるポリオレフィン表面の新種のコーティング方法を可能にすることであった。特に、先行技術に対してより良好な適用能により特徴付けられる、新規の付着促進剤が提供されるものである。
【0019】
さらに、ポリオレフィン表面を、特に極性のバインダーを含有する塗料−又は接着剤処方物でコーティングできるという課題が存在した。
【0020】
第3の課題は、このコーティングが隙間なくかつ平らであるようにポリオレフィン表面をコーティングすることであった。これは、シートにも成形部品にも該当するものである。
【0021】
さらに、ポリオレフィン表面のためのこのコーティング系は、可能な限り簡易に設けられている層1つのみからなるという課題が特に存在した。
【0022】
さらに、このコーティング系の耐候性に負に作用もせず、毒物学的に危機的とも成り得ない解決策を提供するという課題が存在した。
【0023】
明示されていない更なる課題は、以下の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び実施例の全体の脈絡から明らかである。
【0024】
解決策
この課題は、様々な種類の基材のためのコーティング系における処方に適している付着促進剤の開発により解決され、これは
ポリマータイプA、オレフィンポリマー又はオレフィンコポリマーが含有されており、
ポリマータイプB、(メタ)アクリラートホモ−又は/及び−コポリマーであって標準メタクリラート及び/又は標準アクリラートを含有しているものが含有されており、かつ
ポリマータイプAB、ポリマータイプAとポリマータイプBとからのグラフトコポリマーが含有されており、かつ
ポリマータイプA、B及びABの全質量に対して、
ポリマータイプAの量が5〜60質量%であり、
ポリマータイプBの量が5〜70質量%であり、
ポリマータイプABの量が5〜70質量%であること、かつ
ポリマーA、B及びABの合計対溶媒又は溶媒混合物の質量の質量比が3:1〜1:3、好ましくは2:1〜1:2であり、付着促進剤がポリマー溶液として製造され、かつ溶液として更に加工されることを特徴とする。代わりに、本発明の付着促進剤は、塊状重合を用いて又は溶液重合体(これは引き続き乾燥される)としても製造されることができる。両方の場合において、この処方又は更なる加工は、コーティング処方物として使用される100%系における溶融物としても可能である。
【0025】
コーティング処方物とは、この関連において、塗料、腐食保護コーティング又は下塗り剤として使用されるフィルム形成性処方物が理解される。さらに、コーティング処方物との概念は、ここでは接着剤又はシーラントが理解されることができる。
【0026】
この塗料−又は接着剤処方物のバインダーは例えば、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン又はこの成分の混合物又はコポリマーを基礎とすることができる。
【0027】
意外なことに、このようなポリマーは付着促進剤としてコーティング処方物中でポリオレフィンに対して良好な付着をもたらし、この場合に付着促進剤はハロゲン又は遊離の酸基を有しないことが見出された。ハロゲン化バインダーは、耐候性又は毒性学的観点において大きな欠点を有する。
【0028】
酸官能性ポリマーは、とりわけ有機溶媒中に溶解又は分散されるが、特に高い溶液−又は溶融粘度を有する。この特性は、この適用を困難にするか、又は最も少ない固形物質含有量を有するこの溶液からしか適用を可能にしない。酸不含とは、この場合に、最大で70mmol酸基/1gポリマーを含有するバインダーを規定する。ハロゲン不含とは、最大で10mmolハロゲン原子/1kgポリマーを含有するバインダーを規定する。
【0029】
選択的に、このポリマータイプBは付加的な官能基(これはハロゲン又は酸基でなく、しかし特にシリル基)を含有することができる。意外なことに、シリル基での官能化は、ポリオレフィン、例えばポリプロピレンに対するこの付着を改善することができることが見出された。
【0030】
このコーティング系における一緒の処方のために適している付着促進剤が様々な種類の基材、特にポリオレフィン基材、とりわけ特にポリプロピレン基材に対するコーティング系の付着を改善し、かつ、付着促進剤として様々な種類の、そうでなければオレフィン性表面に設けられることができないコーティング系において、このコーティング系の使用能を例えばポリオレフィン基材に対して生じることが見出された。
【0031】
コーティングすべきポリオレフィンとは、例えばポリ−1ブテン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン−プロピレンコポリマー、ポリ−αオレフィン、EPDM、EPM、ポリブタジエン(特にSEBSブロックコポリマー(スチレン−エチレン/ブテン−スチレン−ブロックコポリマー))、水素化ポリブタジエン又はポリイソプレンであることができる。
【0032】
意外なことに、本発明によるコーティング系は良好に、比較的低温、例えば室温で芳香族化合物不含溶媒中に溶解性であるか又は100%系として先行技術に対して顕著により少ない溶融粘度を有することも見出された。この特性は、先行技術に対して顕著に改善した適用能をもたらす。
【0033】
ポリマータイプA
本発明により使用すべきオレフィンポリマー及び−コポリマー(Aに相応する)は自体公知である。第1にこれはエチレン−、プロピレン−、ブチレン−又は/及び更なるα−オレフィンであって5〜20個のC原子を有するものから構築されたポリマーである。
【0034】
特に良好に使用可能であるのは、十分に無定形のポリ−α−オレフィンである。十分に無定形のα−オレフィンとしては例えば、ホモポリマー、例えば無定形ポリプロピレン(APP)又は無定形ポリ−1−ブテンが使用されることができるか、又は好ましくは以下のモノマー組成を有するコ−及び/又はターポリマーが使用されることができる:
4〜20個の炭素原子を有する1種以上のα−オレフィン0〜95質量%、好ましくは3〜95質量%、
プロペン5〜100質量%、好ましくは5〜97質量%、及び
エテン0〜50質量%、好ましくは0〜20質量%。
【0035】
4〜20個の炭素原子を有するα−オレフィンとしては、有利には1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、3−メチル−1−ブテン、メチルペンテン、例えば4−メチル−1−ペンテン、メチルヘキセン又はメチルヘプテンが、単独で又は混合して使用される。
【0036】
この種のポリマーの製造は、例えばEP 0 023 249に記載されている。本発明による部分結晶性ポリオレフィンは、例えばTiCl3・(AlCl3n−混合触媒(n=0.2〜0.5)を用いたα−オレフィン−モノマーの重合により得られ、その際、トリアルキルアルミニウム化合物、例えば、トリエチルアルミニウム、好ましくはトリイソプロピルアルミニウム、特に好ましくはトリイソブチルアルミニウムを助触媒として使用する。使用される触媒の活性は、通常5000〜20000gポリマー/g触媒である。モノマーエテンは、ガス状で使用される一方、モノマープロペン及び1−ブテンはガス状でも液状でも使用することができる。より高級な同族体を液状で使用する。プロペン及び/又は1−ブテンを液状で使用する場合、使用される反応器中で、十分なモノマー濃度を液相中に確保する、反応条件に応じた圧力を維持しなければならない。モル質量調節剤としては、ガス状の水素を使用する。重合は、例えば脂肪族炭化水素の群から選択された不活性溶媒中で実施する。装入されたモノマー中の重合も同様に可能である。重合は、撹拌槽中で又は撹拌槽カスケードの何れかにおいて実施する;特別な一実施態様においては、貫流管又は管型反応器であって強制輸送手段(例えば、スクリュー機械)を有するものも使用することができる。反応温度は30〜220℃、好ましくは70〜150℃、特に好ましくは80〜130℃である。触媒及び助触媒は、反応の終わりに適したように分解され、その際、分解された触媒成分はポリマー中に残留してもよいし、洗浄工程を介して除去されてもよい。本発明によるポリマーは、先行技術に相応して、その反応溶液の形か又はより遅い時点で化学的に安定化させ、これを、高温、太陽照射、空気湿度及び酸素の悪影響から保護する。この場合、例えば、障害アミン(HALS−安定剤)、障害フェノール、ホスフィット、UV−吸収剤、例えばヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールなど、及び/又は芳香族アミンを包含する安定剤を使用することができる。この場合、安定剤の有効量は、ポリマーに対して0.1〜2質量%の範囲内である。グラニュール及び/又は粉末の流動性を確保するために、ポリマー分野において通常使用される流動助剤を使用することができる。これは、無機の性質でも有機の性質でもよく、並びに、低分子成分も高分子成分も含有してよく、その際、全ての場合に結晶性流動助剤も無定形流動助剤も使用することができる。流動助剤は、要求に応じたポリオレフィンと、熱力学混和性の範囲内において、相溶性であっても非相溶性であってもよい。例は、ポリエチレンまたポリプロピレンベースを基礎とすることができるポリオレフィンワックス、及びフィッシャー−トロプシュ−ワックス並びに1−ブテンを基礎とするポリオレフィンワックスである。
