説明

ポリオレフィンの生体触媒的な親水化

ポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品の表面の親水性を向上させるための新規な本方法は、酸化還元酵素、とりわけシトクロムP450ファミリーまたはEC1.13もしくはEC1.14として類別される酵素から選択される酵素で表面を処理することを特徴とする。本方法は、とりわけポリプロピレンフィルム、繊維または布地の処理、とりわけ衛生物品、撚糸、糸、布地、織物、衣服、専門品もしくは家庭物品、印刷もしくは染色されたカバーフィルムもしくはパッケージフィルムでの使用に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、選択した酵素での処理により、ポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品の表面の親水性を向上させるための方法、この方法により得られるポリマー物品、ポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品の表面の親水性を向上させるための酸化還元酵素(oxidoreductase)の使用、および親水表面が要求される特定の用途のために本発明により得られるポリマー物品の使用に関連するものである。
【0002】
ポリオレフィンおよびポリオレフィンコポリマーは、最も広く使用されるポリマーに属するものの、多くの用途において、それらの使用は、それらから作製される表面または布地の親水性または湿潤性が低いため、依然として制限されている。とりわけ、これらのポリマーを印刷または筆記のための基材としてか、織物のために使用することは親水性が要求されないか、わずかしか要求されない用途に、依然として、限定される。例えば、ポリプロピレンは、極めて汎用的なポリマーであり、他のポリマーと比較して多数の効果を有する。化学的に不活性であり、耐熱性があり、軽重量である。PP繊維は、表面が極度に疎水的であるため、多くの場合、機能的なスポーツウェアに使用される。水を吸収することはできない。熱可塑性ポリプロピレン繊維は、典型的には、約210°〜約240℃の範囲の温度で押出され、本質的に非多孔質、かつ、水分子を誘引または結合する能力がない連続した分子鎖からなるために、本来的に疎水性である。結果として、未処理のポリプロピレン布地は、開放細孔構造を有していてさえも、極性液体、例えば、水または尿が、布地を通ること、または一つの表面から他に流動することを妨げる傾向がある。
【0003】
特殊加工における吸湿、可染性および堅牢度の改良に対し、多大な大きな工業的需要がある。この目的のため、ヒドロキシル基を挿入することができる。ポリオレフィンベースの材料を親水化するための物理的/化学的方法の潜在的可能性が評価されているが(例えば、国際公開公報第02/42530号またはそこで引用されている刊行物を参照されたい)、これまで、これらの技術のいずれも工業的実用性に到達していない。
【0004】
近年、種々の合成系ポリマー、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレートおよびポリアミドについて、目標とする表面機能化を行うため、酵素を使用できることが示されている。これらの方法は、これらのポリマーの表面上におけるニトリル基の部分的な酵素的加水分解(例えば、Wangら、AATCC Review 4、28−30(2004))、エステル結合(Fischer−Colbrieら、Biocatal.Biotrans.22、341−346(2004);Alischら、Biocatal..Biotrans.22、347−351(2004);Vertommenら、J.Biotechnol.120:376−386(2005);国際公開公報第01/14629号)およびアミド結合(Silvaら、J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.43、2448−2450(2005))に基づく。それにより、ポリマーの親水性が増加し、さらなる仕上げ加工および機能化に対する多くの有益な影響がある。化学的/物理的方法とは対照的に、酵素的処理は、温和な条件下(例えば、中性pH付近、周囲温度付近)で実施することができ、有害な物質を環境中に放出しない。さらに、酵素のサイズに帰因して、反応は表面を目標とし、一般的に、強度損失および/または他の不都合な影響に繋がり得る内部改質が避けられる。
【0005】
欧州特許第A−687729号は、繊維表面に架橋される酵素でセルロース系または合成系繊維を被覆し、なかんずく親水性を改良するための方法を開示している。
【0006】
主として炭化水素ポリマー、例えば、ポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマーから作製された表面を被覆するのではなく、改質するための酵素的方法が要望されている。
【0007】
現在、特定の分類の酵素を使用し、主としてポリオレフィン表面の改質により、ポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品の表面親水性を好都合かつ効率的に向上させることができることが確認されている。
【0008】
そのため、まず初めに、本発明は、ポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品の表面の親水性を向上させるための方法であって、酸化還元酵素から選択した酵素で表面を処理することを特徴とする方法に関連する。
【0009】
先の意味合いにおけるポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品は、その表面または外側表面層がポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー(その好ましい成分および量については、以下を参照されたい)を含む物品、例えば、繊維、織物、不織布、布地、フィルムまたはシート(本発明に関係する限りのさらなる物品の種類、それらの使用または調製については、以下を参照されたい)として理解される。
【0010】
酸化還元酵素、同様に、それらのうちの好ましいモノオキシゲナーゼが公知の成分であり;それらは、バクテリア系、酵母、植物および菌の起源、同様に、哺乳類細胞から得ることができ;全細胞を使用するか(例えば、凍結乾燥細胞)、単離形態の酵素であることができる。細胞調製物または単離/組換え酵素は、広く公知であり、多くが市販されている。
