説明

ポリオレフィンへの良好な接着性を有するホットメルト接着剤

【課題】ポリオレフィンへの良好な接着性を有するホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】本発明は、25℃で固体である熱可塑性ポリオレフィン(P)少なくとも1種と、式(I)または(II) のアミド(A)少なくとも1種とを含むホットメルト接着剤組成物に関する。これらのホットメルト接着剤組成物は、特にポリオレフィンフィルムの接着結合に好適である。より特に、ホットメルト接着剤で結合された基材(S)とポリオレフィンとの組立体を形成させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤、より特にポリオレフィンフィルムの接着用の接着剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
基剤として、ポリオレフィンは非常に接着が困難である。しかし、ポリオレフィンは特に、建築業界において非常に重要な材料であるため、これらを確実に接着可能であることはなお一層重要である。このため、一方では、相当長い期間にわたって、ポリオレフィンをより接着し易くするための試みが、適切な表面改質法、例えば、さまざまなプラズマ法または気相フッ素化法などによってなされてきた。さらに、ポリオレフィンの接着結合を確実にすることが意図された多様なプライマーが開発されてきた。これにより、ポリオレフィンフィルムの接着結合において、例えば、ポリウレタンホットメルト接着剤と相当するポリオレフィンプライマーとを用いて非常に良い結果を達成することが可能になった。
【0003】
しかし、接着剤の分野においても、ポリオレフィンの信頼性のある接着結合を実現するための努力がなされてきた。ホットメルト接着剤、特に、より詳細には、熱可塑性ポリオレフィンをベースとするホットメルト接着剤は特に、この目的にとりわけ好適である。
【0004】
米国特許第5,994,474号には、シラン-グラフト化無定形ポリ-α-オレフィンをベースとするホットメルト接着剤が記載されている。
【0005】
製造、機械加工、および適用の過程において、これらの接着剤のために利用される道具は、多くの場合、硬化した接着剤が付着することによって汚損され、あるいは機能が損なわれる。この種の付着により、特に、ローラー、回転部品(例えば、シャフトまたはロールなど)、および熱可塑性接着剤を形成させることが意図された部分(例えば、押出ダイス、圧力ロール、またはラミネート道具など)が破損される。したがって、このような付着を防止するために、これらの重要な道具の表面は、テフロン(登録商標)でコーティングされていることが多い。
しかし、ポリオレフィンへの良好な接着を提供することが意図された接着剤は、残念ながら、このようなテフロン(登録商標)で覆われた表面にも顕著な接着性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,994,474号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、一方ではポリオレフィンへの良好な接着性を示すが、他方ではテフロン(登録商標)またはテフロン(登録商標)で覆われた表面にほとんど接着しないかまたは全く接着しない接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、請求項1に記載のホットメルト接着剤が、この目的を達成可能であることが見いだされた。
【0009】
本発明のさらなる態様は、請求項14に記載の、ポリオレフィンの接着結合のためのホットメルト接着剤の使用、請求項16に記載の組立体、およびこのような組立体を製造するための請求項19に記載の方法である。
本発明の好ましい実施態様は、従属する請求項の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、ポリオレフィンフィルム(PF)および基材(S)、ならびに、ポリオレフィンフィルムと基材(S)との間に配置され、これら2つの基材を互いに接着している、ホットメルト接着剤組成物(K)および水の影響によって架橋したホットメルト接着剤組成物(K’)を含む組立体(1)の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
25℃で固体である熱可塑性ポリオレフィン(P)少なくとも1種と、
25℃で固体である熱可塑性ポリエステル(TPE)少なくとも1種と、
下記式(I)または(II):
【化1】

のアミド(A)少なくとも1種と
を含む、ホットメルト接着剤組成物に関する。
【0012】
上記式中、R1は、H、C1〜C4アルキル基、またはベンジル基であり、R2は、飽和または不飽和のC8〜C22アルキル基である。
【0013】