【0037】
前記の変性していない十分に無定形ポリ−α−オレフィンは、溶融エンタルピーを0〜80J/gの範囲で、好ましくは1〜70J/gの範囲で、特に好ましくは1〜60J/gの範囲で有する。
【0038】
溶融エンタルピーは、ポリマーの結晶化度の尺度である。ポリ−α−オレフィンは、比較的低い結晶化度を有する、すなわち、該ポリ−α−オレフィンは、十分に無定形であるが、完全に無定形ではない。必要な材料特性に不可欠なある程度の結晶化度は存在する。溶融時に検出可能な結晶性の範囲は、0〜175℃の広い温度範囲にわたっており、それらの強度から見て場所により顕著さは様々である。このポリ−α−オレフィンは、その結晶化度において、単峰性の溶融ピークと同様に、部分的に鋭く分かれており、部分的に互いに混ざり合っている二峰性及び多峰性の溶融ピークも生ずる点で特徴付けられる。
【0039】
低い結晶化度によって、一方では高い透明性が得られ、他方では柔軟な機械的挙動が得られる。しかしながら、より高い結晶化度によって、他方では、好ましい材料特性の特定の組み合わせを達成することができる。比較的高い結晶性を有する本発明によるバインダー中の含分A、例えばポリブテン又はブテンコポリマーであって高いブテン割合を有するものは、例えば極めて良好な引張強度を有する。同時に、このコポリマーは、比較的低い表面接着性を示す。
【0040】
結晶性含分の溶融エンタルピーの測定は、示差熱測定(DSC)によって加熱速度10K/分で第2の加熱曲線からDIN53765に従って行われる。
【0041】
更に、この変性されてない十分に無定形のポリ−α−オレフィンはリング−&−球法により測定された軟化点(DIN EN 1427に応じて測定)75〜165℃、好ましくは79〜162℃、特に好ましくは80〜158℃を有し、特にとりわけ好ましくは82〜155℃並びにDIN EN 1426により測定した針入度最大55*0.1mm、好ましくは3〜50*0.1mm、特に好ましくは5〜45*0.1mm、とりわけ好ましくは7〜42*0.1mmを有する。オシレーションレオロジーにより測定された複素溶融粘度は190℃で(ASTM D 4440-01:"Standard Test Method for Plastics: Dynamic Mechanical Properties MeIt Rheology"により、50mmのプレート直径を有するプレート−プレート幾何学を有するAnton Paar社のRheometers MCR 501を使用して、1%の最大変形及び1Hzの測定周波数で測定)は、最大で550000mPa*s、好ましくは最大で350000mPa*s、特に好ましくは2500〜250000mPa*s、とりわけ好ましくは5000〜200000mPa*sである。
【0042】
特別な、好ましい実施態様において、モノマー エチレン、プロピレン及び1−ブテンを基礎とする部分結晶性1−オレフィンターポリマーが使用され、これは13C−NMR分光法により測定されたエチレン含有量1〜12質量%、好ましくは2〜10質量%、特に好ましくは3〜9質量%、特に好ましくは3.5〜8質量%を有し、その一方で、この同様に13C−NMR分光法により測定されたプロピレン含有量50〜80質量%、好ましくは55〜75質量%、特に好ましくは57〜73質量%、とりわけ好ましくは59〜71質量%にあり、その一方で、同様に13C−NMR分光法により測定された1−ブテン含有量20〜50質量%、好ましくは22〜45質量%、特に好ましくは25〜40質量%、特に好ましくは27〜38質量%にあり、その際、エチレン、プロピレン及び1−ブテンのコモノマー割合は100%に加算される。この好ましいターポリマーのこの針入度(DIN EN 1426により測定)は5〜28*0.1mm、好ましくは7〜26*0.1mm、特に好ましくは9〜25*0.1mm、とりわけ好ましくは10〜23*0.1mmにあり、その一方で、リング−球−法により測定された軟化点(DIN EN 1427により測定)は90〜125℃、好ましくは95〜122℃、特に好ましくは97〜120℃、とりわけ好ましくは99〜118℃にあり、かつ、オシレーションレオロジーにより測定された複素溶融粘度は190℃で(ASTM D 4440-01:"Standard Test Method for Plastics: Dynamic Mechanical Properties MeIt Rheology"により、50mmのプレート直径を有するプレート−プレート幾何学を有するAnton Paar社のRheometers MCR 501使用下で、最大変形1%及び測定頻度1Hzで測定)は最大で90000mPa*s、好ましくは5000〜75000mPa*s、特に好ましくは7500〜70000mPa*s、とりわけ好ましくは10000〜65000mPa*sである。これによって、このグラフト反応のために使用されるポリオレフィンターポリマーが、最適な特性プロファイルをグラフトプロセスにおけるその使用能に関して、また同様にグラフトした生成物としてのその後の使用についても有することが達成される。特にこの好ましく使用されるターポリマーは、凝集、付着及び柔軟性の間での良好なバランスを有する。
【0043】
ポリマータイプAが本発明による混合物において使用される量は、この反応の終了時のポリマー成分に対して10質量%〜65質量%、好ましくは20質量%〜60質量%、特に好ましくは25質量%〜55質量%である。
【0044】
ポリマータイプB
以下に使用される書き方(メタ)アクリラートは、(メタ)アクリル酸のエステルであり、そしてここでは、メタクリラート、例えばメチルメタクリラート、エチルメタクリラートその他、また同様に、アクリラート、例えばメチルアクリラート、エチルアクリラートその他、並びに、両者のモノマーからの混合物を意味し、これは、ポリマータイプBの製造のために重合され、例えば次の(メタ)アクリラートの群から選択されている。
1〜40個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は脂環式アルコールのアルキル(メタ)アクリラート、例えばメチル(メタ)アクリラート、エチル(メタ)アクリラート、n−ブチル(メタ)アクリラート、i−ブチル(メタ)アクリラート、t−ブチル(メタ)アクリラート、ペンチル(メタ)アクリラート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリラート、ステアリル(メタ)アクリラート、ラウリル(メタ)アクリラート、シクロヘキシル(メタ)アクリラート、イソボルニル(メタ)アクリラート;アリール(メタ)アクリラート、例えばベンジル(メタ)アクリラート又はフェニル(メタ)アクリラート、これはそのつど置換されていないか、又は1〜4回置換されたアリール基を有することができる;他の芳香族置換した(メタ)アクリラート、例えばナフチル(メタ)アクリラート;エーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又は5〜80個のC原子を有するその混合物のモノ(メタ)アクリラート、例えばテトラヒドロフルフリルメタクリラート、メトキシ(メ)エトキシエチルメタクリラート、1−ブトキシプロピルメタクリラート、シクロヘキシルオキシメチルメタクリラート、ベンジルオキシメチルメタクリラート、フルフリルメタクリラート、2−ブトキシエチルメタクリラート、2−エトキシエチルメタクリラート、アリルオキシメチルメタクリラート、1−エトキシブチルメタクリラート、1−エトキシエチルメタクリラート、エトキシメチルメタクリラート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリラート及びポリ(プロピレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリラート。