【0011】
とりわけ、使用する酵素は、EC1として類別される酸化還元酵素の分類、より具体的には、EC1.13として類別される、分子酸素の組み入れで単一の供与体に作用する酵素およびEC1.14として類別される、分子酸素の組み入れまたは還元で一対の供与体に作用する酵素に属することができる。
【0012】
略号「EC」は、国際生化学・分子生物学連合の命名法委員会(NC−IUBMB)が発行する、酵素による触媒作用を受けた化学的反応に基づく酵素の数値類別スキームである「Enzyme Commision番号」を表す。
【0013】
本分類の酵素は、周知であり、文献(Cirinoら、2002)で定義されている。酵素は、バクテリア系、菌、酵母、植物または哺乳類起源を包含するあらゆる起源から得るか、生じさせることができる。酵素を細胞溶解物として使用するか、おそらくは酵素を精製することができ、それを生じさせる有機体から生成されるあらゆる他の成分から遊離していることを意味する。酵素は、あらゆる形態、例えば、乾燥粉末、粒状、液体または安定化液体で使用することができる。酵素に加え、インキュベーション混合物は、補因子、例えば、NADPHまたはNADH、補因子再生系、緩衝液および界面活性剤を含有することができる。追加的な、酵素と基材との間の相互作用を改良する化学試薬、例えば、湿潤化または分散剤を含有することができる。
【0014】
シトクロムP450タンパク質(一酸化炭素が結合した形態での吸収帯が450nmであることにちなむ)を包含するモノオキシゲナーゼは、とりわけ好適な酵素ファミリーである。P450は、例えば、バクテリアのエネルギ源としての炭素化合物の利用または多様なマクロライド抗生物質の生成に関与する、遍在する酵素であり;哺乳動物では、これらの酵素がホルモンの合成および分解ならびに多様な化合物、例えば、薬物および毒性物質の解毒に関与する。P450では、多くの場合、もう一つの源(例えば、補因子NADPH)からの電子を使用し、分子酸素の活性化に触媒作用を及ぼし、生理学的条件での非活性化炭化水素の位置特異的および立体特異的なヒドロキシル化につながる。
【0015】
本方法は、pHおよび温度の点で温和な条件で実施することができ、有害な物質を環境中に放出しない。表面の酵素処理は、周知の原則に従い、選択した酵素に好適な条件下で実施することができる。多くの場合、追加的な添加剤、例えば、界面活性剤および/または電子媒介系、例えば、還元剤(例えば、NADP、NADPHもしくは他の好適な物質)または基材を同時に使用する。外部の電子源を用いる電子媒介系を使用することも可能である。酵素の量、処理時間、温度、pH値および任意の添加剤は、例えば、選択した具体的な酵素および要する改質の程度に従い、変動させることができる。これらの処理条件は、周知の手順に従って最適化することができる。
【0016】
とりわけ繊維の場合、酵素は、例えば、それぞれ処理するポリマー材料のkg当たりで0.001g〜10g/kgの酵素タンパク質の量で使用することができ;あるいは、とりわけフィルムまたはバルク材料、例えば、押出または成形品では、多くの場合、酵素の量は、処理する表面の平方メートル当たりの酵素タンパク質が10−5〜0.1gの範囲にわたる。酵素処理は、好ましくは、30℃〜100℃の範囲にわたる温度で実施する。インキュベーション混合物のpH値は、選択した酵素に依存し、3〜12、より好ましくはpH5〜9の範囲にわたることができる。とりわけ好ましいのは、pH7付近の中性pH、例えば、pH6〜pH8である。好適な反応時間は、通例、10秒を超え、10〜約30000秒、多くの場合、5分〜10時間の範囲にわたることができる。通例、処理の直後に酵素を除去し、このように改質されたポリマー表面を表出させることから、本方法は、追加的な、例えば、pH>8の希アルカリまたは水性溶液によるすすぎ工程を含むことができる。通例、本方法中に使用する材料の残留物、例えば、残存酵素が望ましい結果に負の影響をもたらすことはないが、通例、そのような材料の固着につながるあらゆる工程、例えば、化学的結合または架橋は避ける。
【0017】
水性溶液は、純水または(好ましくは)緩衝化水溶液であるか、有機溶剤と水または水緩衝液との混合物であることができ;一般的に好適であるのは、すべての不活性有機溶剤、とりわけ、水と混和可能または部分的に混和可能なもの、例えば、30〜100℃の温度範囲において少なくとも1重量%の水との混和性を示す溶剤である。有機溶剤は、通例、水よりも分極性が低く;例えば、わずかに極性の炭化水素、例えば、トルエン、アルコール、エーテルなど、同様に、溶剤混合物がある。反応は、均一系または多相系、例えば、溶剤および/またはキャリヤに結合した酵素の2相を使用し、実施することができる。
【0018】
本酵素または酵素での処理は、多くの場合、ポリオレフィン、とりわけ、ポリプロピレンに基づく材料への酸素の組み入れにつながる。このように、酵素処理により、親水性が増加し、これらの材料をさらに機能化するためのアンカーポイントが挿入される。
【0019】
本発明の処理の影響は、当技術分野において公知の方法に従い、評価することができる(以下の例も参照されたい)。本発明に従って表面の親水性が達成される結果、通例、水への接触角度が未処理表面の一つよりも少なくとも10°小さくなる。接触角度の減少は、多くの場合、はるかに高く、例えば、水への接触角度の減少が25%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上または90%以上でさえもある。
【0020】
本方法は、追加的な加工工程、例えば、一つ以上の好適な剤の適用による染色、印刷、抗菌剤または難燃剤特性、帯電防止特性の付与を包含することができる。
【0021】
織物工業で共通して使用されるいくつかのポリマー系、同様に、オリゴマー系物質の使用により、織物特性の耐久性の改良をさらに促進することができる。そのような物質は、容易なケアおよび/または他の特性を多様な織物材料、軟化剤、被覆材料、固着剤(fixation agent)および/または他の仕上げ剤(finishing agent)、例えば、親水性剤および疎水性剤、難燃剤などに提供する、樹脂加工を非限定的に包含する。
【0022】
