説明

ポリオレフィンと、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、ナノクレーとから成る樹脂組成物

【課題】ポリオレフィンと、ナノクレーと、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とから成る樹脂組成物。ポリオレフィンと、ナノクレーと、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とから成る樹脂組成物の製造方法。
【解決手段】(i)ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とナノクレーとを混合して複合材料を作り、(ii)得られた複合材料をポリオレフィンと混合する。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)をポリオレフィン中へのナノクレーへ混合する際の相溶化剤として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノクレー(nanoclays)を含むポリオレフィン組成物の製造方法に関係するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノクレーは、ポリオレフィンを補強し、火炎を遅延させ、バリアー特性を向上させる可能性のあるナノコンパウンド(ナノ化合物)の一つのクラスである。ポリオレフィンとナノクレーとから成る複合材料は引張強度、耐加熱変形性が増加し、大気中の気体に対するバリアー特性を良くすることができる。さらに、ナノクレー複合材料は純粋なポリマー成分にはない耐紫外線性を一定レベルまで付与することができるということも分かっている。これらの特性の改善によって、ナノコンポジョト(ナノ複合材料料、nanocomposites)は電子工学、自動車、航空機および宇宙産業で有用である。
【0003】
ナノクレー(nanoclays)は天然または合成のフィロシリケートを含む層状粘土鉱物である。これには特にカオリンクレーとスメクタイトクレーが含まれ、後者にはモンモリロナイト、ノントロナイト(nontronite)、ベンデリト(beideliite)、ヘクトライト(hectorite)、サポナイト(saponite)、サウコナイト(sauconite)およびバーミキュライトが含まれ、さらに、マガデート(magadiite)、ケンヤイト(kenyaite)、ステベンサイト(stevensite)、ハロイサイト(halloysite)、酸化アルミネートおよびヒドロタルサイトも含まれる。合成クレーにはフルオロヘクトライト(fluorohectorite)およびフルオロマイカ(fluoromica)も含まれる。
【0004】
これらのナノクレーは層状のケイ酸塩で、インターカレーション層、大抵は水を介して互いに保持されている。これらはユニークな形態を有し、少なくとも一つの寸法を特徴付ける層(または小板、platelet)はナノメータの範囲である。この小板は大きい縦横比(直径/厚さが100〜1000のオーダ)で特徴づけられる。従って、クレーの各小板をポリマーのマトリックス中に全体に均一に分散させると、充填量が極めてわずか(<10重量%)でも、ポリマーと充填材との間の大きな接触表面積によって、強度、曲げモジュラスおよびヤングモジュラス(ヤング係数)および熱変形温度のドラマティックな増加が観測される。
さらに、小板が大きな表面積を有するので、拡散物がポリマ材料中を拡散する際に通過しなければならない蛇行経路が長くなり、バリアー特性が大きく改善する。
【0005】
各層は一般にクレーの化学組成に従って小板の表面およびエッジに電荷を有し、この電荷は対向イオン(この一部は各層の間の間隙ある)とバランスしている。従って、積層されたナノクレーは静電気力によって強く一体に保たれている。
【0006】
ナノコンポジットで使用した場合、ケイ酸塩の小板は互いに分離されるが、ナノクレーが「剥離」した可撓性のある「二次元」シートとして存在する程度まで分離するのが好ましい。剥離した各層は互いに分離し、ポリオレフィンマトリックス全体に均一に分散しているのが好ましい。
【0007】
ケイ酸塩は親水性であり、ポリオレフィンは疎水性であるので、両者は簡単には相溶しないので、剥離前に有機表面改質剤、例えばアンモニウム化合物またはホスホニウム化合物を用いてナノクレーの表面層を改質しなければならない。この場合でも、ポリオレフィン中での剥離プロセスは複雑、高価で、部分的にした成功しない。最高の剥離プロセスでも改質したナノクレーを完全に剥離できず、最も外部の主要層しか剥離されない。その結果、未剥離のナノクレーがポリオレフィンナノコンポジット中に残り、マトリックス全体が不均質になり、弱点が生じ、本来の改良性能は達成できない。また、残った強い静電吸引力によって剥離後にいくらかの層は再凝集する傾向がある。
【0008】
非化学的な方法、例えばポリマー−クレー系を溶融混合または溶液混合する方法によって、良く剥離しかポリマー−クレーナノコンポジットを生産する試みもあるが、成功していない。ポリマー−クレー混合物を2軸スクリュー押出機で押出成形するとポリマーとクレーは比較的よく接触するが、ポリマー中でのクレーの剥離は良くない。2軸スクリュー押出しまたは溶融押出しは公知の技術で、混合物または化合物は2軸スクリュー押出機またはコンパウンダーまたは強力混合機で加工される。
【0009】
ポリマー材料の製造方法として溶融押出しの他に固体状態で剪断粉砕する方法も開発されている。例えば、Khaitの特許文献1および特許文献2を参照(これらの特許の内容は本明細書の一部を成す)。Khaitの特許に開示の方法では粉砕中に材料を固体状態に維持するのに十分に冷却した状態で機械的エネルギーを与えて、固体状態で剪断粉砕してポリマー材料を化学変化させる。しかし、Khait特許にはポリオレフィンとその中に良く分散したナノクレーとから成る均一な樹脂組成物を生産する方法は開示も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,180,685号明細書
【特許文献2】米国特許第5,814,673号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、極めて均一なナノクレー−ポリ(ヒドロキシカルボン酸)複合材料を提供することにある。
本発明の他の目的は、ポリオレフィン中にナノクレーがナノスケールで分散するように改良することにある。
本発明の他の目的は、溶融法を用いて均一なナノクレー−ポリ(ヒドロキシカルボン酸)複合材料を得ることにある。