【0045】
標準メタクリラート又は標準アクリラートとは、ポリ(メタ)アクリラート成形材料、接着剤、シーラント又は塗料バインダーの合成において工業的に使用される(メタ)アクリル酸のエステルが理解される。これは特に、メチル(メタ)アクリラート、エチル(メタ)アクリラート、プロピル(メタ)アクリラート、n−ブチル(メタ)アクリラート、i−ブチル(メタ)アクリラート、t−ブチル(メタ)アクリラート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリラートに該当する。
【0046】
前述の(メタ)アクリラートの他には、重合すべき組成物は他の不飽和モノマーも有することができ、これは前述の(メタ)アクリラートと共重合されている。これには特に1−アルケン、例えば1−ヘキセン、1−ヘプテン、分枝したアルケン、例えばビニルシクロヘキサン、3,3−ジメチル−1−プロペン、3−メチル−ジイソブチレン、4−メチル−1−ペンテン、アクリルニトリル、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、スチレン、置換スチレンであってビニル基にアルキル置換基を有するもの、例えばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン、置換スチレンであって1個以上のアルキル置換基を環に有するもの、例えばビニルトルエン及びp−メチルスチレン;複素環式化合物、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、ビンロキソラン(Vinloxolan)、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及びイソプレニルエーテル;マレイン酸誘導体、例えばマレインイミド、メチルマレインイミド及びジエン、例えばジビニルベンゼンが属する。
【0047】
ポリマータイプBが本発明による混合物中で使用される量は、この反応の終了時のポリマー成分に対して35質量%〜90質量%、好ましくは40質量%〜80質量%、特に好ましくは45質量%〜75質量%である。
【0048】
この付着の改善には、グラフトコポリマーの側方腕は任意にシリル基を含んでも良い。
【0049】
シリル基の例は、−Si(OMe)3、−SiMe(OMe)2、−SiMe2(OMe)、Si(OPh)3、−SiMe(OPh)2、−SiMe2(OPh)、−Si(OEt)3、−SiMe(OEt)2、−SiMe2(OEt)、Si(OPr)3、−SiMe(OPr)2、−SiMe2(OPr)、−SiEt(OMe)2、−SiEtMe(OMe)、−SiEt2(OMe)、SiPh(OMe)2、−SiPhMe(OMe)、−SiPh2(OMe)、−SiMe(OC(O)Me)2、−SiMe2(OC(O)Me)、−SiMe(O−N=CMe22又は−SiMe2(O−N=CMe2)が挙げられる。その際、略称Meはメチル基、Phはフェニル基、Etはエチル基、Prはイソ−又はn−プロピル基である。
【0050】
このようなシリル基をポリマータイプB中に組み込むための手段は、シリル官能性(メタ)アクリラートの共重合である。(メタ)アクリラート基の例としてはH2C=CHC(O)O−CH2−、H2C=CCH3C(O)O−CH2−、H2C=CHC(O)O−(CH22−、H2C=CCH3C(O)O−(CH22−、H2C=CHC(O)O−(CH23−又はH2C=CCH3C(O)O−(CH23−が挙げられる。
【0051】
市販で提供可能なモノマーは例えばEvonik Degussa GmbH社のDynasylan(R) MEMOである。これは、この場合に3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランである。このようなシリル基をポリマータイプBに組み込む更なる手段は、共重合可能なオレフィン基、例えばアリル基又はビニル基を有する他のシリル官能性モノマーの共重合である。
【0052】
市販で提供可能なモノマーは、例えばEvonik Degussa GmbH社のDynasylan(R) VTMOである。これは、この場合にビニルトリメトキシシランである。
【0053】
シリル基をポリマータイプB中に組み込む第3の手段は、例えばチオール基を有するシリル官能性調節剤の使用である。
【0054】
市販で提供可能なモノマーは例えばEvonik Degussa GmbH社のDynasylan(R) MTMOである。これはこの場合に3−メルカプトプロピルトリメトキシシランである。更なる提供可能なシランは、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン又はメルカプトメチルメチルジエトキシシラン(ABCR社)である。
【0055】
モノマー混合物Bのシリル官能性モノマーの割合は、0質量%〜20質量%、好ましくは0質量%〜10質量%、特に好ましくは0質量%〜5質量%である。
【0056】
ポリマータイプAB
グラフトポリマーABの製造
グラフトポリマーABは通常は、タイプAの、好ましくはポリ−α−オレフィンのポリマーの、5〜50質量%、好ましくは10〜25質量%の溶液を、適した、重合条件下で不活性の溶媒(これは通常の場合には方法温度を超える沸点を有する)中で、このポリマーを溶媒中で好ましくはポリ−α−オレフィンの軟化点超で撹拌することによって製造することにより、製造される。この可能な限り均質な溶液に、引き続き反応温度で適した開始剤、好ましくはペルオキシドのラジカル開始剤を添加する。開始時間0〜60分、好ましくは0〜30分、特に好ましくは1〜20分後に、このモノマー混合物をポリマータイプBの合成のために添加するか、又はより長い期間にわたり計量供給する。好ましくはペルエステル、例えばtert−ブチルペルオクトアートが使用される。開始剤濃度は、所望のグラフト位置の数及びセグメントBの所望の分子量に従う。一般的に、開始剤濃度は、重合体に対して0.2〜質量%〜3質量%である。グラフト反応と並行して、無論、この方法ではタイプBのポリ(メタ)アクリラートが形成される。
【0057】
記載の条件下で、例えば、溶媒の沸点を超える軟化温度のために、溶媒と混合可能でないポリ−α−オレフィンのためには、代替的に乳化剤が添加されることができる。この場合に、グラフト反応は有機分散液中で同様に実施される。
【0058】
この重合時間は通常4〜8時間である。この重合温度は重要でない。しかし、一般的に−20℃〜200℃、好ましくは0℃〜130℃、特に好ましくは50℃〜120℃の範囲内にある。
【0059】
代替的な一方法において、適した乳化剤を用いて成分Aから分散液が製造され、かつ、成分Bを生じるこのモノマーに対して、このために適した反応条件下でこの第1の方法と同様にグラフトされる。この乳化剤は系ABと類似の構造を有することができる。タイプABの適した乳化剤の製造のための方法は自体公知である。したがって、例えば移動グラフト(Uebertragungspfropfung)の方法に応じて前進することができる:(Houben-Weyl, Methoden der Org. Chemie, 1411巻, 114頁, H.A.J. Battaerd, G.W. Tregear, Polymer Reviews, Vol. 16, Interscience (1967)も参照のこと)。
【0060】
この方法は任意の溶媒、例えばH2O;アセタート、好ましくは酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸プロピル;ケトン、好ましくはエチルメチルケトン、アセトン;エーテル;脂肪族化合物、好ましくはペンタン、ヘキサン;バイオディーゼル;しかし、可塑剤、例えば低分子量ポリプロピレングリコール又はフタラート中で実施されることができる。好ましくは本発明によるバインダーは芳香族化合物不含の溶媒系中で製造される。芳香族化合物は、毒物学的観点から懸念があり、産業的適用においてもできるだけ回避されるべきである。意外なことに、本発明によるグラフトコポリマーの製造は、アセタート、例えば酢酸ブチル中で特に良好に実施できることが見出された。
【0061】
ポリ−α−オレフィンの軟化点はしばしば溶媒の選択に限定的である。この選択された溶媒の沸点は理想的にはこの範囲の上方にある。代替的に、このグラフト反応は圧力下で実施されることができる。
【0062】