例えば、織物材料または布地を織物または布地の染色の前に本発明に従って処理し、染色および任意のさらなる工程、例えば、光保護剤、太陽光線保護指数(SPF)向上剤および/または抗菌剤の適用が後処理として続く。例えば、多くの場合、追加的な小さい量の有機溶剤、界面活性剤、分散剤および/または乳化剤を含む水性調合物を使用し、吸尽方法、パディング、噴霧または気泡適用により、染料またはさらなる剤の適用を実施することができる。
【0023】
パディングは、従来のパディング方法に従って実施することができる。例えば、染料または剤を含む水性液に織物材料を通過させ、画定したピックアップ率まで織物材料を圧搾し、その後、固着工程、好ましくは熱処理を実施する。これは、通例、染料および/または剤を含有する水性液に織物材料を連続的に通過させる、連続した方法として実施する。
【0024】
固着工程は、通例、例えば60〜150℃、とりわけ90〜150℃の温度での熱処理により、実施する。
【0025】
吸尽方法は、通例、pH値が2〜9、4〜7および温度が50〜100℃、とりわけ80〜100℃の水性液から実施する。選択する液比は、広い範囲内、例えば、1:5〜1:50、好ましくは1:5〜1:30で変動することができる。
【0026】
噴霧は、従来の噴霧方法に従って実施することができる。これらの方法に従い、適用する剤を含む水性液体を織物材料上に噴霧する。水性液における剤の量は、剤の種類に依存し、多くの場合、水性液の重量に基づき、0.001重量%〜10重量%、とりわけ0.01重量%〜10重量%である。そのような噴霧方法は、とりわけ、さらなる剤、例えば、抗菌剤または帯電防止剤をカーペットのような織物材料に適用するのに好適である。そのような好ましい方法に従い、事例として、カーペットの移動方向と交差するスプレー線に複数のスプレーノズルを配設する。剤は、例えば圧力により、スプレーノズルによって水性液として適用する。
【0027】
噴霧後、通例、パディング方法のため、先に与えたような熱処理によって実行することができる固着工程を実施する。
【0028】
気泡適用により、追加的な剤を織物材料に適用することもできる。この適用については、噴霧方法のため、先に与えた先の条件および選好をすべて適用する。ただし、剤は、通例、気泡安定剤を含有し、他の慣用的な添加剤を含有することができる水性気泡の形態で適用する。そのような方法は、とりわけ、カーペットを処理するのにも好適である。
【0029】
吸尽、パディング、噴霧または気泡適用は、望ましい剤を染料剤と共に織物材料に適用するか(例えば、染色方法において)、加工方法のような他の織物に関する方法において実施することができる。
【0030】
そのような方法では、先の条件および選好を適用する。好適な染料は、分散染料、塩基性染料、酸染料、直接染料または反応性染料である。反応性染料は、とりわけ、天然ポリアミドまたはセルロース含有織物材料に好適である。直接染料は、とりわけ、セルロース含有織物材料に好適である。染料は、アクリドン、アゾ、アントラキノン、クマリン、ホルマザン、メチン、ペリノン、ナフトキノン−イミン、キノフタロン、スチリルまたはニトロ染料を包含する、異なる染料分類に属することができる。染料の混合物を使用することもできる。
【0031】
場合により、さらなる剤の適用を包含する染色方法の後、織物材料に対し、先に与えたような熱処理のような固着工程を行うことができる。
【0032】
ポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー材料は、繊維、布地、不織布、一軸もしくは二軸伸長フィルム、あるいは成形品または押出品であることができる。本方法に従った処理に有効なポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマーは、下記のポリマーを包含する:
【0033】
1.モノオレフィンおよびジオレフィンのポリマー、例えば、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリイソプレンまたはポリブタジエン、同様に、シクロオレフィン、事例として、シクロペンテンまたはノルボルネンのポリマー、ポリエチレン(場合により、架橋することできる)、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、高密度および高分子重量ポリエチレン(HDPE−HMW)、高密度および超高分子重量ポリエチレン(HDPE−UHMW)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、(VLDPE)および(ULDPE)。
【0034】
ポリオレフィン、すなわち、前項に例示するモノオレフィンのポリマー、好ましくは、ポリエチレンおよびポリプロピレンは、異なる、とりわけ下記の方法によって調製することができる:
a)(標準的には、高圧力下および昇温度での)ラジカル重合。
b)周期表のIVb、Vb、VIbまたはVIII群の一種または一種を上回る金属を通常含有する触媒を使用した触媒的重合。これらの金属は、通例、πまたはσ配位のいずれかであることができる一種または一種を上回る配位子、典型的には、酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、エステル、エーテル、アミン、アルキル、アルケニルおよび/またはアリールを有する。これらの金属錯体は、遊離している形態であるか、基材、典型的には、活性化された塩化マグネシウム、塩化チタン(III)、アルミナまたはケイ素酸化物上に固着させることができる。これらの触媒は、重合媒体において可溶性または不溶性であることができる。重合では、触媒そのものを使用するか、さらなる活性剤、典型的には、金属アルキル、金属水和物、金属アルキルハロゲン化物、金属アルキル酸化物または金属アルキルオキサンを使用することができ、前記金属は、周期表のIa、IIaおよび/またはIIIa群の元素である。活性剤は、さらなるエステル、エーテル、アミンまたはシリルエーテル基で好都合に改質することができる。これらの触媒系は、通例、Phillips、Standard Oil Indiana、Ziegler(−Natta)、TNZ(DuPont)、メタロセンまたはシングルサイト触媒(SSC)と称される。
【0035】
2.1)の下で述べたポリマーの混合物、例えば、ポリプロピレンとポリイソブチレン、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物(例えば、PP/HDPE、PP/LDPE)および異なる種類のポリエチレンの混合物(例えば、LDPE/HDPE)。