本発明の他の目的は、官能化や変性処理なしにポリオレフィンとナノクレーとを混合することにある。
本発明の他の目的は、ポリオレフィンより機械的特性が優れた樹脂を提供することにある。
本発明の他の目的は、ポリオレフィンより難燃特性に優れた樹脂を提供することにある。
本発明の他の目的は、ポリオレフィンと比較したときに、バリアー特性が改良された樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的の少なくとも一つはポリオレフィンと、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、ナノクレーとから成る樹脂組成物によって達成できる。
【0013】
本発明は下記の(i)と(ii)のた工程から成る、ポリオレフィンと、ナノクレーと、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とから成る樹脂組成物の製造方法を提供する:
(i)ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とナノクレーとを混合して複合材料を作り、
(ii)得られた複合材料をポリオレフィンと混合する。
【0014】
本発明はさらに、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とナノクレーとを溶融混合して複合材料を形成することから成る、ナノクレー含有マスターバッチの製造方法を提供する。
本発明はさらに、ナノクレーをポリオレフィンへブレンドするためのポリ(ヒドロキシカルボン酸)の相溶化剤として使用にも関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者は、ポリオレフィン、特にメタロセン触媒を用いて製造したポリオレフィンとポリ(ヒドロキシカルボン酸)とを混合することによって、均一な混合物が相溶化剤を用いずに単純な溶融混合することで達成できるということを見出した。
【0016】
さらに、ナノクレーとポリ(ヒドロキシカルボン酸)の複合材料は、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)マトリックス中にナノクレーブが良く分散した均一な複合材料になるということを見出した。特定の理論に縛られるものではないが、2つの成分が類似した極性を有することによって相溶性がでると考えられる。
【0017】
本発明では、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)をナノクレーとの相溶化剤として使用し、さらに驚くことに、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)をポリオレフィン、特にメタロセン・ポリオレフィンとの相溶化剤として使用する。
【0018】
本発明では先ず最初にナノクレー−ポリ(ヒドロキシカルボン酸)複合材料を作り、それをマスターバッチとして使用してポリオレフィンとブレンディングする。
【0019】
ナノクレー
上記のようにナノクレーはケイ酸塩層で、各層は少なくとも0.1ナノメートルオーダの厚さを有する。本発明ではナノクレーとしてどのようなものを選択するかは特に制限されない。
ナノクレー(nanoclays)は天然または合成のフィロシリケート、特に、スメクタイトクレー、例えば、モンモリロナイト、ノントロナイト(nontronite)、ベンデリト(beideliite)、ヘクトライト(hectorite)、サポナイト(saponite)、サウコナイト(sauconite)およびバーミキュライトを含み、さらに、マガデート(magadiite)、ケンヤイト(kenyaite)、ステベンサイト(stevensite)、ハロイサイト(halloysite)、酸化アルミネートおよびヒドロタルサイトも含まれる。合成クレーとしてフルオロヘクトライト(fluorohectorite)およびフルオロマイカ(fluoromica)も使用できる。樹脂組成物およびナノクレー複合材料マスターバッチの製造でこれらを組み合わせて使用することもできる。
【0020】
ナノクレーは種々の形でアルミナAlO6八面体に結合したシリカSiO4四面体から成るアルミノ珪酸塩にすることができる。八面体に対する四面体の比が2:1 のものがスメクタイトクレーであり、最も一般的なものがモンモリロナイトである。スメクタイトクレーは小さな分子で膨潤可能なクレーである。クレーはスメクタイトクレー、好ましくはモンモリロナイトであるのが好ましい。
【0021】
結晶構造中のアルミニウムをマグネシウムのような他の金属で置換することもできる。
【0022】
一般に、クレーは表面に陰電荷を有し、100グラムの層状クレー材料当たり少なくとも約50ミリ当量、好ましくは少なくとも約20ミリ当量、より好ましくは少なくとも約50〜150ミリ当量の陰電荷を有している。
【0023】
最初にナノクレーをポリ(ヒドロキシカルボン酸)と混合し、これら両方は極性成分手あるので、ナノクレーを有機的に変性して極性を減らす必要はなく、ナノクレーをポリオレフィンに直接混合でき、従って、一つの加工段階が省略できる。
【0024】
しかし、分散をさらに良くするためにナノクレーを有機的に変性することもできる。ナノクレーをクレー材料の内部、例えば各層の間に吸収可能な有機分子で処理してナノクレーの容積を拡大(膨潤)することができる。例えば、隣接する層の間の間隙を約0.4ナノメートル以下から約1ナノメートル以上まで拡大することができ、ポリマーはこの間隙中により簡単に侵入できる。
【0025】
変性または未変性のナノクレーがポリマーで膨潤された場合、小板またはシートがインターカレートされた(intercalated)といわれている。シートが積層体を組織できない程度までクレーが大きく膨潤した場合、クレーは剥離されたといわれる。本発明で使用するクレーはポリ(ヒドロキシカルボン酸)が少なくともインターカレートされているのが好ましく、完全に剥離されて、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)マトリックス全体に分散されているのがより好ましい。
【0026】
「クレーを有機的に変性する」とは膨潤剤を添加してクレーを変性することをいう。膨潤剤としては適切な任意の有機分子が使用できる。膨潤剤は陽イオン界面活性剤、例えばアンモニウム、ホスホニウムまたはスルホニウム塩;両性界面活性剤;脂肪族、芳香族または芳香脂肪族アミン、ホスフィンおよびスルフィドの誘導体;有機シラン化合物;およびこれらの組合せであるのが好ましい。他の適切な膨潤剤はプロトン化アミノ酸および2〜30の炭素原子を有するその塩、例えば12-アミノドデカン酸およびε−カプロラクタムとこれらの任意の組合せである。