前記溶媒からの混合物もまたこの担体系のために考慮される。ポリマータイプA、B及びABの合計対溶媒又は溶媒混合物の質量の質量比は、3:1〜1:3、好ましくは2:1〜1:2であることができる。好ましくはこの溶媒混合物は芳香族化合物を含有しない。
【0063】
溶液重合の他に本発明によるバインダーはエマルション−、ミニエマルション−、マイクロエマルション−、懸濁−又は塊状重合を用いて製造されることもできる。
【0064】
特別に好ましい一方法は塊状重合であり、特に連続的塊状重合である。これは、反応性押出の形で又は重合ニーダー中で実施されることができる。このような方法の利点は、この生成物が溶媒不含に得られ、かつ、この形において直接的に溶融物適用、例えば溶融物接着剤又は反応性溶融物接着剤において使用できることである。特に適しているのは、いわゆるHigh Solid塗料のための溶媒不含系でもあり、これは可能な限り高い固形物質含有量を基礎とする。塊状での本発明による生成物を用いた処方により、このような塗料処方物は更に希釈されない。溶液重合を用いて製造したポリマーでは、これに対して、この適用前にまず、付加的な方法工程において、溶媒を取り除かなくてはならない。エマルション−又は懸濁重合では、まずこの残留水を乾燥により除去しなくてはならない。これは特に、反応性の、場合によっては湿分架橋系で重要である。
【0065】
溶液中でのグラフトプロセスの場合には、このグラフトプロセスの反応温度は30〜200℃、好ましくは40〜190℃、特に好ましくは50〜180℃、とりわけ好ましくは55〜140℃である。この溶液グラフトは、不連続的又は連続的な方式で行われる。不連続的な反応の実施の場合には、最初に固形ポリマー(例えばグラニュール、粉末その他として)は使用される溶媒中に溶解される。代替的に、このためにこの基礎ポリマーの製造方法から直接的にコンディションされた重合溶液が使用され、反応温度にもたらされる。モノマー1種/モノマー数種及びラジカル開始剤1種又は数種の添加が続く。特に好ましい一実施態様において、溶媒基礎ポリマー1種又は数種及びモノマー1種又は数種が装入され、反応温度にもたらされ、その間にラジカル開始剤1種又は数種が定義された時間にわたり連続的に計量供給される。これは、固定ラジカル濃度が低く、したがって、グラフト反応と鎖開裂(Kettenspaltung)との比が特に有利な結果となる(すなわち、より多くのグラフト反応及びより少ない鎖開裂)利点を有する。更なる特に好ましい実施態様において、溶媒及び基礎ポリマー1種又は数種を装入し、反応温度にもたらし、その間にモノマー1種又は数種及びラジカル開始剤を一緒に(例えば混合物の形で)又は相互に別個に定義された時間にわたり連続的に計量供給する。これは、この固定ラジカル濃度も、また同様にモノマー濃度も反応場所で低い利点を有し、このことは、鎖開裂も、また同様にホモポリマーの形成も抑える。これは、とりわけモノマーの使用の際に重要であり、これは反応温度で熱により開始した(ホモ)重合に強く傾きがちである。特にとりわけ好ましくは、異なる定義された計量供給期間に続き、ラジカル開始剤1種又は数種の更なる量が、反応溶液中の残留モノマーの含有量を最小限にするために、計量供給される。反応器として好ましくは撹拌槽が使用され、代替的な反応容器、例えば不連続ニーダー反応器の使用は同様に可能であり、かつ、特に低い反応温度及び/又は高いポリマー濃度で好ましい。
【0066】
連続的反応の実施の場合には、まず、1又は複数の装入容器(例えば撹拌槽)中で固形ポリマーを少なくとも1の溶媒中に溶解し、引き続き連続的に1又は複数の反応容器中に計量供給する。代替的な、同様に特に好ましい一実施態様において、基礎ポリマーの製造プロセスから直接的にコンディションされたポリマー溶液が使用される。更なる同様に特に好ましい一実施態様において、固形ポリマー(例えば粉末、グラニュール、ペレットその他の形にある)を少なくとも1の溶媒と一緒に連続的に(1軸又は多軸の)スクリュー機械において又はKontiニーダー(Kontikneter)中に計量供給し、温度及び/又は剪断の作用下で溶解し、引き続き連続的に1又は複数の反応容器中に計量供給する。溶液中の連続的グラフト反応の実施のための反応容器又は反応器として、連続的な撹拌槽、撹拌槽カスケード、貫流管、強制輸送手段(例えばスクリュー機械)を備えた貫流管、反応ニーダー並びにこの任意の組み合わせが考慮される。強制輸送手段を備えた貫流管が使用される場合には、この場合に好ましくはこれは押出機であり、その際、1軸、2軸、またそれより多軸の押出機も使用されることができる。特に好ましくは2軸及び/又は多軸押出機が使用される。特に好ましくは溶液中の本発明により変性されたポリマーの連続的製造のためには、任意の順序にある、貫流管、強制輸送手段を備えた貫流管及び連続的撹拌槽からの反応器組み合わせの使用であり、その際好ましくは、強制輸送手段を備えた貫流管中又は連続的撹拌槽中で、残留モノマー及び揮発性副生成物/分解生成物の除去も行われる。代替的に好ましくは、これは溶融方法であり、その際、少なくとも1のラジカル開始剤が直接的に溶融物中へと計量供給される。とりわけ、この方法変法では、このポリマー材料の温度は少なくとも1のラジカル開始剤の計量供給の時間点に、この計量供給される少なくとも1のラジカル開始剤のSADT(SeIf accelerating decompositon temperature = 自己促進分解を超える温度が使用できる)を超える。
【0067】
このグラフトプロセスの反応温度はこの溶融物中で160〜250℃、好ましくは165〜240℃、特に好ましくは168〜235℃、とりわけ好ましくは170〜230℃である。
【0068】
この溶融グラフトは、不連続的又は連続的な実施方式で行われる。不連続的な反応の実施の場合には、固形ポリマー(例えば、グラニュール、粉末、ペレットその他として)はまず溶融され、場合によって均質化される。代替的に、重合プロセスから直接的にコンディションされたポリマー溶融物が使用され、反応温度にもたらされる。この後に、モノマー1種又は数種及びラジカル開始剤1種又は数種の添加が続く。
【0069】
特に好ましい一実施態様において、モノマー1種又は数種及びポリマー溶融物は均質に混合され、反応温度にもたらされ、この間に、ラジカル開始剤は定義された期間にわたり連続的に計量供給される。これは、固定ラジカル濃度が低く、したがって、グラフト反応と鎖開裂(Kettenspaltung)との比が特に有利な結果となる(すなわち、より多くのグラフト反応及びより少ない鎖開裂)利点を有する。
【0070】
更なる特に好ましい一実施態様において、ポリマー溶融物を装入かつ均質化し、この間に、モノマー1種又は数種及びラジカル開始剤を一緒に(例えば混合物の形で)又は別個に、定義された時間にわたり連続的に計量供給する。これは、この固定ラジカル濃度も、また同様にモノマー濃度も反応場所で低いままである利点を有し、このことは、鎖開裂もまた同様にホモポリマーの形成も抑える。後者のことは、とりわけ、本反応温度で熱による(ホモ)重合に傾きがちであるモノマーの使用の際に重要である。反応器として好ましくは壁に沿った撹拌ユニットを有する撹拌槽又は反応ニーダーが使用される。
【0071】
連続的反応の実施の場合には、まず、1又は複数の装入容器(例えば撹拌槽)中で固形ポリマーを溶融し、引き続き連続的に1又は複数の反応容器中に計量供給する。代替的な、同様に特に好ましい一実施態様において、直接的に重合プロセスからコンディションされたポリマー溶融物が使用される。更なる同様に特に好ましい一実施態様において、この固形ポリマー(例えば粉末、グラニュール、ペレットその他の形にある)を、連続的に(1又は多軸の)スクリュー機械又はKontiニーダー中に計量供給し、温度及び/又は剪断の作用下で溶解し、引き続き連続的に1又は複数の反応容器中に計量供給する。溶融物中での連続的グラフト反応の実施のための反応容器又は反応器として、連続的な撹拌槽、撹拌槽カスケード、貫流管、強制輸送手段(例えばスクリュー機械)を備えた貫流管、反応ニーダー並びにこの任意の組み合わせが考慮される。強制輸送手段を備えた貫流管が使用される場合には、この場合に好ましくはこれは押出機であり、その際、1軸、2軸の、またそれより多軸の押出機が使用される。特に好ましくは2軸及び/又はそれより多軸の押出機が使用される。特に好ましくは溶融物中の本発明により変性されたポリマーの連続的製造のためには、任意の順序にある、貫流管、強制輸送手段を備えた貫流管及び連続的撹拌槽からの反応器組み合わせの使用であり、その際好ましくは、強制輸送手段を備えた貫流管中又は連続的撹拌槽中では、残留モノマー及び揮発性副生成物/分解生成物の除去も行われる。