【0036】
3.モノオレフィンおよびジオレフィンの相互または他のビニルモノマーとのコポリマー、例えば、エチレン/プロピレンコポリマー、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびそれらと低密度ポリエチレン(LDPE)との混合物、プロピレン/1−ブテンコポリマー、プロピレン/イソブチレンコポリマー、エチレン/1−ブテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/メチルペンテンコポリマー、エチレン/ヘプテンコポリマー、エチレン/オクテンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキサンコポリマー、エチレン/シクロオレフィンコポリマー(例えば、COCのようなエチレン/ノルボルネン)、1−オレフィンが現場産生されているエチレン/1−オレフィンコポリマー;プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アルキルメタクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン/アクリル酸コポリマーおよびそれらの塩(アイオノマー)、同様に、エチレンとプロピレンおよびジエンとのターポリマー、例えば、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンまたはエチリデン−ノルボルネン;ならびにそのようなコポリマーの互い同士、および先に1)に述べたポリマーとの混合物、例えば、ポリプロピレン/エチレン−プロピレンコポリマー、LDPE/エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー、LDPE/エチレン−アクリル酸(EAA)コポリマー、LLDPE/EVA、LLDPE/EAAおよび代替または無作為のポリアルキレン/一酸化炭素コポリマーならびにそれらと他のポリマー、例えば、ポリアミドとの混合物。
【0037】
4.それらの水素化改質(例えば、粘着付与剤)およびポリアルキレンとデンプンとの混合物を包含する炭化水素樹脂(例えば、C−C)。
【0038】
1.)〜4.)のホモポリマーおよびコポリマーは、シンジオタクチック、イソタクチック、ヘミ−イソタクチックまたはアタクチックを包含するあらゆる立体構造を有することができ;ここで、アタクチックポリマーが好ましい。ステレオブロックポリマーも包含される。
【0039】
5.ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)。
【0040】
6.スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンのすべての異性体、とりわけp−ビニルトルエン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンおよびビニルアントラセンのすべての異性体ならびにそれらの混合物を包含する、ビニル芳香族モノマーから生じる芳香族ホモポリマーおよびコポリマー。ホモポリマーおよびコポリマーは、シンジオタクチック、イソタクチック、ヘミ−イソタクチックまたはアタクチックを包含するあらゆる立体構造を有することができ;ここで、アタクチックポリマーが好ましい。ステレオブロックポリマーも包含される。
【0041】
6a.前述のビニル芳香族モノマーならびにエチレン、プロピレン、ジエン、ニトリル、酸、無水マレイン酸、マレイミド、酢酸ビニルおよび塩化ビニルまたはアクリル誘導体およびそれらの混合物から選択されるコモノマーを包含するコポリマー、例えば、スチレン/ブタジエン、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/エチレン(共重合体)、スチレン/アルキルメタクリレート、スチレン/ブタジエン/アルキルアクリレート、スチレン/ブタジエン/アルキルメタクリレート、スチレン/無水マレイン酸、スチレン/アクリロニトリル/メチルアクリレート;高衝撃強度のスチレンコポリマーともう一つのポリマーとの混合物、例えば、ポリアクリル酸、ジエンポリマーまたはエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー;ならびにスチレンのブロックコポリマー、例えば、スチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレン、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンまたはスチレン/エチレン/プロピレン/スチレン。
【0042】
6b.とりわけ、多くの場合、ポリビニルシクロヘキサン(PVCH)と呼ばれる、アタクチックポリスチレンを水素化することによって調製されるポリシクロヘキシルエチレン(PCHE)を包含する、6.)の下で述べたポリマーの水素化から生じる水素化芳香族ポリマー。
【0043】
6c.6a.)の下で述べたポリマーの水素化から生じる水素化芳香族ポリマー。
【0044】
ホモポリマーおよびコポリマーは、シンジオタクチック、イソタクチック、ヘミ−イソタクチックまたはアタクチックを包含するあらゆる立体構造を有することができ;ここで、アタクチックポリマーが好ましい。ステレオブロックポリマーも包含される。
【0045】
これらのうちで好ましいのは、1〜3群、とりわけ、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはそれらのブレンドおよび/もしくはコポリマーである。
【0046】
処理する表面(および通例は下層材料)は、通例、オレフィン重合の結果として少なくとも10%、例えば、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%の繰り返し単位で構成される。好ましいのは、一種以上の改質剤樹脂の任意の含有量において、大部分のポリオレフィン系材料(例えば、先の1〜3群)、例えば、80〜100重量%のポリマーを含有する材料である。
【0047】