【0027】
粘土鉱物、その他の層状ケイ酸塩は下記特許文献3〜5に記載のような当業者に公知の任意の方法で有機的に変性することができる。なお、本発明が下記の特定のプロセスや手順に限定されるものではない。
【特許文献3】米国特許第5,728,764号明細書
【特許文献4】米国特許第4,810,734号明細書
【特許文献5】米国特許第3,671,190号明細書
【0028】
剥離のレベルはX線散乱テストで決定できる。特徴的な散乱角に散乱ピークがない場合、剥離レベルが高いことを示す。逆に、大きな飛散ピークは剥離が少ないこと(または減少したこと)を示す。散乱角は層間距離または通路間隔とは逆の関係がある。特に、散乱角(シータ)はl/dに正比例する。ここで、dは層間距離に等しい。従って、剥離レベルは(間層間隔をベースにした)予想散乱角での散乱強度のレベルを分析することで測定される。層間距離または通路間隔は各クレーに依存する。全ての積層体の小板へ完全剥離し、ポリマーで取り囲まれることが最適なナノコンポジット特性を達成するために要求されるわけではないが、得られる製品が上記の改良された特性を達成するためには一般に実質的に剥離が起ることが望ましい。ここでは、実質的に剥離したレベルまたは高いレベルとはX線散乱テストで実質的に大きな飛散ピークがないということで定義さる。
【0029】
カチオン交換容量が低いと有機分子が良く交換されず、クレーの膨張が減るので、クレーのカチオン交換容量は少なくとも約20ミリ当量/100グラムであるのが好ましい。このカチオン交換容量は約200ミリ当量/100グラム以下であるのが好ましい。交換容量が約200ミリ当量/100グラムを越えると、粘土鉱物層間の結合強度が強くなり過ぎて、クレーを広げるのが難しくなる。
【0030】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)はモノマーが再生可能な資源から誘導され、少なくとも一つの水酸基と少なくとも一つのカルボキシル基とを有する任意のポリマーにすることができる。ヒドロキシカルボン酸モノマーはトウモロコシやイネの他に砂糖−およびデンプン−を生じる植物等の再生可能な資源から得るのが好ましい。本発明で使用するポリ(ヒドロキシカルボン酸)は生物分解可能であるのが好ましい。「ポリ(ヒドロキシカルボン酸)」という用語にはホモポリマーとコポリマーが含まれる。
【0031】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は下記一般式(I)で表すことができる:
【化1】

【0032】
(ここで、
9は水素または1〜12の炭素原子を有する直鎖または分岐したアルキル、
10は任意で、1〜12の炭素原子を有する直鎖、分岐または環式のアルキレン鎖、
「r」は反復単位Rの数を表し、30〜15000の任意の整数)
【0033】
反復単位のモノマーは脂肪族で、ヒドロキシル基と、カルボンキシル基とを有する限り特に制限されない。可能なモノマーの例には乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシブチル酸、4-ヒドロキシブチル酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸等が含まれる。
【0034】
また、反復単位のモノマーは脂肪族ヒドロキシルカルボン酸のそれぞれの環式モノマーまたは環式ダイマーに由来するものでもよい。その例にはラクチド、グリコリド、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が含まれる。
【0035】
ヒドロキシカルボン酸単位中に不斉炭素原子がある場合、D−形およびL型および両方の混合物が使用できる。ラセミ混合物を使用することもできる。
【0036】
「ポリ(ヒドロキシカルボン酸)」という用語には複数のポリ(ヒドロキシカルボン酸)の混合物も含まれる。
【0037】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は一種または複数のコモノマーを任意成分として含んでいてもよい。このコモノマーは上記の一般式(I)で定義される別のヒドロキシカルボン酸にすることができる。各ヒドロキシカルボン酸の重量百分率は特に制限されない。
【0038】
また、コモノマーは二塩基カルボン酸および二価アルコールから成ることができる。これらが一緒に反応して一般式(II)に示すような乳酸のようなヒドロキシカルボン酸およびそのポリマーと化学反応可能なフリーなヒドロキシル末端基とフリーなカルボン酸末端基とを有する脂肪族エステル、オリゴエステルまたはポリエステルを形成することもできる:
【0039】
【化2】

【0040】
(ここで、
R11およびR12は1〜12の炭素原子を有する直鎖または分岐したアルキレンで、互いに同じでも異なっていてもよく、
「t」は反復単位Tの数を表す)
【0041】
これらのコポリマーも本発明の範囲内である。反復単位「r」(式I)および「t」(式II)の数の合計は30〜15000の任意整数である。各モノマーすなわちヒドロキシカルボン酸モノマー、式(II)の脂肪族エステルまたはポリエステルコモノマーの重量百分率は特に制限されない。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は少なくとも50重量%のヒドロキシカルボン酸モノマーと、少なくとも50重量%の脂肪族エステル、オリゴエステルまたはポリエステル・コモノマーとから成るのが好ましい。
【0042】
一般式(II)に示す脂肪族ポリエステル単位で使用可能な二価アルコールおよび二塩基酸は特に制限されない。使用可能な二価アルコールの例にはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7−オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、イソソルビド、そして、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびこれらの混合物が含まれる。
【0043】
脂肪族二塩基酸にはコハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、
ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3-ジメチルペンタン二酸、環式ジカルボン酸、例えばシクロヘキサンジカルボン酸およびこれらの混合物が含まれる。また、ヒドロキシカルボン酸コポリマーの二塩基酸残基を対応するジアシルクロライドまたは脂肪族二塩基酸のジエステルから誘導することもできる。