本明細書において「不飽和」は、「炭素-炭素の二重結合または三重結合を含む」ことを意味する。これらの基は、複数の不飽和を含んでいてよい。すなわち、こうした二重結合および/または三重結合が、同一の基内に2つ以上存在していてもよい。このような場合、これらの多重結合は、互いに共役して存在していてもよく、あるいは互いに孤立して存在していてもよい。
【0014】
R1基およびR2基は、互いに独立に、分岐していても分岐していなくてもよい。しかし、これらの基は分岐していないことが好ましい。特に、アミド基の直接隣接位にある分岐は、不利である。したがって、アミド基の窒素原子または炭素原子に直接結合した炭素は、水素原子を有する炭素原子、より特にメチレン炭素であることが好ましい。式(I)のアミドのR2基は、奇数の炭素原子を有することが好ましい一方、式(II)のアミドのR2基は、偶数の炭素原子を有することが好ましい。
【0015】
アミド(A)は、40〜150℃の融点、好ましくは50〜110℃の融点を有することが好ましい。
【0016】
1つの実施態様では、アミド(A)は、式(I)のアミドである。
【0017】
好ましい式(I)のアミド(A)は、置換基R1としてHを有する。この種類の第一級アミド化合物は、当業者に用語「脂肪酸アミド」で知られている。しかし、全ての脂肪酸アミドが等しく好適であるわけではない。特に、22個以上の炭素原子のアルキル基を有する脂肪酸は好ましくない。
【0018】
この種の脂肪酸アミドR2CONH2は、例えば、相当する脂肪酸R2COOHとアンモニアとの反応によって得ることができる。
【0019】
R1がC1〜C4アルキル基またはベンジル基である式(I)のアミド(A)は、例えば、相当する脂肪酸アミドR2CONH2をアルキルハロゲンを用いてN-アルキル化することによって合成することができ、あるいはC1〜C4アルキルアミンまたはベンジルアミンを相当する脂肪酸R2COOHと反応から得ることができる。
【0020】
さらなる実施態様では、アミド(A)は、式(II)のアミドである。このようなアミドは、脂肪酸アミンR2NH2と、各カルボン酸R1COOHまたは各酸クロライドR1COClとの反応によって合成することができる。この目的のために用いる脂肪酸アミンは、典型的には、相当する脂肪酸アミドからの還元によって、または直接相当する脂肪酸から合成される。
【0021】
アミド(A)は、異なる長さを有するR2基、R3基、またはR4基を有するアミドの工業的混合物、より好ましくは脂肪酸アミドの工業的混合物であることが好ましい。
【0022】
1つの実施態様では、R2基は、より特に不飽和C8〜C20アルキル基、特にCn〜C2n-1アルキル基、Cn〜C2n-3アルキル基、またはCn〜C2n-5アルキル基(式中、n = 8〜20である)、好ましくはオレフィン性不飽和アルキル基である。
【0023】
別の実施態様では、R2基は、C8〜C22アルキル基、より特にC15〜C22アルキル基である。
【0024】
特に好ましい式(I)のアミド(A)は、ラウリル-、ミリスチル-、パルミチル-、ステアリル-、アラキジル-、ツベルクロステアリル-(tuberculostearyl-)、パルミトレイル、オレイル-、リノレイル-、リノレニル-、エレオステアリル-、エルシル-、およびアラキドニル-アミドからなる群から選択される。
【0025】
好ましい式(I)のアミド(A)は、より特に、ステアリルアミドまたはエルカミドである。最も好ましい式(I)のアミド(A)は、エルカミドである。
【0026】
ホットメルト接着剤組成物は、25℃で固体である熱可塑性ポリオレフィン(P)少なくとも1種をさらに含む。
【0027】
好ましい熱可塑性ポリオレフィン(P)は、ポリ-α-オレフィンである。
【0028】
1つの実施態様では、熱可塑性ポリオレフィン(P)は、アタクチックポリ-α-オレフィン(APAO)(P1)である。これらのアタクチックポリ-α-オレフィンは、α-オレフィン、より特に、エテン、プロペン、1-ブテンの、例えばZiegler触媒を用いる重合によって合成することができる。α-オレフィンのホモポリマーまたはコポリマーが合成され得る。他のポリオレフィンとは対照的に、これらは無定形構造を有する。好ましくは、熱可塑性ポリオレフィン(P)は、90℃を超える軟化点(例えば、DIN EN 1427に準拠した環球法によって測定される)、より特に90℃〜130℃の軟化点を有する。分子量Mnは、より特に、7000〜25000 g/モルである。
【0029】
さらなる好ましい実施態様では、熱可塑性ポリオレフィン(P)は、シラン-グラフト化ポリ-α-オレフィン(P2)、より特に、シラン-グラフト化アタクチックポリ-α-オレフィン(APAO)である。
【0030】