最も好ましくは、物品の表面材料がポリプロピレンまたはブレンドおよび/もしくはコポリマーからなり、プロピレン繰り返し単位が繰り返し単位の少なくとも10%、例えば、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%を構成する。
【0048】
加えて、本材料、例えば、ポリオレフィン繊維、フィラメントおよび布地は、慣用的な添加剤、充填剤ならびに/または仕上げ剤、例えば、染料、顔料、プロセス安定剤、光安定剤、例えば、紫外光吸収体および/またはヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、加工助剤および他の添加剤を含有することができる。
【0049】
例えば、本発明に従って処理されるポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品は、場合により、約0.01〜約10重量%、好ましくは約0.025〜約5重量%、とりわけ約0.1〜約3重量%の多様な従来の安定剤または添加剤、例えば、以下に列挙する材料またはそれらの混合物を含有することもできる。
【0050】
1.酸化防止剤:
1.1.アルキル化モノフェノール、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、
1.2.アルキルチオメチルフェノール、例えば、2,4−ジオクチルチオメチル−6−tert−ブチルフェノール、
1.3.ハイドロキノンおよびアルキル化ハイドロキノン、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、
1.4.トコフェロール、例えば、α−トコフェロール、
1.5.ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、例えば、2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、
1.6.アルキリデンビスフェノール、例えば、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、
1.7.O−、N−およびS−ベンジル化合物、例えば、3,5,3’,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジベンジルエーテル、
1.8.ヒドロキシベンジル化マロネート、例えば、ジオクタデシル−2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンジル)マロネート、
1.9.芳香族ヒドロキシベンジル化合物、例えば、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、
1.10.トリアジン化合物、例えば、2,4−ビス(オクチルメルカプト)−6−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、
1.11.ベンジルホスホン酸、例えば、2,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジメチル、
1.12.アシルアミノフェノール、例えば、4−ヒドロキシラウリン酸アニリド、
1.13.一価または多価アルコールとのβ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、
1.14.一価または多価アルコールとのβ−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸のエステル、
1.15.一価または多価アルコールとのβ−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、
1.16.一価または多価アルコールとの3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル酢酸のエステル、
1.17.β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、例えば、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミド、
1.18.アスコルビン酸(ビタミンC)、
1.19.アミン系酸化防止剤、例えば、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン。
【0051】
2.UV吸収体および光安定剤:
2.1.2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、
2.2.2−ヒドロキシベンゾフェノン、例えば、4−ヒドロキシ誘導体、
2.3.置換および非置換安息香酸のエステル、例えば、4−tert−ブチル−フェニルサリチル酸、
2.4.アクリレート、例えば、エチルα−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、
2.5.ニッケル化合物、例えば、2,2’−チオ−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]のニッケル錯体、
2.6.立体ヒンダードアミン、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバシン酸。
2.7.オキサミド、例えば、4,4’−ジオクチルオキシオキサニリド、
2.8.2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、例えば、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル[または−4−ドデシル/トリデシルオキシフェニル])−1,3,5−トリアジン。
【0052】
3.金属失活剤、例えば、N,N’−ジフェニルオキサミド。
【0053】
4.亜リン酸およびホスホナイト、例えば、亜リン酸トリフェニル。
【0054】
5.ヒドロキシルアミン、例えば、N,N−ジベンジルヒドロキシルアミン。
【0055】
6.ニトロン、例えば、N−ベンジル−アルファ−フェニルニトロン。
【0056】
7.チオ相乗剤、例えば、チオジプロピオン酸塩ジラウリル。
【0057】
8.過酸化物スカベンジャー、例えば、β−チオジプロピオン酸のエステル。
【0058】
10.塩基性補助安定剤、例えば、メラミン。
【0059】
11.核形成剤、例えば、無機物質、例えば、滑石、金属酸化物。
【0060】