【0072】
場合により、セグメントBの所望の分子量を調整するためになお調節剤を使用できる。調節剤としては例えば硫黄調節剤、特にメルカプト基含有調節剤、例えばドデシルメルカプタンが適する。調節剤の濃度は、一般にこの全ポリマーに対して0.1質量%〜2.0質量%である。
【0073】
グラフトポリマーABの製造のための更なる一方法は、第1の段階としてのポリ−α−オレフィンのヒドロ過酸化である。このようにして形成される、鎖にある(kettenstaendig)ヒドロペルオキシド基は以下の段階においてビニルモノマーのグラフト重合を開始することができる(H.A.J.Battaerd, G.W. Tregear, Polymer Reviews loc. cit.参照のこと)。
【0074】
ポリマータイプABに関する、本発明による混合物中で使用される量は、この反応の終了時のポリマー成分に対して5質量%〜70質量%、好ましくは20質量%〜60質量%、特に好ましくは25質量%〜50質量%である。
【0075】
本発明によるバインダーは付着促進剤として異なる適用領域を有する処方物に添加されることができる。好ましくは本発明による付着促進剤は、ポリオレフィン表面のコーティングのために、特に好ましくはポリプロピレン表面のコーティングのために処方物に添加される。この場合に、これは例えば塗料、接着剤又はシーラントであることができる。設けた後に、再度第2の処方物又は物質でコーティングされることができる下塗り剤も考慮できる。
【0076】
コーティングすべき表面とは、他の材料であることも、ポリオレフィンだけであることもできる。本発明による付着促進剤は、ここからの接着−又は塗料処方物において金属、例えばアルミニウム、鋼又は亜鉛に対する、非ポリオレフィン−プラスチック、例えばPVC、PET、ポリスチレン、ABS、ポリカーボナート、ポリメタクリラート、例えばEvonik社のプレキシガラス、ポリアミド、例えばポリアミド6又はポリエーテル、例えばポリオキシメチレン、又は、他の材料、例えば木材、花崗岩、コンクリート又はガラスに対する付着も改善するという大きな利点を有する。
【0077】
本発明により付着促進剤は塗料−又は接着処方物に混合される。この処方物は、溶媒を基礎とするか又は水性の系であることも、100%系として、例えば溶融物、例えばホットメルト又は反応性ホットメルトの形にあることもできる。付着促進剤及び任意の溶媒の他に、このコーティング処方物は1種又は複数種のバインダー及び任意に、顔料、助剤、プロセス剤及び/又は充填剤から構成される。
【0078】
顔料とは、有機又は無機の−純粋な物質として又は予備分散して添加する−市販の又は新種の顔料であることができる。
【0079】
バインダーとして、通常のバインダー、例えば接着−、封止−、コーティング−処方物及び塗料処方物が使用される。本発明をいかなる形においても限定することなく、例として、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリカーボナート、ポリオレフィン、例えばEPDM、PEM、PE、PP、ポリ−α−オレフィン又は様々なオレフィンから構成されるコポリマー;ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、2K−ポリウレタン、ポリエーテル又はポリスチレンが挙げられる。
【0080】
助剤又はプロセス剤とは、接着−、封止−、コーティング−及び塗料処方物において通常使用される添加剤であることができる。本発明をいかなる形においても限定することなく、例として、消泡剤、乳化剤、相溶化剤、安定剤、分散助剤、酸化防止剤、耐引掻性助剤、更なる加工の場合の摩耗の減少のためのプロセス剤、触媒、架橋剤、促進剤又は更なる付着促進剤が挙げられる。
【0081】
本発明による接着剤処方物は、特殊な特性、例えば変形性、付着性、加工性、架橋速度、架橋密度、(溶融−又は溶液−)粘度、強度、結晶化速度、接着性、貯蔵安定性その他を達成するために必要な更なる成分を含有できる。更なる成分の割合は、本発明の特別な一実施態様において、特に好ましくは最大10質量%である。これは、この接着剤処方物の材料特性が実質的にこの使用される本発明による付着促進剤である利点を有する。このような接着剤処方物は、極めて少ない手間で製造される。
【0082】
代替的に、本発明の更なる一実施態様において、この更なる成分の割合は>10質量%である。この場合には、この更なる成分はこの全処方物の最大95質量%、好ましくは最大90質量%、特に好ましくは最大85質量%、特に好ましくは最大80質量%を構成する。
【0083】
この更なる成分は、架橋促進剤、特にシラノール縮合触媒、無機及び/又は有機充填剤(これは選択によって導電性又は絶縁性であることができる)、無機及び/又は有機顔料(これは選択によって導電性又は絶縁性であることができる)、合成及び/又は天然樹脂、特に接着樹脂、合成及び/又は天然油、無機及び/又は有機の、合成及び/又は天然のポリマー(これは選択によって導電性又は絶縁性であることができる)、無機及び/又は有機の、合成及び/又は天然の繊維(これは選択によって導電性又は絶縁性であることができる)、無機及び/又は有機の安定剤及び/又は無機及び/又は有機の難燃剤であることができる。
【0084】
とりわけ、この更なる成分は樹脂を含み、その際、この樹脂は、この接着層の所定の特性、特に接着性及び/又は付着性、この接着層の流動−及びクリープ挙動(Kriechverhalten)及び/又は接着剤粘度を特別な要求に適合させるために使用される。この場合に、これは天然樹脂及び/又は人工樹脂であることができる。天然樹脂の場合には、この天然樹脂は主成分としてアビエチン酸(例えばコロホニウム)を含む。さらに、樹脂とは、テルペン−又はポリテルペン樹脂、石油樹脂及び/又はクマロン−インデン−樹脂であることができ、その際、これは特にいわゆるC5−樹脂及び/又はC6−樹脂及び/又はC5/C9−樹脂からのコポリマーである。本発明によるホットメルト接着剤処方物中の樹脂の割合は、特にこの全処方物に対して、最大45質量%、好ましくは1〜40質量%、特に好ましくは2〜30質量%、とりわけ3〜20質量%である。
【0085】
さらに、本発明によるホットメルト接着剤処方物においては典型的な無定形(又は部分結晶性)ポリ(α−オレフィン)(いわゆるAPAOs)が更なる成分として含まれていることができる。前述の無定形(又は部分結晶性)ポリ(α−オレフィン)とは、エチレン、プロピレン、1−ブテン又は線状及び/又は分枝鎖状の1−オレフィンであって5〜20個の炭素原子を有するものからのホモ−/コ−及び/又はターポリマーであることができ、これは例えば典型的なチーグラーナッタ触媒作用又はメタロセン触媒作用により得られる。この無定形ポリ(α−オレフィン)の割合は、特にこの全処方物に対して、最大50質量%、好ましくは最大40質量%、特に好ましくは最大30質量%である。好ましくはこの更なる成分は、結晶性又は部分結晶性ポリオレフィンであり、これは特にイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリエチレン(HDPE、LDPE及び/又はLLDPE)、イソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン)、そのコポリマー及び/又はそのコポリマーであって5〜10個の炭素原子を有する線状及び/又は分枝鎖状の1−オレフィンを有するものを含む。さらに好ましくは、この結晶性又は部分結晶性ポリオレフィンは、化学的に変性したポリオレフィンであり、その際、この化学変性は特に、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸、アクリラート、メタクリラート、不飽和エポキシ化合物、シランアクリラート、シラン及びヒドロキシルアルキルシランによるものを含む。
【0086】