この種のシラン-グラフト化ポリ-α-オレフィンは、当業者に周知である。これらは、例えば、不飽和シラン(例えば、ビニルトリメトキシシランなど)をポリ-α-オレフィン上にグラフト化することによって得ることができる。このようなシラン-グラフト化ポリ-α-オレフィンの合成についての詳細な記載は、米国特許第5,994,747号および独国特許出願公開第4000695号に開示されており、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0031】
加えて、シラン-グラフト化ポリ-α-オレフィンとして、メタロセン触媒によって得られるシラン-グラフト化ポリ-α-オレフィン、より特に、この種のシラン-グラフト化ポリプロピレンホモポリマーまたはポリエチレンホモポリマーが好ましい。
【0032】
特に好ましくは、ホットメルト接着剤組成物は、上述した少なくとも1種のアタクチックポリ-α-オレフィン(APAO)(P1)と、上述した少なくとも1種のシラン-グラフト化ポリ-α-オレフィン(P2)とを、熱可塑性ポリオレフィン(P)として含む。特に好ましくは、アタクチックポリ-α-オレフィン(APAO)(P1)のシラン-グラフト化ポリ-α-オレフィン(P2)に対する重量比は、5:1〜1:5、好ましくは1:1〜1:4である。
【0033】
用いるアミド(A)の量は、ホットメルト接着剤組成物に基づいて5.0重量%以上、より特に5.0重量%〜20.0重量%、好ましくは7.0重量%〜15.0重量%となる量であることが有利である。
【0034】
用いる熱可塑性ポリオレフィン(P)の量は、ホットメルト接着剤組成物に基づいて50重量%以上、より特に50重量%〜95重量%、好ましくは60重量%〜80重量%となる量であることが有利である。
【0035】
ホットメルト接着剤組成物は、25℃で固体である熱可塑性ポリエステル(TPE)少なくとも1種をさらに含有し、より特に、ホットメルト接着剤組成物に基づいて5重量%〜30重量%、好ましくは7重量%〜15重量%の量でさらに含有する。
【0036】
この熱可塑性ポリエステル(TPE)は、25℃で固体である。熱可塑性ポリエステル(TPE)としては、結晶性、好ましくは芳香族性の熱可塑性ポリエステル(TPE)が好ましい。特に好適な熱可塑性ポリエステル(TPE)は、ポリカプロラクトンコポリエステルウレタンである。
【0037】
これらは、より特に、15 g/10分を超える、好ましくは25〜100 g/10分(170℃、2.16 kg)のメルトフローインデックス(DIN 53735)を有し、5 mg KOH/g未満、好ましくは4 mg KOH/g未満のOH価を有する。
【0038】
必要に応じて、さらなる熱可塑性ポリマーを存在させることも可能である。これらは、より特に、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、酢酸ビニル、高級カルボン酸のビニルエステル、および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーのホモポリマーまたはコポリマーである。このような追加の熱可塑性ポリマーとしては、エチレン-ビニルアセテートコポリマーが特に好適である。
【0039】
ホットメルト接着剤組成物は、さらに好ましくは、シラン基の反応を触媒する少なくとも1種の触媒を含み、より特に、ホットメルト接着剤組成物に基づいて0.01重量%〜1.0重量%、好ましくは0.1重量%〜0.5重量%の量で含む。このような触媒には、より特に、有機スズ化合物、好ましくはジブチルスズジラウレート(DBTL)が含まれる。
【0040】
この種の触媒は、特にホットメルト接着剤組成物が、シラン基、より特に、シラン-グラフト化ポリ-α-オレフィン(P2)の形態のシラン基を含む場合に用いられることは、当業者に明らかである。
【0041】
さらに、ホットメルト接着剤組成物は、有利には、さらなる成分を含有する。さらなる成分は、より詳細には、可塑剤、接着促進剤、UV吸収剤、UV安定剤および熱安定剤、蛍光増白剤、殺菌剤、顔料、染料、充填剤、および乾燥剤を包含する群から選択される成分である。
【0042】
ホットメルト接着剤組成物がシラン-グラフト化ポリ-α-オレフィン(P2)を熱可塑性ポリオレフィン(P)として含む場合、シラン基は、水、より特に大気中の湿気の形態の水の影響の結果として加水分解を受けて、シラノール基(-SiOH)を形成し、次いでこのシラノール基が互いに反応してシロキサン基(-Si-O-Si-)を形成して接着剤組成物の架橋をもたらす。この種のホットメルト接着剤組成物は、反応性ホットメルト接着剤と呼ばれる。
【0043】
したがって、少なくともこれらの、シラン-グラフト化ポリ-α-オレフィン(P2)を含有するホットメルト接着剤組成物は、可能な限り乾燥した原料を用いて調製し、製造、貯蔵、および適用の際には接着剤を可能な限り水または大気中の湿気との接触から保護することを確実にすることが有利である。