【0044】
二価アルコールまたは二塩基酸中に不斉炭素原子がある場合、D形およびL型および両方の混合物が使用できる。また、ラセミ混合物を使用することもできる。
【0045】
コポリマーは交互コポリマー、周期コポリマー、ランダムコポリマー、統計コポリマーまたはブロックコポリマーにすることができる。
重合はヒドロキシカルボン酸を重合するための公知の任意の方法で実行できる。ヒドロキシカルボン酸とその環式ダイマーの重合は縮合重合または開環重合で実行できる。
【0046】
ヒドロキシカルボン酸の共重合も公知の任意の方法で実行できる。共重合前にヒドロキシカルボン酸をコモノマーと別に重合するか、両者を同時に重合することができる。
【0047】
一般に、上記のポリ(ヒドロキシカルボン酸)、ホモポリマーまたはコポリマー(上記のように第2の別のヒドロキシカルボン酸または脂肪族エステルまたはポリエステルと共重合)は分枝剤をさらに含むことができる。本発明のポリ(ヒドロキシカルボン酸)は分岐型、星型、三次元網状構造を有することができる。分枝剤はそれが少なくとも3つの水酸基および/または少なくとも3つのカルボキシル基を有する限り特に制限されない。分枝剤は重合中に加えることができる。その例としてはポリマー、特に多糖、セルロース、デンプン、アミロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサンおよびこれらの誘導体が挙げられる。他の例は脂肪族多価アルコール、例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、キシリトール、イノシトール等である。分枝剤の他の例は脂肪族多塩基酸である。この種の酸にはシクロヘキサンヘキサカルボン酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、1,3,5-ペンタン−トリカルボン酸、1,1,2-エタントリカルボン酸等が含まれる。
【0048】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の全分子量はナノクレー複合材料および最終樹脂組成物の所望の機械特性、熱特性および加工性に依存するが、5,000〜1,000000グラム/モル、好ましくは10,000〜500,000グラム/モル、より好ましくは35,000〜200,000グラム/モルであるのが好ましい。ポリマーの全分子量は40,000〜100,000グラム/モルであるのが最も好ましい。
【0049】
分子量分布は一般にモノモダル(単峰、monomodal)である。重量平均分子量および/またはタイプが異なる2つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)の混合物の場合にはポリマーの分子量分布はマルチモダル、例えばビモダル(双峰)やトリモダル(三峰)になる。
【0050】
有用性および透明性の観点から、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)はポリ乳酸(PLA)であるのが好ましい。このポリ乳酸は乳酸またはラクチドから、好ましくはラクチドから直接得られるホモポリマーであるのが好ましい。
【0051】
ここ数年、人工的な廃棄物が環境に与えるインパクトを人々が心配するようになってきている。従って、再生可能な資源からの新規な生物分解可能(好ましくはコンポスト(堆肥)化可能な)プラスチックを開発することが重要になっている。
【0052】
その特に重要な候補がポリ(ヒドロキシカルボン酸)、特に比較的大きなスケールで商業的に入手可能なポリ乳酸である。乳酸はトウモロコシやイネのような植物または砂糖−またはデンプン−生成植物から得られ、PLAは再生可能な材料から得られるだけでなく、簡単にコンポスト化できる。そのため、従来は石油ベースの熱可塑性樹脂が使われていた用途でPLAを代替として使用することが重要になっている。
【0053】
しかし、PLA自体は従来のプラスチックと同じような有利な特性を有していない。特に、PLAは脆性で、耐熱性、柔軟性が悪いという性能上の問題が有り、機械的強度が悪い。一方、ポリオレフィン、特にポリプロピレンは非常に優れた機械的特性を有している。両者の特性を合せるためにPLAとポリオレフィンとを混合して少なくとも部分的に生物分解可能な樹脂を得ようとする試みが行なわれたが、許容可能な機械的特性のままである。現在では、両者の極性および分子量分布の差から、均一なPLAとポリオレフィンとのブレンドを得ることは難しい、さらには不可能であると考えられている。従来は、相溶化剤を使用しているが、それによって追加の工業的階段を必要とし、押出成形時に特定の条件を必要とする。さらに、相溶化剤を加えると、望ましくない副生成物ができる。すなわち、相溶化剤および副生成物の両方が所望最終製品のフィルム、繊維または成形物の特性を変えることがある。
【0054】
従って、ポリオレフィン中にナノクレーを分散させるのに生物分解可能なポリ(ヒドロキシカルボン酸)を使用することは、少なくとも部分的に生物分解可能でおよび/または再生可能資源から部分的に得られる樹脂が提供できるという追加の利点も有する。
【0055】
従って、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は生物分解可能なもの、例えばポリ乳酸を選択するのが好ましい。生物分解性は規格EN 13432:2000で定義される。包装材料が生物分解可能であるためには下記のライフ・サイクルを有していなければならない:
(1)時間t0(材料が生産ラインから離れた時)から始まる貯蔵および/または使用時間。
(2)時間t1(この時からポリマーは例えばエステル結合の加水分解等によって化学的に崩壊し始める)から始まる一体化の壊変時間、
(3)生物分解時間(この間に、部分的に加水分解されたポリマーはバクテリアおよび微生物の作用で生物学的に劣化する)
【0056】
劣化可能(degradable)、生物分解可能(biodegradable)およびコンポスト化可能(compostable)という用語は互いに同じような意味を表す用語として使われているが、区別することが重要である。上記に加えて、コンポスト化可能(compostable)なプラスチックとは「利用可能なプログラムの一部としてのコンポスト現場で生物学的に分解を受けてプラスチックが視覚的に区別(distinguishable)できなくなり、公知のコンポスト化可能な材料(例えばセルロース)と同じ速度で二酸化炭素、水、無機化合物およびバイオマスに分解され、しかも、有毒残渣を残さないもの」(ASTM)である。一方、劣化可能(degradable)なプラスチックは単に化学的に変化するだけのもので、微生物によって生物学的に劣化されるプラスチックであるという条件はない。従って、劣化可能なプラスチックが必ずしも生物分解可能であるというわけではなく、生分解性プラスチックが必ずしも劣化可能(すなわち、ゆっくりと壊れおよび/または毒性残渣を残す)であるというわけでもない。