12.充填剤および強化剤、例えば、炭酸カルシウム、ケイ酸塩。
【0061】
13.他の添加剤、例えば、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、顔料、レオロジー添加剤、触媒、流動制御剤、蛍光増白剤、防炎剤、帯電防止剤および発泡剤。
【0062】
14.ベンゾフラノンおよびインドリノン、例えば、米国特許第4,325,863号;米国特許第4,338,244号;米国特許第5,175,312号;米国特許第5,216,052号;米国特許第5,252,643号;ドイツ特許第A−4316611号;ドイツ特許第A−4316622号;ドイツ特許第A−4316876号;欧州特許第A−0589839号、欧州特許第A−0591102号;欧州特許第A−1291384号に開示されているもの。
【0063】
有効な安定剤および添加剤のより詳細については、参照により本明細書に組み入れられる、国際公開公報第04/106311号の55〜65ページの一覧表も参照されたい。
【0064】
材料は、さらに、親水性向上添加剤、例えば、国際公開公報第02/42530号に開示されているものを含有することができる。
【0065】
本発明の方法に従って処理される物品は、例えば、繊維、布地、不織布、一軸もしくは二軸伸長フィルムまたは成形もしくは押出品であることができる。好ましいのは、耐久性のある湿潤性を呈するポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマーの織または不織繊維である。繊維は、なかんずく衛生物品、例えば、おむつ、婦人保健製品および失禁ケア製品に有効である。
【0066】
本発明は、成分の一つが本発明に従ったポリオレフィンである、溶融押出された二成分繊維にも適用可能である。
【0067】
ポリオレフィンの不織布は、カーディングされた繊維構造を有するか、繊維またはフィラメントが無作為配列に配向するマットを含むことができる。布地は、布地から作製される物品の最終使用に依存し、水流交絡もしくはスパンレース技術を包含する数々の公知の方法の任意の一つまたはエアレイドもしくはメルトブローフィラメント、バット延伸、ステッチボンドなどによって形成することができる。
【0068】
想定される種類の湿潤可能な布地に最も有効であるスパンボンドのフィラメントサイズは、約1.0〜約3.2デニールである。メルトブローされた繊維は、典型的には、15ミクロン未満の繊維直径を有し、想定される用途のため、最も典型的には、5ミクロン未満の繊維直径であり、サブミクロンレベルまで下がった範囲にわたる。複合構造体のウェブを広い様々な基本重量において加工することができる。
【0069】
本発明は、さらに、織布または不織布、例えば、ポリプロピレン布地を対象とする。それは、従来の織物方法における製織(weaving)または編成(knitting)のための撚糸(thread)または糸(yarn)も対象とする。
【0070】
本発明の繊維またはフィラメントから生成される湿潤可能な布地は、特に、例えば、特に、単回使用おむつ、トレーニングパンツ、婦人保健製品(feminer hygiene product)または失禁ケア製品のような衛生物品の皮膚に接触する内張り布地として有効である。布地は、専用品または家庭物品、例えば、湿潤ふきん(wet wipe)および乾燥ふきん(dry wipe)、創傷包帯、外科用ケープ(surgical cape)、ろ過器内側(filter medial)、電池セパレータ等においても実用性も有する。
【0071】
おむつの構造は、例えば、参照により本明細書にすべて組み入れられる、米国特許番号第5,961,504号;第6,031,147号および第6,110,849号に記載されている。
【0072】
加えて、多くの場合、溶融押出されるポリオレフィンフィルムに湿潤性を付与することが所望される。そのようなフィルムは、有孔形態において衛生物品のカバーシートとして広く使用される。
【0073】
衛生物品のカバー素材のため、共に結合された二つ以上の布地の層を使用することにより、ウェットバック特性の改良を改良することができる。
【0074】
本発明の布地は、約0.5〜約10メガラドのガンマ照射に曝露することにより、殺菌することができる。ガンマ照射での殺菌は、病院の衣服等に用いられる。
【0075】
本発明に従って調製されたポリオレフィン織および不織繊維および布地は、優れた印刷適性も呈する。それらの本来的に疎水性である性質の結果として、ポリオレフィン繊維および布地は、印刷適正性、換言すれば、標準の印刷技術に対する問題を提示し得る。本発明に従って処理された材料は、これらの問題も克服する。
【0076】
本発明の材料は、微孔膜、有孔フィルムまたは網の形態であることができることも企図される。換言すれば、繊維、フィラメントまたは布地ではない他の湿潤可能なポリオレフィン物品である。
【0077】
本発明は、ポリオレフィン繊維、フィラメントまたはそこから作製される織もしくは不織布に永久的な湿潤性を付与するための方法にも関し、形成工程、例えば、複数の繊維の溶融押出および繊維の冷却後における熱可塑性ポリオレフィンの処理を含む。好ましくは、前記繊維を複数の連続したフィラメントに延伸し、前記フィラメントからウェブを形成し、フィラメントを少なくとも一部結合させ、布地を形成する。好ましくは、繊維またはフィラメントは、ポリオレフィンを含む二成分繊維またはフィラメントである。
【0078】
下記の試験方法および例は、例証のみを目的とするものであり、いかなる任意の様式においても本発明を限定するものとは解釈されない。室内温度(r.t.)は、20〜25℃の範囲の温度を表現し;一晩は、12〜16時間の範囲の時間期間を指す。パーセントは、特に指示がない限り重量による。
【0079】
例または各所で使用する略号:
M リットル当たりモルでの濃度
w/v g/mlで与えられるパーセント(重量/体積)
DMSO ジメチルスルホキシド
トリス/HCl トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(CAS番号:1185−53−1)
【0080】
上昇高さ(rising height: RH)
【0081】
上昇高さの決定(DIN53924から改質)を使用し、ポリプロピレンの酵素処理による親水性の増加を定量化する。測定のための水槽の直上における垂直地点に固定された棒に4×6cmの布地試験片を固着させる。試験片の一端を水に1cm浸漬する。特に断りない限り、各試験片の水レベルを浸漬から10分後に検出する。