【0044】
原則として、調製は、ホットメルト接着剤の当業者に公知の従来の方法で行う。
【0045】
ホットメルト接着剤組成物は、熱可塑性成分の溶融によって、加熱すると液化する。ホットメルト接着剤組成物の粘度は、適用温度に適合させるべきである。適用温度は、通常、100℃〜200℃である。この温度で、接着剤を効果的に加工することができる。この温度範囲における粘度は、好ましくは2000〜50000 mPa・秒である。粘度が大幅に高いと、適用が困難になる。粘度が大幅に低いと、接着剤が薄くなりすぎ、適用するとすぐに、冷却の結果として固化する前に、接着剤が接着されるべき材料の表面から流れ落ちてしまう。
【0046】
冷却の結果として起こる接着剤の固化および圧密により、強度の急速な増加と、接着結合された組立体の高い初期接着強度とがもたらされる。接着剤を用いる場合には、接着剤がまだ急速に冷却されていない時間内に接着が起こること、言い換えれば、接着剤がまだ液体である間、あるいは少なくともまだ粘着性があり変形可能な間に接着が行われることを確実にすることが必要である。ホットメルト接着剤組成物が反応性である場合、すなわち、ホットメルト接着剤組成物がシラン-グラフト化ポリ-α-オレフィン(P2)を含有する場合には、接着剤は、冷却後でも、水、より特に大気中の湿気の形態の水の影響下で架橋を継続し、したがって、通常数時間または数日である短期間の間機械的強度が増加し続ける。非反応性ホットメルト接着剤組成物とは対照的に、反応性ホットメルト接着剤組成物は、可逆的に加熱して再び液化させることはできない。したがって、シラン-グラフト化ポリ-α-オレフィン(P2)の使用は、より特に、接着が損なわれることなく、接着した組立体がその修理の過程またはその寿命の間に高温にさらされる用途において特に有利である。シラン-グラフト化ポリ-α-オレフィン(P2)の使用は、その架橋に起因して、接着剤のクリープが顕著に少ない点においても有利である。
【0047】
上述したホットメルト接着剤組成物を用いて、ポリオレフィンフィルムの接着結合にすぐれた効果をもたらすことができることが判明した。より特に好ましくは、ホットメルト接着剤組成物を、ポリオレフィンフィルムの接着結合のためのラミネート用接着剤として使用することができる。
【0048】
本発明のさらなる態様は、ポリオレフィンフィルム(PF)と、上述したホットメルト接着剤組成物(K)および(ホットメルト接着剤組成物がシラン-グラフト化ポリ-α-オレフィン(P2)を含有する場合には)水の影響により架橋したホットメルト接着剤組成物(K’)と、基材(S)とを含む組立体に関する。
【0049】
この組立体において、ホットメルト接着剤組成物または架橋したホットメルト接着剤組成物は、ポリオレフィンフィルムと基材(S)との間に配置される。
【0050】
図1は、ポリオレフィンフィルム(PF)および基材(S)、ならびに、ポリオレフィンフィルムと基材(S)との間に配置されてこれら2つの基材を互いに接着する、ホットメルト接着剤組成物(K)および水の影響によって架橋したホットメルト接着剤組成物(K’)を含む、この種の組立体(1)の概念的に表す。
【0051】
「ポリオレフィンフィルム」は、より特に、0.05ミリメートルから5ミリメートルの厚さの可撓性の平滑なポリオレフィンであって、巻き上げることができるものを意味する。したがって、1 mm未満という厚さの厳格な意味の「フィルム」だけでなく、トンネル、屋根、またはスイミングプールをシールするために通常使用される、典型的に1 mm〜3 mmの厚さ、特別な場合には最高で5 mmまでであって5 mmを超えない厚さのシーリング膜も含まれる。この種のポリオレフィンフィルム(PF)は、典型的には、塗布、キャスティング、カレンダー加工、または押出によって製造され、通常、ロールとして商業的に入手可能であるかまたはその場で調製される。これらは、単層構造であっても多層構造であってもよい。ポリオレフィンフィルムも、他の添加剤および処理剤、例えば、充填剤、UV安定剤および熱安定剤、可塑剤、滑剤、殺菌剤、難燃材、酸化防止剤、顔料(例えば、酸化チタンまたはカーボンブラック)、および染料を含んでいてよいことは、当業者に明らかである。言い換えれば、用語「ポリオレフィンフィルム」は、ポリオレフィン100%からなるものではないフィルムにも適用される。
【0052】
基材(S)は、多くの場合、支持体とも呼ばれ、様々な種類および性質のものであってよい。基材は、例えば、金属、塗装された金属、プラスチック、木材、木材をベースとする材料、または繊維材料であってよい。基材は、固体であり、形作られた物体であることが好ましい。
【0053】
より特に、基材(S)は、繊維材料、より特に、天然繊維材料である。
【0054】
必要に応じて、基材(S)の表面は、予め処理されていてよい。このような前処理は、より特に、洗浄またはプライマーの適用からなっていてよい。しかし、好ましくは、プライマーの適用は必要とされない。