【0057】
規格EN 13432:2000に定義のコンポスト化可能(compostable)の主たるな特徴は下記である:
(1)材料を篩分けして分解(fisintegration)度を測定して、生物分解(biodegraded)した寸法を求める。コンポスト化可能とみなされるためには材料の10%以下の寸法が2mm以上でなければならない。
(2)生物分解度は生物分解プラスチックによって所定時間の間に生じる二酸化炭素の量を測定して決定する。コンポスト化可能とみなされるためには90日以内に90%が生物分解されなければならない。
(3)エコ毒性の測定は重金属の濃度が標準限界値以下であることと、土壌に種々の濃度でコンポストを混合して植物の成長をテストし、対照コンポストと比較して決定する。
【0058】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とナノクレーの複合材料の加工
ナノクレー−ポリマー複合材料はポリ(ヒドロキシカルボン酸)とナノクレーとを混合して形成される。この複合材料をマスターバッチとして使用してポリオレフィンに加えることで、ポリオレフィン中へナノクレーを直接導入する場合よりもより均一に、ポリオレフィン組成物中にナノクレーを添加することができる。
【0059】
特に、本発明者が観察したナノクレーとポリ(ヒドロキシカルボン酸)との混合物は驚くほど均一である。ナノクレーの極性はポリオレフィンよりポリ(ヒドロキシカルボン酸)に近いと考えられので、ナノクレー−ポリ(ヒドロキシカルボン酸)複合材料は、ポリオレフィンにナノクレーを直接混合したものより均一である。
【0060】
複合材料化法すなわちブレンド法は特に制限されず、公知の任意の方法で実行できる。複合材料化の加工方法の一つの例は溶液加工法で、ナノクレーとポリ(ヒドロキシカルボン酸)とを適当な溶剤中で混合し、溶剤を蒸発させて複合材料を得る。混合は例えば磁気撹拌、剪断混合、還流または超音波処理で行なうことができる。ポリマー中にナノクレーを混合するのに使用可能な他の方法はインサイチュウ(in situ) 重合である。この場合には、ナノクレーおよび触媒の存在下でヒドロキシカルボン酸(またはその環状ダイマー、トリマー)を重合するか、ナノクレーを重合触媒用の触媒担体として作用させる。また、ナノクレーとポリマーとを乾式混合することも可能である。さらに、溶融加工段階前に乾式混合することもできる。
【0061】
しかし、複合材料の好ましい加工方法は溶融加工である。この方法はガラス遷移温度以上(室温で非晶質なポリマーの場合)または融点以上(室温で半結晶性のポリマーの場合)に加熱すると熱可塑性樹脂が軟化するという利点を利用する。この溶融加工は熱可塑性樹脂の業界で標準的な機器を使用して簡単かつ迅速に実施できる。各成分をバンバリー(Banbury)またはブラベンダー混合機(Brabender Mixer)等でバッチ法で剪断混合するか、押出機、例えば2軸スクリュー押出機で連続法で溶融混合する。溶融混合中の混合機の温度は一般に使用したポリ(ヒドロキシカルボン酸)の最高融点からこの融点より約150℃上の温度まであり、好ましくは上記融点からこの融点より100℃だけ上の温度まで範囲である。
【0062】
ブレンディングに必要な時間は広範囲に変えることができ、使用するブレンディング法に依存する。必要な時間は各成分が完全に混合するのに十分な時間で、一般にはポリマーを約10秒間から約60分、好ましくは約45分、さらに好ましくは約30分までの時間混合する。
【0063】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)加えるナノクレーの配合量は特に制限されないが、一般に、ナノクレーは複合材料の99重量%まで存在でき、好ましくは75重量%まで、さらに好ましくは50重量%まで、より好ましくは25重量%まで、さらに好ましくは20重量%まで存在できる。最も好ましいのはナノクレーを5重量%以下加えることである。すなわち、極めて少量のナノクレーを添加するだけでポリマーの特性に有益な影響を及ぼすことができるので、ポリマーの意図した用途に応じて上記の極めて少量を使用することができる。しかし、大部分の用途ではナノクレーを0.1重量%以上加えるのが好ましい。
【0064】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の配合比率は特に限定されないが、一般に複合材料全体の1〜99重量%の範囲である。複合材料は少なくとも25重量%、好ましくは50重量%、より好ましくは75重量%、さらに好ましくは少なくとも80重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸を含むのが好ましい。最も好ましいのは複合材料がポリ(ヒドロキシカルボン酸)を少なくとも95重量%含む場合である。
【0065】
複合材料のマスターバッチには他の任意の添加剤を入れることができる。添加剤には顔料、カーボンブラック、抗酸化剤、UV-保護剤、滑剤、抗酸化剤、過酸化物、グラフト剤、核剤等が含まれる。しかし、添加剤はナノクレー複合材料のマスターバッチをポリオレフィンに混合する間に加えることもでき、また、ナノクレー複合材料とブレンディングする前にポリオレフィンに加えることもできる。
【0066】
ポリオレフィン
本発明では、上記で作ったナノクレー複合材料のマスターバッチを、相溶化剤なしで、一種または複数のポリオレフィンから成る樹脂中に混合できる。
【0067】
ポリオレフィンはα-オレフィンの任意のポリマーにすることができる。「ポリオレフィン」という用語はα-オレフィンのホモポリマーとコポリマーを意味する。α-オレフィンは2〜12の炭素原子を有する任意の1-アルキレンで、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテンおよび1-ヘキセン等にすることができる。ポリオレフィンが少なくとも3つの炭素原子を有するオレフィン、例えばポリプロピレンのポリマーの場合、アタクチック、アイソタクチックまたはシンジオタクチックのポリオレフィンにすることができる。
【0068】