さらに、この更なる成分は極性基を有するポリマーを含むことができる。極性基を有するポリマーは、ポリスチレンコポリマー(例えば、無水マレイン酸、アクリルニトリルその他との)、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、(コ)ポリエステル、ポリウレタン、(コ)ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリアクリル酸、ポリカーボナート並びに化学的に変性したポリオレフィン(例えば、ポリ(プロピレングラフト−無水マレイン酸)又はポリ(プロピレン−グラフト−アルコキシビニルシラン))を含む。この場合に、本発明のポリマーと極性基含有ポリマーとの混合では、すぐさまの及び/又は時間的に遅れた、このポリマー鎖の反応性結合が生じ、これは好ましくは、改善された相容性がこの両方のポリマー相の間で発生することを生じ、このことは、例えば、この使用されるポリマーのガラス転移温度のシフトにおいて認識できる。特に好ましくは、この反応性結合は、このポリマー相が共通のガラス温度を示すこと、つまり、巨視的混合性を有することを生じる。
【0087】
さらに、この更なる成分は、エチレン、プロプレン、ブタジエン、スチレン及び/又はアクリルニトリルを基礎とするホモ−及び/又はコポリマー(又はオリゴマーも)を含むことができ、これは、更なるコモノマーとしてジエン及び/又は環式ジエン、ブタジエン、スチレン及び/又はイソプレンを含むことができ、とりわけこのポリマーはブロックコポリマー、特にゴム、例えば天然−及び合成ゴム、ポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、スチレン−ブタジエン−ゴム、スチレン−イソプレン−ゴム及びニトリルゴムである。ブタジエン、スチレン及び/又はイソプレンを基礎とするポリマーの割合は、このホットメルト接着剤処方物に対して最大20質量%、好ましくは1〜15質量%、特に好ましくは1.5〜10質量%、とりわけ2〜9質量%である。オリゴマーとは、好ましくはブタジエンオリゴマーである。
【0088】
さらに、この更なる成分は、エチレン、プロピレン、ジエン及び/又はcis,cis−1,5−シクロオクタジエン、exo−ジシクロペンタジエン、endo−ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンを基礎とするエラストマーポリマーを含むことができ、とりわけこれはこの場合にエチレン−プロピレン−ゴム、EPM(二重結合不含、エチレン含有量40〜75質量%)及び/又はEPDMである。エチレン、プロピレン、ジエン及び/又はcis,cis−1,5−シクロオクタジエン、exo−ジシクロペンタジエン、endo−ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンを基礎とするポリマーの割合は、このホットメルト接着剤処方物に対して、通常最大20質量%、好ましくは1〜15質量%、特に好ましくは1.5〜10質量%、とりわけ2〜9質量%である。
【0089】
代替的に、この更なる成分はワックス、特に変性及び非変性ワックスを含むことができ、その際、これは好ましくは結晶性、部分結晶性及び/又は無定形ポリオレフィンワックスであってポリエチレン、ポリプロピレン及び/又はポリ(i−ブテン)を基礎とするもの、パラフィンワックス、メタロセンワックス、マイクロワックス、ポリアミドワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス及び/又はフィッシャートロプシュ−ワックスである。このワックスの割合は、このホットメルト接着剤処方物に対して、最大50質量%、好ましくは1〜40質量%、特に好ましくは2〜30質量%、とりわけ好ましくは3〜20質量%である。
【0090】
さらに、この更なる成分は、充填剤を含むことができ、その際、この充填剤は、この接着層の特殊な特性プロファイル、例えば温度適用範囲、強度、収縮、導電性、磁性及び/又は熱伝導性を特殊な要求に狙いを定めて適合させるために使用されることができる。一般的にはこの充填剤は、無機及び/又は有機充填剤である。この無機充填剤はとりわけ、ケイ酸(疎水化したケイ酸含む)、珪砂、白亜、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム(後者の3つは好ましくはナノスケールの形にある)、重晶石、ガラス粒子(特に、光反射を高めるための球状粒子)、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト粒子、アスベスト繊維及び/又は金属粉末から選択される。有機充填剤は例えば、カーボンブラック、ビチューメン、架橋したポリエチレン、架橋したゴム−又はゴム混合物、合成繊維、例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、サラン繊維、MP繊維又は天然繊維、例えばわら、木材、ウール、綿、絹、亜麻、麻、ジュート及び/又はサイザルである。この充填剤の割合は、このホットメルト接着剤処方物に対して最大80質量%、好ましくは1〜60質量%、特に好ましくは5〜40質量%、とりわけ7〜30質量%である。
【0091】
同様に、この更なる成分は架橋促進剤を含むことができる。これは特に、本発明によるポリマーが、接合後短期間でその最大の負荷能を達成することが望まれる接着において使用される場合に好ましい。架橋促進剤として、多数の化学的化合物、とくにブレンステッド−及び/又はルイス酸、例えば酢酸、イタコン酸、酢酸亜鉛(II)、酢酸カドミウム、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、塩化亜鉛(II)、塩化亜鉛(IV)、ジブチルスズ酸化物、ジブチルスズジラウラート、ビスマスシトラート、酸化ビスマス(III)、チタン酸ビスマス、テトラブチルゲルマニウム、テトラブチル錫、ホウ化チタン、酸化チタン(IV)、チタンアセチルアセトナト、トリブチルチタナート、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム(II)、亜鉛アセチルアセトナト、亜鉛メタクリラート、ニオブ酸亜鉛、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナト、酸化ジルコニウム(IV)及び/又はケイ酸ジルコニウム(IV)が適する。
【0092】
同様に、更なる成分は安定剤を含むことができ、その際、安定剤は、外部からの影響、例えば(加工−)熱、剪断負荷、太陽照射、空気湿分及び酸素の影響からこの接着剤処方物を保護するために使用される。適した安定剤は例えば、障害アミン(HALS安定剤)、障害フェノール、ホスフィット及び/又は芳香族アミン(例えば製品名IRGANOX、KINOX、DOVERNOX、WESTON、IRGAPHOS、DOVERPHOS及び/又はIONOLで市販されている)である。特に好ましくは本発明により使用される安定剤は、1分子あたり加水分解的に活性のある末端基1個のみを含む。前述の処方物において、この安定剤の割合は、ホットメルト接着剤処方物に対して、最大3質量%、好ましくは0.05〜2.5質量%、とりわけ好ましくは0.1〜2質量%である。特別な一実施態様において、この本発明により変性されるポリマーへの、この安定剤1種又は複数種の反応性結合が行われ、これによって、この接着化合物からの安定剤移動が妨げられる。
【0093】
さらに、この更なる成分は1種又は複数種の油を含むことができ、その際、これは天然及び/又は合成油であることができる。この1種又は複数種の油は好ましくは加工温度で、粘度0.1〜1000mPa*s、好ましくは1〜750mPa*s、最も好ましくは2〜500mPa*sを有する。適した油は例えば鉱油、(医薬的)ホワイトオイル、イソブテンオイル、ブタジエンオイル、水素化ブタジエンオイル及び/又はパラフィンオイルである。この1種又は複数種の油の割合は、このホットメルト接着剤処方物に対して最大50質量%、好ましくは1〜45質量%、特に好ましくは3〜40質量%、とりわけ5〜38質量%である。
【0094】
さらに、ホットメルト接着剤処方物において無機及び/又は有機の顔料、UV活性物質、有機及び/又は無機の核形成剤(このポリマーの結晶化を促進し、これによって、この接着の開放時間を減少する)が含まれていることができる。
【0095】
本発明のホットメルト接着剤処方物の更なる好ましい一形態において、前記した処方物は多相ブレンドである。
【0096】
充填剤とは、工業的に通常の充填剤、例えばシリカート、シートシリカート、カーボンブラック又はケイ酸であることができる。本発明はいかなる形であれこの短い列記に限定されることはない。コーティングされた表面とは、例えば、シート、グラニュール、射出押出したか又は他の手法で製造された成形部品、複合材料又はラミネートの表面であることができる。更に、全てのこれら投与形態が、概念「未完成製品(Werkstueck)」にまとめられる。