【0055】
記載した組立体は、工業的製造品、より特に屋内装備品、好ましくは輸送手段の装備の部品、または家具部門の物品であることが好ましい。
【0056】
車両、より特に自動車の内装用部品の製造のための使用には、特に重要性がある。このような車両の内装用部品の例は、ドアサイド部品、スイッチパネル、手荷物棚、ルーフパネルライニング、スライディングルーフパネルライニング、センター・コンソール、グローブ・ボックス、サンバイザー、ピラー、ドアハンドル、アームレスト、フロアアッセンブリ、荷台フロアアッセンブリ、およびブーツアッセンブリ、ならびに、スリーピング-キャブウオール、およびバンおよびトラックのリアウオールである。
【0057】
本発明のさらなる態様は、上述した種類の複合材料の製造方法である。この方法は、
(i) 上述したホットメルト接着剤組成物を溶融させる工程、
(ii)前記溶融したホットメルト接着剤組成物をポリオレフィンフィルム(PF)に適用する工程、
(iii)このポリオレフィンフィルムを加熱する工程、
(iv)基材(S)を前記溶融したホットメルト接着剤組成物と接触させる工程
を含む。
【0058】
この目的のためには、より特に、シーリングプロセスにおいて、真空を形成させるプロセスまたは加圧ラミネーションが用いられる。
【0059】
真空を形成させるプロセスの場合、ポリオレフィンフィルム(PF)(空気非透過性材料を含む装飾要素)を、典型的には、フレームに気密な方法で圧締めする。フィルムの下には、基盤モールドがあり、その上に支持体を設置する。基盤モールドおよび支持体は、ドリル穴を有し、または空気透過性である。装置を、気密な方法で、加えてその基盤に向かって封鎖する。吸引によりこの装置から空気を排気すると、装飾材料の表面にかかる大気圧下で、装飾材料が支持要素に正確にぴったり合わさる。装飾材料は、真空または減圧の適用に先立って加熱する。この装飾材料は、生成される真空または減圧のため、空気に対して非透過性である。
【0060】
この関連において、例えば、ポリウレタン分散物をベースとする接着剤の場合と同様に、本接着剤は、担体(carrier)にではなく直接ポリオレフィンフィルムに適用することができることが特に有利である。
【0061】
したがって、接触工程は、より特に、圧力の適用下、より特に0.1 bar〜1 bar、好ましくは少なくとも0.8 barの圧力下で行う(最高で0.9 barまで、好ましくは少なくとも0.2 barの減圧を適用することに相当する)。
【0062】
適用圧力は、基材(S)とポリオレフィンフィルム(PF)との間の空隙を減圧することによって生じる。したがって、上述した適用圧力は、特に、最高で0.9 barまで、好ましくは少なくとも0.2 barの減圧を適用することによって生じる。
【0063】
接触工程は、好ましくは50℃以上の接着温度、より好ましくは50℃〜200℃、好ましくは100℃〜150℃の温度で行う。
【0064】
加圧ラミネーション法の場合には、溶融したホットメルト接着剤組成物を、支持体および/またはポリオレフィンフィルム(PF)(装飾要素)に適用する。支持体の装飾要素への接着結合は、好ましくは、熱の影響下で、接合および加圧しながら行う。
【0065】
本明細書で利用するポリオレフィンフィルムは、多くの場合、装飾フィルムであり、表面構造を有する。このポリオレフィンフィルム上の表面構造は、例えば接着結合中または接着結合後のエンボス加工によって導入することができる。
【0066】
本発明の本質的かつ全く驚くべき特徴は、一方では、記載した本接着剤組成物は、ポリオレフィン(ポリオレフィンは、その化学構造に基づいて接着が非常に困難である非極性材料であることが知られている)を、確実に接着結合させることが可能であり、この接着結合を特別なプライマーを使用するかあるいはプラズマ処理または気相フッ素化法などの表面改質技術を用いずに可能にするが、それにもかかわらず他方では、本接着剤組成は、適用道具(より特に、ローラー、ダイ、またはラミネーション道具)のテフロン(登録商標)でコーティングされた表面に、ほとんど接着しないかまたは全く接着しないことである。
【実施例】
【0067】
(使用原料)
【表1】

【0068】
接着剤組成物は、表2に指定した重量部の成分を、不活性雰囲気下、180℃の温度にて、撹拌装置内で互いに混合することによって製造した。
【0069】
[試験方法]
[粘度]
密封チューブ内の各ホットメルト接着剤が、140℃、20分間のオーブン内で溶融した後、12.3 mgの接着剤を使い捨てスリーブに秤り取り、粘度計内で20分間、表2に報告した各温度に調整した。粘度は、スピンドル27番を用いてBrookfield DV-2 Thermosel粘度計で、5(160℃)あるいは10(180℃)の毎分回転数で測定した。5分後の測定に当たる数値の粘度を選択した。表2において、160℃で測定した数値は「160°Cでの粘度」、180℃で測定した数値は「180°Cでの粘度」として記録した。