ポリオレフィンがコポリマーの場合のコモノマーは主モノマーとは異なる任意のα-オレフィン、すなわち2〜12の炭素原子を有する1-アルキレンにすることができる。場合によってはコモノマーをビニール基を有する任意の官能化された化合物にすることもできる。そうしたビニル含有コモノマーは2〜12の炭素原子を有し、例えば酢酸ビニール、アクリル酸およびアクリレート等にすることができる。コポリマーは交番コポリマー、周期的コポリマー、ランダムコポリマー、統計的コポリマー、ブロックコポリマーにすることができる。
【0069】
「ポリオレフィン」という用語には上記定義の少なくとも2つのポリオレフィンの混合物が含まれる。
【0070】
本発明の樹脂組成物で使用するポリオレフィンはエチレンまたはプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーであるのが好ましい。
【0071】
上記α-オレフィンは高圧または低圧で重合できる。高圧の場合、特にエチレンの場合には触媒なしでラジカル機構で重合を起こすことができる。高圧法でのエチレン重合は開始剤、例えば過酸化物を使用して開始することができる。高圧重合したエチレンは低密度ポリエチレン(LDPE)とよばれ、長鎖および短鎖分岐が多く存在するため密度は0.910〜0.940g/cm3である。この低密度ポリエチレンユニークな流れ特性を有し、加工が簡単である。しかし、LDPEの結晶構造は密にパックされておらず、分子間の力および分子内の力が弱いため、LDPEは引張強度、環境応力亀裂耐久性(ESCR)および引裂強度等の機械特性が低い。しかし、このLDPEにナノクレー含有ポリ(ヒドロキシカルボン酸)を混合すると、その優れた加工性の利点を失わずに、LDPEの機械特性を大きく改善することができる。
【0072】
エチレンはコモノマーと一緒に高圧重合するのが好ましい。コモノマーは上記のビニル含有化合物、例えば酢酸ビニール、アクリル酸およびアクリレートの一つにすることができる。これらのコモノマーはLDPEに極性を与えるので、LDPEコポリマーはポリ(ヒドロキシカルボン酸)-ナノクレー複合材料との相溶性が良くなり、2つの成分を簡単に混合して、均一な混合物を形成させることができる。この場合、相溶化剤は不用である。最も好ましいコポリマーはエチレン−酢酸ビニールポリマーで、酢酸ビニールがコモノマーである。
【0073】
高圧法エチレンコポリマー中のコモノマーの配合量は特に制限されない。高圧法エチレン中のコモノマー含有量はエチレンコポリマーの30重量%以下、好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%未満であるのが好ましい。
【0074】
本発明の樹脂組成物では、公知の適当な手段と触媒とを用いて低圧重合で作った任意タイプのポリオレフィンを使うこともできる。これに適した触媒の例はシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒、チーグラー−ナッタ触媒およびクロム触媒である。必要に応じて同じまたは異なるタイプの一つまたは複数の触媒を一つの反応装置で同時に使うか、2つの並列反応装置、互いに直列に連結された2つの反応装置で使用してマルチモダル(多峰)や分子量分布が広いポリマーを得ることができる。
【0075】
エチレン重合に特に適した触媒の例はシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒、チーグラー−ナッタ触媒およびクロム触媒であるが、公知の他の任意の触媒が使用できる。低圧重合したエチレンはLDPEより直鎖状で、長鎖分岐濃度が低く、分子間力が強く、LDPEより引張強度が高い。低圧重合エチレンは直鎖低密度(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)に分類でき、密度は主として加えるコモノマーの量で制御でき、加えるコモノマーの量を多くすると短鎖分枝度が高くなり、密度が低下する。コモノマーはポリプロピレン、1-ブテン、1-ペンテンまたは1-ヘキセンにするのが好ましい。
【0076】
プロピレンの重合に適した触媒の例はチーグラー−ナッタおよびシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒であるが、公知の他の任意の触媒が使用できる。ポリプロピレンはシンジオタクチック、アイソタクチックまたはアタクチックにすることができる。アイソタクチックポリプロピレンはチーグラー−ナッタ触媒またはシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を使用して得ることができる。シンジオタクチックおよびアタクチックなポリプロピレンはシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を使用して得ることができる。一般にアイソタクチックポリプロピレンが選択される。
【0077】
ポリオレフィン全体の特性は使用した方法および触媒のタイプに依存する。発明に好ましいポリオレフィンはシングルサイト触媒で作ったポリオレフィン、特にメタロセン−触媒で作ったポリオレフィンである。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)はチーグラー−ナッタ触媒またはクロム触媒を用いて製造したポリオレフィンよりも、シングルサイト触媒を用いて製造したポリオレフィン、特にメタロセン-触媒を用いて製造したポリオレフィンとより良く混合するということが確認されている。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とシングルサイト触媒を用いて製造したポリオレフィン、特にメタロセン−触媒を用いて製造したポリオレフィンとの混合物は均一で、相溶化剤は不用である。
【0078】
非メタロセン触媒を用いて製造したポリオレフィンと比較して、シングルサイト触媒を用いて製造したポリオレフィン、特にメタロセン−触媒を用いて製造したポリオレフィンは分子量分布の幅がはるかに狭い。分子量分布は1〜10、好ましくは1〜7、さらに好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜4であるのが好ましい。分子量分布の幅が狭いと、同じように分子量分布の幅が狭いポリ(ヒドロキシカルボン酸)と相溶性になる。
【0079】