【0082】
液滴試験
【0083】
液滴(20μLの蒸留水)を材料の表面に設置する。液滴が消失するまでの時間を検出する。
【0084】
水への接触角度(CA)
【0085】
接触角度測定は、表面エネルギおよび固体と液体液滴との間の表面張力に関する表面分析の特性付け方法である。接触角度は、固体表面上に載る液体液滴の形状を記載し、(液滴形状から固体表面の接触部に延伸される)接線と固体表面との間の角度として定義される。測定は、固体表面の結合エネルギおよび液体滴の表面張力を調査するための情報を提供し、表面の親水性の目安となる。
【0086】
P450酵素を定量化するための一酸化炭素(CO)結合アッセイ
【0087】
この方法を使用し、色素体ヘム基を含有する機能的なP450酵素を定量化する。測定のため、3mLのタンパク質溶液(30mM、1M NaClのトリス/HCl緩衝液内)をプラスチック管にピペットで取る。10μLのメチルビオロゲン二塩酸塩水和物(1,1’−ジメチル−4,4’−ビピリジニウム二塩酸塩水和物、CAS番号1910−42−5);蒸留水に1%(w/v))を添加する。この溶液を酸化還元指示薬として使用する。以後、小さい量のナトリウムハイドロサルファイトを添加する。混合後、試料を二部に分ける。試料の一つを通してCOを1分間泡立てる(秒当たり約1泡)。スペクトルは、390nm〜500nmとする。スペクトルのアッセイは、すべて好気条件下で実施する。シトクロムP450濃度を下記の式1に従って決定する。
【数1】


c nmol/mLでの酵素濃度
A 450または490nmでの吸収度
f 希釈倍率
ε 減衰係数、91[mM-1 cm-1
d キュベットの厚さ、[cm]
1000 μmol/mLからnmol/mLへの変換
【0088】
P450 BM−3変異体の酵素生成および精製
【0089】
以下に記載する適用例では、ポリオレフィン系材料に酸素を組み入れるバクテリア系酵素の例として、Bacillus megaterium由来の異なるモノオキシゲナーゼを選定する。P450 BM−3野生体酵素(NCBI J04832)および変異体139−3(Gliederら、2002)を含有するE. coli DH5αの二つの異なる組換え菌株を培養し、同様に、大腸菌DH5αを対照とする。融解した細胞を5mLのトリス/HCl緩衝液で懸濁し、その後、3分間にわたって超音波分解する。粗懸濁液を18000gで60分間にわたって遠心分離させる。結果の上清を緩衝液で25mLの最終的な体積まで希釈し、その後、無菌ろ過器(0.5μm)でろ過する。モノオキシゲナーゼを陰イオン交換クロマトグラフィで精製する:
カラム:HiPrep(登録商標)16/10 QFF、17mL(Amersham Biosciences)
流動率:5mL/min
溶離剤A:トリス/HCl緩衝液、30mM、pH7.5
溶離剤B:トリス/HCl緩衝液、30mM、pH7.5、1M NaCl
【0090】
1回当たり10ml溶液の試料体積を使用する。溶出中、280nm(タンパク質)および417nm(ヘム)での吸収度を連続的に監視することにより、モノオキシゲナーゼを検出する。NaCl濃度を増加させることにより、酵素を溶出させる。最も活性な留分(茶色に着色)を溜め、−20℃で凍結する。
【0091】
Beauveria bassianaでの酵素生成
【0092】
以下に記載する適用例では、ポリオレフィン系材料に酸素を組み入れる菌酵素の例として、Beauveria bassianaからの酵素調製を選定する。Beauveria bassianaを3日間にわたって育成した後、培養物からろ過によって集菌する。菌糸体を4分間にわたって細胞ホモジナイザーで超音波に当て、処理する。7000rpmでの遠心分離後、上清をろ過し、その後、−20℃で凍結する。
【0093】
酵素活性
【0094】
p−ニトロフェノキシオクタンのω−オキシオクタンおよび色素体p−ニトロフェノレートへの変換に基づき、モノオキシゲナーゼ活性を測定する。p−ニトロフェノレート形成を410nmで測定する。50μLの酵素溶液およびDMSOにおける8−pNAの50mM溶液3μLを910μLのリン酸カリウム緩衝液(50mM、pH8.0)に添加した後、6mM NADPHの水性溶液30μLを添加することにより、反応を開始させる。940μLの緩衝液を参照として使用する。
【数2】


pNA モノオキシゲナーゼ活性
ΔA 秒当たりの吸収度[s-1
f1 キュベットでの酵素の希釈倍率:19、86
f2 1/s→1/minの変換、60
1000 mmol/mLからμmol/mLへの変換倍率
ε 減衰係数、13200[M-1 cm-1
d キュベットの厚さ、1[cm]
【0095】
COによる阻害
【0096】
閉じたフラスコ内の3mlの酵素溶液(1M NaCl、12mLのトリス/HCl緩衝液内)について、まず窒素を介して酸素を除去し、その後、半時間にわたってCOを媒体に放出することにより、阻害を行う。その後、先(RH試験)に記載したような試験片(4×6cm)を添加する。2時間にわたり、水槽(37℃)で反応を実施する。
【0097】
XPS
【0098】
X線光電子分光(XPS)では、固有エネルギのX線を試料に照射し、表面を離れる電子の流速を測定することに関わる。X線光電子分光により、試料の表面領域の組成および電子的な状態を調査することができる。
【0099】
適用例
【0100】
例1
【0101】
ポリプロピレン布地を4×6cm片に裁断し、100mLのエーレンマイヤーフラスコ内で、組換えE. coli DH5中で産生したBacillus megaterium BM−3野生体および変異体139−3由来の2nM P450および0.31mM NADPHを含有するpH7.5溶液である10mLの30mMトリス/HCl緩衝液で処理する。酵素処理(30℃で10h)後、布地をNaCO(1g/L、pH9.5)で2時間および蒸留水で1時間洗浄する。それらを熱室内で一晩、100℃で乾燥させる。先に記載したように上昇高さを決定すると、変異型139−3が3.7cmおよび野生型WT18−6が0.8cmとなる。
【0102】
例2
【0103】