【0070】
[軟化点]
組成物の軟化点は、DIN 52011の記載に準拠した環球法によって測定し、表2に「Tr&b」として記録した。
【0071】
[剥離強度]
剥離強度を測定するために、まず第一に、各接着剤組成物を160℃の温度に加熱して溶融させた。スキージを用いて、500μmの接着剤フィルムをシリコーンペーパー片に適用する。これを、ホットプレート上、200℃にて行う。次いで、熱可塑性ポリオレフィンフィルム(TPOフィルム、製造業者:Benecke Kaliko、厚さ:2.8 mm、プライマーで処理されていないもの)の切り出した切片を、200℃にて接着剤フィルムに挿入した。接着剤が移行した後、コーティングされたフィルムをホットプレートから取りだす。こうして、接着剤が配置可能になる。
【0072】
こうして予めコーティングされたフィルムを、金属テストパネル(テフロン(登録商標)でコーティングされたスチールパネル、コーティング:TempCoat(登録商標)1008F、Impreglon社)に接着結合させるために、IR源を用いてフィルムの反対側(すなわち、接着剤のフィルム)を205℃に加熱する。所望の温度に到達した後、金属テストパネル上への加圧を、プラテン印刷機を使用して行う。加圧の継続時間は10秒である。印加圧力は、0.3 MPaである。冷却され、接着剤が固化した後、フィルムと金属テストパネルとの間の複合材強度を、ローラー剥離強度の形式(ラミネーションと試験との間に約30秒の処理時間が必要とされる。)で測定する。ローラー剥離強度において、引張りは、100 mm/分で行う。使用する機械は、Zwick Z020引張試験機である。
【0073】
この試験の過程で測定された最高の剥離強度値を、表2に「SFmax」として記録し、平均剥離強度値を「SFx」として記録する。
【0074】
SFmaxの値が7.5 N/5 cm未満である場合は、テフロン(登録商標)への接着性が低い許容可能な値であると考える。しかし、特に、5 N/5 cm未満であることが望ましい。追加的には、SFxの値が、SFmaxの値よりも大幅に低いことが望ましく、SFx/SFmaxの比が0.5未満、好ましくは0.4未満であることが特に有利である。
【0075】
【表2】

【0076】
試験した接着剤組成物についてはいずれも、ポリオレフィンフィルム上に接着破壊パターンは検出されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃で固体である熱可塑性ポリオレフィン(P)少なくとも1種と、
25℃で固体である熱可塑性ポリエステル(TPE)少なくとも1種と、
下記式(I)または(II):
【化1】

(式中、R1は、H、C1〜C4アルキル基、またはベンジル基であり、R2は、飽和または不飽和のC8〜C22アルキル基である)
のアミド(A)少なくとも1種と
を含む、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
熱可塑性ポリオレフィン(P)が、アタクチックポリ-α-オレフィン(APAO)(P1)であることを特徴とする、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
熱可塑性ポリオレフィン(P)が、シラン-グラフト化ポリ-α-オレフィン(P2)であることを特徴とする、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
R2が、不飽和C8〜C20アルキル基、特にCn〜C2n-1アルキル基、Cn〜C2n-3アルキル基、またはCn〜C2n-5アルキル基(式中、n = 8〜20である)、好ましくはオレフィン性不飽和アルキル基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
R2が、C8〜C22アルキル基、より特にC15〜C22アルキル基であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項6】
アミド(A)が、式(I)を有し、R1がHであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項7】
アミド(A)が、ラウリル-、ミリスチル-、パルミチル-、ステアリル-、アラキジル-、ツベルクロステアリル-(tuberculostearyl-)、パルミトレイル、オレイル-、リノレイル-、リノレニル-、エレオステアリル-、エルシル-、およびアラキドニル-アミドからなる群から選択されることを特徴とし、より特に、アミド(A)がステアリルアミドまたはエルカミドであり、好ましくはエルカミドである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項8】