理論に拘束されるものではないが、シングルサイト触媒、特にメタロセン−触媒のポリオレフィンの分子構造がポリ(ヒドロキシカルボン酸)との相溶性を誘発すると考えられる。このポリオレフィンには長鎖分岐はないか、極めて少ない。従って、コモノマーはポリオレフィン骨格に沿って極めて規則的に入り、コモノマーすなわち短鎖分岐の分布が極めて規則的になる。ポリオレフィン中でのこの効果(短鎖分岐の分布が非常に狭い(SCBD)として公知)はシングルサイト触媒で作ったポリオレフィン、特にメタロセン触媒ポリオレフィンに特有な効果である。その結果、溶融物からの結晶化中に非常に小さい結晶子が材料全体で形成され、優れた光学透明性を与える。これに対してチーグラー−ナッタ触媒またはクロム触媒を用いて製造したポリオレフィンではコモノマーの分布は悪く、極めてランダムに入る。従って、結晶化時に異なる寸法の結晶が広い幅で分布し、ヘイズ値が高くなる。
【0080】
特定の理論に拘束されるものではないが、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の分子構造はシングルサイト触媒(特にメタロセン-触媒)ポリオレフィンの分子構造に類似するために、すなわち、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は狭い分子量分布で、長鎖分岐はなく、短鎖分岐の分布が狭い(短鎖分岐が存在したとしても)ため、他のポリオレフィンよりも、シングルサイト触媒ポリオレフィン、特にメタロセン-触媒で作ったポリオレフィンにより良く相溶すると考えられる。
【0081】
本発明のポリオレフィン樹脂は添加剤、例えば顔料、カーボンブラック、抗酸化剤、UV-保護剤、滑剤、抗酸化合物、過酸化物、グラフト化剤および核剤を含むことができる。これらの添加剤はポリオレフィンとブレンディングする前にナノクレー複合材料マスターバッチに加えられることができる。また、本発明の樹脂組成物の2の成分をブレンディングする間に加えることもできる。
【0082】
ナノクレー−ポリマー複合材料のマスターバッチとポリオレフィンとのブレンディング
ナノクレー−ポリ(ヒドロキシカルボン酸)複合材料とポリオレフィンとのブレンド(混合)は公知の任意の物理的方法で実行でき、例えば湿式混合または溶融混合で行なうことができる。ブレンディング条件はブレンディング法と使用したポリオレフィンとに依存する。使用した方法とポリオレフィンおよびナノクレー複合材料に応じて任意の形することができ、例えば羽毛状物(フラフ、fluff)、粉末、顆粒、ペレット、溶液、スラリーおよび/またはエマルションにすることができる。
【0083】
ポリマーの乾式混合を用いる場合の乾式混合条件には、室温〜ポリマーの融点までの温度と、数秒〜数時間の混合時間とが含まれる。乾燥成分ルは溶融混合前に混合する。
【0084】
溶融加工は熱可塑性樹脂の分野の標準的機器を使用して迅速かつ簡単に実行できる。各成分をバンバリー(Banbury)またはブラベンダ(Brabender Mixer)でバッチで溶融するか、典型的な押出機、例えば2軸スクリュー押出機を用いて連続的に混合できる。溶融混合時のブレンダ中のポリマーの温度は一般に、使用したポリマーの最も高い融点からこの融点より約150℃上の温度、好ましくは融点からこの融点より100℃上の温度までの範囲である。溶融混合に必要な時間は使用したブレンディング法に依存し、広範囲に変えることができる。必要な時間は各成分が果然に混合するのに十分な時間である。一般に、ポリマーは約10秒から約60分まで、好ましくは約45分まで、さらに好ましくは約30分までの時間混合される。
【0085】
また、各成分を湿式混合することもでき、成分の少なくとも一つは溶液またはスラリーの形にすることができる。溶液混合法を使用する場合のブレンディング温度は一般に25℃から含まれる溶液の曇点より50℃上の温度までである。混合後、溶剤または希釈剤を蒸発によって除去し、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とポリオレフィンと混合物全体に分散したナノクレーとの均一混合物にする。
【0086】
樹脂組成物中のナノクレー−ポリ(ヒドロキシカルボン酸)複合材料の比率は1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%、最も好ましくは1〜20重量%である。本発明樹脂組成物中のポリオレフィンの比率は1〜99重量%、好ましくは25〜99重量%、さらに好ましくは50〜99重量%、より好ましくは75〜99重量%、最も好ましくは80〜99重量%である。
【0087】
ナノクレーは樹脂組成物全体の少なくとも0.05重量%を形成するのが好ましい。樹脂組成物全体中のナノクレー含有量は10重量%を越えないのが好ましく、好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下であるのが好ましい。
【0088】
樹脂組成物は本質的にポリオレフィンと、ナノクレーと、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とから成るのが好ましい。
【0089】
樹脂組成物中のポリオレフィンは機械的特性、難燃性およびバリアー特性が改良され、樹脂組成物の一部は生物分解性であるので、本発明の樹脂組成物には多くの用途がある。
【0090】
機械特性が改良されたことによって本発明樹脂組成物は繊維用途にも適している。本発明の繊維はスチフネス高く、引張強度が増加し、強靭性が高く、エネルギー吸収能に優れ、破断強度に優れている。極性のあるポリ(ヒドロキシカルボン酸)成分が存在するためポリオレフィン含有繊維の親水性が増加する。繊維は工業スケールでマルチフィラメントにできるが、それはモノフィラメントの有利な特性を有している。本発明の樹脂組成物から成る繊維から作られる物品の例にはロープ、ネットおよびケーブルがある。また、機械強度が改善された軽い繊維を軽量保護衣類を作るための防弾複合材料として使用することができる。さらに、繊維は難燃性が向上する。
【0091】
また、樹脂組成物は印刷特性に優れ、表面張力が良く、熱溶着および高周波溶着が増加し、スチフネスが改善し、浸透性が改良したフィルムに成形できる。このフィルムも大気バリアー性、特に酸素および窒素に対するバリアー性に優れている。本発明樹脂組成物はポーチ、例えば医療用ポーチの製造にも用いることができる。
【0092】
また、本発明組成物は射出成形、押出成形、熱成形、発泡成形、回転成形、延伸ブロー成形にも適している。これらの成形法で作られる物品は単層または多層にすることができ、後者では層の少なくとも一層を本発明の樹脂組成物にする。
【0093】
本発明組成物は熱重量分析(TGA)および円錐カロリメトリ試験で測定される難燃効果も示す。この効果はナノクレーと一緒に従来の難燃剤、例えばATH(アルミニウム三水和物)や水酸化マグネシウムを用いることで、両方の化合物の相乗効果によってさらに向上する。