ポリプロピレン布地を4×6cm片に裁断し、100mLのエーレンマイヤーフラスコにおいて、組換えE. coli DH5中で産生したBacillus megaterium BM−3変異体139−3由来の2nM P450を含有するpH7.5溶液である4.5mLの30mMトリス/HCl緩衝液で処理する。並行して、COで阻害した酵素を使用し、対照とする。5時間にわたる酵素処理の後、布地をNaCO(1g/L、pH9.5)で2時間および蒸留水で1時間洗浄する。それらを熱室内で一晩、100℃で乾燥させる。先に記載したように上昇高さを決定する。
【0104】
表1の結果は、COで阻害された酵素が何も影響を示さないことから、親水化がモノオキシゲナーゼ活性によることを明確に示す。
表1:BM−3変異体139−3由来の2nM P450を使用した、異なる温度でのポリプロピレンの酵素的親水化
【表1】

【0105】
例3
【0106】
ポリプロピレン布地を4×6cm片に裁断し、100mLのエーレンマイヤーフラスコにおいて、組換えE. coli DH5中で産生したBacillus megaterium BM−3変異体139−3由来の2nM P450を含有するpH7.5溶液である4mLの30mMトリス/HCl緩衝液で処理する。37℃での酵素処理の後、布地をNaCO(1g/L、pH9.5)で2時間および蒸留水で1時間洗浄する。それらを熱室内で一晩、100℃で乾燥させる。10分後の上昇高さ(RH)および液滴試験(DT)の結果を先に記載したように決定する。
【0107】
表2の結果は、酵素濃度を一定としたポリプロピレンの親水化に対するインキュベーション時間の依存性を示す。
表2:2nM P450 BM−3変異体139−3を使用した、異なるインキュベーション時間でのポリプロピレンの酵素的親水化
【表2】

【0108】
例4
【0109】
ポリプロピレン布地を4×6cm片に裁断し、100mLのエーレンマイヤーフラスコにおいて、Beauveria bassianaからの15mLの酵素調製を含有する30mLの32mMリン酸緩衝液溶液pH4.0で処理する。10時間にわたる37℃での酵素処理の後、布地をNaCO(1g/L、pH9.5)で2時間および蒸留水で1時間洗浄する。それらを熱室内で一晩、100℃で乾燥させる。先に記載したように上昇高さを決定すると、4.8cmである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品の表面の親水性を向上させるための方法であって、酸化還元酵素から選択される酵素で表面を処理することを特徴とする方法。
【請求項2】
酵素が天然または改質された着色性のバクテリア系、菌、酵母、植物または哺乳類の全細胞調製、細胞溶解物、抽出物または精製酵素の酸化還元酵素から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酵素が、天然または改質されたモノオキシゲナーゼ、とりわけシトクロムP450ファミリーおよび/またはEC1.13もしくはEC1.14として類別される酵素から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
酵素での処理が、水の存在下においてpH3と12の間、とりわけ約5と約9の間、および30〜100℃の温度範囲で実施される、請求項1、2または3記載の方法。
【請求項5】
酵素が、処理するポリマー材料のkg当たりで0.001g〜10gの酵素タンパク質の量または処理する表面の平方メートル当たりで10−5〜0.1gの酵素タンパク質の量で使用される、請求項1、2または3記載の方法。
【請求項6】
物品の表面材料が、ポリエチレンまたはポリプロピレン、あるいはポリエチレンおよび/もしくはプロピレン繰り返し単位を含むコポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
物品の表面材料が、ポリプロピレンまたはプロピレン繰り返し単位を含むコポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
物品が、繊維、布地、不織布、一軸もしくは二軸伸長フィルム、あるいは成形品または押出品である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマーが、好ましくは、染料、顔料、プロセス安定剤、紫外光吸収体、ヒンダードアミン光安定剤、さらなる光安定剤、酸化防止剤、加工助剤、表面改質剤および他の添加剤から選択される一種以上の添加剤、充填剤ならびに/または仕上げ剤を含有する、請求項1、6または8記載の方法。
【請求項10】
酵素での処理後、好ましくはpH>8の水性溶液により、表面に対して洗浄工程が行われる、請求項1、2または3記載の方法。
【請求項11】
処理された表面に対し、続いて、一種以上の好適な剤の適用により、染色、印刷、抗菌剤または難燃剤特性、帯電防止特性の付与から選択される一種以上の加工工程が行われる、請求項1または8記載の方法。
【請求項12】
請求項1に従った方法において入手可能なポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品。
【請求項13】
水への接触角度が未処理物品の一つよりも少なくとも10°小さいことを特徴とする、請求項12記載のポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品。
【請求項14】
ポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品の表面の親水性を向上させるための酸化還元酵素の使用。
【請求項15】
衛生物品、撚糸、糸、布地、織物、衣服、専門品もしくは家庭物品、印刷もしくは染色されたカバーフィルムもしくはパッケージフィルムを調製するための、請求項11記載のポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品または請求項1記載の方法に従って得られるポリオレフィンまたはポリオレフィンコポリマー物品の使用。

【公表番号】特表2009−544781(P2009−544781A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521218(P2009−521218)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057357
【国際公開番号】WO2008/012236
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】