アミド(A)が、40〜150℃、好ましくは50〜110℃の融点を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項9】
アミド(A)を、ホットメルト接着剤組成物に基づいて5重量%以上、より特に5.0重量%〜20.0重量%、好ましくは7.0重量%〜15.0重量%の量で含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項10】
熱可塑性ポリエステル(TPE)が、線状ポリカプロラクトンコポリエステルウレタンであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項11】
熱可塑性ポリエステル(TPE)を、ホットメルト接着剤組成物に基づいて5重量%〜30重量%、好ましくは7重量%〜15重量%の量で含有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項12】
シラン基の反応を触媒する少なくとも1種の触媒をさらに含有する、より特に、ホットメルト接着剤組成物に基づいて、0.01重量%〜1.0重量%、好ましくは0.1重量%〜0.5重量%の量でさらに含有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項13】
熱可塑性ポリオレフィン(P)を、ホットメルト接着剤組成物に基づいて50重量%以上、より特に50重量%〜95重量%、好ましくは60重量%〜80重量%の量で含有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項14】
ポリオレフィンフィルムの接着結合のための、請求項1〜13のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物の使用。
【請求項15】
ポリオレフィンフィルムの接着結合のためのラミネート用接着剤としての、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
− ポリオレフィンフィルム(PF)と、
− 請求項1〜13のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物、または、水の影響により架橋した、請求項1〜13のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物と、
− 基材(S)と
を含む組立体(1)であって、
前記ホットメルト接着剤組成物または前記架橋したホットメルト接着剤組成物が、ポリオレフィンフィルムと基材(S)との間に配置されている、組立体(1)。
【請求項17】
基材(S)が、繊維材料、より特に天然繊維材料であることを特徴とする、請求項16に記載の組立体。
【請求項18】
工業的製造品、より特に屋内装備品、好ましくは輸送手段の装備の部品、または家具部門の物品であることを特徴とする、請求項16または17に記載の組立体。
【請求項19】
(i) 請求項1〜13のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物を溶融させる工程、
(ii)前記溶融したホットメルト接着剤をポリオレフィンフィルム(PF)に適用する工程、
(iii)ポリオレフィンフィルム(PF)を加熱する工程、
(iv)基材(S)を前記溶融したホットメルト接着剤と接触させる工程
を含む、請求項16〜18のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項20】
前記接触工程を、圧力の適用下、より特に0.1 bar〜1 bar、好ましくは少なくとも0.8 barの圧力下で行う、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記圧力の適用を、基材(S)とポリオレフィンフィルム(PF)との間の空隙を減圧することによって生じさせる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記接触工程を、50℃以上の接着温度、より特に50℃〜200℃の温度、好ましくは100℃〜150℃の温度で行う、請求項20または21に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−138196(P2009−138196A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−308718(P2008−308718)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】