【0097】
このようにしてコーティングされた未完成製品は、包装産業において、例えば食品又は製薬学的製品のために、自動車組立、船舶組立、エレクトロニクス産業、建築産業、家具組立、機械組立又は玩具の製造において使用されることができる。
【0098】
塗料−又は接着処方物を用いたコーティングは例えばロールを介してコイルコーティングに類似して行われることができる。この下塗りは、この表面に吹き付けられるか又は塗装されることもできる。さらに、方法、例えばスピンコーティング又は浸漬塗装が適用されることもできる。さらに、同様に、設置前にこの溶媒を除去し、この基材表面を押出コーティング又は共押出を用いて下塗りすることができる。
【0099】
好ましい一実施態様において、この付着促進剤は塊状ポリマー又は乾燥した溶液ポリマーとして100%系において、例えば溶融適用のために処方される。
【0100】
この処方物は、0.1〜40質量%、好ましくは1〜30質量%、特に好ましくは2〜20質量%本発明による付着促進剤を含有できる。
【0101】
実施例
動的粘度の測定
動的粘度の測定をDIN EN ISO 53018に応じて行う。
【0102】
固形物質含有量の測定
風袋を量ったアルミニウムシャーレ中への0.1mgの精度での0.3〜0.5gのポリマー溶液の迅速な秤入れ及び共留剤としての5mlのアセトンの引き続く添加。引き続きこの溶媒をまず60分間室温で、引き続き更なる60分間105℃で蒸発させる。この試料をデシケーター中で冷却し、量り、この質量差を算出する。この測定を各試料につき3回実施する。0.2質量%よりも大きい相違では、更なる測定を実施する。
【0103】
塗料のPP付着の測定
様々な基板表面に対するバインダーのPP付着を、DIN EN ISO 2409に応じて接着テープ剥がれ(Klebeband-Abriss)(以下、Tesa剥離試験(Tesaabrisstest))を含む格子切り込み(Gitterschnitt)試験を用いて検査した。このために、試料は変更しないで、この合成後に調節された固形物質含有量でもって湿式層厚60μmでこの基板にスパイラルドクターブレードを用いて設け、一晩室温で乾燥させる。この結果の評価は、0(特に良好な付着像)〜5(付着無し)の値で行う。表には2つの値が挙げられる:第1の値は、Tesa剥離試験後の光学的判断であり、第2の値は、切り込み実施後の光学的判断である。
【0104】
付着促進剤と塗料との混合性の測定
付着促進剤と塗料処方物との混合性を検出するために、実施例試料を溶液を基礎とする塗料処方物と、この付着促進剤が固形物質で5質量%の割合を構成するように混合した。この混合物を60分間撹拌し、この混合性を2時間後に光学的に調査した。この混合性の評価をこの場合に、0(目立つ斑点(Stippen)なしの均質な混合物)〜5(完全な相分離)の値でもって行う。混合試験のための塗料系として、ポリメタクリラートバインダーDEGALAN LP 64/12及びPURベース塗料(47.1質量%Synocure 854 BA 80、12.4質量%Vestanat 2500LV、7.6質量%Vestanat T 1890L、0.16質量%Tegokat 218(1%、n−ブチルアクリラート中)、0.096質量%Tego Glide 100及び4.32質量%Chroma-Chem 844、並びに14.16質量%n−ブチルアクリラート及び14.16質量%トルエンからなる)の50%溶液を使用した。これにより、付着促進剤−溶液の添加前のこの処方物は71.68質量%の全固形物質含有量を有する。
【0105】
a)本発明により使用されるポリオレフィン(ポリマータイプA)のための例
アルミニウム−減少したTiCl3(TiCl3*0.33 AlCl3)及びアルミニウムトリイソブチル(質量比1:4)の形にある結晶性チタントリクロリドの混合触媒の使用下で、エテン、プロペン及び1−ブテンをn−ブタン中で95℃で実験室オートクレーブ中で重合し、その際、水素をモル質量調節剤として使用する。モノマー状エテン及びプロペンを、反応時間3hの間に連続的に計量供給し、モノマー状1−ブテンを装入する。3時間後に、この反応混合物をイソプロパノールと混合し、これにより反応を停止させる。それから、安定剤(例えばIrganox)のアセトン性溶液を添加する。蒸発器中で、未反応モノマー並びに溶媒n−ブタンを蒸発させる。
【0106】
十分に無定形のポリオレフィンの溶融物を約190℃の温度で排出する。
【0107】
このポリマーは以下の特性を有する
【表1】

【0108】
比較実施例V1は、極めて少ないプロピレン含有量のために本発明によらない。
【0109】
b)本発明により合成されるグラフトコポリマー(ポリマータイプAB)のための例
実施例6
接続したサーモスタット、還流冷却器、パドル型撹拌機及び内部温度計を備え付けた二重ジャケット容器中に、n−ブチルアセタート240g及びタイプ1のポリオレフィン100gを装入する。撹拌下で、ポリオレフィンを100℃で1時間のうちに完全に溶解し、引き続きt−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート0.78gと混合する。これに続き、計量供給ポンプを用いてメチルメタクリラート75g、n−ブチルアクリラート75g及びt−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート2.3gから構成される混合物を90分間にわたり計量供給する。更なる150分の反応時間後にこのポリマー溶液を50℃に冷却し、この溶液粘度の減少のためにn−ブチルアセタート180gで希釈する。更なる60分間の撹拌後に均質化のためにこの分散液を室温に冷却する。
【0110】
実施例7
接続したサーモスタット、還流冷却器、パドル型撹拌機及び内部温度計を備え付けた二重ジャケット容器中に、n−ブチルアセタート316g及びタイプ3のポリオレフィン120gを装入する。撹拌下で、ポリオレフィンを100℃で1時間のうちに完全に溶解し、引き続きt−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート1.46gと混合する。これに続き、計量供給ポンプを用いてメチルメタクリラート140g、n−ブチルアクリラート140g及びt−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート4.25gから構成される混合物を90分間にわたり計量供給する。更なる150分の反応時間後にこのポリマー溶液を50℃に冷却し、この溶液粘度の減少のためにn−ブチルアセタート244gで希釈する。更なる60分間の撹拌後に均質化のためにこの分散液を室温に冷却する。
【0111】
実施例8
接続したサーモスタット、還流冷却器、パドル型撹拌機及び内部温度計を備え付けた二重ジャケット容器中に、n−ブチルアセタート327g及びタイプ5のポリオレフィン120gを装入する。撹拌下で、ポリオレフィンを100℃で1時間のうちに完全に溶解し、引き続きt−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート2.91gと混合する。これに続き、計量供給ポンプを用いて、n−ブチルアクリラート280g及びt−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート8.51gから構成される混合物を90分間にわたり計量供給する。更なる150分の反応時間後にこのポリマー溶液を90℃に冷却し、この溶液粘度の減少のためにn−ブチルアセタート243gで希釈する。更なる60分間の撹拌後に均質化のためにこの分散液を室温に冷却する。
【0112】
実施例9
接続したサーモスタット、還流冷却器、パドル型撹拌機及び内部温度計を備え付け二重ジャケット容器中に、n−ブチルアセタート316g及びタイプ5のポリオレフィン120gを装入する。撹拌下で、ポリオレフィンを100℃で1時間のうちに完全に溶解し、引き続きt−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート1.46gと混合する。これに続き、計量供給ポンプを用いてメチルメタクリラート136g、n−ブチルアクリラート136g、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン8g及びt−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート4.25gから構成される混合物を90分間にわたり計量供給する。更なる150分の反応時間後にこのポリマー溶液を50℃に冷却し、この溶液粘度の減少のためにn−ブチルアセタート244gで希釈する。更なる60分間の撹拌後に均質化のためにこの分散液を室温に冷却する。