【実施例】
【0094】
実施例A
25dg/分のMFRを有するメタロセン触媒を用いて製造されたポリプロピレンMR2001(登録商標、トタルペトロケミカル(Total Petrochemicals)社)をブラベンダー(Brabender、登録商標)のPlasticorder2軸スクリュー押出機で押出した。温度は200℃に、押出成形の回転速度は60回転/分にセットした。押出した樹脂をオンラインで顆粒にし、得られたペレットを日精(登録商標)の射出成形機を用いて円板を射出成形し、ブラベンダー(Brabender、登録商標)のフィルム製造ラインを使用してフィルムに加工した。また、ラビンヌ(Labline、登録商標)の機械を使用して繊維にもした。各材料に機械テストを実施した。また、難燃特性はTGAおよび円錐カロリメトリで評価し、バリアー特性も測定した。
【0095】
実施例B1、B2
ブラベンダー(Brabender、登録商標)のPlasticorder2軸スクリュー押出機を用いて、メタロセン触媒を用いて製造されたMFRが25dg/分のポリプロピレンMR2001(登録商標、トタルペトロケミカル(Total Petrochemicals)社)を、未変性のナノクレー(Southern Clay Products 社からのクロワサイト(Cloisite Na+、登録商標)(実施例B1)または有機変性したナノクレー(Southern Clay Products社からのクロワサイト(Cloisite 2OA)(実施例B2)と混合した。押出成形の温度は200℃、回転速度は60回転/分にセットした。押出した樹脂をオンラインで顆粒にし、得られたペレットを日精(登録商標)の射出成形機を用いて円板を射出成形し、ブラベンダー(Brabender、登録商標)のフィルム製造ラインを使用してフィルムに加工した。また、ラビンヌ(Labline、登録商標)の機械を使用して繊維にもした。各材料に機械テストを実施した。
機械特性が実施例Aと比べてわずかに改善された。難燃性は主として実施例B2で改善された。
【0096】
実施例C1、C2(本発明)
ブラベンダー(Brabender、登録商標)のPlasticorder2軸スクリュー押出機を用いて、ユニチカ社からのPLAと、未変性のナノクレー(Southern Clay Products社からのクロワサイト(Cloisite Na+、登録商標)(実施例C1)または有機変性したナノクレー(Southern Clay Products社からのクロワサイト(Cloisite 2OA)(実施例C2)とを混合して、本発明の2つの異なるナノクレー複合材料を製造した。混合温度は200℃、スクリュー速度は60回転/分にセットした。
得られた各押出物を上記と同じ機械を使用してメタロセン触媒を用いて製造されたMFRが25dg/分のポリプロピレンMR2001(登録商標、トタルペトロケミカル(Total Petrochemicals)社)
と200℃の温度で混合した。
押出した樹脂をオンラインで顆粒にし、得られたペレットを日精(登録商標)の射出成形機を用いて円板を射出成形し、ブラベンダー(Brabender、登録商標)のフィルム製造ラインを使用してフィルムに加工した。また、ラビンヌ(Labline、登録商標)の機械を使用して繊維にもした。各材料に機械テストを実施した。
実施例C1、C2の両方のナノコンポジットは機械特性、難燃特性およびバリアー特性が実施例B1およびB2と比較してはるかに改善されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(i)と(ii)のた工程から成る、ポリオレフィンと、ナノクレーと、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とから成る樹脂組成物の製造方法:
(i)ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とナノクレーとを混合して複合材料を作り、
(ii)得られた複合材料をポリオレフィンと混合する。
【請求項2】
ポリオレフィンがシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造したものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)がポリ乳酸である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)をナノクレーと溶融混合する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリオレフィンと、ナノクレーと、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とから成る樹脂組成物。
【請求項6】
ポリオレフィンがシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造したものである請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)がポリ乳酸である請求項5または6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
ナノクレーの含有率が10重量%以下である請求項5〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
ポリオレフィンがポリプロピレンおよびポリエチレンのホモポリマーまたはコポリマーの中から選択される請求項5〜8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか一項に記載の樹脂組成物の、射出成形、押出成形、延伸ブロー成形、熱成形物品、フィルム、フォームまたは繊維での使用。
【請求項11】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の、ポリオレフィン中へのナノクレーへ混合の相溶化剤としての使用。

【公表番号】特表2010−536974(P2010−536974A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521446(P2010−521446)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061059
【国際公開番号】WO2009/027358
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】