【0113】
実施例10
接続したサーモスタット、還流冷却器、パドル型撹拌機及び内部温度計を備え付けた二重ジャケット容器中に、n−ブチルアセタート316g及びタイプ5のポリオレフィン120gを装入する。撹拌下で、ポリオレフィンを100℃で1時間のうちに完全に溶解し、引き続きt−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート1.46gと混合する。これに続き、計量供給ポンプを用いてブチルアクリラート272g、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン8g及びt−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート4.25gから構成される混合物を90分間にわたり計量供給する。更なる150分の反応時間後にこのポリマー溶液を50℃に冷却し、この溶液粘度の減少のためにn−ブチルアセタート244gで希釈する。更なる60分間の撹拌後に均質化のためにこの分散液を室温に冷却する。
【0114】
実施例11
接続したサーモスタット、還流冷却器、パドル型撹拌機及び内部温度計を備え付けた二重ジャケット容器中に、n−ブチルアセタート316g及びタイプ5からのポリオレフィン120gを装入する。撹拌下で、ポリオレフィンを100℃で1時間のうちに完全に溶解し、引き続きt−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート1.46gと混合する。これに続き、計量供給ポンプを用いてn−ブチルメタクリラート272g、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン8g及びt−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート4.25gから構成される混合物を90分間にわたり計量供給する。更なる150分の反応時間後にこのポリマー溶液を50℃に冷却し、この溶液粘度の減少のためにn−ブチルアセタート244gで希釈する。更なる60分間の撹拌後に均質化のためにこの分散液を室温に冷却する。
【0115】
実施例合成の結果
【表2】

【0116】
この結果にもとづき、意外なことに、低い粘度が見出されたことが示されることができる。約40質量%の固形物質含有量及び固体で30質量%〜40質量%にあるポリオレフィン割合でも、この溶液又は分散液は良好な加工性を有し、全体として相分離を示さないか又は少ない相分離しか示さない。唯一実施例8は、7日間の貯蔵後に少ない相分離を明澄かつ白色−分散性液相において示した。しかし、この試料は、振盪又は撹拌により容易に再び再分散される。これによって、本発明によるポリマー分散液は、意外なことに、良好な貯蔵安定性を有する。
【0117】
Tesa剥離試験及び格子切り込み試験によるフィルムの光学的判断
【表3】

【0118】
PPシートへの直接付着の測定により、本発明による付着促進剤が、非極性基板への付着の媒介に適することが示されることができた。この試験により、本発明によるバインダーは、さらに、更なるコーティングのためのプライマーとして使用されることができることが示されることができた。
【0119】
メタクリラート−バインダー又はPURベース塗料を用いた混合試験は、塗料システムとの良好な相容性、ひいては共処方性を示す。この両方の結果の組み合わせからは、付着促進剤としての良好な適用能を結論付けることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマータイプA、ポリオレフィン又はポリオレフィン混合物が含有されており、
ポリマータイプB、(メタ)アクリラートホモ−又は/及び−コポリマーであって標準メタクリラート及び/又は標準アクリラートを含有するものが含有されており、かつ
ポリマータイプAB、ポリマータイプAとポリマータイプBとからのグラフトコポリマーが含有されており、
フィルム形成性溶融物、分散液又は溶液がハロゲン不含かつ酸不含であることを特徴とする、溶融物、フィルム形成性分散液又は溶液を含有する、ポリオレフィンのコーティングのためのコーティング材料において一緒に処方するための付着促進剤。
【請求項2】
ポリマータイプB及びポリマータイプABがシリル基を有することを特徴とする、請求項1記載の付着促進剤。
【請求項3】
付着促進剤がポリマー溶液として一緒に処方され、ポリマーA、B及びABの合計質量対溶媒又は溶媒混合物の質量の質量比が3:1〜1:3、好ましくは2:1〜1:2であること、及び、この溶媒混合物が芳香族化合物を含まないことを特徴とする、請求項1又は2記載の付着促進剤。
【請求項4】
付着促進剤が溶融物としてかつ100%システムで一緒に処方されることを特徴とする、請求項1又は2記載の付着促進剤。
【請求項5】
ポリマータイプAが、アタクチックポリプロピレン、アタクチックポリ−1−ブテン及び/又は次のモノマー組成
4〜20個の炭素原子を有する1種以上のα−オレフィン0〜95質量%、好ましくは3〜95質量%、
プロペン5〜100質量%、好ましくは5〜97質量%、及び
エテン0〜50質量%、好ましくは0〜20質量%
のコ−及び/又はターポリマー
であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載のポリオレフィンのコーティングのための付着促進剤。
【請求項6】
4〜20個の炭素原子を有するα−オレフィンとして、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、3−メチル−1−ブテン、メチルペンテン、好ましくは4−メチル−1−ペンテン、メチルヘキセン又はメチルヘプテンを、単独で又は混合して使用することを特徴とする、請求項5記載のポリオレフィンのコーティングのための付着促進剤。
【請求項7】
ポリマータイプABとは、ポリオレフィン主鎖及びポリ(メタ)アクリラート側鎖を有するグラフトコポリマーであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項記載のポリオレフィンのコーティングのための付着促進剤。
【請求項8】
溶媒中の、タイプAのポリマー及び開始剤の混合物に、成分Bを生じるモノマーを計量供給し、重合することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項記載のポリオレフィンのコーティングのための付着促進剤。
【請求項9】
接着剤が請求項1から8のいずれか1項記載の付着促進剤を含有することを特徴とする、ポリオレフィン基材の接着のための接着剤処方物。
【請求項10】
処方物が請求項1から8のいずれか1項記載の付着促進剤を含有することを特徴とする、ポリオレフィン基材のコーティングのための塗料処方物。
【請求項11】
シーラントが請求項1から8のいずれか1項記載の付着促進剤を含有することを特徴とする、ポリオレフィン基材への付着を有するシーラント処方物。
【請求項12】
下塗り剤が請求項1から8のいずれか1項記載の付着促進剤を含有することを特徴とする、ポリオレフィン基材のコーティングのための下塗り剤として使用できる処方物。
【請求項13】
処方物が溶媒不含であることを特徴とする、付着促進剤を含有する請求項9から12のいずれか1項記載の処方物。
【請求項14】
処方物が溶媒として水を含有することを特徴とする、付着促進剤を含有する請求項9から12のいずれか1項記載の処方物。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の処方物でコーティングされたことを特徴とする、シート、成形部品、管又はケーブル被覆物。

【公表番号】特表2012−521454(P2012−521454A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501218(P2012−501218)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052446
【国際公開番号】WO2010/108753
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】